(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/35 20210101AFI20230804BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230804BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20230804BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230804BHJP
H01M 50/367 20210101ALI20230804BHJP
H01M 50/383 20210101ALI20230804BHJP
【FI】
H01M50/35 201
H01M10/651
H01M10/6556
H01M10/613
H01M50/367
H01M50/383
(21)【出願番号】P 2020538201
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2019024055
(87)【国際公開番号】W WO2020039722
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018156603
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権藤 博章
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-065906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079426(US,A1)
【文献】特開2015-056323(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 10/651
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 50/30-392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気弁が設けられた電池を複数備える電池モジュールであって、
前記排気弁から噴出されるガスを冷却しつつ、モジュールの外部に導くための冷却経路を備え、
前記冷却経路は、経路出口における前記ガスの温度T(℃)が500℃以下となるように形成され、
前記冷却経路には
、前記ガスに含まれる噴出物のサイズを制限する、開口サイズA(mm)が3.5mm以下のフィルタ、および前記開口サイズA(mm)が3.5mm以下相当であるバッフル板の少なくとも一方が設置されて
おり、
前記冷却経路は、下記式1の条件に基づいて形成されている、電池モジュール。
式1:T≦350-{Ln(A/3.5)}/0.008
【請求項2】
前記フィルタは、メッシュ、パンチングメタル、または多孔質部材により構成されている、請求項
1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記フィルタは、複数の開口を有し、
前記各開口の内接円の直径は、前記開口サイズAに相当し、0.05mm~3.5mmである、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
排気弁が設けられた電池を複数備える電池モジュールであって、
前記排気弁から噴出されるガスを冷却しつつ、モジュールの外部に導くための冷却経路を備え、
前記冷却経路は、経路出口における前記ガスの温度Tが500℃以下、当該出口から排出される前記ガス中の噴出物の直径Bが3.5mm以下となるように、下記式2の条件に基づいて形成されている、電池モジュール。
式2:B≦3.5e
{0.008(350-T)}
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電池モジュールを構成する各電池には、内部短絡等の異常が発生して内圧が上昇した際に外装缶の破裂を防止すべく、内圧上昇時に作動する排気弁が設けられている。また、電池モジュールには、電池の排気弁から噴出された高温のガスをモジュールの外部に排出するための排気構造が設けられている。特許文献1には、モジュールケースの側面に形成された通気孔が金属製のメッシュ部材で覆われた電池モジュールが開示されている。特許文献1では、メッシュ部材によって火炎の熱が吸収され、モジュールケースから火炎が放出されることを防止できる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池モジュールから高温のガスと共に電極材料等の噴出物が排出されると、当該噴出物が火種となって発火に至る可能性がある。このため、電池モジュールでは、かかる発火を防止するための種々の安全対策が施されている。近年、電池の高エネルギー密度化に伴い、異常発生時の発熱量が増加する傾向にあることから、さらなる安全性の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である電池モジュールは、排気弁が設けられた電池を複数備える電池モジュールであって、前記排気弁から噴出されるガスを冷却しつつ、モジュールの外部に導くための冷却経路を備える。前記冷却経路は、経路出口における前記ガスの温度T(℃)が500℃以下となるように形成され、前記冷却経路には、前記温度Tが350℃以上となる場合に、前記ガスに含まれる噴出物のサイズを制限する、開口サイズA(mm)が3.5mm以下のフィルタ、および前記開口サイズA(mm)が3.5mm以下相当であるバッフル板の少なくとも一方が設置されている。
