(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】金属物体の認証
(51)【国際特許分類】
G01N 23/223 20060101AFI20230804BHJP
B42D 25/36 20140101ALN20230804BHJP
B42D 25/405 20140101ALN20230804BHJP
【FI】
G01N23/223
B42D25/36
B42D25/405
(21)【出願番号】P 2018558507
(86)(22)【出願日】2017-02-02
(86)【国際出願番号】 IL2017050121
(87)【国際公開番号】W WO2017134660
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2016-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518274043
【氏名又は名称】セキュリティ マターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SECURITY MATTERS LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】518274054
【氏名又は名称】ソレク ニュークリア リサーチ センター
【氏名又は名称原語表記】SOREQ NUCLEAR RESEARCH CENTER
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グロフ,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】キスレヴ,ツェマフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン,ナダヴ
(72)【発明者】
【氏名】ボンディ,ヤアラ
(72)【発明者】
【氏名】アロン,ハッギ
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】上田 泰
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0194052(US,A1)
【文献】特開2004-188976(JP,A)
【文献】特表2012-511195(JP,A)
【文献】特表2011-517727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02, 25/00-25/485
G01N 23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物体をマーキングして認証する方法であって、当該方法が
:
- マーキング組成物を前記
金属物体の少なくとも一の表面領域に認証を示す量又はパターンで付加するステップ
と;
- 前記
金属物体にX線又はガンマ線放射で照射するステップ
と;
- 応答X線信号を処理するステップであって、これによって強化応答信号を取得するステップと;
- 前記強化応答信号内の少なくとも1つのマーキング信号と、(i)補助信号及び/又は(ii)前記金属物体に存在する1つまたは複数の金属を表す信号の少なくとも1つとを認識するステップであって、これによって物体認証を行うステップを備え、
前記マーキング組成物が、少なくとも一のXRF感応性マーカー、少なくとも一の表面結合剤物質、及び
、前記金属物体の表面領域への前記マーキング組成物の接着を改良する表面改質を生じさせるための少なくとも一の化学エッチング剤を含み、前記少なくとも一の
XRF感応性マーカー
全体の濃度が0.1乃至10,000ppmである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記マーキング組成物の付加が、液浸、浸漬、印刷、ワイピング、ペインティング、超音波スプレイノズルコーティング、超薄ポリマーコーティング、スピンコーティング、ホットメルトコーティング、ロール式ナイフ塗布、絶縁保護コーティング、電解メッキ、無電解メッキ、プラズマスプレイ、及び電気泳動蒸着(EPD)から選択された方法によって実行できることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記マーキング組成物の付加が、真空蒸着法によって実行できることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、蛍光X線(XRF)分析を用いて、感度と精度を改良して金属物体(コイン、メダル、及び宝石類など)の真偽を確認する新規の偽造防止マーキング技術を提供する。
【背景技術】
【0002】
偽造品の抑止は、日常の多くの業務の実用性において非常に重要になってきている。通貨である紙幣やコイン、法律文書、鍵、パスポート、身分証明書、宝石、およびその他の多くの日常の品々は有用であるべく真正のものでなくてはならない。
【0003】
物体の認証に使用する方法とシステムの多くは、とりわけ、現存の方法の複雑さ、これらの方法を実行するのに必要な時間、これらの方法の破壊的性質などの理由で満足のゆくものではない。多くの場合、現場での偽造品の判断は、その物品のサンプルあるいはその物品そのものを分析用に現地外の研究機関に送る必要があるため、不可能である。これらの技術は時間がかかり、誤判定又は判定漏れの度合いが高いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,590,800号
【文献】米国特許第6,850,592号
【文献】米国特許第6,501,825号
【文献】米国特許第6,477,227号
【文献】米国特許第8,864,038号
【発明の概要】
【0005】
本発明の発明者らは、認証を必要とする物体に付加された一またはそれ以上の化合物を蛍光X線(XRF)で検出する方法とシステムを開発した。本発明によって提供される偽造防止マーキング技術とツールは、非常に一般的で、対象となる物体の材料や構造に無反応であり、従って、例えば、金属物体(コイン、メダル、及び宝石類、など)、並びに非金属物体といった、様々な物体の真偽を認証できる。例えば、金属物体といった物体にマーキングするプロセスは、新規のマーキング組成物を物体表面の少なくとも一領域に付加して、XRF分析による検査時に真偽を認証できるようにするステップを具える。
【0006】
物体に付加するマーキング組成物は、一般的に、低濃度のマーキングシステムを具えており、このシステムは、通常、複数のマーカー物質(以下「マーカー」という);これらの各マーカーは、X線又はγ線の放射による反応測定(照射)に応じてX線信号を発するという意味でXRF感受性である。
【0007】
本発明の一態様では、少なくとも一のXRF感受性マーカーと、選択的に少なくとも一の表面結合物質(例えば、結合物質及び/又は接着物質といった物体の少なくとも表面領域にマーカーを結合させる)とを具えるマーカー組成物が提供されており、この組成物中の少なくとも一のマーカーの濃度が0.1乃至10,000ppmである。
【0008】
いくつかの実施例では、この組成物は、金属表面の少なくとも一領域に付加するのに適している。
【0009】
いくつかの実施例では、マーカー組成物を物体に付加する、あるいはマーカーをマーキングする実際の方法によっては、この組成物は少なくとも一の結合剤を含んでいなくてもよい。例えば、化学蒸着又は物理蒸着法が関係している場合は、マーカー組成物は結合物質を含んでいなくてもよい。湿性沈着または溶液析出法を用いるその他のケースでは、結合材料を使用する。したがって、本発明の所定の実施例によれば、この組成物は、約50%乃至99%より多くの少なくとも一の結合剤を含んでいる。その他の実施例では、組成物は、約70%の結合剤と、約20%の溶剤(物体に沈着すると、蒸発する)と、約10%のマーカーと、その他の化合物を含む。このような溶剤を含む組成物では、溶剤のない最終組成物は、約90%の結合剤と約10%のマーカーと、その他の化合物となる。
【0010】
このように、いくつかの実施例では、本発明は少なくとも一のXRF感受性マーカーと少なくとも一の表面結合物質を含むマーカー組成物を提供しており、この組成物中の少なくとも一のマーカーの濃度は、0.1乃至10,000ppmである。
【0011】
その他の実施例では、本発明は、例えば、化学又は物理蒸着法による、沈着用マーカー組成物を提供しており、この組成物は、フィルムが形成される表面物質に対して、0.1乃至10,000ppmのマーカーを含むフィルムとなるのに十分な量の少なくとも一のXRF感受性マーカーとを含む。
【0012】
更なる態様では、本発明は、少なくとも一のXRF感受性マーカーと、少なくとも一の表面結合物質と、少なくとも一の重合開始剤、少なくとも一の湿潤剤、少なくとも一のエッチング剤、少なくとも一の分散剤、少なくとも一の溶剤から選択された少なくとも一の化学物質とを具える組成物を提供する。
【0013】
更なる態様では、本発明は、少なくとも一のXRF感受性マーカーと、少なくとも一の表面結合物質と、少なくとも一の化学エッチング剤とを具えるフィルム形成組成物を意図している。
【0014】
本発明は更に、表面物質の少なくとも一領域上にフィルムを形成するフィルム形成組成物を意図しており、この組成物は、少なくとも一のXRF感受性マーカーと、少なくとも一の表面結合物質と、このマーカーと結合剤との表面接触を大きくする少なくとも一の化学エッチング剤とを具える。
【0015】
