(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】機械的結合装置
(51)【国際特許分類】
G04F 7/08 20060101AFI20230804BHJP
G04B 11/00 20060101ALI20230804BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
G04F7/08 A
G04B11/00
G04B13/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018092863
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2021-04-16
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリヴェイラ, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンツヴァイク, アルノー
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5042017(US,A)
【文献】特表2008-501534(JP,A)
【文献】国際公開第2016/055409(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04F 7/00 - 13/06
F16D 11/00 - 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1マイクロキャビティ(C1)を有する第1領域(Z1)を含む、第1パーツ(1)と、
少なくとも第2マイクロキャビティ(C2)を有する第2領域(Z2)を含む、第2パーツ(2)と、
を含む、機械的結合装置(100)であって、
前記第1及び第2領域は、機械的結合構成において互いに接触し、
前記第1マイクロキャビティ及び前記第2マイクロキャビティは、粗さまたは表面状態が制御された領域を形成し、前記粗さまたは表面状態は、異なるパーツ間の摩擦力を制御、または最大化するために用いられ、
前記第1マイクロキャビティ及び前記第2マイクロキャビティは、前記第1及び第2パーツ間の接点において、前記第1パーツから前記第2パーツへ伝達される力に平行に、または実質的に平行に向けられるマイクロ溝であり、
前記第1マイクロキャビティは、前記第1マイクロキャビティの底から鈍角の角度(α)を形成する側面を有し、及びまたは前記第2マイクロキャビティは、前記第2マイクロキャビティの底から鈍角の角度(α)を形成する側面を有する、
装置。
【請求項2】
前記第1マイクロキャビティは
100μm未満の深さを有し、及びまたは前記第2マイクロキャビティは100μm未満の深さを有し、及びまたは前記第1及び第2マイクロキャビティは同一の深さまたは実質的に同一の深さを有し、及びまたは前記第1マイクロキャビティは200μm未満の幅を有し、及びまたは前記第2マイクロキャビティは200μm未満の幅を有し、及びまたは前記第1及び第2マイクロキャビティは同一の幅または実質的に同一の幅を有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1パーツが、フレームに対して可動に取付けられるパーツであり、及びまたは前記第2パーツが、前記フレームに対して可動に取付けられるパーツであり、または前記フレームに対して固定して取付けられるパーツである、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1領域が、前記第1パーツの第1表面(S1)の一部を形成し、及びまたは前記第2領域が、前記第2パーツの第2表面(S2)の一部を形成する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1表面の部分は、内側または外側に微細構造がなされ、及びまたは前記第2表面の部分は、内側または外側に微細構造がなされる、
請求
項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1領域を前記第2領域に対して接触するよう弾性的に戻す要素を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項の装置を製造するための方法であって、
前記第1マイクロキャビティを得るために、レーザを用いて前記第1パーツを処理するステップと、
前記第2マイクロキャビティを得るために、レーザを用いて前記第2パーツを処理するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記第1領域を摩擦減少層で被膜する事前ステップ、及びまたは前記第2領域を摩擦減少層で被膜する事前ステップを含む、
請求項7に記載の
製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法の実施により得られる装置(100)。
【請求項10】
請求項1から6及び9のいずれか一項に記載の機械的結合装置を含む、巻真における修正用機構、日付の修正用機構、または香箱である、時計機構(110)。
【請求項11】
請求項1から6及び9のいずれか一項に記載の機械的結合装置、または請求項10に記載の機構を含む、時計ムーブメント(120)。
【請求項12】
請求項11に記載のムーブメント、または請求項10に記載の機構、または請求項1から6及び9のいずれか一項に記載の機械的結合装置を含む、時計(130)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用機械的結合装置に関する。本発明はまた、当該種類の結合装置を含む、時計機構に関する。本発明は更に、当該種類の装置または当該種類の機構を含む、時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該種類の装置または機構またはムーブメントを含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
戻し手段により生成される力の効果の下、2つの部品が摩擦により一体化されることができる、時計連結、特に垂直連結が知られている。しかしながら、当該種類の解決策は、戻し手段が生成する力に対して連結により伝達されるトルクに関して、最適ではない。特にエネルギー考察、機械的応力、及び寸法に関して、戻し要素が生成する力を無制限に増加することは不可能なことから、時計連結により伝達されるトルクを増加することが難しい。加えて、従来技術から既知の時計連結は、フラッタリングまたは突合せまたは閉塞のリスクに曝される可能性がある。
