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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/027 20060101AFI20230804BHJP
   B43K 21/00 20060101ALI20230804BHJP
   B43K 21/16 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B43K21/027
B43K21/00 G
B43K21/16 H
B43K21/16 W
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018237406
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2019119202
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2017254717
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】真田 裕右
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-011979(JP,U)
【文献】国際公開第2017/002731(WO,A1)
【文献】特開2011-037227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒の内部に当該軸筒に対しその軸線方向に相対移動可能に配置され、筆記芯を保持する芯繰出ユニットと、
前記芯繰出ユニットの前方に支持され、当該芯繰出ユニットに保持された前記筆記芯が通過可能な開口部を有する口金と、を備え、
前記軸筒は、前筒と当該前筒に対し前記軸線の周りに相対回転可能な後筒とを有し、
前記前筒は、前記口金が後方から当接する軸筒側縮径部を有し、
前記芯繰出ユニット及び前記口金は、前記後筒を前記前筒に対し前記軸線の周りに相対回転させることにより、当該口金が前記軸筒の前端から突出した筆記状態と、当該口金が前記軸筒の内部に没入した非筆記状態と、に交互に切替可能であり、
前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記軸筒側縮径部を後方から押圧し、
前記芯繰出ユニットは、前記筆記状態にあるとき、筆圧の前記軸筒の軸線方向成分によって前記軸筒に対し前記軸筒の軸線方向に相対移動可能であり、且つ、前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記筆圧の前記軸筒の径方向成分によって前記軸筒に対し当該軸筒の径方向に相対移動可能であ
前記後筒は、押圧部を含み前記前筒に対し前記軸線の周りに相対回転するカムを有し、
前記カムの前記押圧部により押圧される被押圧部を有するカムフォロアを更に備え、
前記カムフォロアは、前記被押圧部が前記カムの前記押圧部により押圧されることにより前記前筒に対し前記軸線方向に相対移動し、
前記カムの前記押圧部と前記カムフォロアの前記被押圧部とは、面接触する、シャープペンシル。
【請求項2】
前記軸筒の内部に当該軸筒に対し前記軸線方向に相対移動可能に配置され、慣性力によって筆記芯を繰り出す繰り出し操作を行う重量体を更に備え、
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるとき、前記重量体による前記筆記芯の繰り出しが制限される、請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記カムは、前記軸線を中心として回転対称に配置された複数の押圧部を有し、
前記カムフォロアは、前記複数の押圧部に対応する位置に複数の被押圧部を有する、請求項1または2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記カムフォロアに対し前記芯繰出ユニットを前方に付勢する付勢手段を更に備え、
前記芯繰出ユニットは、
前記付勢手段により前記カムフォロアに対し前方に付勢されたチャック支持ユニットと、
前記チャック支持ユニットに対し前記軸線方向に相対移動可能に当該チャック支持ユニットに支持され、前記筆記芯を前方に送り出し可能に保持する、チャックユニットと、を有し、
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるとき、前記チャックユニットの前記チャック支持ユニットに対する前記軸線方向の相対移動が規制される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記カムフォロアは、略筒形の形状であり、内面に膨出部を有し、
前記チャックユニットは、前記カムフォロアの前記膨出部に後方から当接する当接部を有し、
前記膨出部及び前記当接部は、前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記筆記状態にあるときには互いに離間し、前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるときには互いに当接する、請求項に記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記芯繰出ユニットは、前記筆記状態にあるとき、前記付勢手段により前記軸筒を前方に押圧する、請求項またはに記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記芯繰出ユニットと前記口金との間に圧縮状態で配置された弾性体を更に備えた、請求項1乃至のいずれか一項に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記筆記状態にあるとき、筆圧によって、前記筆記芯と前記芯繰出ユニットとが前記軸筒に対し後方に相対移動し、且つ、前記弾性体によって前記口金が前記芯繰出ユニットに対し前方に相対移動する、請求項に記載のシャープペンシル。
【請求項9】
軸筒と、
前記軸筒の内部に当該軸筒に対しその軸線方向に相対移動可能に配置され、筆記芯を保持する芯繰出ユニットと、
前記芯繰出ユニットの前方に支持され、当該芯繰出ユニットに保持された前記筆記芯が通過可能な開口部を有する口金と、を備え、
前記軸筒は、前筒と当該前筒に対し前記軸線の周りに相対回転可能な後筒とを有し、
前記前筒は、前記口金が後方から当接する軸筒側縮径部を有し、
前記芯繰出ユニット及び前記口金は、前記後筒を前記前筒に対し前記軸線の周りに相対回転させることにより、当該口金が前記軸筒の前端から突出した筆記状態と、当該口金が前記軸筒の内部に没入した非筆記状態と、に交互に切替可能であり、
前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記軸筒側縮径部を後方から押圧し、
前記芯繰出ユニットは、前記筆記状態にあるとき、筆圧の前記軸筒の軸線方向成分によって前記軸筒に対し前記軸筒の軸線方向に相対移動可能であり、且つ、前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記筆圧の前記軸筒の径方向成分によって前記軸筒に対し当該軸筒の径方向に相対移動可能であり、
