(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】水底形状測定装置
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20230804BHJP
G01S 15/89 20060101ALI20230804BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230804BHJP
G01C 13/00 20060101ALI20230804BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230804BHJP
B63H 5/08 20060101ALI20230804BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B63C11/00 C
G01S15/89 A
G01S17/89
G01C13/00 D
G01C15/00 102C
B63H5/08
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2019177016
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073160(JP,A)
【文献】特開2019-077293(JP,A)
【文献】特開2017-085263(JP,A)
【文献】特開2018-146328(JP,A)
【文献】特開2010-132073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
G01S 15/89
G01S 17/89
G01C 13/00
G01C 15/00
B63H 5/08
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底の形状を測定する水底形状測定装置であって、
遠隔制御される無人飛行体と、
前記無人飛行体に支持部材を介して吊り下げられ水中に位置した状態で前記水底の3次元形状を測定し3次元形状情報を生成する3次元形状測定部と、
前記無人飛行体に搭載され測位衛星から受信した測位信号に基づいて前記無人飛行体の位置を測位し測位情報として生成する測位部と、
前記3次元形状情報および前記測位情報に基づいて前記水底の形状を地球上の座標位置で示される水底形状情報とし
て生成する水底形状情報生成部と、
前記3次元形状測定部に接続されたスクリューと、
前記スクリューの回転を制御するスクリュー制御部と
、
前記無人飛行体の周囲を撮像して画像情報を生成する撮像部と、を備え、
前記スクリュー制御部は、
前記撮像部で撮像された前記画像情報を用いて前記無人飛行体に対する前記3次元形状測定部の相対位置を検出し、前記無人飛行体に対する前記3次元形状測定部の相対位置が所定範囲内となるよう前記スクリューの回転を制御する、
ことを特徴とする水底形状測定装置。
【請求項2】
前記無人飛行体から離れた箇所に管理装置が設けられ、
前記無人飛行体に無人飛行体側通信部が設けられ、
前記管理装置に、前記スクリュー制御部と無線回線により通信を行なう管理装置側通信部が設けられ、
前記スクリュー制御部は、前記無線回線を介して供給される制御信号に基づいて前記スクリューの回転を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の水底形状測定装置。
【請求項3】
前記スクリューは、前記3次元形状測定部の水深方向の延在軸に対して対称に複数設けられている、
ことを特徴とする
請求項1記載の水底形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底、湖底、河床などに対する浚渫作業や構造物の構築作業に際しては、海底、湖底、河床の底の水底形状を正確に測定することが必要である。
水底形状測定装置として、観測船から支持フレームを介してソナーを水中に配置し、ソナーによって測定した水底の3次元形状情報と、観測船に搭載したGPS測位装置で測位された測位情報に基づいて水底の形状を地球上の座標位置で示される水底形状情報として生成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
