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特許7325081生体情報収集センサおよび生体情報収集装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】生体情報収集センサおよび生体情報収集装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20230804BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20230804BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B1/00 550
A61B1/00 600
A61B1/018 515
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019038777
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020141745
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」「スマート治療室における患者情報統合モニター上にデータ表示可能な、外科医の指先や鏡視下手術鉗子ならびにロボットアーム先端に装着可能な小型組織オキシメーター温度センサーの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光
(72)【発明者】
【氏名】海野 直樹
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/017501(WO,A1)
【文献】特開2016-214731(JP,A)
【文献】国立研究開発法人 日本医療研究開発機構,平成29年度「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業『術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発』」の採択課題について,[online],2017年06月19日,インターネット<URL: https://www.amed.go.jp/koubo/02/01/0201C_00124.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/1455
A61B 1/00
A61B 1/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に接触させて生体情報を収集する生体情報収集センサであって、
赤外線あるいは近赤外線を発光する発光部と、
前記測定対象を透過した光を受光する受光部と、
内部に前記発光部及び前記受光部を収容し、一つの方向に延びる筐体部と、
を少なくとも備え、
前記筐体部は、
前記発光部及び前記受光部が並んで配置され、前記生体情報を収集する際に前記測定対象の側を向く装着面部と、
前記一つの方向に突出して延びるアダプタ部と、
を備え、
前記アダプタ部は、先側の少なくとも一部が体内に挿入されて使用される棒状部材の前記先側の先端部が引き抜き可能に挿入される溝部を備え、
使用時において前記アダプタ部は、前記溝部に前記先端部が挿入されて前記棒状部材の前記先側に保持された状態で、患者の内部に配置される、
生体情報収集センサ。
【請求項2】
前記溝部には、前記棒状部材が挿入される方向と交わる方向に向かって突出し、前記棒状部材の前記先端部と着脱可能に係合する突出部が設けられている請求項1に記載の生体情報収集センサ。
【請求項3】
前記アダプタ部は、
互いに向かい合い、所定の間隔を空けて並んで前記一つの方向に向かって突出して延びる一組の板部を有し、
前記溝部は、前記一組の板部が向かい合う側の面である内側面に設けられている請求項1または請求項2に記載の生体情報収集センサ。
【請求項4】
前記アダプタ部における前記一つの方向と交わる方向の長さは、
前記筐体部における前記一つの方向と交わる方向の長さを超えない長さとされている請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の生体情報収集センサ。
【請求項5】
前記筐体部の前記装着面部とは反対側の少なくとも一部には、前記生体情報収集センサの使用者が、前記生体情報収集センサを容易に識別可能な識別部が設けられている請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の生体情報収集センサ。
【請求項6】
前記識別部は、前記測定対象が有する少なくとも一つの色彩とは異なる色彩を有する部分である請求項5に記載の生体情報収集センサ。
【請求項7】
前記測定対象の温度を測定する温度計測部と、
少なくとも前記発光部を制御して前記生体情報の収集を制御する計測制御部を更に備え、
前記計測制御部は、
前記温度計測部が測定した前記測定対象の温度が予め定められた測定停止温度を下回る場合には、前記発光部を消灯する制御を行う請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の生体情報収集センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の生体情報収集センサと、
少なくとも一つの前記生体情報収集センサが収集した生体情報を表示する表示装置と、
を備えた生体情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の収集に用いるのに好適な生体情報収集センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線や近赤外線を、照射端面から生体の組織に照射すると共に、生体の組織を透過した透過光を受光端面にて受光して、生体に関する情報を収集する代謝情報測定用プローブが知られている。このプローブには、測定を行う使用者が、当該プローブを保持するための保持部が設けられている。使用者は、この保持部を用いてプローブを保持し、照射端面及び受光端面を測定対象に接触させて生体に関する情報の収集を行う(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-234737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載された技術では、使用者が自身の手でプローブを直接保持して生体に関する情報の収集を行う必要があるため、測定対象となる組織が使用者の手が入らない様な狭い空間にある場合や、使用者の手の届かない様な離れた位置にある場合には、生体に関する情報の収集を行うことが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、測定対象となる組織が使用者の手が入らない様な狭い空間や、離れた位置にある場合でも生体に関する情報の収集が可能な生体情報収集センサ、及び当該生体情報収集センサを用いた生体情報収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の生体情報収集センサは、測定対象に接触させて生体情報を収集する生体情報収集センサであって、赤外線あるいは近赤外線を発光する発光部と、前記測定対象を透過した光を受光する受光部と、内部に前記発光部及び前記受光部を収容し、一つの方向に延びる筐体部とを少なくとも備え、前記筐体部は、前記発光部及び前記受光部が並んで配置され、前記生体情報を収集する際に前記測定対象の側を向く装着面部と、前記筐体部を保持する棒状部材の先端部が引き抜きが可能な状態で挿入される溝部を備え、前記一つの方向に突出して延びるアダプタ部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記発明においては、前記溝部には、前記棒状部材が挿入される方向と交わる方向に向かって突出し、前記棒状部材の先端と着脱可能に係合する突出部が設けられていることが好ましい。
【0008】
上記発明においては、前記アダプタ部は、互いに向かい合い、所定の間隔を空けて並んで前記一つの方向に向かって突出して延びる一組の板部を有し、前記溝部は、前記一組の板部が向かい合う側の面である内側面に設けられていることが好ましい。
【0009】
上記発明においては、前記アダプタ部における前記一つの方向と交わる方向の長さは、前記筐体部における前記一つの方向と交わる方向の長さを超えない長さとされていることが好ましい。
【0010】
上記発明においては、前記筐体部の前記装着面部とは反対側の少なくとも一部には、前記生体情報収集センサの使用者が、前記生体情報収集センサを容易に識別可能な識別部が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記発明においては、前記識別部は、前記測定対象が有する少なくとも一つの色彩とは異なる色彩を有することが好ましい。
