(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/04 20060101AFI20230804BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230804BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
E04C2/04 C
E04C2/30 T
E04F13/14 101
E04F13/14 103F
E04F13/14 102A
(21)【出願番号】P 2018220484
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 さやか
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃敏
(72)【発明者】
【氏名】横山 広大
(72)【発明者】
【氏名】富田 健司
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実公平08-003535(JP,Y2)
【文献】特開2008-308926(JP,A)
【文献】特開平10-205055(JP,A)
【文献】特開平11-315601(JP,A)
【文献】特開2008-267087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/04,2/30
E04F 13/00-13/30
E04G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装板の裏面側にコンクリートを打設して前記外装板を取り付けた外装板先付プレキャストコンクリート部材であって、
頭部と、前記コンクリートに埋設される本体部と、を有する固定ピンと、
前記本体部が前記外装板の貫通穴に表面側から挿入された状態で、前記外装板の裏面側に配置されて、前記固定ピンを前記外装板に仮固定する仮固定部と、を備え、
前記仮固定部は、
前記本体部に脱着可能な脱着部材と、
前記外装板と前記脱着部材との間に設けられる圧縮バネと、で構成される
ことを特徴とする、外装板先付プレキャストコンクリート部材。
【請求項2】
外装板の裏面側にコンクリートを打設して前記外装板を取り付けた外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法であって、
前記外装板に貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、
前記外装板の前記貫通穴に、頭部
と前記コンクリートに埋設される本体部とを有する固定ピンを、前記外装板の表面側から挿入する固定ピン挿入工程と、
前記貫通穴に挿入された前記固定ピンを前記外装板に仮固定する仮固定部を、前記外装板の裏面側から取り付ける仮固定部取付工程と、
前記固定ピンが、前記仮固定部によって、前記外装板に仮固定された状態で、前記コンクリートを前記外装板の裏面側に打設するコンクリート打設工程と、を含み、
前記仮固定部取付工程では、
前記本体部に脱着可能な脱着部材と、圧縮バネと、で構成される前記仮固定部の取り付けが、
前記外装板と前記脱着部材との間に設けられる前記圧縮バネを圧縮させることで行われる
ことを特徴とする、外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装板の裏面側にコンクリートを打設して外装板を取り付ける外装板先付プレキャストコンクリート部材及び、外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外装板を、機械式固定によって、コンクリートに固定した外装板先付プレキャストコンクリートが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、シアコネクターの端部を外装石材の裏面に形成された係止孔に挿入した状態で、外装石材の裏面側にコンクリートを打設して、シアコネクターが埋設されるようにした石先付けプレキャストコンクリート部材が開示されている。
【0004】
特許文献2には、タイルの裏面に金属製の剥落防止具を固定し、この状態で壁面等に張設することで、壁面等からのタイルの剥落を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-122321号公報
【文献】特開2018-065252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成は、シアコネクターを外装石材に対して固定するために、係止孔を外装石材に加工する必要があり、薄型の外装板に適用できない、という問題がある。
【0007】
また、特許文献2の構成は、剥落防止具をタイルに固定するために、タイルの裏面に貫通しない傾斜溝を形成する必要があり、薄型の外装板に適用できない、という問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、薄型の外装板であっても、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材は、外装板の裏面側にコンクリートを打設して前記外装板を取り付ける外装板先付プレキャストコンクリート部材であって、頭部と、前記コンクリートに埋設される本体部と、を有する固定ピンと、前記本体部が前記外装板の貫通穴に表面側から挿入された状態で、前記外装板の裏面側に配置されて、前記固定ピンを前記外装板に仮固定する仮固定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記固定ピンには、前記コンクリートへの定着性を向上させる定着部が取り付けられてもよい。
