(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ゴルフ練習場に配設される池施設
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
A63B69/36 522R
A63B69/36 522K
(21)【出願番号】P 2020017901
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592173685
【氏名又は名称】創機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100111464
【氏名又は名称】齋藤 悦子
(72)【発明者】
【氏名】池野 三吉
(72)【発明者】
【氏名】池野 貴則
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-098966(JP,U)
【文献】特開平8-196663(JP,A)
【文献】実開昭49-072366(JP,U)
【文献】特開平6-319839(JP,A)
【文献】特開平5-146534(JP,A)
【文献】実開平6-31778(JP,U)
【文献】米国特許第5547186(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00-69/40
A63B 71/00-71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ練習場に配設される池施設であって、貯水槽と水-球分離装置とを有し、
前記貯水槽は、少なくとも底部を2以上に分割する分離壁と、前記分離壁で分割された各底部に配設される、落下したゴルフボールを受ける受部と、前記受部を転動するゴルフボールが導入されるゴルフボール移送溝Aとを有し、
前記移送溝Aの端部は、前記貯水槽の側壁に設けた開閉自在のゲートを介して前記貯水槽の外周に設けたゴルフボール移送溝Bに連設され、
前記水-球分離装置は、前記移送溝Bから移送される水を分離し、およびゴルフボールを集球するものであることを特徴とする、池施設。
【請求項2】
前記受部は、ゴルフボールが前記移送溝Aに向かって転動する複数の転動路を有し、前記転動路は、隣接するゴルフボールが接触しない間隔で配設されたものである、請求項1記載の池施設。
【請求項3】
前記受部は、前記移送溝Aに向かって降下する1~7%の勾配を有し、
前記移送溝Aは、前記移送溝Bに向かって降下する0.1~3%の勾配を有し、
前記移送溝Bは、前記水-球分離装置に向かって降下する0.1~5%の勾配を有することを特徴とする、請求項1または2記載の池施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールの回収が容易な、ゴルフ練習場に配設される池施設に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる打ちっぱなしのゴルフ練習場には、実際のコースに似せて池を設けたものがある。このようなゴルフ練習場では、池に落ちたボールは網などを使用して回収することができる。
【0003】
しかしながら、ゴルフボールは一般のボールに比較して比重が大きいため池に沈むと拾いづらく、網などで回収する作業は効率が悪い。このため、池に傾斜を設けてゴルフボールを傾斜面にそって転動させ、傾斜面に連なるボール集合部に集め、池の水と共にゴルフボールを排出する排出パイプを接続し、排水パイプの他端に排出されたボールを捕集する捕捉手段を設けた落水ボール回収洗浄装置がある(特許文献1)。池に複数個所のボール集合部を設け、各ボール集合部の下部の土中に螺旋状の分岐パイプを設け、螺旋の回転力によってボールを洗浄し、これをベルトコンベアでボール給配機構により所定の場所に送る構成となっている。
【0004】
また、ゴルフボールを回収するものとして、水流によってボールを固まり状にすることなく1個毎に搬送する回収ゴルフボールの送出装置もある(特許文献2)。ゴルフボールは飛距離を伸ばすために多くの窪みが形成され、表面積の増大により摩擦抵抗が増大するため集合すると移動しづらい。そこで、回収された多数のゴルフボールをボール貯留槽に貯留し、その底部周囲にボール貯留槽内でボールを周回状に整列移動させるボール送出路を設け、ボール貯留槽には前記ボール送出路内のゴルフボールをボール送出口側に移動させる水流を噴出するボール送出用水流噴出管を配装し、更にボール送出口の近傍で生じた重なり状のゴルフボールを崩す水流を噴出するようボール崩し用水流噴出管をボール貯留槽に配装したものである。
【0005】
特許文献2の
図1には、ゴルフ練習場のグランドに設けられた傾斜した集球溝内の水流によってゴルフボールが回収される態様であって、前記集球溝は突条部を有する水排除板が配設されたボール案内通路であり、この集球溝を経てボール貯留槽にゴルフボールが転がりながら移送される態様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平2-98966号公報
【文献】特許第6317510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載するように、池に入ったゴルフボールを池に設けた傾斜によって一定箇所に集めるには、ボールを転動によって回収できる程度の傾斜を設ける必要があり、特許文献1の