【0006】
好ましくは、前記冷却経路は、下記式1の条件に基づいて形成されている。
式1:T≦350-{Ln(A/3.5)}/0.008
【0007】
本開示の他の一態様である電池モジュールにおいて、前記冷却経路は、経路出口における前記ガスの温度Tが500℃以下、当該出口から排出される前記ガス中の噴出物の直径Bが3.5mm以下となるように、下記式2の条件に基づいて形成されている。
式2:B≦3.5e{0.008(350-T)}
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電池モジュールによれば、安全性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】実施形態の一例である電池モジュールを模式的に示す平面図である。
【
図1B】実施形態の一例である電池モジュールを模式的に示す正面図である。
【
図2】実施形態の一例である電池モジュールにおいて、フィルタの開口サイズと排気ガス温度の関係を示す図である。
【
図3】実施形態の一例であるフィルタを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)等の駆動用電源として、リチウムイオン電池等の二次電池が使用されており、電池の体積エネルギー密度の向上が以前にも増して求められている。そして、電池の高エネルギー密度化に伴い、異常発生時の発熱量が増加する傾向にあることから、電池モジュールにおいて、さらなる安全性の向上が求められている。
【0011】
本発明者らは、上記式1の条件に基づいて冷却経路を構築することにより、電池に異常が発生して電池モジュールから高温(500℃以下)のガスと共に電極材料等の噴出物が排出された場合であっても、発火の可能性が大きく低減されることを見出した。つまり、電池モジュールに当該冷却経路を適用することで、モジュールの安全性をさらに向上させることができる。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る電池モジュールの実施形態の一例について詳説する。本実施形態では、電池モジュールを構成する電池として、外装缶と封口板とで構成される角形の金属製ケースを備えた角形電池である電池11を例示するが、電池はこれに限定されない。
【0013】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、実施形態の一例である電池モジュール10を模式的に示す平面図および正面図である。
図1Aでは、モジュールケース14の天板を取り外した状態を示している。電池モジュール10は、排気弁12が設けられた電池11を複数備える。また、電池モジュール10は、排気弁12から噴出されるガスを冷却しつつ、モジュールの外部に導くための冷却経路13を備える。詳しくは後述するが、冷却経路13は、経路の出口13aにおける排気ガスの温度T(℃)が500℃以下となるように形成される。さらに、冷却経路13には、出口13aにおける排気ガスの温度Tが350℃以上となる場合に、排気ガスに含まれる噴出物のサイズを制限するフィルタが設置される。フィルタの開口サイズ(開口の内接円の直径)A(mm)は3.5mm以下であり、冷却経路13は、下記式1の条件に基づいて形成されている。
式1:T≦350-{Ln(A/3.5)}/0.008
【0014】
電池モジュール10は、複数の電池11を収容するモジュールケース14を備える。モジュールケース14は、例えば略長方体状のケースであって、その内部に冷却経路13が形成されている。複数の電池11は、モジュールケース14の長手方向に並び、排気弁12が同じ方向(鉛直上方)に向いた状態でケース内に配置されている。隣り合う電池11の間にはスペーサが設けられていてもよい。
図1Aに示す例では、複数の電池11の各排気弁12が、モジュールケース14の長手方向に沿って1列に並んでいる。
【0015】
電池モジュール10は、複数の電池11を含む電池集積体を電池11の積層方向の両側から挟む一対のエンドプレート、および各エンドプレートにわたって取り付けられ、複数の電池11を結束するバインドバーを備えていてもよい。或いは、複数の電池11がモジュールケース14内に収容されることで、複数の電池11が結束されていてもよい。複数の電池11は、一般的にバスバーを用いて電気的に接続される。各電池11は、直列または並列に接続されていてもよく、隣り合う電池11間で正負端子の向きが互いに反対側に位置するように配置されてもよい。