【0011】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記定着部は、前記仮固定部に取り付けられる、前記本体部より長く形成される、可撓性を有する部材であってもよい。
【0012】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記定着部の先端には、フック状に形成されたフック部を有してもよい。
【0013】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記定着部は、前記仮固定部に取り付けられる、前記本体部より長く形成される圧縮バネであってもよい。
【0014】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記仮固定部は、前記本体部に脱着可能な脱着部材と、前記外装板と前記脱着部材との間に設けられる圧縮バネと、で構成されてもよい。
【0015】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、前記外装板の貫通穴に、弾性のノロ止め部材が取り付けられてもよい。
【0016】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法は、外装板の裏面側にコンクリートを打設して前記外装板を取り付ける外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法であって、前記外装板に貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、前記外装板の前記貫通穴に、頭部を有する固定ピンを、前記外装板の表面側から挿入する固定ピン挿入工程と、前記貫通穴に挿入された前記固定ピンを前記外装板に仮固定する仮固定部を、前記外装板の裏面側から取り付ける仮固定部取付工程と、前記固定ピンが、前記仮固定部によって、前記外装板に仮固定された状態で、前記コンクリートを前記外装板の裏面側に打設するコンクリート打設工程と、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
このように構成された本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、頭部と、コンクリートに埋設される本体部と、を有する固定ピンと、本体部が外装板の貫通穴に表面側から挿入された状態で、外装板の裏面側に配置されて、固定ピンを外装板に仮固定する仮固定部と、を備える。そのため、固定ピンを外装板に仮固定した状態で、外装板の裏面側にコンクリートを打設し、本体部をコンクリートに埋設することができ、機械式固定によって、外装板をコンクリートに固定することができる。
【0018】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、固定ピンには、コンクリートへの定着性を向上させる定着部が取り付けられることで、外装板のコンクリートへの定着性をさらに向上させることができる。
【0019】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、定着部は、仮固定部に取り付けられる、本体部より長く形成される、可撓性を有する部材であることで、定着部がコンクリートと接触する長さを長くすることができ、外装板のコンクリートへの定着性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、定着部の先端には、フック状に形成されたフック部を有することで、鉄筋を配置する際に、フック部がガイドとなって、定着部を撓ませることができるので、鉄筋を配置する際に、定着部が邪魔にならないようにすることができる。
【0021】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、定着部は、仮固定部に取り付けられる、本体部より長く形成される圧縮バネであることで、鉄筋を配置して、コンクリートを打ち込む場合に、圧縮バネを圧縮することができる。そのため、鉄筋を配置する際に、圧縮バネが邪魔にならないようにすることができる。
【0022】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、仮固定部は、本体部に脱着可能な脱着部材と、外装板と脱着部材との間に設けられる圧縮バネと、で構成されることで、圧縮バネの弾性力(反力)を利用して、固定ピンを外装板に仮固定した状態で、外装板の裏面側にコンクリートを打設し、本体部と圧縮バネをコンクリートに埋設することができる。そのため、機械式固定によって、外装板をコンクリートに固定することができる。
【0023】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材では、外装板の貫通穴に、弾性のノロ止め部材が取り付けられることで、裏面が平坦な外装板だけでなく、裏面に凹凸が形成された外装板に対しても、ノロ止めをすることができる。
【0024】
また、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法は、外装板に貫通穴を形成する貫通穴形成工程と、外装板の貫通穴に、頭部を有する固定ピンを、外装板の表面側から挿入する固定ピン挿入工程と、貫通穴に挿入された固定ピンを外装板に仮固定する仮固定部を、外装板の裏面側から取り付ける仮固定部取付工程と、固定ピンが、仮固定部によって、外装板に仮固定された状態で、コンクリートを外装板の裏面側に打設するコンクリート打設工程と、を含む。そのため、固定ピンを外装板に仮固定した状態で、外装板の裏面側にコンクリートを打設し、本体部をコンクリートに埋設することができ、機械式固定によって、外装板をコンクリートに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