前記筆記状態において、相対的に小さい筆圧により前記筆記芯が前記軸線方向に沿って後方へ所定距離移動する第1筆記状態と、相対的に大きい筆圧により前記筆記芯が前記軸線方向に沿って後方へ前記所定距離移動する第2筆記状態と、に切り換え可能である、シャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作等により筆記芯を所定量だけ口金の前端から繰り出すことにより筆記が可能なシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャープペンシルには、筆記時に筆記芯に強い筆圧が加えられると、口金の前端から突出した筆記芯が筆圧に耐えられずに折損してしまう、という問題があった。筆記芯の折損は、筆圧が一定であれば、シャープペンシルの軸筒の軸線方向と紙面とのなす角度が小さくなるほど(軸筒を寝かせるほど)、あるいは、口金の前端から突出した筆記芯の長さが長くなるほど、顕著である。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1(特開2015-123689)では、筆記芯に強い筆圧が加えられた際に、軸筒の軸線方向における筆圧の成分と当該軸線方向と直交する方向における筆圧の成分とをそれぞれ異なる機構により吸収して筆記芯の折損を低減させる、というシャープペンシルが提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1のシャープペンシルは、口金が弾性体(スプリング)を介して軸筒に支持されており、当該口金は、後方に向かって次第に小径となるカム斜面を有している。また、軸筒には、カム斜面を前方に押圧する押圧部が形成されている。このような構成により、軸筒の軸線方向と直交する方向における筆圧の成分(軸筒径外方向の力)に起因して、口金のカム斜面が押圧部によって軸筒に対し前方に押圧され、軸筒の前端から口金が前方にスライドする(飛び出す)。これにより、口金の前端から突出する筆記芯の長さが減少されるようになっている。
【0005】
更に、特許文献1のシャープペンシルは、筆記芯を繰り出す芯繰出ユニットが、弾性体(スプリング)によって軸筒に対し前方に付勢された状態で、軸筒の軸線方向に相対移動可能な態様で当該軸筒に支持されている。このような構成により、筆圧の軸線方向の成分は、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対し後方に相対移動することにより吸収される。この結果、口金の前端から突出する筆記芯の長さが一層減少されて、筆記芯の折損が低減されるようになっている。
【0006】
これに対し、本件出願人は、筆記芯に強い筆圧が加えられた際に、軸筒に対して口金が当該軸筒の径方向にスライドし、且つ、口金に対して筆記芯が後方にスライドするシャープペンシルを開発し、国際出願PCT/JP2016/068863として出願した。
【0007】
ところで、上述したそれぞれのシャープペンシルでは、口金が軸筒の前端から常に露出した状態にあるため、シャープペンシルを落下させた際などに口金が損傷し易いことが懸念される。このような問題を回避するためには、口金を軸筒内に出没可能に構成することが有効である。具体的には、軸筒を、前筒と、この前筒に対し軸筒の軸線周りに相対回転可能な後筒と、で構成し、後筒を前筒に対し軸線周りに相対回転させることにより、口金を軸筒の前端から出没させる回転出没式のシャープペンシルが考えられる。
【0008】
このような回転出没式のシャープペンシルでは、通常、口金が軸筒の前端から突出した筆記状態において、芯繰出ユニットの前端が軸筒から僅かに離間している。しかしながら、上述したそれぞれのシャープペンシルでは、筆圧を吸収する機構を実現するために、コイルバネなどの付勢手段によって口金が軸筒を押圧することが必要である。したがって、従来の出没機構を上述したシャープペンシルに直ちに適用することができなかった。
【0009】
また、軸筒の内部に当該軸筒に対しその軸線方向に相対移動可能に重量体を配置し、この重量体の慣性力によって筆記芯を繰り出す振出式のシャープペンシルも知られている。上述した出没式のシャープペンシルを振出式のシャープペンシルとして構成することができれば、一層操作性の良いシャープペンシルを提供することができる。この場合、芯繰出ユニットが非筆記状態にあるとき、例えば移動時の振動によって重量体が振動し、その慣性力により筆記芯が不所望に繰り出されてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-123689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本件発明者は、鋭意検討を重ねた結果、口金を、芯繰出ユニットに対し軸筒の軸線方向に相対移動可能に当該芯繰出ユニットに支持させることにより、上述した筆圧を吸収するタイプのシャープペンシルを回転出没式とすることができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対し相対移動して筆圧を吸収するタイプのシャープペンシルを回転出没式に構成することにより、筆記芯の折損を低減させ、且つ、効果的に口金を保護することが可能なシャープペンシルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるシャープペンシルは、軸筒と、
前記軸筒の内部に当該軸筒に対しその軸線方向に相対移動可能に配置され、筆記芯を保持する芯繰出ユニットと、
前記芯繰出ユニットの前方に支持され、当該芯繰出ユニットに保持された前記筆記芯が通過可能な開口部を有する口金と、を備え、
前記軸筒は、前筒と当該前筒に対し前記軸線の周りに相対回転可能な後筒とを有し、
前記芯繰出ユニット及び前記口金は、前記後筒を前記前筒に対し前記軸線の周りに相対回転させることにより、当該口金が前記軸筒の前端から突出した筆記状態と、当該口金が前記軸筒の内部に没入した非筆記状態と、に交互に切替可能であり、
前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記軸筒を後方から押圧し、
前記芯繰出ユニットは、前記筆記状態にあるとき、筆圧の前記軸筒の軸線方向成分によって前記軸筒に対し前記軸筒の軸線方向に相対移動可能であり、且つ、前記口金は、前記筆記状態にあるとき、前記筆圧の前記軸筒の径方向成分によって前記軸筒に対し当該軸筒の径方向に相対移動可能である。
【0014】
以上のシャープペンシルは、前記軸筒の内部に当該軸筒に対し前記軸線方向に相対移動可能に配置され、慣性力によって筆記芯を繰り出す繰り出し操作を行う重量体を更に備え、
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるとき、前記重量体による前記筆記芯の繰り出しが制限されて良い。
【0015】
前記後筒は、押圧部を含み前記前筒に対し前記軸線の周りに相対回転するカムを有し、
前記カムの前記押圧部により押圧される被押圧部を有するカムフォロアを更に備え、
前記カムフォロアは、前記被押圧部が前記カムの前記押圧部により押圧されることにより前記前筒に対し前記軸線方向に相対移動し、
前記カムの前記押圧部と前記カムフォロアの前記被押圧部とは、面接触して良い。
【0016】
前記カムは、前記軸線を中心として回転対称に配置された複数の押圧部を有し、
前記カムフォロアは、前記複数の押圧部に対応する位置に複数の被押圧部を有して良い。
【0017】
前記カムフォロアに対し前記芯繰出ユニットを前方に付勢する付勢手段を更に備え、
前記芯繰出ユニットは、
前記付勢手段により前記カムフォロアに対し前方に付勢されたチャック支持ユニットと、
前記チャック支持ユニットに対し前記軸線方向に相対移動可能に当該チャック支持ユニットに支持され、前記筆記芯を前方に送り出し可能に保持する、チャックユニットと、を有し、
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるとき、前記チャックユニットの前記チャック支持ユニットに対する前記軸線方向の相対移動が規制されて良い。
【0018】
前記カムフォロアは、略筒形の形状であり、内面に膨出部を有し、
前記チャックユニットは、前記カムフォロアの前記膨出部に後方から当接する当接部を有し、
前記膨出部及び前記当接部は、前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記筆記状態にあるときには互いに離間し、前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記非筆記状態にあるときには互いに当接するようになっていて良い。
【0019】
