(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】計量チャンバー、流路保持装置及び体外循環装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230804BHJP
A61M 1/34 20060101ALI20230804BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A61M1/16 140
A61M1/34 120
A61M1/36 100
(21)【出願番号】P 2019107196
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018186661
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英夫
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕之
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-162226(JP,A)
【文献】実開昭56-039180(JP,U)
【文献】特開2015-181757(JP,A)
【文献】特開2018-143365(JP,A)
【文献】特開2015-042363(JP,A)
【文献】特開2015-073847(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111111(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/34
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外循環装置の液体流路に接続され、当該液体流路を流れる液体を計量するための計量チャンバーであって、
液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部を内包しパネル状に形成された計量チャンバーの本体と、
前記貯留部の上部から前記貯留部の内部空間を通って当該内部空間の下部に連通
するように構成され、なおかつ、前記貯留部の上部で前記計量チャンバーの本体の表面に対し垂直方向に開口しチューブが接続される開口部を有する内部流路と、
前記開口部に接続されたチューブを保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記開口部に接続された前記チューブを前記計量チャンバーの本体の表面と同一の面方向の外方に向けて保持する保持部材を有し、
前記貯留部と前記内部流路は、一体成形されている、計量チャンバー。
【請求項2】
前記内部流路は、前記貯留部の内壁の一部を構成している、請求項1に記載の計量チャンバー。
【請求項3】
前記保持部材は、前記計量チャンバーの縁部において、前記チューブを前記計量チャンバーの本体の表面と同一面内の
水平方向に向けて保持する、
請求項1又は2に記載の計量チャンバー。
【請求項4】
前記貯留部の上部には、通気口が設けられている、
請求項1~3のいずれかに記載の計量チャンバー。
【請求項5】
前記貯留部の上部には、前記貯留部の内部空間の他の部分よりも狭小な狭小部が設けられ、
前記通気口は、前記狭小部に設けられている、
請求項4に記載の計量チャンバー。
【請求項6】
前記貯留部は、左右方向に複数並べて設けられている、
請求項1~5のいずれかに記載の計量チャンバー。
【請求項7】
体外循環装置の本体に対し着脱自在で、体外循環装置の液体流路の少なくとも一部を保持する流路保持装置であって、
請求項1~6のいずれかに記載の計量チャンバーを備えた、流路保持装置。
【請求項8】
液体が流れる液体流路を備え、当該液体流路を流れる液体を加温するための加温パネルと、
中央に開口を有し、前記開口に前記加温パネルが配置される枠状のフレームと、をさらに備え、
前記計量チャンバーは、前記フレームの下方に配置されている、
請求項7に記載の流路保持装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の流路保持装置を備えた、体外循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量チャンバー、流路保持装置及び体外循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば透析療法や血漿交換療法などの体外循環療法は、体外循環装置である例えば血液浄化装置を用いて行われている。この血液浄化装置は、例えば患者の血液を血液浄化器に供給して浄化し患者に戻す血液回路と、血液浄化器に透析液を給排する透析液回路と、血液に補液を補充する補液回路等を有している(特許文献1、2参照)。血液浄化装置は、例えば患者の除水量を制御するために、血液浄化器に供給される透析液の供給量と、血液浄化器から廃液される透析液の廃液量と、血液回路に供給される補液の量の合計を計量する計量チャンバーを備えている(特許文献1参照)。あるいは、血液浄化装置は、例えば患者の除水量を制御するために、血液浄化器に供給される透析液の供給量と、血液浄化器から廃液される透析液の廃液量と、血液回路に供給される補液の量を個別に計量する計量容器を備えている(特許文献2参照)。
