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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】加煙試験装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/10 20060101AFI20230804BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
G08B17/10 L
G08B17/00 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019036698
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020140545
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】江幡 弘道
(72)【発明者】
【氏名】湯地 定隆
(72)【発明者】
【氏名】野田 裕介
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127766(JP,A)
【文献】特開2012-198753(JP,A)
【文献】特開平06-181670(JP,A)
【文献】特開2013-167994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙感知器に煙を供給して当該煙感知器を試験する加煙試験装置であって、
容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、前記芯材に含侵された前記発煙剤をヒータの通電により加熱して煙を発生させる発煙部と、
前記容器に収納された前記発煙剤の液面が所定レベル以下に低下するか又は当該所定レベルを下回ったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段と、
前記ヒータに対する通電量を制御し、前記液面低下検知信号が出力されたときに前記通電を停止する制御部と、
を備え、
前記液面低下検知手段は、
前記容器の上方から下方に向けて配置され、先端が当該容器の底部又は底部近傍に位置する第1の電極棒と、
前記容器の上方から下方に向けて配置され、先端が当該容器に収納された前記発煙剤の液面の前記所定レベルに位置する第2の電極棒と、
前記第1の電極棒と前記第2の電極棒との間に所定の検知電圧を印加し、当該検知電圧が所定値を上回ったときに前記液面低下検知信号を出力する検知回路部と、
を備えたことを特徴とする加煙試験装置。
【請求項2】
煙感知器に煙を供給して当該煙感知器を試験する加煙試験装置であって、
容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、前記芯材に含侵された前記発煙剤をヒータの通電により加熱して煙を発生させる発煙部と、
前記容器に収納された前記発煙剤の液面が所定レベル以下に低下するか又は当該所定レベルを下回ったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段と、
前記ヒータに対する通電量を制御し、前記液面低下検知信号が出力されたときに前記通電を停止する制御部と、
を備え、
前記液面低下検知手段は、
前記容器に収納された前記発煙剤の液面の前記所定レベルに位置する当該容器の外周面に配置され、容器内に光を照射する発光部と、
前記発光部に水平方向で対向する前記容器の外周面に配置され、前記発光部から照射された光が入射したときに受光信号を出力する受光部と、
前記受光信号が所定値以上に増加するか又は当該所定値を上回ったときに前記液面低下検知信号を出力する検知回路部と、
を備えたことを特徴とする加煙試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加煙試験装置に於いて、
前記制御部は、前記液面低下検知信号が出力されたときに、残量低下を示す旨の報知を行うことを特徴とする加煙試験装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の加煙試験装置に於いて、
前記ヒータ又は前記ヒータ近傍の雰囲気温度が所定レベル以上に上昇するか又は前記所定レベルを上回ったときに異常過熱検知信号を出力するヒータ異常過熱検知手段を備え、
前記制御部は、前記異常過熱検知信号が出力されたときに前記ヒータに対する通電を停止することを特徴とする加煙試験装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の加煙試験装置に於いて、
試験空間の煙濃度を検知して煙濃度信号を出力する煙濃度検知手段を備え、
前記制御部は、前記煙濃度信号に応じて所定の設定煙濃度を保つように前記ヒータに対する通電量を制御することを特徴とする加煙試験装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の加煙試験装置に於いて、
前記ヒータ又は前記ヒータ近傍の雰囲気温度を検知して温度検知信号を出力する温度検知手段を備え、