上記従来技術では、波浪による観測船の揺れによって生じる測定誤差を補正するために、観測船側に三次元位置センサを設けて観測船の三次元位置を取得すると共に、地上側にトータルステーションを設け、トータルステーションによって観測船の位置を測定して測位データを求め、これら観測船の三次元位置と測位データを用いて水底形状情報を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、そもそも水底形状情報を得るために観測船と観測船を運行するための船舶免許資格者が必要となり、設備コスト、運用コストが高いものとなっている。
また、波浪による観測船の揺れによって生じる測定誤差を補正するために三次元位置センサ、トータルステーションといった装置が必要となり、また、測定誤差の補正を行なうための演算処理が必要となり、構成の簡素化、コストの低減を図る上で不利となる。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、コストを抑制しつつ構成の簡素化を図る上で有利な水底形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、水底の形状を測定する水底形状測定装置であって、遠隔制御される無人飛行体と、前記無人飛行体に支持部材を介して吊り下げられ水中に位置した状態で前記水底の3次元形状を測定し3次元形状情報を生成する3次元形状測定部と、前記無人飛行体に搭載され測位衛星から受信した測位信号に基づいて前記無人飛行体の位置を測位し測位情報として生成する測位部と、前記3次元形状情報および前記測位情報に基づいて前記水底の形状を地球上の座標位置で示される水底形状情報として生成する水底形状情報を生成する水底形状情報生成部と、前記3次元形状測定部に接続されたスクリューと、前記スクリューの回転を制御するスクリュー制御部と、を備え、前記スクリュー制御部は、前記無人飛行体に対する前記3次元形状測定部の相対位置が所定範囲内となるよう前記スクリューの回転を制御する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記無人飛行体の周囲を撮像して画像情報を生成する撮像部を更に備え、前記スクリュー制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像情報を用いて前記無人飛行体に対する前記3次元形状測定部の相対位置を検出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記3次元形状測定部の位置を検知する測定部位置検知部を更に備え、前記スクリュー制御部は、前記測定部位置検知部で検知された前記3次元形状測定部の位置と、前記測位部で生成された前記無人飛行体の位置とに基づいて、前記無人飛行体に対する前記3次元形状測定部の相対位置を検知する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記無人飛行体から離れた箇所に管理装置が設けられ、前記無人飛行体に無人飛行体側通信部が設けられ、前記管理装置に、前記スクリュー制御部と無線回線により通信を行なう管理装置側通信部が設けられ、前記スクリュー制御部は、前記無線回線を介して供給される制御信号に基づいて前記スクリューの回転を制御する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記スクリューは、前記3次元形状測定部の水深方向の延在軸に対して対称に複数設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、無人飛行体に支持部材を介して吊り下げた3次元形状測定部を水中に位置させて水底の3次元形状を測定し3次元形状情報を生成すると共に、測位部により無人飛行体の位置を測位し測位情報として生成し、それら3次元形状情報および測位情報に基づいて水底の形状を地球上の座標位置で示される水底形状情報として生成するようにした。
したがって、従来のようにソナーを設けた観測船が不要となるため、観測船と観測船を運行するための船舶免許資格者が必要となり、設備コスト、運用コストを低減する上で有利となる。
また、3次元形状測定部を支持する無人飛行体は、波浪の影響を受けることがなく、従来のように観測船の揺れを補正するための設備が不要となり、構成の簡素化、コストの低減を図る上で有利となる。