図2では、約30°の傾斜で記載され、このため池の水深が深くなり池の構築費が高額となる。特許文献1に記載する池は大小2つの島を含み、長さが90~100m、幅40m、最大深さ3mと大型のものである。ボール集合部に集まったボールは、池底面の地面に敷設された排水パイプを通して池の水と共に貯水槽に排出される構造となっているため、ボール集合部からボールを回収するための土木作業も必要である。
【0008】
また、特許文献2は、水流を使用してゴルフボールを回収する点で、特許文献1の水中に沈むゴルフボールの回収と共通するが、特許文献2に記載の回収ゴルフボールの送出装置は、打ちっぱなしのゴルフ練習場で大量のゴルフボールを回収する装置である。水流によってゴルフボールを回収するために集球溝の傾斜が大きく、更にボール貯留槽の底部には、ボール送出用水流噴出管とボール崩し用水流噴出管とを備え、水流を確保するために水流ポンプを配設して所定圧で送水する必要がある。このような装置を池施設として使用すれば大きな傾斜が池の水深を無駄に深くすることに繋がるなど、ゴルフ練習場の池本来の機能と合致するものではない。
【0009】
上記現状に鑑みて、本発明は、ゴルフ練習場に配設することができ、ゴルフボールの回収および敷設が容易な池施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、池を構成する貯水槽の底部を2以上に分割すると落下したボールの転動距離を短くして池の水深を浅くできること、貯水槽の底部に、隣接するゴルフボールが接触しない間隔の複数の転動路を配設すると、ゴルフボール同士の接触を回避して円滑なボールの転動を確保できること、転動路から回収したボールを池の中に設けた移送溝で回収し、次いで、池の外周に設けた移送溝に導入すれば、池の下部の土中を掘り起こす深さを少なくしてゴルフボールを貯水槽から回収できること等を見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明は、ゴルフ練習場に配設される池施設であって、貯水槽と水-球分離装置とを有し、
前記貯水槽は、少なくとも底部を2以上に分割する分離壁と、前記分離壁で分割された各底部に配設される、落下したゴルフボールを受ける受部と、前記受部を転動するゴルフボールが導入されるゴルフボール移送溝Aとを有し、
前記移送溝Aの端部は、前記貯水槽の側壁に設けた開閉自在のゲートを介して前記貯水槽の外周に設けたゴルフボール移送溝Bに連設され、
前記水-球分離装置は、前記移送溝Bから移送される水を分離し、およびゴルフボールを集球するものであることを特徴とする、池施設を提供するものである。
【0012】
また本発明は、前記受部は、ゴルフボールが前記移送溝Aに向かって転動する複数の転動路を有し、前記転動路は、隣接するゴルフボールが接触しない間隔で配設されたものである、前記池施設を提供するものである。
【0013】
また本発明は、前記受部は、前記移送溝Aに向かって降下する1~7%の勾配を有し、
前記移送溝Aは、前記移送溝Bに向かって降下する0.1~3%の勾配を有し、
前記移送溝Bは、前記水-球分離装置に向かって降下する0.1~5%の勾配を有することを特徴とする、前記池施設を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯水槽に落下したゴルフボールを、落下したゴルフボールを受ける受部、ゴルフボール移送溝A、ゴルフボール移送溝Bを経て水-球分離装置に移送し回収することができ、かつ敷設が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ゴルフ練習場に配設した本発明の池施設の外観図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、貯水槽の底部に配設されたゴルフボールの受部と、これに連設する移送溝Aとを説明する図であり、
図2Aは受部の移送溝Aの上流側に設けた転動路22Tの勾配(θ1T)を、
図2Bは受部の移送溝Aの下流側に設けた転動路22Eの勾配(θ1E)を示す図である。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、受部に配設することができる転動路を説明する図であり、
図3Aは複数の板状物を略並行に配設して、
図3Bは複数の円柱状物を略並行に配設して、転動路を形成する態様を説明する図である。
【
図4】
図4Aは、
図1のC-C視側面図である。
図4Bは、移送溝Aにゲート機構の一部を組み込んだ筐体を装着した状態を説明する斜視図であり、
図4Cはゲート取り付け位置と移送溝Bとの接合部を説明する図である。
【
図6】本発明の池施設を構成する貯水槽の受部、移送溝A、移送溝Bの勾配の1例を説明する図である。
【
図7】本発明の池施設の水-球分離装置による水の分離と循環、およびゴルフボールの集球を説明する図である。
【
図9】本発明の池施設を含むゴルフ練習場の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ゴルフ練習場に配設される池施設である。ゴルフ場には、プレー攻略の戦略的目的や、消火および樹木育成を目的として、地面の窪地に水を満たした池が設けられている。ゴルフ練習場であっても、ゴルフ場に近似した環境にするため池が配設される場合がある。池を設けると相対的に人工芝面積が縮小する。ゴルフ練習場でも人工芝の敷設は通例となっているが損傷が早く、人工芝の使用が低減されると産業廃棄物となる敷替え材の処分費用も低減することができる。更に、ゴルフ場と同様に水中にゴルフボールを入れるとペナルティとなりゴルフ技術が心技とも向上される。本発明の池施設は、水を貯水しうる貯水槽を有すればよく、前記貯水槽は地面を掘り下げたものでも、その表面にコンクリートや防水シートを敷設したものであってもよい。また、所定の池の形状に成形した合成樹脂製の槽を敷設するものであってもよい。以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の池施設100の好ましい実施態様の1例を示す斜視図である。池施設100は貯水槽10を有し、貯水槽10は、側壁12および底部とを有し、底部は分離壁16によって少なくとも2以上に分割されている。
