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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】断熱ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/153 20060101AFI20230804BHJP
   F16L 11/16 20060101ALI20230804BHJP
   F16L 11/26 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F16L59/153
F16L11/16
F16L11/26
B32B1/08 B
B32B3/26 A
B32B3/30
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019100794
(22)【出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2020193681
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114994
【氏名又は名称】エバック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】永吉 清治
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-287770(JP,A)
【文献】特開2007-078323(JP,A)
【文献】特開2008-096073(JP,A)
【文献】特開2012-145282(JP,A)
【文献】特開2005-180609(JP,A)
【文献】特開2009-085334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/153
F16L 11/16
F16L 11/26
B32B 1/08
B32B 3/26
B32B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質樹脂よりなる内管と、この内管上に硬質樹脂からなる2条の補強線材を引き揃えた状態で一定のピッチでもって螺旋状に巻着している補強線条体と、発泡樹脂よりなる帯状断熱材をその対向する側端面同士を接合させながら、且つ、その内層部に上記補強線条体を構成している2条の補強線条体の先部を没入させた状態で螺旋巻きすることによって形成された断熱層と、この断熱層を被覆している軟質樹脂よりなる外管とからなり、上記一定のピッチ間隔を存して隣接する補強線条体間の内管の管壁部を断熱層に向かって盛り上がった肉厚管壁部に形成していると共に、肉厚管壁部と断熱層との対向面間に空気層を設けてなり、2条の引き揃え補強線材は、その対向する基部間に微小間隔が存するように引き揃えられていることを特徴とする断熱ホース。
【請求項2】
補強線条体を構成している2条の引き揃え補強線材は、先部側が幅狭く基部側が幅広い断面凸形状に形成されてあり、帯状断熱材の内層部に没入したこれら引き揃えの補強線材の先部の対向する側面間に空気層を形成していると共に、上記引き揃え補強線材の先部を被覆している帯状断熱材の両側部の内周面が肉厚管壁部側に向けている補強線材の基部における外側部上に受止されていて、肉厚管壁部と断熱層との対向面間の空間部を補強線材の基部の厚みに等しい層厚の空気層に形成していることを特徴とする請求項1に記載の断熱ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、住宅やビル等の空調設備の通気用ダクトホースとしての使用に適した断熱ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から空調設備の通気用ダクトとして使用される断熱ホースとしては、例えば、特許文献1に記載されているように、軟質塩化ビニル樹脂からなる薄肉の内管と、この内管上に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している硬質塩化ビルニ樹脂からなる補強芯線と、内管上に発泡ポリエチレン樹脂からなる断面四角形状の帯状断熱材を互いにその対向する側端面同士を接合させながら巻きするようによって形成され、内層部に上記補強芯線を埋設させている一定厚みを有する断熱層と、この断熱層を被覆している軟質塩化ビニル樹脂からなる薄肉の外管とからなる構造の断熱ホースが知られている。
【0003】
また、特許文献2には、軟質樹脂よりなる内管(内層)と、この内管上に一体のピッチでもって螺旋状に巻着した断面凸形状の硬質樹脂補強材と、隣接する硬質樹脂補強材の頂面上間に断面横長四角形状の帯状断熱材を架設状態で支持させ、且つ、先行する帯状断熱材と後続する帯状断熱材との対向する側端面同士を接合させながら螺旋巻きすることによって形成されて断熱層と、上記内管とこの断熱層との対向面間で形成している空気層と、断熱層を被覆している軟質樹脂よりなる外管(外層)とからなる断熱ホースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-3745号公報