【0003】
上述の計量チャンバーは、パネル状に形成され、各液体を貯留する貯留部と、各貯留部に液体を出し入れするための流路を備えている。これらの流路は、貯留部の底部に接続されている(特許文献1、3参照)。また、計量チャンバーは、補液を体温まで加温する加温パネルやその加温パネルを保持するフレームと一体となってパネル回路を構成している(特許文献4参照)。パネル回路のフレームは、計量チャンバーや加温パネルに液体を流入出するためのチューブを保持している。このパネル回路は、使用時に血液浄化装置の本体に対し着脱される。
【0004】
上述の計量容器は、袋状に形成され、各液体を貯留する貯留部と、各貯留部に液体を出し入れするためのチューブを備えている。これらのチューブは、貯留部の上部から貯留部内部に挿通されており、チューブの一部は貯留部内部に配置されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5160455号公報
【文献】特開2010-162226号公報
【文献】特開2015-181757号公報
【文献】特開2015-073847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の計量チャンバーは、通常パネル回路の下部に設けられているため、貯留部の底部に接続された流路は、計量チャンバー本体の貯留部の外側を通って上部まで配設されている。このため、計量チャンバーの本体には、貯留部を迂回する流路を配設する必要があり、流路を形成するシール部の総面積(総長)が大きくなるため、液漏れのリスクが高くなっている。
【0007】
一方、上述の計量容器は、チューブの一部が貯留部内部に配置されているが、チューブ部分を製造後、別途貯留部に固定する工程が必要なため、製造工程が複雑になる。
【0008】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、液漏れのリスクを低減させかつ製造効率を向上させることができる体外循環装置の計量チャンバーを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、計量チャンバーに、貯留部の内部空間を通過する内部流路を設け、内部流路と貯留部を一体成形することにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)体外循環装置の液体流路に接続され、当該液体流路を流れる液体を計量するための計量チャンバーであって、液体を貯留する貯留部と、前記貯留部の上部から前記貯留部の内部空間を通って当該内部空間の下部に連通する内部流路と、を備え、前記貯留部と前記内部流路は、一体成形されている、計量チャンバー。
(2)前記内部流路は、前記貯留部の内壁の一部を構成している、(1)に記載の計量チャンバー。
(3)前記内部流路は、前記貯留部の上部で計量チャンバーの本体の表面に開口し、チューブが接続される開口部を有する、(1)又は(2)に記載の計量チャンバー。
(4)前記開口部に接続されたチューブを保持する保持部を、さらに備えた、(3)に記載の計量チャンバー。
(5)計量チャンバーの本体は、前記貯留部を内包するパネル状に形成され、前記保持部は、前記計量チャンバーの縁部において、前記チューブを前記計量チャンバーの本体の表面と同一面内の外方に向けて保持する保持部材を有する、(4)に記載の計量チャンバー。
(6)前記貯留部の上部には、通気口が設けられている、(1)~(5)のいずれかに記載の計量チャンバー。
(7)前記貯留部の上部には、前記貯留部の内部空間の他の部分よりも狭小な狭小部が設けられ、前記通気口は、前記狭小部に設けられている、(6)に記載の計量チャンバー。
(8)前記貯留部は、左右方向に複数並べて設けられている、(1)~(7)のいずれかに記載の計量チャンバー。
(9)体外循環装置の本体に対し着脱自在で、体外循環装置の液体流路の少なくとも一部を保持する流路保持装置であって、(1)~(8)のいずれかに記載の計量チャンバーを備えた、流路保持装置。
(10)液体が流れる液体流路を備え、当該液体流路を流れる液体を加温するための加温パネルと、中央に開口を有し、前記開口に前記加温パネルが配置される枠状のフレームと、をさらに備え、前記計量チャンバーは、前記フレームの下方に配置されている、(9)に記載の流路保持装置。
(11)(9)又は(10)に記載の流路保持装置を備えた、体外循環装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、体外循環装置の計量チャンバーの液漏れのリスクを低減させ、かつ製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】計量チャンバーの構成を説明する正面図である。
【