前記制御部は、前記温度検知信号に応じて所定の設定温度を保つように前記ヒータに対する通電量を制御することを特徴とする加煙試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内の試験空間に煙を供給して煙感知器の感度を試験する加煙試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス等の建物内には火災報知設備が設置されており、火災が発生した場合に、火災により発生した煙を煙感知器で検知して発報信号を受信機に送って火災警報を出力させ、消火、避難、消防活動を行うことができるようにしている。
【0003】
火災報知設備は、建物への設置後、定期的に点検が行われており、煙感知器については、天井面に設置された煙感知器を取外し、点検の際に持ち込んだ感度試験装置を使用して所定の煙濃度で火災発報することを確認する感度試験を行い、感度試験の済んだ煙感知器を天井面に取り付けた後に、可搬式の加煙試験器を使用して火災発報することを確認する動作試験を行っている。
【0004】
以降、感度試験装置と加煙試験器をまとめて加煙試験装置と呼ぶ。
【0005】
このような従来の加煙試験装置は、スプレーにより煙状微粒子を含む試験用ガス(擬似煙)を発生させるもの(特許文献1)や、試験油を浸透させた浸透材を電気ヒータにより加熱して油煙を発生させて、この油煙を送風装置により強制的に上昇させるもの(特許文献2)が提案されている。
【0006】
しかしながら、スプレー式の加煙試験装置にあっては、フロンガスを使用しているため環境負荷が大きく、また、今後は代替フロンの入手困難や価格高騰などの問題がある。代替ガスとしてLPGを使用することもできるが、LPGは可燃性であり、低温で使用できないなどの問題がある。
【0007】
また、油煙式の加煙試験装置にあっては、煙を放出し始めてから煙濃度が上昇して煙感知器が試験発報するまで時間がかかる問題がある。
【0008】
この問題を解決するため、加煙試験装置内に、カートリッジ構造の発煙部を設け、発煙部は筒体内にヒータと発煙剤となる水溶性液体が含浸された液体供給部を備え、試験を行う場合には送風部から筒体内に空気を送り、ヒータによる加熱で気化した発煙剤を霧化して擬似煙(以下、「煙」という)を放出させて煙感知器の感度試験や動作を行うようにしている(特許文献3,4)。
【0009】
このようなカートリッジ構造の発煙部によれば、発煙剤の気化により霧化した煙を発生させるものであるため、動作を開始すると短時間で煙が放出され、一定の速度で連続的に煙を発生させることが可能となり、作業現場において効率良く煙感知器の感度試験を進めることができる。
【0010】
しかし、従来のカートリッジ構造の発煙部は、発煙に使用する水溶性液体の量が少なく、頻繁に発煙体を交換する必要があるという問題がある。
【0011】
この問題を解決するため、本願発明者にあっては、容器に発煙剤を収納し、不燃性の芯材に含侵させた状態でヒータによる加熱で煙を発生させる発煙部を設けた加煙試験装置を提案しており、容器に試験に必要な十分な量の発煙剤を入れておくことができ、使用により発煙剤が減少した場合には簡単に補充することができ、作業効率を向上可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2017-228019号公報
【文献】特開2016-197442号公報
【文献】特開平2013-127766号公報
【文献】特開平2013-127765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、ヒータにより発煙剤を加熱して煙を発生させる発煙部を設けた加煙試験装置にあっては、発煙部から一定速度で煙を連続的に放出しており、筐体内の試験空間に煙感知器の感度試験に必要な煙濃度以上に過剰に煙が供給され、容器に収納された発煙剤の消費がその分早まり、無駄に発煙剤を使用している問題がある。
【0014】
また、従来の発煙部は、容器を透明にして発煙剤の量を肉眼で確認できるようにしているが、加煙試験装置による試験中に、発煙剤の減り具合を外部から確認することができないため、発煙剤を使い切ってもそのことに気づかず、このためヒータによる芯材の加熱温度が上昇し、所謂空焚き状態となることで芯材が焦げて使えなくなってしまう問題もある。
【0015】
本発明は、感度試験に必要な煙濃度を保つことで発煙剤の消費を抑えると共に、発煙剤がなくなった場合の異常加熱による空焚きを未然に防止可能とする加煙試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(加煙試験装置
本発明は煙感知器に煙を供給して当該煙感知器を試験する加煙試験装置であって、
容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、芯材に含侵された発煙剤をヒータの通電により加熱して煙を発生させる発煙部と、
容器に収納された発煙剤の液面が所定レベル以下に低下するか又は当該所定レベルを下回ったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段と、
ヒータに対する通電量を制御し、液面低下検知信号が出力されたときに通電を停止する制御部と、
を備え、
液面低下検知手段は、
容器の上方から下方に向けて配置され、先端が当該容器の底部又は底部近傍に位置する第1の電極棒と、
容器の上方から下方に向けて配置され、先端が当該容器に収納された発煙剤の液面の所定レベルに位置する第2の電極棒と、
第1の電極棒と第2の電極棒との間に所定の検知電圧を印加し、当該検知電圧が所定値を上回ったときに液面低下検知信号を出力する検知回路部と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