また、3次元形状測定部にスクリューを接続し、無人飛行体に対する3次元形状測定部の相対位置が所定範囲内となるようスクリューの回転を制御するので、水中における3次元形状測定部の位置を安定させ、水底形状の測定精度を向上させる上で有利となる。
また、撮像部で撮像された画像情報を用いて無人飛行体に対する3次元形状測定部の相対位置を検出すれば、3次元形状測定部の位置を迅速かつ正確に把握する上で有利となる。
また、3次元形状測定部の位置を検知する測定部位置検知部を設ければ、3次元形状測定部の位置を精度よく検出することができる。また、3次元形状測定部の位置を水底形状情報の生成時に利用すれば、水底形状情報の精度をより向上させる上で有利となる。
また、無線回線を介して供給される制御信号に基づいてスクリューの回転を制御すれば、3次元形状測定部の構成を簡素化することができ、システムコストを低減する上で有利となる。
また、スクリューを3次元形状測定部の水深方向の延在軸に対して対称に複数設けることにより、3次元形状測定部の移動方向をより細やかに調整することができ、3次元形状測定部を所定範囲内に迅速に移動させる上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態の水底形状測定装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】無人飛行体によって3次元形状測定部が水中に配置された測定状態を示す説明図である。
【
図3】スクリューの取り付け状態の一例を示す説明図である。
【
図4】スクリュー制御部によるスクリュー制御を模式的に示す説明図である。
【
図5】実施の形態の水底形状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】スクリューの取り付け状態の他の例を示す説明図である。
【
図7】スクリューの取り付け状態の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、本実施の形態の水底形状測定装置10は、管理装置12と、無人飛行体14とを含んで構成されている。
管理装置12は、水底22(
図2参照)の形状を測定する海、河川、湖などの近傍の地上に設けられている。
管理装置12は、遠隔操作司令部12Aと、管理装置側通信部12Bと、地図データベース部12Cと、表示部12Dと、管理装置側飛行制御部12Eと、水底形状情報生成部12Fと、情報処理部12Gと、記憶部12Hと、出力部12Iとを含んで構成されている。
【0009】
遠隔操作司令部12Aは、ジョイスティックなどの操作部材を作業者が操作することで無人飛行体14を遠隔操作するための飛行体操作指令情報を生成するものである。
また、遠隔操作司令部12Aは、操作ボタンなどの操作部材を作業者が操作することで無人飛行体14に搭載された測位部14Dおよび3次元形状測定部14Eの動作を開始させ、あるいは、停止させるための測位部14Dの操作指令情報、3次元形状測定部14Eの操作指令情報、スクリュー30の回転を制御する操作指令情報などを生成するものである。
管理装置側通信部12Bは、無線回線Nを介して無人飛行体14と通信を行なうものであり、無人飛行体14に飛行体操作指令情報、測位部14Dの操作指令情報、3次元形状測定部14Eの操作司令情報を送信し、無人飛行体14から送信される画像情報、測位情報、3次元形状情報を受信するものであり、図中符号1202は管理装置側通信部12Bのアンテナを示す。
なお、画像情報、測位情報、3次元形状情報については後で詳述する。
【0010】
地図データベース部12Cは、水底22の形状を測定しようとする海、河川、湖などを含む地図情報を格納している。
【0011】
表示部12Dは、管理装置側通信部12Bで受信された画像情報、3次元形状情報を表示するものである。
したがって、作業者は、表示部12Dによって表示された画像情報、3次元形状情報に基づいて無人飛行体14の遠隔操作を行なうことが可能となっている。
また、表示部12Dは、管理装置側通信部12Bで受信された測位情報に基づいて、地図データベース部12Cに格納されている地図情報を読み出して表示すると共に、無人飛行体14の現在位置を表示部12Dの表示画面上に表示された地図の上に表示するように構成されている。
したがって、作業者は、表示部12Dによって表示された地図と無人飛行体14の現在位置とに基づいて無人飛行体14の遠隔操作を行なうことが可能となっている。
【0012】