【文献】特開2000-170992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記前者の断熱ホースによれば、内管と外管との間の空間部を断熱層によって隙間なく充満させているため、断熱ホースを湾曲させる際に曲げ抵抗が大きくなって曲げ難くなると共に、所定の断熱効果を得るには比較的断熱層の厚みを比較的大きくする必要が生じて使用に供する断熱ホースの外径が大きくなり、その上、断熱ホースを湾曲させた際に、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部においては長さ方向に圧縮力を受けて、隣接する補強芯線間が狭まり、補強芯線間の内管の管壁部分がホースの内径方向に断面U字状に弛んで、この弛み変形により圧力損失、即ち、送風能力の低下(風損)が発生するといった問題点があった。
【0006】
後者の断熱ホースによれば、断熱層と内管との間に空気層を設けているので、この空気層の断熱作用によって断熱層を形成している断熱材の厚みを薄くすることができると共にホースの湾曲性を良好にすることができるといった利点を有するが、断熱層が補強材の頂面上によって支持されているため、補強材による断熱層の支持力が弱くて断熱層がホースの長さ方向に妄動する虞れがあり、保形性が低下するといった問題点がある。
【0007】
さらに、断熱ホースを湾曲させると、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部においては、隣接する補強材間の狭まりにより、上記特許文献1に記載の断熱ホースと同様に、補強材間の内管の管壁部分がホースの内径方向に弛み変形して圧力損失が発生することになる。
【0008】
従って、上記いずれの特許文献に記載の断熱ホースにおいては、湾曲させても所定の風量を得ることができる断熱ホースにするには内外径を大きくする必要があり、例えば、このような断熱ホースを加湿ホースとして使用すると、この加湿ホースを空調機の室内機と室外機を結ぶ冷媒導管やドレンを排出するためのドレンホースと共に室内機から建物の壁に設けている孔を通じて室外機に接続するための配管内に束ねた状態で収納する作業や配管の施工作業に支障をきたすといった問題点がある。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは断熱性、湾曲性、保形性に優れているのは勿論、ホースを湾曲させた際の内部を流通する流体の圧力損失を低減させることができる断熱ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の断熱ホースは、請求項1に記載したように、軟質樹脂よりなる内管と、この内管上に硬質樹脂からなる2条の補強線材を引き揃えた状態で一定のピッチでもって螺旋状に巻着している補強線条体と、発泡樹脂よりなる帯状断熱材をその対向する側端面同士を接合させながら、且つ、その内層部に上記補強線条体を構成している2条の補強線条体の先部を没入させた状態で螺旋巻きすることによって形成された断熱層と、この断熱層を被覆している軟質樹脂よりなる外管とからなり、上記一定のピッチ間隔を存して隣接する補強線条体間の内管の管壁部を断熱層に向かって盛り上がった肉厚管壁部に形成していると共に、肉厚管壁部と断熱層との対向面間に空気層を設けてなることを特徴とする。
【0011】
上記のように構成した断熱ホースにおいて、請求項2に係る発明は、補強線条体を構成している2条の引き揃え補強線材は、先部側が幅狭く基部側が広幅い断面凸形状に形成されてあり、帯状断熱材の内層部に没入したこれら引き揃えの補強線材の先部の対向する側面間に空気層を形成していると共に、上記引き揃え補強線材の先部を被覆している帯状断熱材の両側部の内周面が肉厚管壁部側に向けている補強線材の基部における外側部上に受止されていて、肉厚管壁部と断熱層との対向面間の空間部を補強線材の基部の厚みに等しい層厚の空気層に形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、2条の引き揃え補強線材は、その対向する基部間に微小間隔が存するように引き揃えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、内管上に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している補強線条体における先行する補強線条体と後続する補強線条体との間の上記内管の管壁部を断熱層に向かって盛り上がった肉厚管壁部に形成していると共に、この肉厚管壁部と断熱層との対向面間に空気層となる空間部を設けているので、断熱ホースを湾曲させた際に、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部においては長さ方向に圧縮して隣接する補強線条体間が狭まると共にこの狭まりよって上記肉厚管壁部に弛みが生じることになるが、隣接する補強線条体間を狭まらせる上記圧縮力は、肉厚管壁部の両側端部から中央部に向かってこの肉厚管壁部の盛り上がり方向に作用して肉厚管壁部をこの肉厚管壁部と断熱層との対向面間の空間部内に向かって弛ませることができる。