(加煙試験装置2)
煙感知器に煙を供給して当該煙感知器を試験する加煙試験装置であって、
容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、芯材に含侵された発煙剤をヒータの通電により加熱して煙を発生させる発煙部と、
容器に収納された発煙剤の液面が所定レベル以下に低下するか又は当該所定レベルを下回ったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段と、
ヒータに対する通電量を制御し、液面低下検知信号が出力されたときに通電を停止する制御部と、
を備え、
液面低下検知手段は、
容器に収納された発煙剤の液面の所定レベルに位置する当該容器の外周面に配置され、容器内に光を照射する発光部と、
発光部に水平方向で対向する容器の外周面に配置され、発光部から照射された光が入射したときに受光信号を出力する受光部と、
受光信号が所定値以上に増加するか又は当該所定値を上回ったときに液面低下検知信号を出力する検知回路部と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(液面低下の報知)
制御部は、液面低下検知信号が出力されたときに、残量低下を示す旨の報知を行う。
【0020】
(異常過熱検知による空焚き防止)
また加煙試験装置、ヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度が所定レベル以上に上昇するか又は所定レベルを上回ったときに異常過熱検知信号を出力するヒータ異常過熱検知手段を備え、
制御部は異常過熱検知信号が出力されたときにヒータに対する通電を停止する。
【0021】
(煙濃度による通電量の制御)
また、加煙試験装置は、試験空間の煙濃度を検知して煙濃度信号を出力する煙濃度検知手段を備え、
制御部は、煙濃度信号に応じて所定の設定煙濃度を保つようにヒータに対する通電量を制御する。
【0022】
(雰囲気温度による通電量の制御)
また、加煙試験装置は、ヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度を検知して温度検知信号を出力する温度検知手段を備え、
制御部は、温度検知信号に応じて所定の設定温度を保つようにヒータに対する通電量を制御する
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明は、試験対象となる煙感知器に煙を供給して煙感知器を試験する加煙試験装置であって、容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、芯材に含侵された発煙剤をヒータの通電により加熱して煙を発生させる発煙部と、ヒータに対する通電量を制御する制御部と、が設けられたため、発煙量の制御や空焚きの防止を行うことができる。
【0024】
(空焚きの抑止)
加煙試験装置は、ヒータによる空焚き又は空焚きの予兆に関する事象を検出したときに、制御部を介してヒータに対する通電を停止して空焚きを抑止する空焚き抑止部が設けられため、容器に収納している発煙剤の残量が少なくなるとヒータに対する通電が自動的に停止され、発煙剤を使い切ることでヒータによる芯材の加熱温度が上昇して芯材が焦げて使えなくなるといった所謂空焚きを防止し、芯材の交換や清掃等を必要とすることがなく、発煙部の耐用性を高めることができる。
【0025】
(液面低下の検出)
空焚き抑止部は、容器に収納した発煙剤の液面が所定レベル以下に低下するか又は所定レベルを下回ったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段を備え、制御部は、液面低下検知信号を受信するとヒータに対する通電を停止するようにしたため、容器に収納している発煙剤の残量が少なくなった状態を確実に検知し、ヒータの通電遮断により空焚きを確実に防止できる。
【0026】
(液面低下の報知)
加煙試験装置は、液面低下検知手段から液面低下検知信号が出力されたときに、残量低下を示す旨の報知を行うようにしたため、利用者は例えば表示灯の点灯又は点滅等により、発煙剤の残量が少なくなったことを知り、発煙剤を使い切る前に補充することができる。また、このときの表示灯の点灯又は点滅は、ヒータの通電停止による空焚き抑止が行われた旨を報知しており、利用者は、煙が発生しなくなった原因は故障ではなく、空焚き抑止による動作であることを知って、故障と誤認することなく、発煙剤を補充する対応をとることができる。
【0027】
(異常過熱検知による空焚き防止)
また、別の実施形態の加煙試験装置の空焚き抑止部は、ヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度が所定レベル以上に上昇するか又は所定レベルを上回ったときに異常過熱検知信号を出力するヒータ異常過熱検知手段を備え、制御部は、液異常過熱検知信号を受信するとヒータに対する通電を停止するようにしたため、煙濃度を設定煙濃度に保つ煙濃度制御中にヒータの通電量が増加して異常加熱となった場合には、強制的にヒータに対する通電が遮断され、ヒータの異常加熱による発煙部の損傷を未然に防止し、安全に煙を発生させることができる。
【0028】
(煙濃度による通電量の制御)
また、制御部は試験空間の煙濃度を検知して所定の設定煙濃度を保つようにヒータに対する通電量を制御するようにしたため、発煙量を適正とするように発煙部からの発煙量が制御され、発煙剤を無駄に消費することなく、煙感知器の感度試験に必要な量の煙を発生することができ、発煙剤を無駄なく使用して感度試験を行うことができる。