【0012】
上記発明においては、前記測定対象の温度を測定する温度計測部と、少なくとも前記発光部を制御して前記生体情報の収集を制御する計測制御部とを更に備え、前記計測制御部は、前記温度計測部が測定した前記測定対象の温度が予め定められた測定停止温度を下回る場合には、前記発光部を消灯する制御を行うことが好ましい。
【0013】
本発明の生体情報収集装置は、上記いずれかの生体情報収集センサと、少なくとも一つの前記生体情報収集センサが収集した生体情報を表示する表示装置とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生体情報収集センサによれば、測定対象となる組織が使用者の手が入らない様な狭い空間や、離れた位置にある場合でも生体情報の収集が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集装置の生体情報収集センサを説明する図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集装置の表示装置を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る生体情報収集装置の生体情報収集センサを説明する図である。
図3】本発明による生体情報収集装置の一実施形態を説明するブロック図である。
図4図4(a)は、本発明による生体情報収集センサの一実施形態を説明する側面図である。図4(b)は、本発明による生体情報収集センサの一実施形態を説明する前面図である。
図5図5(a)は、本発明による生体情報収集センサの一実施形態を説明する下面図である。図5(b)は、本発明による生体情報収集センサの一実施形態を説明する後面図である。
図6図6(a)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集センサと、生体情報収集センサを保持するロッドとが係合される様子を説明する図である。図6(b)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集センサと、生体情報収集センサを保持するロッドとが係合された状態を説明する図である。
図7図7(a)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集センサが、使用者によって保持されている様子を説明する図である。図7(b)は、本発明の一実施形態に係る生体情報収集センサの使用状態を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る生体情報収集装置の表示装置による表示の一例を説明する図である。
図9図9(a)は、有窓鉗子を説明する図である。図9(b)は、有窓鉗子を説明する図である。
図10図10(a)は、本発明の生体情報収集センサの変形例を説明する側面図である。図10(b)は、本発明の生体情報収集センサの変形例を説明する後面図である。
図11図11(a)は、本発明の生体情報収集センサの他の変形例を説明する後面図である。図11(b)は、本発明の生体情報収集センサの他の変形例を説明する後面図である。
図12図12(a)は、本発明の生体情報収集センサの他の実施形態を説明する図である。図12(b)は、本発明の生体情報収集センサの他の実施形態を説明する下面図である。
図13】本発明による生体情報収集装置の他の実施形態を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る生体情報収集装置ついて図1から図11を主に参照しながら説明する。本実施形態に係る生体情報収集装置100は、生体情報収集センサ1と、表示装置50から主に構成されている。
【0017】
本実施形態に係る生体情報収集装置100は、内視鏡手術の際に患者の体腔内にある組織の酸素飽和度に関する情報を収集して表示する医療用の生体情報収集装置である。具体的には、生体情報収集センサ1が、内視鏡手術の際に用いられる手動の鉗子や、手術用ロボットの鉗子の先端に取り付けられて、体腔内の治療や診断が行われる部位などに配置され、当該部分の組織の酸素飽和度に関する情報を収集して表示する医療用の生体情報収集装置である。なお、以降において生体情報収集装置100が収集する組織の酸素飽和度などの生体に関する情報を「生体情報」とも記載する。
【0018】
1.構成の説明
生体情報収集センサ1は、主に内視鏡手術に用いられる内視鏡手術用鉗子(以降において「鉗子」とも記載する。)などの棒状のロッド部の先端に取り付け可能な、患者の組織の生体情報を収集する小型のセンサ装置である。生体情報収集センサ1が収集した生体情報は、生体情報データとして送信されて、表示装置50に表示される。なお使用者は、生体情報収集センサ1を鉗子のロッド部に取り付けずに、自身で直接保持して使用することもできる。
【0019】
以降の説明において前後、左右、上下の方向は、特に断りの無い限り図中に示した方向とする。また、生体情報収集装置100を構成する生体情報収集センサ1を、生体情報が収集可能な状態で患者の測定対象部位に接触させて配置することを、「装着する」とも記載する。更に、生体情報収集センサ1が患者に装着された際、測定対象部位と接触する側の生体情報収集センサ1の面を「装着面」とも記載する。また、生体情報収集センサ1が生体情報に関する情報を収集することを、「測定」あるいは「計測」とも記載する。
【0020】
生体情報収集センサ1は、主に発光部2、受光部3,4、制御部6、バッテリ7、及び発光制御部8(以降においてこれらを総称して「電子部品」とも記載する。)を主に備えている。これらの電子部品は、略円筒形状の筐体部10の内部に収容されている。
【0021】
発光部2は、赤外線あるいは近赤外線の光を発光し、発光した光を測定対象部位の組織に照射する部分である。発光部2は、それぞれ波長の異なる光を発光する図示されていない2つの発光ダイオード(以降に於いて「LED」とも記載する。)を備えている。本実施形態では発光部2が、約770nmの波長の光を発光する図示されていないLED2aと、約830nmの波長の光を発光する図示されていないLED2bを備えている例に適用して以降の説明を行う。なお発光部2は、所定の波長の光を発光する他の公知の発光素子を備えたものであってもよい。
【0022】
発光制御部8は、発光部2による光の照射を制御する部分である。具体的には発光制御部8は、詳細は後述する制御部6からの信号に従って、発光部2のLED2a、LED2bが発光するために必要な電流を出力したり停止したりして、発光部2による光の照射を制御する。
【0023】
受光部3,4は、受光した光に応じた信号を制御部6が処理可能な信号として出力する部分である。受光部3,4は、受光した光に応じた電気信号を出力する図示されていないフォトダイオード(以降において「PD」とも記載する。)と、PDが出力した電気信号を制御部6が処理可能な信号として出力する図示されていない信号処理部を主に備えている。以降の説明において、受光部3が備えるPDをPDaと、受光部4が備えるPDをPDbと記載する。また、受光部3,4が出力する、受光した光に関する情報を「光学情報」とも記載する。なお受光部3,4は、受光した光に応じた電気信号を出力する他の公知の素子を備えたものであってもよい。
【0024】
制御部6は、主に発光部2、及び受光部3,4を制御すると共に、受光部3,4からの光学情報を処理して、患者の組織の酸素飽和度に関する情報を算出する機能を主に有する部分である。
【0025】
制御部6には、生体情報の収集を制御する計測制御部61、アナログ信号をデジタルデータに変換処理するA/D変換部62、取得した光学情報に基づいて酸素飽和度に関する情報などを算出する演算処理部63が主に備えられている。更に制御部6には、表示装置50と通信を行う通信部64も備えられている。なお演算処理部63は、取得した光学情報が予め定められた所定の条件から逸脱した場合などに、生体情報収集センサ1が通常とは異なる状態であると判定する機能も有している。
【0026】
本実施形態では制御部6がアンテナ部65を備え、通信部64がアンテナ部65を介して無線通信信号を送受信して表示装置50と通信を行う公知の無線通信機能を有している例に適用して以降の説明を行う。具体的には通信部64が、公知の無線通信規格であるBLE規格(Bluetooth Low Energy)(「Bluetooth」は登録商標。)に従った通信が可能な無線通信機能を有している例に適用して以降の説明を行う。通信部64は、通信信号を受信する受信装置が、当該通信信号を送信した通信部64を識別できる識別情報を含む通信信号を当該通信規格に従って送信する。なお通信部64は、上記とは異なる公知の通信規格に従い通信を行う通信機能を備えたものであってもよい。
【0027】
