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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】生物の育成装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/04 20060101AFI20230804BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20230804BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20230804BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C12M1/04
A01G31/00 602
A01K63/04 C
C12M1/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019095703
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020188721
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ガスプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-183388(JP,A)
【文献】特開平05-292990(JP,A)
【文献】特開2007-312689(JP,A)
【文献】特開2017-038589(JP,A)
【文献】特開2007-222805(JP,A)
【文献】特表昭62-500356(JP,A)
【文献】特開平04-148675(JP,A)
【文献】特開平07-008274(JP,A)
【文献】特開昭63-317075(JP,A)
【文献】特開平06-133765(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/04
A01G 31/00
A01K 63/04
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液を貯留するとともに、前記養液内の生物を育成する育成槽と、前記育成槽内に設けられ、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液のみが通過可能な開き目を有する放出膜により区切られた養液循環エリアと、前記養液に前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを添加する発生機と、前記養液循環エリアから前記発生機に前記養液を導く導入管路と、前記導入管路を通じて前記発生機に供給され、前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液を前記育成槽内の前記養液循環エリアへ還流させる還流管路と、前記導入管路又は前記還流管路に設けられ前記養液を循環させる循環ポンプを備え、
前記養液循環エリアには前記生物が含まれず、前記放出膜を介して前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液を前記育成槽内の生物育成エリアに放出することにより、前記養液循環エリアから前記生物育成エリアに前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液が供給される一方、前記養液循環エリア内に前記生物含む固形物が侵入することを防止できる生物の育成装置。
【請求項2】
前記養液循環エリア内に絞り部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の生物の育成装置。
【請求項3】
前記導入管路と前記還流管路を接続する少なくとも1つの流路切替管路を更に備え、前記導入管路、前記還流管路又は前記流路切替管路の少なくともいずれかに仕切弁を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の生物の育成装置。
【請求項4】
前記放出膜は、前記育成槽内の空間を上下に分割するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生物の育成装置。
【請求項5】
前記放出膜は、筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生物の育成装置。
【請求項6】
前記放出膜は、複数個の筒状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生物の育成装置。
【請求項7】
前記育成槽は、前記養液が循環する管状に形成され、前記放出膜は、管状に形成されて前記管状の育成槽内に配置され、前記放出膜の一端部に前記導入管路が接続され、他端部に前記還流管路が接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の生物の育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを用いた生物の育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファインバブルによる微生物の成長促進を目的とした培養装置において、フィルターによって培養槽内の培養液を微生物と培養ろ過液に分離し、培養ろ過液にファインバブルを含有させ、培養槽に還流する装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、生物反応槽から培養液が導入されるとともに培養液を菌体とろ過液とに分離する菌体ろ過器を有し、ろ過液にファインバブルを含有させ、培養槽に還流する方法と装置が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、培養槽から抜き出されろ過器に供給される生物培養液を、マイクロナノバブルを含有するものとするマイクロナノバブル発生装置が示されている。
【0005】
しかしながら、上記のいずれの装置も、微生物や菌体を含有する培養液をフィルターに流通させ、微生物、菌体と培養ろ過液に分離させる工程が発生している。この工程により、循環運転を続けているといずれフィルターの目詰まりが発生し、循環量が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-312689号公報