【0029】
(雰囲気温度による通電量の制御)
また、制御部はヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度を検知して所定の設定温度を保つようにヒータに対する通電量を制御するようにしたため、ヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度から発煙量を概ね推定し、発煙量を適正とするように発煙部からの発煙量が制御され、発煙剤を無駄に消費することなく、煙感知器の感度試験に必要な量の煙を発生することができ、発煙剤を無駄なく使用して感度試験を行うことができる。また、ヒータ又はヒータ近傍の雰囲気温度が異常過熱したときは発煙を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】加煙試験装置のうち感度試験装置の概略を示した説明図
図2図1の感度試験装置における発煙装置の組込み部分を側面から見た一部断面で示した説明図
図3】発煙部を制御する制御部の機能構成を示した説明図
図4】発煙部の構造を示した説明図
図5図3の煙濃度制御部、空焚き抑止部及び過熱抑止部の機能構成を示したブロック図
図6図5の煙濃度制御部によるヒータ駆動信号のデューティ制御を示したタイムチャート
図7】液面低下を光学的に検知する液面低下検出器を備えた発煙装置の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
[感度試験装置]
図1は感度試験装置の概略を示した説明図であり、図1(A)は正面を示し、図2(B)は操作パネルを引き出した状態の平面を示す。また、図2は感度試験装置における発煙装置の組み込み部分を側面から見た一部断面で示した説明図である。
【0032】
図1及び図2に示すように、本実施形態の感度試験装置100は、筐体102の内部に試験空間101を持ち、開閉蓋104の内側の筐体102内に配置された取付台138に試験対象となる煙感知器140の取付べ一ス142が配置されている。
【0033】
感度試験装置正面の右下隅には取手により引き出し自在に発煙ケース110が配置され、検煙ケース110には、後の説明で明らかにする発煙部10が組み込まれており、発煙剤として機能する水溶性液体の加熱気化により霧化した煙を模した水蒸気を発生させる。
【0034】
発煙ケース110の近傍には循環ファン106が配置され、発煙ケース110から試験空間101に送り込まれた煙を循環ファン106で左側に送っている。循環ファン106で送られた煙は整流板108により試験空間101の上方に送られ、この上方空間には取付ベース142に装着した煙感知器140が位置し、また、試験空間101の煙濃度を検知する煙濃度検知器26が設置されている。
【0035】
感度試験装置100の前面下側には、引出し構造をもつ操作パネル116が収納されている。操作パネル116は図1(B)に示すように、電源スイッチ122が設けられており、電源スイッチ122をオンすると電源灯130が点灯し、取付ベース142に取付けられている煙感知器140に規定の電源電圧が供給され、この電源電圧は感知器電圧計134に表示される。
【0036】
感知器供給電圧は電圧調整ツマミ124により調整することができる。試験空間101に供給されている煙が煙感知器140に流入して所定の煙濃度に達すると、煙感知器140が試験発報し、発報表示灯132が点灯される。
【0037】
発煙ケース110は図2に示すように、箱型のケース内に発煙部10を収納しており、発煙部10は容器に収納された発煙剤をヒータにより加熱して気化させることにより霧化した煙を発生させる。またケース内には制御基板150が配置され、制御基板150に発煙部10の制御部18が実装されており、図1(B)の操作パネル116に設けた電源スイッチ122をオン操作した場合に、制御部18は煙濃度検知器26により検知された煙濃度を所定の設定煙濃度に保つようにヒータの通電量を制御して煙を発生させる煙濃度制御を行う。
【0038】
また、発煙ケース110の上側のパネル面には表示灯34aが設けられ、制御部18により発煙部10の容器に収納している発煙剤の液面低下を検知してヒータの通電を遮断停止する空焚き抑止を行ったときに、表示灯34aが例えば点灯し、容器に収納された発煙剤の残量が低下した旨を示す報知が行われる。
【0039】
また、表示灯34aは、制御部18により発煙部10のヒータの異常加熱を判別して通電を遮断停止する過熱抑止を行ったときに、表示灯34aが例えば点滅し、過熱抑止の動作が行われたことを示す報知が行われる。
【0040】
感度試験装置100による煙感知器140の試験作業は、警戒区域の天井面に設置されている多数の煙感知器を順次取外して試験する作業となるが、感度試験装置100に組み込まれた発煙部10は、制御部18が動作して発煙部10のヒータ20の通電により煙を発生して試験空間101に循環ファン206で送り込まれ、試験空間101の煙濃度は制御部18の煙濃度制御により所定の設定煙濃度を保つように制御されており、取付ベース142に取付けた試験対象となる煙感知器140が試験発報される。
【0041】
このとき煙感知器140が例えば煙濃度10%/mで火災発報する2種感度であったとすると、試験空間101の煙濃度は設定煙濃度10%/m又はそれより高い所定の設定煙濃度に制御されており、濃度計136により試験発報したときの試験空間101の煙濃度が10%/m以上となっていることを確認することで、2種感度で正しく試験発報したと判断して感度試験を終了する。
