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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】無線モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 23/00 20060101AFI20230804BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230804BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20230804BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01Q23/00
H01Q1/38
H01Q1/40
H05K1/02 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019203435
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021078003
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000237606
【氏名又は名称】加賀FEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】三ケ田 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰治
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/231203(US,A1)
【文献】特開2015-139063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/201938(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/166686(US,A1)
【文献】国際公開第2007/000898(WO,A1)
【文献】特開2018-201248(JP,A)
【文献】特開2018-093013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 23/00
H01Q 1/38
H01Q 1/40
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面と反対の第2面を有する基板と、
前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に設けられ、高周波信号が入力または出力するアンテナと、
前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に設けられた電子回路と、
前記アンテナが設けられたアンテナ領域において、前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に平面視において互いに離れるように設けられ、各々の最大幅が前記高周波信号の空気中の波長の1/50倍以下である複数の金属層と、
を備える無線モジュール。
【請求項2】
前記複数の金属層の互いの最短距離は、前記高周波信号の空気中の波長の1/200倍以上である請求項1に記載の無線モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ領域における前記複数の金属層の占有率は0.05以上である請求項1または2に記載の無線モジュール。
【請求項4】
前記複数の金属層は、前記基板の一部を介し重なり、前記基板の少なくとも一部を貫通するビア配線により接続される第1金属層と第2金属層とを各々備える請求項1から3のいずれか一項に記載の無線モジュール。
【請求項5】
前記複数の金属層の少なくとも1つにおいて、前記ビア配線は、前記アンテナと前記電子回路との配列方向に複数設けられている請求項4に記載の無線モジュール。
【請求項6】
前記金属層における前記アンテナと前記電子回路との配列方向の幅は、前記金属層における前記配列方向に交差する方向の幅より大きい請求項1から5のいずれか一項に記載の無線モジュール。
【請求項7】
前記アンテナ領域に最も近い前記基板の辺と、前記アンテナ領域と、の間に前記電子回路は設けられていない請求項1から6のいずれか一項に記載の無線モジュール。
【請求項8】
前記複数の金属層は、前記基板内に設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の無線モジュール。
【請求項9】
前記複数の金属層の最大幅は各々0.1mm以上である請求項1から8のいずれか一項に記載の無線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線モジュールに関連し、例えばアンテナを有する無線モジュールに関連する。
【背景技術】
【0002】