【
図3】実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す分解斜視図である。
【
図4】実施例1の貫通穴形成工程を説明する斜視図である。
【
図5】実施例1の固定ピン挿入工程を説明する分解断面図である。
【
図6】実施例1の仮固定部取付工程を説明する断面図である。
【
図7】実施例1の配筋工程を説明する断面図である。
【
図8】実施例1のコンクリート打設工程を説明する断面図である。
【
図9】実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
【
図10】実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
【
図11】実施例4の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
【
図12】別の実施例の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~実施例4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法は、鉄筋を有するプレキャストコンクリートに適用される。
【0028】
[外装板先付プレキャストコンクリート部材の構成]
図1は、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す斜視図である。
図2は、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。
図3は、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す分解斜視図である。以下、
図1~
図3に基づいて、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材の構成を説明する。なお、外装板10の表面が向いている方向を外方向D1とし、外装板10の裏面が向いている方向を内方向D2とする。
【0029】
外装板先付プレキャストコンクリート部材1は、
図1に示すように、コンクリート層2と、コンクリート層2の表面に配置される外装板10と、コンクリート層2と外装板10とを締結する締結金具20と、を備える。
【0030】
コンクリート層2は、
図2に示すように、内部に鉄筋3が配置される。外装板10は、例えば、3[m]×1[m]で、厚み3[mm]以上で6[mm]以下の大判薄型タイルとする。なお、外装板には、床貼石材や、内装用石材や、外装石材等が含まれる。また、外装板10のサイズは、この態様に限定されるものではない。
【0031】
外装板10は、貫通穴10aを有する。貫通穴10aは、外装板10の表面から裏面に向かって縮径する。すなわち、貫通穴10aは、内方向D2に向かって傾斜する傾斜面10bを有して形成される。傾斜面10bは、後述する固定ピン21の座面(座繰り面)として構成される。
【0032】
外装板10の裏面には、緩衝層11が形成される。緩衝層11は、例えば、弾性のあるエポキシ樹脂やシリコン系の材料が塗布されることで形成される。
【0033】
締結金具20は、
図2及び
図3に示すように、固定ピン21と、固定ピン21に脱着可能な仮固定部としてのナット22と、ナット22に取り付けられた定着部としての線状部材23と、ナット22と外装板10との間に配置されるノロ止め材部材としてのワッシャー24と、を備える。
【0034】
固定ピン21は、雄ネジが形成された本体部21aと、本体部21aの一方の端部に形成された頭部21bと、を備えた皿ネジとして構成される。
【0035】
本体部21aは、棒状に形成され、側面に雄ネジが形成される。固定ピン21が外装板10に取り付けられた状態で、本体部21aは、鉄筋3に到達しない程度の長さを有する。すなわち、本体部21aの長さは、かぶり厚さより短く形成される。
【0036】
頭部21bは、本体部21aの一方の端部から拡径するように、截頭円錐形に形成される。すなわち、頭部21bは、傾斜面21cを有して形成される。固定ピン21は、外装板10の傾斜面10bを座面として、外装板10に取り付けられる。頭部21bの頂面には、ドライバ等の工具で固定ピン21を回すための溝部21dが設けられる。なお、頭部21bの頂面に溝部21dが設けられていなくてもよい。
【0037】
ナット22は、雌ネジ22aによって固定ピン21に脱着可能となっている。固定ピン21の本体部21aが、外装板10の表面側から、貫通穴10aに挿入された状態で、ナット22が、外装板10の裏面側から、本体部21aに取り付けられることで、固定ピン21を外装板に仮固定する。
【0038】
線状部材23は、ステンレス線等の可撓性を有する部材であり、複数本(実施例1では、6本)備える。線状部材23は、ナット22の裏面側から、内方向D2に延在して形成される。線状部材23は、ナット22の裏面に、例えば溶接等によって取り付けられる。線状部材23の長さは、本体部21aより長く形成される。線状部材23は、固定ピン21に取り付けられた状態で、鉄筋3に到達する長さより長く形成される。すなわち、線状部材23の長さは、かぶり厚さより長く形成される。
【0039】
各線状部材23の先端には、それぞれ、フック状に形成されたフック部23aが形成される。ワッシャー24は、金属製で、貫通穴24aを有するリング状に形成される。なお、ワッシャーは、ゴムパッキン等でもよい。
【0040】
[外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法]