【0003】
特許文献1から、連結ばねのサイズとは独立して、下側及び上側円盤間の摩擦を増加するよう設計された、クロノグラフ用の摩擦による垂直連結装置が知られている。当該連結の特徴は、円盤間の伝達トルクが、装置の下側及び上側円盤間に介在する粘弾性素材製のOリング密封の接着に由来することからなる。当該種類の解決策は、時間経過により変化し、連結のトルク抵抗から減じる恐れがある、密封の特性のため、最適ではない。
【0004】
特許文献2から、付着による歯車の伝達用システムが知られている。この場合、動きは、駆動及び被駆動歯車の周辺パーツの付着によって独占的に伝達される。この目的のため、駆動歯車の弾性アームは予圧され、各歯車の周辺パーツの適切な付着を保証するようなサイズを有する。当該種類の解決策は、特にクロノグラフ水平連結装置との関連において、フラッタリングのリスクを除去することを可能にするが、特に衝撃を受けた場合に時機を逸した滑動のリスクを完全に除去することはできない。加えて、当該種類の解決策は、各歯車の周辺パーツ間の永続的且つ十分な接触圧を保証するため、高い摩擦係数を有する特定の素材と弾性要素の使用を必要とする。
【0005】
レーザを用いてその表面状態が変更された時計部品もまた、従来技術から知られている。特許文献3は、例えば、レーザを用いて微細構造がなされた少なくとも1つの領域を局所的に含む、マイクロメカニカル部品を開示し、当該微細構造領域は、潤滑剤物質の貯蔵部として機能するよう構成された、マイクロキャビティにより形成される3次元表面を有する。特許文献4は、少なくとも部分的に制御された表面のストラクチャ化を用いて、要素の弾性及び運動性能を変更する利点を有する、ばね要素の製造方法を説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第2015145号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3051364号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3067757号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3002635号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2085832号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の欠点の除去を可能とし、従来技術から既知の装置の改善を可能とする、結合装置を提供することである。特に、本発明は、機械的結合装置の要素に作用する戻し力とは独立して最大化可能な、機械的結合装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、結合装置は請求項1に定義される。
【0009】
結合装置の異なる実施形態は請求項2から6と9に定義される。
【0010】
本発明によれば、製造方法は請求項7に定義される。
【0011】
製造方法の一実施形態は、請求項8に定義される。
【0012】
本発明によれば、時計機構は請求項10に定義される。
【0013】
本発明によれば、時計ムーブメントは請求項11に定義される。
【0014】
本発明によれば、時計は請求項12に定義される。
【0015】
添付の図面は、本発明に係る時計の異なる実施形態を、例として図示する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図2】
図2は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である
【
図3】
図3は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図4】
図4は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図5】
図5は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図6】
図6は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図7】
図7は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図8】
図8は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図9】
図9は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図10】
図10は、機械的結合装置の第1実施例を含む、本発明にかかる時計の第1実施形態の図である。
【
図11】
図11は、機械的結合装置の第2実施例を含む、本発明にかかる時計の第2実施形態の図である。
【
図12】
図12は、機械的結合装置の第2実施例を含む、本発明にかかる時計の第2実施形態の図である。
【
図13】
図13は、機械的結合装置の第2実施例を含む、本発明にかかる時計の第2実施形態の図である。
【
図14】
図14は、機械的結合装置の第3実施例を含む、本発明にかかる時計の第3実施形態の図である。
【
図15】
図15は、機械的結合装置の第3実施例を含む、本発明にかかる時計の第3実施形態の図である。
【
図16】
図16は、機械的結合装置の第3実施例を含む、本発明にかかる時計の第3実施形態の図である。
【
図17】
図17は、機械的結合装置の第4実施例を含む、本発明にかかる時計の第4実施形態の図である。
【
図18】
図18は、機械的結合装置の第4実施例を含む、本発明にかかる時計の第4実施形態の図である。
【
図19】
図19は、機械的結合装置の第5実施例を含む、本発明にかかる時計の第5実施形態の図である。
【
図20】
図20は、機械的結合装置の第5実施例を含む、本発明にかかる時計の第5実施形態の図である。
【
図21】
図21は、機械的結合装置の第6実施例を含む、本発明にかかる時計の第6実施形態の図である。
【
図22】
図22は、機械的結合装置の第6実施例を含む、本発明にかかる時計の第6実施形態の図である。
【
図23】
図23は、機械的結合装置の第7実施例を含む、本発明にかかる時計の第7実施形態の図である。
【
図24】