基板にアンテナ領域と電子回路が設けられた無線モジュールにおいて、端子を基板のアンテナ領域を避けて設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-154059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板のアンテナ領域は熱応力等により湾曲しやすい。アンテナ領域における基板の下面に端子を設けると、実装基板上に無線モジュールを実装したときに端子と実装基板との接合不良が生じることがある。特許文献1のように、アンテナ領域を避けて端子を設けることで、基板が湾曲した場合にも端子と実装基板との接合不良を抑制できる。しかしながら、アンテナ領域に端子を設けない場合、無線モジュールと実装基板との接続の機械的な強度が低下する。また、アンテナ領域の基板が湾曲すると、アンテナと実装基板との距離が変化しアンテナの特性が変化してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の湾曲を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1面および前記第1面と反対の第2面を有する基板と、前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に設けられ、高周波信号が入力または出力するアンテナと、前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に設けられた電子回路と、前記アンテナが設けられたアンテナ領域において、前記基板内、前記第1面および前記第2面の少なくとも一部に平面視において互いに離れるように設けられ、各々の最大幅が前記高周波信号の空気中の波長の1/50倍以下である複数の金属層と、を備える無線モジュールである。
【0007】
上記構成において、前記複数の金属層の互いの最短距離は、前記高周波信号の空気中の波長の1/200倍以上である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記アンテナ領域における前記複数の金属層の占有率は0.05以上である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数の金属層は、前記基板の一部を介し重なり、前記基板の少なくとも一部を貫通するビア配線により接続される第1金属層と第2金属層とを各々備える構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の金属層の少なくとも1つにおいて、前記ビア配線は、前記アンテナと前記電子回路との配列方向に複数設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記金属層における前記アンテナと前記電子回路との配列方向の幅は、前記金属層における前記配列方向に交差する方向の幅より大きい構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記アンテナ領域に最も近い前記基板の辺と、前記アンテナ領域と、の間に前記電子回路は設けられていない構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記複数の金属層は、前記基板内に設けられている構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記複数の金属層の最大幅は各々0.1mm以上である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の湾曲を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1(a)は、実施例1に係る無線モジュールの平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)および図2(b)は、比較例1に係る無線モジュールの断面図である。
図3図3(a)から図3(c)は、シミュレーション1における基板の平面図である。
図4図4は、シミュレーション1における周波数に対するVSWRを示す図である。
図5図5(a)および図5(b)は、シミュレーション2におけるサンプルAおよびBの基板の平面図である。
図6図6は、サンプルAおよびBにおける周波数に対するVSWRを示す図である。
図7図7(a)および図7(b)は、シミュレーション2におけるサンプルCおよびDの基板の平面図である。
図8図8は、サンプルCおよびDにおける周波数に対するVSWRを示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、それぞれ実施例1の変形例1および2に係る無線モジュールの断面図である。
図10図10(a)から図10(c)は、それぞれ実施例1の変形例3から5に係る無線モジュールの断面図である。
図11図11(a)から図11(e)は、パターン24の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1(a)は、実施例1に係る無線モジュールの平面図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。図1(a)ではシールド層の図示を省略している。基板10の法線方向をZ方向、アンテナ16と電子回路22の配列方向(基板10の長辺方向)をX方向、X方向に直交する方向をY方向とする。
【0019】
