(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】空調システム、及び、その制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20230804BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20230804BHJP
F24F 3/16 20210101ALI20230804BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230804BHJP
F24F 110/70 20180101ALN20230804BHJP
F24F 110/64 20180101ALN20230804BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20230804BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F3/14
F24F3/16
F24F110:10
F24F110:70
F24F110:64
F24F110:20
(21)【出願番号】P 2021527584
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022209
(87)【国際公開番号】W WO2020261928
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019122187
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】古門 健
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-055448(JP,A)
【文献】特開2019-011905(JP,A)
【文献】特開2013-134015(JP,A)
【文献】特開2001-056146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F24F 3/14
F24F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムの制御方法であって、
前記空調システムは、
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置とを備え、
前記制御方法は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、前記複数の部屋のそれぞれに
当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第二空気量を前記第一空気量で除算した値が最大となる前記第一の部屋に対して決定された前記第一空気量をWm、当該第一の部屋に対して決定された前記第二空気量をAm、前記複数の部屋のそれぞれに対して決定された前記第一空気量をWk、所定の定数をKとすると、前記第三空気量は、K×Wk×Am/Wmで表される
空調システムの制御方法。
【請求項2】
空調システムの制御方法であって、
前記空調システムは、
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置とを備え、
前記制御方法は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、前記複数の部屋のそれぞれに
当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第一の部屋に対して決定された前記第一空気量をWm、前記第一の部屋に対して決定された前記第二空気量をAm、前記複数の部屋のそれぞれに対して決定された前記第一空気量をWkとすると、前記第三空気量は、Wk×Am/Wmで表される
空調システムの制御方法。
【請求項3】
前記空気質情報は、前記複数の部屋それぞれの二酸化炭素濃度を示し、
前記搬送装置は、前記空調装置によって温度調整された空気であって、前記施設の外から取り入れられた空気を前記複数の部屋のそれぞれに搬送する
請求項1または2に記載の空調システムの制御方法。
【請求項4】
空調システムの制御方法であって、
前記空調システムは、
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置とを備え、
前記制御方法は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計以上である場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計よりも少ない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する
空調システムの制御方法。
【請求項5】
前記第一空気量の合計をWt、前記第二空気量の合計をAt、前記複数の部屋に含まれる1つの部屋に対する前記第一空気量をWkとすると、当該1つの部屋に対する前記第三空気量は、Wk×At/Wtで表される
請求項4に記載の空調システムの制御方法。
【請求項6】
前記空気質情報は、前記複数の部屋それぞれの微粒子濃度を示し、
前記空調システムは、エアフィルタをさらに備え、
前記搬送装置は、前記空調装置によって温度調整された空気であって、前記施設内から取り入れられた空気を前記エアフィルタを介して前記複数の部屋のそれぞれに搬送する
請求項4または5に記載の空調システムの制御方法。
【請求項7】
前記空気質情報は、前記複数の部屋それぞれの湿度を示し、
前記空調システムは、加湿装置をさらに備え、
前記搬送装置は、前記空調装置によって温度調整された空気であって、前記加湿装置によって加湿された前記施設内から取り入れられた空気を前記複数の部屋のそれぞれに搬送する
請求項4または5に記載の空調システムの制御方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空調システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、前記複数の部屋のそれぞれに
当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第二空気量を前記第一空気量で除算した値が最大となる前記第一の部屋に対して決定された前記第一空気量をWm、当該第一の部屋に対して決定された前記第二空気量をAm、前記複数の部屋のそれぞれに対して決定された前記第一空気量をWk、所定の定数をKとすると、前記第三空気量は、K×Wk×Am/Wmで表される
空調システム。
【請求項10】