図24は、機械的結合装置の第8実施形態の第1変形実施形態を含む、本発明にかかる時計の第8実施形態の第1変形形態の図である。
【
図25】
図25は、機械的結合装置の第8実施形態の第1変形実施形態を含む、本発明にかかる時計の第8実施形態の第1変形形態の図である。
【
図26】
図26は、機械的結合装置の第8実施形態の第1変形実施形態を含む、本発明にかかる時計の第8実施形態の第1変形形態の図である。
【
図27】
図27は、機械的結合装置の第8実施形態の第1変形実施形態を含む、本発明にかかる時計の第8実施形態の第1変形形態の図である。
【
図28】
図28は、機械的結合装置の第8実施形態の第2変形実施形態を含む、本発明にかかる時計の第8実施形態の第2変形形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
時計130の第1実施形態を、
図1から10を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えば機械式ムーブメントである。ムーブメントは、時計機構110、例えばクロノグラフ機構またはクロノグラフモジュールまたは修正機構を含む。
【0018】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0019】
機械的結合装置100は、例えば、時計用機械的結合装置、または時計用機械的伝達装置である。
【0020】
機械的結合装置100は、
- 少なくとも第1マイクロキャビティC1を有する第1領域Z1を含む第1パーツ1と、
- 少なくとも第2マイクロキャビティC2を有する第2領域Z2を含む第2パーツ2と、
を含み、第1及び第2領域は、機械的結合構成において互いに接触する。
【0021】
第1実施形態において、2つのパーツ1、2、または部品1、2は、それぞれ少なくとも第1領域Z1及び第2領域Z2において微細構造化される。第1パーツは、ムーブメントのフレームに対して可動に取付けられ、第2パーツもまた、ムーブメントのフレームに対して可動に取付けられる。第1パーツ1は、例えば、駆動パーツであり、第2パーツ2は、例えば被駆動パーツである。
【0022】
当該第1実施形態において、第1パーツ1は軸A1周りに旋回し、第2パーツは軸A2周りに旋回する。好ましくは、軸A1、A2は一致し、例えばクロノグラフ垂直連結装置に統合された、機械的伝達装置または機械的連結装置である、機械的結合装置100を形成する。
【0023】
好ましくは、第1パーツは軸A1を有する第1円盤であり、第2パーツは軸A2を有する第2円盤である。クロノグラフが組み合わされると、第2パーツ2は、クロノグラフの係数連鎖を駆動する。その後、第2パーツ2は、時計ムーブメントの最終連鎖と係合する第1パーツで形成される、ランナー1に載置される。
【0024】
戻し要素3、特にばねのような弾性戻し要素は、第1及び第2パーツを互いに対して戻し、特に第1及び第2領域を互いに対して戻す。
【0025】
当該特定の構造において、部品1及び2の第1領域Z1及び第2領域Z2は、
図2においてグレーに着色されて表示される。第1及び第2領域は、接触可能である。第1及び第2領域Z1、Z2は、それぞれ第1表面S1及び第2表面S2に従って配置される。S1表面は平坦であり、軸A1に垂直、または実質的に垂直である。表面S2は平坦であり、軸A2に垂直、または実質的に垂直である。第1領域Z1は平坦な環であり、第2領域Z2は平坦な環である。好ましくは、2つの平坦な環は、実質的に同一の寸法または同一の範囲を有する。第1領域Z1及び第2領域Z2は、それぞれ表面S1及びS2を少なくとも部分的に覆う。
【0026】
第1領域は、第1パーツの第1表面S1の、特に円筒状または円錐台状または平坦である第1表面の一部分を形成する。第2領域は、第2パーツの第2表面S2の、特に円筒状または円錐台状または平坦である第2表面の一部分を形成する。
【0027】
第1領域Z1及び第2領域Z2は、当該実施例においては、特に、それぞれ約180のマイクロキャビティC1、C2を含む。好ましくは、マイクロキャビティC1の形状とマイクロキャビティC2の形状は同一である。当該特定の構造において、マイクロキャビティは、一定の間隔で放射状にへこんだマイクロへこみまたはマイクロ溝であってもよい。
【0028】
マイクロキャビティC1の深さP1は、8μmであってもよい。マイクロキャビティC1の幅L1は、第1及び第2領域Z1、Z2の半径方向寸法に沿って、30μmから40μmまで展開してもよい。マイクロキャビティC2の深さP2は、8μmであってもよい。マイクロキャビティC2の幅L2は、第1及び第2領域Z1、Z2の半径方向寸法に沿って、30μmから40μmまで展開してもよい。
【0029】
好ましくは、当該実施形態において、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2は、特に第1マイクロキャビティの側面F1及び第2マイクロキャビティC2の側面F2は、第1及び第2パーツ間の接点において、特に領域Z1、Z2において、第1パーツから第2パーツへ伝達される力Eに垂直に、または実質的に垂直に、向けられる。このため、当該第1実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、軸A1及びA2に対して半径方向に延長する、すなわち軸A1及びA2に対して半径方向に向いた、マイクロ溝である。
【0030】
当該実施形態において、第1及び第2領域が互いに接触する、即ち、機械的結合する構成において、領域Z1及びZ2は、領域のマイクロキャビティの側面において互いに接触する、即ち一方の領域のマイクロキャビティの側面が他方の領域のマイクロキャビティの側面に接触する。任意で、一方の領域のマイクロキャビティ間の上端が、他方の領域のマイクロキャビティの底と接触してもよい。
【0031】
当該実施形態において、マイクロキャビティC1の側面F1は、マイクロキャビティC1の底91と角度αを形成する。同様に、マイクロキャビティC2の側面F2は、マイクロキャビティC2の底92と角度αを形成する。好ましくは、角度αは、直角または鈍角であってもよい。角度αは、パーツ1及び2の連結を、すなわち側面F1の側面F2に対する接触を許可するのと同時に、第1パーツおよび第2パーツ間で力Eを適切に伝達するよう定義される。
【0032】
マイクロキャビティC1、C2は、パーツ1からパーツ2へ伝達される力Eの向きに従って、対称また非対称であってもよい。
【0033】