本発明のマーキング組成物中のマーカーと結合物質の濃度又は量は、あらかじめ選択されたコードによって設定することができ、これは、認証ステージにおいて、物体上に組成物を付加した後、XRF分析によって測定することができる。一般的に、マーキング組成物は、0.1乃至10,000ppmの範囲の濃度で一またはそれ以上のマーカーを含む。いくつかの実施例では、この組成物は、0.1乃至1,000ppm、0.1乃至900ppm、0.1乃至800ppm、0.1乃至700ppm、0.1乃至600ppm、0.1乃至500ppm、0.1乃至400ppm、0.1乃至300ppm、0.1乃至200ppm、0.1乃至100ppm、0.1乃至10ppm、0.1乃至9ppm、0.1乃至8ppm、0.1乃至7ppm、0.1乃至6ppm、0.1乃至5ppm、0.1乃至4ppm、0.1乃至3ppm、0.1乃至2ppm、0.1乃至1ppm、1乃至1000ppm、1乃至900ppm、1乃至800ppm、1乃至700ppm、1乃至600ppm、1乃至500ppm、1乃至400ppm、1乃至300ppm、1乃至200ppm、1乃至100ppm、1乃至90ppm、1乃至80ppm、1乃至70ppm、1乃至60ppm、1乃至50ppm、1乃至40ppm、1乃至30ppm、1乃至20ppm、1乃至10ppm、1乃至9ppm、1乃至8ppm、1乃至7ppm、1乃至6ppm、1乃至5ppm、1乃至4ppm、1乃至3ppm、又は1乃至2ppmの濃度で少なくとも一のマーカーを含む。
【0016】
いくつかの実施例では、この組成物は、0.1乃至50ppm、0.1乃至45ppm、0.1乃至40ppm、0.1乃至35ppm、0.1乃至30ppm、0.1乃至25ppm、0.1乃至20ppm、0.1乃至15ppm、0.1乃至10ppm、0.1乃至5ppm、0.1乃至4.5ppm、0.1乃至4ppm、0.1乃至3.5ppm、0.1乃至3ppm、0.1乃至2.5ppm、0.1乃至2ppm、0.1乃至1.5ppm、0.1乃至1ppm、0.1乃至0.9ppm、0.1乃至0.8ppm、0.1乃至0.7ppm、0.1乃至0.6ppm、0.1乃至0.5ppm、0.2乃至50ppm、0.2乃至45ppm、0.2乃至40ppm、0.2乃至35ppm、0.2乃至30ppm、0.2乃至25ppm、0.2乃至20ppm、0.2乃至15ppm、0.2乃至10ppm、0.2乃至5ppm、0.3乃至50ppm、0.3乃至45ppm、0.3乃至40ppm、0.3乃至35ppm、0.3乃至30ppm、0.3乃至25ppm、0.3乃至20ppm、0.3乃至15ppm、0.3乃至10ppm、0.3乃至5ppm、0.4乃至50ppm、0.4乃至45ppm、0.4乃至40ppm、0.4乃至35ppm、0.4乃至30ppm、0.4乃至25ppm、0.4乃至20ppm、0.4乃至15ppm、0.4乃至10ppm、0.4乃至5ppm、0.5乃至50ppm、0.5乃至45ppm、0.5乃至40ppm、0.5乃至35ppm、0.5乃至30ppm、0.5乃至25ppm、0.5乃至20ppm、0.5乃至15ppm、0.5乃至10ppm、又は0.5乃至5ppm、の濃度で少なくとも一のマーカーを含む。
【0017】
いくつかの実施例では、この組成物は、単一の物体をマーキングするのに十分な濃度の少なくとも一のマーカーを含む。このような実施例では、この濃度は、物体の表面にフィルムを得るのに適切な濃度であり、このフィルムは、0.1乃至1,000ppm、0.1乃至900ppm、0.1乃至800ppm、0.1乃至700ppm、0.1乃至600ppm、0.1乃至500ppm、0.1乃至400ppm、0.1乃至300ppm、0.1乃至200ppm、0.1乃至100ppm、0.1乃至10ppm、0.1乃至9ppm、0.1乃至8ppm、0.1乃至7ppm、0.1乃至6ppm、0.1乃至5ppm、0.1乃至4ppm、0.1乃至3ppm、0.1乃至2ppm、0.1乃至1ppm、1乃至1000ppm、1乃至900ppm、1乃至800ppm、1乃至700ppm、1乃至600ppm、1乃至500ppm、1乃至400ppm、1乃至300ppm、1乃至200ppm、1乃至100ppm、1乃至90ppm、1乃至80ppm、1乃至70ppm、1乃至60ppm、1乃至50ppm、1乃至40ppm、1乃至30ppm、1乃至20ppm、1乃至10ppm、1乃至9ppm、1乃至8ppm、1乃至7ppm、1乃至6ppm、1乃至5ppm、1乃至4ppm、1乃至3ppm、又は1乃至2ppmの濃度である。
【0018】
いくつかの実施例では、この組成物は、単一の物体をマーキングするのに十分な濃度の少なくとも一のマーカーを含む。このような実施例では、この濃度は、0.1乃至50ppm、0.1乃至45ppm、0.1乃至40ppm、0.1乃至35ppm、0.1乃至30ppm、0.1乃至25ppm、0.1乃至20ppm、0.1乃至15ppm、0.1乃至10ppm、0.1乃至5ppm、0.1乃至4.5ppm、0.1乃至4ppm、0.1乃至3.5ppm、0.1乃至3ppm、0.1乃至2.5ppm、0.1乃至2ppm、0.1乃至1.5ppm、0.1乃至1ppm、0.1乃至0.9ppm、0.1乃至0.8ppm、0.1乃至0.7ppm、0.1乃至0.6ppm、0.1乃至0.5ppm、0.2乃至50ppm、0.2乃至45ppm、0.2乃至40ppm、0.2乃至35ppm、0.2乃至30ppm、0.2乃至25ppm、0.2乃至20ppm、0.2乃至15ppm、0.2乃至10ppm、0.2乃至5ppm、0.3乃至50ppm、0.3乃至45ppm、0.3乃至40ppm、0.3乃至35ppm、0.3乃至30ppm、0.3乃至25ppm、0.3乃至20ppm、0.3乃至15ppm、0.3乃至10ppm、0.3乃至5ppm、0.4乃至50ppm、0.4乃至45ppm、0.4乃至40ppm、0.4乃至35ppm、0.4乃至30ppm、0.4乃至25ppm、0.4乃至20ppm、0.4乃至15ppm、0.4乃至10ppm、0.4乃至5ppm、0.5乃至50ppm、0.5乃至45ppm、0.5乃至40ppm、0.5乃至35ppm、0.5乃至30ppm、0.5乃至25ppm、0.5乃至20ppm、0.5乃至15ppm、0.5乃至10ppm、又は0.5乃至5ppm、である。
【0019】
いくつかの実施例では、この組成物は、0.1乃至10,000ppm、0.1乃至9,000ppm、0.1乃至8,000ppm、0.1乃至7,000ppm、0.1乃至6,000ppm、0.1乃至5,000ppm、0.1乃至4,000ppm、0.1乃至3,000ppm、0.1乃至2,000ppm、0.1乃至1,000ppm、1乃至10,000ppm、10乃至10,000ppm、100乃至10,000ppm、1,000乃至10,000ppm、2,000乃至10,000ppm、3,000乃至10,000ppm、4,000乃至10,000ppm、5,000乃至10,000ppm、6,000乃至10,000ppm、7,000乃至10,000ppm、8,000乃至10,000ppm、又は9,000乃至10,000ppm、の濃度で少なくとも一のマーカーを含む。
【0020】
マーカーの濃度は、物体のサイズ、物体の上に形成するフィルムの特性と、マーキング組成物の安定性を決めるその他のパラメータ、に基づいて決めることができる。典型的な物体については、平均してマーカー物質の量が、表面物質に対して物体当たり0.1乃至10,000ppmである。このマーカーの量は、物体の表面に均一に分配されるか、あるいは、物体の表面にわたって物質を増加させて分配することもできる。この場合、単一の物体上への付加に適した組成物中のマーカー材料の量は100ppmであり、この組成物は、10等分したものが物体の10の異なる部分に付加されるように付加され、各等分は、10ppmのマーカー材料を具える。
【0021】
ここで使用されているように、マーカー材料は、XRFで同定できる一またはそれ以上の元素を含む化合物である。換言すると、マーカーは周期律表の少なくとも一元素であるか、その元素を含み、その元素はX線又はガンマ線(一次放射線)の放射に応じて、その元素のスぺクトル特性(すなわち、特定のエネルギィ/波長にピークがある)を持つX線信号(二次放射線)を発生する(XRFシグネチュアとしてのX線応答信号)。このような応答信号を持つ元素は、XRF感受性があると考えられる。
【0022】
いくつかの実施例では、マーカーは、元素または、一またはそれ以上の元素を含む物質であり、この元素は、同定可能なX線信号を発生する原子エネルギィレベル間で電子遷移がある。いくつかの実施例では、マーカーは有機物質ではない。いくつかの実施例では、マーカーは金属塩、有機金属物質、あるいは金属酸化物である。
【0023】
いくつかの実施例では、マーカー物質は、元素であるか、または、Si、P,Cl、K、Ca,Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、La及びCeから選択した元素を含む物質である。いくつかの実施例では、マーカーが、Si、P,Cl、K、Ca,Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、La及びCeから選択した元素を含む物質である。
【0024】
いくつかの実施例では、マーカー物質が、元素、又はSi、P,Cl、K、Ca,Br、Ti、Fe、V、Cr、Mn、Co、Ni、Ga、As、Fe、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、I、Cs、Ba、La及び/又はCeから選択した元素を含む物質である。
【0025】
いくつかの実施例では、マーカーは、Ca、Ti、Mo、Zn、Zr及びSbの一またはそれ以上である。いくつかの実施例では、マーカーは、Ca又はTi又はMo又はZn又はZr又はSbである。その他の実施例では、マーカーがCaである。その他の実施例では、マーカーがTiである。その他の実施例では、マーカーがMoである。その他の実施例では、マーカーがZnである。その他の実施例では、マーカーがSbである。
【0026】
いくつかの実施例では、マーカーが金属塩又は、上述したように、少なくとも一の金属原子を含む金属錯体、及び少なくとも一のアニオン、又は、複合部分である。このアニオン又は複合部分は、無機又は有機である。いくつかの実施例では、マーカーが負に帯電した原子又は原子群(例えば、リガンドの形で)であるアニオンを含む金属錯体であり、これは単独で帯電していてもよく、あるいは複数で帯電(-2またはそれ以上の電価)していてもよい。