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、前記複数の部屋のそれぞれに
当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第一の部屋に対して決定された前記第一空気量をWm、前記第一の部屋に対して決定された前記第二空気量をAm、前記複数の部屋のそれぞれに対して決定された前記第一空気量をWkとすると、前記第三空気量は、Wk×Am/Wmで表される
空調システム。
【請求項11】
空調装置と、
前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、
前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、
前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計以上である場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、
前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計よりも少ない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、及び、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1台の空調装置により、複数の部屋を空調する全館空調システムが提案されている。このような全館空調システムとして、特許文献1には、各居室を効率よく空調しうる換気空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の換気空調システムは、温度調整に特化したシステムであり、居室内の二酸化炭素濃度または微粒子濃度などの空気質の調整を行うことはできない。
【0005】
本発明は、温度調整と空気質の調整とを両立することができる空調システム及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る空調システムの制御方法は、空調システムの制御方法であって、前記空調システムは、空調装置と、前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置とを備え、前記制御方法は、前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、(1)前記第一の部屋に対しては、当該第一の部屋に対して決定された前記第二空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、(2)前記複数の部屋に含まれる前記第一の部屋以外の第二の部屋に対しては、当該第二の部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する。
【0007】
本発明の一態様に係る空調システムの制御方法は、空調システムの制御方法であって、前記空調システムは、空調装置と、前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置とを備え、前記制御方法は、前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計以上である場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計よりも少ない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、前記空調システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の一態様に係る空調システムは、空調装置と、前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、前記複数の部屋に前記第一空気量が前記第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、前記複数の部屋に前記第一の部屋が含まれる場合、(1)前記第一の部屋に対しては、当該第一の部屋に対して決定された前記第二空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、(2)前記複数の部屋に含まれる前記第一の部屋以外の第二の部屋に対しては、当該第二の部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する。
【0010】
本発明の一態様に係る空調システムは、空調装置と、前記空調装置によって温度調整された空気を施設内の複数の部屋のそれぞれに搬送する搬送装置と、制御装置を備え、前記制御装置は、前記複数の部屋それぞれの温度を示す温度情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、前記複数の部屋それぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、前記複数の部屋のそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計以上である場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御し、前記第一空気量の合計が前記第二空気量の合計よりも少ない場合、前記複数の部屋のそれぞれに当該部屋に対して決定された前記第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように前記搬送装置を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の空調システム及びその制御方法は、温度調整と空気質の調整とを両立することができる空調システム及びその制御方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る全館空調システムの動作例1のフローチャートである。
【
図4】
図4は、施設外から施設内に取り入れる外気量の決定処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、動作例1における空気の搬送量の決定処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る全館空調システムの動作例2のフローチャートである。
【
図7】