バッテリ7は、筐体部10の内部に配置されている電子部品に必要な電力を供給する電源である。ON/OFF回路18は、電子部品への電気の供給、停止を制御する電気スイッチ回路である。本実施形態においてON/OFF回路18は、磁気感知型リードスイッチを用いたスイッチ回路である例に適用して以降の説明を行う。具体的に説明すると、ON/OFF回路18は、その外部の磁気の変化によってON/OFFが変化する磁気感知型リードスイッチを備えており、使用者が所定の磁石を近づけるなどの所定の操作を行うことで、当該磁気感知型リードスイッチのON/OFF状態が切り替わり、電気の供給、停止の制御が行われるものである。なおON/OFF回路18は、その他の筐体部10の外部からの操作によってON/OFF状態の切替が可能な他の公知の電気スイッチ回路が用いられていてもよい。
【0028】
発光部2、受光部3,4、制御部6、発光制御部8、及びON/OFF回路18は、基板17に半田などの公知の方法で固定され、電気的に接続されている。少なくとも発光部2、及び受光部3,4は、基板17の装着面部14側の面に直線状に並んで配置されている。本実施形態では発光部2、及び受光部3,4が、筐体部10の左右の中心を通り前後方向に延びる仮想直線I上に所定の間隔を空けて直線状に並んで配置されている例に適用して以降の説明を行う。なお発光部2、及び受光部3,4は、上記とは異なる基板17の装着面部14側の面に直線状に並んで配置されていてもよい。
【0029】
本実施形態では発光部2、及び受光部3,4が、前側から発光部2、受光部3、受光部4の順番で並んで配置されている例に適用して以降の説明を行う。なお、発光部2と受光部3の間の距離、及び発光部2と受光部4の間の距離は、組織の酸素飽和度を算出する演算式に従って、測定の対象となる組織の深度、即ち測定対象部位の表面から生体情報の収集が行われる組織までの距離に基づいて算出されるそれぞれの間隔で配置されている。
【0030】
基板17上の、発光部2と受光部3の間には、遮光素材からできた遮光板16が設けられている。この遮光板16は、測定対象である患者の組織を透過せずに、受光部3,4に直接入射される発光部2からの光を遮るためのものである。
【0031】
バッテリ7は、筐体部10内の基板17より上側の部分に公知の方法で固定され、ON/OFF回路18を介して基板17に電気的に接続されている。なおバッテリ7は、無線通信機能の妨げとなることのない様に配置されている。
【0032】
表示装置50は、生体情報収集センサ1が収集した生体情報を表示する機能を有すると共に、生体情報収集センサ1の操作や設定を行う機能を有するものである。表示装置50は、通信機能部51、表示部52、演算処理部53及び記憶部54を主に有している。表示部52は、タッチパネル式の公知のディスプレイデバイスである。表示部52には、生体情報収集センサ1から送信された生体情報データが表示される他、生体情報収集センサ1の操作や設定に関する画面が表示される。具体的には、使用者によって生体情報の収集の開始や停止、あるいは一次停止が指示される画面や、使用者によって生体情報が算出される時間間隔などが設定されるための画面等が表示される。表示部52は、タッチパネル式のディスプレイデバイスであるため、使用者は表示されたボタンなどを直接触れて操作することで、演算処理部53などに必要な入力を行うことができる。なお使用者による操作は、その他の公知の入力デバイスによって行われてもよい。
【0033】
通信機能部51は、主に生体情報収集センサ1の通信部64と通信を行う部分である。本実施形態では通信機能部51が、複数の通信部64と同時に通信可能な公知の無線通信規格(BLE規格)に従って通信を行う例に適用して以降の説明を行う。具体的に説明すると、通信機能部51は、公知の無線通信規格に従った無線通信信号を送受信して生体情報収集センサ1と通信を行う。通信機能部51は、複数の通信部64と通信を行う場合に、受信した通信信号に含まれる通信部64の識別情報から、当該通信信号を送信した通信部64を識別して必要な処理を行う。即ち、表示装置50は、複数の生体情報収集センサ1からそれぞれの生体情報データを受信し、それぞれ別個のデータとして処理し、複数の生体情報データを生体情報収集センサ1ごとに同時に表示部52に表示する。
【0034】
演算処理部53は、通信機能部51や表示部52を制御するとともに、通信機能部51が受信した生体情報データを表示部52に表示するために必要な処理を行う部分である。記憶部54は、通信機能部51が受信した生体情報データなどを記憶するハードディスクやメモリなどの公知の記憶媒体である。
【0035】
本実施形態では表示装置50が、公知のタブレットPCに、専用のプログラムがインストールされたものである例に適用して以降の説明を行う。即ち、表示装置50の上記の各部の機能が、タブレットPCのハードウェアと、記憶部54にインストールされた専用プログラムが協働して実現されている例に適用して以降の説明を行う。なお表示装置50は、専用のプログラムがインストールされた他の公知のノートPCやその他のPCであってもよい。あるいは表示装置50は、上記の各機能を有する専用のハードウェアから構成された専用の装置であってもよい。
【0036】
2.生体情報収集センサの外観の説明
生体情報収集センサ1の筐体部10は、生体情報収集センサ1の外装となる部分である。筐体部10は、前後の方向に延びる略円筒形状をしている。なお本実施形態の生体情報収集センサ1は、患者の体腔内に挿入されて使用されるため、使用前に滅菌される。このため本実施形態において筐体部10の各部は、ガス滅菌等の影響を受けにくく、生体適合性に優れたポリカーボネートからできている例に適用して以降の説明を行う。また筐体部10は、バッテリ7の出力電圧に応じた耐電圧を有している。なお筐体部10は、バッテリ7の出力電圧に応じた耐電圧を有し、ガス滅菌等の影響を受けにくく、生体適合性に優れた素材であれば、他の公知の樹脂素材からなるものであってもよい。
【0037】
筐体部10の略円筒形状の略中心を通る仮想直線Hを含む水平面よりも上側にある上側部11は、使用時に患者の測定対象の表面と同じ側を向く部分である。本実施形態では、上側部11の上側を向く部分に、平面状の上面部12が設けられている例に適用して以降の説明を行う。なお筐体部10は、上面部12が設けられていなくてもよい。本実施形態では、上側部11が、生体情報を収集する際に用いられる光を透過しにくく、体腔内において使用者が、生体情報収集センサ1を認識しやすい色である青色系の色彩を有している例に適用して以降の説明を行う。
【0038】
内視鏡手術では、使用者が、トロカールなどを介して挿入された内視鏡によって患者の体腔内の様子を観察して必要な手技を行う。即ち使用者は、内視鏡から得られる画像に基づいて生体情報収集センサ1を測定対象部位に配置して生体情報の収集を行う。この際、上側部11が使用者によって主に視認される。
【0039】
内視鏡手術が行われている患者の体腔の内部は、患者の血液などの体液が存在しており、また内視鏡からの視界も限られているため、生体情報収集センサ1を識別することが難しい場合がある。このため、生体情報収集センサ1の筐体部10には、使用者が内視鏡を介して確認した時に、容易に他の部分と区別して識別できる部分が備えられていることが望ましい。従って本実施形態の筐体部10の上側部11には、組織が主に有する色彩である赤色系の色彩や白色系の色彩とは異なる、青色系の色彩を有したポリカーボネートが用いられている。
【0040】
この青色系の色彩は、組織が主に有する色彩である赤色系の色彩の反対色であるため、体腔内に配置された際に目立ち易い色彩である。また、組織の酸素飽和度の測定に用いられる波長の光を透過しにくい(遮光する)色彩でもある。なお上側部11は、使用者が容易に区別できる色彩であって、組織の酸素飽和度の測定に用いられる波長の光を遮光する色彩であれば上記とは異なる色彩を有した素材が用いられたものであってもよい。あるいは公知の樹脂素材に、生体適合性を有する塗料などが塗られたり、その他の公知の方法で着色されたりしたものであってもよい。あるいは、平面状にされた上面部12だけが、その様な色彩を有する構成としてよく、上側部11のその他の部分がその様な色彩を有する構成としてもよい。また、上側部11に使用者が視認しやすい光を発光する発光体を設けた構成としてもよい。本実施形態における上側部11の青色の色彩を有する部分や、上側部11に設けられたその他の他の部分と区別して容易に識別できる部分が、特許請求の範囲における識別部とされている。
【0041】
下側部13は、生体情報の収集が行われる際に、測定対象部位の側を向く部分である。下側部13は、意図しない外来光が受光部3,4に入射してしまうことを防ぐため、組織の酸素飽和度の測定に用いられる波長の光が透過しにくい色彩である黒色の色彩を有するポリカーボネートからできている。なお下側部13は、組織の酸素飽和度の測定に用いられる波長の光を遮光する色彩であれば、上記とは異なる色彩を有していてもよい。あるいは公知の樹脂素材に、生体適合性を有する塗料などが塗られたり、その他の公知の方法で着色されたりしたものであってもよい。
【0042】