【0027】
いくつかの実施例では、アニオンが無機である。無機アニオンの非限定的な例には、HO-、F-、Cl-、Br-、I-、NO2
-、NO3
-、ClO4
-、SO4
-2、SO3
-、PO4
-、及びCO3
-2がある。
【0028】
いくつかの実施例では、アニオンが有機である。有機アニオンの非限定的な例には、酢酸塩(CH3COO-)、ギ酸塩(HCOO-)、クエン酸塩(C3H5O(COO)3
-3)、アセチルアセトネート、乳酸塩(CH3CH(OH)COO-)、シュウ酸塩((COO)2
-2)、及びこれらの誘導体がある。
【0029】
いくつかの実施例では、金属塩が金属酸化物である。
【0030】
XRFで同定できる少なくとも一の元素を含む例示的な物質には、BaSO4、AgBr、AgI、AGCl、CuCO3、CaCO3、CaSO4、PbI2、及びMgSO4がある。
【0031】
いくつかの実施例では、マーカーが二又はそれ以上の元素、又は各々が少なくとも一の同じ又は異なる元素を含む二またはそれ以上の物質を含むマーカー組み合わせであり、各元素は、異なる酸化状態、異なる金属錯体、異なるリガンド、異なる濃度で、あるいはマーキング組成物中の異なるキャリアで表すことができる。
【0032】
いくつかの実施例では、マーカー組み合わせは、複数のマーカー要素を含んでおり、各要素は、異なる濃度又は形態であり、組み合わせ中の特定の元素のみならず、関連する濃度のスペクトル特性をもつ独自の特徴を認める。
【0033】
このマーカー組み合わせ中のあるいは組成物中の他のマーカーから独立しているマーカーは、金属形態、塩形態、酸化物形態、前述した一またはそれ以上の元素を含む(化学的又は物理的相互作用において)ポリマー、有機金属化合物、あるいは一またはそれ以上の元素を含む錯体である。
【0034】
本発明の組成物中に用いる少なくとも一の表面結合物質は、マーカーを物体表面に結合するあるいは結合を促進する物質である。少なくとも一の表面結合物質は、単一物質あるいは物質の組み合わせであり、これは、独立してあるいは組み合わせてマーカー/マーカー組み合わせ、又はマーキング組成物のその他の成分を、表面領域へ非可逆的に結合させる。少なくとも一の表面結合物質は、この分野で知られているように、一又はそれ以上の結合物質、接着促進物質、ポリマー及びプレポリマーである。
【0035】
いくつかの実施例では、少なくとも一の表面結合物質が、少なくとも一の結合剤と少なくとも一の接着促進剤である。
【0036】
いくつかの実施例では、少なくとも一の表面結合物質が、少なくとも一の結合物質及び/又は、少なくとも一の接着促進剤であり、他の物質から独立してあるいは組み合わせて、マーカー材料又はマーキング組成物の成分の物体表面への結合を促進する。
【0037】
いくつかの実施例では、結合剤が有機結合剤である。いくつかの実施例では、結合剤が、シリコーン結合剤などの無機結合剤である。更なる実施例では、結合剤が重合物質、あるいは、放射線の存在下でポリマーに重合するプレポリマーである。
【0038】
結合剤が重合物質である本発明の実施例では、結合剤は熱硬化性樹脂から選択される。このようなポリマーの非限定的な例には、ポリウレタナクリレート、ポリアクリレート、ポリエポキシアミン類、ポリエポキシ無水物、ポリエステル、及びポリスチレンがある。
【0039】
いくつかの実施例では、結合剤がポリアクリレートである。
【0040】
いくつかの実施例では、本発明の組成物はモノマー、オリゴマー、樹脂物質、又はこれらの組み合わせから選択された少なくとも一のプレポリマーであって、少なくとも一の開始剤の存在下で照射を受けるとここに規定したポリマー物質を提供するプレポリマーである。
【0041】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一の重合開始剤と、選択的に、少なくとも一の接着促進剤と、少なくとも一の湿潤剤と、少なくとも一のエッチング剤と、少なくとも一の分散剤と、少なくとも一の溶剤から選択した物質と、を具える。
【0042】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一の接着促進剤と、選択的に、少なくとも一の重合開始剤と、少なくとも一の湿潤剤と、少なくとも一のエッチング剤と、少なくとも一の分散剤と、少なくとも一の溶剤から選択した物質と、を具える。
【0043】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一の湿潤剤と、選択的に、少なくとも一の重合開始剤と、少なくとも一の接着促進剤と、少なくとも一のエッチング剤と、少なくとも一の分散剤と、少なくとも一の溶剤から選択した物質と、を具える。
【0044】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一のエッチング剤と、選択的に、少なくとも一の重合開始剤と、少なくとも一の接着促進剤と、少なくとも一の湿潤剤と、少なくとも一の分散剤と、少なくとも一の溶剤から選択した物質と、を具える。
【0045】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一の分散剤と、選択的に、少なくとも一の重合開始剤と、少なくとも一の接着促進剤と、少なくとも一の湿潤剤と、少なくとも一のエッチング剤と、少なくとも一の溶剤から選択した物質と、を具える。
【0046】
いくつかの実施例では、この組成物は、少なくとも一のマーカーと、少なくとも一の結合物質と、少なくとも一の重合開始剤と、少なくとも一の接着促進剤と、少なくとも一の湿潤剤と、少なくとも一のエッチング剤と、少なくとも一の分散剤と、少なくとも一の溶剤と、を具える。
【0047】
いくつかの実施例では、少なくとも一の結合剤がプレポリマーか、ポリマー、オリゴマー、モノマー、樹脂、又は、架橋及び/又は重合を必要とするこれらの組み合わせである。これらの実施例で、本発明の組成物は、架橋及び/又は重合を促進する少なくとも一の開始剤を具えていてもよい。この開始剤は、適切な波長の光照射と組み合わせて用いることができる。
【0048】
したがって、ここで使用されているように、少なくとも一の開始剤は、コーティング形成前、すなわち、重合化の前にマーキング組成物中に存在するポリマー物質、オリゴマー物質又はモノマー物質のいずれかの重合化及び/又は架橋に影響する少なくとも一の物質である。いくつかの実施例では、この開始剤は、少なくとも一の熱開始剤、又は少なくとも一の光開始剤である。いくつかの実施例では、この開始剤は、少なくとも一の光開始剤であり、これは、芳香性α-ヒドロキシケトン、アルコキシオキシベンゾイン、アセトフェノン、アクリルホスフィン酸化物、ビスアクリルホスフィン酸化物から選択的に選ばれる。
【0049】
いくつかの実施例では、少なくとも一の光開始剤が、1-ヒドロキシシ クロヘキシル フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-4-トリメチルフェニル ホスファイン オキサイド(DMBAPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)-フェニル ホスフィン オキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル ホスフィン オキサイド、ベンゾイン メチル エステル、及びエチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエイト、から選択される。
【0050】
少なくとも一の接着促進剤は、単独であるいは少なくとも一の結合剤物質と組み合わせて、組成物中の成分と表面領域との間の相互作用(化学的又は物理的)を促進し、維持する物質である。いくつかの実施例では、接着促進剤は、酸性基を伴うヒドロキシ官能性コポリマーであってもよく、芳香族酸メタクリレートハーフエステル又は溶液又はモノマー中の芳香族酸アクリレートハーフエステルブレンドの形のオリゴマーであってもよい。
【0051】
いくつかの実施例では、接着促進剤が、結合剤物質に基づいて選択される。その他の実施例では、接着促進剤は、結合剤物質と関係なく選択される。
【0052】
接着促進剤は、ポリアミド類、エポキシド類、及びシラン類の中から選択される。その他の実施例では、接着促進剤は、シラン類の中から選択される。シラン接着促進剤の例には、オクチルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シアノプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル トリメトキシシラン、及び3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、がある。
【0053】
少なくとも一の湿潤剤は、組成物のフィルムが形成される表面領域へ水又は液体をより容易に拡散させる又は浸透させる、例えば溶剤あるいは分散剤である水又は液状キャリアの表面張力を低減する物質の中から選択される。いくつかの実施例では、湿潤剤が、金属物質の表面領域の濡れを改善するように選択される。湿潤剤は、スパン及びツイン物質から選択され、とりわけ、脂肪酸(例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸)の部分エステルと、選択的にポリオキシエチレン鎖を含むソルビトール由来のヘキシトール無水物、から選択される。いくつかの実施例では、ツイン80などの少なくとも一のツインタイプの湿潤剤が、ポリエチレングリコールである。
【0054】