【0014】
従って、上記肉厚管壁部がホースの内部に向かって突出することなく肉厚管壁部と断熱層との対向面間の空間部内に弛んだ状態で収納されるので、断熱ホース内を流動する流体に対する管内抵抗を少なくして圧力損失を低減させることができ、内外径を小径に形成しても所望の風量を得ることができる断熱ホースを提供することができる。
【0015】
さらに、内管上に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している補強線条体は、2条の補強線材を引き揃えてなるものであるから、断熱ホースの耐圧強度が増大すると共に保形性に優れ、湾曲させても座屈や偏平状に変形することなく断面円形状を保持して良好な流通性を奏することができる。
【0016】
また、上記内管上に設けている断熱層は、発泡樹脂よりなる帯状断熱材をその対向する側端面同士を接合させながら、且つ、その内層部に上記補強線条体を形成している2条の引き揃え補強線材の先部を没入させた状態で螺旋巻きすることによって形成されているので、その内層部に食い込み状態で没入している引き揃え補強線材の先部によって断熱ホースの妄動を確実に阻止されて安定した断熱層を形成することができると共に、この断熱層と上記隣接する補強線条体間の肉厚管壁部との対向面間を空気層に形成しているので、湾曲性と断熱性においても優れた断熱ホースを提供することができる。
【0017】
上記補強線条体を形成している2条の引き揃え補強線材は、請求項2に記載したように、その先部側が幅狭く基部側が広幅い断面凸形状に形成されてあり、帯状断熱材の内層部に没入した引き揃え補強線材の先部の対向する側面間の空間部に空気層を形成しているので、上記断熱層と隣接する補強線条体間の肉厚管壁部との対向面間に形成された空気層と共に断熱効果を一層高めることができると共にその分だけ断熱層の厚みを薄くすることができて断熱ホースの小径化を図ることができる。
【0018】
さらに、引き揃え補強線材の先部を被覆している帯状断熱材の両側部の内周面を肉厚管壁部側に向けている補強線条体の基部における外側部上に受止させているので、肉厚管壁部と断熱層との対向面間の空気層を補強線材の基部の厚みに等しい一定厚みの層厚に形成することができて安定した断熱効果を奏すると共に、断熱ホースを湾曲させた際に生じる上記肉厚管壁部の弛みを内部に確実に収納し得る広さの空気層(空間部)に形成することができる。
【0019】
また、請求項3に記載したように、上記補強線条体を形成している2条の補強線材は、対向する基部間に微小間隔が設けられた状態にして引き揃えられているので、上記のように断熱ホースを湾曲させた際に、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部側において、2条の補強線条体の基部間が上記微小間隔をなくするように互いに接近し、その間に存在する内管の微小管壁部が内径方向に押し出されるように湾曲変形して微小突起が発生し、この微小突起によって流体の圧力損失を低下させることなく、室外機側からホース内に侵入した騒音を乱反射させながら減衰させ、室内に伝播するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明断熱ホースの一部分を長さ方向に切除した状態の斜視図。
図2】断熱ホースの一部分の断面図。
図3】湾曲させた状態の湾曲部の断面図。
図4】ホースの周壁部の一部の拡大断面図。
図5】凹円弧状に湾曲したホースの内側周壁部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1図2において、断熱ホースAは軟質樹脂からなる可撓性を有する薄肉の内管1と、この内管1上に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している硬質樹脂からなる2条の補強線材2、2を引き揃えてなる補強線条体3と、発泡樹脂よりなる帯状断熱材4aを、その対向する側端面同士を接合させながら、且つ、その内層部に上記補強線条体3を形成している2条の引き揃え補強線材2、2の一半部(後述する先部)を没入させながら上記内管1上に補強線条体3と同一ピッチでもって螺旋状に巻装することによって形成された断熱層4と、この断熱層4を被覆している軟質樹脂からなる可撓性を有する薄肉の外管5とから構成されている。
【0022】
なお、上記内管1と外管5とは軟質塩化ビニル樹脂からなり、補強線条体3を構成している2条の引き揃え補強線材2、2は上記内外管1、5と同質の硬質塩化ビニル樹脂からなるが、その他の熱可塑性樹脂によって形成しておいてもよい。一方、上記断熱層4を形成している帯状断熱材4aは発泡ポリエチレン樹脂からなる。
【0023】