下側部13の、生体情報が収集される際に測定対象部位の表面と接触する部分には、平面状の装着面部14が設けられている。この装着面部14は、生体情報の収集に用いられる波長の光を透過する光透過性の部材からできている。より具体的に説明すると、発光部2のLED2a、LED2bが照射した光や、LED2a、LED2bから照射されて組織を透過した透過光が、生体情報の収集の妨げになることなく透過することができる素材からできている。本実施形態では装着面部14が、生体情報の収集に用いられる波長の光を透過する特性を有したポリカーボネート素材からできている例に適用して以降の説明を行う。なお装着面部14は、生体情報の収集に用いられる波長の光を透過する他の公知の素材からできていてもよい。
【0043】
なお、生体情報収集センサ1は、鉗子のロッドの先端に取り付けられ、内視鏡手術を行う際に使用されるトロカールを介して患者の体腔内にその前側の部分から挿入されて、測定対象部位の表面に配置される。このため、筐体部10の前後方向と交わる任意の向きの外径は、内視鏡手術で用いられる一般的なトロカールの内径よりも短くなっている。即ち筐体部10を正面から見た際の筐体部10の任意の方向の長さは、一般的な内視鏡用のトロカールの内径よりも短くなっている。
【0044】
筐体部10の後側の部分からは、アダプタ部20が後側に向かって延びている。アダプタ部20は、生体情報収集センサ1を保持するロッド30の先端に着脱可能に固定される部分である。またアダプタ部20は、使用者が生体情報収集センサ1を直接保持して測定を行う際に、使用者によって保持される部分でもある。
【0045】
本実施形態においてロッド30は、生体情報収集センサ1を保持する為に用いられる長細い円柱形状(棒状)をした専用のロッドであり、図示されていない市販の内視鏡手術用の鉗子の操作ハンドルに取り付けられて使用されるものである。より具体的に説明するとロッド30は、組織等を把持するための把持部が先端部に設けられる共に、当該把持部よりも元側の部分に屈曲可能な屈曲部が設けられたシャフトと、当該シャフトの元側に着脱可能に取り付けられた操作ハンドルを備えた市販の鉗子の操作ハンドルに取り付けられて使用されるものである。なお操作ハンドルは、把持部の把持動作を操作するための図示されていない把持操作部、及び屈曲部の屈曲動作を操作するための図示されていない屈曲操作部が設けられている。
【0046】
本実施形態におけるロッド30は、この市販の鉗子のシャフトを取り外した操作ハンドルの部分に取り付けて、生体情報収集センサ1を保持するために用いられるものである。即ち本実施形態では、生体情報収集センサ1は、市販の鉗子の操作ハンドルに取り付けられたロッド30によって保持される。
【0047】
ロッド30の先端には、円形状の凹みである孔部32が設けられた先端部31が設けられている。なお、先端部31の外径d1は、ロッド30の先端部31よりも基端部側の部分の外径d2よりも細くなっている。また、先端とは反対側の元側(以降において「基端部側」とも記載する。)に、市販の鉗子の操作ハンドルに取り付け可能な取り付け機構が設けられている。この取り付け機構によって、シャフトを取り外した鉗子の操作ハンドルにロッド30を着脱可能に取り付けることができる。
【0048】
また、ロッド30の先側の、先端部31から基端部側に少し離れた所に、屈曲動作が可能な屈曲部33が設けられている。ロッド30の取り付け機構には、屈曲部33を屈曲動作させる図示されていない屈曲機構も備えられており、使用者による操作ハンドルの屈曲操作部の操作に従って屈曲部33を所定の角度の範囲で屈曲させることができる。本実施形態では、ロッド30の屈曲部33が、使用者による操作ハンドルの屈曲操作部の操作に従って、-45°~+45°の範囲で屈曲する例に適用して以降の説明を行う。使用者は、この操作ハンドルの屈曲操作部を操作して屈曲部33を屈曲させることで、生体情報収集センサ1の装着面部14を、測定対象部位の表面に接触させて配置することができる。
【0049】
なおロッド30は、手術用ロボットの鉗子の取付部に取り付け可能な図示されていない取り付け機構が設けられ、手術用ロボットによって保持されるとともに、使用者による手術用ロボットの操作に従って、屈曲部33の屈曲動作をすることができるものであってもよい。この様にすれば、手術用ロボットが用いられる内視鏡手術の際にも、生体情報収集センサ1を用いて生体情報を収集することができる。なお、本実施形態におけるロッド30が、特許請求の範囲における棒状部材とされている。
【0050】
アダプタ部20は、一組の台形の板状の板部21a及び板部21bから構成されている。この板部21a,21bの筐体部10側の上下方向の長さは、筐体部10の上下方向の長さと略同一となっている。
【0051】
板部21a,21bは、所定の間隔を開けてそれぞれ略平行になるようにして、生体情報収集センサ1の後側の部分に配置されている。また板部21a,21bは、互いに向かい合う側の面である内側面が、装着面部14と略直交する向きで配置されている。
【0052】
板部21aと板部21bのそれぞれの内側の面には、後側の端部から筐体部10との境目まで前後方向に延びる断面が略長方形の溝部22a,22bがそれぞれ設けられている。具体的に説明すると、溝部22aは、板部21aの内側の面と直交する一組の溝側面24aと、板部21aの内側の面と略平行に延び、一組の溝側面24aと繋がる溝底面25aにて囲まれた溝である。また溝部22bは、板部21bの内側の面と直交する一組の溝側面24bと、板部21bの内側の面と略平行に延び、一組の溝側面24bと繋がる溝底面25bにて囲まれた溝である。
【0053】
溝部22a,22bの上下方向の幅D1は、ロッド30の先端部31の外径d1と略同一の長さである。なお溝部22a,22bの上下方向の幅D1は、板部21aと板部21bが筐体部10に配置された状態でロッド30の先端部31が挿入可能な幅であれば、上記と異なる長さであってもよい。
【0054】
溝底面25aの後側の部分には、板部21bに向かって突出する突出部23aが設けられている。また、溝底面25bの後側の部分には、板部21aに向かって突出する突出部23bが設けられている。突出部23a,23bは、ロッド30の孔部32と、略同一の大きさをしている。
【0055】
板部21a,21bは、溝底面25aと溝底面25bとの間の距離D2が、ロッド30の先端部31の外径d1と略同一の距離となる様に、間隔を開けて配置されている。また、板部21a,21bの基端部側の上下方向D3の幅は、ロッド30の先端部31よりも基端部側の部分の外径d2と略同一の長さとなっている。
【0056】
板部21a,21bの任意の位置における上下方向の幅は、筐体部10の上下方向の幅、即ち、上面部12と装着面部14の間の距離を越えない長さとなっている。また、板部21aの板部21bとは反対側の面と、板部21bの板部21aとは反対側の面の任意の方向の間の距離は、筐体部10の外径の任意の方向の幅を超えない長さとなっている。換言すれば、板部21a及び板部21bは、筐体部10の正面側から見たときに、筐体部10の外周から突出しする部分が無いように筐体部10に配置されている。
【0057】
なお板部21a,21bは、使用者が、自身の手で容易に保持することができる程度の長さを有している(図7(a)参照。)。本実施形態では、板部21a,21bの前後方向の長さが、筐体部10の前後方向の長さの略半分程度の長さである例に適用して以降の説明を行う。なお、板部21a,21bの前後方向の長さは、使用者が保持しやすく、生体情報収集センサ1を患者の体腔内に挿入する際や、生体情報収集センサ1を測定対象部位に装着したりする際の妨げとならない長さであれば、上記と異なる長さであっても構わない。
【0058】
2.使用方法
続いて内視鏡手術において生体情報収集センサ1を使用する場合について説明を行う。はじめに、生体情報収集センサ1は、ロッド30の先端部31に取り付けられる。具体的には、板部21a,21bの溝部22a,22bにロッド30の先端部31が挿入されて、アダプタ部20が先端部31に着脱可能に固定される。なお、溝部22a,22bに先端部31が根元まで挿入されると、突出部23a,23bが、孔部32とそれぞれ取り外し可能に係合される。このため、生体情報収集センサ1は、自然に抜け落ちることなく、ロッド30に着脱可能に固定される(図6(a),(b)参照。)。
【0059】
患者の組織の生体情報の収集を行うために、使用者によってロッド30に取り付けられた生体情報収集センサ1が、患者に設けられたトロカールを介してロッド30と共に患者の体腔内に挿入される。体腔内に生体情報収集センサ1が挿入されると、使用者の操作によって、生体情報収集センサ1は測定対象部位の近くに移動される。そして使用者が鉗子のハンドル部の所定の屈曲操作を行うと、装着面部14が測定対象部位の表面を向くように屈曲部33が屈曲する。そして、装着面部14が測定対象部位の表面と接触されて生体情報の収集が行われる(図7(b)参照。)。
【0060】