前記芯繰出ユニットは、前記筆記状態にあるとき、前記付勢手段により前記軸筒を前方に押圧して良い。
【0020】
前記芯繰出ユニットと前記口金との間に圧縮状態で配置された弾性体を更に備えていて良い。
【0021】
前記口金及び前記芯繰出ユニットが前記筆記状態にあるとき、筆圧によって、前記筆記芯と前記芯繰出ユニットとが前記軸筒に対し後方に相対移動し、且つ、前記弾性体によって前記口金が前記芯繰出ユニットに対し前方に相対移動するようになっていて良い。
【0022】
前記筆記状態において、相対的に小さい筆圧により前記筆記芯が前記軸線方向に沿って後方へ所定距離移動する第1筆記状態と、相対的に大きい筆圧により前記筆記芯が前記軸線方向に沿って後方へ前記所定距離移動する第2筆記状態と、に切り換え可能であってよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対し相対移動して筆圧を吸収するタイプのシャープペンシルを回転出没式に構成できるため、筆記芯の折損を低減させ、且つ、効果的に口金を保護することが可能なシャープペンシルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態によるシャープペンシルを示す概略縦断面図であり、口金が軸筒内に没入した状態で示されている。
図2】本発明の一実施の形態によるシャープペンシルを示す概略縦断面図であり、口金が軸筒から突出した状態で示されている。
図3A図1のシャープペンシルのカム及びカムフォロアを示す概略正面図である。
図3B図3Aの3B-3B線断面図である。
図4A図1のシャープペンシルのカム及びカムフォロアを示す概略側面図である。
図4B図4Aの4B-4B線断面図である。
図5A】口金が軸筒内に没入した状態におけるカムとカムフォロアとの係合状態を示す概略図である。
図5B】口金が軸筒から突出した状態におけるカムとカムフォロアとの係合状態を示す概略図である。
図6A】筆記芯に強い筆圧が加えられていないときの図1のシャープペンシルの前方部分を示す概略縦断面図である。
図6B】筆記芯に強い筆圧が加えられているときの図1のシャープペンシルの前方部分を示す概略縦断面図である。
図7】シャープペンシルの変形例を示す概略縦断面図であり、シャープペンシルを口金が軸筒内に没入した状態で示す図である。
図8】シャープペンシルの変形例を示す概略縦断面図であり、シャープペンシルを口金が軸筒から突出した状態且つ弱筆感状態で示す図である。
図9】シャープペンシルの変形例を示す概略縦断面図であり、シャープペンシルを口金が軸筒から突出した状態且つ強筆感状態で示す図である。
図10】変形例に係るシャープペンシルのカム部材及びカムフォロアを示す分解斜視図である。
図11A図10のカム部材及びカムフォロアを示す概略正面図である。
図11B図10のカム部材及びカムフォロアを示す概略側面図である。
図12】非筆記状態におけるカム部材及びカムフォロアの係合状態を示す斜視図である。
図13A図12のカム部材及びカムフォロアを示す概略正面図である。
図13B図12のカム部材及びカムフォロアを示す概略側面図である。
図14】弱筆感状態におけるカム部材及びカムフォロアの係合状態を示す斜視図である。
図15A図14のカム部材及びカムフォロアを示す概略正面図である。
図15B図14のカム部材及びカムフォロアを示す概略側面図である。
図16】強筆感状態におけるカム部材及びカムフォロアの係合状態を示す斜視図である。
図17A図16のカム部材及びカムフォロアを示す概略正面図である。
図17B図16のカム部材及びカムフォロアを示す概略側面図である。
図18A】非筆記状態におけるカム部材のカム押圧部及びカムフォロアの被押圧部の係合状態を示す拡大図である。
図18B】弱筆感状態におけるカム押圧部及び被押圧部の係合状態を示す拡大図である。
図18C】強筆感状態におけるカム押圧部及び被押圧部の係合状態を示す拡大図である。
図19A】非筆記状態におけるシャープペンシルの後筒の回転規制用凸部と前筒の回転規制用切欠き部との位置関係を示す図である。
図19B】弱筆感状態におけるシャープペンシルの後筒の回転規制用凸部と前筒の回転規制用切欠き部との位置関係を示す図である。
図19C】強筆感状態におけるシャープペンシルの後筒の回転規制用凸部と前筒の回転規制用切欠き部との位置関係を示す図である。
図20】変形例に係るシャープペンシルのカム押圧部及び被押圧部の形状の他の例を示す図である。
図21】変形例に係るシャープペンシルのカム押圧部及び被押圧部の形状のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付の図面を参照して本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1及び図2は、本発明の一実施の形態によるシャープペンシル100を示す概略縦断面図である。図1は、口金30が軸筒10内に没入した状態を示し、図2は、口金30が軸筒10から突出した状態を示している。なお、本明細書では、シャープペンシル100,200の長手方向(軸線方向da)に沿って、筆記する際に紙面P等の被筆記面に近接する側(例えば図1では左側)を前方とし、被筆記面から離間する側(例えば図1では右側)を後方とする。
【0027】
図1及び図2に示すように、シャープペンシル100は、軸筒10と、軸筒10内に支持され、筆記芯21を保持する芯繰出ユニット20と、芯繰出ユニット20の前方に支持され、芯繰出ユニット20に保持された筆記芯21が通過可能な開口部を有する口金30と、を備えている。本実施の形態の芯繰出ユニット20は、軸筒10に対し軸線方向daに相対移動可能に当該軸筒10に支持されている。後に詳述されるが、口金30は、軸筒10の前端から出没可能となっている。
【0028】
図1及び図2に示すように、軸筒10は、前筒11と、前筒11に対しその軸線L周りに相対回転可能な後筒12と、を有している。芯繰出ユニット20及び口金30は、後筒12を前筒11に対し軸筒10の軸線Lの周りに相対回転させることにより、口金30が軸筒10の前端から突出した筆記状態(図2参照)と、口金30が軸筒10の内部に没入した非筆記状態(図1参照)と、に交互に切り替えられるようになっている。
【0029】
後筒12は、後筒本体13と、この後筒本体13の前方に一体的に形成され、カム押圧部14pを含み前筒11に対し後筒本体13と共に軸線L周りに相対回転する、カム14と、を有している。また、シャープペンシル100は、カム14のカム押圧部14pにより押圧される被押圧部40pを有するカムフォロア40を、更に備えている。図1に示すように、芯繰出ユニット20は、カムフォロア40との間に圧縮状態で配置されたクッションスプリング50によって、カムフォロア40に対し前方(図1における左方)に付勢されている。
【0030】
次に、図3A図5Bを参照して、カム14及びカムフォロア40について説明する。図3Aは、図1のシャープペンシル100のカム14及びカムフォロア40を示す概略正面図であり、図3Bは、図3Aの3B-3B線断面図である。図4Aは、図1のシャープペンシル100のカム14及びカムフォロア40を示す概略側面図であり、図4Bは、図4Aの4B-4B線断面図である。また、図5Aは、口金30が軸筒10内に没入した状態におけるカム14とカムフォロア40との係合状態を示す概略図であり、図5Bは、口金30が軸筒10から突出した状態におけるカム14とカムフォロア40との係合状態を示す概略図である。図5A及び図5Bにおいて、カム14及びカムフォロア40は、展開図にて示されている。
【0031】
図3A図4Bに示すように、本実施の形態のカム14は後筒12の前端に一体的に形成されている。カム14は、軸線Lの周りを螺旋状に延びるカム押圧部14pを有している。図3A図4Bに示すように、このカム押圧部14pは、前方に面する2条の押圧面であり、軸線Lに関して回転対称に形成されている。すなわち、一方のカム押圧部14pを軸線L周りに180°回転させた位置に、他方のカム押圧部14pが形成されている。
【0032】