マイクロキャビティC1の底91とマイクロキャビティC2の底92は、 調整された表面であってもよく、特に平面であってもよい。代替的に、両者は縁または実質的に縁まで減少されても良い。2つのマイクロキャビティC1間の上端93と、2つのマイクロキャビティC2間の上端94は、調整された表面の形状であってもよく、特に平面であってもよい。代替的に、両者は縁または実質的に縁まで減少されてもよい。
【0034】
調整された表面は、その各点が、表面に含まれる、母線として知られる直線を通る表面である。
【0035】
時計130の第2実施形態を、
図11から13を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えばクロノグラフ機構またはクロノグラフモジュールまたは修正機構といった時計機構110を含む。
【0036】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0037】
第2実施形態は、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2が、第1及び第2パーツ間の接点で第1パーツから第2パーツへ伝達される力Eに平行に、または実質的に平行に向けられる点で、第1実施形態と異なる。このため、当該第2実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、軸A1及びA2に同心円状に延長する、円形マイクロ溝またはマイクロへこみである。当該実施形態において、マイクロキャビティの側面F1は、マイクロキャビティの底91と、厳密に鈍角の角度αを形成する。同様に、マイクロキャビティC2の側面F2は、マイクロキャビティの底92と、厳密に鈍角の角度αを形成する。
【0038】
当該実施形態において、第1及び第2領域が互いに接触する際、即ち機械的結合構成において、領域Z1及びZ2は、そのマイクロキャビティの側面において互いに接触する。好ましくは、一方の領域のマイクロキャビティの上端は、他方の領域のマイクロキャビティの底と接触しない。
【0039】
マイクロキャビティの側面と底との間で形成される角度αのため、ばね3が発揮する、領域Z1とZ2を互いに接触するよう戻す軸方向力は、軸A1及びA2に対して傾斜する、即ち動径成分を有する力により、側面で吸収される。当該動径成分は、角度αが90°に接近するほど大きくなる。動径成分は、一方のパーツ1から他方のパーツ2へ伝達可能な機械的伝達トルクを最大化することを可能にする。
【0040】
時計パーツ130の第3実施形態を、
図14から16を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えばクロノグラフ機構またはクロノグラフモジュールまたは修正機構といった、時計機構110を含む。
【0041】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0042】
第3実施形態は、マイクロキャビティC1及びC2を有する領域Z1及びZ2がその上に形成される表面S1及びS2が、平坦な表面ではない点で、第1及び第2実施形態と異なる。実際、当該第3実施形態において、表面S1及びS2は、有利には、それぞれ回転面、特に回転錘S1、S2である。領域Z1及びZ2は、それぞれ、当該回転面の錘台、特に当該回転錘の錘台である。表面S1及びS2は、有利には同一である。
【0043】
図14は、連結装置型の機械的結合装置の第3実施形態の、連結構成または機械的結合構成での断面図である。当該連結装置は、垂直型の装置である。当該連結装置は、円錐状型という特定の特徴を有する。
図1及び2に図示する連結装置の態様において、円盤2は、クロノグラフの係数連鎖を駆動可能であり、連結ばね3の押さえ効果により、時計ムーブメントの最終連鎖と係合するランナー1に載置可能である。
【0044】
第1及び第2実施形態同様、領域Z1及びZ2は、同数のマイクロキャビティC1、C2を有してもよく、同数でなくてもよい。マイクロキャビティC1、C2の形状は、同一であってもよく、同一でなくてもよい。
【0045】
当該第3実施形態において、好ましくは、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2は、特に第1マイクロキャビティの側面F1及び第2マイクロキャビティC2の側面F2は、第1及び第2パーツ間の接点において第1パーツから第2パーツへ伝達される力Eに垂直に、または実質的に垂直に、向けられる。このため、当該第3実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、好ましくは表面S1及びS2の上端の方向へ延長するマイクロ溝である。表面S1は、好ましくは外表面、即ち凸面を形成する第1パーツの表面である。表面S2は、好ましくは内表面、即ち凹面を形成する第2パーツの表面である。
【0046】
このため、当該第3実施形態において、第1領域Z1は第1外表面S1に形成され、第2領域Z2は第2内表面S2に形成される。
【0047】
時計130の第4実施形態を、
図17及び18を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えばクロノグラフ機構またはクロノグラフモジュールまたは修正機構といった時計機構110を含む。
【0048】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0049】
第4実施形態は、ラジアル連結装置に適用される点で、先行する実施形態と異なり、ラジアル連結装置の作動原理は、例えば特許文献5に説明される。更に詳しくは、駆動部品1は、円盤2mと一体のばね2rを含む被駆動部品2を駆動可能であり、部品1の円筒状表面S1に対して半径方向クランプ力を生成可能である。この目的のため、ばね2rは、部品1の表面S1と接触可能な、表面S2に設けられた1または複数の弾性アームを含む。連結装置の作動の第1変形例において、ばね2rは、駆動部品1がばね2rの押さえ力の影響下で被駆動部品2を一または二回転方向に導けるように、連結作動装置により作動されてもよい。代替的に、駆動部品の回転の第1方向において、弾性アームは屈曲可能であり、駆動部品は被駆動部品を同伴することなく回転する。駆動部品の回転の第2方向において、特に駆動部品と接触するばね2rの弾性アームの端部と突き合い、駆動部品の回転が被駆動部品を駆動する。
【0050】
この場合、被駆動部品2は、円盤2mとばね2rとを含む部品2を意味する。部品2はまた、戻しばね機能を有する、一体成形の部品の形状であってもよい。