エッチェント又はエッチング剤は、物体の表面領域へのマーキング組成物の接着又は、通常の会合、選択的には不可逆性を改良する表面改質を生じさせるように選択される。エッチング剤は、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸;酢酸、クエン酸、タルタル酸、メタンスルホン酸などの有機酸;クエン酸、タルタル酸、メタンスルホン酸、などの有機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、などの無機塩基;アンモニア;アミン、水酸化第4級アンモニウム、などの有機塩基;から選択することができる。
【0055】
特定の有用性によっては、表面処理は化学エッチングとは異なる手段によって影響を受け、あるいは物体の表面領域に組成物を付加する前に実行される。例えば、組成物中のエッチング物質の含有が好ましくない場合に、この組成物のフィルムで被覆するべき表面領域は、化学エッチングによってあるいは非化学エッチングによって前処理を行い、これによって、マーカー材料へつなげるのに必要な度合の表面改質を達成することができる。したがって、このような実施例では、本発明の各組成物はエッチング剤が含まれていない。
【0056】
組成物は、通常、溶液の形である。組成物の成分は、キャリア溶剤に完全に溶けているか、あるいは、分散した形であってもよい。別の場合では、組成物の成分が、カプセルに入っている、あるいは粒状または混和性の形であり、液状キャリア中で分解できる。このような形は、特定の組成物から形成されたフィルムのXRF特性に影響しないことが好ましい。ほとんどのアプリケーションで、このように組成物が液状組成物であり、少なくとも一の溶剤と、選択的に少なくとも一の分散剤を具えており、マーカーと、マーキング組成物中のその他の成分を均一に分解させ、これによって、マーキング組成物が適切な濃度のマーカーを含むことができる
【0057】
その他の目的で、あるいは長期の安定した保存期間条件のために、組成物は、固形組成物として、液状キャリアを含まないように処方することができる。一またはそれ以上の組成物の成分が室温で液状である場合、組成物は、カプセル化する、マトリックス材料に積みこむ、その他によって、非液状形態に処方することができる。このように、いくつかの実施例では、本発明の組成物は、溶剤フリーの組成物であってもよい。溶液の形態は、物体の表面領域に付加する前に、適切な溶剤又は液状キャリアに固形組成物を分解させることによって、生成、又は再生成することができる。
【0058】
組成物が、例えば、溶液、分散液、又は懸濁液、あるいは溶剤を含むその他の組成物といった、液状組成物であるいくつかの実施例では、溶剤は水である。代替的に、溶剤は、有機溶剤、無機溶剤、あるいは少なくとも一の水溶性液体を含む水性媒体から選択することができる。
【0059】
いくつかの実施例では、本発明の組成物は、いずれも、さらに、フュームドシリカなど、少なくとも一のマッティング剤を含んでいてもよい。
【0060】
いくつかの実施例では、組成物は、マーカーと結合剤に加えて、少なくとも一の溶媒と、マーカーの分解を支援し、適切なマーカー濃度にする少なくとも一の分散剤を具える。いくつかの実施例では、マーキング組成物が、選択的に、OH及び/又はCOOH基で置換された少なくとも一のベンゼンリングと、を具えている。マーキング組成物はまた、少なくとも一の接着促進剤を具えており、これは、酸性基を伴うヒドロキシ官能性コポリマー、芳香性酸メタアクリレートハーフエステルの形のオリゴマー、あるいは、溶液又はモノマー中の芳香性酸アクリレートハーフエステルブレンドで、あってもよい。
【0061】
本発明は更に、本発明による組成物を提供しており、各組成物は、独立してXRF官能性マーキング組成物として適切であり、この組成物は以下のものから選択される。
【0062】
1.Ca及び/又はTi及び/又はMo及び/又はZn及び/又はZr及び/又はSbを含むマーカー物質を具え、少なくとも一の結合物質がアクリレートベースであり、エッチング物質がリン酸と2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0063】
2.Ca及び/又はTi及び/又はMo及び/又はZn及び/又はZr及び/又はSbを含むマーカー物質を具え、少なくとも一の結合物質が少なくとも一の結合剤物質と少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0064】
3.Ca及び/又はTi及び/又はMo及び/又はZn及び/又はZr及び/又はSbを含むマーカー物質を具え、少なくとも一の結合物質が少なくとも一の結合剤物質と、メタクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン及び/又はアクリルシラン及び/又は芳香族酸メタクリレートハーフエステルである少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0065】
4.Ca及び/又はTi及び/又はMo及び/又はZn及び/又はZr及び/又はSbを含むマーカー物質を具え、少なくとも一の結合物質がアクリル樹脂類から選択された少なくとも一の結合剤物質と、少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0066】
5.Ca及び/又はTi及び/又はMo及び/又はZn及び/又はZr及び/又はSbを含むマーカー物質を具え、少なくとも一の結合物質がアクリル樹脂類から選択された少なくとも一の結合剤物質と、メタクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン及び/又はアクリルシラン及び/又は芳香族酸メタクリレートハーフエステルである少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0067】
6.XRF感応性元素を含むマーカー物質と、アクリレートベースの少なくとも一の結合物質と;リン酸及び/又は2-プロペン酸であるエッチング物質とを具える組成物。
【0068】
7.XRF感応性元素を含むマーカー物質と、少なくとも一の結合剤物質と少なくとも一の接着促進剤を具える少なくとも一の結合物質と;リン酸及び/又は2-プロペン酸であるエッチング物質とを具える組成物。
【0069】
8.XRF感応性元素を含むマーカー物質と、少なくとも一の結合物質が少なくとも一の結合剤と、メタクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン及び/又はアクリルシラン及び/又は芳香族酸メタクリレートハーフエステルである少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0070】
9.XRF-感応性元素を含むマーカー物質と、少なくとも一の結合物質がアクリル樹脂類から選択された少なくとも一の結合剤物質と、少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0071】
10.XRF感応性元素を含むマーカー物質と、少なくとも一の結合物質がアクリル樹脂類から選択された少なくとも一の結合剤物質と、メタクリルオキシシラン及び/又はメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン及び/又はアクリルシラン及び/又は芳香族酸メタクリレートハーフエステルである少なくとも一の接着促進剤を具え、エッチング物質がリン酸及び/又は2-プロペン酸から選択される、組成物。
【0072】
いくつかの実施例では、上述の組成物1乃至10の各々において、マーカー元素がCa又はTi又はMo又はZn又はZr又はSb、又はこれらの元素の2またはそれ以上の組み合わせである。
【0073】
いくつかの実施例では、上述の組成物1乃至10の各々において、少なくとも一の接着促進剤が、メタクリルオキシシラン又はメタクリルオキシプロピル終端ポリジメチルシロキサン又はアクリルシラン又は芳香族酸メタクリレートハーフエステルまたはこれらの2またはそれ以上の物質の組み合わせである。
【0074】
いくつかの実施例では、上述の組成物1乃至10の各々において、エッチング物質がリン酸又は2-プロペン酸、又はこれらの組み合わせである。
【0075】
いくつかの実施例では、上述の組成物1乃至10の各々において、組成物が溶剤フリーの組成物である。いくつかの実施例では、溶剤が、1-メトキシ-2-プロパノール又はイソプロパノール又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施例では、溶剤が水フリーである。その他の実施例では、溶剤がさらに、ある量の水を含む。
【0076】
いくつかの実施例では、本発明の組成物は、以下の表1に挙げられた物質でできている。
【0077】
【0078】
本発明のマーキング組成物は物体表面のいずれの領域に付加してもよい。表面全体を組成物でコーティングしてもよい。代替的に、単一のあるいは複数の領域をコーティングするようにしてもよい。いくつかの実施例では、このコーティングは薄膜(あるいは被覆、又は層)の形態であり、連続していても不連続であってもよく、あるいは、あらかじめ決められたパターンの形であってもよい。このパターンは、連続パターンあるいは、複数のスペースを空けたパターンの形であってもよい。マーカー組成物は、物体の一以上の領域に、特別に作った認証となるようにしてもよい。
【0079】
表面に形成した膜又はパターンは、厚さ0.1乃至10ミクロンである。いくつかの実施例では、厚さが0.1乃至4ミクロン、あるいは0.1乃至3ミクロン、あるいは0.1乃至2.5ミクロン、あるいは0.1乃至2ミクロンである。
【0080】
組成物を付加した表面は、通常物体又は基体の最上位表面領域である。嵩のある物体の物質は、表面と同じ物質である必要はない。
【0081】