【文献】特許第5985114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、フィルターの目詰まり等を防止できるとともに、効率的に生物を育成することができる生物の育成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の生物の育成装置は、養液を貯留するとともに、前記養液内の生物を育成する育成槽と、前記育成槽内に設けられ、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液のみが通過可能な開き目を有する放出膜により区切られた養液循環エリアと、前記養液に前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを添加する発生機と、前記養液循環エリアから前記発生機に前記養液を導く導入管路と、前記導入管路を通じて前記発生機に供給され、前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液を前記育成槽内の前記養液循環エリアへ還流させる還流管路と、前記導入管路又は前記還流管路に設けられ前記養液を循環させる循環ポンプを備え、前記養液循環エリアには前記生物が含まれず、前記放出膜を介して前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液を前記育成槽内の生物育成エリアに放出することにより、前記養液循環エリアから前記生物育成エリアに前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記養液が供給される一方、前記養液循環エリア内に生物含む固形物が侵入することを防止できることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の生物の育成装置の前記養液循環エリア内に絞り部を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の生物の育成装置の前記導入管路と前記還流管路を接続する少なくとも1つの流路切替管路を更に備え、前記導入管路、前記還流管路又は前記流路切替管路の少なくともいずれかに仕切弁を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の生物の育成装置の前記放出膜は、前記育成槽内の空間を上下に分割するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の生物の育成装置の前記放出膜は、筒状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の生物の育成装置の前記放出膜は、連結された複数個の筒状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の生物の育成装置の前記育成槽は、前記養液が循環する管状に形成され、前記放出膜は、管状に形成されて前記管状の育成槽内に配置され、前記放出膜の一端部に前記導入管路が接続され、他端部に前記還流管路が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の各発明においては、放出膜を介して、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有した養液が生物育成エリアへ供給されるので、バブルと養液の比重差による浮上および拡散効果により、養液循環エリアから生物育成エリアへ供給される一方、放出膜により固形物(生物や微細なゴミ等)が生物育成エリアから養液循環エリアに混入することを防止できる。
したがって、微生物によるファインバブルまたは高濃度溶存ガス放出膜の目詰を防止することができる。
(2)請求項2に記載の発明も前記(1)と同様な効果が得られるとともに、絞り部を設けてこの絞り部を通過する流量を少なくすることで、絞り部の1次側のファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有する養液が生物を育成するエリアへ放出膜を介して移行する流量、及び生物育成エリアから絞り部の2次側へ放出膜を介して養液が移行する流量を増加させることができる。
したがって、育成槽の生物を育成するエリア内のファインバブル及び高濃度溶存ガス濃度を高く維持することができる。
(3)請求項3に記載の発明も前記(1)~(2)と同様な効果が得られるとともに、養液を育成槽内の養液循環エリアへ還流させる管路と、仕切弁、及び流路切替管路を備えるので、育成槽内の生物育成エリア内に均一にファインバブルまたは高濃度溶存ガス供給することができる。
(4)請求項4乃至請求項7に記載の発明も前記(1)~(3)と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1乃至図3は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図4は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図5は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図6は本発明の第4の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の生物の育成装置の概略説明図。
図2】通常時の養液の流れ及び仕切弁の状態を示す参考説明図。
図3】養液を逆流させる場合の仕切弁の状態を示す参考説明図。
図4】第2の実施形態の生物の育成装置の概略説明図。
図5】第3の実施形態の生物の育成装置の概略説明図。
図6】第4の実施形態の生物の育成装置の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図3に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本発明のファインバブル及び高濃度溶存ガスを用いた生物の育成装置である。
なお、説明の便宜上、循環管路14及び養液循環エリア5を循環し、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有した養液2を循環養液2Aという。