【0051】
部品の駆動及び被駆動性質は、逆転させてもよい。
【0052】
当該第4実施形態において、第1領域Z1は、好ましくは回転軸A1を有する回転柱面S1の一部分であり、単数または複数の第2領域Z2は、有利には回転柱面S1の軸A1に平行な母線を有する調整された表面S2の一部分からなる。領域Z2の数は、好ましくはばね2rのアームの数に対応する。
【0053】
当該第4実施形態において、第1領域Z1は好ましくは、内部が微細構造化され、第2領域Z2は好ましくは、外部が微細構造化される。このため、2つの微細構造化領域は、装置の動作中、接触可能となる。
【0054】
時計130の第5実施形態を、
図19及び20を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えば時計香箱といった時計機構110を含む。
【0055】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0056】
第5実施形態は、香箱ぜんまいの香箱胴への機械的結合に適用される点で、先行する実施形態と異なる。特に、機械的接合装置は、時計香箱ぜんまいの、特に自動巻上げを有する小型時計の香箱内で、トルクを制御することを可能にする。当該解決策は、香箱ぜんまいを、香箱胴の内壁へ摩擦により連結することからなる。この目的において、胴に対するぜんまいの摺動トルクを最大限制御、特に最大化するため、1または複数の微細構造領域Z2が香箱胴2の内壁S2に設けられる。好ましくは、ぜんまいは、特にぜんまいのフランジ1は、ぜんまいと胴とにそれぞれ形成されたマイクロキャビティC1及びC2が接触により協働するよう、微細構造化される。代替的に、胴の内壁に設けられた微細構造は、
図20に図示するように、少なくとも一部が胴に形成された少なくとも1つの切欠きの壁S2に形成されてもよい。
【0057】
ムーブメントの従来の動作において、この場合ではぜんまい1が、その巻戻りの効果の下、香箱胴2の駆動部品の機能を果たす。ムーブメントの手動または自動巻上げに従って、またぜんまい1の所定の最大所定巻上げトルクを超えると、装置は、胴2からぜんまい1を分離させるよう設計される。
【0058】
時計130の第6実施形態を、
図21及び22を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えば、クロノグラフ機構またはクロノグラフモジュールまたは修正機構といった時計機構110を含む。
【0059】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0060】
第6実施形態は、例えばクロノグラフ水平連結装置と一体化される連結装置を実施するためなど、第1及び第2部品1、2の軸A1及びA2が平行または実質的に平行である水平連結装置に適用される点で、先行する実施形態と異なる。
【0061】
第6実施形態において、A1-A2の中心間の距離は、連結装置の連結または非連結構成に従い、変更可能である。この目的のため、軸A1に従って旋回する部品1は、軸A4に従ってムーブメントフレームに対して可動な連結レバー4上に配置される。戻しばね3は、第1部品1が第2部品2と接触する戻し位置へレバーを戻す。
【0062】
このため、クロノグラフが組み合うと、時計ムーブメントの最終連鎖と、特にクロノグラフ駆動歯車5と係合する、駆動部品1の周囲面S1の領域Z1は、被駆動部品2の周囲面S2の領域Z2に載置される。部品1及び2は、歯無し歯車と同化することができ、歯無し歯車の摩擦による駆動は、領域Z1、Z2のマイクロキャビティC1、C2を用いて、特に互いへの接触により協働するよう設計されるマイクロキャビティC1、C2の側面F1、F2を用いて、最適化される。
【0063】
当該種類の実施形態は、フラッタリングのおそれのある、クロノグラフ水平連結装置の関連で、特に有利である。フラッタリングは、当該種類の連結に関与する従来の歯列の寸法及び形状を理由とする、クロノグラフが組み合った際の秒針の無作為の変位である。
【0064】
この場合、微細構造表面S1及びS2は円筒状である。代替的に、両表面は、それぞれの回転軸A1、A2に対して角度を形成してもよい。有利には、部品1及び2は、特許文献2に開示する装置のような態様で、表面S1、S2を互いに位置させる予応力を発生するため、弾性アームB1、B2を含んでもよい。代替的に、この予応力は、その他の戻し手段により発生されてもよい。また有利には、部品1の表面S1の領域Z1は、クロノグラフ駆動歯車5の周囲面S5の微細構造領域Z5と協働するよう設計されてもよい。
【0065】
好ましくは、当該第6実施形態において、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2は、特に第1マイクロキャビティの側面F1と第2マイクロキャビティC2の側面F2は、第1及び第2パーツ間の接点において第1パーツから第2パーツへ伝達される力Eに対して、垂直に、または実質的に垂直に向けられる。このため、当該第6実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、好ましくは軸A1及びA2に平行に延長する、好ましくはマイクロ溝である。
【0066】
当該第6実施形態において、第1領域Z1は外側に微細構造がなされ、第2領域Z2は外側に微細構造がなされる。しかしながら、第1及び第2領域の一方は、代替的に内側に微細構造がなされてもよい。
【0067】
時計130の第7実施形態を、
図23を参照して以下に説明する。時計は、時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えば巻真における巻上げ用及びまたは修正用機構、または修正機構など、時計機構110を含む。
【0068】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0069】
第7実施形態は、マイクロキャビティC1及びC2を有する、領域Z1及びZ2が設けられる表面S1及びS2が円筒状でない点で、第6実施形態と異なる。実際、当該第7実施形態において、表面S1及びS2は、円錐である、または回転錘S1、S2の一部である。領域Z1及びZ2は、それぞれこれら円錐の錘台に配置される。(表面S1、S2を有する)2つの円錐は、同一の上端を有してもよい。第1及び第2部品の軸A1、A2は一致し、例えば巻上げ機構巻真において連結装置に統合される、連結装置を実施するため、特に垂直である。
【0070】