図1では、2枚の分離壁16によって3つの底部14A、底部14B、底部14Cが形成される態様を示す。なお、本発明では、特に制限がない限り、貯水槽10を満水した際の水面の高さを「基準高」として説明する。側壁12の高さは底部14から基準高までの距離で示すことができるが、基準高から底部14までの深さは貯水槽10の全面に亘り一定である必要はなく、側壁12は基準高より高い部分を有していてもよい。底部14は、落下するゴルフボールを受ける受部20と、受部のゴルフボールを移送する移送溝A30とを有する。移送溝A30を含まない受部20の最深部から基準高までの深さは100~700mm、より好ましくは150~600mmである。なお、ゴルフ練習場において、貯水槽10に水を充填して使用する場合の好ましい水位は、基準高より下方に0~80mm、より好ましくは10~70mmの範囲である。
【0018】
分離壁16は、貯水槽10に底部14を2以上に分割できればよく、底部14から水面に向かって略鉛直に配設される。分離壁16の高さは、貯水槽10に水を導入した際に分離壁16の上端が水面から突出しない範囲に設定されることが好ましい。分離壁16の高さは、基準高より下方に0~100mm、より好ましくは10~90mmである。分離壁16が水面下にあれば、全体として一つの大きな池の外観を確保することができる。
【0019】
各底部14には貯水槽10に落下したゴルフボールを受ける受部20と、受部20を転動するゴルフボールが導入される移送溝A30とが配設される。受部20には、ゴルフボールが転動して移送溝A30に移動できるように勾配(θ1)が形成されている。なお、
図1の底部14Cに示すように、受部20の上面にはゴルフボールを所定方向に転動させる転動路22が配設されていてもよい。
【0020】
本発明では、各底部14に設けられた移送溝A30も移送溝B50に向かって降下する勾配(θ2)を有する。このため受部20の勾配(θ1)は移送溝A30の勾配(θ2)に対応して変化し、移送溝B50に近づくにつれ深くなる。例えば、移送溝A30の最上流地点を移送溝A30T、移送溝A30の最下流地点を移送溝A30Eとし、移送溝A30の勾配(θ2)を0.5%と仮定する。また、移送溝A30の長さを10mとし、受部20の上端から移送溝A30に至る長さを10mとする。移送溝A30Tに連設する転動路22を転動路22Tとしその勾配(θ1T)を1.5%と仮定する。この場合、移送溝A30Eに連設する転動路22Eの勾配(θ1E)は2%となる。
図2Aは
図1のA-A断面図であり、移送溝A30の最上流の転動路22Tの勾配(θ1T)を示す。
図2Bは
図1のB-B断面図であり、移送溝A30の最下流側の転動路22Eの勾配(θ1E)を示す。受部の勾配(θ1)は、移送溝A30の勾配(θ2)に対応して下流側でより深くなっている。受部20や転動路22の移送溝A30に向かって降下する勾配(θ1)は、移送溝A30の勾配(θ2)に関わらず1~7%が好ましく、より好ましくは1~5%である。本発明は、分離壁16によって貯水槽10の底部14を複数に区分したために貯水槽10に落下するゴルフボールの移動距離を短くすることができ、受部20の勾配(θ1)が上記範囲であってもゴルフボールの移動を円滑に行うことができることが判明した。上記は、転動路22T、22Eを用いて説明したが、受部20に転動路22が無い場合も同様である。
【0021】
受部20に形成される転動路22は、隣接するゴルフボールが互いに接触せずに移送溝A30に転動し得るように配設されるものを広く採用することができる。このような転動路22としては、ゴルフボールの直径より太いパイプを半円形に切断したU字状物を略並行に配設したものを例示することができる。また、例えば
図3Aに示すように、複数の板状物24を略並行に配設し、隣接する板状物24の両角でゴルフボールを受けて転動路22として使用するものであってもよい。更に、
図3Bに示すように、板状物24に代えて円柱状物26を略並行に配設し、円柱状物26と円柱状物26との間であって円柱状物26の両外形面でゴルフボールを受けて転動路22として使用するものであってもよい。好ましくは、
図3A、
図3Bに示すように、略並行に配設される部材間の間隙を転動路22として使用する態様である。更に、板状物24や円柱状物26に代えて中空のパイプ状物などを略平行に並べて構成することができる。部材間を転動路22とする場合は、ゴルフボールが隣接する部材の2点に接触して移動するため、内部を1点で接触しながら転動するU字状物の場合と比較して直線状に移動できる。
【0022】
転動路22は、例えば
図3Aに示すように、複数の板状物24を平行に並べビス28などで固設して配設することができる。また、
図3Bに示すように、円柱状物26として円筒状の下端に脚材27を垂直に固定した部材26を、底部14に前記円柱状が平行になるように前記脚材を埋設固定して形成することもできる。いずれの場合も、各部材間の間隙を転動路22として使用し、隣接するゴルフボールが接触しないように板状物24や脚材27を含む円柱状物26を固設する。なお、転動路22の傾斜を調整することで受部20の勾配(θ1)を調整することができる。例えば