図3A図4Bに示すように、カムフォロア40は、略筒形の形状を有している。カムフォロア40は、後方にカム14を収容する筒型の収容部41を有し、この収容部41の内面に、軸線Lの周りを螺旋状に延びる被押圧部40pを有している。図3A図4Bに示すように、この被押圧部40pは、後方に面する2条の被押圧面であり、カム14の2つのカム押圧部14pに対向している。すなわち、一方の被押圧部40pを軸線L周りに180°回転させた位置に、他方の被押圧部40pが形成されている。
【0033】
以上のような構成により、図5Aに示すように、本実施の形態の被押圧部40pは、口金30が軸筒10内に没入している際に、カム押圧部14pと面接触するようになっている。図5A及び図5Bに示すように、被押圧部40pは、後端40tに、カム14に設けられたカム側規制部14sに当接する、カムフォロア側規制部40sを有している。図示されるように、本実施の形態のカム側規制部14s及びカムフォロア側規制部40sは、軸線方向daに延びる壁部として構成されている。また、図5A及び図5Bに示すように、カム14のカム側規制部14sの近傍に、カム14に対するカムフォロア40の後端40tの後戻りを規制する戻り止め部14eを有している。この戻り止め部14eは、カムフォロア40の後端40tが当該戻り止め部14eを乗り越えた直後に、カム側規制部14sとカムフォロア側規制部40sとが当接するように、位置決めされている。
【0034】
図3A図4Bに戻って、カムフォロア40の前端は、内面に膨出部42を有している。膨出部42は、カムフォロア40が軸筒10に対し後方に相対移動する際に、すなわち口金30及び芯繰出ユニット20が筆記状態から非筆記状態に切り替わる際に、芯繰出ユニット20を軸筒10に対し後方に相対移動させるためのものである。膨出部42の作用については、後に詳述される。
【0035】
更に、カムフォロア40は、外面に被ガイド部43を有している。被ガイド部43は、軸筒10に設けられたガイド部17に係合して軸筒10に対するカムフォロア40の軸線L周りの相対回転を規制するためのものである。本実施の形態の被ガイド部43は、収容部41の外面に設けられた突起であり、本実施の形態のガイド部17は、被ガイド部43に対応する軸筒10の部分の内面に軸線方向daに沿って設けられた溝である。なお、カムフォロア40と軸筒10との軸線L周りの相対回転を規制することができれば、このような形態には限定されない。したがって、例えば、被ガイド部として軸線方向daに延びる溝を設け、ガイド部としてこの溝に係合する軸線方向daに延びる突部を設けても良い。
【0036】
また、図1及び図2に示すように、シャープペンシル100は、カムフォロア40を軸筒10に対し後方に付勢するカムフォロア用スプリング60を有している。このカムフォロア用スプリング60は、軸筒10の内面に設けられた第1受け部19と収容部41の前端との間に圧縮状態で配置されている。カムフォロア用スプリング60の付勢力により、カムフォロア40、芯繰出ユニット20及び口金30が自重で不所望に軸筒10に対して軸線方向daに相対移動することが防止されている。
【0037】
図1及び図2に戻って、本実施の形態の芯繰出ユニット20は、軸筒10に対し軸線方向daに相対移動可能に軸筒10に支持されたチャック支持ユニット27と、チャック支持ユニット27に対し軸線方向daに相対移動可能に当該チャック支持ユニット27に支持され、筆記芯21を前方に送り出すように保持するチャックユニット28と、口金30をチャック支持ユニット27に抜け止め状態で保持するための保持部材22と、を有している。口金30は、筆記芯21を案内するガイドパイプ31と、このガイドパイプ31よりも大径のスリーブ部32と、を有している。スリーブ部32は、前方の小径部32cと後方の拡径部32dとを有している。
【0038】
保持部材22は、口金30の外周を取り囲んだ状態でチャック支持ユニット27に固定された筒状の部材である。保持部材22の前端は、内径が縮小された絞り部22fを有している。絞り部22fの外面には、前方に向かって先細りとなるテーパ部22tが形成されている。絞り部22fの前端の内径は、口金30の小径部32cの外径よりも大きいが拡径部32dの外径よりも小さい。これにより、保持部材22内に後方から挿入された口金30の拡径部32dが保持部材22に対し絞り部22fを超えて前方に相対移動することが禁止される。
【0039】
チャック支持ユニット27は、当該チャック支持ユニット27と口金30との間に配置される口金用スプリング33の付勢力を受ける第2受け部27aを有している。この第2受け部27aは、口金30の小径部32cと拡径部32dとの接続部分よりも後方に位置しており、当該接続部分との間に口金用スプリング33が伸縮可能に圧縮状態で配置されている。したがって、口金30は、拡径部32dが保持部材22の絞り部22fを押圧した状態でチャック支持ユニット27の前方に配置されることになる。本実施の形態では、口金用スプリング33の初動荷重は、クッションスプリング50の初動荷重よりも小さく設定されている。
【0040】
また、チャック支持ユニット27は、外筒27pと、外筒27pに支持され、チャックユニット28に設けられたチャック24を締める締めリング25と、チャックユニット28を外筒27pに対し後方に付勢するリターンスプリング26と、を有している。外筒27pは、前方の内周面に縮径部27sを有している。チャック24は、この縮径部27sにより画定された開口を軸線方向daに貫通して配置され、外筒27pに対して軸線方向daに相対移動可能となっている。また、リターンスプリング26は、外筒27pの縮径部27sとコネクタ29との間に圧縮状態で配置されている。このような構成により、リターンスプリング26は、外筒27pに対してチャックユニット28を後方に付勢している。チャックユニット28がチャック支持ユニット27に対し前方に相対移動させられていないときには、チャック24は、前端領域が締めリング25によって締められて、筆記芯21を後退しないように挟持する。チャック支持ユニット27は、当該チャック支持ユニット27とカムフォロア40との間に配置されるクッションスプリング50からの付勢力を受ける第3受け部27bを有している。とりわけ、第3受け部27bは、チャック支持ユニット27の外筒27pにおける後方を向く面として設けられる。したがって、クッションスプリング50は、第3受け部27bとカムフォロア40の前端との間に圧縮状態で配置される。
【0041】
図1及び図2に示すように、チャックユニット28は、カムフォロア40内を貫通して配置され、カムフォロア40の膨出部42に後方から当接する当接部29pを有している。図1乃至図4Bに示すように、本実施の形態の当接部29pは、コネクタ29の外面に形成された凸部である。当接部29pの外径は、カムフォロア40の膨出部42の内径よりも大きく形成されている。このため、チャックユニット28のカムフォロア40に対する前方への相対移動は、当接部29pが膨出部42に後方から当接することによって規制されることになる。本実施の形態において、当接部29p及び膨出部42は、互いに当接した際にクッションスプリング50が圧縮状態を維持し、且つ、口金30が軸筒10(前筒11)内に完全に没入する位置に設けられている。
【0042】
軸筒10(前筒11)は、内周面に、保持部材22のテーパ部22tが後方から当接する押圧部15と、口金30の小径部32cが後方から当接する軸筒側縮径部16と、を有している。図1及び図2に示すように、本実施の形態の押圧部15及び軸筒側縮径部16は、いずれも軸筒10の内面に形成された凸部である。また、軸筒10の前方の内径は、保持部材22の外径よりも大きくなっており、軸筒10に対し口金30の径方向の相対移動が許容されている。
【0043】
更に、芯繰出ユニット20は、芯パイプ23の後端に取り付けられた押圧操作部18を更に有している。この押圧操作部18を前方に押圧操作(ノック操作)することによって、チャックユニット28から筆記芯21が繰り出される。具体的な繰り出しの態様については、後述される。押圧操作部18は、後方が消しゴム(不図示)を取外可能に保持するホルダ部18hとして構成されている。そして、ホルダ部18hには、消しゴムの後方を覆うドーム状のノブ81が取外可能に外嵌されている。