図1(a)および図1(b)に示すように、基板10の上面にアンテナ16が形成されている。基板10の上面に電子部品17および18が搭載されている。電子部品17は、例えばチップ抵抗、チップコンデンサおよびチップインダクタ等のディスクリート部品である。電子部品18は、例えば、集積回路等の電子部品である。アンテナ16が設けられた領域は、平面視において図1(a)の基板10の左側の辺から右側の辺に向かう途中までの領域であり、ここではアンテナ領域50と呼ぶ。電子部品17および18が設けられた領域は、アンテナ領域50に隣接し、アンテナ領域50から図1(a)の基板10の右側までの領域であり、ここでは回路領域52と呼ぶ。
【0020】
基板10は、例えば複数の絶縁層11a~11cが積層された多層基板である。絶縁層11a~11cとしては、例えばガラスエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂等の樹脂層または焼結セラミック等のセラミック層である。樹脂層には補強用の繊維またはフィラーが含まれていてもよい。基板10の厚さT0は例えば0.1mmから1mmである。絶縁層11aから11cの厚さT1~T3は例えば0.1mmから0.5mmである。最下層の絶縁層11aの下面には金属層12aが設けられている。金属層12aは、例えば外部入力、外部出力、電源端子等の端子15である。端子15aは、実装基板と機械的に半田付けするためのもので、基板の反り防止を行うものである。
【0021】
最下層の絶縁層11aの上面から、内層の絶縁層11bを経て、最上層の絶縁層11cの上面には、それぞれ内層の金属層12bから最表面の金属層12dが設けられている。最下層、内層および最上層の金属層12a~12dは、一般には導電パターンまたは導電路と言われ、電極、電極と一体の配線などからなる。ビア配線13aから13cはそれぞれ絶縁層11aから11cを貫通する。ビア配線13aは、最下層の金属層12aと内層の金属層12bとを電気的に接続し、ビア配線13bは、内層の金属層12bと内層の金属層12cとを電気的に接続し、ビア配線13cは、内層の金属層12cと最上層の金属層12dとを電気的に接続する。金属層12aから12dおよびビア配線13aから13cは、例えば銅、金、銀またはアルミニウムを主材料とする。
【0022】
アンテナ領域50において、アンテナ16は、回路領域52の表層の金属層12dと同一工程で形成される。内層の金属層12bおよび内層の金属層12cとビア配線13cとは、基板10を補強するためのパターン24として形成される。
【0023】
この補強用のパターン24は、図1(b)では、矩形のタイル状の二枚の金属層12bと12cが内層の絶縁層11bを挟んで設けられ、図11(b)の如く、金属層12bと12cは2つのビア配線13bで機械的、物理的に一体化されている。この一体物は、図3(b)の様に、アンテナ領域50を、分離エリアを除いて実質全域に設けられている。そのため、基板10の反りをこの一体物で抑えている。しかしながら、この一体物の配置の仕方は、後述のように、アンテナ特性のシフトを考慮して配置される。
【0024】
なお、ビア配線13bは、絶縁層11bをレーザ光を用い加工してビア孔を形成し、ビア孔内をめっき金属で充填することで形成する。ビア配線13bは、ビア孔の側壁を被覆しビア孔に完全に充填されていなくてもよいし、ビア孔に完全に充填されていてもよい。
【0025】
回路領域52において、最上層の金属層12dは、電子部品17および18を搭載するパッド(電極)および配線などの導電パターンとして機能する。内層の金属層12bから最上層の12dおよびビア配線13aから13cは、電子部品17および18を電気的に接続する配線、つまり導電路として機能する。電子部品17、18、回路領域52に設けられた内層の金属層12bから最上層の12dおよびビア配線13aから13cは、アンテナ16と接続される電子回路22を形成する。電子部品17および18を含む回路領域52を覆うようにシールド層20が設けられている。シールド層20は金属板(CAN)であり、半田等の接合層により基板10に接合されている。シールド層20内は空隙19である。シールド層20により、電子回路22から発生するEMI(Electric Magnetic Interference)を抑制できる。
【0026】
電子回路22は、例えば送信回路、受信回路、電源回路および/またはインターフェース回路を含む。送信回路は、高周波信号をアンテナ16に出力する。受信回路は、アンテナ16に入力した高周波信号を受ける。電源回路は、送信回路、受信回路およびインターフェース回路に電源電圧を供給する。インターフェース回路は、送信回路に入力する信号および受信回路から出力する信号を外部に入出力する回路である。アンテナ16が送受信する電波(高周波信号)の周波数は、例えば0.8GHzから5GHzである。例えば無線モジュールは、周波数が2.4GHzのBluetooth(登録商標)モジュールである。
【0027】
[比較例1]
図2(a)および図2(b)は、比較例1に係る無線モジュールの断面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、実装基板30上に比較例1の無線モジュールが搭載されている。無線モジュールには補強用のパターン24が設けられていない。その他の無線モジュールの構成は実施例1と同じである。実装基板30上にパッド32が設けられている。基板10の下面の端子15とパッド32とが半田等の接合層(不図示)により接合されている。