図6】計量チャンバーの貯留部内の構成を説明するための計量チャンバーのA方向から見た縦断面の説明図である。
【
図7】第1の貯留部の開口部と内部流路の構成を示す計量チャンバーをB方向から見た縦断面の説明図である。
【
図8】第1の貯留部の通気口の構成を示す計量チャンバーのB方向から見た縦断面の説明図である。
【
図9】第2及び第3の貯留部の開口部と内部流路の構成を示す計量チャンバーをB方向から見た縦断面の説明図である。
【
図10】第2及び第3の貯留部の通気口の構成を示す計量チャンバーのB方向から見た縦断面の説明図である。
【
図11】計量チャンバーを裏面から見た斜視図である。
【
図12】チューブが固定されたチューブ固定部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態の一例について説明する。なお、図面の上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。さらに、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0014】
<血液浄化装置>
図1は、本実施の形態に係る計量チャンバーを備えた体外循環装置としての血液浄化装置1の構成の概略を示す説明図である。血液浄化装置1は、例えば装置本体部10と、操作パネル部11と、台車部12と、ポール部13と、液体回路14等を有している。
【0015】
装置本体部10は、血液処理を実行するために必要な各種機器、装置、部材が内蔵或いは取り付け可能に構成されている。例えば装置本体部10には、液体回路14の流路を開閉する各種クランプ群20と、液体回路14の液体を圧送するポンプ群21と、液体回路14の液体の圧力を検出する圧力センサ(図示せず)と、血液を浄化する後述の血液浄化器等が、内蔵或いは取り付け可能になっている。装置本体部10の側面には、扉30が設けられており、扉30を開けて露出した部分には、平板状のヒータ31が設けられている。装置本体部10には、液体回路14の一部を保持する流路保持装置としてのパネル回路40が装着可能になっている。パネル回路40は、加温パネル50や計量チャンバー51を備えている。パネル回路40を装置本体部10のヒータ31部分に装着し、ヒータ31から加温パネル50に給熱することで、加温パネル50を流れる液体を加温できる。また、計量チャンバー51を装置本体部10の計量装置32に設置することで、計量チャンバー51の重量を計測することができる。
【0016】
操作パネル部11は、例えばタッチパネルになっており、血液処理の各種設定を入力したり、血液処理の運転状態を表示できるようになっている。ポール部13には、血液処理で用いられる後述の透析液バッグや補液バッグ等の液体バッグを吊下げることができる。
【0017】
<液体回路>
図2は、透析療法を行うための液体回路14の構成の一例を示す説明図である。例えば液体回路14は、血液浄化器70と、血液回路71と、透析液供給回路72、廃液回路73及び補液回路74等を有している。液体回路14は、血液浄化装置1の装置本体部10に着脱自在である。
【0018】
血液浄化器70は、例えば浄化膜としての中空糸膜を有する円筒状の膜モジュールであり、血液から不要成分を分離できる。
【0019】
血液回路71は、例えば採血部80と血液浄化器70とを接続する採血ライン90と、血液浄化器70と返血部81とを接続する返血ライン91を備えている。採血ライン90と返血ライン91は、主に軟質チューブにより構成されている。採血ライン90は、血液浄化器70の入口の血液側ノズルに接続され、返血ライン91は、血液浄化器70の浄化膜の出口の血液側ノズルに接続されている。
【0020】
採血ライン90には、例えば圧送ポンプ100が設けられている。返血ライン91には、ドリップチャンバ110や圧力センサが設けられている。
【0021】
透析液供給回路72は、透析液バッグ120と、透析液バッグ120と血液浄化器70の透析液側ノズルを接続する透析液供給ライン121を有している。透析液供給ライン121は、主に軟質チューブにより構成されているが、一部が加温パネル50の液体流路や計量チャンバー51の液体流路により構成されている。透析液供給ライン121には、透析液ポンプ122が設けられている。
【0022】
廃液回路73は、血液浄化器70の血液浄化器70の透析液側ノズルと廃棄部を接続する廃液ライン130を有している。廃液ライン130は、主に軟質チューブにより構成されているが、一部が計量チャンバー51の液体流路により構成されている。廃液ライン130には、例えば濾過ポンプ131が設けられている。
【0023】
補液回路74は、補液バッグ140と、補液バッグ140と返血ライン91を接続する補液ライン141を有している。補液ライン141は、主に軟質チューブにより構成されているが、一部が加温パネル50の液体流路や計量チャンバー51の液体流路により構成されている。補液ライン141には、補液ポンプ142が設けられている。
【0024】