当該実施形態において、部品1は、連結装置の連結または非連結構成に従って、軸A1に従い軸方向に変位してもよい。この目的のため、部品1は、巻上げ機構の巻真6と一体の例えば巻上げ機構ピニオン1の形態であってもよく、ここで巻真は、従来の巻真機構を用いて軸方向に位置されてもよい。被駆動部品2は、巻上げ機構りゅうず2の形態をとってもよい。
【0071】
連結が作動されると、巻真6と係合する駆動部品1の周囲面S1の領域Z1は、被駆動部品2の周囲面S2の領域Z2に載置され、被駆動部品2の回転軸A2はムーブメントフレームに対して固定される。部品1及び2は、このように歯無し歯車と同化可能であり、その摩擦による駆動は、領域Z1、Z2のマイクロキャビティC1及びC2を用いて、特に互いに協働するよう設計されたマイクロキャビティC1、C2の側面F1、F2を用いて、最適化される。
【0072】
当該種類の実施形態は、突合せのリスクに曝される可能性のある、従来の巻真での巻上げ及びまたは修正用機構の関係において、特に有利である。当該危険性は、機能の起動中の引きずる感覚に、または巻上げまたは調整連鎖が張力を受ける際に巻真の軸方向の妨げにつながる。当該危険性は、当該種類の連結に関連する従来の歯列の寸法及び形状につきものである。
【0073】
この場合の微細構造表面S1及びS2は、好ましくは円錐台状である。表面S1及びS2の母線は、同一角度を形成してもよい。好ましくは、表面S1及びS2の母線は、軸A1及びA2に対して45°の角度を形成する。代替的に、両表面は円筒形であってもよいことが理解される。
【0074】
好ましくは、当該第7実施形態において、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2は、特に第1マイクロキャビティの側面F1及び第2マイクロキャビティC2の側面F2は、第1及び第2パーツ間の接点において第1パーツから第2パーツへ伝達される力Eに対して、垂直に、または実質的に垂直に向けられる。このため、当該第7実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、好ましくは円錐S1、S2の母線に沿ってそれぞれ延長する、好ましくはマイクロ溝である。
【0075】
当該第7実施形態において、第1領域Z1は外側に微細構造がなされ、第2領域Z2は外側に微細構造がなされる。
【0076】
時計130の第8実施形態を、
図24から
図28を参照して以下に説明する。時計は時計ムーブメント120を含む。ムーブメントは、例えば、修正機構といった時計機構110を含む。
【0077】
時計機構110は、機械的結合装置100を含む。
【0078】
第8実施形態は、第1パーツがフレームに対して可動になるよう適合されたパーツであり、特に第1円盤または第1歯車であり、第2パーツがフレームに対して固定されるよう適合されたパーツであり、特にフレームブランクである点で、先行する実施形態とは異なる。このため、これは第1パーツ1及び第2パーツ2間の引っ掛け装置を提供する。
【0079】
第1パーツ1は、例えば被駆動円盤2’と協働するよう、また第2パーツ2と協働するよう設計された駆動パーツである。円盤2’は、例えば日付の表示を有する円盤である。第1パーツ及び第2パーツ2は、微細構造がなされる。
【0080】
好ましくは、第1パーツの軸A1及び円盤2’の軸A2’は、例えば少なくとも1つのカレンダー表示の、例えば日付の表示の、迅速修正用の機構内に用いられる、一方向連結装置を実施するために、平行、または実質的に平行である。A1-A2’の中心間の距離は、(機械的結合構成のまたは機械的結合のない構成の)修正機構の構成に従って変更してもよい。
【0081】
当該機構は、2つの位置の間で変位可能な円盤M1の第1パーツ1と係合する中間修正車7を含む。この目的のため、第1パーツ1は、好ましくはブランク2であり、特に修正受2である、第2パーツに設けられた湾曲楕円の切欠き11’内に配置される。このため、第1パーツ1は、
図24に図示する非修正の第1位置から、図示しない巻上げ機構巻真の回転の方向に従い、
図25に図示する日付用の円盤2’の修正の第2位置へ移動可能であり、中間車7を駆動可能である。
【0082】
このため、当該実施形態において、第1パーツ1及び受2は、巻上げ機構巻真の回転方向の反転の影響下において、受に対する第1パーツの旋回トルクを制御するために、特に最大化するために、そしてそれにより湾曲楕円の切欠に沿った第1パーツ1の変位を保証するために、微細構造がなされている。
【0083】
更に詳しくは、円盤M1は、有利には、日付の修正用の星形車11と、日付の修正用歯車12と、ブッシュ1を含むまたはブッシュ1からなる第1パーツとを含む。星形車11は、円盤2’の従来の歯列を駆動するよう設計され、歯車12は中間歯車7と係合し、ブッシュ1は修正受2の楕円の切欠き11’内に収容されるよう設計され、このため第1パーツ1に対応する。
【0084】
第1の好ましい変形実施形態によれば、第1微細構造領域Z1は、
図26及び
図27に図示するように、ブッシュ1の周囲に形成され、第2微細構造領域Z2は、
図26及び
図27に図示するように、受の切欠き11’の側面に形成される。このため、表面S1は回転柱であり、表面S2は円筒であり、その母線曲線は受の切欠き11’の側面上にある。マイクロキャビティC1、C2、特にマイクロキャビティの側面F1、F2は、互いに協働するよう設計される。
【0085】
好ましくは、当該第8実施形態の第1変形例において、第1マイクロキャビティC1及び第2マイクロキャビティC2は、特にマイクロキャビティの側面F1と第2マイクロキャビティC2の側面F2は、マイクロキャビティが形成された表面において、第2パーツに対する第1パーツの移動の方向に垂直、または実質的に垂直に向けられる。このため、当該第8実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、好ましくは軸A1に平行に延長するマイクロ溝である。
【0086】
この第8実施形態の第1変形例において、第1領域Z1は外側に微細構造がなされ、第2領域Z2は内側に微細構造がなされる。
【0087】
図28に図示する第2変形実施形態によれば、微細構造領域Z1、Z2は、第1パーツ12の板の少なくとも一部を構成する平坦面S1と、受2の面の少なくとも一部を構成する表面S2とに形成される。このため、第2変形例において、第1パーツは、歯車12を含むまたは歯車12からなる。マイクロキャビティC1及びC2は、この場合、表面S1及びS2の領域Z1及びZ2の粗さを増大し、それにより受2に対する第1パーツ1の旋回トルクを制御し、特に実質的に増加する目的で、レーザ掃射により形成されても良い。