上記内管1は、図4に示すように、一定幅と一定厚みを有する薄肉の軟質樹脂製帯状材1'を、成形回転軸(図示せず)上に、先行する軟質樹脂製帯状材1'の一側部上に後続する軟質樹脂製帯状材1'の他側部を重ね合わせながら一定のピッチでもって螺旋状に巻回することにより、重ね合わせ数の多い部分によって上記断熱層4の内周面に向かって、即ち、外径方向に向かって盛り上がった肉厚管壁部1aを形成してあり、重ね合わせ数の少ない部分によって薄肉管壁部1bを形成している。
【0024】
この薄肉管壁部1b上に上記補強線条体3が巻着され、一定のピッチ間隔を存して隣接する補強線条体3、3間、即ち、先行する補強線条体3と後続する補強線条体3との間に上記肉厚管壁部1aが存在している。
【0025】
なお、軟質樹脂製帯状材を螺旋状に巻回することによって重ね合わせていない部分と2層に重ね合わせた肉厚部分とを形成し、重ねあわせていない部分に上記補強線条体3を巻着した構造としておいてもよい。
【0026】
上記補強線条体3を形成している2条の引き揃え補強線材2、2は、矩形状の先部2aとこの先部2aよりも幅広い横長長方形状の基部2bとからなる断面凸形状に形成されてあり、基部2bの幅方向の中央部上に先部2aの基端が一体に連設し、且つ、先部2aの基端から基部2bの両側部が外側方に突出している。
【0027】
このように形成している補強線材2を2条、その対向する基部2b、2bに1mm以下の微小間隔、好ましくは、0.5mm ±0.2mm の間隔を存して平行に引き揃えることによりて上記補強線条体3を形成している。なお、2条の補強線材2、2の対向する基部2b、2bを隙間なく接合させた状態で引き揃えておいてもよい。
【0028】
上記断熱層4を形成している発泡樹脂よりなる帯状断熱材4aは、その厚みが上記補強芯線3の高さの2~3倍の厚みを有し、幅が上記内管1における肉厚管壁部1aの幅(=補強線条体3の幅)と薄肉管壁部1bの幅との和に等しい幅を有する断面横長長方形状に形成されてあり、この帯状断熱材4aをその幅方向の中央部の内層部に上記補強線条体3を構成している2条の引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aを没入させながら上記内管1上に補強線条体体3と同一ピッチでもって、且つ、先行する帯状断熱材4aの一側端面に後続する帯状断熱材4aの他側端面を突き合わせ状に接合させながら螺旋状に巻装している。
【0029】
上記断熱層4を形成している帯状断熱材4aの内層部(内管1側に向けている厚み部分)における幅方向の中央部は、上記引き揃え補強線材2、2を被覆するようにして帯状断熱材4aを螺旋巻きした際に、補強線条体2、2の先部2a、2aによって圧縮変形されてその内層部にこれらの先部2a、2aを没入させた凹溝6が形成されてあり、この凹溝6の対向する溝壁面に引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aにおける相反する方向に向けている外側面が密着、係止していると共に帯状断熱材4aの両側部の底面(内周面)における内側部分が引き揃え補強線材2、2の基部2b、2bにおける相反する方向、即ち、肉厚管壁部1a、1a側に向かって突出している外側部上に当接、受止されてあり,引き揃え補強線材2、2の基部2b、2b上から肉厚管壁部1a、1a上に向かって突出している帯状断熱材4aにおける両外側部の底面(断熱層4の内周面)と肉厚管壁部1aとの対向面間に補強線材2の基部2bの厚みに等しい空気層7を形成した空間部が設けられている。
【0030】
さらに、上記帯状断熱材4aの内層部に形成された凹溝6内に没入している上記引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aの対向する内側面間においても空気層8を形成した空間部が設けられている。なお、一ピッチにおける上記肉厚管壁部1aと薄肉管壁部1bとの領域(幅)の比率は4:5にしてあり、このような比率にすることによって良好な湾曲性と、湾曲させた際に、肉厚管壁部1aが上記断熱層4の内周面と肉厚管壁部1aとの対向面間の空気層7内に確実に弛ませて収納できるように構成している。
【0031】
次に、上記のように構成した断熱ホースの製造方法を簡単に説明すると、一定幅を有する半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂よりなる薄肉の帯状材を成形ノズルから押し出しながら、成形回転軸上に、先行する帯状材の一側部上に後続する帯状材の他側部をオーパラップさせて一体に融着させながら一定のピッチでもって螺旋状に巻装することによって肉厚管壁部1aと薄肉管壁部1bとを交互に形成した上記薄肉の内管1を形成していくと共に、この内管1の外周面上に、上記とは別な成形ノズルから半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる上記2条の引き揃え補強線材2、2からなる補強線条体3を押し出しながらこの補強線条体を一定のピッチでもって上記内管1の薄肉管壁部1b上に螺旋状に巻装し、補強線条体2、2の基部2bの底面を薄肉管壁部1bの外周面に融着させる。
【0032】