【0042】
[制御部の概要]
図3は発煙部を制御する制御部の機能構成を示した説明図である。図3に示すように、制御部18は電源スイッチ122をオン操作した場合、電源部12から直流電源の供給を受けた定電圧回路16による定電圧電源の供給を受けて動作する。
【0043】
制御部18は、ハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成され、CPUによるプログラムの実行により実現される機能として煙濃度制御部28、空焚き抑止部30及び過熱抑止部32が設けられている。
【0044】
発煙部10は、容器に収納された発煙剤を不燃性の芯材に含浸させ、芯材に含浸された発煙剤をヒータ20の通電により加熱して煙を発生させるものであり、温度検知手段として機能する温度検知器22と、液面低下検知手段として機能する液面低下検知器24が設けられている。また、図1に示したように、試験空間には煙濃度検知器26が設けられている。
【0045】
煙濃度検知器26は発煙部10により放出された試験空間の煙濃度を検知して制御部18に煙濃度検知信号E0を出力する。制御部18の煙濃度制御部28は、煙濃度検知器26で検知された試験空間の煙濃度検知信号E0を入力し、試験対象とする煙感知器の設定感度(1種感度、2種感度、又は3種感度)に対応した所定の設定煙濃度を保つようにヒータ20に対する通電量をヒータ駆動信号E6の出力により制御する。
【0046】
煙濃度制御部28による設定煙濃度は、1種感度のときは例えば5%m、2種感度のときは例えば10%/m、3種感度のときは例えば15%/mとする。このため制御部18に対しては操作部35が設けられ、煙濃度制御部28に対し操作部35の操作により必要とする設定煙濃度を切替え設定する機能が設けられる。
【0047】
発煙部10の液面低下検知器24は、容器に収納している発煙剤の残量が所定残量以下となる液面低下を検知して液面低下検知信号E8を制御部18に出力する。制御部18の空焚き抑止部30は、液面低下検知器24により出力される液面低下検知信号E8を入力し、ヒータ20に対する通電を停止して空焚きを抑止する制御を行う。
【0048】
発煙部10の温度検知器22は、ヒータ20の加熱温度を検知して温度検知信号E7を制御部18に出力する。制御部18の過熱抑止部32は、温度検知器22による検知温度が所定の過熱閾値温度以上か又は過熱閾値温度を超えたときに、ヒータ20に対する通電を停止して過熱を抑止する制御を行う。なお、過熱とは異常加熱を意味する。
【0049】
制御部18には、更に、表示部34が設けられる。表示部34としては、例えば図1に示したようにLEDの表示灯34aが設けられ、制御部18は、空焚き抑止部30が液面低下検知器24からの液面低下検知信号E8によりヒータ通電を遮断停止したときに、表示灯34aを例えば点灯し、容器に収納されている発煙剤の残量が低下した旨を示す報知が行われる。
【0050】
このため表示部34の表示灯34aが点灯した場合、利用者は発煙剤の残量低下を知って発煙剤を補充する対応をとることができ、また、故障ではなく、空焚き抑止によるヒータ20の通電停止で発煙が停止したことを知ることができる。
【0051】
また、制御部18は、過熱抑止部32が温度検知器22からの温度検知信号E7によりヒータ通電を遮断停止したときに、表示灯34aを例えば点滅し、ヒータ20による異常加熱の抑止動作が行われた旨を示す報知が行われ、ヒータ20の異常加熱による発煙部10の損傷を未然に防止し、安全に煙を発生させる。
【0052】
なお、表示部34による発煙剤の残量低下と異常加熱の報知は、表示灯34aとして2色LEDを使用し、異なった表示色により残量低下と異常過熱を表示しても良い。
【0053】
[発煙部]
図4は発煙部の構造を示した説明図であり、図4(A)に側面を示し、図4(B)に平面を示す。
【0054】
図4に示すように、発煙部10は、発煙剤40が収納されるカップ状の透明な容器36を有し、容器36の上部開口は蓋部材として機能する回路基板38が接着固定されることで閉鎖されている。
【0055】
回路基板38には、一対の液漏れ防止キャップ44が配置される。液漏れ防止キャップ44には紐状の芯材42の両端を通し、芯材42の先端を容器36に収納された発煙剤40に浸漬させ、毛細管現象により発煙剤40を吸い上げ、芯材42に発煙剤40を含浸させている。
【0056】
芯材42としては、不燃性のガラス繊維、シリカ繊維、ステンレス撚り線等を使用する。また、発煙剤40としては、親水性を有し保水性が高い成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の成分のうち少なくとも一成分を含む人体に無害な水溶性液体が用いられる。
【0057】
回路基板38の上面に位置する芯材42の水平露出部分にはヒータ20が巻き回されている。ヒータ20はニクロム線、白金線等の金属線であり、例えば線径0.2~0.4mmのヒータ線を芯材42にコイル状に巻き回し、コイル内径は1.0~3.0mmでコイル長さは10mm以下としている。ヒータ20はリード線を介して図3の制御部18に接続され、加熱制御される。
【0058】