【0044】
シャープペンシル100は、チャックユニット28のコネクタ29の後方に、芯パイプ23を取り囲み軸筒10内にてチャックユニット28に対し前後に相対移動可能な重量体70を更に有している。この重量体70は、軸筒10が軸線方向daに沿って振られた際に、コネクタ29に後方から慣性力を作用させることでチャックユニット28をチャック支持ユニット27に対して前方に相対移動させ、筆記芯21を繰り出すためのものである。したがって、シャープペンシル100は、押圧操作部18を前方に押圧操作することによっても、あるいは軸筒10を前後に振ることによっても、筆記芯21が繰り出されるようになっている。
【0045】
次に、シャープペンシル100の作用について説明する。なお、以下の説明において、口金30が軸筒10内に没入している図1の状態を初期状態とする。
【0046】
紙面に対して筆記を行うに先立ち、必要に応じて、ノブ81が押圧操作部18から取り外され、筆記芯21が芯パイプ23内に投入される。その後、ノブ81が押圧操作部18に再び取り付けられる。そして、前筒11に対し後筒12が後方から見て時計回りに相対回転されると、次のようにして口金30が軸筒10の前端から繰り出される。すなわち、後筒12と共に、カム14が前筒11に対し時計回りに相対回転され、カム14のカム押圧部14pがカムフォロア40の被押圧部40pを押圧する(図5A及び図5B参照)。この押圧によって、カム押圧部14pと被押圧部40pとには、互いの接触面に対し直交する方向に互いに逆向きの力が作用する。これらの力には、軸筒10の軸線方向daの成分と、軸線方向daと直交する方向(軸筒10の径方向)の成分とが含まれる。ところで、カムフォロア40は、被ガイド部43と軸筒10のガイド部17との係合により、軸筒10に対し軸線L周りに相対回転することが規制され、当該軸筒10に対し軸線方向daにのみ相対移動することができる。このため、カムフォロア40は、カムフォロア用スプリング60を圧縮させつつ、軸筒10に対し前方に相対移動する。
【0047】
カムフォロア40が軸筒10に対し前方に相対移動されることにより、芯繰出ユニット20も軸筒10に対し前方に相対移動される。そして、この相対移動の過程で、まず口金30の小径部32cが軸筒側縮径部16に当接し、口金30の軸筒10に対する前方への更なる相対移動が規制される。この状態からカムフォロア40が軸筒10に対し更に前方に相対移動されると、口金用スプリング33が圧縮されて保持部材22の前端から前方に突出している小径部32cの長さが減少する。その後、保持部材22のテーパ部22tが軸筒10の押圧部15に後方から当接し、軸筒10に対するチャック支持ユニット27の前方への更なる相対移動と、保持部材22に対する口金30の後方への更なる相対移動と、の双方が規制される。そして、後筒12によってカムフォロア40が軸筒10に対し更に前方に相対移動されると、クッションスプリング50及びカムフォロア用スプリング60を圧縮させつつ、カムフォロア40が軸筒10及び芯繰出ユニット20に対し前方に相対移動する。この相対移動によって、カムフォロア40の膨出部42とチャックユニット28の当接部29pとが離反する。
【0048】
そして、前筒11に対し後筒12が更に相対回転されると、カムフォロア40の後端40tがカム14の戻り止め部14eを乗り越える。すると、カム側規制部14sとカムフォロア側規制部40sとが互いに当接し、それ以上の前筒11に対する後筒12の軸線L周りの相対回転が禁止され、軸筒10の前端からの口金30を突出させる操作が完了する。前述したようにカム14の戻り止め部14eは前方に凸の形状に構成されているため、カム14の後端14tが戻り止め部14eを乗り越えた後は、クッションスプリング50及びカムフォロア用スプリング60によってカムフォロア40がカム14に対して後方に押圧されても、それらの相対位置関係は変化しない。
【0049】
このように、口金30を軸筒10の前端から突出させる際には、カムフォロア用スプリング60、クッションスプリング50及び口金用スプリング33の全てが圧縮される。このため、カム14は、各スプリング60、50、33の付勢力を超える力でカムフォロア40を前方に押圧することになる。ところで、本実施の形態では、カム14のカム押圧部14pとカムフォロア40の被押圧部40pとが面接触して力が均等に接触部分に掛かることから、安定した回転動作が行われる。このため、前筒11に対し後筒12を軸線L周りに相対回転させる力が、カムフォロア40を軸筒10に対し前方に押圧する力へと、効率的に転換される。したがって、口金30を軸筒10の前端から露出させるために後筒12に加えられるべきトルクが過度に大きくなることはない。
【0050】
その後、軸筒10の前端が押圧操作部18より下方に位置する姿勢で当該押圧操作部18(ノブ81)が軸筒10に対して前方に押し込まれる(ノックされる)。これにより、チャックユニット28がリターンスプリング26の付勢力に逆らってチャック支持ユニット27に対し前進させられる。この前進の過程で、締めリング25がチャック24から外れ、当該チャック24が開放される。この結果、チャック24から筆記芯21が所定の長さだけ前方に繰り出される。
【0051】
そして、使用者によって軸筒10が把持され、紙面に対して筆記芯21を当接させつつ軸筒10を所望に移動させることによって、筆記が行われる。筆記芯21が摩耗した際には、押圧操作部18を前方に押圧操作することによって、あるいは軸筒10を前後に振って重量体70をコネクタ29に後方から衝突させること(振り出し操作)によって、筆記芯21を繰り出せばよい。
【0052】
次に、図6A及び図6Bを参照して、シャープペンシル100の筆記時の作用について説明する。図6Aは、筆記芯21に強い筆圧が加えられていないときの図1のシャープペンシル100の前方部分を示す概略縦断面図であり、図6Bは、筆記芯21に強い筆圧が加えられているときの図1のシャープペンシル100の前方部分を示す概略縦断面図である。図6Aに示すように、筆記の際、軸筒10は、軸線方向daが紙面Pに対して鋭角をなすように把持されることが一般的である。このため、筆記時に、筆記芯21には、軸筒10の軸線方向daに垂直な成分(軸筒10の径方向の成分)と当該軸線方向daの成分とを含む力が作用する。本実施の形態のシャープペンシル100は、筆記時に筆記芯21に強い筆圧が加えられた際に、次のようにして筆圧の軸線方向daに垂直な成分と軸線方向daの成分とをそれぞれ吸収し、口金30から突出した筆記芯21の折損を低減させる。
【0053】
すなわち、筆記芯21に強い筆圧が作用すると、筆圧の軸線方向daに垂直な成分によって、筆記芯21及び口金30を介して保持部材22のテーパ部22tと軸筒10の押圧部15との間に強い押圧力が作用する。すると、保持部材22のテーパ部22tが前方に向かって先細りとなっていることにより、図6Bに示すように、芯繰出ユニット20は、その前方が軸線Lに対し傾動しながら、クッションスプリング50を圧縮しつつ軸筒10に対し後方に相対移動する。
【0054】
ところで、口金30は、口金用スプリング33によって芯繰出ユニット20に対し前方に付勢されている。この付勢力により、口金30は、芯繰出ユニット20の軸筒10に対する後方への相対移動量に応じて、当該芯繰出ユニット20に対し前方に相対移動する。すなわち、芯繰出ユニット20が軸筒10に対し後方に相対移動しても、口金30は、軸筒10に対し軸線方向daには相対移動しない。この結果、口金30の前端から突出する筆記芯21の長さが減少する。
【0055】
これと同時に、筆圧の軸線方向daの成分によって、筆記芯21が後方に押圧される。この筆圧の軸線方向daの成分がクッションスプリング50の付勢力を超えている場合、芯繰出ユニット20は、クッションスプリング50を更に圧縮させながら軸筒10に対し後方に相対移動する。すなわち、口金30の前端から突出する筆記芯21の長さが一層減少され、筆記芯21の折損がより効果的に回避される。