【0088】
前述の装置100または機構110またはムーブメント120または時計130の実行方法は、以下のステップを含む。
- 第1マイクロキャビティC1を得るために、レーザを、特にフェムト秒レーザを用いて、第1パーツ1を処理、特にテクスチャ化または構成化する、及び
- 第2マイクロキャビティC2を得るために、レーザを、特にフェムト秒レーザを用いて、第2パーツ2を処理、特にテクスチャ化または構成化する。
【0089】
方法は、第1パーツの第1表面S1の第1領域を、特にカーボン系の、特にグラフェン系の、摩擦減少層で被膜する事前ステップ、及びまたは第2パーツの第2表面S2の第2領域を、特にカーボン系の、特にグラフェン系の摩擦減少層で被膜する事前ステップを含んでもよい。有利には、被膜は、同時に形成されるマイクロキャビティの加工の深さよりも薄い。レーザ構成化は、被膜中も加工を実施することにより、マイクロキャビティC1、C2から、特にマイクロキャビティの側面F1、F2から被膜を除去することを可能にする。当該種類の実施形態は、連結装置の起動中のマイクロキャビティの協働を補助するために、及びマイクロキャビティの摩耗を減少させるために、被膜の摩擦学的及び硬度特性を活用することを可能にする。代替的に、領域Z1、Z2は、完全に被膜されてもよい。2つの構成において、被膜は例えばカーボン系の、特にグラフェン系の固体摩擦減少被膜であってもよい。特に、被膜は、DLC(ダイヤモンド状炭素)被膜であってもよく、その摩擦係数は、ムーブメントの素材との接触で非常に低い、例えば0.1以下であることが知られており、その硬度は非常に高く、例えば90GPz程度にまでなることが知られている。代替的に、被膜は、ナノ結晶ダイヤモンドから構成されてもよく、またはカーボンナノチューブを包含してもよい。
【0090】
好ましくは、微細構造領域Z1、Z2は、前述の処理ステップを用いて得られる。これら処理ステップは、レーザを用いて、好ましくはパルスの持続時間がおよそフェムト秒であるレーザを用いて形成された、マイクロキャビティC1、C2のネットワークを形成することが可能になる。パルスの持続時間は、特に、フェムト秒からピコ秒の間の範囲であってよい。レーザは、部品1及び2の表面S1、S2を少なくとも部分的に通過するよう、特に部品1及び2の領域Z1及びZ2を通過するよう、移動される。代替的に、パーツをレーザに対して移動してもよい。同期の、または非同期態様で、レーザとパーツ1及び2の動きの組み合わせを考えることも可能である。
【0091】
全ての実施形態において、微細構造領域Z1及びZ2は、マイクロキャビティC1、C2を含む。
【0092】
全ての実施形態において、マイクロキャビティC1は、有利にはマイクロ溝である、及びまたはマイクロキャビティC2は、有利にはマイクロ溝である。マイクロ溝は、有利には、直線的に、すなわち
図9に図示される直線D1に従って、延長する。代替的に、マイクロ溝は、それらが形成される表面上の曲面に従って延長してもよい。
【0093】
代替的に、全ての実施形態において、第1マイクロキャビティは、100μm未満の、または50μm未満の、または25μm未満の深さを有し、及びまたは第2マイクロキャビティは、100μm未満の、または50μm未満の、または25μm未満の深さを有する。また好ましくは、第1及び第2マイクロキャビティは、同一の深さまたは実質的に同一の深さを有する。
【0094】
有利には、全ての実施形態において、第1マイクロキャビティは、200μm未満の、または150μm未満の、または100μm未満の幅L1を有し、及びまたは第2マイクロキャビティは、200μm未満の、または150μm未満の、または100μm未満の幅L2を有する。また好ましくは、第1及び第2マイクロキャビティは、同一の幅または実質的に同一の幅を有する。
【0095】
マイクロキャビティの側面が互いに接触する実施形態において、マイクロキャビティの底の幅は、2つの近接または隣接マイクロキャビティを分離する構造の幅と実質的に一致してもよい。
【0096】
第1、第2及び第3実施形態において、有利には、領域Z1及びZ2は、同数のマイクロキャビティC1、C2を含む。代替的に、領域Z1及びZ2は、異なる数のマイクロキャビティC1、C2を含んでもよい。
【0097】
全ての実施形態において、有利には、マイクロキャビティC1は、特に深さP1及び幅L1を有する、切欠きの形態である。
【0098】
全ての実施形態において、有利には、マイクロキャビティC2は、特に深さP2及び幅L2を有する、切欠きの形態である。
【0099】
全ての実施形態において、有利には、マイクロキャビティC1、C2は、同一の形状である。特に、深さP1及びP2は同一または実質的に同一であり、幅L1及びL2は同一または実質的に同一である。
【0100】
全ての実施形態において、有利には、マイクロキャビティは、第1マイクロキャビティの底から90°と160°の間の角度αを形成する側面を有する、及びまたは、第2マイクロキャビティは、第2マイクロキャビティの底から90°と160°の間の角度αを形成する側面を有する。
【0101】
当然ながら、マイクロキャビティC1及びまたはC2の形状、特に深さP1及びまたは幅L1及びまたは角度αは、領域Z1、Z2全体にわたり変化してもよく、特にマイクロキャビティの一部またはすべてに沿って変化してもよい。マイクロキャビティにより形成され
図9に図示される切欠きは対称である。当然ながら、切欠きは、部品1及び2の機械的結合の方向に優先を与えるため、非対称であってもよい。この場合、第1パーツから第2パーツへ伝達可能な力は、第1パーツの駆動の第1方向と第1パーツの駆動の第2方向で異なることができる。ここで、第2方向は第1方向と反対である。
【0102】
異なる実施形態において、マイクロキャビティC1、C2は好ましくは乾燥状態で協働するよう設計される。
【0103】
異なる実施形態において、好ましくは第1領域Z1において、2つの第1近接マイクロキャビティは、上端93を形成可能な第1介在構造により分離され、及びまたは、第2領域Z2において、2つの第2近接マイクロキャビティは、上端94を形成可能な第2介在構造により分離される。
【0104】
異なる実施形態において、好ましくは、2つの近接または隣接マイクロキャビティを分離する介在構造の幅は、150μm未満、または100μm未満、または50μm未満である。例えば、介在構造は、縁または実質的に縁まで減少されてもよい。