管理装置側飛行制御部12Eは、作業者の遠隔操作に代えて、管理装置側通信部12Bで受信された測位情報と、予め定められた飛行ルートとに基づいて無人飛行体14を上記飛行ルートに沿って自動制御により飛行させるものである。
すなわち、地図データベース部12Cの地図情報に基づいて、無人飛行体14を測定すべき水底22に沿って飛行するような飛行コースを設定しておき、管理装置側飛行制御部12Eによって測位情報と飛行コースに基づいて飛行体操作指令情報を生成し、飛行体操作指令情報を管理装置側通信部12Bから無線回線Nを介して飛行体側通信部14Aに送信し、飛行体操作指令情報を飛行体側飛行制御部14Cに与えることで、無人飛行体14を自動制御することができる。
【0013】
水底形状情報生成部12Fは、管理装置側通信部12Bで受信された3次元形状情報および測位情報に基づいて水底22の形状を地球上の座標位置で示される、言い換えると、3次元座標で示される水底形状情報として生成するものである。
【0014】
情報処理部12Gは、水底形状情報を演算処理することで、水底22の形状を示す断面図、斜視図、等深線図などを生成するものである。
本実施の形態では、表示部12Dによる水底形状情報の表示は、情報処理部12Gによって生成された水底22の形状を示す断面図、斜視図、等深線図などを表示することでなされる。
【0015】
記憶部12Hは、水底形状情報生成部12Fで生成された水底形状情報、情報処理部12Gで生成された水底22の形状を示す断面図、斜視図、等深線図などを格納するものである。
出力部12Iは、記憶部12Hに記憶された水底形状情報や断面図、斜視図、等深線図などを出力するものであり、例えば、メモリカードなどの半導体記録媒体にそれら水底形状情報や図を記録し、あるいは、ネットワークを介して端末装置にそれら水底形状情報や図を送信したり、あるいは、プリンタを用いて紙媒体にそれら水底形状情報や図を印刷したりするものである。
【0016】
無人飛行体14は、
図2に示すように、飛行体本体16と、飛行体本体16に設けられた複数のロータ18と、ロータ18毎に設けられロータ18を回転駆動する複数のモータ(不図示)とを備えている。本実施の形態では、飛行体本体16は上面視した際に円形であるものとする。
さらに、無人飛行体14は、
図1に示すように、飛行体側通信部14A、撮像部14B、飛行体側飛行制御部14C、測位部14D、3次元形状測定部14E、スクリュー制御部14Fを含んで構成されている。
【0017】
飛行体側通信部14Aは、管理装置12の管理装置側通信部12Bと無線回線Nを介して通信を行なうものであり、撮像部14Bで撮像された画像情報、測位部14Dで生成された測位情報、3次元形状測定部14Eで生成された3次元形状情報を、管理装置側通信部12Bに送信すると共に、管理装置側通信部12Bから無人飛行体14操作指令情報を受信するものである。図中符号1402は飛行体側通信部14Aのアンテナを示す。
【0018】
撮像部14Bは、無人飛行体14の周囲を撮像して画像情報を生成するものである。本実施の形態では、撮像部14Bは、飛行体本体16の下面に設けられ、飛行体本体16の下方、すなわち無人飛行体14が飛行状態の際には水面側となる方向を撮像する。また、撮像部14Bの撮影範囲は、後述する所定範囲を全て含むものとする。
飛行体側飛行制御部14Cは、管理装置側通信部12Bから無線回線Nを介して飛行体側通信部14Aに送信された飛行体操作指令情報に基づいて各ロータ18を回転制御することで、無人飛行体14を飛行させるものである。
測位部14Dは、飛行体本体16に搭載され測位衛星から受信した測位信号に基づいて無人飛行体14の位置を測位し測位情報として生成するものである。
このような測位衛星は、GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等のGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)で用いられるものであり、それら測量システムで使用される測位衛星の1つを用いてもよく、あるいは、2つ以上の測位衛星を組み合わせて用いても良い。
【0019】
3次元形状測定部14Eは、飛行体本体16に支持部材20を介して吊り下げられ水中に位置した状態で水底22の3次元形状を測定し3次元形状情報を生成するものである。