図3Aに示すように複数の板状物24を平行に並べて受部20に転動路22を形成する場合には、異なる長さのビス28を用いて板状物24を固設し、板状物24の高さを漸次調整することで受部20の勾配(θ1)を調整することができる。また、
図3Bに示す場合には、異なる長さの脚材27を円柱状物26に固定することで勾配(θ1)を形成することができる。
【0023】
受部20は底部14の表面の一部を構成するものであり、例えば底部14をコンクリートで成形する際に、敷設した底部14をそのまま受部20とすることができる。また、コンクリートに溝を設けて転動路22を形成してもよい。一方、予め板状物24を所定の間隔を設けて並べた簀子状物を作成し、これを底部14に載置または固設する態様であってもよい。その際、所定の勾配(θ1)となるように簀子状物を底部14に載置または固定することで勾配(θ1)を1~7%に調整することができる。
【0024】
受部20や転動路22を構成する部材に限定はなく、金属、合成樹脂、これらの複合部材、コンクリート、木材、陶材、その他、及びこれらの複合材であってもよい。合成樹脂を使用する場合は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなどの摺動グレードを構成する部材であってもよい。
【0025】
貯水槽10に配設する移送溝A30の位置や数は、受部20の勾配(θ1)に従って転動するゴルフボールを回収できる位置であれば特に制限はない。
図1では、底部14Aに勾配(θ1)を有する2つの受部20とこれら2つの受部20から移送されるゴルフボールを回収する1つの移送溝A30が形成される態様を、底部14Bおよび14Cには、それぞれ分離壁16に沿って移送溝A30が形成される態様を示す。
【0026】
移送溝A30は、例えば市販のU字管などで構成することができる。その際、移送溝A30と受部20との接合部は、受部20の上を転動するゴルフボールを回収できるように、U字管の上端が受部20または転動路22の上面と同じ高さであるかそれより低くなっている。
図2Aおよび
図2Bでは、転動路22T、22Eの端部下方に移送溝A30の上端が埋設される態様を示す。移送溝A30においてゴルフボールが移動する内側の幅は150~360mm、より好ましくは240~300mmであり、また、深さは150~360mm、より好ましくは240~300mmである。なお、U字管に限定されず、現場打ちコンクリートによって設置してもよい。
【0027】
図4Aに
図1のC-C視側面図を示す。基準高のやや下側まで貯水した1例であり、受部20の上端が水面と平行に側壁12から延設され、受部20の上面には転動路22が配設されている。受部20から転動したゴルフボールを受ける移送溝A30は、移送溝B50に向かって降下する勾配(θ2)を有している。移送溝A30の勾配(θ2)は、貯水槽10の底部14のサイズや移送溝A30の長さなどを勘案し、受部20の勾配(θ1)が1~7%の範囲内となるように設計される。好ましくは移送溝A30の勾配(θ2)は0.1~3%、より好ましくは0.2~2%である。この勾配(θ2)によって、移送溝A30に導入されたゴルフボールが、貯水槽10の外側に配設される移送溝B50側に移動される。
【0028】
移送溝A30の下流端にはゲート40が配設され、貯水槽10内の水とゴルフボールとが移送溝B50へ移動することを制御している。
【0029】
ゲート40の構造は特に限定されず、ゲート40の開閉方法も手動式、電気や水力などの動力を使用する動力式、ゴルフボールが貯留したことを人為的に観察した後に開閉する人為式でも、センサーなどでゴルフボールの貯留を感知し、この感知に従って自動的に開閉する自動式であってもよい。
図4Aに、貯水槽10の側壁12であって移送溝A30の下流端に設けた開閉自在のゲート40の1例を示す。ゲート40を開放すると移送溝A30のゴルフボールは水と共に側壁12の外周に配設したゴルフボール移送溝B50に移動することができる。
【0030】
図4Aに示すゲート40は、表面が円弧状の遮蔽部材40Aと、貯水槽10の外側に配設された開閉装置40Bとからなる。遮蔽部材40Aは、その左右端に放射状に遮蔽部材40Aを支える扇状部材41Aの脚が一体に配設され、扇状部材41Aの中心軸は支持軸40Dに回転自在に固設され、支持軸40Dを中心に遮蔽部材40Aが上下動する。開閉装置40Bは、移送溝A30の延長線上であって、貯水槽10および移送溝B50の外側に配設されたマス40Cに収納され、側壁12とマス40Cとの間に設けた支持軸40Dを介して可動する連結部材40Eと連設し、連結部材40Eの端部は開閉装置40Bおよび遮蔽部材40Aと連結している。なお、側壁12および移送溝B50には遮蔽部材40Aの解放によって移送溝A30内のゴルフボールおよび水が移送溝B50に導入できるように、貫通する切欠き52が形成されている。
【0031】
ゲート40は、予め別個に調製した遮蔽部材40A、扇状部材41A、支持軸40D、その他を組み込んだ筐体44Aを移送溝A30に装着するものであってもよい。このような筐体44Aの斜視図を
図4Bに示す。角筒状物の対向する側面に一対の支持軸40Dが形成され、遮蔽部材40Aの側面に一体に形成された対向する2枚の扇状部材41Aの軸中心がそれぞれ回転自在に支持軸40Dに固設されている。なお、筐体44Aの天面は、遮蔽部材40Aの回転を妨げないように一部が解放されている。また、
図4Cに、移送溝30、側壁12、移送溝B50、切欠き52との位置関係を示す。
【0032】
図5Aに筐体44Aを使用したゲート40の平面図を、
図5Bにその側面図を、
図5Cに