図4は、実施例1の貫通穴形成工程を説明する斜視図である。
図5は、実施例1の固定ピン挿入工程を説明する分解断面図である。
図6は、実施例1の仮固定部取付工程を説明する断面図である。
図7は、実施例1の配筋工程を説明する断面図である。
図8は、実施例1のコンクリート打設工程を説明する断面図である。以下、
図4~
図8に基づいて、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法を説明する。
【0041】
(貫通穴形成工程)
貫通穴形成工程では、
図4に示すように、ドリル等の工具を使用して、外装板10に貫通穴10aを加工する。なお、外装板10に貫通穴10aを形成する前に、外装板10の裏面に緩衝層11を形成してもよいし、外装板10に貫通穴10aを形成した後に、外装板10の裏面に緩衝層11を形成してもよい。
【0042】
(固定ピン挿入工程)
固定ピン挿入工程では、
図5に示すように、外装板10に形成された貫通穴10aに、外装板10の表面側から固定ピン21を挿入する。
【0043】
(仮固定部取付工程)
仮固定部取付工程では、
図6に示すように、外装板10の貫通穴10aに挿入された固定ピン21の本体部21aに、ワッシャー24と、ナット22を取り付ける。これにより、固定ピン21は、外装板10に仮固定される。
【0044】
(配筋工程)
配筋工程では、
図7に示すように、箱状の型枠5の底面に、固定ピン21が仮固定された外装板10を設置する。また、型枠5内に、鉄筋3を設置する。鉄筋3を設置する際、鉄筋3は、線状部材23に干渉する場合があるが、線状部材23は、可撓性を有するため、鉄筋3を避けるように変形する。つまり、上から鉄筋を下した際に、丸みのあるフック部23aにあたることで、線状部材23が撓んで広がる。この際、作業者が、線状部材23のフック部23aを鉄筋3に引っ掛けるようにしてもよい。
【0045】
(コンクリート打設工程)
コンクリート打設工程では、
図8に示すように、コンクリート2Aを、外装板10の裏面側で型枠5の内側に充填する。以上の工程を経て、外装板先付プレキャストコンクリート部材1が製造される。
【0046】
[外装板先付プレキャストコンクリート部材及びその製造方法の作用]
次に、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1及びその製造方法の作用を説明する。実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1は、外装板10の裏面側にコンクリートを打設して外装板10を取り付ける外装板先付プレキャストコンクリート部材1である。この外装板先付プレキャストコンクリート部材1は、頭部21bと、コンクリートに埋設される本体部21aと、を有する固定ピン21と、本体部21aが外装板10の貫通穴10aに表面側から挿入された状態で、外装板10の裏面側に配置されて、固定ピン21を外装板10に仮固定する仮固定部(ナット22)と、を備える(
図2)。
【0047】
これにより、固定ピン21を外装板10に仮固定した状態で、外装板10の裏面側にコンクリートを打設し、本体部21aをコンクリートに埋設することができる。そのため、外装板10を、接着固定ではなく、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる。その結果、外装板10のコンクリートへの定着性を向上させることができる。
【0048】
また、固定ピンの一部を外装板に埋め込む必要がないため、薄型の外装板を、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる。その結果、外装板の軽量化やコスト削減を図ることができる。
【0049】
実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1では、固定ピン21には、コンクリートへの定着性を向上させる定着部(線状部材23)が取り付けられる(
図2)。これにより、外装板10のコンクリートへの定着性をさらに向上させることができる。
【0050】
実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1では、定着部(線状部材23)は、仮固定部(ナット22)に取り付けられる、本体部21aより長く形成される、可撓性を有する部材である(
図2)。
【0051】
これにより、定着部(線状部材23)がコンクリートと接触する長さを長くすることができる。そのため、外装板10のコンクリートへの定着性を向上させることができる。また、鉄筋3を配置して、コンクリートを打ち込む場合に、可撓性のある定着部(線状部材23)を撓ませることができる。そのため、鉄筋3を避けて、定着部(線状部材23)を配置することができる。
【0052】
実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1では、定着部(線状部材23)の先端には、フック状に形成されたフック部23aを有する(
図2)。
【0053】
これにより、鉄筋3を配置する際に、フック部23aがガイドとなって、定着部(線状部材23)を撓ませることができる。そのため、鉄筋3を配置する際に、定着部(線状部材23)が邪魔にならないようにすることができる。また、鉄筋3を配置する際に、フック部23aを鉄筋3に引っ掛けることができる。そのため、外装板10のコンクリートからの剥離を抑制することができる。
【0054】