本実施の形態では、支持部材20は、可撓可能なワイヤやロープで構成されている。支持部材20として可撓性のあるワイヤやロープを用いることで、例えば3次元形状測定部14Eが岩などの障害物と接触した場合などに、支持部材20や3次元形状測定部14E、飛行体本体16の破損の程度を抑える上で有利となる。支持部材20としてワイヤやロープを用いた場合、波浪により3次元形状測定部14Eが飛行体本体16に対して相対的に揺れ動く可能性があるが、後述するスクリュー30で3次元形状測定部14Eの姿勢を安定させることができる。
また、支持部材20を、例えばリジッドな金属製のロッドあるいはフレームで構成し、3次元形状測定部14Eを飛行体本体16に対して移動不能に支持してもよい。ロッドあるいはフレームを用いて3次元形状測定部14Eを飛行体本体16に対して移動不能に支持すると、波浪により3次元形状測定部14Eが飛行体本体16に対して相対的に揺れ動くことを抑制でき、3次元形状測定部14Eによる測定をより精度良く行なう上でより有利となる。
【0020】
3次元形状測定部14Eは、その筐体内に超音波を用いるソナー、あるいは、レーザー光を用いるレーザー測定機を格納している。
ソナーは、超音波を水底22に照射すると共に、水底22からの反射波を受信し、受信波に基づいて3次元形状情報を生成するものである。
ソナーとして、単一のビーム状の超音波26を水底22に向かってスキャン(走査)するもの、あるいは、広がりを持った複数のビーム状の超音波26(マルチビーム)を同時に水底22に向かって照射するものの何れを用いても良く、このようなソナーとして従来公知の様々なソナーが使用可能である。
【0021】
レーザー測定機は、レーザー光を水底22に照射すると共に、水底22から反射された反射光を受信し、受信した反射光に基づいて3次元形状情報を生成するものである。
レーザー測定機として、従来公知の単一のレーザー光28を水底22に向かってスキャン(走査)するものを使用することができる。
なお、形状測定に使用するレーザー光28としてはグリーンレーザーが用いられることが多く、これは、グリーンレーザーが水によって吸収されにくく水底22まで確実に届き、水底22からの反射光の強度を確保できるためである。
【0022】
スクリュー制御部14Fは、3次元形状測定部14Eに接続されたスクリュー30の回転を制御する。上述のように、特に支持部材20としてワイヤやロープを用いた場合、波浪により3次元形状測定部14Eが飛行体本体16に対して相対的に揺れ動く可能性があるが、スクリュー制御部14Fは、無人飛行体14に対する3次元形状測定部14Eの相対位置が所定範囲内となるようスクリュー30の回転を制御する。
【0023】
図2および
図3に示すように、3次元形状測定部14Eには、3次元形状測定部14Eの姿勢を安定させるためのスクリュー30が接続されている。
本実施の形態では、釣鐘形状の3次元形状測定部14Eの筐体の側面に沿って円形のフレーム32を架け渡し、フレーム32の半径方向に突出する4つのアーム34の先端にそれぞれスクリュー30が取り付けられている。4つのスクリュー30は、
図4に示すように、3次元形状測定部14Eを上面視した際に90度ずつ間隔を置いて取り付けられている。すなわち、スクリュー30は、3次元形状測定部14Eの水深方向の延在軸(
図4の中心軸O)に対して対称に複数設けられている。このように複数のスクリュー30を設けることで、3次元形状測定部14Eを所望の位置に移動させやすくする上で有利となる。スクリュー30は、図示しないモータ等によりスクリュー羽根30Aが回転軸30Bの周りを回転することで、3次元形状測定部14Eに推進力を生じさせる。
【0024】
例えば、
図2に示すように飛行体本体16を上面視した際の飛行体本体16の中心点を通る垂直軸(水深方向の延在軸)をXとする。支持部材20は、飛行体本体16の下面の中心点に取り付けられおり、水流の影響のない状態では垂直軸Xに沿って延在するものとする。本実施の形態では、垂直軸Xから水平方向に半径Nの範囲を所定範囲Rとし、スクリュー制御部14Fは、3次元形状測定部14Eが所定範囲R内に位置するようスクリュー30の回転を制御する。
【0025】
図4は、スクリュー制御部14Fによるスクリュー制御を模式的に示す説明図であり、3次元形状測定部14Eを上面視した図となっている。4つのスクリュー30のうち、紙面上側に位置するものをスクリュー30a、紙面右側に位置するものをスクリュー30b、紙面下側に位置するものをスクリュー30c、紙面左側に位置するものをスクリュー30dとする。