前述の様に生体情報収集センサ1は、ロッド30を取り付けずに使用者が直接手で保持して使用することも可能である。この場合に使用者は、装着面部14が測定対象部位の側を向く様にしてアダプタ部20を保持し、生体情報の収集を行う所望の部位に生体情報収集センサ1を移動させて生体情報の収集を行うことができる(図7(a)参照。)。より具体的に説明すると、使用者は、アダプタ部20を保持し、生体情報収集センサ1の装着面部14を患者の皮膚などに接触させて生体情報を収集することが可能である。あるいは、外科的な手術が行われている際に、使用者は、アダプタ部20を保持し、生体情報収集センサ1の装着面部14を、露出させた臓器や、術者が挙上した腸管などの臓器の表面やその他の組織の表面に接触させて、生体情報の収集を行うことが可能である。なお、使用者は、アダプタ部20と係合可能な係合部を有した図示されていないハンドルを生体情報収集センサ1に取り付け、当該ハンドルを保持して上記の様な操作を行ってもよい。
【0061】
3.動作の説明
続いて、生体情報収集装置100の動作について説明を行う。なお、以降では、同時に2つの生体情報収集センサ1(以降において「生体情報収集センサ1A,1B」とも記載する。)を用いて生体情報の収集が行われる例に適用して説明を行う。なお使用される生体情報収集センサ1の数は、上記に限定される訳ではなく、1つであっても3つ以上であってもよい。また生体情報収集センサ1A,1Bは、それぞれがロッド30に取り付けられて測定が行われても、使用者が生体情報収集センサ1A,1Bを直接保持して測定が行われてもよい。
【0062】
はじめに使用者によって所定の操作が行われ、生体情報収集センサ1A,1BのON/OFF回路18がそれぞれ作動される。より具体的に説明すると、使用者がON/OFF回路18を作動させるための磁石などを近接させるなどの所要の操作を行うと、ON/OFF回路18の磁気感知型リードスイッチが作動してON/OFF回路18がON状態となる。ON/OFF回路18がON状態となると、バッテリ7から基板17に電気が供給され、生体情報収集センサ1A,1BがON状態となる。続いて生体情報の収集のために生体情報収集センサ1A,1Bが、患者の測定対象部位にそれぞれ配置される。具体的には、装着面部14が、測定対象部位の表面に接触する様にして生体情報収集センサ1が配置される。
【0063】
続いて使用者によって生体情報の収集に必要な操作が行われると、表示装置50の表示部52に生体情報の収集に必要な情報の入力を求める画面が表示される。本実施形態では、表示部52の表示画面が、使用される生体情報収集センサ1の数に応じて分割されて表示される例に適用して説明を行うと、生体情報収集センサ1Aに対応する表示部52の部分に、生体情報収集センサ1Aが生体情報データを算出する時間間隔の入力を求める画面や、生体情報収集センサ1Aによる測定の開始及び停止や一時停止の指示を行う図示されていない画面が表示される。また、生体情報収集センサ1Bに対応する表示部52の部分に、生体情報収集センサ1Bが生体情報データを算出する時間間隔の入力を求める画面や、生体情報収集センサ1Bによる測定の開始及び停止や一時停止の指示を行う図示されていない画面が表示される。使用者によって表示部52が操作されて生体情報の収集に必要な情報が入力されると、通信機能部51が、入力された情報を生体情報収集センサ1A,1Bにそれぞれ送信する。なお、表示部52の同一の部分に、生体情報収集センサ1A,1Bに対応するこれらの表示が行われてもよい。
【0064】
続いて生体情報収集センサ1A,1Bの動作の説明を行う。なお、生体情報収集センサ1Aと生体情報収集センサ1Bの動作は同一であるため、以降は主に生体情報収集センサ1Aを例に動作の説明を行う。生体情報収集センサ1Aは、通信機能部51が送信した生体情報の収集に必要な情報を受信すると、生体情報の収集を開始する。具体的には、発光部2のLED2a、LED2bが、それぞれ波長の異なる光を、生体情報収集センサ1Aが装着された部分の組織に向かって照射する。そして受光部3,4のPDa、PDbは、患者の組織を透過した光をそれぞれ受光し、受光した光に応じた光学情報を制御部6に入力する。
【0065】
制御部6は、受光部3,4から取得した光学情報に基づいて、使用者が設定した時間間隔毎に演算処理を行い、組織の酸素飽和度に関する情報を算出する。具体的には、演算処理部63が、組織の酸素飽和度を算出する演算方法に従い、受光部3,4から取得した光学情報に基づいて、測定対象の組織の酸素飽和度に関する情報を算出する。本実施形態では制御部6が、受光部3,4が取得した光学情報に基づいて、酸素飽和度(rSO)と総ヘモグロビン指数(T-HbI)を算出する例に適用して以降の説明を行う。
【0066】
制御部6は、算出した酸素飽和度(rSO)、及び総ヘモグロビン指数(T-HbI)を、生体情報データとして送信する。具体的には通信部64が、収集した生体情報データと通信部64の識別情報データを含む信号を、公知の通信規格に従ってアンテナ部65を介して送信する。
【0067】
なお計測制御部61は、一回の組織の酸素飽和度に関する情報を算出するのに必要な光学情報を取得した後に発光部2を消灯させ、次の組織の酸素飽和度に関する情報を算出するのに必要な光学情報を取得する際に、改めて発光部2を発光させる制御を行ってもよい。この様な制御を行えば、バッテリ7の消耗を低減させることが期待できる。
【0068】
生体情報収集センサ1Aから送信された信号を通信機能部51が受信すると、受信した信号に含まれる生体情報データが、表示部52の生体情報収集センサ1Aと紐付けされた表示部52の部分である表示部52Aに表示される。また、生体情報収集センサ1Bから送信された信号を通信機能部51が受信すると、受信した信号に含まれる生体情報データが、表示部52の生体情報収集センサ1Bに紐付けられた表示部52の部分である表示部52Bに表示される。
【0069】
表示部52は、受信された生体情報データを数値として表示する数値表示部55と、生体情報データの数値の時間変化をグラフとして表示するトレンド表示部56に分かれている。生体情報収集センサ1Aが送信した生体情報データの内容は、表示部52Aの数値表示部55及びトレンド表示部56に表示される。なお、これらの表示は予め定められた時間間隔で更新される。
【0070】
使用者によって表示部52が操作されて、生体情報収集センサ1Aによる生体情報の収集を一時中断する信号が通信機能部51から送信されると、生体情報収集センサ1Aは生体情報の収集を中断する。具体的には、計測制御部61が生体情報の収集を中断する処理を行う。計測制御部61が測定を中断する処理を行うと、発光制御部8は発光部2への電流の供給を停止してLED2a、LED2bを消灯させる。
【0071】
使用者によって再び表示部52が操作され、生体情報収集センサ1Aによる生体情報の収集を再開する信号が通信機能部51から送信されると、生体情報収集センサ1Aは測定を再開する。具体的には、計測制御部61が発光制御部8に対して測定を開始する信号を出力し、LED2a、LED2bを発光させる。また、演算処理部63が、受光部3,4からの光学情報に基づいて酸素飽和度に関する情報等を算出する処理を行い、通信部64が生体情報データを送信する。
【0072】
生体情報収集センサ1Aの作動中に使用者によって所定の操作が行われ、生体情報収集センサ1AのON/OFF回路18が作動してOFF状態となると、基板17への電力の供給が停止され、生体情報収集センサ1AがOFF状態となり測定が終了する。具体的には、使用者がON/OFF回路18を作動させるための磁石などを近接させるなどの操作を行うと、ON/OFF回路18の磁気感知型リードスイッチが作動してOFF状態となる。ON/OFF回路18がOFF状態となると、バッテリ7から基板17に電気が供給されなくなり、生体情報収集センサ1AがOFF状態となり、生体情報の収集が終了する。
【0073】
使用者によって、表示部52に表示された保存ボタン57が操作さると、演算処理部53は、受信した生体情報データを記憶部54に記憶する処理を行う。更に使用者によって、表示部52に表示された終了ボタン58が操作されると、演算処理部53は、専用プログラムの動作を終了する処理を行う。
【0074】
上記の構成からなる生体情報収集センサ1によれば、生体情報収集センサ1は、ロッド30の先端部31に取り付け可能なアダプタ部20が設けられている。このため、生体情報収集センサ1をロッド30の先端に取り付け、ロッド30を操作して患者の体腔内など、使用者の手の届かない場所にあるような組織の生体情報を収集することができる。
【0075】
また、アダプタ部20は、筐体部10の後側の部分から、生体情報収集センサ1が延びる方向(後方)に向かって突出して延びている。このため使用者が、自身の手などでアダプタ部20を容易に保持することができる。このため生体情報収集センサ1を手で保持して、例えば患者の皮膚の所望の箇所に生体情報収集センサ1を接触させて生体情報を収集したり、外科的な手術を行っている際に、切開された部分から露出している臓器や、術者によって挙上されている臓器の組織の表面の箇所に生体情報収集センサ1を接触させて生体情報を収集したりすることができる。あるいは患者の表面に近い側にある任意の箇所の組織の生体情報を容易に測定することができる。
