IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ゴールドウインの特許一覧

<>
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図1
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図2
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図3
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図4
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図5
  • 特許-生地の成型方法と成型衣料の成型装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】生地の成型方法と成型衣料の成型装置
(51)【国際特許分類】
   A41H 43/00 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
A41H43/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019090084
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186482
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594137960
【氏名又は名称】株式会社ゴールドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】久田 涼平
(72)【発明者】
【氏名】水島 浩
(72)【発明者】
【氏名】片田 雅人
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-322651(JP,A)
【文献】登録実用新案第3045619(JP,U)
【文献】特開2007-138320(JP,A)
【文献】登録実用新案第3215806(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41H43/00
D04H1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の合成繊維で作られた生地を、成型装置により所定形状に凹凸を成型する生地の成型方法において、
前記成型装置に矩形の受枠部と、前記受枠部に嵌合可能な開閉式の矩形の押枠部を設け、前記押枠部の内側には、通気性を持たない気密シートが張り付けられ、
前記成型装置の前記受枠部に前記生地を固定し、
前記押枠部を前記受枠部側に閉じ、前記生地に前記気密シートを重ねて通気性を遮断し、
前記生地の上方に可動式のヒーターを、収納位置から加熱位置に移動させて、輻射熱により前記生地を加熱して軟化させ、
軟化した前記生地に真空成型用の型を前記生地に向かって移動させて押し付けるとともに、前記型の方向へ真空引きして、前記生地を前記型に密着させて、前記生地を前記型の形状に成型し、
前記生地を前記型に密着させた状態で、冷却手段で前記生地を冷却して所定温度に下げ、前記生地を前記型から外すことを特徴とする生地の成型方法。
【請求項2】
前記ヒーターは、相対的に両端部の温度が中央部の温度よりも高い温度に設定されて加熱する請求項1記載の生地の成型方法。
【請求項3】
熱可塑性の合成繊維で作られた生地を所定形状に成型する成型衣料の成型装置において、
上方に向かって開口した開口部を有する矩形の真空室と、前記真空室の開口部の周縁部に設けられた矩形の受枠部を備え、
前記受枠部に嵌合可能に開閉式の矩形の押枠部を設け、前記押枠部の内側には通気性を持たない気密シートが張り付けられ、
前記真空室の内側に真空成型用の型を有し、前記型は上下方向に移動可能に設けられ、
前記生地の上方にヒーターを有し、前記ヒーターは、前記生地を加熱する加温位置と、上記生地から退避した収納位置との間で移動可能に設けられたことを特徴とする成型衣料の成型装置。
【請求項4】
前記ヒーターは、相対的に両端部の温度が中央部の温度よりも高い出力に設定されている請求項3記載の成型衣料の成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生地を立体的に成型して立体形状の衣料品を形成する成型方法と成型衣料の成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料品を作るための生地の一部を立体的に成型することにより、衣料品の製造を容易にし、利用者が快適に着用可能な衣料品が提案されている。例えば、特許文献1のガードルは、スパンデックス等の伸縮性素材によって形成され、後見頃は一枚布使いすると共に、臀部の両山部分から連続させて臀部下のクロッチを形成する股部分までを、熱プレスにより立体的に膨出させたものである。熱プレスには、雄型と雌型からなる型台が用いられ、生地を雄型と雌型によりプレスして成型している。