【0016】
モジュールケース14は、金属製、樹脂製のいずれであってもよいが、金属製ケースを用いた場合は、樹脂製ケースを用いた場合と比べて、一般的に冷却経路13の冷却機能が向上する。モジュールケース14がアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属製である場合、例えば、冷却経路13の出口13aにおけるガスの温度を500℃以下とするために必要な経路長を短くすることができる。
【0017】
電池11は、例えば有底角形筒状の外装缶と、外装缶の開口を塞ぐ封口板とで構成された電池ケースを備える。電池ケースは、上述の通り、角形の金属製ケースであり、電池11は角形電池である。電池ケース内には、電極体および電解質が収容されている。電極体は、金属製の芯体および芯体の表面に形成された合材層を含む一対の電極(正極、負極)が、セパレータを介して積層された構造を有する。異常発生時に電池11の排気弁12から噴出される固形の噴出物は、例えば電極体の構成材料である。電解質は、水系電解質、非水系電解質のいずれであってもよく、また液体電解質、固体電解質のいずれであってもよい。電池11の一例は、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の非水電解質二次電池である。
【0018】
電池11の外装缶は、例えばモジュールケース14の短手方向に長い扁平な形状を有する。外装缶は、一般的に金属材料で構成され、外装缶の外面には絶縁性を確保するために樹脂フィルムが装着されていてもよい。封口板は、外装缶の開口を塞いで電池ケースの内部空間を密閉するための部材であって、モジュールケース14の短手方向に長い略長方形状を有する。封口板には、正極端子と負極端子が設けられてもよい。この場合、封口板の長手方向両端部には貫通孔がそれぞれ形成され、各端子は絶縁性のガスケットを介して当該各貫通孔に取り付けられる。
【0019】
排気弁12は、例えば封口板の長手方向中央部に設けられる。排気弁12は、環状の溝に囲まれた部分である。溝が形成された部分は、他の部分よりも厚みが薄くなっているので、電池11に異常が発生して内圧が上昇したときに他の部分よりも優先的に破断する。そして、排気弁12からガスが排出されることで、外装缶の破裂が防止される。
図1Aでは、平面視楕円形状の排気弁12を例示しているが、排気弁12の形状は特に限定されず、真円形状、半円形状等であってもよい。
【0020】
冷却経路13は、上述の通り、排気弁12から噴出されるガスを冷却しつつ、電池モジュール10の外部に導くための経路である。冷却経路13は、排気ダクトとも呼ばれる。冷却経路13は、例えばモジュールケース14の内部に、経路を規定する仕切板15a,15bを設けることで形成される。本実施形態では、モジュールケース14の内部において、排気弁12が設けられた各電池11の封口板の上方に冷却経路13が形成されている。モジュールケース14には、排気弁12から噴出されるガスをケースの外に排出するための、冷却経路13の出口13aとなる開口が形成されている。
図1Aおよび
図1Bに示す例では、モジュールケース14の長手方向一端の側壁14aに出口13aが形成されている。
【0021】
冷却経路13は、出口13aから噴出される排気ガスの温度Tを少なくとも500℃まで下げる。温度Tが500℃を超えると、ガス中に大きな噴出物が存在しなくても発火に至る可能性が上昇するためである。冷却経路13を通過することによって下がる排気ガスの温度は、例えば冷却経路13の長さ(経路長)、経路を構成する部材(モジュールケース14、仕切板15a,15b等)の熱伝導率などによって異なる。一般的に、経路長が長いほど、出口13aにおける排気ガスの温度Tは下がり易い。但し、経路長を長くすると、電池モジュール10が大型化する等の不具合が考えられるため、安全性を十分に考慮した効率の良い経路設計が重要となる。
【0022】
図1Aおよび
図1Bに示す例では、電池11の封口板の上方に位置する空間において、各排気弁12が並ぶモジュールケース14の長手方向に沿って仕切板15a,15bが設けられている。仕切板15a,15bは、排気弁12の列を両側から挟むように互いに平行に配置される。仕切板15aは、排気弁12の列に沿ってモジュールケース14の長手方向一端の側壁14aから長手方向他端の側壁14bにわたって形成されている。なお、冷却経路13の出口13aとなる開口は、側壁14aの短手方向一端部に形成されている。仕切板15bは、排気弁12の列に沿って側壁14aから側壁14bの近傍にわたって形成されている。すなわち、仕切板15bの先端と側壁14bとの間には隙間が存在する。
【0023】
冷却経路13は、仕切板15a,15bによって略U字状に形成されている。冷却経路13は、上流側部分が仕切板15a,15bの間に形成され、出口13aが形成された側壁14aと反対側の側壁14bの近傍で折り返して、下流部分が仕切板15bとモジュールケース14の短手方向一端の側壁14cとの間に形成されている。冷却経路13は、例えば、モジュールケース14の側壁14a,14b,14c、仕切板15a,15bによって区切られ、また経路の下方が各電池11で、上方が図示しないモジュールケース14の天板で塞がれた排気ダクトである。