実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材1の製造方法は、外装板10の裏面側にコンクリートを打設して外装板10を取り付ける外装板先付プレキャストコンクリート部材1の製造方法であって、外装板10に貫通穴10aを形成する貫通穴形成工程と、外装板10の貫通穴10aに、頭部21bを有する固定ピン21を、外装板10の表面側から挿入する固定ピン挿入工程と、貫通穴10aに挿入された固定ピン21を外装板10に仮固定する仮固定部(ナット22)を、外装板10の裏面側から取り付ける仮固定部取付工程と、固定ピン21が、仮固定部(ナット22)によって、外装板10に仮固定された状態で、コンクリートを外装板10の裏面側に打設するコンクリート打設工程と、を含む(
図4~
図8)。
【0055】
これにより、固定ピン21を外装板10に仮固定した状態で、外装板10の裏面側にコンクリートを打設し、本体部21aをコンクリートに埋設することができる。そのため、外装板10を、接着固定ではなく、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる。その結果、外装板10のコンクリートからの剥離を抑制することができる。
【0056】
また、固定ピンの一部を外装板に埋め込む必要がないため、薄型の外装板を、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる。その結果、外装板の軽量化やコスト削減を図ることができる。
【実施例2】
【0057】
実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材は、定着部の構成が異なる点で、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材と相違する。
【0058】
[定着部の構成]
図9は、実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。以下、
図9に基づいて、実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0059】
実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材101の締結金具120は、定着部としての圧縮バネ123を有する。圧縮バネ123の一方端は、ナット22の裏面側に、例えば溶接等によって、取り付けられる。
【0060】
圧縮バネ123に荷重が加わっていない状態の長さ(自由長さ)は、固定ピン21にナット22が取り付けられた状態で、鉄筋3に到達する長さより長く形成される。すなわち、圧縮バネ123の長さは、かぶり厚さより長く形成される。なお、圧縮バネの長さは、この態様に限定されず、固定ピン21にナット22が取り付けられた状態で、鉄筋3に到達する長さより短く形成されてもよい。
【0061】
[外装板先付プレキャストコンクリート部材の作用]
次に、実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法の作用を説明する。実施例2の外装板先付プレキャストコンクリート部材101は、定着部は、仮固定部(ナット22)に取り付けられる、本体部21aより長く形成される圧縮バネ123である(
図9)。
【0062】
これにより、鉄筋3を配置して、コンクリートを打ち込む場合に、圧縮バネ123を圧縮することができる。そのため、鉄筋3を配置する際に、圧縮バネ123が邪魔にならないようにすることができる。また、圧縮バネ123により、コンクリートとの接触面積を増やすことができるため、定着性を向上させることができる。
【0063】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0064】
実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材は、定着部と仮固定部の構成が異なる点で、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材と相違する。
【0065】
[定着部と仮固定部の構成]
図10は、実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。以下、
図10に基づいて、実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0066】
実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材201の締結金具220は、弾性の性質を有するノロ止め部材224と、定着部及び仮固定部としての圧縮バネ223と、定着部及び仮固定部としてのナット(脱着部材の一例)222と、を有する。
【0067】
ノロ止め部材224は、例えばゴムパッキンであり、外装板10の貫通穴10aに固定ピン21の本体部21aが挿入された状態で、固定ピン21と貫通穴10aとの隙間を埋める。なお、ノロ止め部材224を設けた上で、仮固定部としてのナットを本体部21aに取り付けてもよい。
【0068】
圧縮バネ223がノロ止め部材224の裏面側に設置された状態で、本体部21aにナット222が取り付けられる。ナット222を回転させることで、圧縮バネ223を圧縮して、圧縮バネ223に弾性力(反力)を発生させることができる。
【0069】
固定ピン21の本体部21aが、外装板10の表面側から、貫通穴10aに挿入された状態で、外装板10の裏面側から、圧縮バネ223が弾性力(反力)を有した状態で取り付けられることで、固定ピン21は外装板10に仮固定される。
【0070】
[外装板先付プレキャストコンクリート部材の作用]
次に、実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材の作用を説明する。実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材201では、仮固定部は、本体部21aに脱着可能な脱着部材(ナット222)と、外装板10と脱着部材(ナット222)との間に設けられる圧縮バネ223と、で構成される(