【0003】
また、特許文献2の衣類の熱セット成型法及び熱セット成型用金型は、熱可塑性繊維を少なくとも含有する衣類を、衣類の所定の箇所に曲面状の立体的な膨らみを発現させるための膨らみ成型部片を有する金型にほぼ緊張状態で被せて装着し、気体状加熱媒体で加熱処理して衣類の所定箇所に曲面状の膨らみを発現させるものである。この熱セット成型用金型では、衣類を、複数の膨らみ成型部片に緊張状態で装着するために、膨らみ成型部片の谷間に衣類押え具が設けられている。
【0004】
特許文献3の適合可能なシームレスの三次元的物品、並びにそのための方法は、ポリテトラフルオロエチレン等のシームレスの膜を有した衣類である。ポリテトラフルオロエチレン膜は、防水性を提供するのに十分であるとともに、水蒸気透過性を有するものである。
【0005】
その他、特許文献4の不織布の成型方法及びその成型品は、不織布の真空成型方法であり、内側が真空の発生源に連通している雌型と、不織布を加熱するヒーターが設けられている。不織布は通気性を有するため、不織布に気密性のシートを重ねて真空成型を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平5-45008号公報
【文献】特許第3201578号公報
【文献】特表2018-525545号公報
【文献】特開平6-322651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景技術の場合、特許文献1のガードルは、雌型と雄型の一対の金型を使用するものであり、装置が大がかりであり、コストがかかるものであり、雄型と雌型により生地をプレスして過熱することにより、生地へのダメージが大きいものである。特許文献2の衣類の熱セット成型方法及び熱セット成型用金型は、所定の一部の箇所にのみ成形部片を有する金型を押し当てて、他の部分を衣類押え具で押さえて加熱処理するものであり、立体的な再現形状に限界がある。
【0008】
特許文献3の適合可能なシームレスの三次元的物品は、成型方法が詳しく開示されておらず、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜等を有した生地を用い、材料が特殊であり、コストがかかるものである。また、人体を模した形状の金型に生地を被せ、金型と同時に加熱・冷却を行うものであり、高温の炉が必要であり、製造コストがかかるものである。特許文献4の不織布の成型方法は、真空成型によりきれいで簡単に成型することができるが、金型の凹部に不織布を吸着させて成型するので、大きな変形を伴う成型を行うには凸型を必要とし、凹型のみで成型可能な形状には限界がある。さらに、気密性シートを重ねる作業や、成型後に外す作業が面倒であり、作業効率が良くない。
【0009】
従って、上記特許文献1~4に開示された成型方法では、生地の大幅な成型ができず、従来と同様に型紙を基に形成した立体形状の衣服の一部に、さらに膨らみを持たせる程度の成型しかできないものである。
【0010】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、着心地が良好な衣料品を効率的に作ることができ、簡単な方法で作業効率よく、通気性を有する生地を立体的に所定の形状に真空成型する成型方法と成型衣料の成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱可塑性の合成繊維で作られた生地を、成型装置により所定形状に凹凸を成型する生地の成型方法において、前記成型装置に矩形の受枠部と、前記受枠部に嵌合可能な開閉式の矩形の押枠部を設け、前記押枠部の内側には、通気性を持たない気密シートが張り付けられ、前記成型装置の前記受枠部に前記生地を固定し、前記押枠部を前記受枠部側に閉じ、前記生地に前記気密シートを重ねて通気性を遮断し、前記生地の上方に可動式のヒーターを、収納位置から加熱位置に移動させて、輻射熱により前記生地を加熱して軟化させ、軟化した前記生地に真空成型用の型を前記生地に向かって移動させて押し付けるとともに、前記型の方向へ真空引きして、前記生地を前記型に密着させて、前記生地を前記型の形状に成型し、前記生地を前記型に密着させた状態で、冷却手段で前記生地を冷却して所定温度に下げ、前記生地を前記型から外す成型方法である。