【0018】
この生物の育成装置1は、図1に示すように、養液2を貯留するとともに、前記養液2内の生物を育成する育成槽3と、前記育成槽3内に設けられ、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた循環養液2Aが通過可能な放出膜4により区切られた養液循環エリア5及び生物育成エリア10と、前記養液循環エリア5の養液を循環させる循環管路14と、この循環管路14に設けられ、前記養液2に前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを添加する発生機6と、循環管路14に設けられ前記循環養液2Aを循環させる循環ポンプ9とで構成されている。
【0019】
循環管路14は、前記養液循環エリア5から前記発生機6に前記循環養液2Aを導く導入管路7と、該導入管路7を通じて前記発生機6に供給され、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記循環養液2Aを前記育成槽3内の前記養液循環エリア5へ還流させる還流管路8とで構成されており、循環ポンプ9は、前記導入管路7又は還流管路8のいずれに設けてもよい。
【0020】
養液2は、育成対象の生物に適した液体が用いられ、例えば、本実施形態では藻類の微生物を育成しており、淡水又は海水等が用いられている。その他にも水草を育成する場合には淡水、水の中の有機物を分解する微生物を育成する場合には、有機物を多量に含んだ液体等が用いられる。
【0021】
また、この育成槽3で育成される生物は、動植物及び微生物(好気性微生物、嫌気性微生物、藻類等)を含むものである。
ファインバブルにされるガス及び高濃度溶存ガスも、育成する生物に合わせて適宜適切な物質が用いられる。本実施形態では、藻類の微生物を育成するため、二酸化炭素を用いている。
【0022】
育成槽3は、液体を保持できるとともに導入管路7や還流管路8が接続可能な容器で、その大きさや材質等は育成する生物や育成規模に応じて適宜変更できるものである。
【0023】
養液循環エリア5は、前記育成槽3内に設けられており、育成槽3とは放出膜4を介して区切られた状態で設けられており、この養液循環エリア5には前記生物が含まれない。本実施形態では、育成槽3の中心部から下部付近の内部の空間を上下に分割するように放出膜4が設けられており、この放出膜4の下方が養液循環エリア5となる。この放出膜4は、本実施形態では、微生物を育成するものであるため、その大きさに合わせて開き目が1~50μmで、エリアを上下に区切るためにプリーツ型やシート型のものを用いている。
【0024】
一方、この放出膜4よりも上方のエリアは、養液2及び育成対象の生物が存在する生物育成エリア10となる。
【0025】
この放出膜4は、ファインバブル及び養液2(高濃度溶存ガスを含有した循環養液2Aを含む)のみが通過できる大きさの開き目とすることにより、放出膜4により生物等(生物や固形物等)が生物育成エリア10から養液循環エリア5に混入することを防止できる。すなわち、放出膜4を介して前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた養液2Aを育成槽3内の生物育成エリア10に放出することにより、前記養液循環エリア5から前記生物育成エリア10に前記ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた養液2Aが供給される一方、前記養液循環エリア5内に生物含む固形物が侵入することを防止できる。
【0026】
発生機6は、ファインバブルを発生させることができるものであれば、どのような機器を用いてもよく、ファインバブルの発生とガスを高濃度で循環養液2Aに溶存させることができる機能の両方を有する発生機6を用いてもよいし、ファインバブル発生機とガス溶存装置とを別個に接続し、これらの機器を接続して発生機6としてもよい。
導入管路7は、養液循環エリア5から発生機6に循環養液2Aを導く管路で、本実施形態においては一端部が育成槽3の養液循環エリア5に連通するとともに、他端部が発生機6に接続されている。
なお、本実施形態のように発生機6の上流側に循環ポンプ9を設ける場合には、この循環ポンプ9を介して導入管路7の他端部が発生機6に接続される。
還流管路8は、発生機6を通過し、ファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有した循環養液2Aを養液循環エリア5へ導く管路で、その一端部が発生機6に接続され、他端部が育成槽3の養液循環エリア5に連通している。
【0027】
循環ポンプ9は、導入管路7に設けられ、これらの管路7、8及び発生機6を通過する循環養液2Aを昇圧し、循環させるポンプである。この循環ポンプ9は、液体を昇圧し圧送できるものであれば、どのようなものを用いてもよい。ところで、本実施形態においては、導入管路7に循環ポンプ9を設けたが、使用するガスによっては還流管路8(発生機6の下流側)に循環ポンプ9を用いてもよく、循環ポンプ9は発生機6に内蔵されていてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、導入管路7と還流管路8(循環管路14の発生機6よりも上流側と下流側)を接続する流路切替管路11を更に備えている。この流路切替管路11は、少なくとも1つ以上設けられ、本実施形態においては2つの流路切替管路11が設けられている。
【0029】
ところで、前記導入管路7、前記還流管路8又は前記流路切替管路11の少なくともいずれかに仕切弁12を設けて循環養液2Aの流路を条件ごとに切り替えることができる。
本実施形態においては、導入管路7と還流管路8と流路切替管路11の全てにそれぞれ仕切弁12を設けている。
流路を切り替える条件は、時間でも良く、ファインバブル濃度などのパラメータを用いてもよい。
【0030】
また、例えば図3に示すように、導入管路7及び還流管路8の仕切弁12を閉状態、流路切替管路11の仕切弁12を開状態となるように仕切弁12の開閉を行い、流路を切り替えることにより循環養液2Aを通常とは逆方向に循環させることができ、放出膜4の逆洗浄を行うことができ、より保守を要さない時間を延長する(長期間、洗浄等の保守作業を不要にする)ことが可能になる。
【0031】