図5AのA-A断面図を示し、ゲート40の構成をより詳細に説明する。
図5Aに示すように、筐体44Aの装着位置は移送溝A30の下流端であり、移送溝A30に嵌着しうる形状で構成されている。移送溝A30の延長線上に形成されたマス40Cに開閉装置40Bが収納され、側壁12とマス40Cとの上端間に配設された支持軸40Dに連結部材40Eが軸支され、開閉装置40Bによる制御が連結部材40Eを介して遮蔽部材40Aに連動する仕組みとなっている。
【0033】
支持軸40Dに軸支する連結部材40Eは単一部材であってもよく、一端に連結部材補助部材42Eを搖動自在に軸支した態様であってもよい。連結部材40Eの一端、またはこれに連接する連結部材補助部材42Eは回転板44Bと回転自在に連結し、連結部材40Eの他端、またはこれに連接する連結部材補助部材42Eは遮蔽部材40Aの上端と連結している。回転板44Bは、開閉装置40Bを構成する駆動装置42Bの駆動によって回転し、駆動装置42Bには回転板44Bの回転を制御する一対のリミッタ46Buとリミッタ46Bdが固設されている。駆動装置42Bの駆動によって回転板44Bが約半回転したときに、遮蔽部材40Aの垂直移動距離がゲート40の開閉ストロークとなるように、リミッタ46Buとリミッタ46Bdが配設されている。なお、マス40Cの上部には、ゴルフボールが落下しないように、屋根部が配設されていてもよい。
【0034】
図5Bは、ゲート40の遮蔽部材40Aによって移送溝30が閉鎖された態様を示す。連結部材40Eの一端の開閉装置40B側が支持軸40Dを支点に上方に、他端の遮蔽部材40A側が方に傾いている。遮蔽部材40Aを降下させる回転板44Bの回転方向を正回転とすれば、駆動装置42Bを逆回転させることで遮蔽部材40Aを下方から上方に移動させることができる。なお、角筒状の筐体44Aの側壁12側の端部近傍にはフランジ49Aが形成され、切欠き52近傍の側壁12に筐体44Aのフランジ49Aを密着させることで水の遺漏を防止することができる。
【0035】
移送溝B50は、池施設100内に設けた全ての移送溝A30と連設し、かつ移送溝B50の下流端は水-球分離装置60と連設し、これによって移送溝A30内のゴルフボールを水-球分離装置60へと移送することができる。移送溝B50は、各移送溝A30に別個に配設されるものであってもよく、例えば
図1に示すように、貯水槽10の側壁12の外側に沿って移送溝B50が配設され、全移送溝A30と連設する構造であってもよい。何れの態様であっても、移送溝A30の端部は側壁12に設けたゲート40を介して移送溝B50に連設するため、側壁12および移送溝B50の該当箇所にはゲート40用の切欠き52が形成される。なお、移送溝B50は、側壁12の外周に沿って単独で形成されてもよいが、側壁12に略並行してその外側に設けられた側壁12とほぼ同じ高さの側壁56との間に設けられたものであってもよい。側壁56を形成すると、その一部をマス40Cの側壁として共通に使用することができる。
【0036】
移送溝B50は、移送溝A30と同様に例えば市販のU字管などで構成することができる。なお、移送溝B50のゴルフボールが移動する内側の幅および高さも移送溝A30と同様に、それぞれ別個に150~360mm、より好ましくは240~400mmである。移送溝B50も水-球分離装置60に向かって降下する勾配(θ3)を有し、勾配(θ3)は0.1~5%、より好ましくは0.2~3%である。
【0037】
次に、
図6を用いて、貯水槽10に分離壁16を設けたことで底部14が分割され、各底部14の受部20、移送溝A30、移送溝B50の勾配を緩くしても、および従来の池施設より水深が浅くてもゴルフボールを水-球分離装置60に移送できることを説明する。
【0038】
図6では、貯水槽10は、長さ(L1)約38.1m、幅(W1)18mの角を丸くした長方形であって、図面に向かって右上角部に長さ(L2)3m、幅(W2)8mの凹部が形成された形状とする。底部は、底部14A、底部14Bおよび底部14Cに3分割され、底部14Aの中央、底部14Bの分離壁16沿い、および底部14Cの分離壁16沿いに幅0.5mの移送溝A30がそれぞれ配設されている。分離壁16の厚さを0.3m、底部14Aの移送溝A30までの長さ(L3)を8m、底部14Bの長さ(L4)を10m、底部14Cの長さ(L5)を10mとすれば、移送溝B50は、長さ(L6)は28.1mとなる。
【0039】
貯水槽10の側壁12の延長線が交差する右上角の交点A(以降、A点と称する。)を貯水槽の底部基準点として、以下説明する。まず、各底部14の受部20は移送溝A30に向かって降下する勾配(θ1)を有し、移送溝A30に対抗する受部20の辺の高さをA点に等しいとする。すなわち、A点は受部20の最も高い位置を示す。各底部14の移送溝A30の最上流地点を移送溝A30T、移送溝A30の最下流地点を移送溝A30Eとする。
図6に示すように、各底部14の移送溝A30Tを、それぞれ30T(A)、30T(B)、30T(C)、移送溝A30Eを、それぞれ30E(A)、30E(B)、30E(C)とし、各底部14の受部20の勾配(θ1T)を1.5%とし、移送溝A30の勾配(θ2)をそれぞれ1.21%、0.8%、0.5%とし、移送溝B50の勾配(θ3)を0.5%とする。
【0040】
底部14Cで例示すれば、受部20の勾配(θ1T)は1.5%であるから30T(C)は、A点より0.15m(=10m×1.5%)沈む。
図6において(↓)は、A点からの沈みを示す。底部14Cの移送溝A30の勾配(θ2)は0.5%であるから30E(C)は30T(C)より0.09m(=18m×0.5%)沈む。すなわち30E(C)は、A点より0.24m(=0.15m+0.09m)深い位置となる。