さらに、厚みが上記補強線材2の高さの2~3倍を有し、幅が上記内管1における一つの肉厚管壁部1aと薄肉管壁部1bとの幅の和に等しい断面横長長方形状の発泡ポリエチレン樹脂よりなる帯状の断熱材4aを、その幅方向の中央部を上記補強線条体3に被せるようにしてこの補強線条体3と同一ピッチでもって先行する帯状材と後続する帯状材との対向する側端面同士を互いに接着等により一体化することなく突き合わせ状に接合させながら螺旋状に巻き付けて、その巻付力により補強線条体3を形成している引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aでこの帯状断熱材4aの内層部を圧縮変形させてこの内層部の幅方向の中央部に引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aを没入させた凹溝6を有する断熱層4を形成する。
【0033】
引き続いて、上記とは別な成形ノズルから一定幅を有する半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂よりなる薄肉の帯状材を押し出して上記断熱層4の外周面上に、先行する帯状材の一側部上に後続する帯状材の他側部をオーパラップさせて一体に融着させながら一定のピッチでもって螺旋状に巻装することによって上記外管5を形成する。
【0034】
こうして製造された断熱ホースAによれば、軟質樹脂よりなる内管1上に一定のピッチでもって螺旋状に巻着している補強線条体3は、2条の補強線材2、2を微小間隔を存して平行に引き揃えた補強線材2、2からなるので、断熱ホースAの耐圧強度が増大すると共に保形性に優れ、湾曲させても座屈や偏平状に変形することなく断面円形状を保持することができて良好な流通性を発揮する。
【0035】
さらに、上記内管1上に発泡樹脂よりなる帯状断熱材4aを一定のピッチでもって螺旋状に巻回することによって形成された断熱層4は、螺旋巻きした帯状断熱材4aの内層部に上記引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aを食い込み状態に没入させているので、この引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aによって断熱層3がホースの長さ方向に妄動するのを阻止されて安定したホースの形態を保持する。
【0036】
その上、上記断熱層4の内周面と上記内管1の肉厚管壁部1aの外周面との間に、補強線条体2、2の基部2bの厚みに等しい空気層7が形成されていると共に、引き揃え補強線材2、2の先部2a、2aの対向する側面間にも空気層8が形成されているので、これらの空気層7、8の断熱作用によって断熱ホースAの断熱効果を向上させることができると共に断熱層4の厚みをその分だけ薄くすることができ、上記断熱層4と内管1の肉厚管壁部1aとの間に設けられた空気層7と相まって断熱ホースAの湾曲性を向上させることができる。
【0037】
また、上記のように構成して断熱ホースAを湾曲させると、図3図5に示すように、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部においては長さ方向に圧縮して隣接する補強線条体3、3、即ち、先行する補強線条体3と後続する補強線条体3とが互いに接近してこれらの補強線条体3、3間の幅(間隔)が狭まる。
【0038】
この補強線条体3、3間の狭まりによって補強線条体3、3間の断熱層部分が空気層7を内径方向に凹入変形させながらホースの長さに圧縮されると共に、隣接する補強線条体3、3間に存在する内管1の上記肉厚管壁部1aは互いに接近する上記補強線条体3、3によってその両側端部から中央部に向かってこの肉厚管壁部1aの盛り上がり方向に圧縮力を受けて、この圧縮力により肉厚管壁部1aが上記内径方向に凹入変形する空気層7に向かって弛み変形してこの空気層7を形成している空間部内に二つ折り状態に収納される。
【0039】
従って、内管1の上記肉厚管壁部1aがホースの内部に向かって突出していないので、断熱ホース内を流通する空気(流体)の管内抵抗を少なくして圧力損失を低減させることができる。
【0040】
さらに、上記補強線条体体3を構成している2条の引き揃え補強線材2、2は、その対向する基部2b、2b間に微小間隔を設けているので、上記のように断熱ホースAを湾曲させた際に、凹円弧状に湾曲するホースの内側周壁部側において、引き揃え補強線材2、2の基部2b、2bが上記微小間隔をなくする方向に互いに接近して、基部2b、2bの底部間に存在する内管1の微小管壁部が内径方向に押し出されるように湾曲変形し、図5に示すように微小突起9が発生してこの微小突起9によって流体の圧力損失を低下させることなく、室外機側からホース内に侵入する騒音を乱反射させながら減衰させ、室内に伝播するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
A 断熱ホース
1 内管
1a 肉厚管壁部
2 補強線材
3 補強線条体
4 断熱層
4a 帯状断熱材
5 外管
7、8 空気層
図1
図2
図3
図4
図5