以上の液体回路14では、例えば透析療法のための血液浄化処理が行われる。例えば血液回路71において、患者の血液が採血部80から血液浄化器70の浄化膜の血液側に送られ、血液浄化器70を通過後、返血部81から患者に戻される。このとき、透析液供給回路72において透析液が血液浄化器70の浄化膜の透析液側に送られ、その後廃液回路73を通じて廃液される。血液浄化器70では、浄化膜の血液側を通る血液中の不要成分が浄化膜を通じて透析液側に流出し、透析液とともに排出される。一方、補液回路74において補液が血液回路71に供給され、血液中に所定の成分が補充される。
【0025】
<パネル回路>
図2に示すパネル回路40は、例えば透析液供給ライン121の少なくとも一部、廃液ライン130の少なくとも一部、補液ライン141の少なくとも一部を保持し、装置本体部10に対し脱着自在に構成されている。パネル回路40は、例えば方形の枠状のフレーム160と、フレーム160の内側の開口に取り付けられた加温パネル50と、フレーム160に固定された軟質のチューブ161と、フレーム160の下方に配置された計量チャンバー51を有している。加温パネル50とチューブ161、計量チャンバー51とチューブ161は、互いに接続され、液体回路14の液体流路の一部を構成している。
【0026】
フレーム160は、方形の枠状に形成され、硬質の樹脂等で構成されている。フレーム160は、中央に開口部160aを有し、その開口部160aに加温パネル50が配置されている。開口部160aの上下の縁には、加温パネル50を係止するための係止部160bが設けられている。フレーム160には、加温パネル50や計量チャンバー51に接続されるチューブ161を固定する複数の固定部(図示せず)が設けられている。
【0027】
図3に示すように加温パネル50は、略長方形の薄い板形状を有している。加温パネル50は、入口部180から出口部181まで一続きの液体流路182を2経路有している。入口部180と出口部181は、パネル本体の長手方向の片側(上側)の短辺に設けられている。各液体流路182は、入口部180から左右に蛇行しながら下方に向かって延設された蛇行部200と、蛇行部200の下部から蛇行部200の横を直線的に通って出口部181に接続される直線部201を有している。2つの液体流路182は、加温パネル50の左右に並べて配置されている。入口部180と出口部181が、液体流路182にチューブ161を接続するための接続部を構成している。
【0028】
加温パネル50は、フレーム160の係止部160bに係止される被係止部210を備えている。被係止部210は、例えばパネル本体の長手方向の上下の短辺にそれぞれ2か所ずつ設けられている。
【0029】
図2及び
図3に示すように加温パネル50の2つの液体流路182には、透析液供給ライン121のチューブ161と、補液ライン141のチューブ161が接続されている。これにより、一方の液体流路182が透析液供給ライン121の一部を構成し、他方の液体流路182が補液ライン141の一部を構成する。
【0030】
<計量チャンバー>
図2に示したように計量チャンバー51は、パネル回路40の下部に設けられている。計量チャンバー51は、患者の除水量を管理するため、血液浄化器70に供給される透析液の供給量と、血液浄化器70から廃液される透析液の廃液量と、血液回路71に供給される補液の量の合計を計量するためのチャンバーである。
【0031】
図4及び
図5に示すように計量チャンバー51は、略方形のパネル状に形成され、例えば樹脂により成形されている。計量チャンバー51は、下部に例えば3つの貯留部230、231、232と、各貯留部230、231、232の内部を通る内部流路240、241、242と、内部流路240、241、242等に接続されるチューブ161(後述の接続チューブ370~375)を保持する保持部250を備えている。各内部流路240、241、242は、対応する貯留部230、231、232と一体成形されており、対応する貯留部230、231、232の一部を構成している。
【0032】
貯留部230、231、232は、計量チャンバー51の本体の下部に左右方向に並べて配置されている。第1の貯留部230は、計量チャンバー51の本体を表面51a側から(
図4のA方向)見て左に位置し、第2の貯留部231は中央に位置し、第3の貯留部232は右に位置している。
図5及び
図6に示すように貯留部230、231、232は、それぞれが内部に内部空間Rを有し、例えば下部に設けられた円筒状の円筒部260、261、262と、上部に設けられた狭小部270、271、272を備えている。円筒部260は、円筒部261、262よりも上下方向に長い形状を有している。
【0033】
円筒部260、261、262の下部は、蓋体280により閉鎖されている。蓋体280は、例えば貯留部230、231、232の他の部分と同じ材質であっても、異なる材質であってもよい。蓋体280は、例えばポリカーボネート、ABSなどで構成されている。蓋体280は、下部の中央に下端が平坦な突起290を有している。この突起290により、蓋体280を計量チャンバー51の本体に接着する際、持ち手となり、接着作業がしやすくなる。
【0034】