【0012】
また本発明は、熱可塑性の合成繊維で作られた生地を所定形状に成型する成型衣料の成型装置において、上方に向かって開口した開口部を有する矩形の真空室と、前記真空室の開口部の周縁部に設けられた矩形の受枠部を備え、前記受枠部に嵌合可能に開閉式の矩形の押枠部を設け、前記押枠部の内側には通気性を持たない気密シートが張り付けられ、前記真空室の内側に真空成型用の型を有し、前記型は上下方向に移動可能に設けられ、前記生地の上方にヒーターを有し、前記ヒーターは、前記生地を加熱する加温位置と、上記生地から退避した収納位置との間で移動可能に設けられた成型衣料の成型装置である。
【0013】
前記ヒーターは、相対的に両端部の温度が中央部の温度よりも高い温度に設定されて加熱するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の生地の成型方法と成型衣料の成型装置は、簡単な方法で、作業効率よく、通気性を有する生地を立体的に所定の形状に真空成型することができ、着心地が良好な衣料品を効率的に作ることができる。特に、動きの激しいスポーツ用のウエア等に用いると、体表面への密着性が良く体の動きにもスムーズに追従し、体の動きを制限せず、外観上も良好なものである。さらに、縫い目のない衣料品を高品質で低コストで製造することができ、被服や付属品等の幅広い分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態の成型装置の押枠部を開けた状態を示す斜視図である。
図2】この実施形態の成型装置の押枠部を閉めた状態を示す斜視図である。
図3】この実施形態の成型装置のヒーター本体のヒーター面を示す概略図である。
図4】この実施形態の生地の成型方法を示すフローチャートである。
図5】この実施形態の生地の成型方法を示す概略図である
図6】この実施形態の衣料品の正面図(a)と背面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。まず、この実施形態の成型方法に用いる成型装置10について図1図2に基づいて説明する。成型装置10は、上方に向かって開口する開口部14を有する矩形の真空室12が設けられ、真空室12の開口部14の周縁部は、成型する対象物である熱可塑性の合成繊維で作られた生地1を取り付ける矩形の受枠部16となる。
【0017】
受枠部16の一方の側縁部16aには、側縁部16aに対して平行なヒンジ17を介して矩形の押枠部18が開閉可能に取り付けられている。押枠部18は、受枠部16の内周に沿う矩形であり、受枠部16よりも各側縁部が細い角材等で形成されている。押枠部18を受枠部16側に閉じた時、押枠部18の周囲には受枠部16の外周が露出し、露出した外周には、生地1を仮固定するマグネット式の棒状の仮押さえ具20が着脱自在に設けられている。押枠部18の、受枠部16に当接する面には、柔軟性を有し通気を遮断する気密シート22が密着して取り付けられ押枠部18の内側に張られて内側空間を閉鎖している。気密シート22は、250℃以上の耐熱性を有する可撓性素材であり、例えば150umの、高強度シリコーンゴム製のシートであり、耐熱性、引張強度、耐久性を有している。気密シート22は弾性的に伸長回復性を有し、成型に追従し複数回使用することができる。さらに気密シート22は、低熱膨潤性を有し、加熱時の波打ちを抑制し、シワ発生防止及び加熱精度確保を可能にしている。押枠部18の、ヒンジ17とは反対側の側縁部には、受枠部16に圧着して気密に閉じる留め具24が設けられている。
【0018】
真空室12の任意の位置には、図示しない吸引パイプが連通しコンデンサーに接続されている。真空室12の内側には、後述する真空成型用の型26を載せる型置台28が設けられている。型置台28は、開口部14に対して平行に位置する板体であり、通気性を有する網等で作られている。型置台28は、図示しない移動手段が設けられ、上下方向に移動可能であり、最上端では、受枠部16と面一に連続する。
【0019】
受枠部16の、ヒンジ17が取り付けられた側縁部の近傍には、ヒーター30が設けられている。ヒーター30は、開口部14に取り付けられた生地1に対して平行に対面するヒーター面32を有し、開口部14の上方に位置する加温位置と、開口部14から平行方向に離れる収納位置とを移動可能である。ヒーター面32は矩形で、受枠部16に取り付けられた生地1全体に温度が加わる構造である。
【0020】