3D構造の物体は、どのように複雑なものであってもよく、その表面は露出した表面あるいはその上に膜を形成する目的を達するものであればどのような表面でもよい。この表面は、実質的に2次元である平坦な表面領域であってもよく、3次元の特徴又はパターンを有する領域であってもよい。この表面は何らかの輪郭特徴と物性組成を有する複雑なものであってもよい。組成物の多用途性と、物質とその表面特徴及び特性にダメージを与えることなく表面物質に関連する能力によって、本明細書に規定するように、表面物質は、ガラス、プラスチック、ポリマー、木材、金属、布、繊維材料、その他から選択することができる。この物質表面は、物体の製造中あるいは製造後のいずれの時点でも、物体が形成された直後にマーキング組成物で処理することができる。
【0082】
いくつかの実施例では、表面が、金属又は金属組成物あるいは金属の組み合わせである金属表面物質である。金属表面は酸化物であってもよく、金属酸化物、合金、又は少なくともある量に金属を含む非金属物質であってもよい。金属表面は金属表面を形成する直後、あるいはその後の時点で、マーキング組成物で処理することができる。
【0083】
マーキング組成物は、例えば、金属物体(例えば、製造ラインの一部)などの新規に製造した物体に適用する、あるいは代替的に使用済の物体に適用することができる。表面の特性、組成、年齢に関係なく、マーキング組成物は表面の摩耗、及び洗剤や化学物質の適用に耐久性がある。
【0084】
物体表面のいずれかの領域にと付加組成物が最上位表面に膜を形成するという事実にかかわらず、この膜は、物体の外見を変えるものではなく、物体の機械的/物理的、化学的、電気的あるいは磁気的特性に影響しない。
【0085】
マーカー材料は、通常、物体の認証に使用される成分であり、結合剤も認証目的に使用される。すなわち、結合剤のXRFシグネチュアを用いて物体の認証を行う。さらに、金属物体中に存在する少なくとも一の金属のXRFシグネチュアを金属物体の認証に使用する。
【0086】
物体は、認証することが望ましいあるいは必要な物体であり、このような物体は、例えば、通貨のコイン、宝石、メダル、及びその他の日常の物体である。
【0087】
したがって、本発明は本明細書に規定した、物体の少なくともある領域に、少なくとも一のマーカーと少なくとも一の結合物質を含むフィルムを有する物体を提供する。
【0088】
いくつかの実施例では、この物体は、物体表面の一またはそれ以上の領域に膜で被覆されている。その他の実施例では、本明細書に規定したマーカー物質の量又は濃度によって、XRF検出ができる。このような実施例では、膜の濃度が、約0.1乃至1,000ppmの間であるか、あるいは上記に開示した中間濃度又は量である。
【0089】
いくつかの実施例では、マーカー物質の量又は濃度は、約0.1乃至900ppm、約0.1乃至800ppm、約0.1乃至700ppm、約0.1乃至600ppm、約0.1乃至500ppm、約0.1乃至400ppm、約0.1乃至300ppm、約0.1乃至200ppm、約0.1乃至100ppm、約0.1乃至10ppm、約0.1乃至9ppm、約0.1乃至8ppm、約0.1乃至7ppm、約0.1乃至6ppm、約0.1乃至5ppm、約0.1乃至4ppm、約0.1乃至3ppm、約0.1乃至2ppm、約0.1乃至1ppm、約1乃至1000ppm、約1乃至900ppm、約1乃至800ppm、約1乃至700ppm、約1乃至600ppm、約1乃至500ppm、約1乃至400ppm、約1乃至300ppm、約1乃至200ppm、約1乃至100ppm、約1乃至90ppm、約1乃至80ppm、約1乃至70ppm、約1乃至60ppm、約1乃至50ppm、約1乃至40ppm、約1乃至30ppm、約1乃至20ppm、約1乃至10ppm、約1乃至9ppm、約1乃至8ppm、約1乃至7ppm、約1乃至6ppm、約1乃至5ppm、約1乃至4ppm、約1乃至3ppm、約1乃至2ppmである。いくつかの実施例では、この濃度は、約0.1乃至50ppm、約0.1乃至45ppm、約0.1乃至40ppm、約0.1乃至35ppm、約0.1乃至30ppm、約0.1乃至25ppm、約0.1乃至20ppm、約0.1乃至15ppm、約0.1乃至10ppm、約0.1乃至5ppm、約0.1乃至4.5ppm、約0.1乃至4ppm、約0.1乃至3.5ppm、約0.1乃至3ppm、約0.1乃至2.5ppm、約0.1乃至2ppm、約0.1乃至1.5ppm、約0.1乃至1ppm、約0.1乃至0.9ppm、約0.1乃至0.8ppm、約0.1乃至0.7ppm、約0.1乃至0.6ppm、約0.1乃至0.5ppm、約0.2乃至50ppm、約0.2乃至45ppm、約0.2乃至40ppm、約0.2乃至35ppm、約0.2乃至30ppm、約0.2乃至25ppm、約0.2乃至20ppm、約0.2乃至15ppm、約0.2乃至10ppm、約0.2乃至5ppm、約0.3乃至50ppm、約0.3乃至45ppm、約0.3乃至40ppm、約0.3乃至35ppm、約0.3乃至30ppm、約0.3乃至25ppm、約0.3乃至20ppm、約0.3乃至15ppm、約0.3乃至10ppm、約0.3乃至5ppm、約0.4乃至50ppm、約0.4乃至45ppm、約0.4乃至40ppm、約0.4乃至35ppm、約0.4乃至30ppm、約0.4乃至25ppm、約0.4乃至20ppm、約0.4乃至15ppm、約0.4乃至10ppm、約0.4乃至5ppm、約0.5乃至50ppm、約0.5乃至45ppm、約0.5乃至40ppm、約0.5乃至35ppm、約0.5乃至30ppm、約0.5乃至25ppm、約0.5乃至20ppm、約0.5乃至15ppm、約0.5乃至10ppm、約0.5乃至5ppm、である。
【0090】
いくつかの実施例では、フィルムがある量の少なくとも一のマーカー物質と、ポリアクリレート類から選択された少なくとも一の結合物質を具え、フィルム厚さが0.1乃至4ミクロン、又は0.1乃至3ミクロン、又は0.1乃至2.5ミクロン、又は0.1乃至2ミクロンである。
【0091】
いくつかの実施例では、フィルムは2またはそれ以上のマーカー物質を具えており、ここに規定するように、各物質は異なる元素に基づいている。
【0092】
いくつかの実施例では、フィルムは表1に挙げられた物質から選択された物質を具えており、各金属原子は、塩又は錯体の形であり、上述したように選択される。
【0093】
いくつかの実施例では、物体が金属物体であり、マーカー物質が、物体中に存在する原子と異なる少なくとも一の原子を具える。物体は、コイン、宝石、メダル、及びその他の金属から選択される。
【0094】
本発明にかかる物体は、模造や悪用を避けて、認証を可能とするようにマークすることができる。本発明の概略的方法によれば、認証を可能にするために、物体はまずその表面の少なくとも一領域に、本明細書に規定されているマーカー材料を含むフィルムで、マーク、すなわち塗布、被覆、あるいは結合されなくてはならない。このフィルムは、マーカー物質に加えて、本発明の組成物中に存在する一またはそれ以上の物質を具える。この組成物がはじめから揮発性溶剤又は物質を具える場合、揮発性物質の濃度は、フィルムが物体に形成される時に徐々に低減して、最終的に固化するあるいは乾燥する。したがって、例えば、本発明の組成物は様々な成分を分解する溶剤を具えるが、フィルムは最終的に物体が溶剤を含まない表面領域に形成される。フィルムが一旦形成されると、物体の寿命のそのステージであっても物体を認証することができる。
【0095】
従って、本発明はさらに、物体にマーキング及び認証する方法を提供するものであり、この方法は、本発明に係るマーキング組成物を物体の少なくとも一表面領域に付加するステップと、この物体にX線又はγ線を照射して物体の認証を行うステップとを具える。
【0096】
いくつかの実施例では、この方法はさらに、このX線又はガンマ線の照射に応答して物体から受信するX線信号を検出して、この信号を処理するステップを具える。
【0097】
更なる実施例では、マーキング組成物が、XRF反応測定(X線又はガンマ線放射による照射を含む)に応答して少なくとも一のマーキング信号を生成する少なくとも一のマーカーと、XRF反応測定に応答して一またはそれ以上の補助信号を生成する少なくとも一の結合剤を具える。この方法は、X線又はガンマ線に応答して物体から届くX線信号を検出するステップと;検出した応答X線信号を処理して、少なくとも一のマーキング信号灯補助信号を認識し、それによって物体を認証するステップと、を具える。
【0098】
本発明のいくつかの実施例によれば、検出した応答X線信号をフィルタリングして、検出した元の応答X線信号に比べて信号対ノイズ比(SNR)が改善された、及び/又は、信号対雑音比(SNC)が改良された、強化応答信号を取得するステップを具える。その後、この強化応答信号を処理して、この信号が少なくとも一のマーキング信号及び/又は物物体の認証に関連する補助信号を具えるかどうかを決定する。例えば、この処理ステップは、マーキング及び/又は補助信号に関連する一またはそれ以上の周波数における応答信号の電力を分析するステップと、それによって応答信号がマーキング及び/又は補助信号を含んでいるかどうかを決定することで物体を認証するステップを具える。この分析は、例えば、マーキング及び/又は補助信号の周波数と重なる所定の周波数帯における応答信号の電力スペクトルを決定するスペクトル分析を実行するステップを具える、及び/又は、マーキング及び/又は補助信号の一またはそれ以上の特定の信号における応答信号の電力を検出/決定するように特別に設計してもよい。
【0099】
本発明の所定の実施例によれば、特別に設計したフィルタリング方法を実行して、検出したX線応答信号をフィルタにかけて、強化応答信号を取得する。この信号は、次いで物体を認証する更なる処理を行う。この特別に設計したフィルタリング技術は、強化応答信号のSNR及び/又はSNCの劇的な改善を提供し、これによって、例えば少量のXRF感応物質を含むマーキング組成物を使用することができるようになり、従来の技術によっては検出できなかったマーキング組成物とすることができる。したがって、マーキング信号及び/又は補助信号は、従来のXRF技術では、検出できず、したがって、マークした物質の偽造をより有意に困難にする。