図7は、動作例2における空気の搬送量の決定処理のフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る全館空調システムの動作例3のフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例1に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、変形例3に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0014】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0015】
(実施の形態)
[全館空調システムの構成]
以下、実施の形態に係る全館空調システムの構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
図2は、実施の形態に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、全館空調システム10は、1台の空調装置21を用いて、施設90内の複数の部屋90a~90cの温度調整を行うことができるシステムである。複数の部屋の数は特に限定されない。全館空調システム10は、全館空調装置20と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50と、複数の温度センサ60と、複数の空気質センサ70と、制御装置80とを備える。全館空調装置20、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の温度センサ60、及び、複数の空気質センサ70のそれぞれは、制御装置80と通信する機能を有する。
【0017】
全館空調装置20は、施設90の外から取り入れた空気、または、施設90の中から取り入れた空気を温度調整して複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送することにより、複数の部屋90a~90cの温度を制御する。全館空調装置20は、空調装置21と、エアフィルタ22と、搬送装置23とを備える。
【0018】
空調装置21は、いわゆるエアーコンディショナであり、制御装置80の制御に基づいて、施設90の外から取り入れた空気、または、施設90の中から取り入れた空気の温度を調整する。
【0019】
エアフィルタ22は、全館空調装置内に取り入れられた空気(外気または内気)を濾過する。エアフィルタ22としては、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタなどが例示される。
【0020】
搬送装置23は、制御装置80の制御に基づいて、空調装置21によって温度調整された空気(外気または内気)であってエアフィルタ22を通過した空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。搬送装置23は、複数の搬送ファン23aと、複数のダクト23bと、複数の送風口23cとを備える。搬送装置23は、1つの部屋に対して、搬送ファン23a、ダクト23b、及び、送風口23cを1組備える。
【0021】
外気取入ファン30は、制御装置80の制御に基づいて、施設90の外の空気を施設90内に取り入れて全館空調装置20に搬送する。
【0022】
内気取入ファン40は、制御装置80の制御に基づいて、施設90の内の空気(より詳細には、施設90内の部屋90a~90c以外の空間の空気)を全館空調装置20に搬送する。内気取入ファン40によって全館空調装置20に搬送される空気は、加湿装置50によって湿度が調整されていてもよい。
【0023】
加湿装置50は、施設90の内の空気(より詳細には、施設90内の部屋90a~90c以外の空間の空気)の湿度を上昇させる。
【0024】
温度センサ60は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに1つずつ配置され、当該温度センサ60が配置された部屋の中の温度を計測する。温度センサ60は通信機能を有し、計測された温度を示す温度データを制御装置80に送信することができる。
【0025】
空気質センサ70は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに1つずつ配置され、当該空気質センサ70が配置された部屋の中の空気質を計測する。ここでの空気質は、温度以外の空気質を意味する。空気質センサ70は通信機能を有し、計測された空気質を示す空気質データを制御装置80に送信することができる。
【0026】
空気質センサ70は、例えば、二酸化炭素濃度センサであり、空気質として部屋の中の二酸化炭素濃度を計測し、二酸化炭素濃度の計測データを制御装置80に送信する。空気質センサ70は、PM(Particulate Matter)2.5濃度センサなどの粒子状物質(以下、単に微粒子とも記載される)の濃度を計測する微粒子濃度センサであってもよく、この場合の空気質センサ70は、空気質として部屋の中の微粒子濃度を計測し、微粒子濃度の計測データを制御装置80に送信する。また、空気質センサ70は、湿度センサであってもよく、この場合の空気質センサ70は、空気質として部屋の中の湿度を計測し、湿度の計測データを制御装置80に送信する。
【0027】
制御装置80は、全館空調装置20、外気取入ファン30、内気取入ファン40、及び、加湿装置50を制御する制御装置である。制御装置80は、操作受付部81と、制御部82と、記憶部83と、通信部84とを備える。
【0028】
操作受付部81は、ユーザの操作を受け付けるユーザインターフェース部である。操作受付部81は、例えば、タッチパネルによって実現されるが、タッチパネル以外に、ハードウェアボタンを含んでもよい。なお、図示されないが、制御装置80は、液晶パネルまたは有機EL(Electro Luminescence)パネルなどの表示パネルによって実現される表示部を備え、操作受付部81及び表示部はGUI(Graphical User Interface)を構成してもよい。
【0029】
制御部82は、通信部84に制御信号を送信させることにより、全館空調装置20、外気取入ファン30、内気取入ファン40、及び、加湿装置50を制御する。制御部82は、例えば、マイクロコンピュータによって実現されるが、プロセッサによって実現されてもよい。
【0030】
記憶部83は、制御部82が実行する制御プログラムなどが記憶される記憶装置である。記憶部83は、例えば、半導体メモリなどによって実現される。
【0031】
通信部84は、制御装置80が局所通信ネットワークを介して、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、温度センサ60、及び、空気質センサ70のそれぞれと通信を行うための通信モジュール(通信回路)である。通信部84によって行われる通信は、例えば、無線通信であるが、有線通信であってもよい。通信に用いられる通信規格についても、特に限定されない。