ヒータ20はコイル両端を回路基板38に起立した一対のコイル支持ポール46にねじ48により固定して支持しており、回路基板38の回路パターンにコイル支持ポール46を介してコイル両端が電気的に接続されている。回路基板38の右端の端子部54にはリード線50が接続され、リード線50はコネクタ52により図3に示した制御部18に接続され、試験空間の煙濃度を設定煙濃度に保つようにヒータ20の通電量を制御する煙濃度制御が行われる。
【0059】
制御部18の煙濃度制御によりヒータ20に通電されると、発煙剤40が含浸された芯材42が加熱され、ヒータ20の芯材42に対する接触部分が変霧器(アトマイザー)として機能し、芯材42に含浸されているグリセリン、プロピレングリコール等の成分を含む水溶性液体としての発煙剤40が気化され、煙となって放出される。
【0060】
また、回路基板38には発煙剤注入口キャップ45が設けられ、注射器等を使用することにより、発煙剤注入口キャップ45を介して容器36内に発煙剤40を注入して補充できるようにしている。なお、容器36の側面には、発煙剤40の量を示す目盛を設けても良い。
【0061】
(液面低下検知)
検煙部10には、容器36に収納した発煙剤40の液面40aが所定の液面低下検知レベルLmin以下に低下して残量が規定値以下となったときに液面低下検知信号を出力する液面低下検知手段として機能する液面低下検知器24Aが設けられる。
【0062】
液面低下検知器24Aは、回路基板38に配置された検知回路部25から容器36の内の下方に向けて第1の電極棒25aと第2の電極棒25bを配置しており、第1の電極棒25aの先端は容器36の底部又は底部に近い位置とし、第2の電極棒25bの先端は、発煙剤40の残量が所定残量以下となる所定の液面低下検知レベルLminに位置するようにしている。
【0063】
検知回路部25は、第1の電極棒25aと第2の電極棒25bの間に所定の検知電圧を印加しており、発煙剤40の液面40aが液面低下検知レベルLminより高いときは、第1の電極棒25aと第2の電極棒25bは発煙剤36を介して導通しており、検知回路部25は電極間の検知電圧が所定の閾値以下となることで、液面低下検知信号E8は出力しない。
【0064】
これに対し発煙に伴う発煙剤40の消費により液面40aが下がり、液面低下検知レベルLminを下回ると、第2の電極棒25bが発煙剤40に接触しなくなることで第1の電極棒25aとの間の導通が断たれ、これにより検知電圧が増加し、検知電圧が所定の閾値を上回ることで液面低下を検知し、液面低下検知信号E8を出力する。
【0065】
液面低下検知器24Aの検知回路部25は、回路パターンを介してリード線50に接続され、リード線50のコネクタ52により図3に示した制御部18に接続され、制御部18の空焚き抑止部30に対し液面低下検知信号E8を出力し、制御部18により空焚き抑止制御が行われる。
【0066】
(異常過熱検知)
検煙部10の回路基板38に支持されたヒータ20の近傍の基板上には温度検知器22が配置されており、回路パターンを介してリード線50に接続され、リード線50のコネクタ52により図3に示した制御部18に接続される。温度検知器22としては、サーミスタ、熱電対等の温度センサが使用される。また、温度検知器22は、回路基板38ではなく、ヒータ20が巻かれた芯材42の部分に埋め込み又は差し込むように配置しても良い。
【0067】
温度検知器22は制御部18の過熱抑止部32に対し温度検知信号E7を出力し、加熱温度が所定の過熱閾値温度以上に増加したとき又は過熱閾値温度を上回ったときに、ヒータ20に対する通電を遮断停止する過熱抑止制御が行われる。
【0068】
[煙濃度制御と空焚き抑止]
図5図1の煙濃度制御部、空焚き抑止部及び過熱抑止部の機能構成を示したブロック図、図6図3の煙濃度制御部によるヒータ駆動信号のデューティ制御を示したタイムチャートであり、図6(A)は検知される煙濃度Sを示し、図6(B)はフィードバック信号E1と三角波信号E2を示し、図6(C)はPWM信号E3を示す。
【0069】
(煙濃度制御部)
図3の制御部18に設けられた煙濃度制御部28、空焚き抑止部30及び過熱抑止部32は、図5に示す制御機能を備える。なお、制御部18はCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等で構成されおり、図5の機能はプログラムの実行による機能、例えばデジタルシグナルプロセッサの機能として実現される。
【0070】
図5に示すように、図3に示した煙濃度制御部28は、フィードバック回路部56、PWM回路部(パルス幅変調回路部:Pulse Width Modulation)58及びヒータ駆動部60で構成され、PWM回路部58とヒータ駆動部60との間に、過熱抑止部32と空焚き抑止部30が設けられている。なお、過熱抑止部32と空焚き抑止部30は順番を入れ替えても良い。
【0071】
フィードバック回路部56には誤差アンプ66と基準電圧源68が設けられ、試験空間の設定煙濃度Srefを基準電圧源68の基準電圧Eref1により設定している。なお、基準電圧源68の基準電圧Vref1は、試験対象となる煙感知器の感度に対応して異なる基準電圧、即ち、1種感度のときは例えば5%mに対応した基準電圧、2種感度のときは例えば10%/mに対応した基準電圧、3種感度のときは例えば15%/mに対応した基準電圧に切替えられる。
【0072】
誤差アンプ66から出力されるフィードバック信号(誤差信号)E1は、試験空間の煙濃度を検知する煙濃度検知器26からの煙濃度検知信号E0による検知濃度Sが基準電圧Vref1による設定煙濃度Srefにより低い場合はレベルが増加し、煙濃度検知器26からの煙濃度検知信号E0による検知濃度Sが基準電圧Vref1による設定煙濃度Srefに近づくとレベルが低下するように変化する。