【0076】
また、アダプタ部20のロッド30の先端部31が挿入される溝部22a,22bには、突出部23a,23bがそれぞれ設けられている。この突出部23a,23bは、先端部31の孔部32に取り外し可能に係合されるため、生体情報収集センサ1を、脱着可能にロッド30に取り付けることができる。このため、使用時に生体情報収集センサ1がロッド30から容易に外れてしまうことが防がれる。また、使用者によるロッド30への生体情報収集センサ1の取り付け、取り外し作業を容易に行うことができる。
【0077】
更にアダプタ部20は、一組の板部21a,21bから構成されている。この板部21a,21bは、筐体部10の後側の部分に所定の間隔を開けて略平行に配置されて設けられている。即ち、板部21aと板部21bの間には、装着面部14が延びる平面と略直交する向きに延びる隙間が設けられている。このため、例えば使用前にガス滅菌処理等を行う場合に、滅菌に用いられるエチレンオキサイドガスなどが、この隙間を抜けて滅菌処理がおこなわれるため、溝部22a,22bの細部まで適切に滅菌を行う事ができる。また、滅菌に用いられたエチレンオキサイドガスなどの有毒物質が、アダプタ部20の内部に残留してしまうことが防がれる。
【0078】
また、板部21a,21bの内側の面は、装着面部14が延びる平面と略直交する向きで配置されている。このため、例えば生体情報収集センサ1がロッド30に保持された状態で、意図せずに装着面部14が組織に押しつけられるなど、生体情報収集センサ1に上下方向の過剰な力が加わった場合などには、板部21a,21bが僅かに変形して先端部31がこの隙間を抜けてアダプタ部20から外れる。このため、患者の組織や生体情報収集センサ1、あるいはロッド30に過剰な力が加わって、患者に意図しない大きな力が加わってしまったり、生体情報収集センサ1やロッド30が破損してしまったりすることが防がれる。
【0079】
更に、アダプタ部20の前後方向と交差する任意の方向の長さは、筐体部10の前後方向と交差する任意の方向の長さを越えない長さとなっている。このため、アダプタ部20がその挿入の妨げになることなく、生体情報収集センサ1を内視鏡手術などで用いられるトロカールに挿入することができる。
【0080】
また、板部21a,21bの基端部側の上下方向の幅は、ロッド30の先端部31よりも基端部側の部分の外径d2と略同一の長さとなっている。このため、生体情報収集センサ1をロッド30に取り付けた際に、生体情報収集センサ1とロッド30の境目に段差が生じることはないため、使用の際に生体情報収集センサ1とロッド30の境目の部分が、外部の部分に引っかかってしまう様なおそれがない。
【0081】
更に生体情報収集センサ1の上側部11は、使用時に周囲の組織から識別容易な部分を有している。このため、血液や体液が存在したり、視野が限定されたりする内視鏡手術に生体情報収集センサ1を用いても、生体情報収集センサ1を周囲の組織から識別しやすい。このため、体腔内の測定対象部位に生体情報収集センサ1を配置したり、配置した生体情報収集センサ1の位置を確認したりしやすい。
【0082】
また上側部11は、青色の色彩を有している。この色は生体情報収集センサ1が配置される体腔内の組織が主に有する色である赤色系の色の反対色であるため、更に生体情報収集センサ1を周囲の組織から識別しやすい。このため、体腔内の測定対象部位に生体情報収集センサ1を配置したり、配置した生体情報収集センサ1の位置を確認したりすることが更に行いやすい。
【0083】
また制御部6は、データを送信した制御部6を識別可能な無線通信規格に従って生体情報データを送信するため、表示装置50は、複数の生体情報収集センサ1から生体情報データを受信し、表示部52に同時に表示することができる。このため、複数の箇所に生体情報収集センサ1を配置して、それぞれの生体情報データを表示装置50に表示して、治療による血流変化の様子を観察したり、治療を行った箇所と関連する血管が走行する複数箇所の組織の状態をモニタリングしたりすることも可能となる。あるいは他の手術や治療、その他の診断の際に、患者の複数の部分の生体情報を同時に収集したりモニタリングしたりすることができる。
【0084】
また制御部6の計測制御部61は、測定を一時中断する信号が通信機能部51から送信されると、発光制御部8に対して測定を中断する信号を出力し、発光部2への電流の供給を停止する処理を行う。このようにしてLED2a、LED2bが消灯し、バッテリ7の消費電力が低減されるため、より長時間の測定が行える様になる。
【0085】
また本実施形態に係る生体情報収集装置100では、生体情報収集センサ1は、バッテリ7を内蔵しており外部から電気の供給を受ける必要がない。更に生体情報収集センサ1と表示装置50は、無線にて通信を行うため、生体情報収集センサ1と表示装置50の間を接続するケーブルも不要である。このため、測定の際にケーブルが患者に触れてしまうなどのおそれがなく、安全に測定を行うことができる。また、生体情報収集センサ1を患者に装着する際にケーブルが邪魔になることもないため、任意の箇所に生体情報収集センサ1を装着して測定を行うことが容易である。
【0086】
<変形例>
上記の実施形態では、生体情報収集センサ1が、市販の内視鏡手術用鉗子の操作ハンドルに取り付けられた専用のロッド30に保持される例に適用して説明を行ったが、市販の内視鏡手術用鉗子の先端に直接取り付けられるものであってもよい。
【0087】
具体的に説明すると、生体情報収集センサ1が、把持部に開口を有した鉗子40(図9(a)、図9(b)参照。)の先端部分に取り付け可能なアダプタ部20Aを有した構成としてもよい。なお以降において、図9(a)、図9(b)に示されている様な把持部に開口を有した鉗子を有窓鉗子とも記載する。この鉗子40は、市販の有窓鉗子であり、シャフト43と、把持部41と、シャフト43の元側に設けられた図示されていない操作ハンドルが備えられたものである。把持部41は、シャフト43の先端に設けられた組織等を把持する部分であり、把持部41を貫通する窓部42が設けられている。操作ハンドルは、把持部41の開閉操作など使用者が鉗子を保持して操作を行う部分である。なお、シャフト43の把持部41よりも元側の部分には、操作ハンドルの屈曲操作に従って屈曲動作を行う図示されていない屈曲部も備えられている。
【0088】
この鉗子40に取り付け可能なアダプタ部20Aについて図10(a)、(b)を参照して説明すると、アダプタ部20Aは板部21A,21Bから構成されている。この板部21A,21Bのそれぞれが向かい合う側の面には、溝部22A、22Bがそれぞれ設けられている。この溝部22A,22Bの上下方向の幅E1は、それぞれ鉗子40の把持部41の幅e1と略同一の長さとなっている。また板部21Aと板部21Bは、溝部22Aの底の部分である溝底面25Aと、溝部22Bの底の部分である溝底面25Bとの間の距離E2が、把持部41の厚さe2と略同一になるように配置されている(図10(b)参照。)。そして、溝底面25Aの基端部側の部分に、鉗子40の窓部42に係合可能な大きさの突出部23Aが、溝底面25Bの基端部側の部分に、鉗子40の窓部42に係合可能な大きさの突出部23Bが設けられている(図10(b)参照。)。なおアダプタ部20Aは、突出部23Aと突出部23Bのいずれか一方を設けた構成としてもよい。
【0089】
使用の際には、この溝部22Aと溝部22Bの間に鉗子40の把持部41を挿入し、生体情報収集センサ1を鉗子40に固定して使用する。この際、突出部23A,23Bが窓部42と取り外し可能に係合するため、生体情報収集センサ1が鉗子40から外れてしまうことが防がれる。また、使用者は、その着脱作業を容易に行うことができる。この様にすれば、市販の有窓鉗子に取り付けることができる生体情報収集センサ1を提供することができるため、使用者の利便性を増すことができる。
【0090】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態ではアダプタ部20が、一組の板部21a,21bの内側の面が装着面部14と略直交する向きで配置されている例に適用して説明を行ったが、板部21a,21bの内側の面が装着面部14と略平行となる向きで配置されていてもよい(図11(a)参照。)。この様に板部21a,21bを配置すれば、装着面部14を測定対象部位に接触させてもロッド30の先端部31が外れにくい生体情報収集センサ1を提供することができる。
【0091】
あるいはアダプタ部20を、略直方体の柱部25の中心をロッド30の先端部31が挿入可能な大きさにくり抜いて設けた溝部26を備えた筒状形状としてもよい(図11(b)参照。)。このような構成とすればより簡易な構造の生体情報収集センサ1を提供することができる。