【0026】
例えば
図4Aに示すように、紙面上方から下方に向かう水流Fにより3次元形状測定部14Eが所定範囲Rに対して紙面下方側に外れた場合、スクリュー制御部14Fは、紙面下側のスクリュー30cを回転させて、紙面上方への推進力を発生させ、3次元形状測定部14Eが所定範囲R内に復帰させる。
また、例えば
図4Bに示すように、紙面右上から左下に向かう水流Fにより3次元形状測定部14Eが所定範囲Rに対して紙面左下側に外れた場合、スクリュー制御部14Fは、紙面下側のスクリュー30cと紙面左側のスクリュー30dを回転させて、紙面右上への推進力を発生させ、3次元形状測定部14Eが所定範囲R内に復帰させる。
【0027】
スクリュー制御部14Fは、例えば撮像部14Bで撮像された画像情報を用いて、画像認識により無人飛行体14(飛行体本体16)に対する3次元形状測定部14Eの相対位置を検出して、スクリュー30の稼働の有無や4つのスクリュー30のいずれを稼働させるかを決定する。なお、3次元形状測定部14Eは、支持部材20との接続部を中心に周方向に回転する可能性がある。このため、例えば各スクリュー30a~30dを色分けしたり、マークを付すなどして、画像情報から各スクリュー30a~30dを識別できるようにして、いずれのスクリュー30a~30dを稼働させるかを判断してもよい。
【0028】
また、例えば3次元形状測定部14Eの位置を検知する測定部位置検知部(図示なし)を更に設け、スクリュー制御部14Fは、測定部位置検知部で検知された3次元形状測定部14Eの位置と、測位部14Dで生成された無人飛行体14(飛行体本体16)の位置とに基づいて、無人飛行体14に対する3次元形状測定部14Eの相対位置を検知するようにしてもよい。
測定部位置検知部は、例えば測位部14Dと同様に測位衛星から受信した測位信号に基づいて3次元形状測定部14Eの位置を測位するものであってもよいし、例えば飛行体本体16に設けられた発信器からの信号を3次元形状測定部14Eで受信し、その受信状況に基づいて3次元形状測定部14Eからの相対位置を検知するものであってもよい。
この場合にも、3次元形状測定部14Eの2点の位置を検知するなど、3次元形状測定部14Eの周方向の回転状態を検知できるようにするのが好ましい。
【0029】
なお、スクリュー制御部14Fによるスクリュー30の制御は、例えば作業者が撮像部14Bで撮像された画像を見ながら遠隔操作により行ってもよい。すなわち、スクリュー制御部14Fは、無線回線を介して供給される制御信号(スクリュー30の回転を制御する操作指令情報)に基づいてスクリュー30の回転を制御するようにしてもよい。
【0030】
次に、
図3のフローチャートを参照して水底形状測定装置10の動作について説明する。
まず、作業者は、管理装置12の遠隔操作司令部12Aを操作することにより、無人飛行体14を所定の待機場所から飛行させ、表示部12Dに表示される無人飛行体14周囲の画像情報を視認しつつ、水底形状を測定する海、湖、河川の箇所に無人飛行体14を飛行させる(ステップS10)。
そして、表示部12Dに表示される無人飛行体14周囲の画像情報を視認しつつ、無人飛行体14を水面24に向けて降下させ、3次元形状測定部14Eを空中から水中に移動させ、3次元形状測定部14Eが水面24から所定の深さに位置させた状態でホバリングさせその状態を維持する(ステップS12)。
次いで、作業者は、管理装置12の遠隔操作司令部12Aを操作することにより、測位部14Dおよび3次元形状測定部14Eの動作を開始させる(ステップS14)。
測定が開始されると、スクリュー制御部14Fは、3次元形状測定部14Eが飛行体本体16から所定範囲内にあるか否か判断し(ステップS16)、所定範囲内から外れた場合には(ステップS16:No)、スクリュー30を作動させて所定範囲内に復帰させる(ステップS18)。ステップS16およびS18は、測定中継続して行われる。
また、測定中は、測位部14Dで生成された測位情報および3次元形状測定部14Eで生成された3次元形状情報が無線回線Nを介して無人飛行体14から管理装置12の水底形状情報生成部12Fに送信され(ステップS20)、水底形状情報生成部12Fにより水底形状情報が生成される(ステップS22)。