【0100】
しかしながら、本発明のいくつかの実施例では、弱いマーキング信号及び/又は弱い補助信号のみを提供するこのような組成物で物体をマークする一方、新規な特別に設計したフィルタリング技術/方法を認証ステージで実行して、弱いマーキング信号及び/又は弱い補助信号を検出できる強化応答信号を得ることができる。
【0101】
SNR及び/又はSCRが十分に高い強化応答信号を得るのに使用できる新規フィルタリング技術の例は、例えば、米国暫定特許出願第62/142,100号及び/又はWO2016/157185号、及び/又はこれらの優先権を主張した出願に記載されている。これらは引用により本明細書に組み込まれている。
【0102】
特に、本発明のいくつかの実施例によれば、このフィルタリングは、検出したX線感応信号の波長スペクトルプロファイルの少なくとも一部に時系列分析技術を適用して、この波長スペクトルプロファイルから傾向及び/又は周期性分を抑制することによって実行される。このフィルタリングによって抑制される傾向と周期性分は、X線信号の検出した部分に現れる少なくとも一のクラッタとノイズに関連しており、以下の一またはそれ以上を源としている:検出デバイスのインストルメンタルノイズ物体近傍の一またはそれ以上の外部物質、後方散乱ノイズ、隣接するピークからの干渉信号。したがって、スペクトルの傾向及び/又は周期性分が抑制された強化応答信号は、弱いマーキング及び/又は補助信号を認証できる検出したX線応答信号に比べて、より高いSNR及び/又はより高いSCRを有する。
【0103】
このため、上述した通り、マーキング組成物(マークするべき物体に実装し、固化/乾燥させた後)は、0.1乃至10,000ppmの範囲の濃度の一またはそれ以上のマーカーを含むことができる。いくつかの場合、固化した/乾燥したマーキング組成物は、0.1乃至200ppm及び/又は0.5乃至200ppmの範囲の濃度のマーカーを含む。これらの範囲の下限(0.1乃至0.5ppm)によって、上述のXRF応答信号をフィルタリングする特別に設計した方法によって、信頼性を持ってマーカーを検出できる。一方で、この範囲の上限(200ppm)は、相対的に低く、これによって、組成物中のマーカーを検出する所定の従来のXRF技術を使用する能力が制限される。
【0104】
物体が金属表面を有している場合、この方法は、少なくとも一のマーキング信号と、(i)補助信号及び/又は(ii)金属物体に存在する一またはそれ以上の金属を表す信号の少なくとも一つを含む強化応答信号を認識するステップを具える。
【0105】
いくつかの実施例では、この方法はさらに、強化応答信号を利用してマーキング組成物中の少なくとも一のマーカーの少なくとも一部分の濃度を測定するステップを具える。
【0106】
更なる実施例では、この方法は、強化応答信号を利用してマーキング組成物中の結合剤に存在する少なくとも一の物質の濃度を測定するステップを具える。
【0107】
その他の実施例では、この方法は、さらに、強化応答信号を利用して金属物体中に存在する少なくとも一の金属の濃度を測定するステップを具える。
【0108】
いくつかの実施例では、少なくとも一のマーカー、及び選択的にマーキング組成物中の少なくとも一の結合剤の濃度は、あらかじめ選択されたコードによって決まる。いくつかの実施例では、あらかじめ選択されたコードに、金属物体中の少なくとも一の金属濃度を表すデータが含まれる。
【0109】
いくつかの実施例では、この方法はさらに、少なくとも一のマーカーと選択的にマーキング組成物中の少なくとも一の結合剤の濃度をあらかじめ選択されたコードと比較するステップを具える。いくつかの実施例では、この方法はさらに、金属物体中の少なくとも一の金属濃度をあらかじめ選択されたコードと比較するステップを具える。
【0110】
なお、上述したフィルタリング技術によって得た強化応答信号中の改善されたSNRとSCRによって、物体をマーキングしているマーキング組成物中のXRFマーカー濃度は、0.5ppm程度の細かい解像度で決定/測定され(0.5乃至30ppmの範囲内での解像度で)、いくつかの場合は、0.5ppm以下のより改善された解像度で決定/測定される。
【0111】
したがって、マーキング組成物中のXRFマーキング物質濃度は、わずかに0.5ppm(測定の解像度)だけ異なるマーキング組成物間で変化する。いくつかの場合、マーキング組成物内のマーキング物質濃度は、0.5乃至200ppmの間の範囲である。したがって、測定の解像度0.5ppmは、組成物中に含まれる各マーキング材料について約400のコードオプションを提供する。いくつかの場合、マーキング物質濃度は、様々にコード化されたマーキング組成物において約1乃至2ppm変化する。これは、組成物中に含まれる各マーキング物質についての約K=100乃至200のコードオプション(ここで、Kは解像度に基づいて測定によって区別することができる様々な濃度の数である)が、組成物中の濃度が0.5乃至200ppmの範囲の組成物をマーキングしていることを意味する。いくつかの場合、マーキング物質の濃度は0.5乃至10,000ppmであってもよく、各マーキング物質はこの場合、K=~10,000コードオプション(測定解像度が約1ppmであることを考慮すると)のオーダーに関連している。したがって、N個の異なるマーカーを使用することで、コードKに対するマーキング組成物はN個の異なる「符号語」の指数にKをコードできる。
【0112】
このため、マーキング組成物のXRFコードを認証するステップは、検出したXRF応答信号、又は強化応答信号(上述したようにフィルタリングされた/処理された検出したXRF応答信号である)を処理するステップと、組成物に含まれるXRFマーカーの量(例えば、ppmで)を測定するステップと、を具える。いくつかの場合、この量は、1-2ppmの細かい解像度で、あるいは、約0.5ppmのより細かい解像度でも測定できる。次いで、XRFコードを、マーキング組成物が設計された検出解像度を考慮して、検出した量に基づいて測定することができる。
【0113】
いくつかの実施例では、マーキング組成物は金属物質の導電性、容量性、抵抗、磁化率に影響しない。
【0114】
いくつかの実施例では、マーキング組成物は、物体の視覚的特徴を変えない。
【0115】
いくつかの実施例では、マーキング組成物は、金属物体の重さを0.1%以上変えない。
【0116】
いくつかの実施例では、物体が、新たに製造されたコイン、及び流通しているコインから選択された金属物体である。
【0117】
マーキング組成物は、この分野で知られている方法によって物体の表面領域に付加することができ:浸す、付ける、印刷、塗る、ペイントする、超音波スプレイノズルコーティング、希釈ポリマー溶液に漬けることによって、あるいは希釈ポリマー溶液をスプレイする/散布することによって製造した超薄ポリマーコーティング、スピンコーティング、ホットメルトコーティング、ロール式ナイフ塗布、絶縁保護コーティング、電解メッキ、無電解メッキ、プラズマスプレイ、及び電気泳動蒸着(EPD)を含む。
【0118】
更に、マーキング組成物は、真空蒸着法で物体表面に付加することができる。ここで、蒸着プロセスは、大気圧より低い圧力で、あるいは真空中(例えば、真空チャンバ内で)で行われる。一般的に、真空蒸着プロセスでは、単一原子から数ミリメートルまでの厚さの範囲の層の蒸着が可能である。このような方法で基板上に蒸着される物質は、真空状態にある。
【0119】
いくつかの実施例では、このようなマーキング技術に使用できる真空蒸着プロセスは、化学蒸着法(CVD)を利用しており、ここでは、蒸気は一またはそれ以上の前駆体を含む化学反応によって生成される。この前駆体は通常、有機金属化合物を含む。CVDによって物体の上に蒸着されるマーキング組成物は、有機金属物質を具えていてもよい。CVDのカテゴリィは、低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマ化学蒸着(PECVD)、000プラズマ支援化学蒸着(PACVD)、原子層堆積(ALD)といった様々なプロセスを具える。
【0120】
代替的に、あるいは追加で、マーカー物質を物体上に蒸着するプロセスは、物理蒸着(PVD)を具えており、ここでは、蒸気源が固体又は液体である。PVDによって物体の上に蒸着されるマーキング組成物は、金属、有機金属化合物、及び金属酸化物を具えていてもよい。PVDプロセスは、スパッタリング、陰極アーク蒸着、熱蒸発、(固体)前駆体として作用して蒸気を発生するレーザーアブレーション、及び電子ビーム蒸着などの技術を使用して、蒸気層中に蒸着粒子を生成する。
【0121】
真空蒸着法により、一又はそれ以上のマーカーを担持する層構造を蒸着することが可能である。例えば、物体表面上全体に均一に設けた組成物層(マーカーを含む)や、例えば、連続(非パターン化)層構造/膜、又は、蒸着した組成物のスペースを空けた分散領域(マスクを介して蒸着させる)によって形成した層構造/膜である。
【0122】
真空蒸着プロセスの精度と層の均一性が、蒸着したマーカーの濃度の迅速かつ正確な測定を容易にする。真空蒸着法によって蒸着したマーキング層は、弾性があり耐摩耗性である。
【0123】
いくつかの実施例では、組成物を例えば、インクジェット印刷などの印刷によって付ける。インクジェット印刷法は、この分野で良く知られている。いくつかの実施例では、組成物の付加が、ドロップオンデマンドインクジェット印刷で行われる。
【0124】
この分野で知られているように、インクジェット印刷装置では、圧電又は加熱デバイスが印刷ヘッドについており、ピコリットル液滴の形で物質が印刷ノズルから出てゆく。このような少量のマーキング組成物を金属物体に付加する能力は、マーキング組成物の不可視性に寄与し、マーキング組成物が、金属物体の機械的、化学的、電気的、及び/又は磁気的特性に影響しないという事実に寄与する。