ヒーター30は、適宜の構成を選択し得るものであるが、例えば図3に示すように、開口部14の上方に位置する加温位置にあり、開口部14に押し当てた押枠部18に対面する時、ヒーター面32は、ヒンジ17に近い位置から中央にかけてはワット数が小さい低温ヒーター部36が3つ並べられて設けられ、ヒンジ17とは反対側には中程度のワット数である中温ヒーター部38が一つ設けられている。ヒンジ17の両端に位置しヒンジ17に交差する一対の側縁部にはワット数が大きい高温ヒーター部34が各々設けられている。高温ヒーター部34、低温ヒーター部36、中温ヒーター部38は、例えば石英ヒーターであり、各ヒーターの出力を図示しない制御部で設定して生地1を均一に輻射熱により加熱するものである。高温ヒーター部34、低温ヒーター部36、中温ヒーター部38の出力及び配置は、適宜設定可能であり、放熱される外側の領域に出力の大きいヒーターを配置すると良い。
【0021】
押枠部18の例えば上方の近傍には、加熱されて成型された生地1を冷却する冷却手段であるファン40が設けられている。
【0022】
次にこの実施形態の成型衣料と生地1の成型方法について、図4図5に基づいて説明する。成型する生地1は、編み地又は織布、不織布等からなる通気性素材である。材料は熱可塑性合成樹脂であり、例えばポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルと綿の混合物、ナイロンとポリウレタンの混合物等である。生地1は通気性素材に防水透湿フィルムであるPTFEやポリウレタン(PU)を2層又は3層に積層したものでも良い。例えば、ナイロン+PTFE+ナイロン、ポリエステル+PTFE+ポリエステル、ポリエステル+PTFE+ナイロン、ナイロン+PU+ナイロン、ポリエステル+PU+ポリエステル、ポリエステル+PU+ナイロン、ポリエステル+PTFE、ナイロン+PTFE、ポリエステル+PU、ナイロン+PU等である。
【0023】
まず、成型装置10の型置台28を下降させた状態で、型置台28に成型用の型26を載せる。型26は、衣料品の、従来所定のパターンによりダーツ等を形成して設けていた空間量を反映させて作られたものであり、ポリカーボネート等の耐熱性の樹脂製でも良く、アルミ合金製でも良い。特に、量産する場合はアルミ合金製の型が良い。アルミ合金製の型は、熱伝導性が良く、加熱して成型した生地1を迅速に冷却することができ、生産性が高く、耐久性も高いものである。
【0024】
そして、成型装置10の受枠部16に、生地1を載せて、4方向を仮押さえ具20で仮固定する。この時、成型誤差を少なくするために生地1にテンションが加わらないようにセットする。位置決めマーク等を記入してもよい。押枠部18を、ヒンジ17を中心にして回動して受枠部16側に閉じ、留め具24で押枠部18に固定する。この時、生地1は押枠部18と受枠部16に、4方向を挟持されて固定される。押枠部18に取り付けられた気密シート22も、生地1の上に重ねられた状態で受枠部16と押枠部18に密着する。これにより、生地1は気密シート22と共に開口部14に気密に張られた状態となる。
【0025】
ヒーター30を収納位置から加温位置に移動させ、ヒーター面32を生地1に対向させて輻射熱により加熱する。ヒーター面32は、例えば上記のヒーター30の配置により、押枠部18のヒンジ17の両端部で熱が逃げやすい側縁部に高温ヒーター部34が設けられ、ヒンジ17とは反対側の端部はその次に熱が逃げやすいため中温ヒーター部38が設けられ、中心部分からヒンジ17にかけては熱が逃げにくいため、低温ヒーター部36が設けられている。これにより、生地1の全体を均一に輻射熱により加熱することができ、生地1は均一に軟化する。温度条件は、生地1の染料が移行昇華せず、生地1の風合いも低下しないもので、確実に軟化して真空成型されるものとする。具体的には、約170℃である。約170℃で成型した時の成型率は約60%であり、型26は仕上がりの凹凸の高さを100%とすると、160%程度の大きさのものを用いる。また、170℃は、熱による生地1の硬化が生じない温度である。所定時間加熱して軟化させた後、ヒーター30を収納位置に退避させる。
【0026】
そして型置台28を上昇させて受枠部16とほぼ面一にし、型26を生地1に、下から上に押し当てて、生地1を型26の形状により伸張させる。そして真空室12を真空に引くと、気密シート22は通気性がなく気密性が高いため、型26に生地1が密着する。これにより、生地1が型26に密着して成型される。型26に密着させて生地1を成型した状態で、受枠部16近傍に設けられたファン40により送風し、成型性が確保される温度まで生地1の温度を下げて生地1の形状を固定化する。冷却後の温度が35度~45度になるまで冷却し、好ましくは40度に冷却する。40度に冷却した時に成型率はほぼ最大の80%となり、好ましい。なお冷却温度が50度では成型率70%であり、55度では60%であり、成型性が不十分である。