【0032】
[動作例1]
次に、全館空調システム10の動作例1について説明する。
図3は、全館空調システム10の動作例1のフローチャートである。動作例1では、空気質センサ70は、二酸化炭素濃度センサであり、空気質情報として二酸化炭素濃度情報が用いられる。動作例1では、二酸化炭素濃度の低減を目的として、外気取入ファン30を用いた外気の取り入れが行われる。
【0033】
まず、制御装置80の操作受付部81は、複数の部屋90a~90cのそれぞれにおける設定温度(言い換えれば、目標温度)を指示する操作を受け付ける(S11)。設定温度は、記憶部83に記憶される。
【0034】
次に、通信部84は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに設置された温度センサ60から、当該部屋の現在の温度を示す温度データを取得する(S12)。取得された温度データは統合されて複数の部屋90a~90cのそれぞれの現在の温度を示す温度情報として記憶部83に記憶される。
【0035】
次に、制御部82は、温度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第一空気量を決定する(S13)。第一空気量は、部屋が温度に関する要件(具体的には、当該部屋の温度を設定温度に近づけるための要件)を満たすために当該部屋に搬送されるべき空気量である。
【0036】
また、制御部82は、設定温度と取得した温度情報に基づいて、空調装置21に指示する設定温度、及び、風量を決定する。ここで、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第一空気量の合計は、空調装置21が噴き出す風量と等しいか、または、空調装置21が噴き出す風量を上回る値となるように決定される。複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第一空気量の合計が、空調装置21が噴き出す風量を超えている場合、足りない分は気圧差により内気取入れ口を通じて全館空調装置20内に取り入れられ、搬送装置23によって複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送される。
【0037】
制御部82は、具体的には、複数の部屋90a~90cのそれぞれについて、当該部屋における設定温度と現在の温度との差、及び、当該部屋の大きさに基づいて、当該部屋に対する第一空気量を決定する。第一空気量は、部屋の大きさが同一であれば、設定温度と現在の温度との差が大きい部屋ほど多くなる。また、第一空気量は、設定温度と現在の温度との差が等しければ、大きい部屋ほど多くなる。第一空気量の決定には、例えば、既存の全館空調システムで用いられるアルゴリズムなどが用いられる。なお、複数の部屋90a~90cの大きさを示す情報は、あらかじめ記憶部83に記憶される。
【0038】
次に、通信部84は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに設置された空気質センサ70(動作例1では、二酸化炭素濃度センサ)から、当該部屋の現在の二酸化炭素濃度を示す計測データを取得する(S14)。取得された計測データは統合されて複数の部屋90a~90cのそれぞれの現在の二酸化炭素濃度を示す二酸化炭素濃度情報として記憶部83に記憶される。
【0039】
次に、制御部82は、二酸化炭素濃度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第二空気量を決定する(S15)。第二空気量は、部屋が二酸化炭素濃度に関する要件(具体的には、例えば、当該部屋の二酸化炭素濃度を規定濃度未満に低下させるための要件)を満たすために当該部屋に搬送されるべき空気量である。第二空気量は、二酸化炭素濃度を規定濃度未満に低下させるために部屋に取り入れる必要がある外気の量(換気量)ともいえる。
【0040】
制御部82は、具体的には、複数の部屋90a~90cのそれぞれについて、当該部屋における二酸化炭素濃度、及び、当該部屋の大きさに基づいて、当該部屋に対する第二空気量を決定する。第二空気量は、部屋の大きさが同一であれば、二酸化炭素濃度が大きい部屋ほど多くなる。また、第二空気量は、二酸化炭素濃度が等しければ、大きい部屋ほど多くなる。
【0041】
次に、制御部82は、施設90外から施設90内に取り入れる外気量の決定処理を行う(S16)。
図4は、施設90外から施設90内に取り入れる外気量の決定処理のフローチャートである。制御部82は、複数の部屋90a~90cのそれぞれの第二空気量を合計し(S16a)、合計した第二空気量と法定で定められた必要換気量とを比較する(S16b)。制御部82は、合計した第二空気量が必要換気量よりも大きい場合には、合計した第二空気量を施設90外から施設90内に取り入れる外気量として決定する(S16c)。制御部82は、合計した第二空気量が必要換気量以下である場合には、必要換気量を施設90外から施設90内に取り入れる外気量として決定する(S16d)。
【0042】
次に、制御部82は、複数の部屋90a~90cのそれぞれへの空気の搬送量の決定処理を行う(S17)。この決定処理の詳細については後述する。
【0043】
そして、制御部82は、ステップS16で決定された外気量に基づいて、外気取入ファン30を制御する(S18)。制御部82は、具体的には、ステップS16で決定された量の空気が施設90の外から施設90の中に取り入れられるように外気取入ファン30を制御する(S18)。
【0044】
また、制御部82は、ステップS17で決定された空気の搬送量に基づいて、複数の搬送ファン23a(搬送装置23)を制御する(S19)。制御部82は、ステップS17で決定された量の空気が複数の部屋90a~90cのそれぞれへ搬送されるように、通信部84に複数の搬送ファン23aのそれぞれへ制御信号を送信させる。
【0045】
[動作例1における空気の搬送量の決定処理]
ステップS17の空気の搬送量の決定処理の詳細について説明する。
図5は、動作例1における空気の搬送量の決定処理のフローチャートである。
【0046】
一般的な全館空調システムは、複数の部屋90a~90cの温度を設定温度に近づけるために、複数の部屋90a~90cのそれぞれに、当該部屋に対して決定された第一空気量(つまり、上記ステップS13で決定された第一空気量)の空気が搬送されるように搬送装置23を制御する。一般的な全館空調システムでは、温度以外の空気質の調整は図られない。
【0047】