さらに、放出膜4から生物育成エリア10内に均一にファインバブル及び高濃度溶存ガスを供給することができる。
【0032】
前述した2つの流路切替管路11は、還流管路8の仕切弁12の下流側に一端部が接続され、導入管路7の仕切弁12の下流側に他端部が接続された流路切替管路11と、還流管路8の仕切弁12の上流側に一端部が接続され、導入管路7の仕切弁12の上流側に他端部が接続された流路切替管路11の2つが設けられている。
【0033】
このように流路切替管路11及び仕切弁12を設けることにより循環養液2Aの流れを多様に調整することができ、前述のような効果を得ることができる。
ところで、養液循環エリア5の平均流速は5m/sec以下、より好ましくは1m/sec 以下としている。
【0034】
従来の方法ではフィルターに循環流体の全量が通過するのに対して、本発明では放出膜4に循環流体の全量が通過することはないため、非常に目詰まりが発生しにくい。
【0035】
ファインバブルまたは高濃度溶存ガスはバブルと養液2の比重差による浮上および拡散効果により、養液循環エリア5から前記育成槽3内の生物育成エリア10へファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有させた前記循環養液2Aが供給される一方、放出膜4により固形物が生物育成エリア10から養液循環エリア5および還流管路8および循環ポンプ9および発生機6内に混入することを抑えることができる。
【0036】
ここで、「固形物」とは、育成対象の生物自身を含むものであり、その他にも生物が排出する固形の排出物や、ゴミ、ほこり等が含まれる。
このように構成された生物の育成装置1で例えば藻類等の微生物を育成(培養)する場合には、養液2として淡水又は海水を用い、ファインバブル及び高濃度溶存ガスとして二酸化炭素を用いる。
【0037】
循環ポンプ9により循環養液2Aを養液循環エリア5に循環させるとともに、発生機6を起動して二酸化炭素をファインバブルにするとともに、二酸化炭素を循環養液2A中に高濃度で溶存させる。このファインバブル及び高濃度で二酸化炭素が溶存した循環養液2Aは、放出膜4を通過して生物育成エリア10に拡散される。
この拡散されたファインバブル及び高濃度で二酸化炭素が溶存した養液2により藻類等の微生物を効率よく育成することができる。
【0038】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図4乃至図6に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図4に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、筒状に形成され、その一端部に前記導入管路7が接続され、その他端部に前記還流管路8が接続された放出膜4Aにするとともに、この養液循環エリア5内に絞り部13を設けた点で、このような放出膜4Aを用いた生物の育成装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0040】
ところで、絞り部13は、本実施形態においては、筒状の放出膜4A内に形成されており、筒状の放出膜4Aで区切られた放出膜4Aの内側のエリアが養液循環エリア5となる。このように放出膜4A内に絞り部13を設けることにより、絞り部13の1次側のファインバブル及び高濃度溶存ガスを含有する養液2が生物育成エリア10へ放出膜4Aを介して移行する流量、及び生物育成エリア10から絞り部13の2次側へ放出膜4Aを介して循環養液2Aが移行する流量を増加させることができる。この絞り部13を設けることが望ましいが、必ずしも設ける必要はない。
【0041】
また、絞り部13は前記放出膜を連結させた際の配管、もしくは継手であってもよい。
図5に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、互いに連結された複数個の筒状の放出膜4Bにした点で、このような放出膜4Bを用いた生物の育成装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0042】
なお、本実施形態においては、この複数個の筒状の放出膜4Bで区切られた放出膜4Bの内側のエリアが養液循環エリア5となる。
【0043】
複数個の放出膜4Bは、どのように連結してもよく、例えば本実施形態のように4つの放出膜4Bを並列状に2つずつ連結してもよいし、複数個の放出膜4Bを直列状に連結してもよい。このように複数個の放出膜4Bが直接又は間接的に互いに連結されていればよい。
【0044】
図6に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、前記循環養液2Aが循環する管状に形成された育成槽3Aを用いるとともに、前記育成槽3A内に配置され、管状に形成されるとともに、その一端部に前記導入管路7が接続され、その他端部に前記還流管路8が接続された前記放出膜4Cにした点で、このような育成槽3A及び放出膜4Cを用いた生物の育成装置1Cにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0045】
本実施形態においては、この管状の放出膜4Cで区切られた放出膜4Cの内側のエリアが養液循環エリア5となる。
なお、本発明の実施形態では流路切替管路や仕切弁を有する形態について説明したが、これらの構成を有さないものとしてもよい。
【0046】
また、本発明の実施形態で藻類の微生物を育成する場合について説明したが、育成する生物としては植物(水耕栽培)や養殖魚等にしてもよく、植物の場合には、養液を水耕養液とし、養殖魚を育成する場合には、淡水又は海水を養液として使用し、ファインバブル及び高濃度溶存ガスとして使用される気体を酸素や空気等にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は生物を育成する産業に利用される。
【符号の説明】
【0048】
1、1A、1B、1C:生物の育成装置、
2、2A:養液、 3、3A:育成槽、
4、4A、4B、4C:放出膜、 5:養液循環エリア、
6:発生機、 7:導入管路、
8:還流管路、 9:循環ポンプ、
10:生物育成エリア、 11:流路切替管路、
12:仕切弁、 13:絞り部、
14:循環養液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6