【0029】
図2(b)に示すように、実装基板30に無線モジュールを搭載するときに、リフローのため加熱すると基板10のアンテナ領域50が反ることがある。これは、回路領域52では、電子部品17、18および金属層12aから12dの密度が高いのに比べ、アンテナ領域50では、電子部品17および18が搭載されておらず、金属層12aから12dおよびビア配線13aから13cの密度が低いためである。アンテナ領域50の基板10は、リフロー以外の熱処理および/または他の要因で湾曲することがある。アンテナ領域50の基板10が湾曲すると、アンテナ領域50における端子15とパッド32との接合不良が生じ易くなる。アンテナ領域50に端子15を設けないことも考えられる。しかし、回路領域52にのみ端子15を設けると、実装基板30と基板10との接合強度が小さくなる。また、アンテナ領域50の基板10が湾曲するとアンテナ16と実装基板30との距離が変化し、アンテナ16の特性が変化してしまう可能性がある。
【0030】
実施例1では、アンテナ領域50の金属層12aから12dの少なくとも1層を用い補強用のパターン24を設けることで、基板10の湾曲を抑制できる。
【0031】
[シミュレーション1]
アンテナ領域50に金属層12aから12dを設けると、アンテナ16の特性が劣化する可能性がある。そこで、補強用のパターン24の大きさを変えアンテナ16の特性をシミュレーションした。
【0032】
図3(a)から図3(c)は、シミュレーション1における基板の平面図である。図3(a)は、絶縁層11cの上面を示す平面図、図3(b)は、絶縁層11aおよび11bの上面を示す平面図、図3(c)は、絶縁層11aの下面を上方から透視した平面図である。
【0033】
図3(a)に示すように、絶縁層11cの上面のアンテナ領域50には、アンテナ16が設けられている。アンテナ16のパターンの幅W1は0.5mmである。アンテナ16の長さは24.6mmである。アンテナ領域50の大きさD1×D2は、9.6mm×8.0mmである。回路領域52では、最上層の絶縁層11c上に形成された金属層12dがアンテナ領域50よりも配線密度が高く形成されているため、回路領域52を金属層12dで示した。
【0034】
図3(b)に示すように、最下層の絶縁層11aおよび内層の絶縁層11bの上面、つまりアンテナ領域50の基板10の内層には、平面形状が正方形のパターン24が複数配列されている。なお、回路領域52では、金属層12bおよび12cがアンテナ領域50よりも配線密度が高く形成されているため、回路領域52を金属層12bおよび12cで示した。
【0035】
図3(c)に示すように、絶縁層11aの下面のアンテナ領域50には金属層12aは形成されていない。回路領域52では、金属層12aがアンテナ領域50よりも配線密度が高く形成されているため、回路領域52を金属層12aで示した。
【0036】
金属層12aから12dは、厚さが35μmの銅層(銅箔)とした。絶縁層11a、11bおよび11cはそれぞれ厚さT1が100μm、厚さT2が200μmおよび厚さT3が100μmのFR-4(Flame Retardant Type 4)とした。
【0037】
図3(b)に示すように、パターン24の平面形状を正方形とし、正方形の辺の長さをD3、隣接するパターン24の中心間の距離をD4、隣接するパターン24の間の距離をD5とする。距離D4を1.5mmとした。パターン24を図3(b)のアンテナ領域50に敷き詰めた。D3が0mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.2mmおよび1.3mmにおける電圧定在波比VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)をシミュレーションした。アンテナ領域50の面積に対するアンテナ領域50内のパターン24の合計の面積をパターン24の占有率とすると、占有率はおおよそ(D3×D3)/(D4×D4)である。上記D3のときの占有率はそれぞれ0、0.018、0.071、0.16、0.28、0.44、0.64および0.75である。D3=0mmのパターン24のないサンプルをサンプル0とする。
【0038】
図4は、シミュレーション1における周波数に対する電圧定在波比(VSWR)を示す図である。VSWRは送信回路もしくは受信回路とのインピーダンス整合を示す指標で、1のときに完全に整合が取れ損失が無い状態となるので、使用する周波数においてできるだけVSWRが小さいことが望ましい。図4に示すように、D3が0mmのサンプル0のとき周波数が2.5GHzにおいてVSWRが極小となるようにアンテナ16が設計されている。D3が大きくなり、D5が小さくなると、VSWRが極小となる周波数は低周波数側に移動する。また、VSWRの極小値が大きくなる。周波数が2.5GHzの電磁波の空気中の波長は約120mmであり、D3が空気中の波長の1/100程度であればサンプル0からのVSWRの極小値の増加は小さい。
【0039】
[シミュレーション2]
シミュレーション1では、D3とともにパターン24の占有率も変化させている。そこで、占有率を一定としたシミュレーションを行った。
【0040】
図5(a)および図5(b)は、シミュレーション2におけるサンプルAおよびBの基板の平面図であり、絶縁層11aおよび11bの上面を示す平面図である。