【0027】
温度が40度に下がり、生地1が十分に固定化した後は、型置台28を下降させて生地1から型26を外し、押枠部18を上げて気密シート22を外し、生地1を、受枠部16から外して、生地1の成型が完了する。成型率は生地1の材料や温度条件により異なるため、適宜、成型率を算出して評価し、型26を設計すればよい。
【0028】
次に、この実施形態の成型衣料である衣料品42の作り方について説明する。上記の方法で所定の形状の凹凸を立体的に成型した生地1を所定の形状に裁断して縫製し、図6に示すような衣料品42を製造する。衣料品42は、上衣と下衣である。上記の方法で立体的に成型した部分は、衣料品42のいろいろな部分に使用されている。例えば、フード42a、襟元42b、肩部42c、胸部42d、股部42e、膝部42f、肩甲部42g、肘42h、臀部42i、ポケット42j、腕付け根42k等である。衣料品42は、ここでは上衣と下衣であるが、これ以外でもよい。
【0029】
この実施形態の成型衣料及び生地の成型方法によれば、簡単な方法で、作業効率よく通気性を有する生地1を立体的に所定の形状に真空成型して製造することができる。これにより、通気性や透湿性を確保した衣料品42を、真空成型により人体に合わせた凹凸を正確に形成して容易に製造することができる。衣料品42において、従来はダーツにより生じさせていた立体形状を、型26により生地1を伸張することで、生地1に複雑な形状の凹凸を簡単に成型することができる。成型する形状の自由度が高まり、衣服内空間や表面積を自由に変化させて機能性を向上することができる。特に、動きの激しいスポーツ用のウエア等に用いると、体表面への密着性が良く体の動きにもスムーズに追従し、体の動きを制限しない。さらに、真空成型であるため型26の跡が付かず、外観上も良好なものであり、高品質な衣料品42を形成することがでる。また、人体に沿わせるために生地1を立体的にする切り替えやダーツ等の縫目を無くすことができ、着心地が良好な衣料品42となる。
【0030】
この実施形態の生地の成型方法は、気密シート22を生地1の外側に重ねることで、通気性素材である生地1でも確実に真空状態にすることができ、真空成型により容易に正確な凹凸を成型することができる。気密シート22は、伸長回復性を有し、繰り返し使用することができる。気密シート22の取り付けと取り外しは、押枠部18を開閉することで簡単に行うことができ、操作が簡単で、再利用が可能である。また、1個の型26で従来は複数の型紙から形成していた部位を容易に一体に成型することができ、しかも雌型が不要である。真空成型用の型26は高い耐熱性が不要であり、真空成型加工を用いることで、他手法と比べてコストの削減が期待できる。
【0031】
さらに、この実施形態の生地の成型方法は、切り替えやダーツ等の縫製箇所を減少させ、工数の削減を図ることができ、縫製を簡易化し、作業性向上と縫製工程の半自動化も図ることができる。防水性を保つためのシームテープをダーツや切り替え部分に付ける必要がなく、この点でも製造工程の削減及び軽量化が実現できる。ダーツやいせ込み等の熟練を必要とする技術的手法を減らすことができる。170℃の低温での真空成型が可能であり、加熱による生地1の風合を損ねることがなく、染料の移行昇華も抑えることができる。
【0032】
なお、この実施形態の生地の成型方法と成型衣料は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。生地の通気性が制限された状態とは、真空引きした際に生地が型に密着可能な状態でれば良く、気密状態に気密シートを重ねることなく吸引可能であれば、気密シートを省略しても良い。従って、気密性が高い生地も成型することができ、気密シートを用いなくてもよい。生地や気密シートの材料は、上記以外でも良い。生地の織り方や編み方には制限されず、繊維方向が規則的な布材で加工が可能であるが、不規則な不織布等でも良い。加熱温度や加熱時間、冷却温度等は、生地の種類や型の形状に合わせて適したものに設定することができる。衣料品の種類は問わず、いろいろな衣服を作ることができ、衣服の他に、手袋や帽子、保護カバー等、いろいろなものに使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 生地
10 成型装置
12 真空室
14 開口部
16 受枠部
18 押枠部
22 気密シート
26 型
28 型置台
30 ヒーター
32 ヒーター面
34 高温ヒーター部
36 低温ヒーター部
38 中温ヒーター部
40 ファン
42 衣料品
図1
図2
図3
図4
図5
図6