狭小部270、271、272は、
図7~
図10に示すように例えば計量チャンバー51の本体の表面51aに対し垂直方向(A方向)に薄い直方体状に形成されている。狭小部270、271、272は、貯留部230、231、232よりも、計量チャンバー51の本体の表面51a対し垂直のA方向の寸法が小さく容積が小さい。
【0035】
図6及び
図7に示すように第1の貯留部230の内部流路240は、第1の貯留部230の上部の狭小部270から第1の貯留部230の内部空間Rを通って当該内部空間Rの下部に連通する。内部流路240は、第1の貯留部230の内壁230aに沿って、本体の表面51aの垂直方向(A方向)及び上下方向に直線的に設けられている。内部流路240の外周面240aの一部は、第1の貯留部230の内壁230aの一部を構成している。すなわち、内部流路240は、第1の貯留部230の一部を構成している。内部流路240は、第1の貯留部230の上部にある狭小部270で開口する開口部300を備えている。開口部300は、計量チャンバー本体の表面51aに当該表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。よって、内部流路240は、開口部300から第1の貯留部230の内部空間RをA方向に向いその後下方向に向かうように延設されている。
【0036】
図6及び
図8に示すように第1の貯留部230の狭小部270には、内部空間Rに連通する通気口310が形成されている。通気口310は、計量チャンバー本体の表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。
【0037】
図6に示すように第2の貯留部231の狭小部271は、第1の貯留部230の狭小部270よりも上方に長く形成されており、容積が大きい。
【0038】
図6及び
図9に示すように第2の貯留部231の内部流路241は、第2の貯留部231の上部の狭小部271から第2の貯留部231の内部空間Rを通って当該内部空間Rの下部に連通する。内部流路241は、第2の貯留部231の内壁231aに沿って、本体の表面51aの垂直方向(A方向)及び上下方向に直線的に設けられている。内部流路241の外周面241aの一部は、第2の貯留部231の内壁231aの一部を構成している。すなわち、内部流路241は、第2の貯留部231の一部を構成している。内部流路241は、第2の貯留部231の上部で開口する開口部320を備えている。開口部320は、狭小部271の下部付近に設けられている。開口部320は、計量チャンバー本体の表面51aに当該表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。よって、内部流路241は、開口部320から第2の貯留部231の内部空間RをA方向に向いその後下方向に向かうように延設されている。
【0039】
図6及び
図10に示すように第2の貯留部231の狭小部271には、内部空間Rに連通する通気口330が形成されている。通気口330は、計量チャンバー本体の表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。通気口330は、狭小部271の上端に設けられている。
【0040】
図6に示すように第3の貯留部232の狭小部272は、第1の貯留部230の狭小部270よりも上下に長く形成されており、容積が大きい。
【0041】
図6及び
図9に示すように第3の貯留部232の内部流路242は、第3の貯留部232の上部の狭小部272から第3の貯留部232の内部空間Rを通って当該内部空間Rの下部に連通する。内部流路242は、第3の貯留部232の内壁232aに沿って、本体の表面51aの垂直方向(A方向)及び上下方向に直線的に設けられている。内部流路242の外周面242aの一部は、第3の貯留部232の内壁232aの一部を構成している。すなわち、内部流路242は、第3の貯留部232の一部を構成している。内部流路242は、第3の貯留部232の上部で開口する開口部340を備えている。開口部340は、狭小部272の下部付近に設けられている。開口部340は、計量チャンバー本体の表面51aに当該表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。よって、内部流路242は、開口部340から第3の貯留部232の内部空間RをA方向に向いその後下方向に向かうように延設されている。
【0042】
図6及び
図10に示すように第3の貯留部232の狭小部272には、内部空間Rに連通する通気口350が形成されている。通気口350は、計量チャンバー本体の表面51aに対し垂直方向(A方向)に向けて開口している。通気口350は、狭小部272の上端に設けられている。
【0043】
図4及び