移送溝B50の勾配(θ3)は0.5%であるから、長さ28.1mの移送溝B50は30E(C)から底部14Aのゲート40に向かって0.14m(=28.1m×0.5%)沈む。30E(C)はA点より0.24m降下した位置であるから、移送溝A30および移送溝B50の深さを0.3mとすれば、移送溝B50の最下流の底部はA点から0.68m(=0.24m+0.3m+0.14m)深い位置となる。A点は受部20の最も高い位置を示すから、
図6に示す池施設100は、貯水槽10を分離壁16で2以上に分割したことで、受部20の最上端からわずか約70cm下方に掘り下げた位置に深さ30cmの移送溝B50の底部が埋設されたものといえる。なお、
図6では貯水槽10の形状に凹部が存在するため、A点が貯水槽10の外側となったがA点の位置に限定はない。この池施設100は、A点より上方に0.1mの高さに水を満たして使用することができ、水量が少なくてもペナルティーエリアとして使用することができる。一般には、この池施設100は、長さ(L1)30~200m、幅(W1)15~50mの範囲で応用可能である。
【0041】
なお、底部14Cの30E(C)近傍の受部(20)の勾配(θ1E)は2.4%(=0.24m/10m)と算出される。
図6には、底部14A、底部14Bの30E(A)、および30E(B)の勾配(θ1E)も併せて記載する。
【0042】
池施設100には、移送溝B50から移送される水を分離し、およびゴルフボールを集球する水-球分離装置60が配設される。水とゴルフボールとを分離できれば、その構造に特に限定はない。この水-球分離装置60は、分離された水を貯留することができる循環水ピットを内蔵し、池施設100には、水-球分離装置60と別個にこのような循環水ピットを含むことが好ましい。
図7に、循環水ピット60Aを内蔵する水-球分離装置60が貯水槽10に連設する態様を示す。移送溝B50の下流端が水-球分離装置60と連設し、分離された水が循環水ピット60Aに集積され、ゴルフボールがボールピット60Bに集積される。循環水ピット60Aの水は、ポンプ62によって給水され給水パイプ64を介して貯水槽10に循環される態様となっている。
【0043】
この水-球分離装置60では、移送溝B50から排出される水とゴルフボールとが導通路61Aを介して循環水ピット60Aに導入される。導通路61Aは、水とゴルフボールとを移送溝B50から循環水ピット60Aに導入できればよく、パイプ状であっても、上部が除去された樋状であってもよい。また、1に限らず2以上を組み合わせて構成されるものであってもよい。導通路61Aの底部には、ゴルフボールは落下させないが水を落下させるサイズの貫通孔が形成され、この貫通孔から落下した水は循環水ピット60Aに貯水され、導通路61Aを通過したゴルフボールはボールピット60Bに集球される配置となっている。ボールピット60Bのゴルフボールは、配球管62Bやベルトコンベア64Bなどの電動具を介して打席に配球することができる。循環水ピット60Aのサイズに制限はないが、いずれかの底部14に収納される水の全量を収納できることが好ましい。貯水槽10の水を循環使用する際に、貯水槽10に充填する水の全量を収納する循環水ピットを設けることは容易でない。しかしながら、分離壁16によって各底部14を分離したため各受部20、移送溝A30、移送溝B50の各勾配を緩く設定することができ、各底部14の水量を少なくでき、加えて分離壁16の位置を適宜設定することで区分された各底部14の水量を同量に近づける設計を行うことができ、これによって循環水ピット60Aの容量も小さく設定することができる。
【0044】
循環水ピット60Aに貯水された水は、ポンプ62で吸い上げ、給水パイプ64を介して貯水槽10に水を循環させることができる。給水パイプ64は側壁12の近傍に設けた開閉自在の給水口66と連通し、給水口66は側壁12であって、移送溝A30の上流側に設けた給水用貫通孔18と連通している。給水口66が開放状態にあれば循環水ピット60Aの水を給水用貫通孔18から移送溝A30を経て貯水槽10に循環させることができる。給水用貫通孔18から水を循環供給することで、移送溝A30のゴルフボールをゲート40側に転動させることができる。
【0045】
池施設100は、更に、移送溝B50と水-球分離装置60との間に総合ゲート70が配設されるものであってもよい。いずれかの底部14のゲート40から水が遺漏する場合でも、総合ゲート70によって水の流出を抑制し、貯水槽10の水を所定量に維持することができる。この目的のため総合ゲート70は、移送溝B50に形成されるゲート40のいずれよりも更に下流に形成される。例えば
図7に示すように、底部14Aのゲート40の下流であって、貯水槽10の外周に形成される側壁56に隣接して形成されるものを例示することができる。
【0046】
総合ゲート70の構成に限定はないが、1例として
図8Aに総合ゲート70の側面図を、
図8Bにその平面図を、
図8Cに、
図8BのB-B線断面図を示す。この総合ゲート70は、移送溝B50の水流を遮蔽する遮蔽部材70A、遮蔽部材70Aの開閉を制御する開閉装置70B、開閉装置70Bを収納するマス70Cで構成される。なお、移送溝B50は側壁12と側壁56との間に形成され、側壁56の一部が共通してマス70Cの側壁を構成している。説明の便宜のため、共通使用されるマスCの側壁を側壁56として説明する。なお、側壁12と側壁56の高さはいずれも基準高と同じ高さで構成されている。
【0047】