これに対し、全館空調システム10では、以下のような方法で複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送される空気量を決定することで、温度調整と二酸化炭素濃度の低減(空気質の改善)との両立を図る。
【0048】
まず、制御部82は、複数の部屋90a~90cのそれぞれにおける第一空気量に対する第二空気量の割合を算出する(S17a)。n個の部屋のそれぞれを部屋Rk(kは自然数。k=1・・n)で表し、部屋Rkにおける第一空気量をWk、部屋Rkにおける第二空気量をAkとすると、第一空気量Wkに対する第二空気量Akの割合は、Ak/Wkで表される。
【0049】
次に、制御部82は、Ak/Wkの最大値を特定し、特定した最大値であるMAX(Ak/Wk)に所定の係数K(K:実数)を乗算した値が1よりも大きくなるか否かを判定する(S17b)。以下、説明の簡略化のためにK=1であるとして説明が行われる。
【0050】
MAX(Ak/Wk)×Kが1以下であると判定される場合(S17bでNo)は、言い換えれば、複数の部屋90a~90cに第一空気量Wkが第二空気量Akよりも少ない部屋が含まれない場合である。つまり、複数の部屋90a~90cの全てにおいて第一空気量Wkが第二空気量Akよりも多い場合である。
【0051】
この場合、一般的な全館空調システムと同様に第一空気量Wkの空気が部屋Rkに搬送されれば、おのずと第二空気量Akの空気が部屋Rkに搬送されることになる。よって、結果として、部屋Rkにおける二酸化炭素濃度は規定濃度未満に低下すると考えられる。そこで、制御部82は、第一空気量Wkを部屋Rkへの空気の搬送量として決定する(S17c)。
【0052】
一方、MAX(Ak/Wk)×Kが1よりも大きいと判定される場合(S17bでYes)は、言い換えれば、複数の部屋90a~90cに第一空気量Wkが第二空気量Akよりも少ない部屋Rkが含まれる場合である。このような部屋Rkでは、第一空気量Wkの空気が搬送されるだけでは二酸化炭素濃度を低下させることに関しては不十分であると考えられる。そこで、この場合、制御部82は、MAX(Ak/Wk)×K×Wkを部屋Rkへの空気の搬送量として決定する(S17d)。
【0053】
つまり、Ak/Wkが最大となる第一の部屋(この場合の第一の部屋は、第一空気量Wkが第二空気量Akよりも少ない部屋でもある)への空気の搬送量は、第一の部屋に対して決定された第二空気量Ak(>第一空気量Wk)となる。第一の部屋以外の第二の部屋への空気の搬送量は、当該第二の部屋に対して決定された第一空気量Wkを補正した第三空気量(>第一空気量Wk)となる。Ak/Wkが最大となる第一の部屋における第一空気量を第一空気量Wm、Ak/Wkが最大となる第一の部屋における第二空気量をAmとすると、第二の部屋Rkへの空気の搬送量である第三空気量は、K×Wk×Am/Wmで表される。
【0054】
このように、複数の部屋90a~90cに第一空気量Wkが第二空気量Akよりも少ない第一の部屋が含まれる場合には、二酸化炭素濃度を低下させるために、第一の部屋に第二空気量Amの空気が搬送される。第一の部屋以外の第二の部屋には、第二の部屋に対して決定された第一空気量に応じて、第一の部屋の第二空気量Amが比例配分された第三空気量の空気が搬送される。つまり、全館空調システム10は、複数の部屋90a~90c間の温度調整のバランスについては一般的な全館空調システムと同じレベルを維持しつつ、複数の部屋90a~90cそれぞれへ搬送される空気量を一般的な全館空調システムよりも増加させて二酸化炭素濃度の低下を図る。
【0055】
以上説明したような空気の搬送量の決定処理によれば、全館空調システム10は、温度調整と二酸化炭素濃度の低減とを両立させることができる。
【0056】
[動作例2]
次に、全館空調システム10の動作例2について説明する。
図6は、全館空調システム10の動作例2のフローチャートである。動作例2では、空気質センサ70は、微粒子濃度センサであり、空気質情報として微粒子濃度情報が用いられる。全館空調システム10は、内気を循環させることで当該内気にエアフィルタ22を通過させ、微粒子濃度を低下させることができる。
【0057】
ステップS11~ステップS13は、動作例1と同様である。ステップS13の次に、通信部84は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに設置された空気質センサ70(動作例2では、微粒子濃度センサ)から、当該部屋の現在の微粒子濃度を示す計測データを取得する(S24)。取得された計測データは統合されて複数の部屋90a~90cのそれぞれの現在の微粒子濃度を示す微粒子濃度情報として記憶部83に記憶される。
【0058】
次に、制御部82は、微粒子濃度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第二空気量を決定する(S25)。第二空気量は、部屋が微粒子濃度に関する要件(具体的には、例えば、当該部屋の微粒子濃度を規定濃度未満に低下させるための要件)を満たすために当該部屋に搬送されるべき、エアフィルタ22を通過して微粒子が除去された空気量である。第二空気量は、微粒子濃度を規定濃度未満に低下させるために部屋において入れ替える必要がある空気量(換気量)ともいえる。
【0059】
制御部82は、具体的には、複数の部屋90a~90cのそれぞれについて、当該部屋における微粒子濃度、及び、当該部屋の大きさに基づいて、当該部屋に対する第二空気量を決定する。例えば、微粒子濃度が規定濃度未満である状態では、部屋の中の空気が0.5回/h入れ替わるように第二空気量が決定される。微粒子濃度が規定濃度以上である場合には、微粒子濃度が高いほど、空気の入れ替えの頻度が多くなる(1回/h、・・3回/hとなる)ように、第二空気量が決定される。なお、このような第二空気量の決定方法は一例である。
【0060】
次に、制御部82は、複数の部屋90a~90cのそれぞれへの空気の搬送量の決定処理を行う(S26)。この決定処理の詳細については後述する。
【0061】
そして、制御部82は、ステップS26で決定された空気の搬送量に基づいて、複数の搬送ファン23a(搬送装置23)を制御する(S27)。制御部82は、具体的には、ステップS26で決定された量の空気が複数の部屋90a~90cのそれぞれへ搬送されるように、通信部84に複数の搬送ファン23aのそれぞれへ制御信号を送信させる。制御部82は、必要に応じて、内気取入ファン40を制御してもよい。
【0062】
[動作例2における空気の搬送量の決定処理]
ステップS26の空気の搬送量の決定処理の詳細について説明する。
図7は、動作例2における空気の搬送量の決定処理のフローチャートである。
【0063】