【0092】
なお上記の実施形態では、本発明に係る生体情報収集装置100を、患者の体腔内にある組織の生体情報を収集する医療用の生体情報収集装置として用いる例に適用して説明を行ったが、本発明に係る生体情報収集装置の用途を限定するものではない。例えば生体情報収集装置100を、内視鏡手術以外の手術や、あるいは他の診断の際に生体情報を収集する医療用の生体情報収集装置として用いてもよい。あるいは本発明に係る生体情報収集装置100を、例えば動物などの生体情報を収集する目的で使用してもよく、あるいは学術的な研究を目的として生体情報を収集する装置として使用してもよい。
【0093】
また上記の実施形態では、生体情報収集センサ1と表示装置50が無線通信を行う例に適用して説明を行ったが、生体情報収集センサ1と表示装置50がケーブルによって接続されていてもよい。この様にすれば、無線通信状況に影響を受けない簡易な構成の生体情報収集装置とすることができる。
【0094】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態に係る生体情報収集装置200について主に図12から図13を参照しながら説明する。本実施形態に係る生体情報収集装置200は、生体情報収集センサ150が、温度を測定する機能を有している点が第1の実施形態と相違する。従って以降の説明は、上記の実施形態と相違する点について主に説明を行い、上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0095】
本実施形態に係る生体情報収集装置200を構成する生体情報収集センサ150は、発光部2及び受光部3,4などの他、温度計測部5、及びその制御を行う温度計測制御部9を更に備えている。温度計測部5は、その端部に設けられた計測部5aが接触した部分の温度を測定し、測定した温度に応じた電気信号を出力する公知の温度センサ(サーミスタ)である。
【0096】
温度計測制御部9は、温度計測部5が出力した電気信号を、制御部6が処理可能な信号に変換して出力する部分である。具体的には、温度計測制御部9は、温度計測部5が出力した電流に関する信号を電圧信号に変換して制御部6に出力する。以降の説明において温度計測部5が計測した温度に関する情報を「温度情報」とも記載する。
【0097】
温度計測部5は、基板17の装着面側の面の、筐体部10の左右の中心を通り前後方向に延びる仮想直線J上に、発光部2、及び受光部3,4とともに並んで配置されている。温度計測部5は、半田などの公知の方法で固定され、基板17に電気的に接続されている。本実施形態では、前側から温度計測部5、発光部2、受光部3、受光部4の順番で並んで配置されている例に適用して以降の説明を行う。なお温度計測部5は、装着面部14側に配置されていれば、上記とは異なる場所に配置されていてもよい。
【0098】
装着面部14の温度計測部5に対応する部分には、計測部5aが挿入可能な貫通穴が設けられている。温度計測部5は、この貫通穴に計測部5aが挿入され、その先側が装着面部14の方面から僅かに突出する様にして基板17に固定されている。
【0099】
続いて、生体情報収集センサ150の動作について説明を行う。生体情報の収集のために、生体情報収集センサ150の装着面部14が測定対象部位に装着されると、温度計測部5の計測部5aが測定対象部位の表面に接触する。温度計測部5は、計測部5aが接触した部分の温度に対応した信号を出力する。温度計測制御部9は、温度計測部5の出力信号を電圧に関する信号に変換して制御部6に入力する。
【0100】
更に制御部6は、温度計測制御部9から受信した温度情報に基づき、使用者が設定した時間間隔毎に、計測部5aが接触している部分の温度を算出する。具体的には、A/D変換部62が温度計測制御部9から受信した温度情報を変換し、演算処理部63が当該温度を算出する。また演算処理部63は、受光部3,4が取得した光学情報に基づいて組織の酸素飽和度に関する情報を算出する。通信部64は、算出された温度に関する情報を、組織の酸素飽和度に関する情報と共に、生体情報データとしてアンテナ部65から表示装置50に送信する。
【0101】
本実施形態にかかる生体情報収集センサ150は、温度を測定する温度計測部5が、装着面部14側に発光部2、及び受光部3,4と並んで配置されている。このため、組織の酸素飽和度に関する情報が測定された部位と同一の箇所にある計測部5aが接触した部分の温度を同時に測定することができる。即ち同一の箇所の二つの種類の生体情報を同時に取得することができるため、測定対象部位にある組織に関する多角的な情報を使用者に提供できることが期待できる。
【0102】
また温度計測部5は、発光部2及び受光部3,4が並ぶ同一の仮想直線J上に並んで配置されている。このため発光部2、受光部3,4及び温度計測部5を適切な配置状態で測定対象部位に配置することを容易に行える。
【0103】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態に係る生体情報収集装置300について図13を参照しながら説明する。本実施形態では、生体情報収集センサ250の温度計測部が測定した温度情報に基づいて、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が制御される点が、上記の実施形態とは相違する。従って以降の説明は、上記の実施形態と相違する点について主に説明を行い、同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0104】
実施形態に係る生体情報収集装置300を構成する生体情報収集センサ250の制御部600は、温度計測部5が測定した温度情報に基づいて、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を制御する機能を有した計測制御部610を備えている。組織の酸素飽和度に関する情報は、組織を透過した透過光に基づいて求められるため、発光部2及び受光部3,4が、測定対象部位の表面に適切に配置されている必要がある。換言すれば、装着面部14が測定対象となる組織の表面に適切に接触している必要がある。装着面部14が測定対象となる患者の皮膚に適切に接触していなかった場合には、受光部3,4が、発光部2が発光した光を直接受光してしまったり、外来光などの生体情報の収集とは関係のない光を受光してしまったりする。即ち、受光部3,4が、組織からの透過光以外の光を受光してしまう。この様な場合には、受光部3,4が、正確な光学情報を出力することができないため、不正確な酸素飽和度に関する情報が算出されて表示されてしまう。温度計測部5は、発光部2及び受光部3,4と同じ装着面部14側に配置されているため、装着面部14が測定対象部位の表面に適切に接触していれば、温度計測部5は測定対象部位の表面の温度を測定する。一方、装着面部14が測定対象部位の表面に適切に接触していない場合には、温度計測部5は測定対象部位の組織とは異なる、大気等の温度を測定することになる。即ち、温度計測部5からの温度情報に基づいて、装着面部14が測定対象部位の表面に適切に接触しているか否かを推定することができる。
【0105】
このため、本実施形態に係る生体情報収集センサ250の計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報から、温度計測部5が測定対象の組織の表面の温度を測定していると想定される場合には、組織の酸素飽和度に関する情報を収集する処理を行う。一方計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報から、温度計測部5が、測定対象の組織以外の温度を測定していると想定される場合には、温度計測部5が測定対象部位の表面の温度を測定していると想定される状態になるまで組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断する制御を行う。
【0106】
本実施形態では、温度計測部5が取得した温度情報が、予め定められた測定開始温度Xを上回る場合に、計測制御部610は、組織の酸素飽和度に関する情報を収集する処理を行う例に適用して以降の説明を行う。また、温度計測部5が取得した温度情報が、予め定められた測定停止温度Yを下回る場合には、計測制御部610は、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う例に適用して以降の説明を行う。なお、測定停止温度Yは測定開始温度Xよりも低い(小さな)値である。測定開始温度X及び測定停止温度Yは、使用者が表示装置50の表示部52を操作して事前に設定した値であっても、予め計測制御部610等に記憶された値であってもよい。
【0107】
以下、生体情報収集センサ250の動作について説明を行う。以降の説明では、測定開始温度Xが34℃に、測定停止温度Yが30℃に設定されている例に適用して説明を行う。また、生体情報収集センサ250が使用される部屋の温度が25℃であるものとする。