【0073】
PWM回路部58は三角波発生器72とPWMコンパレータ70で構成される。三角波発生器72は、図6(B)に示すように、所定周期で繰り返す三角波信号E2を発生しており、PWMコンパレータ70はフィードバック信号E1と三角波信号E2を比較し、図6(C)に示すPWM信号E3を出力する。
【0074】
PWM信号E3は、フィードバック信号E1のレベルが高い場合はデューティ比が高く、フィードバック信号E1のレベルが低下してくるとデューティ比が低下して行く。
【0075】
図3の電源スイッチ122をオン操作した直後にあっては、試験空間の煙濃度Sは0%/mにあり、フィードバック回路部56からのフィードバック信号E1は最大であり、PWM信号E3のデューティ比は例えば80%以上の高い値となり、ヒータ駆動部60はPWM信号E3のデューティ比に応じてヒータ20に通電し、ヒータ20の加熱により芯材42に含侵されている発煙剤40が加熱されて煙が放出され始め、図6(A)に示すように設定煙濃度Srefに向かって検知した煙濃度Sが上昇する。
【0076】
ヒータ20の加熱による発煙で煙濃度Sが増加すると、フィードバック信号E1のレベルが低下を始め、PWM信号E3のデューティ比も低下を始め、設定煙濃度Srefに達するとPWM信号E3のデューティ比は例えば20~30%の値を維持するようになる。
【0077】
このような煙濃度制御により試験空間の煙濃度Sを検知して設定煙濃度Srefを保つようにヒータ20に対する通電量をPWM制御したため、検煙空間の煙濃度を試験対象とする煙感知器の設定感度に対応した所定の設定煙濃度に正確に制御することができ、特に、容器に収納した発煙剤は、設定煙濃度を保つのに必要な量だけ発生することで、発煙剤を無駄なく使用することができ、煙感知器の感度試験を効率良くすすめることができる。
【0078】
なお、PWM回路部58に替えて、フィードバック信号E1をヒータ駆動部60にそのまま出力することで、ヒータ20の加熱制御により試験空間の煙濃度を設定煙濃度に保つ制御を行っても良い。
【0079】
(過熱抑止部)
図5に示すように、PWM回路部58と空焚き抑止部30との間に設けられた過熱抑止部32は、コンパレータ74と通電遮断部として機能するANDゲート76を備える。コンパレータ74には基準電圧源73により所定の過熱閾値温度Tref2に対応した基準電圧Eref2が設定され、温度検知器22からの温度検知信号E7と比較し、温度検知信号E7が基準電圧Ere2未満のときコンパレータ74の出力はLレベルにあり、温度検知信号E7が基準電圧Eref2以上になるとコンパレータ74の出力はHレベルに立上り、加熱異常を判定する。
【0080】
ANDゲート75の一方の入力端子にはPWM信号E3を入力し、ANDゲート75の他方の入力端子にコンパレータ74の出力信号を反転入力している。
【0081】
温度検知器22で検知したヒータ20の通電による温度Tが過熱閾値温度Tref2未満のとき、コンパレータ74の出力信号はLレベルにあり、反転入力によりANDゲート75は許容状態にあり、PWM信号E3は過熱抑止部32をそのまま通過してヒータ駆動部60にヒータ駆動信号E6として入力され、試験空間の煙濃度を設定煙濃度に保つヒータ20の通電制御が行われている。
【0082】
発煙部10の芯材42に対する容器36からの発煙剤40の吸込み量が何らかの原因で不足し、ヒータ20による加熱温度が異常に上昇すると、温度検知信号E7が基準電圧Eref2以上となり、コンパレータ74が加熱異常を判定して出力信号をそれまでのLレベルからHレベルに変化させる。このためANDゲート75はコンパレータ74からのHレベルに変化した信号を反転入力して禁止状態となり、信号E5の出力を遮断し、ヒータ20の通電加熱を遮断停止する。
【0083】
このような過熱抑止制御により、ヒータ20による異常加熱で発煙部10がダメージを受けないようにし、発煙部10の耐用性を高めることができる。
【0084】
(空焚き抑止部)
図5に示すように、過熱抑止部32とヒータ駆動部60との間に設けられた空焚き抑止部30は、通電遮断部として機能するANDゲート76を備え、ANDゲート76の一方の入力端子に過熱抑止部32からの信号E4を入力し、ANDゲート76の他方の入力端子に液面低下検知器24からの液面低下検知信号E8を反転入力している。
【0085】
発煙部10に設けた図4に示す容器36に収納している発煙剤40の液面40aが液面低下検知レベルLminにより高いとき、液面低下検知信号E8はLレベルとなり、液面低下検知信号E8の反転入力によりANDゲート76は許容状態にあり、PWM信号E3は空焚き抑止部30をそのまま通過してヒータ駆動部60にヒータ駆動信号E5として入力され、試験空間の煙濃度を所定の設定煙濃度に保つヒータ20の通電制御が行われている。
【0086】
発煙部10からの発煙により容器36の発煙剤40が消費され、液面40aが低下して液面低下検知レベルLminを下回ると、液面低下検知器24が液面低下を検知して液面低下検知信号E8をそれまでのLレベルからHレベルに変化させる。このためANDゲート76はHレベルに変化した液面低下検知信号E8の反転入力により禁止状態となり、ヒータ駆動部60に対するヒータ駆動信号E5の出力を遮断し、ヒータ20の加熱を停止する。
【0087】