まず、制御部82は、複数の部屋90a~90cの第一空気量を合計し(S26a)、複数の部屋90a~90cの第二空気量を合計する(S26b)。以下、部屋Rkにおける第一空気量をWk、部屋Rkにおける第二空気量をAk、第一空気量Wkの合計をWt、第二空気量Akの合計をAtとする。
【0064】
次に、制御部82は、第一空気量の合計Wkに対する第二空気量Akの合計の割合(つまり、At/Wt)が1よりも大きくなるか否かを判定する(S26c)。
【0065】
At/Wtが1以下であると判定される場合(S26cでNo)、つまり、第一空気量Wkの合計Wtが第二空気量Akの合計At以上である場合、温度に基づいて決定された第一空気量Wkの空気量が部屋Rkに搬送されれば、内気が循環されてエアフィルタ22を通過する空気量が増え、微粒子濃度は低下すると考えられる。そこで、制御部82は、第一空気量Wkを部屋Rkへの空気の搬送量として決定する(S26d)。
【0066】
一方、At/Wtが1よりも大きいと判定される場合(S26cでYes)、つまり、第一空気量の合計Wtが第二空気量の合計At未満である場合、温度に基づいて決定された第一空気量Wkの空気量が部屋Rkに搬送されても、微粒子濃度を低下させるのに十分ではないと考えられる。そこで、制御部82は、第一空気量WkにAt/Wt(>1)を乗算した第三空気量を部屋Rkへの空気の搬送量として決定する(S26e)。つまり、全館空調システム10は、複数の部屋90a~90c間の温度調整のバランスについては一般的な全館空調システムと同じレベルを維持しつつ、複数の部屋90a~90cそれぞれへ搬送される空気量を一般的な全館空調システムよりも増加させて微粒子濃度の低下を図る。
【0067】
以上説明したような空気の搬送量の決定処理によれば、全館空調システム10は、温度調整と微粒子濃度の低減とを両立させることができる。
【0068】
[動作例3]
次に、全館空調システム10の動作例3について説明する。
図8は、全館空調システム10の動作例3のフローチャートである。動作例3では、空気質センサ70は、湿度センサであり、空気質情報として湿度情報が用いられる。動作例3は、施設90内が乾燥しており、加湿が必要な場合の動作である。全館空調システム10は、施設90内に加湿装置50によって湿度が十分供給されている状態で内気を循環させることで、複数の部屋90a~90cの乾燥を抑制する。
【0069】
ステップS11~ステップS13は、動作例1及び動作例2と同様である。ステップS13の次に、通信部84は、複数の部屋90a~90cのそれぞれに設置された空気質センサ70(動作例3では、湿度センサ)から、当該部屋の現在の湿度を示す湿度データを取得する(S34)。取得された湿度データは統合されて複数の部屋90a~90cのそれぞれの現在の湿度を示す湿度情報として記憶部83に記憶される。
【0070】
次に、制御部82は、湿度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第二空気量を決定する(S35)。第二空気量は、部屋が湿度に関する要件(具体的には、例えば、当該部屋の湿度を目標湿度以上にするための要件)を満たすために当該部屋に搬送されるべき空気量である。第二空気量は、湿度を目標湿度以上にするために部屋において入れ替える必要がある空気量(換気量)ともいえる。
【0071】
制御部82は、具体的には、複数の部屋90a~90cのそれぞれについて、当該部屋における湿度、及び、当該部屋の大きさに基づいて、当該部屋に対する第二空気量を決定する。例えば、湿度が目標湿度以上である状態では、部屋の中の空気が0.5回/h入れ替わるように第二空気量が決定される。湿度が目標湿度未満である場合には、湿度が高いほど、空気の入れ替えの頻度が多くなる(1回/h、・・3回/hとなる)ように、第二空気量が決定される。なお、このような第二空気量の決定方法は一例である。
【0072】
次に、制御部82は、複数の部屋90a~90cのそれぞれへの空気の搬送量の決定処理を行う(S26)。この決定処理については動作例2と同様である。
【0073】
そして、制御部82は、加湿装置50を作動させ(S37)、ステップS26で決定された空気の搬送量に基づいて、複数の搬送ファン23a(搬送装置23)を制御する(S38)。制御部82は、具体的には、ステップS26で決定された量の空気が複数の部屋90a~90cのそれぞれへ搬送されるように、通信部84に複数の搬送ファン23aのそれぞれへ制御信号を送信させる。制御部82は、必要に応じて、内気取入ファン40を制御してもよい。
【0074】
このような全館空調システム10は、温度調整と加湿とを両立させることができる。
【0075】
[変形例1]
以下、変形例1に係る全館空調システムの構成について説明する。
図9は、変形例1に係る全館空調システムの概略構成を示す図である。
【0076】
図9に示されるように、全館空調システム10aは、全館空調装置20に代えて全館空調装置20aを備える。全館空調装置20aは、空調装置21と、エアフィルタ22と、搬送装置24とを備える。
【0077】
搬送装置24は、制御装置80の制御に基づいて、空調装置21によって温度調整された空気(外気または内気)であってエアフィルタ22を通過した空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。搬送装置24は、搬送ファン24aと、分岐チャンバ24bと、複数のVAV(Variable Air Volume)ダンパ24cと、複数の送風口24dとを備える。搬送装置24は、1つの部屋に対して、VAVダンパ24c、及び、送風口24dを1組備える。
【0078】
搬送装置24において、分岐チャンバ24bは、複数の部屋90a~90cのそれぞれに向けて分岐された複数の空気の搬送路を含む。VAVダンパ24cは、分岐チャンバ24bに含まれる複数の空気の搬送路のそれぞれに設けられる。
【0079】
このような全館空調システム10aは、全館空調システム10と同様に、上記の動作例1~動作例3の動作を行うことができる。具体的には、全館空調システム10aの制御装置80は、上記動作例1のステップS19、動作例2のステップS27、及び、動作例3のステップS38において、搬送ファン24aと、複数のVAVダンパ24cを制御することで、決定された量の空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれへ搬送することができる。
【0080】
[変形例2]
全館空調システム10は、クライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
図10は、このような変形例2に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【0081】