【0105】
異なる実施形態において、好ましくはマイクロキャビティは、「サブミクロン」寸法、特に「ナノメーター」寸法を有してもよい。このため、「マイクロキャビティ」の文言は、ミクロンより小さい構造、またはおおよそミクロンの構造、またはミクロンより大きい構造と交換可能に用いられる。「マイクロ溝」も同様である。
【0106】
第1実施形態に従った解決策により得られる増加を示すために、実地試験が実施された。
図10は、
図1及び2で示す連結だがマイクロキャビティを有さない連結のような、従来技術で既知の連結の抵抗のトルクCAと、
図3から
図9で特に図示されるようなマイクロキャビティC1、C2が設けられた領域Z1及びZ2を含む表面S1及びS2を有する、
図1及び
図2で示すような連結の抵抗のトルクCBとを比較するグラフを示す。「抵抗トルク」とは、連結装置(または機械的結合構成)の連結構成において、第2パーツ2に対して角度βで第1パーツを回転させるために必要な最低トルクを意味する。
【0107】
図10は、角度βに従った平均トルクCAと、角度βに従ったトルク信号CBのピークの平均との間で、約4倍の増加を示す。このため、同じ連結ばね3について、連結による伝達トルクは、4倍増加する。
【0108】
第2パーツ2が、軸A2周りに等距離に分配され、その形状が第1パーツ1の180個のマイクロキャビティC1の形状と同一である、2つのマイクロキャビティC2のみを含む連結にもトルク測定が行われた。トルク信号CBは、
図10に図示するトルク信号と類似であったことが判明した。このため、同一の連結ばね3について、連結による伝達トルクは、従来技術で既知の連結と比較して4倍増加することが判明した。
【0109】
異なる実施形態において、マイクロキャビティC1及びC2は、互いに協働する。特に、両者は、障害を用いて、特に両者の側面における障害を用いて、協働する。
【0110】
マイクロキャビティは、連結歯を形成しない。また、マイクロキャビティは、特にその形状を理由に、連結歯と同化されない。最初の5つの実施形態において、マイクロキャビティC1、C2の側面F1、F2の接触は、結合装置が作動されると永続的である。例えば、結合装置が作動されると、第1及び第2パーツのうちの一方の、相当数の、特に3を超える、または5を超える、または10を超える、または全てのマイクロキャビティが、他のパーツのマイクロキャビティと接触、特に永続的に接触する。
【0111】
好ましくは、第1、第2、第3、第4、及び第5実施形態の装置は、結合装置である。有利には、第1及び第2パーツは、装置が作動されると(滑動を別として)単一パーツとして動作する、即ち第1及び第2パーツは(滑動を別として)互いに固定され続ける。
【0112】
第6、第7、及び第8実施形態において、側面F1は、装置が作動されると接触する近接の側面F2と連続して接触され、これにより表面S1、S2の、特に領域Z1、Z2の密着を補助する。
【0113】
第6、第7、及び第8実施形態において、結合装置が作動されると、第1及び第2パーツのうちの一方の、限定された数の、特に10未満の、または5未満の、または3未満の、マイクロキャビティが、他のパーツのマイクロキャビティと接触、特に順次接触する。
【0114】
好ましくは、第6及び第7実施形態の結合装置は、伝達装置である。有利には、第1及び第2パーツは、互いに依存して動く。好ましくは、2つのパーツは、特に互いに対して滑動することなく、互いの上でロールする。好ましくは、戻し要素が、第1領域と第2領域を互いに接触させるよう戻す。また好ましくは、第1及び第2領域の互いへの接近を制限するための止め具が設けられない。特に、第6実施形態において、第1及び第2パーツ間の中心間の最低距離を維持するための止め具が設けられない。
【0115】
好ましくは、第8実施形態に係る装置は、特に、結合装置である。これにより、第1及び第2パーツ間に摩擦を生成することが可能になる。
【0116】
好ましくは、全ての実施形態において、第1パーツから第2パーツに付加される力が過大な場合、第1及び第2パーツの一方または他方を損傷させることなく、第1パーツは第2パーツと独立して変位する、即ちパーツ間で滑動が起こる。この場合、マクロキャビティの2つの側面は互いの協働を停止し、パーツは互いに対して、第1パーツの側面の少なくとも1つが、第2パーツの側面の少なくとも1つと、再度接触により、特に障害により協働するまで、滑動する。
【0117】
異なる実施形態において、マイクロキャビティは、一方のパーツの他方による機械的駆動からなる型の機械的結合を形成するため(これは、最初の7つの実施形態の場合である)、または一方のパーツの他方への摩擦またはキャッチタイプの機械的結合を形成するため(これは、第8実施形態の場合である)、互いに協働して用いられる。
【0118】
特定の実施形態において、機械的結合装置は、選択的に、
- 第1及び第2領域が互いに接触し、特に互いに対して戻し力で戻される、第1機械的結合構成に、及び
- 第1及び第2領域が、互いに間隔を置いて維持される、接続の断裂の、第2構成に、
位置することができる。
【0119】
連結の場合、第1構成は連結構成であり、第2構成は非連結構成である。
【0120】
他の実施形態において、機械的結合装置は、第1及び第2領域が互いに接触する機械的結合構成に(分解されたときまたはメンテナンス作業を除き)永続的に維持されてもよい。
【0121】
好ましくは、パーツの領域へのマイクロキャビティの形成は、こうした領域に装飾効果を、及びまたはこうした領域へ視覚的効果を、特にモアレ効果を提供することを可能にする。こうした効果は、有利には、特にパーツの外観を独自にするために用いられる。
【0122】
マイクロキャビティの形成は、粗さまたは表面状態が制御された領域を形成することを可能にする。こうした表面状態または粗さは、有利には、異なるパーツ間の摩擦力を最適化、制御、または最大化するために用いられる。
【0123】
本明細書において、「機械的結合構成」は、有利には、少なくとも第1及び第2パーツ間の力が力閾値未満に留まるときに、第1及び第2部品が単一部品として動くまたは単一部品としてアイドリング位置にとどまる構成を意味する。第1及び第2領域の目的は、力閾値を最大化することである。
【符号の説明】
【0124】
1 第1パーツ
2 第2パーツ
C1 第1マイクロキャビティ
C2 第2マイクロキャビティ
Z1 第1領域
Z2 第2領域
100 機械的結合装置
110 時計機構
120 時計ムーブメント
130 時計