【0024】
なお、冷却流路は、経路出口からガスが排出されるまでの間にガスを冷却できる経路であればよく、その配置、形状等は特に限定されない。例えば、モジュールケースの内部において、電池群の下方または側方に冷却流路が形成されていてもよい。また、モジュールケースに排気ダクトを取り付けて、当該ダクトを冷却経路としてもよい。
【0025】
冷却経路13は、上述の通り、出口13aにおける排気ガスの温度T(℃)が500℃以下となるように形成される。当該温度Tが350℃未満まで下がるのであれば、排気ガスに含まれる噴出物のサイズを制限するフィルタを冷却経路13に設置しなくてもよいが、フィルタを設置しても構わない。本実施形態では、開口サイズA(mm)が3.5mm以下のフィルタ16が出口13aに設置されており、冷却経路13が下記式1の条件に基づいて形成されている。
式1:T≦350-{Ln(A/3.5)}/0.008
【0026】
本発明者らは、従来提唱されている「可燃性ガスの任意温度における最小着火エネルギーの予測式(W
2=W
1exp{0.008(T
1-T
2)}、ここで、W
1・W
2は温度T
1・T
2における最小着火エネルギー)」を参考に、実験により式1を求めた。式1を求める実験は、格子状の複数の開口により構成されるフィルタ(メッシュ、
図3(a)参照)を冷却経路の出口に設置し、開口サイズ(開口の内接円の直径)を変更しながら繰り返し行った。
【0027】
図2は、冷却経路13の出口13aから放出される固形の噴出物のサイズを制限するフィルタの開口サイズ(開口の内接円の直径)Aと排気ガス温度Tの関係を示す図である。なお、フィルタの開口サイズAは、開口が円の場合は直径(短径)、矩形の場合は内接円の直径、メッシュの場合は目開きサイズとなる。
図2に示される実線は、噴出物を含む排気ガスの発火の閾値を示すものであって、この実線の曲線部分が式1(T=350-{Ln(A/3.5)}/0.008)で表される。フィルタ16の開口サイズA、排気ガスの温度が閾値(実線)を超えると、電池モジュール10の外部で発火が生じる可能性が高くなる。
図2に示すように、発火を防止するためには、出口13aにおける排気ガスの温度が高くなるほど、噴出物のサイズを小さくする必要がある。他方、噴出物のサイズが大きい場合は、冷却経路13を延ばす等して排気ガスの温度を下げる必要がある。
【0028】
冷却経路13は、フィルタ16の開口サイズAと排気ガスの温度Tが、
図2のハッチングを付した範囲に入るように形成される。
図2に示すように、排気ガスの温度が350℃以下であれば、噴出物のサイズを制限するフィルタ(或いは、後述するバッフル板)がなくても発火は起こらない。しかし、排気ガスの温度を常に350℃以下に抑えるためには、例えば非常に長い冷却経路が必要になる等の問題がある。そこで、排気ガスの温度Tを常に350℃以下に抑えるのに必要な経路長の冷却経路が確保できない場合、冷却経路13は、少なくともフィルタ(開口サイズA≦3.5mm)により大きな噴出物を捕捉しつつ、排気ガスの温度Tが500℃以下となるように形成されることが好ましい。
【0029】
図1Aおよび
図1Bに示す例では、モジュールケース14の側壁14a側に配置される電池11と、側壁14b側に配置される電池11とで、排気弁12から出口13aまでの冷却経路13に沿った距離が大きく異なる。冷却経路13に沿って複数の電池11が配置される場合、冷却経路13は、経路に沿った排気弁12から出口13aまでの距離が最も短くなる電池11に基づいて、経路長を設定する必要がある。つまり、最も側壁14b寄りに配置される電池11の排気弁12から噴出した高温のガスが、出口13aにおいて500℃以下となり、式1の条件が満たされるように冷却経路13の長さ等を決定する。
【0030】
フィルタ16は、冷却経路13の途中に設置することもできる。本実施形態では、出口13aの全体を覆うように、モジュールケース14の側壁14aの内面にフィルタ16が設置されている。すなわち、フィルタ16は、出口13aにおいて冷却経路13の内部に配置されている。フィルタ16は、例えば出口13aの開口面積よりも大きく、フィルタ16の端部が出口13aの周縁部に固定される。フィルタ16は、樹脂製であってもよいが、耐熱性、強度等を考慮すると、金属製が好ましい。
【0031】
図3(a)に例示するように、フィルタ16は、複数の四角形状の開口17を有する格子状の部材であってもよい。
図3(a)に示すフィルタ16は、例えば多数の金属線を編み合わせて構成されるメッシュ(金網)である。或いは、
図3(b)に例示するように、フィルタ16は、複数の円形状の開口17が形成された板状の部材であってもよい。
図3(b)に示すフィルタ16は、例えば金属板に複数の貫通孔が形成されたパンチングメタルである。なお、フィルタ16の開口17の形状、配置等は特に限定されない。フィルタ16は、金属、セラミックス、ガラス系、或いは不織布などにより構成される多孔質材料であってもよい。