【0041】
図5(a)に示すように、サンプルAではパターン24は正方形であり、1辺の長さをD3とし、隣接するパターン24の間隔をD5とする。D3=D5=0.75mmであり、占有率は0.25である。
【0042】
図5(b)に示すように、サンプルBではパターン24は直線状であり、幅をD3´とし、パターン24の間隔をD5´とする。D3´=0.75mm、D5´=2.25mmであり、占有率は0.25である。パターン24の延伸方向はアンテナ16と電子回路22のX方向である。その他のシミュレーション条件はシミュレーション1と同じである。
【0043】
図6は、サンプルAおよびBにおける周波数に対するVSWRを示す図である。図6に示すように、サンプルAでは、サンプル0(パターン24を設けない)に比べVSWRの変化は小さく、極小値の増加は小さい。サンプルBでは、サンプル0に比べVSWRが大きく変化し、極小値が大きい。
【0044】
図5(a)および図5(b)のようにパターン24が長い長方形(サンプルB)は、電磁波の誘導によりパターン24に電流が流れ、その損失はサンプルAから比べると大きい。一方サンプルAは、パターン24が正方形で、その一辺はサンプルBの長側辺よりも短くなっている。よって、このサンプルAのパターン24では、サンプルBから比べると誘導による電流は少なく、損失が少なくなるため、補強用パターンとして好適である。なお、図7(a)および図7(b)でも同様のことが言える。
【0045】
図7(a)および図7(b)は、シミュレーション2におけるサンプルCおよびDの基板の平面図であり、絶縁層11aおよび11bの上面を示す平面図である。
【0046】
図7(a)に示すように、サンプルCではパターン24は正方形であり、1辺の長さをD3とし、隣接するパターン24の間隔をD5とする。D3=D5=0.5mmであり、占有率は0.25である。
【0047】
図7(b)に示すように、サンプルDではパターン24は直線状であり、幅をD3´とし、パターン24の間隔をD5´とする。D3´=0.5mm、D5´=1.5mmであり、占有率は0.25である。パターン24の延伸方向はY方向である。
【0048】
図8は、サンプルCおよびDにおける周波数に対するVSWRを示す図である。図8に示すように、サンプルCでは、サンプル0に比べVSWRの変化は小さい。サンプルDでは、サンプル0に比べVSWRが大きく変化している。
【0049】
シミュレーション2のサンプルAとBとの比較、サンプルCとDとの比較から、占有率は0.25と同じでもパターン24が大きいと、VSWRの変化が大きくなる。また、サンプルAとCとの比較では同じ占有率でもD3の小さいサンプルCはサンプルAよりVSWRの変化が小さい。このように、パターン24に起因するアンテナ特性の劣化は、占有率ではなく、パターン24の大きさに依存することがわかる。
【0050】
アンテナ16が放射する電波の磁界成分によりパターン24内に渦電流が発生すると、アンテナ16から放射されたエネルギーの一部が熱に変換されてしまう。これにより、アンテナ16の放射効率が低下する。パターン24が大きいと、渦電流が生成されるが、パターン24が高周波信号の波長に対し十分に小さいと渦電流は生成されにくく、アンテナ16の放射効率が低下しないと考えられる。
【0051】
シミュレーション1および2のように、パターン24によるアンテナ16の特性への影響を小さくするためには、パターン24の最大幅は、アンテナ16が送受信する高周波信号の空気中の波長の1/50以下が好ましく、1/100以下がより好ましく、1/200以下がさらに好ましい。パターン24の幅が小さいと基板10の補強パターンとして機能しにくくなる。このため、パターン24の最大幅は波長の1/10000以上が好ましく、1/1000以上がより好ましい。
【0052】
よって、パターン24の幅(矩形の幅または直径)の上限は、λ×1/50程度である。また、下限はビア配線13a~13cの加工性である程度決まる。一般にはビア配線13a~13cの直径を0.05mm~0.1mm程度とすることで、ビア配線13a~13cと金属層12a~12dとのコンタクト性を確保できる。図11(a)の場合、パターン24の最大幅(矩形の幅または直径)の下限は、ビア配線13a~13cの約2倍の0.1mm~0.2mm程度となる。
【0053】
隣接するパターン24間の最小間隔が小さすぎると、高周波信号からみて隣接するパターン24が実質的に1つのパターン24となる。これにより、渦電流が増大し、アンテナ16の放射効率が低下する。よって、隣接するパターン24の最小間隔は、アンテナ16が送受信する高周波信号の空気中の波長の1/200以上が好ましく、1/100以上がより好ましく、1/50以上がさらに好ましい。
【0054】
パターン24の占有率が小さいと、パターン24が補強パターンとして機能しない。よって、占有率は0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上がさらに好ましい。パターン24の占有率が大きすぎると、アンテナ16の特性に影響する。よって、占有率は0.9以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
【0055】