【0125】
本発明によって形成した物体の認証ステージにおいては、例えば、金属物体などの物体にX線又はγ線が放射され、物体から出射したX線(X線応答信号)が検出される。物体に付加されたマーキング組成物の量が非常に少ないため、また、X線応答信号の検出が小型あるいはハンドヘルド/ポータブル装置(比較的弱い一次放射線で)によって非制御環境内(真空状態ではない)で行われるため、認証信号が背景散乱放射、クラッタ(金属物体近傍の外部物質からの放射)、及び電子ノイズによって妨害されることがある。したがって、X線応答信号を処理して/フィルタにかけて、認証信号を増幅し、信号対ノイズ比(SNR)と信号対クラッタ比(SCR)を改善する。これは、上述した時系列技術などの統計学的方法を用いて行って、検出したXRF応答信号のスペクトルから傾向及び/又は周期的成分を除去し、これによって、認証(マーカー及び/又は補助信号)が増幅され/クラッタ/ノイズの少ない強化応答信号を得ることができる。しかしながら、バックグラウンドの除去に通常使用されている方法(例えば、ガウスフィルタリング)も、認証信号のすべて又は一部を低減することができる。
【0126】
本発明によれば、一旦強化応答信号が得られると、金属物体の認証を強化応答信号中の認証信号の存在に応じて認証することができる。
【0127】
本発明の一実施例では、マーキング成分内のマーカー及び結合剤の濃度が、あらかじめ決められたコードによって設定され、認証ステージでのXRF分析によって測定できる。例えば、各々がマーキング組成物に付加され得る(及び、後の認証ステージで測定される)N個の異なるマーカーをK種類の異なる濃度で使用することで、マーキング組成物をKのN個乗の異なる「符号語」にコード化することができる。一またはそれ以上の様々なコードを用いることで、あらかじめ決められたコードにおける符号語の数が増える。
【0128】
このように、本発明はさらに、物体をマーキングして認証するシステムを提供し、このシステムは:
物体の少なくとも一部にマーキング組成物を付加するマーキングモジュールであって、このマーキング組成物が少なくとも一のマーカーと少なくとも一の結合剤を具える、マーキングモジュールと;
物体に向けてX線又はγ線を照射するエミッタと、金属物体から届いた応答信号X線信号を検出する検出器とを具える読取モジュールと;
X線応答信号を処理して強化応答信号を得る信号プロセッサと;
を具え、
信号プロセッサが、少なくとも一のマーカーに関連する少なくとも一のマーカー信号における強化応答信号と、選択的に、少なくとも一の結合剤に関連する少なくとも一の(i)補助信号、及び、金属物体に存在する少なくとも一の(ii)金属を表す信号と、を認識するように構成されている。
【0129】
いくつかの実施例では、信号プロセッサが、時系列解析などの統計学的処理を用いてX線応答信号をフィルタにかけて、これによって強化応答信号を取得するように構成されている。これによって、改善された解像度及び/又は精度でマーキング物質の濃度を測定できる。いくつかの実施例では、統計学的処理が、検出したX線応答信号のスペクトルプロファイルから(例えば、パワースペクトルから)少なくとも一の傾向及び/又は周期成分を除去するように構成されている。
【0130】
いくつかの実施例では、マーキング組成物中の少なくとも一のマーカー及び選択的に少なくとも一の結合剤の濃度が、あらかじめ選択されたコードにしたがって決定される。いくつかの実施例では、このあらかじめ選択されたコードが、金属物体中の少なくとも一の金属濃度を表すデータを具える。
【0131】
いくつかの実施例では、システムがさらに、あらかじめ選択されたコードを保存するデータベースを具える。
【0132】
いくつかの実施例では、信号プロセッサが強化応答信号を利用して、マーキング組成物中の少なくとも一のマーカー及び選択的に少なくとも一の結合剤の濃度を決定する。いくつかの実施例では、プロセッサが、1乃至2ppmのオーダーの解像度で、あるいは0.5ppmのオーダーの解像度で濃度を決定するように構成されている。
【0133】
いくつかの実施例では、信号プロセッサが強化応答信号を利用して、金属物体中に存在する少なくとも一の金属の濃度を決定する。
【0134】
いくつかの実施例では、信号プロセッサが、マーキング組成物中の少なくとも一のマーカー及び選択的に少なくとも一の結合剤の濃度をあらかじめ選択されたコードと比較して、金属物体の認証を決定するように構成されている。
【0135】
いくつかの実施例では、信号プロセッサが、金属物体中に存在する少なくとも一の金属の濃度を認証を表すデータと比較するように構成されている。
【0136】
いくつかの実施例では、マーキングモジュールが、インクジェット印刷装置を具えている。いくつかの実施例では、マーキングモジュールが、超音波分散装置を具えている。
【0137】
いくつかの実施例では、マーキング組成物が、金属物体の導電性、静電容量、抵抗、磁化率に影響しない。
【0138】
いくつかの実施例では、マーキング組成物が、物体の可視特性を変えない。
【0139】
いくつかの実施例では、マーキング組成物が、金属物体の重量を0.1%以上変えない。
【0140】
いくつかの実施例では、物体が新たに製造されたコイン及び流通しているコインから選択された金属物体である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
本明細書に開示されている主題をより良く理解するために、また、この主題が実際にどのように実行されるのかを例示するために、以下に非限定的な例という形で、図面を参照して実施例を説明する。
【
図1】
図1は、本発明のいくつかの実施例による金属物体にマーキングしてこれを認証する方法を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の更なる実施例による金属物体にマーキングしてこれを認証する方法を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の所定の実施例による金属物体にマーキングしてこれを認証するシステムを示す図である。
【
図4】
図4A及びBは、それぞれ、X線応答信号と対応する強化応答X線信号の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0142】
ここで、本発明のいくつかの実施例によって、金属物体をマーキングして認証する方法を示す
図1を参照する。図面において、金属物体は符号100がつけられている。この方法のステップ102は、第1準備段階で行われ、金属物体にマークを付ける。ステップ102では、金属物体にマーキング組成物を付加する。マーキング組成物は、一またはそれ以上のマーカーと一またはそれ以上の結合剤とを具える。この実施例によれば、マーカーは蛍光X線シグネチュアによって同定できる選択された元素又は化合物を含む。すなわち、X線又はγ線を照射されることに応じてX線信号を生成する化合物であり、応答X線信号は、その物質に関連しその物質を同定する一またはそれ以上のスペクトル特性を含む。以下、マーカーの特定のXRFシグネチュアを、「マーキング信号」という。
【0143】
結合剤は、以下に説明するように、金属物体表面にマーカーを結合させる。例えば、結合剤は、ポリウレタンアクリレート、ポリ-アクリレート、ポリ-エポキシアミン、ポリ-エポキシ無水物、ポリエステル、及びポリスチレンなどの熱硬化性ポリマーである。マーカーと結合剤に加えて、マーキング組成物は、溶剤と、マーカーの分解を支援してマーキング組成物が適切なマーカー濃度となるように分散剤を含んでいてもよい。例えば、マーキング組成物は、OH及び/又はCOOH基で置換されたベンゼン環を含んでいてもよい。マーキング組成物は、また、マーカーの金属物体表面への結合を支援する接着促進剤を含んでいてもよい。例えば、マーキング組成物は、酸性基を持つヒドロキシ官能コポリマー、溶剤又はモノマー中の芳香族酸メタクリレートハーフエステル又は芳香族酸アクリレートハーフエステルブレンドを含んでいてもよい。
【0144】
一またはそれ以上の結合剤のXRFシグネチュア(以下、補助信号という)マーキング信号に加えて使用して、金属物体を認証するようにしてもよい。更に、金属物体の認証用に、金属物体中に存在する少なくとも一の金属のXRFシグネチュアがある(以下、マーキング信号、補助信号、及び金属物体中の金属のXRFシグネチュアを、「認証信号」と総称する。)
【0145】
マーキング組成物は、金属物体の機械的/物理的又は化学的特性に影響しない。特に、マーキング組成物は、裸眼では不可視であり、金属物体表面に印刷、彫り込んだあるいは作った物理的特徴を変形あるいは変更しない。さらに、マーキング組成物は、金属物体の電気的又は磁気的特性(例えば、導電性、静電容量、磁化率)を変えない。したがって、金属物体上に接続した上述の特性を測定する電気的又は磁気的試験は、金属物体がマーキング組成物によってマークされているか否かを明らかにするものではない。
【0146】
ステップ104、106、108及び110は、第2認証ステージで行なわれ、金属物体を検査して認証する。ステップ104では、金属物体にX線又はγ線を照射して、金属物体と、あれば、マーキング組成物に応答X線信号を発生させる。ステップ106では、金属物体に届いた応答X線信号を検出する。ステップ108では、応答X線信号を処理して例えば、バック散乱で生じたノイズとクラッタ、金属物体近傍の検出装置と外部物質の機器ノイズ、を低減し、バックグラウンドに対して認証信号を増幅又は強調する。この処理は、例えば、時系列分析などの統計的処理を具え、これを実行して、検出したX線応答信号のスペクトルプロファイルからの(例えば、パワースペクトルからの)傾向及び/又は周期成分のうちの少なくとも一つ、及び/又は、傾向及び周期性分の両方を除去する。しかしながら、例えば、準ガウス型分光増幅器や、ガウスフィルタリングなどの通常の方法を用いたバックグラウンドとノイズの単純なフィルトレーションも、認証信号の全部または一部を有意に低減することができる。このように、より進歩した信号処理方法を使用するべきである。例えば、応答X線信号は、時系列分析などの統計的方法を用いて処理することができる。ステップ108の出力は、信号対ノイズ比(SNR)と信号対クラッタ比(SCR)が改善された「強化信号」であり、認証信号を正確に取り出すことができる。