【0056】
そして、筆記芯21に加えられている筆圧が弱められ、クッションスプリング50の付勢力によって、芯繰出ユニット20が軸筒10に対して前方に押し戻される。これにより、図6Aに示す状態が復元される。
【0057】
筆記が終了すると、次のようにして口金30が軸筒10内に没入される。まず、後筒12が前筒11に対し、後方から見て反時計回りに相対回転される。この相対回転によって、カム14の戻り止め部14eがカムフォロア40の後端40tを乗り越える。すなわち、図5Bに示す状態において、戻り止め部14eがカムフォロア40の後端40tより下方に位置付けられ、カム14に対するカムフォロア40の戻り止めの状態が解除される。すると、各スプリング60、50、33による付勢力を原動力として、カムフォロア40が軸筒10に対し後方に押し戻され、これに伴って後筒12が前筒11に対し後方から見て反時計回りに相対回転される。これにより、口金30を軸筒10の前端から突出させる際の上述した動作が逆順で行われて、口金30及び芯繰出ユニット20が初期状態である非筆記状態となる(図1参照)。
【0058】
口金30が軸筒10内に没入される際、口金用スプリング33が次第に伸長するため、チャックユニット28に対し口金30が前方に相対移動する。このため、筆記が終了した際に口金30の前端から筆記芯21がある程度突出していたとしても、この相対移動により、筆記芯21の当該露出している部分の少なくとも一部が口金30内に没入される。このことにより、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるとき、筆記芯21が確実に保護される。そして、口金30が再び軸筒10の前端から突出させる際には、前述したようにチャックユニット28に対し口金30が後方に相対移動されるため、筆記芯21の前端が再び口金30から突出し、押圧操作部18の押圧操作や重量体70による振り出し操作なしで、筆記が再開され得る。
【0059】
本実施の形態によるシャープペンシル100は、口金30が軸筒10内に没入している際に、筆記芯の繰り出しが規制される。すなわち、前述したように、シャープペンシル100は、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるとき、カムフォロア40の膨出部42にチャックユニット28の当接部29pが後方から当接している。このため、押圧操作部18を軸筒10に対し前方に相対移動させると、あるいは重量体70の慣性力をコネクタ29に作用させると、チャックユニット28と共にカムフォロア40が軸筒10に対し前方に相対移動する。この際、カムフォロア40に伴ってクッションスプリング50及びチャック支持ユニット27も軸筒10に対し前方に相対移動される。すなわち、チャックユニット28とチャック支持ユニット27とが同時に軸筒10に対し前方に相対移動する。結局、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるとき、チャックユニット28のチャック支持ユニット27に対する前方への相対移動が規制されるため、押圧操作部18の押圧操作や重量体70の慣性力による振り出し操作が行われても、筆記芯21は繰り出されない。
【0060】
以上のような本実施の形態によれば、筆記芯21を含む芯繰出ユニット20が軸筒10に対し相対移動して筆圧を吸収するタイプのシャープペンシル100を回転出没式に構成できるため、筆記芯21の折損を低減させ、且つ、効果的に口金30を保護することが可能なシャープペンシル100を提供することができる。
【0061】
また、シャープペンシル100は、軸筒10の内部に当該軸筒10に対し軸線方向daに相対移動可能に配置され、慣性力によって筆記芯21を繰り出す繰り出し操作を行う重量体70を更に備え、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるとき、重量体70による筆記芯21の繰り出しが制限されている。これは、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるときに、当接部29pがカムフォロア40の膨出部42に後方から当接することにより実現されている。このことから、本実施の形態によれば、口金30及び芯繰出ユニット20が非筆記状態にあるとき、押圧操作部18が押圧操作されても、あるいは重量体70の慣性力による振り出し操作が行われても、筆記芯21が繰り出されない。このことにより、利便性の高いシャープペンシル100を提供することができる。
【0062】
また、カム14のカム押圧部14pとカムフォロア40の被押圧部40pとが面接触していることにより、カム押圧部14pと被押圧部40pとの間に作用する摩擦力が低減される。このため、比較的小さい力によって、前筒11に対し後筒12を相対回転させてカムフォロア40を軸筒10に対し前方に相対移動させることができる。
【0063】
また、カム14は、軸線Lを中心として回転対称に配置された2つのカム押圧部14pを有し、カムフォロア40は、2つのカム押圧部14pに対応する位置に2つの被押圧部40pを有している。このため、カムフォロア40がカム14を押圧する力、あるいはカム14がカムフォロア40を押圧する力は、軸筒10の軸線方向daから見て軸筒10の中心軸線(軸線L)上で作用することになり、安定的な口金30の出没動作を行うことができる。なお、軸線Lを中心として回転対称に配置されているならば、押圧部は3つ以上設けられていても良い。この場合、押圧部に対応して3つ以上の被押圧部が軸線Lを中心として回転対称に配置されることになる。
【0064】
また、芯繰出ユニット20と口金30との間には、圧縮状態で配置された口金用スプリング33が設けられている。そして、筆圧によって、筆記芯21と芯繰出ユニット20とが軸筒10に対して後方に相対移動し、且つ、口金用スプリング33によって口金30が芯繰出ユニット20に対して前方に相対移動する。このため、筆圧によって芯繰出ユニット20が軸筒10に対し後方に相対移動しても、口金30は軸筒10に対し後方に相対移動しない。このことによって、筆記芯21に強い筆圧が作用した際に、口金30の前端から突出する筆記芯21の長さが減少され、筆記芯21の折損が効果的に低減され得る。
【0065】
なお、以上の説明においては、重量体70を有するシャープペンシル100について説明を行ったが、この重量体70を省略したシャープペンシルも考慮され得る。このようなシャープペンシルにおいても、重量体70の慣性力による振り出し操作による筆記芯21の繰り出しを除き、上述したシャープペンシル100と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0067】
上記の実施の形態に係るシャープペンシル100では、筆記芯21に対して筆圧が作用すると、当該筆圧の軸線方向da成分によりクッションスプリング50が圧縮され、筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ移動する。図7図20を参照して以下に説明する変形例では、筆記芯21に対して同じ筆圧が作用した際の筆記芯21の移動量を変更することが可能であるシャープペンシル200が提供される。このシャープペンシル200は、筆記芯21に対して同一の筆圧が作用した際の、筆記芯21の軸線方向daに沿った後方への移動量が相対的に大きい第1筆記状態と、筆記芯21の軸線方向daに沿った後方への移動量が相対的に小さい第2筆記状態と、に切り換えることが可能である。第1筆記状態では、相対的に小さい筆圧により筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ所定距離移動し、第2筆記状態では、相対的に大きい筆圧により筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ所定距離移動する。したがって、使用者は、第1筆記状態にあるシャープペンシル200では相対的に弱い筆感を得、第2筆記状態にあるシャープペンシル200では相対的に強い筆感を得る。これにともなって、本明細書では、第1筆記状態を弱筆感状態とも呼び、第2筆記状態を強筆感状態とも呼ぶ。