図10)。
【0071】
これにより、頭部21bで外装板10の表面側を支持した状態で、外装板10の裏面と脱着部材(ナット222)との間に設けられた圧縮バネ223の弾性力(反力)を利用して、固定ピン21を外装板に仮固定することができる。
【0072】
そして、固定ピン21を外装板10に仮固定した状態で、外装板10の裏面側にコンクリートを打設し、本体部21aと圧縮バネ223をコンクリートに埋設することができる。そのため、外装板10を、接着固定ではなく、機械式固定によって、コンクリートに固定することができる。
【0073】
また、圧縮バネ223がコンクリートとの接触面積を増やすことができるので、簡易な構成で定着性を向上させることができる。
【0074】
実施例3の外装板先付プレキャストコンクリート部材201は、外装板10の貫通穴10aに、弾性のノロ止め部材224が取り付けられる(
図10)。
【0075】
これにより、裏面が平坦な外装板だけでなく、裏面に凹凸が形成された外装板に対しても、固定ピン21と外装板の貫通穴10aとの間の隙間を塞ぐことができる。そのため、裏面が平坦な外装板だけでなく、裏面に凹凸が形成された外装板に対しても、ノロ止めをすることができる。
【0076】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0077】
実施例4の外装板先付プレキャストコンクリート部材は、定着部の構成が異なる点で、実施例1の外装板先付プレキャストコンクリート部材と相違する。
【0078】
[定着部の構成]
図11は、実施例4の外装板先付プレキャストコンクリート部材を示す断面図である。以下、
図11に基づいて、実施例4の外装板先付プレキャストコンクリート部材の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0079】
実施例4の外装板先付プレキャストコンクリート部材301の締結金具320は、定着部としての座金330と、固定ピン21に取り付け可能な2つのナット331,332と、を有する。
【0080】
座金330は、例えば、円形や矩形に形成される。座金330は、固定ピン21の本体部21aが挿入される開口を有する。座金330は、固定ピン21の本体部21aに取り付けられたナット331とナット332とに挟まれた状態で固定される。
【0081】
このような構成によっても、外装板10のコンクリートへの定着性を向上させることができる。
【0082】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0083】
以上、本発明の外装板先付プレキャストコンクリート部材及び外装板先付プレキャストコンクリート部材の製造方法を実施例1~実施例4に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、各実施例の組み合わせ、設計の変更や追加等は許容される。
【0084】
実施例1~実施例4では、固定ピン21を皿ネジとして、固定ピン21が外装板10に取り付けられた状態で、頭部21bが外装板10の表面から飛び出さないようにする例を示した。しかし、固定ピンとしては、
図12に示すように、ナベ頭ネジ421を使用して、頭部421bが外装板10の表面から飛び出すようにしてもよい。
【0085】
実施例1~実施例4では、コンクリートは、内部に鉄筋3を有する例を示した。しかし、コンクリートとしては、鉄筋を有していなくてもよいし、GRC(Glassfiber Reinforced Concrete;ガラス繊維補強コンクリート)であってもよい。この場合、実施例1の線状部材は、可撓性を有しなくてもよい。
【0086】
実施例1~実施例4では、外装板先付プレキャストコンクリート部材1,101,201,301にノロ止め部材を設ける例を示した。しかし、外装板先付プレキャストコンクリート部材は、ノロ止め部材を設けなくてもよい。この場合、緩衝層がノロ止めとして機能する。
【0087】
実施例1では、定着部を線状部材23とする例を示した。しかし、定着部を板状の部材としてもよいし、固定ピンの本体部を定着部として構成してもよい。また、実施例1では、定着部を、可撓性を有する線状部材23とする例を示した。しかし、定着部材としては、可撓性を有しない線状部材としてもよい。また、実施例1では、定着部を、本体部21aより長く形成される線状部材23とする例を示した。しかし、定着部材としては、本体部21aより短く形成されてもよい。また、実施例1では、定着部材としての線状部材23の先端に、フック部23aが形成される例を示した。しかし、定着部材としての線状部材は、フック部を有しなくてもよい。
【0088】
実施例3では、脱着部材をナット222とする例を示した。しかし、脱着部材としては、固定ピンに脱着可能な部品であればよい。
【0089】
実施例1~実施例4では、本発明を、各外装板10を型枠5に配置してコンクリート2Aを打設するものに適用する例を示した。しかし、本発明は、ユニット化した外装板を型枠に配置して、コンクリートを打設するものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 外装板先付プレキャストコンクリート部材
10 外装板
10a 貫通穴
21 固定ピン
21a 本体部
21b 頭部
22 ナット(仮固定部の一例)
23 線状部材(定着部の一例)
23a フック部
123 圧縮バネ(定着部の一例)
222 ナット(仮固定部の一例)
223 圧縮バネ(仮固定部の一例)
224 ノロ止め部材