さらに作業者は、表示部12Dに表示される画像情報、水底22の形状を示す断面図、斜視図、等深線図などを視認しつつ、まだ、形状測定がなされてない水底22の形状測定ができるように、遠隔操作司令部12Aを操作することにより、無人飛行体14を水平方向に飛行させ、測定箇所を移動させる(ステップS24)。
そして、作業者は、表示部12Dに表示される画像情報、水底22の形状を示す断面図、斜視図、等深線図などを視認することで、形状測定すべき水底22の領域の全域にわたって測定が終了したか否かを判断する(ステップS26)。
ステップS22が否定ならばステップS16に戻り同様の動作を行なう。
ステップS22が肯定ならば、作業者は遠隔制御により無人飛行体14を上昇させ、3次元形状測定部14Eを水中から空中に引き上げ、表示部12Dに表示される画像を視認しつつ、無人飛行体14を所定の待機場所に向かって飛行させ、待機場所に着陸させる(ステップS28)。
そして、記憶部12Hに格納されていた水底22の領域の全域の水底形状情報が出力部12Iから出力され(ステップS30)、一連の測定動作が終了する。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、無人飛行体14に支持部材20を介して吊り下げた3次元形状測定部14Eを水中に位置させて水底22の3次元形状を測定し3次元形状情報を生成すると共に、測位部14Dにより無人飛行体14の位置を測位し測位情報として生成し、それら3次元形状情報および測位情報に基づいて水底形状情報生成部12Fにより水底22の形状を地球上の座標位置で示される水底形状情報として生成するようにした。
したがって、従来のようにソナーを設けた観測船が不要となるため、観測船と観測船を運行するための船舶免許資格者が必要となり、設備コスト、運用コストを低減する上で有利となる。
また、3次元形状測定部14Eを支持する無人飛行体14は、水面24から離れた水面24の上方に位置しているので、波浪の影響を受けることがなく、従来のように観測船の揺れを補正するための三次元位置センサやトータルステーションといった設備が不要となり、構成の簡素化、コストの低減を図る上で有利となる。
【0032】
また、本実施の形態では、3次元形状測定部14Eにスクリュー30を接続し、無人飛行体14に対する3次元形状測定部14Eの相対位置が所定範囲内となるようスクリュー30の回転を制御する。これにより、水中における3次元形状測定部14Eの位置を安定させ、水底形状の測定精度を向上させる上で有利となる。
無人飛行体14に対する3次元形状測定部14Eの相対位置を検出するにあたり、撮像部14Bで撮像された画像情報を用いれば、例えば遠隔制御用の撮像部14Bを流用してシステムコストを低減するとともに、3次元形状測定部14Eの位置を迅速かつ正確に把握する上で有利となる。
また、無人飛行体14に対する3次元形状測定部14Eの相対位置を検出するにあたり、3次元形状測定部14Eの位置を検知する測定部位置検知部を設ければ、3次元形状測定部14Eの位置を精度よく検出することができる。また、測定部位置検知部で検知された3次元形状測定部14Eの位置を水底形状情報の生成時に利用すれば、水底形状情報の精度をより向上させることができる。
また、作業者による遠隔制御により、すなわち無線回線を介して供給される制御信号に基づいてスクリュー30の回転を制御すれば、3次元形状測定部14Eの構成を簡素化することができ、システムコストを低減する上で有利となる。
また、スクリュー30を3次元形状測定部14Eの水深方向の延在軸に対して対称に複数設けることにより、3次元形状測定部14Eの移動方向をより細やかに調整することができ、3次元形状測定部14Eを所定範囲内に迅速に移動させる上で有利となる。
【0033】
なお、本実施の形態では、4つのスクリュー30を90度ずつ間隔を置いて取り付けることによって、水平方向の様々な角度の水流に対応できるようにした。すなわち、2つのスクリュー30を180度ずつ間隔を置いて取り付けた場合、スクリュー30同士をつなぐ直線と直交する方向からの水流に対応することができないので、4つのスクリュー30を配置するものとした。
一方、例えば3つのスクリュー30を120度ずつ間隔を置いて取り付けることによっても、4つのスクリュー30を配置するのと同様に様々な角度からの水流に対応することができる。
【0034】
また、例えば