図10に示されるように、全館空調システム10bは、空調装置21及び搬送装置23(つまり、全館空調装置20)と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50と、複数の温度センサ60と、複数の空気質センサ70と、制御装置80と、ルータ100と、サーバ装置110とを備える。
【0082】
全館空調システム10bにおいて、空調装置21、搬送装置23、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の温度センサ60、複数の空気質センサ70、及び、制御装置80のそれぞれは、ルータ100を介してインターネットなどの広域通信ネットワーク120に接続可能である。空調装置21、搬送装置23、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の温度センサ60、複数の空気質センサ70、及び、制御装置80のそれぞれは、具体的には、ルータ100を介してサーバ装置110と通信が可能である。サーバ装置110は、施設90外に設置されるクラウドサーバである。
【0083】
このような全館空調システム10bにおいては、動作例1~3において制御装置80が行うと説明された処理の一部または全部をサーバ装置110が実行することができる。なお、全館空調システム10bは、全館空調システム10にサーバ装置110が追加された構成であるが、本発明は、変形例1に係る全館空調システム10aにサーバ装置110が追加された構成のクライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
【0084】
[変形例3]
全館空調システム10は、一般的な全館空調システムに装置を追加することを想定したクライアントサーバシステムとして実現されてもよい。
図11は、このような変形例3に係る全館空調システムの機能構成を示すブロック図である。
【0085】
図11に示されるように、全館空調システム10cは、空調装置21及び搬送装置23(つまり、全館空調装置20)と、外気取入ファン30と、内気取入ファン40と、加湿装置50と、複数の温度センサ60と、複数の空気質センサ70と、制御装置80と、ルータ100と、サーバ装置110とを備える。
【0086】
全館空調システム10cにおいて、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の空気質センサ70、及び、制御装置80のそれぞれは、ルータ100を介してインターネットなどの広域通信ネットワーク120に接続可能である。外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、複数の空気質センサ70、及び、制御装置80のそれぞれは、具体的には、ルータ100を介してサーバ装置110と通信が可能である。サーバ装置110は、施設90外に設置されるクラウドサーバである。
【0087】
一方、空調装置21、搬送装置23、及び、複数の温度センサ60については、全館空調システム10と同様に、局所通信ネットワークを介して制御装置80に接続される。空調装置21、搬送装置23、及び、複数の温度センサ60が局所通信ネットワークを介して制御装置80に接続される構成は、一般的な(既存の)全館空調システムにおいてもよくみられる構成である。なお、全館空調システム10cにおいて、外気取入ファン30、内気取入ファン40、加湿装置50、及び、複数の空気質センサ70の一部が、制御装置80に局所通信ネットワークを介して接続されていてもよい。
【0088】
このような全館空調システム10cは、既存の全館空調システムに、後から空気質センサ70等を追加することで容易に実現可能である。つまり、全館空調システム10cは、既存の全館空調システムの機能拡張を容易に実現することができる。また、全館空調システム10cにおいては、動作例1~3において制御装置80が行うと説明された処理の一部または全部をサーバ装置110が実行することができる。なお、本発明は、変形例1に係る全館空調システム10aを、全館空調システム10cと同様に変形したシステムとして実現されてもよい。
【0089】
[効果等]
以上説明したように、全館空調システム10は、空調装置21と、空調装置によって温度調整された空気を施設90内の複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する搬送装置23と、制御装置80とを備える。動作例1において、制御装置80(あるいは、全館空調システム10の制御方法)は、複数の部屋90a~90cそれぞれの温度を示す温度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、複数の部屋90a~90cそれぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、複数の部屋90a~90cに第一空気量が第二空気量よりも少ない第一の部屋が含まれない場合、複数の部屋90a~90cのそれぞれに当該部屋に対して決定された第一空気量の空気が搬送されるように搬送装置23を制御し、複数の部屋90a~90cに第一の部屋が含まれる場合、(1)第一の部屋に対しては、当該第一の部屋に対して決定された第二空気量の空気が搬送されるように搬送装置23を制御し、(2)複数の部屋90a~90cに含まれる第一の部屋以外の第二の部屋に対しては、当該第二の部屋に対して決定された第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように搬送装置23を制御する。
【0090】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、温度調整と空気質の調整とを両立させることができる。
【0091】
また、例えば、第一の部屋に対して決定された第一空気量をWm、第一の部屋に対して決定された第二空気量をAm、第二の部屋に対して決定された第一空気量をWkとすると、第三空気量は、Wk×Am/Wmで表される。
【0092】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、複数の部屋90a~90c間の温度調整のバランスについては一般的な全館空調システムと同じレベルを維持しつつ、複数の部屋90a~90cそれぞれへ搬送される空気量を一般的な全館空調システムよりも増加させて空気質を調整することができる。
【0093】
また、例えば、空気質情報は、複数の部屋それぞれの二酸化炭素濃度を示し、搬送装置23は、空調装置21によって温度調整された空気であって、施設90の外から取り入れられた空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。