パターン24の平面形状として正方形を例に説明したが、パターン24の平面形状は、長方形、三角形等の多角形、円形または楕円形等任意に設定できる。
【0056】
シミュレーション1および2では、高周波信号の波長として空気中の波長を用いた。シミュレーション1および2の結果は、基板10の誘電率および厚さにより変わることが考えられる。しかしながら、基板10に用いられる誘電体の比誘電率は例えば3から6であり、大きくは変わらない。基板10の厚さは例えば0.1mmから1mmである。これらの範囲で基板10の比誘電率および厚さが変化してもシミュレーション1および2の結果にはあまり影響しない。よって、シミュレーション1および2の結果は無線モジュールに一般化できる。
【0057】
[実施例1の変形例1]
図9(a)は、実施例1の変形例1に係る無線モジュールの断面図である。図9(a)に示すように、アンテナ16、電子部品17および18を覆うように樹脂封止層26が設けられている。回路領域52の樹脂封止層26を覆うようにシールド層20が設けられている。樹脂封止層26は例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。シールド層20は例えば樹脂封止層26の表面に形成されためっき層またはスパッタ層である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0058】
実施例1の変形例1のように、樹脂封止層26は、基板10上に電子部品17および18を封止するように設けられている。樹脂封止層26はアンテナ領域50に設けられておらず、アンテナ16を封止しなくてもよい。
【0059】
[実施例1の変形例2]
図9(b)は、実施例1の変形例2に係る無線モジュールの断面図である。図9(b)に示すように、パターン24は、基板10の下面に設けられている。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0060】
[実施例1の変形例3]
図10(a)は、実施例1の変形例3に係る無線モジュールの断面図である。図10(a)に示すように、アンテナ16は、基板10の下面に設けられている。樹脂封止層26は電子部品17および18を封止するように基板10上に設けられている。シールド層20は回路領域52の樹脂封止層26を覆うように設けられている。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0061】
[実施例1の変形例4]
図10(b)は、実施例1の変形例4に係る無線モジュールの断面図である。図10(b)に示すように、補強用のパターン24は、絶縁層11bおよび11cの上面に設けられている。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0062】
[実施例1の変形例5]
図10(c)は、実施例1の変形例5に係る無線モジュールの断面図である。図10(c)に示すように、補強用のパターン24は、基板10の上面(第1面)に設けられている。その他の構成は実施例1の変形例3と同じであり説明を省略する。
【0063】
実施例1の変形例3から5のように、アンテナ16は基板10の下面(第2面)に設けられていてもよい。アンテナ16は基板10の内部に設けられていてもよい。
【0064】
実施例1のように、樹脂封止層26が設けられていなくてもよいし、実施例1の変形例1から5のように、樹脂封止層26が設けられていてもよい。
【0065】
実施例1およびその変形例のように、補強用のパターン24は、絶縁層11aから11cの上面および下面の少なくとも1つの面に設けられていればよい。特に、パターン24は、基板10の内層に設けられる。電子回路22は、基板10の表面および/または内層に設けられる。
【0066】
図11(a)から図11(e)は、補強用のパターン24の例を示す平面図である。補強用のパターン24の平面形状が矩形の場合の例を示している。
【0067】
図11(a)に示すように、補強用のパターン24は正方形であり、中央に一つビア配線13が設けられている。
【0068】
続いて、図11(b)に示すように、補強用のパターン24の平面形状は正方形である。ビア配線13はパターン24のX方向の両側に設けられており、Y方向の両側には設けられていない。
【0069】
図11(c)に示すように、補強用のパターン24の平面形状は正方形である。ビア配線13は、パターン24のうちX方向の両側とY方向の両側との両方に設けられている。
【0070】
図11(d)に示すように、補強用のパターン24の平面形状はX方向が長辺の長方形である。ビア配線13はパターン24のうちX方向の両側に設けられており、Y方向の両側には設けられていない。
【0071】
図11(e)に示すように、補強用のパターン24の平面形状はX方向が長辺の長方形である。ビア配線13は、パターン24のうちX方向の両側とY方向の両側との両方に設けられている。
【0072】
図2(a)および図2(b)に示すように、基板10はX方向において湾曲しやすい。よって、図11(a)から図11(e)のように、ビア配線13をパターン24のうち図2(a)および図2(b)のX方向(基板10の長辺方向)の両側に設けることで、基板10の湾曲をより抑制できる。また、ビア配線13をX方向に沿って任意の位置に複数配置することで、基板10の湾曲をより抑制できる。図11(d)および図11(e)のように、X方向のパターン24の幅をY方向のパターン24の幅より大きくする。これにより、基板10の湾曲をより抑制できる。X方向のパターン24の幅はY方向のパターン24の幅の1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0073】