図6に示すように、3次元形状測定部14Eの筐体下面にスクリュー30を設けてもよい。3次元形状測定部14Eの筐体側面のみならず、筐体下面にスクリュー30を設けることによって、水深方向の水流にも対応することができ、3次元形状測定部14Eの姿勢をより安定させる上で有利となる。なお、水深方向の水流には、水深が深い方向に向かう流れと水深が浅い方向に向かう流れとがあるが、流れの方向に応じてスクリュー30の回転方向を反転させることによって所望の方向への推進力を発生させることができる。
図6の例では、ソナーの超音波またはレーザー測定機のレーザー光の送受信部がある3次元形状測定部14Eの筐体下面の中央部を避けてスクリュー30を設けた場合を図示している。
【0035】
また、例えば
図7に示すように、スクリュー30を水深方向に対して所定角度(0度より大きくかつ90度未満)に傾けて設置してもよい。
図7の例では、所定角度θを45度としている。このように、スクリュー30を水深方向に対して傾けることによって、
図6と同様に水深方向の水流にも対応することができ、3次元形状測定部14Eの姿勢をより安定させる上で有利となる。
【0036】
また、上述した説明では、3次元形状測定部14Eが所定範囲から外れるまではスクリュー30を停止させておくものとしたが、スクリュー30の起動には一定の時間を要する。このため、例えば全てのスクリュー30を常時低速で回転させておき、3次元形状測定部14Eが所定範囲から外れた(または外れる可能性がある)場合に特定のスクリュー30の出力を上げるようにしてもよい。このようにすることで、急な水流の変化に迅速に対応することができ、水底形状の測定精度を向上させることができるとともに、測定をより効率的に実施することができる。
【0037】
また、水底形状情報生成部12Fを無人飛行体14に設け、水底形状情報生成部12Fで生成された水底形状情報を無線回線Nを介して無人飛行体14から離れた管理装置12へ送信するようにしてもよい。
しかしながら、本実施の形態のように、無人飛行体14から離れた管理装置12に水底形状情報生成部12Fを設け、水底形状情報生成部12Fによる水底形状情報の生成を、無線回線Nを介して供給される3次元形状情報および測位情報に基づいて行なうようにすると、無人飛行体14に水底形状情報生成部12Fを設ける場合に比較して、無人飛行体14の省電力化、軽量化を図れることから、無人飛行体14の飛行継続時間を確保でき、したがって、無人飛行体14の一回の飛行によってより広い範囲の水底22の3次元形状の測定を行なうことができ、測定の効率化を図る上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態では、3次元形状測定部14Eを、超音波26を水底22に照射すると共に、水底22からの反射波を受信し、受信波に基づいて3次元形状情報を生成するソナーを含んで構成したので、海、湖、河川などの水中の透明度の影響を受けることなく、正確な3次元形状情報を得る上で有利となり、水底形状情報生成部12Fにより得られる水底形状情報の精度を確保する上で有利となる。
【0039】
また、本実施の形態では、3次元形状測定部14Eを、レーザー光28を水底22に照射すると共に、水底22から反射された反射光を受信し、受信した反射光に基づいて3次元形状情報を生成するレーザー測定機を含んで構成した。
したがって、レーザー測定機が空中から水中に照射される場合に比較して、レーザー光28が空気(大気)と水面24との界面を通らないため、界面でレーザー光28が散乱して光量が低下することが抑制されるので、より深度の大きな水底22の水底形状情報を得る上で有利となる。
【0040】
なお、本実施の形態では、作業者が無人飛行体14を遠隔制御する場合について説明したが、前述したように、自動制御により無人飛行体14を予め定められた飛行コースを飛行させ、飛行コースに沿った水底22の水底形状情報を得るようにしてもよく、その場合は、省人化を図りつつ水底形状の測定を効率的に行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0041】
10 水底形状測定装置
12 管理装置
14 無人飛行体
12B 管理装置側通信部
12F 水底形状生成部
14A 飛行体側通信部
14B 撮像部
14D 測位部
14E 3次元形状測定部
14F スクリュー制御部
16 飛行体本体
20 支持部材
22 水底
26 超音波
28 レーザー光
30(30a~30b) スクリュー
N 無線回線
R 所定範囲