【0068】
図7は、変形例に係るシャープペンシル200を示す概略縦断面図であり、シャープペンシル200を口金30が軸筒10内に没入した状態で示す図であり、図8は、シャープペンシル200を口金30が軸筒10から突出した状態且つ弱筆感状態で示す図であり、図9は、シャープペンシル200を口金30が軸筒10から突出した状態且つ強筆感状態で示す図である。図10は、カム部材214及びカムフォロア40を示す分解斜視図であり、図11Aは、対応する概略正面図であり、図11Bは、対応する概略側面図である。図12は、非筆記状態におけるカム部材214及びカムフォロア40の係合状態を示す斜視図であり、図13Aは、対応する概略正面図であり、図13Bは、対応する概略側面図である。図14は、弱筆感状態におけるカム部材214及びカムフォロア40の係合状態を示す斜視図であり、図15Aは、対応する概略正面図であり、図15Bは、対応する概略側面図である。図16は、強筆感状態におけるカム部材214及びカムフォロア40の係合状態を示す斜視図であり、図17Aは、対応する概略正面図であり、図17Bは、対応する概略側面図である。
【0069】
本変形例の後筒12は、後筒本体13と、カム14を有し後筒本体13の前方に配置されたカム部材214とを有している。後筒本体13は、前方の小径部13aと、小径部13aの後方に位置する拡径部13bとを有している。小径部13aの外面には当該外面から径方向の外側へ向けて突出した係合凸部13cが設けられている。小径部13aにおける係合凸部13cよりも後方部分の外面には、当該外面から径方向外側へ向けて突出した回転規制用凸部13dが形成されている。図示された例では、回転規制用凸部13dは、小径部13aの後端に形成されている。
【0070】
カム部材214は、図10に示されているように、全体として円筒状の形状を有している。カム部材214の後方部分には穴部214aが形成されている。図7図9に示されているように、後筒本体13の係合凸部13cが、カム部材214の穴部214aに係合することにより、後筒本体13とカム部材214とが互いに連結される。なお、図示された例では、穴部214aはカム部材214を径方向に貫通した貫通孔として形成されているが、穴部214aの具体的形状はこれに限られない。例えば、穴部214aは、カム部材214の内面に形成された非貫通孔であっても良い。係合凸部13cと穴部214aとの係合により、カム部材214は、後筒本体13に対して周方向及び軸線方向daの両方の移動が規制される。
【0071】
前筒11は、第1部材11aと、第1部材11aに対して後方から組み付けられた第2部材11bとを含んでいる。前筒11の後端(第2部材11b)には、径方向内方に向けて膨出した膨出部11cが形成されている。膨出部11cの内径は、カム部材214の外形よりも小さい。したがって、前筒11(第2部材11b)内に配置されたカム部材214は、前筒11から後方へ抜け出ることが防止される。カム部材214は、第1部材11aと第2部材11bとが互いに組み付けられる前に、前方から第2部材11b内に挿入される。
【0072】
膨出部11cは、周方向に延びる回転規制用切欠き部11dを有している。後筒12が前筒11に対して組み付けられた状態において、後筒12の回転規制用凸部13dは、回転規制用切欠き部11d内に位置する。後筒12の回転規制用凸部13dは、回転規制用切欠き部11dの範囲内において周方向に移動可能である。これにより、回転規制用凸部13dが回転規制用切欠き部11d内において移動可能である範囲内において、後筒12は前筒11に対して軸線L周りに回転可能に構成される。
【0073】
図7~9に示されているように、後筒本体13とカム部材214とが連結された状態において、カム部材214の後端が膨出部11cの前端に当接し、後筒本体13の拡径部13bの前端が前筒11の後端(膨出部11cの後端)に当接している。したがって、後筒12の前筒11に対する軸線方向daの移動は規制される。なお、カム部材214の後端と膨出部11cの前端との間、及び/又は、後筒本体13の拡径部13bの前端と前筒11の後端との間に、所定の隙間(遊び)が形成されてもよい。
【0074】
押圧操作部18のホルダ部18hには、消しゴム等の筆跡消去部材18iが後方から挿入されている。
【0075】
カムフォロア40の前方部分には、前端から離間して穴部40aが形成されている。コネクタ29の当接部29pが穴部40aに嵌合することにより、コネクタ29とカムフォロア40とが互いに連結される。穴部40aは軸線方向daに沿って所定長さを有しており、コネクタ29の当接部29pは、穴部40a内に嵌合された状態で前後方向に移動可能である。すなわち、コネクタ29は、カムフォロア40に対して周方向の移動は規制される一方、前後方向には一定距離内で移動可能である。なお、図示された例では、穴部40aはカムフォロア40を径方向に貫通した貫通孔として形成されているが、穴部40aの具体的形状はこれに限られない。例えば、穴部40aは、カムフォロア40の内面に形成された非貫通孔であっても良い。
【0076】
本変形例では、カム押圧部14pは、カム部材214の前端に設けられている。また、被押圧部40pは、カムフォロア40の外面に設けられている。カムフォロア40は、軸線方向daに沿って前端及び後端から離間した中間部に拡径部40bを有している。被押圧部40pは、拡径部40bの後端に設けられている。カムフォロア40の拡径部40bよりも後方に位置する部分は、カム部材214の内側に挿入される。カム押圧部14pは、第1戻り止め部14e1と、第1戻り止め部14e1に対して周方向に離間して配置された第2戻り止め部14e2とを有している。第2戻り止め部14e2の前端は、第1戻り止め部14e1の前端よりも軸線方向daにおける前方側に位置している。第1戻り止め部14e1と第2戻り止め部14e2との間には、後方に向かって窪んだ第1凹部14f1が形成されている。第2戻り止め部14e2に対して周方向における第1凹部14f1と反対側に位置する部分には、後方に向かって窪んだ第2凹部14f2が形成されている。
【0077】
次に、図7図19cを参照して、本変形のシャープペンシル200の動作について説明する。図18Aは、非筆記状態におけるカム部材214のカム押圧部14p及びカムフォロア40の被押圧部40pの係合状態を示す拡大図であり、図18Bは、弱筆感状態におけるカム押圧部14p及び被押圧部40pの係合状態を示す拡大図であり、図18Cは、強筆感状態におけるカム押圧部14p及び被押圧部40pの係合状態を示す拡大図である。図19Aは、非筆記状態における後筒12の回転規制用凸部13dと前筒11の回転規制用切欠き部11dとの位置関係を示す図であり、図19Bは、弱筆感状態における回転規制用凸部13dと回転規制用切欠き部11dとの位置関係を示す図であり、図19Cは、強筆感状態における回転規制用凸部13dと回転規制用切欠き部11dとの位置関係を示す図である。
【0078】
図7に示された、口金30が軸筒10内に没入した状態(非筆記状態)において、コネクタ29の当接部29pの前端は、カムフォロア40の穴部40aの前端に当接している。この場合、コネクタ29のさらなる前進が規制され、コネクタ29の後端に重量体70からの押圧力が作用した場合にも筆記芯21の繰出しが防止される。すなわち、非筆記状態においてシャープペンシル200が軸線方向daに振られたとしても、使用者の意図に反して筆記芯21が繰り出されることが防止される。このとき、図19Aに示されているように、後筒12の回転規制用凸部13dは、前筒11の回転規制用切欠き部11dの周方向の一端部に位置する。
【0079】