遮蔽部材70Aの両端は、移送溝B50の両側面に配設される側壁12および側壁56との壁に設けたそれぞれ一対のガイド板58に上下動可能に挿入されている。ガイド板58には遮蔽部材70Aの上下動を誘導するガイド溝59が形成されている。側壁12と側壁56の頂部には、両壁の頂部に亘って支持される支持部材74Aが固設され、支持部材74Aには滑車76Aが回転自在に固設されている。
【0048】
マス70Cには開閉装置70Bが収納され、開閉装置70Bは駆動装置72B、駆動装置72Bの駆動を伝達する伝達部材、および錘78Bとを含み、伝達部材として使用されるロープRは、駆動装置72Bや側壁56に回転自在に固設される滑車74B、滑車76Bを経て、一端は錘78Bに他端は支持部材74Aとに連結している。駆動装置72Bの駆動を開始すると、駆動装置72Bの回転によって錘78Bの上端がリミッタ79Bdまで降下する。ロープRの他端に連結する遮蔽部材70Aは、ガイド板58に設けられたガイド溝59内を下から上に上昇し、移送溝B50が解放される。駆動装置72Bの駆動を停止すると、遮蔽部材70Aは自重によりガイド板58のガイド溝59に沿って高さHだけ下方に移動し、ゲート70が閉鎖される。遮蔽部材70Aの降下により錘78Bはリミッタ79Bdより高さHだけ上方に固設されたリミッタ79Buまで上昇する。
図8Aは、駆動装置72Bの駆動を停止することにより遮蔽部材70Aが自重でガイド板58のガイド溝59に沿って下方に移動し、遮蔽部材70Aの底部が移送溝B50の底部に密着し、移送溝B50の流路を塞いだ態様を示す。なお、マス70Cの上部には、ゴルフボールが落下しないように、屋根部が配設されていてもよい。
【0049】
次に、池施設100の使用方法を説明する。
まず、池施設100に水を充填する。水の充填に先立ち、底部14(A、B、C)の各ゲート40および総合ゲート70を閉鎖する。ゲート40の駆動装置42Bを駆動し、回転板44Bをリミッタ46Buまで回転させる。これにより回転板44Bに連接する連結部材40Eの端部が支持軸40Dを軸中心として上方に移動し、これに対抗して遮蔽部材40Aが連結する他端が降下し、遮蔽部材40Aの下端が移送溝A30の底部と接触する。これによってゲート40が閉鎖される。また、総合ゲート70では、駆動装置72Bの駆動を停止することで遮蔽部材70Aがガイド板58に設けられたガイド溝59内を上から下に自重で降下し、遮蔽部材70Aの下端が移送溝B50の底部と接触する。ゲート40および総合ゲート70が閉鎖されたことを確認した後、貯水槽10に水を供給する。
【0050】
水を充填した池施設100は、ゴルフ練習場のペナルティーエリアとして使用することができる。池施設100の上空に飛来したゴルフボールは、各底部14の受部20の上に落下する。ゴルフボールの落下による衝撃は、貯水槽10に充填した水によって緩和されている。受部20に落下したゴルフボールは、受部20の勾配(θ1)に従い、転動路22が配設される場合には転動路22に従って移送溝A30に転動する。なお、受部20を経ずに直接に移送溝A30や移送溝B50に落下するゴルフボールが存在してもよい。
【0051】
次に、貯水槽10からゴルフボールを回収する方法を説明する。
総合ゲート70が配設されている場合には、総合ゲート70を開放する。マス70C内に配設された駆動装置72Bを駆動し、滑車74B、滑車76Bに配設された伝達部材を介して錘78Bをリミッタ79Bdまで降下させる。錘78Bの降下に伴いロープRが最終的に一対のガイド板58のガイド溝59に沿って遮蔽部材70Aを上方に移動させ、総合ゲート70が解放される。なお、駆動装置72Bは駆動を停止すると遮蔽部材70Aが降下して総合ゲート70を閉鎖する。これにより、貯水槽10に充填した水の天面から底部14(A、B...)を分割する分離壁16の頂部までの水が排出される。また、後記するように、水-球分離装置60とは別個に、貯水槽10の下部に貯留槽(図示せず)が配設される場合には、移送溝B50を経ずに底部14(A、B...)から直接に貯留槽に水を導入してもよい。
【0052】
次いで、底部14の各ゲート40を順次開放する。マス40C内に配設された駆動装置40Bを駆動させ、回転板44Bをリミッタ46Bdまで回転させる。回転板44Bに連接する連結部材40Eが支持軸40Dを軸中心として下方に移動し、これに伴って遮蔽部材40Aが連結する他端が上昇し、遮蔽部材40Aの下端が移送溝A30の底部から離脱してゲート40が解放される。底部14(A、B、C)の水はゲート40から切欠き52を経て移送溝B50に移動し、この水の移動につれて、受部20に残存するゴルフボールも受部20の勾配(θ1)および転動路22の勾配(θ1)に従って移送溝A30に移動する。移送溝A30のゴルフボールは、移送溝A30の勾配(θ2)、及び水流に沿ってゲート40側に移動し、さらに切欠き52を経て移送溝B50に移動する。
【0053】
移送溝B50に移送されたゴルフボールは、移送溝B50の勾配(θ3)およびゲート40からの水流によって総合ゲート70側に移動し、さらに総合ゲート70を通過して水-球分離装置60に移動する。移送溝B50の水とゴルフボールは、水-球分離装置60の導通路61Aを経て水は循環水ピット60Aに、ゴルフボールはボールピット60Bに集球される。循環水ピット60Aの水をポンプ62で吸い上げ、給水パイプ64を介して側壁12に設けた給水用貫通孔18から貯水槽10に循環させることもできる。給水用貫通孔18は、移送溝A30の上流側に形成されているため、水の循環供給により、移送溝A30のゴルフボールのゲート40側移動の一助とすることができる。
【0054】