【0108】
ON/OFF回路18が操作され、生体情報収集センサ250がON状態になると、温度計測部5が温度情報の収集を開始する。また、発光部2のLED2a、LED2bが発光し、受光部3,4が受光した光に基づく光学情報を出力する。この際、生体情報収集センサ250は測定対象部位と接触していないため、温度計測部5は測定対象部位の表面から離れた部分の温度(大気の温度)を測定する。計測制御部610は、温度計測部5が測定した温度情報(25℃)と測定停止温度Yを比較する処理を行い、温度情報が測定停止温度Yを上回る値である否かを判定する。計測制御部610は、取得した温度情報が測定停止温度Y(30℃)よりも低い値であるため、酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う。具体的には、計測制御部610が発光制御部8を介して発光部2の発光を停止させる処理を行う。即ち、発光制御部8からの発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止され、LED2a、LED2bが消灯する。
【0109】
続いて使用者によって生体情報収集センサ250が測定対象部位の表面に装着されると、温度計測部5の計測部5aが測定対象部位の表面と接触し、当該部分の温度を計測する。温度計測制御部9は、温度計測部5が計測した温度情報を制御部600に逐次入力する。
【0110】
計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報と測定開始温度X(34℃)を比較する処理を随時行い、取得した温度情報が測定開始温度X(34℃)よりも高い値となった時点で、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を開始する処理を行う。具体的には、発光制御部8を制御して発光部2を発光させる処理を行うと共に、演算処理部63に受光部3,4から取得した光学情報に基づいて組織の酸素飽和度に関する情報を算出させる処理を行う。
【0111】
計測制御部610は、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を開始する処理を行うと、温度計測部5が取得した温度情報と測定停止温度Yを比較する処理を随時行い、温度計測部5が取得した温度情報が測定停止温度Yよりも大きな値である場合には、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を継続させる処理を行う。
【0112】
一方、装着面部14が測定対象部位の表面から離れ、温度計測部5が測定対象部位とは異なる部分である大気の温度を計測すると、制御部600には測定対象の組織の表面の温度よりも低い大気の温度情報が入力される。計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Y(30℃)よりも小さな値となると、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断させる処理を行う。具体的には、発光制御部8を介して発光部2の発光を停止させる処理を行う。即ち、発光制御部8からの発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止され、LED2a、LED2bが消灯する。
【0113】
組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断する処理を行うと、計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報と測定開始温度Xを比較する処理を行う。計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が測定開始温度Xを上回るまで、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を中断した状態を維持する。そして、温度計測部5が取得した温度情報が測定開始温度Xを上回った場合には、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を再開させる処理を行う。具体的には、発光制御部8を制御して発光部2を発光させる処理を行う。以降、使用者が生体情報の収集を終了するまで、上記の処理が繰り返される。
【0114】
本実施形態の生体情報収集センサ250によれば、計測制御部610は、温度計測部5が測定した温度情報に基づいて組織の酸素飽和度の測定を制御する。即ち、計測制御部610は、温度計測部5が測定した温度情報が予め定められた値を下回る場合には、発光部2及び受光部3,4が適切に配置されておらず、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が適切に行えないとみなして、組織の酸素飽和度に関する情報の収集を停止する処理を行う。発光部2及び受光部3,4が適切に配置されていない場合には、不正確なデータが表示されるおそれがある。しかしながら、上記の様な処理を行えば、組織の酸素飽和度に関する情報の収集が中断されて不正確な生体情報は表示されないため、使用者がその不正確なデータに基づいて誤った判断をしてしまったりすることが防がれる。
【0115】
また、発光部2のLED2a、LED2bへの電流の供給が停止されるため、バッテリ7の電力の消費が低減されて、より長時間の生体情報収集センサ250の使用が可能となる。
【0116】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施形態では、測定開始温度Xと測定停止温度Yが異なる例に適用して説明を行ったが、測定開始温度Xと測定停止温度Yが同じ値であってもよい。この様にすれば、より細かな制御を行うことが可能となる。また、本実施形態では測定開始温度Xと測定停止温度Yが別々に設定される例に適用して説明を行ったが、測定開始温度Xと測定停止温度Yの差分の温度が予め設定されており、測定開始温度Xあるいは測定停止温度Yのいずれか一方が設定されれば、自動的に他方の温度も設定される様にしてもよい。このようにすれば、設定操作が容易な生体情報収集センサ250とすることが可能となる。
【0117】
また計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Yよりも小さな値となった際に、受光部3,4による透過光の受光を中断したり、制御部600への光学情報の出力を中断したりする処理を行ってもよい。あるいは計測制御部610は、温度計測部5が取得した温度情報が、測定停止温度Yよりも小さな値となった際に、演算処理部63に組織の酸素飽和度に関する情報の算出を中断させる処理を行ってもよい。
【0118】
また例えば演算処理部63が、取得した光学情報が所定の範囲を逸脱するなど、生体情報収集センサ1が通常とは異なる状態であると判断した場合などに、計測制御部610が、発光部2を消灯する制御を行ってもよい。また、計測制御部610は、発光部2を消灯する制御を行った後は、その後の温度情報に関わらず、表示装置50からの測定再開の指示情報を受信するまで発光部2が消灯した状態を維持する制御を行ってもよい。この様な制御を行えば、更にバッテリ7の電力の消費を抑えることが期待できる。また、例えば、本発明を上記の実施形態に適用したものに限られることなく、これらの実施形態を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0119】
1・・・生体情報収集センサ 2・・・発光部 3,4・・・受光部
5・・・温度計測部 5a・・・計測部 6,600・・・制御部
7・・・バッテリ 8・・・発光制御部 9・・・温度計測制御部
10・・・筐体部 11・・・上側部 12・・・上面部
13・・・下側部 14・・・装着面部 16・・・遮光板
17・・・基板 18・・・ON/OFF回路
20・・・アダプタ部 21a,21b・・・板部
22a,22b・・・溝部 23a,23b・・・突出部
24a,24b・・・溝側面 25a,25b・・・溝底面
30・・・ロッド 31・・・先端部 32・・・孔部 33・・・屈曲部
40・・・鉗子 41・・・把持部 42・・・窓部 43・・・シャフト
50・・・表示装置 51・・・通信機能部 52・・・表示部
53・・・演算処理部 54・・・記憶部 55・・・数値表示部
56・・・トレンド表示部 57・・・保存ボタン 58・・・終了ボタン
61,610・・・計測制御部 62・・・A/D変換部
63・・・演算処理部 64・・・通信部 65・・・アンテナ部
100,200,300・・・生体情報収集装置
150,250・・・生体情報収集センサ H,I,J・・・仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13