カム部材214がカムフォロア40に対して軸線L周りに(周方向に)回転されると、カムフォロア40は、カム押圧部14pから受ける押圧力の軸線方向成分により、カムフォロア用スプリング60の付勢力に抗して前方に移動する。このとき、カムフォロア用スプリング60、クッションスプリング50及び口金用スプリング33は軸線方向daに圧縮される。カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tは、軸線方向daに沿って前方に移動しながら第1戻り止め部14e1を超える。カムフォロア用スプリング60の付勢力により、カムフォロア40が後方に移動し、カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tは、第1凹部14f1内に位置する。これにより、口金30が軸筒10から突出する。カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tが第1凹部14f1内に位置するとき、シャープペンシル200は、図8に示す第1筆記状態(弱筆感状態)となる。このとき、図19Bに示されているように、後筒12の回転規制用凸部13dは、前筒11の回転規制用切欠き部11dの周方向の一端部及び他端部から離間した中間部に位置する。
【0080】
カム部材214がカムフォロア40に対して軸線L周りに(周方向に)さらに回転されると、カムフォロア40は、カム押圧部14pから受ける押圧力の軸線方向成分により、カムフォロア用スプリング60の付勢力に抗してさらに前方に移動する。このとき、カムフォロア用スプリング60及びクッションスプリング50は軸線方向daに圧縮される。カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tは、軸線方向daに沿って前方に移動しながら第2戻り止め部14e2を超える。カムフォロア用スプリング60の付勢力により、カムフォロア40が後方に移動し、カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tは、第2凹部14f2内に位置する。カムフォロア40の被押圧部40pの後端40tが第2凹部14f2内に位置するとき、シャープペンシル200は、図9に示す第2筆記状態(強筆感状態)となる。このとき、図19Cに示されているように、後筒12の回転規制用凸部13dは、前筒11の回転規制用切欠き部11dの周方向の他端部に位置する。
【0081】
第2筆記状態におけるクッションスプリング50の圧縮量は、第1筆記状態におけるクッションスプリング50の圧縮量よりも大きい。これにより、第2筆記状態におけるクッションスプリング50のバネ張力は、第1筆記状態におけるクッションスプリング50のバネ張力よりも大きくなる。したがって、同一の筆圧が作用した際の、第2筆記状態における筆記芯21の軸線方向daに沿った後方への移動量は、第1筆記状態における筆記芯21の軸線方向daに沿った後方への移動量よりも小さい。換言すると、第2筆記状態における、筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ所定距離移動するために必要な筆圧は、第1筆記状態における、筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ当該所定距離移動するために必要な筆圧よりも大きくなる。結果として、第2筆記状態にあるシャープペンシル200の筆感は、第1筆記状態にあるシャープペンシル200の筆感よりも強くなる。
【0082】
本変形例のシャープペンシル200は、筆記状態において、相対的に小さい筆圧により筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ所定距離移動する第1筆記状態と、相対的に大きい筆圧により筆記芯21が軸線方向daに沿って後方へ前記所定距離移動する第2筆記状態と、に切り換え可能である。
【0083】
このようなシャープペンシル200によれば、当該シャープペンシル200を弱筆感状態(第1筆記状態)と強筆感状態(第2筆記状態)とに切り換えることが可能になる。これにより、使用者の好みに応じたシャープペンシル200の使用感の向上を図ることができる。すなわち、様々な好みを有する使用者それぞれが快適に使用することができるシャープペンシル200を提供することが可能になる。なお、本変形例のシャープペンシル200は、筆記状態において、第1筆記状態と第2筆記状態との2段階の状態に切替え可能に構成されているが、これに限られず、シャープペンシル200は、筆記状態において、3段階以上に切り換え可能に構成されてもよい。
【0084】
次に、図20及び図21を参照して、カム押圧部14p及び被押圧部40pの形状の他の例について説明する。図20は、シャープペンシル200のカム押圧部14p及び被押圧部40pの形状の他の例を示す図であり、図21は、シャープペンシル200のカム押圧部14p及び被押圧部40pの形状のさらに他の例を示す図である。
【0085】
図20に示された例では、カム押圧部14pは、周方向に沿って配列された複数のカム押圧要素14peを含んでいる。図示された例では、1つのカム押圧部14pは、2つのカム押圧要素14peを含んでいる。なお、これに限られず、1つのカム押圧部14pは、3つ以上のカム押圧要素14peを含んでもよい。複数のカム押圧要素14peは、互いに同一形状を有している。
【0086】
このようなカム押圧部14pによれば、シャープペンシル200における、口金30の出没動作、及び、第1筆記状態と第2筆記状態との切り換え動作をさらに安定して行うことができる。
【0087】
図21に示された例では、カム押圧部14pは、周方向に沿って配列された一対のカム押圧要素14peを含んでいる。一対のカム押圧要素14peは、軸線方向daに延びる直線L1に対して、周方向に互いに対称をなす形状を有している。一方のカム押圧要素14peは、後方に向かうにつれて周方向の一方側(図21では上側)に向かうように伸びる第1押圧面14pf1を有し、他方のカム押圧要素14peは、後方に向かうにつれて周方向の他方側(図21では下側)に向かうように伸びる第2押圧面14pf2を有する。一方のカム押圧要素14peは、周方向の一方側から他方側へ向けて順に配列された第1戻り止め部14e1及び第2戻り止め部14e2を有する。他方のカム押圧要素14peは、周方向の他方側から一方側へ向けて順に配列された第1戻り止め部14e1及び第2戻り止め部14e2を有する。2つのカム押圧要素14peは、第2凹部14f2を共有する。
【0088】
このようなカム押圧部14pによれば、押圧操作部18を軸線L周りの一方側及び他方側のどちらに回転させても出没動作及び第1筆記状態と第2筆記状態との切り換え動作を行うことができ、シャープペンシル200の操作性を効果的に向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
10 軸筒
11 前筒
11a 第1部材
11b 第2部材
11c 膨出部
11d 回転規制用切欠き部
12 後筒
13 後筒本体
13a 小径部
13b 拡径部
13c 係合凸部
13d 回転規制用凸部
14 カム
14e 戻り止め部
14p カム押圧部
14s カム側規制部
14t カムの後端
15 押圧部
16 軸筒側縮径部
17 ガイド部
18 押圧操作部
18h ホルダ部
19 第1受け部
20 芯繰出ユニット
21 筆記芯
22 保持部材
22f 絞り部
22t テーパ部
23 芯パイプ
24 チャック
25 締めリング
26 リターンスプリング
27 チャック支持ユニット
27a 第2受け部
27p 外筒
27s 縮径部
28 チャックユニット
29 コネクタ
29p 当接部
30 口金
31 ガイドパイプ
32 スリーブ部
32c 小径部
32d 拡径部
33 口金用スプリング
40 カムフォロア
40a 穴部
40b 拡径部
40p 被押圧部
40s カムフォロア側規制部
40t カムフォロアの後端
41 収容部
42 膨出部
43 被ガイド部
50 クッションスプリング
60 カムフォロア用スプリング
70 重量体
81 ノブ
100,200 シャープペンシル
214 カム部材
214a 穴部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20
図21