図5に示すように保持部250は、計量チャンバー51の本体の表面51aにおける貯留部230、231、232よりも上方の領域に設けられている。保持部250は、例えば開口部300、320、340や通気口310に接続される接続チューブ370、371、372、375(チューブ161)を計量チャンバー51の本体の上部の両端まで誘導するようにチューブ161を保持する。保持部250は、例えばチューブ161を両側から把持する部材や、チューブ161を片側から保持する部材や、チューブ161の両側や片側を押さえる部材や溝等を備えている。また、保持部250は、チューブ161が配設される計量チャンバー51の表面51aの高さを変更する台座部や溝部、傾斜部を備え、チューブ161を立体的に配設しながら保持できる。
【0044】
例えば保持部250は、チューブ161を計量チャンバー本体の表面51aと同一面内の外方に向くように保持する例えば5つの保持部材360~364を有している。例えば保持部材360~362は、計量チャンバー51の上部の左側の端部に下から上に向けてこの順で設けられ、チューブ161を水平方向の左外方に向くように保持する。保持部材363、364は、計量チャンバー51の上部の右側の端部に下から上に向けてこの順で設けられ、チューブ161を水平方向の右外方に向くように保持する。
【0045】
図5に示すように第1の貯留部230の通気口310には、接続チューブ370が接続されている。接続チューブ370は、保持部材360に保持されている。接続チューブ370は、パネル回路40の廃液ライン130の開放端のあるチューブ161の一部を構成している。
【0046】
第1の貯留部230の開口部300には、接続チューブ371が接続されている。接続チューブ371は、保持部材361に保持されている。接続チューブ371は、パネル回路40の廃液ライン130のチューブ161の一部を構成している。これにより、血液浄化器70から廃液される透析液を、接続チューブ371を介して開口部300に対し給排し、開口部300から内部流路240を通じて第1の貯留部230の内部空間Rの下部に対し給排することができる。よって、第1の貯留部230は、血液浄化器70から廃液される透析液を一旦貯留して計量する計量部として機能する。
【0047】
第2の貯留部231の開口部320には、接続チューブ372が接続されている。接続チューブ372は、途中で分岐し、一方が保持部材362に保持され、他方が保持部材363に保持されている。接続チューブ372は、パネル回路40の透析液供給ライン121のチューブ161の一部を構成している。これにより、血液浄化器70に供給される透析液を、接続チューブ372を介して開口部320に対し給排し、開口部320から内部流路241を通じて第2の貯留部231の内部空間Rの下部に対し給排することができる。よって、第2の貯留部231は、血液浄化器70に供給される透析液を一旦貯留して計量する計量部として機能する。
【0048】
第2の貯留部231の通気口330には、開放端の接続チューブ373が接続されている。第3の貯留部232の通気口350には、開放端の接続チューブ374が接続されている。
【0049】
第3の貯留部232の開口部340には、接続チューブ375が接続されている。接続チューブ375は、保持部材364に保持されている。接続チューブ375は、パネル回路40の補液ライン141のチューブ161に接続されている。これにより、血液回路71に供給される補液を、接続チューブ375を介して開口部340に対し給排し、開口部340から内部流路242を通じて第3の貯留部232の内部空間Rの下部に対し給排することができる。よって、第3の貯留部232は、血液回路71に供給される補液を一旦貯留して計量する計量部として機能する。
【0050】
計量チャンバー51は、計量装置32により計量され、血液浄化器70に供給される透析液の供給量、血液浄化器70から廃液される透析液の廃液量、血液回路71に供給される補液の量の合計重量を計量することにより、合計重量の変化、すなわち患者の除水量の変化を把握することができる。
【0051】
計量チャンバー51は、例えば射出成型により形成される。また、計量チャンバー51の本体には、計量チャンバー51をフレーム160などの他の部材に固定可能にするための固定部390が設けられている。固定部390は、例えば第2の貯留部231の狭小部271の上部で狭小部271に近接した位置に設けられている。
【0052】
また、
図11に示すように計量チャンバー51の本体の裏面51bには、チューブ161を結束する結束バンドを通すことができるチューブ固定部400が設けられている。チューブ固定部400は、例えば略逆U字型を有し、裏面51bにアーチ状に立設されている。これにより、例えば
図12に示すようにチューブ固定部400に結束バンド401を通し、その結束バンド401でチューブ161を結束することができる。よって計量チャンバー51は、計量チャンバー51から延びる長いチューブ160を纏めて保持することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、計量チャンバー51が、貯留部230、231、232と、貯留部230、231、232の上部から貯留部230、231、232の内部空間Rを通って当該内部空間Rの下部に連通する内部流路240、241、242を備えているので、計量チャンバー51の本体の貯留部の外側に流路を配置する必要がなく、これにより計量チャンバー51を小型化することができる。また、内部流路240、241、242は、貯留部230、231、232の内部に形成されるので、計量チャンバー51全体で液漏れ防止のためのシール部を減らすことができ、この結果液漏れのリスクを低減することができる。