分離壁16で分離された各底部14は、何れの底部14からゴルフボールを回収操作を行ってもよいが、各底部14のゲート40を一度に開放することなく、いずれかの底部14のゲート40を開放し、この底部14のゴルフボールの回収が終了した後に他の底部14のゴルフボールを順次排出することが好ましい。
例えば、総合ゲート70、および底部14Cのゲート40を開放して水流と共にゴルフボールを水-球分離装置60に移送し、循環水ピット60Aに回収した水を給水用貫通孔18から底部14Cの移送溝A30の上流側に循環させると、底部14Cの移送溝A30に残存するゴルフボールを容易に回収することができる。その後、底部14Cと同様に操作して底部14B、または底部14Aのゲート40を開放し、同様にゴルフボールを水-球分離装置60に移動させ、底部14Cと同様に操作して給水用貫通孔18から底部14Bまたは底部14Aの移送溝A30の上流側に循環させる。なお、ボールピット60Bに集球されたゴルフボールは、順次ベルトコンベアなどを使用して打席側に移送させる。池施設100は、貯水槽10の底部14が複数に分割されているため、底部14のゴルフボールを底部14毎に回収することができる。ゴルフボールは相互の接触により転動が阻害されるが、各底部14毎に処理できるため、移送溝A30や移送溝B50でのゴルフボールの転動を円滑に行うことができる。分離壁16で分割された各底部14は受部の勾配(θ1)が1~7%という低傾斜であってもゴルフボールを効率的に貯水槽10外に排出することができる特徴がある。
【0055】
なお、本発明の池施設100を構成する水-球分離装置60が、分離された水を貯留することができる循環水ピット60Aを内蔵する場合には、貯水槽10の容積と循環水ピット60Aとの容積が適合していることが好ましい。これにより、使用後の排水を貯水して水を再利用することができる。なお本発明では循環水ピット60Aとは別個に、排水する際に貯水槽10に導入した水の水面から分離壁16の頂部に至る水を貯留する貯留槽を別途設けてもよい。貯水槽10の地下や受部20の下に部屋を設けこのような貯留槽とすることができる。また、貯水槽10の中に島を設け、島の下部を貯留槽とすることもできる。貯水槽10の底部に貯留する場合は、貯水槽10の面積以下であればよいため貯留槽のための深堀りが不要で、工事が容易である。貯留槽の水はポンプその他によって再度貯水槽10に循環し使用することができる。
一方、循環水ピット60Aの容量は、排水の際にいずれかの底部14(A、B...)の分離壁16の頂部より下部の水を貯留しうる容量である。本発明では、貯水槽10が分離壁16で底部14が2以上に分割され、かつゴルフボールの回収の際には、各底部14(A、B...)毎にゴルフボールを回収することができる。このため、循環水ピット60Aは、分離壁16より下部の水量であって、底部14(A、B...)のいずれかの最大貯水量を貯水できればよい。例えば、分割された底部14の内、分離壁16で仕切られた底部14Aの分離壁16より下部の貯水量が最も大容量である場合には、循環水ピット60Aはこの容量の水を貯水できればよい。これにより循環水ピット60Aの容量を小型化することができる。なお、本発明では、分離壁16の配設位置や配設数によって循環水ピット60Aの容量を調整することができる。
【0056】
図9は、本発明の池施設100を設置したゴルフ練習場の1例である。池施設100は水-球分離装置60を含むものであるが、ゴルフ練習場に配設された水流式ボール回収システムを利用して、本発明の池施設100を構築することができる。例えば、少なくとも底部14が分離壁16によって2以上に分割された貯水槽10を有し底部14に受部20、移送溝A30、ゲート40等を有する貯水槽10を設け、移送溝A30からの水とゴルフボールとをゲート40から排出させる。を既存の水流式ボール回収システムの水路を移送溝B50とし、ゲート40から排出されたゴルフボールと水と移送溝B50に導入し、前記水流式ボール回収システムの水-球分離機能によって水とゴルフボールとを分離する。このような態様の一例が
図9に示されている。
図9においてU、U1、U2、U3は水流式ボール回収システムを構成する集球用U字管であり、一部が移送溝B50として機能している。
図9では、起伏を設けた地面に、ペナルティーエリアとして機能する池施設100に加え、窪地に砂が充填されたバンカーB、目標グリーンG、模造樹木T、集球用U字管Uが配置されている。なお、集球用U字管U1は小高い場所に、集球用U字管U2および集球用U字管U3は池施設100の底面の下を横断し集球用U字管Uに流れ込むように設計されている。本発明の池施設100は、貯水槽10の底部14の水深を0.25m~0.55mとすることができるなど貯水槽10が浅いため、ゴルフ練習場に他の配管その他の配設が容易となる。
【符号の説明】
【0057】
10・・・貯水槽、
12・・・側壁、
14・・・底部、
16・・・分離壁、
18・・・給水用貫通孔、
20・・・受部、
22・・・転動路、
30・・・移送溝A、
40・・・ゲート、
40A・・・遮蔽部材、
44A・・・筐体、
40B・・・開閉装置、
42B・・・駆動装置、
44B・・・回転板、
40C・・・マス、
40D・・・支持軸、
40E・・・連結部材、
42E・・・連結部材補助部材、
50・・・移送溝B、
52・・・切欠き、
56・・・側壁、
58・・・ガイド板、
60・・・水-球分離装置、
60A・・・循環水ピット、
60B・・・ボールピット、
70・・・総合ゲート、
70A・・・遮蔽部材、
74A・・・支持部材、
70B・・・開閉装置、
72B・・・駆動装置、
70C・・・マス