【0032】
フィルタ16は、上記噴出物を捕捉すると共に、例えば排気ガスの温度を下げ、電池モジュール10内で発火した場合に出口13aから火炎が放出されることを防止する機能を有する。フィルタ16の開口率(開口面積)および厚みは特に限定されない。フィルタ16の形状・仕様(開口率、厚み等)は、通気性、強度、耐熱性等を考慮して決定される。
【0033】
フィルタ16の開口17(内接円α)の直径Aは、3.5mm以下であり、かつ式1の条件を満たすように設定される。なお、
図3(b)に示すように、開口17が真円である場合は、その直径が直径Aになる。開口17(内接円α)の直径Aが式1の条件を満たすフィルタ16を用いることで、高温の排気ガスが電池モジュール10の外部に放出された際の発火が防止される。
【0034】
開口17(内接円α)の直径Aは、例えば0.05mm~3.5mmである。冷却経路13の出口13aにおける排気ガスの温度Tが高くなるほど、直径Aを小さくして出口13aから排出される噴出物のサイズを小さくする必要がある。例えば、冷却経路13の長さを延ばすことが難しく、排気ガスの温度が下がり難い場合は、開口17の小さなフィルタ16を用いる。
【0035】
ところで、フィルタの開口サイズAを設定することは、冷却経路13の出口13aから排出される噴出物のサイズ(直径B)を制限することと等価であると考えられる。電池モジュール10の外部での発火を防止するための条件は、噴出物の直径Bと排気ガスの温度Tとの関係により設定でき、直径Bと温度Tが
図2のハッチングを付した範囲に入るように冷却経路13が形成される。
図2に示される実線は、噴出物を含む排気ガスの発火の閾値を示すものであるので、噴出物のサイズB(直径B)は下記式2で表せる。
式2:B≦3.5e
{0.008(350-T)}
【0036】
式2に基づいて冷却経路13の出口13aから排出される噴出物のサイズBを制限すれば、出口13aにおける排気ガスの温度Tが350℃~500℃である場合に、電池モジュール10の外部での発火が防止される。すなわち、冷却経路13は、少なくとも直径Bが3.5mmを超えるような大きな噴出物を捕捉しつつ、排気ガスの温度Tが500℃以下となるように形成されることになる。
【0037】
なお、実際の噴出物は球状ではないので、噴出物のサイズB(直径B)は噴出物が球状であると仮定したときの直径を意味する。式2の元になる
図2はフィルタの開口サイズに基づいており、噴出物は当然球状に限定されないが、噴出物が有するエネルギー量の観点から噴出物のサイズBにより冷却経路13の構成を設定することに問題はない。
【0038】
図4に例示するように、冷却経路13には、上記噴出物を捕捉するバッフル板18が設置されていてもよい。バッフル板18は、フィルタ16の代わりに設置されてもよく、フィルタ16と共に設置されてもよい。冷却経路13には、噴出物を捕捉するフィルタ16およびバッフル板18の少なくとも一方が設置される。例えば、冷却経路13の途中に複数のバッフル板18が設置され、冷却経路13の出口13aにフィルタ16が設置されてもよい。
【0039】
図4に示す例では、冷却経路13の対向する各側壁からそれぞれ複数のバッフル板18が延出している。各バッフル板18の先端は、例えば冷却経路13の幅方向中央に位置している。各バッフル板18と側壁とがなす角度は、冷却経路13の上流側に対して鋭角であり、一例としては30°~70°である。一方の側壁から延びるバッフル板18と、他方の側壁から延びるバッフル板18とは、冷却経路13に沿って交互に配置され、これにより蛇行した冷却経路13が形成される。この場合、排気ガスが蛇行して冷却経路13を流れる際に、ガス中に含まれる噴出物がバッフル板18によって捕捉される。
【0040】
すなわち、
図4に例示する冷却経路13では、バッフル板18が
図3に示すフィルタ16の役割を果たしている。冷却経路13の経路長、経路断面、およびバッフル板18の設置位置、設置数、形状などにより、バッフル板18を備える冷却経路13はフィルタの開口サイズA(=3.5mm以下)により制限されるような大きな噴出物を捕捉する機能、および経路出口における排気ガスの温度Tを500℃以下とする機能を有する。
【0041】
以上のように、電池モジュール10は、噴出物を捕捉するフィルタ16およびバッフル板18の少なくとも一方が設置された、上記式1等の条件を満たす冷却経路13を備える。電池モジュール10によれば、電池11に異常が発生してモジュールから高温(500℃以下)のガスと共に電極材料等の噴出物が放出された場合であっても、発火の可能性が大きく低減され、モジュールの安全性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0042】
10 電池モジュール、11 電池、12 排気弁、13 冷却経路、13a 出口、14 モジュールケース、14a,14b,14c 側壁、15a,15b 仕切板、16 フィルタ、17 開口、18 バッフル板