このような空焚き抑止制御により、容器36に収納している発煙剤40の残量が少なくなって発煙剤40を使い切ることで、ヒータ20による芯材42の加熱温度が上昇して芯材42が焦げて使えなくなるといった所謂空焚きを防止し、芯材42の交換や清掃等を必要とすることがなく、発煙部10の耐用性を高めることができる。
【0088】
なお、過熱抑止部32と空焚き抑止部30の構成は、コンパレータ74の出力と液面低下検知信号E8をORゲートに入力し、ORゲートの出力をANDゲートに反転入力すると共にPWM信号E3を同じANDゲートに入力し、このAMDゲートの出力をヒータ駆動部60に入力することで、一体化しても良い。
【0089】
[光学的に液面低下を検知する液面低下検知器]
図7は液面低下を光学的に検知する液面低下検知器を備えた発煙装置の実施形態を示した説明図であり、図7(A)に発煙部を示し、図7(B)に容器に設けた液面低下検知器の平面から見た断面を示す。
【0090】
図7に示すように、発煙部10の構造は図4の実施形態と同じであり、液面低下検知器24Cは液面低下を光学的に検知するようにしている。
【0091】
透明な容器36の液面低下検知レベルLminに対応して、容器36の外周面には液面低下検知器24Cの発光部88と受光部90が対向して接着等により固定されている。発光部88はLEDとし、また、受光部90はフォトダイオードとする。
【0092】
容器36に収納された発煙剤40は所定の色に着色されており、発光部88から光軸88aで示すビーム光が発煙剤40を透過する際に、着色により減衰して受光部90に入射する。
【0093】
発光部88と受光部90に対しては検知回路部92が設けられ、検知回路部92には発光部88を例えば間欠的に発光駆動する発光回路94と、受光部90からの受光信号を増幅し、所定の閾値レベル以上に増加するか又は所定の閾値レベルを超えたときに液面低下検知信号E8を出力する受光回路96が設けられる。
【0094】
容器36に収納された発煙剤40が液面低下検知レベルLminを超えているとき、発光部88からのビーム光は、着色された発煙剤40を通過する間に減衰され、受光部90からの受光信号は所定の閾値レベル未満又は所定の閾値レベル以下にある。
【0095】
これに対し容器36に収納された発煙剤40の液面40aが液面低下検知レベルLminを下回ると受光部90からの受光信号が増加し、所定の閾値レベル以上に増加するか、又は閾値レベルを超えたことを判別して液面低下検知信号E8を出力する。
【0096】
このような光学的に液面低下を検知する液面低下検知器24Cによれば、着色した発煙剤40の液面40aの変化に伴う受光信号の増加から簡単且つ確実に液面低下を検知することができ、また、発光部88及び受光部90は発煙剤40に接触しない構造であることから、高い耐用性が得られる。
【0097】
[本発明の変形例]
(煙濃度上昇試験)
上記の実施形態は、試験空間の煙濃度を所定の設定煙濃度に保つように制御することで試験を行っていたが、これに限らない。例えば、所定の速度で発煙を行い、試験対象の煙感知器が動作したときの煙濃度を記録する試験を行うようにしても良い。なお、この場合においても種々の空焚き抑制は行われる。
【0098】
(制御部)
上記の実施形態は、制御部18に煙濃度制御部28、空焚き抑止部30及び過熱抑止部32を設けているが、煙濃度制御部28のみを設けるようにしても良い。
【0099】
(液面低下検知器)
本発明の発煙装置で使用する液面低下検知器は、上記の実施形態に限定されず、容器に収納した発煙剤の液面が所定レベル以下に低下したことを検知できるものであれば、適宜の機構又は構造を用いることができる。例えば、液面の変化をフロート(浮き部材)で機械的に検知し、所定のレベル以下に低下した時にスイッチを作動させる機構としても良い。
【0100】
(発煙剤)
また、発煙剤は増粘添加剤を混ぜても良い。これにより、容器から発煙剤が漏れることをさらに防止可能となる。
【0101】
(加煙試験器)
上記の実施形態は感度試験装置を例にとるものであったが、天井面に設置された煙感知器に煙を供給することで試験を行う加煙試験器に、同様に適用することができる。
【0102】
(その他)
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0103】
10:発煙部
12:電源部
16:定電圧回路
18:制御部
20:ヒータ
22:温度検知器
24,24A,24B,24C:液面低下検知器
2592:検知回路部
25a:第1の電極棒
25b:第2の電極棒
26:煙濃度検知器
28:煙濃度制御部
30:空焚き抑止部
32:過熱抑止部
34:表示部
34a:表示灯
36:容器
38:回路基板
40:発煙剤
40a:液面
42:芯材
44:液漏れ防止キャップ
45:発煙剤注入キャップ
46:コイル支持ポール
48:ねじ
50:リード線
52:コネクタ
54:端子部
56:フィードバック回路部
58:PWM回路部
60:ヒータ駆動部
66:誤差アンプ
68,73:基準電圧源
70:PWMコンパレータ
72:三角波発生器
74:コンパレータ
75,76:ANDゲート
88:発光部
90:受光部
94:発光回路
96:受光回路
100:感度試験装置
101:試験空間
102:筐体
104:開閉蓋
106:循環ファン
110:発煙ケース
116:操作パネル
122:電源スイッチ
140:煙感知器
142:取付ベース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7