【0054】
貯留部230、231、232および内部流路240、241、242は、それぞれを別々に製造した後に接続するのではなく、同時に一体成形するため、接続のための別工程が不要であり、効率よく製造することができる。
【0055】
内部流路240、241、242は、貯留部230、231、232の内壁に沿って設けられているので、内部流路240、241、242を成型しやすい。
【0056】
貯留部230、231、232および内部流路240、241、242は、例えば射出成形で製造されるため、寸法精度が高く、個体間のばらつきが少ないため、除水量計測誤差のばらつきが小さくなる。
【0057】
内部流路240、241、242は、貯留部230、231、232の上部で計量チャンバー51の表面51aに開口する開口部300、320、340を有するので、接続チューブ161を好適に接続することができる。
【0058】
計量チャンバー51は、開口部300、320、340及び通気口310に接続されたチューブ161を保持する保持部250を備えているので、開口部300、320、340及び通気口310に接続されたチューブ161が計量チャンバー51に位置決めされ、例えば輸送中に外力を受けてチューブが閉塞することを防止できる。
【0059】
計量チャンバーの本体は、貯留部230、231、232を内包するパネル状に形成され、保持部250は、計量チャンバー51の縁部において、チューブ161を計量チャンバー51の本体の表面51aと同一面内の外方に向けて保持する保持部材360~364を有している。これにより、チューブ161を計量チャンバー51の表面51aの同一面内から外部に出すことができるので、計量チャンバー51を取り扱いやすくなる。
【0060】
貯留部230、231、232の上部には、通気口310、330、350が設けられているので、貯留部230、231、232の内部流路240、241、242への液体の給排を好適に行うことができる。
【0061】
貯留部230、231、232の上部には、貯留部230、231、232の内部空間Rの円筒部260、261、262よりも狭小な狭小部270、271、272が設けられ、通気口310、330、350は、狭小部270、271、272に設けられている。これにより、貯留部230、231、232の液体が通気口310、330、350から流出することを抑制することができる。また、狭小部270、271、272は、円筒部260、262、263よりも厚み方向(A方向)に薄いので、通気口310、330、350にチューブが接続されたときの計量チャンバー51の全体の厚みを薄くすることができる。また、計量チャンバー51の表面51aにおいて保持部250やチューブを配設する領域を広げることができる。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば計量チャンバー51の構造は上記実施のものに限られない。例えば計量チャンバー51の貯留部の形や配置、数は上記実施の形態ものに限られない。例えば貯留部230、231、232は、狭小部を備えないものであってよいし、蓋体280により開閉自在であってもよい。
【0064】
内部流路240、241、242の形や配置、数も上記実施の形態ものに限られない。例えば内部流路は、貯留部の内壁に沿って設けられていなくてもよく、貯留部の例えば中心部を通るものであってもよい。また、内部流路は、各貯留部に複数ずつ設けられていてもよい。開口部300、320、340や通気口310、330、350の数や配置も上記実施の形態ものに限られない。
【0065】
保持部250は別の構造のものであってもよいし、計量チャンバー51は保持部を備えないものであってもよい。保持部250によるチューブの這わせ方も上記実施の形態ものに限られない。計量チャンバー51は、接続チューブ370~375等を液体流路として内包するものであってもよい。
【0066】
また計量チャンバー51を備えた血液浄化装置1やパネル回路40の構成は上記実施の形態のものに限られない。例えば上記実施の形態における血液浄化装置1は、透析療法を行うものであったが、血漿交換療法、白血球除去療法、持続緩徐式血液濾過療法などを行う血液浄化装置や、その他の体外循環装置にも本発明は適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、体外循環装置の計量チャンバーの液漏れのリスクを低減させ、かつ製造効率を向上させる際に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 血液浄化装置
40 パネル回路
51 計量チャンバー
230、231、232 貯留部
240、241、242 内部流路
250 保持部
R 内部空間