図3(a)から図4において説明した電流損失を考えると、パターン24の平面形状は図11(a)~図11(c)のように正方形(さらには面積が小さい)の方が好ましい。強度を考えた場合、図11(c)のように四辺のそれぞれに少なくとも1つのビア配線13が設けられることが好ましい。
【0074】
また、図2(a)および図2(b)のX方向と図11(a)から図11(e)のX方向が一致している状態において、X方向の第1側辺が空気中の波長の1/50倍以下の条件を満たし、Y方向の第2側辺は、第1側辺の長さを超えないことが好ましい。
【0075】
パターン24において、ビア配線13が貫通する絶縁層11bは複数の絶縁層11aから11cのうち最も厚いことが好ましい。これにより、基板の湾曲をより抑制できる。絶縁層11bの厚さは、絶縁層11b以外の絶縁層11aおよび11cの最も厚い厚さの1.2倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。
【0076】
実施例1およびその変形例によれば、アンテナ16は、基板10内、基板10の上面(第1面)および/または下面(第1面と反対の第2面)に設けられ、高周波信号が入力および/または出力する。電子回路22は、基板10内、基板10の上面および/または下面に設けられている。複数のパターン24(金属層12aから12d)は、アンテナ領域50における基板10内、基板10の上面および/または下面に平面視において互いに離れるように設けられ、各々の最大幅が高周波信号の空気中の波長の1/50倍以下である。
【0077】
これにより、複数のパターン24が基板10を補強するため、図2(b)のような基板10のアンテナ領域50における湾曲を抑制できる。また、パターン24の最大幅を高周波信号の空気中の波長の1/50倍以下とする。これにより、パターン24に起因したアンテナ特性の劣化を抑制できる。
【0078】
なお、パターン24の最大幅は、例えばパターン24の平面形状が正方形および長方形の場合には対角線の長さ、パターン24の平面形状が円の場合には直径、楕円形の場合には長軸の長さとなる。パターン24の形状がその他の場合にも同様である。
【0079】
複数のパターン24の平面視における互いの最短距離は、高周波信号の空気中の波長の1/200倍以上である。これにより、パターン24に起因したアンテナ特性の劣化を抑制できる。
【0080】
アンテナ領域50における複数のパターン24の占有率は0.05以上である。これにより、パターン24は基板10を補強する。よって、基板10の湾曲を抑制できる。
【0081】
パターン24は、平面視において基板10の一部(例えば絶縁層11aから11cの少なくとも1層)を介し重なり、ビア配線13bにより接続される金属層12b(第1金属層)と金属層12c(第2金属層)とを各々備える。このように、ビア配線13bで接続された複数の金属層12aから12dによりパターン24を形成する。これにより、例えば実施例1の図1(b)では、パターン24を形成する金属層12b、12cおよびビア配線13bがブロック構造を形成することにより基板10が補強される。よって、基板10の湾曲をより抑制できる。
【0082】
複数のパターン24の少なくとも1つにおいて、ビア配線13bはX方向(アンテナ16と電子回路22の配列方向)に複数設けられている。図2(b)のように、基板10はX方向において湾曲しやすい。よって、X方向に配列した複数のビア配線13bにより、基板10の湾曲をより抑制できる。
【0083】
複数のパターン24の少なくとも1つにおいて、X方向におけるパターン24の幅は、Y方向(配列方向に交差する方向)におけるパターン24の幅より大きい。図2(b)のように、基板10はX方向において湾曲しやすい。よって、パターン24をX方向に長く形成することで、基板10の湾曲をより抑制できる。パターン24のX方向の幅はY方向の幅の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
【0084】
平面視におけるアンテナ領域50に最も近い基板10の辺と、アンテナ領域50との間に電子回路22は設けられていない。このような場合、図2のように、アンテナ領域50における基板10が湾曲しやすい。よって、パターン24を設けることが好ましい。
【0085】
パターン24は、基板10内に設けることが好ましい。これにより、パターン24とアンテナ16との干渉をより抑制できる。また、基板10の厚み方向のバランスがよくなり、基板10の湾曲をより抑制できる。
【0086】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 基板
11a-11c 絶縁層
12a-12d 金属層
13、13a-13c ビア配線
15 端子
16 アンテナ
17、18 電子部品
19 空隙
20 シールド層
22 電子回路
24 パターン
26 樹脂封止層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11