【0147】
図4A及び4Bには、例示的X線応答信号と対応する強化応答X線信号が示されている。図に示すように、応答X線信号に現れているノイズとクラッタは、強化応答信号では抑制されている。
図3に示す強化応答信号に現れている顕著なピークは主に認証信号に関連する。その結果、ユーザは
図4A及び4Bに示すy軸のスケールと比較して見ることができ、より感度が高い認証信号の存在を認識できる。この改善された感度によって、ユーザは、マーキング組成物中に見られる有意により少量のマーカーと結合剤を検出し認識することができる。例えば、方法100では、ユーザはマーキング組成物中の濃度0.1-100ppmのマーカーを検出できる。さらに、強化応答信号を用いて、マーキング組成物中の様々なマーカーと結合剤の濃度を高精度(例えば、0.1-100ppm)で測定することができる。
【0148】
ステップ110では、強化応答信号内に認証信号が認められ、金属物体の認証がこれらの信号の存在によって決定される。例えば、金属物体は、マーキング信号(一またはそれ以上)が検出されたら認証とみなすことができ、代替的に、金属物体は、マーキング信号に加えて、(i)少なくとも一の補助信号と(ii)金属物体中に存在する少なくとも一の金属の少なくとも一のXRFシグネチュアとの、一方又は両方が強化応答信号中で認識されたときのみ、認証とみなすようにしてもよい。
【0149】
ここで、本発明の更なる実施例による、金属物体のマーキング及び認証方法(符号200が付されている)を示す
図2を参照する。この方法200のスキップ202と204は、第1の準備段階で実行され、ここでは、金属物体があらかじめ選択されたコードによってマークされる。ステップ206乃至214は、後の認証ステージで実行される。ステップ206乃至210は、上述した方法100のステップ104乃至108とほぼ同様であるので、ここでは詳細に説明しない。
【0150】
ステップ202では、一またはそれ以上のマーカーと一またはそれ以上の結合剤を含むマーキング組成物が金属物体に付加される。ここで、一またはそれ以上のマーカーと一またはそれ以上の結合剤の濃度は、あらかじめ選択されたコードによって決定される。したがって、例えば、マーキング組成物中にK種類の異なる濃度で存在する単一のマーカーは、K種類の異なる符号語(各符号語が、異なる濃度に対応する)を持つあらかじめ選択されたコードに対応する。この異なるマーカーがそれぞれK種類の濃度で使用されている場合、対応するあらかじめ選択されたコードはKのN個の符号語を含む。
【0151】
マーキング組成物の付加は、方法100のステップ102と同様に行われる。マーキング組成物中に存在する特定のマーカーと結合剤と、そのマーキング組成物中の濃度は、あらかじめ選択されたコードに応じて設定される。あらかじめ選択されたコードは、純粋に認証目的で使用される。すなわち、このコードは、最終ステージで、金属物体があらかじめ選択された正しい濃度でマーカーと結合剤を含んでいることを認証するのに使用される。代替的に、コードを用いて、製造/マーキング年月日、製造者の識別、製造/シリアル番号、金属物体の製造場所といった、金属物体及び/またはその製造プロセスに関連する追加情報を提供することもできる。ステップ204では、あらかじめ選択されたコードがデータベースである。あらかじめ選択されたコードは、また、金属物体中の少なくとも一の金属の濃度に関する情報を具えていてもよい。
【0152】
ステップ206では、金属物体にX線又はγ線を照射して、金属物体とマーキング組成物からこれに応答してX線シグネチュアを生成させ、ステップ208で、金属物体から届いた応答X線信号が、方法100のステップ104と106と同様に検出される。同様に、ステップ210では、応答X線信号を処理して、方法100のステップ108と同様に、強化応答信号を取得する。
【0153】
ステップ212では、強化応答信号を利用して、一またはそれ以上のマーカーと、補助信号に関連する結合剤の濃度を測定している。強化応答信号はノイズとクラッタが大きく低減されているため、非常に低濃度のマーカーと結合剤についても正確な測定が可能である。さらに、金属物体中に存在しておりあらかじめ選択されたコードに関連する少なくとも一の金属の濃度も測定できる。
【0154】
様々な高濃度(例えば、0.5乃至30ppmまで)の測定の精度と解像度により、あらかじめ選択されたコードに含まれるマーカー/結合剤の各々の異なる濃度の数は、比較的多い。例えば、各マーカー又は結合剤について10-200の異なる濃度レベルが、マーキング組成物中及びあらかじめ選択されたコードに含まれている。
【0155】
ステップ214では、ステップ212で測定した濃度をあらかじめ選択されたコードから取り出した濃度と比較して、それに応じて金属物体の認証を決定する。一例では、金属物体がステップ212で測定した濃度の認証とみなされるためには、あらかじめ選択されたコードから取り出した濃度レベルと完全に一致していなければならない。代替的に、所定のエラーマージンを許容して、ステップ212で測定した濃度が、あらかじめ選択されたコードから取り出した濃度に対して選択したエラーマージンまでであれば、認証とみなすようにしてもよい。
【0156】
ここで、
図3を参照すると、本発明の実施例による金属物体をマーキング及び認証するシステム(以下、認証システムという)が記載されており、符号300が付されている。システム300は、マーキングモジュール302と、読取モジュール304と、信号プロセッサ306と、データベース308とを具える。読取モジュール304は、放射線エミッタ310と、放射線検出器312を具える。ステップ306は、読取モジュール304とデータベース308に接続されている。データベースも、マーキングモジュール302に接続されている。
【0157】
マーキングモジュール302は、製造プロセス中にあるいは製造後のステージで金属物体の製造場所で新しいコインにマーキング組成物を付加する。代替的に、マーキングを別に設計された施設で既に使用した金属物体に付加してもよい。マーキングモジュールは、たとえば、方法100のステップ104を実行して、少なくとも一のマーカーと結合剤を具える金属物体にマーキング組成物を付加することができる。
【0158】
マーキング組成物に含まれる様々なマーカーと結合剤及びそれらの濃度は、あらかじめ選択されたコードによって決定できる。すなわち、あらかじめ選択されたコードは、マーキング組成物を作成する「レシピ」として使用される。あらかじめ選択されたコードはデータベース208に保存できる。
【0159】
読取モジュール304は、X線及び/又はγ線を検査の対象となっている金属物体に向けて照射(一次放射)し、金属物体から応答して放射される応答X線信号(二次放射)を検出するように構成されている。放射線エミッタ310は、X線及び/又はγ線を金属物体に向けて照射し、検出器312が金属物体から届く応答X線信号を検出する。読取モジュールは、応答X線信号を信号プロセッサ306に、選択的にデータベース308にも送信する。読取モジュールは、ハンドヘルド又は持ち運び可能なXRFアナライザ、あるいはベンチトップ型XRF分光デバイスなどの単一のデバイスとして構成してもよい。代替的に、放射線エミッタ310と放射線検出器312は別々のデバイスとして構成することもできる。読取モジュール304は、認証システム300内に一体化した容易に入手可能なデバイスであっても、金属物体からの応答信号を励起して検出するように特別に設計し、構成したデバイスであってもよい。読取モジュール304は、例えば、方法100のステップ104と106を実行して、金属物体にX線又はガンマ線を照射し、金属物体から届く応答X線信号を検出するように構成してもよい。
【0160】
信号プロセッサ306は、読取モジュールからの応答X線信号を受信して、これを処理し、バックグラウンド放射ノイズとクラッタを応答信号から除去する。なお、例えば準ガウス分光増幅器や、ガウスフィルタリングといった通常のフィルトレーション方法は、応答X線信号に単純に適用されると、認証信号まで低減させたり、あるいは目立たないようにしてしまうことがある。この問題を解決するために、信号プロセッサ306は、応答信号の処理に、例えば、時系列分析などの統計学的方法より進歩した方法を用いて、改善したSNRとSCRで強化応答信号を得る。信号プロセッサは、例えば、方法100のステップ106と108を実行して、応答X線信号を処理し、強化応答信号を取得し、少なくとも一のマーキング信号を、選択的に補助信号及び/又は金属物体内に存在する少なくとも一の金属のXRFシグネチュアを認識するように構成することができる。
【0161】
本発明のいくつかの実施例によれば、信号プロセッサ306は、マーキング組成物内に存在するマーカーと結合剤の濃度も測定することができ、さらには、金属物体内に存在する一又それ以上の金属の濃度も測定できる。信号プロセッサは、また、測定した濃度を、データベース208に保存されているあらかじめ選択されたコードから取り出した濃度と比較するように構成されており、それに応じてその認証を行う。信号プロセッサは、例えば、方法200のステップ212と214を実行して、強化応答信号を用いて、選択的に少なくとも一のマーカーとマーキング組成物内に存在する少なくとも一の物質の濃度を測定するとともに、選択的に、金属物体内の少なくとも一の金属の濃度を測定し、少なくとも一のマーカーと、選択的に結合剤中に存在する少なくとも一の物質と、金属物体中に存在する少なくとも一の金属の測定した濃度を、あらかじめ選択されたコードと比較するように構成されている。