【0094】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、温度調整と二酸化炭素濃度の調整とを両立させることができる。
【0095】
また、動作例2または動作例3において制御装置80(あるいは、全館空調システム10の制御方法)は、複数の部屋90a~90cそれぞれの温度を示す温度情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第一空気量であって当該部屋が温度に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第一空気量を決定し、複数の部屋90a~90cそれぞれの空気質を示す空気質情報に基づいて、複数の部屋90a~90cのそれぞれに対する第二空気量であって当該部屋が空気質に関する要件を満たすために当該部屋に搬送されるべき第二空気量を決定し、第一空気量の合計が第二空気量の合計以上である場合、複数の部屋90a~90cのそれぞれに当該部屋に対して決定された第一空気量の空気が搬送されるように搬送装置23を制御し、第一空気量の合計が第二空気量の合計よりも少ない場合、複数の部屋90a~90cのそれぞれに当該部屋に対して決定された第一空気量を補正した第三空気量の空気が搬送されるように搬送装置23を制御する。
【0096】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、温度調整と空気質の調整とを両立させることができる。
【0097】
また、例えば、第一空気量の合計をWt、第二空気量の合計をAt、複数の部屋90a~90cに含まれる1つの部屋に対する第一空気量をWkとすると、当該1つの部屋に対する第三空気量は、Wk×At/Wtで表される。
【0098】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、複数の部屋90a~90c間の温度調整のバランスについては一般的な全館空調システムと同じレベルを維持しつつ、複数の部屋90a~90cそれぞれへ搬送される空気量を一般的な全館空調システムよりも増加させて空気質を調整することができる。
【0099】
また、動作例2では、空気質情報は、複数の部屋90a~90cそれぞれの微粒子濃度を示し、全館空調システム10は、エアフィルタ22をさらに備える。搬送装置23は、空調装置21によって温度調整された空気であって、施設90内から取り入れられた空気をエアフィルタ22を介して複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。
【0100】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、温度調整と微粒子濃度の調整とを両立させることができる。
【0101】
また、動作例3では、空気質情報は、複数の部屋90a~90cそれぞれの湿度を示し、全館空調システム10は、加湿装置50をさらに備える。搬送装置23は、空調装置21によって温度調整された空気であって、加湿装置50によって加湿された施設90内から取り入れられた空気を複数の部屋90a~90cのそれぞれに搬送する。
【0102】
このような全館空調システム10及びその制御方法は、温度調整と湿度の調整(特に加湿)とを両立させることができる。
【0103】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0104】
例えば、動作例1における空気の搬送量の決定処理は、微粒子濃度または湿度の調整を図る際に用いられてもよいし、その他のガス濃度の調整を図る際に用いられてもよい。その他のガス濃度は、例えば、TVOC(Total Volatile Organic Compounds、総揮発性有機化合物)の濃度、NOX(窒素酸化物)の濃度、SOX(硫黄酸化物)の濃度、及び、O3(オゾン)の濃度などである。同様に、動作例2における空気の搬送量の決定処理は、二酸化炭素濃度の調整を図る際に用いられてもよいし、その他のガス濃度の調整を図る際に用いられてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態において、特定の処理部が実行する処理を別の処理部が実行してもよい。
【0106】
また、上記実施の形態における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。装置間では、無線通信が行われてもよいし、有線通信が行われてもよい。また、装置間では、無線通信及び有線通信が組み合わされてもよい。また、上記実施の形態において2つの装置が通信を行う場合、2つの装置間には図示されない中継装置が介在してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態のフローチャートで説明された処理の順序は、一例である。複数の処理の順序は変更されてもよいし、複数の処理は並行して実行されてもよい。
【0108】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0109】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(または集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0110】
また、本発明の全般的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0111】
例えば、本発明は、コンピュータによって実行される全館空調システムの制御方法として実現されてもよいし、このような制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、本発明は、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、全館空調システムは、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。全館空調システムは、例えば、制御装置に相当する単一の装置として実現されてもよいし、サーバ装置に相当する単一の装置として実現されてもよい。全館空調システムが複数の装置によって実現される場合、全館空調システムが備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。
【0113】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
10、10a、10b、10c 全館空調システム
21 空調装置
22 エアフィルタ
23、24 搬送装置
50 加湿装置
80 制御装置
90 施設
90a、90b、90c 部屋