(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート、および、コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20230804BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C08G18/80 070
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2019216931
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拡之
(72)【発明者】
【氏名】矢木 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 敦浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅隆
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208050(JP,A)
【文献】特開2014-091769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、
前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、
前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤
であり、
前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、さらに、2価アルコールにより変性されており、
前記2価アルコールの割合が、前記キシリレンジイソシアネート誘導体の固形分100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下である
ことを特徴とする、ブロックイソシアネート。
【請求項2】
請求項
1に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、マクロポリオールを含む主剤とを含有することを特徴とする、コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックイソシアネート、および、コーティング剤に関し、詳しくは、ブロックイソシアネート、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックイソシアネートは、一般的には、加熱によりブロック剤が解離し、イソシアネート基が再生するイソシアネートであり、貯蔵安定性、加工性に優れるため、塗料、接着剤など、主剤と硬化剤とを使用時に配合する二液硬化型ポリウレタン樹脂の硬化剤として使用されている。また、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とブロック剤とを反応させることにより得られる。
【0003】
このようなブロックイソシアネートにおけるポリイソシアネート化合物として、キシリレンジイソシアネート誘導体を用いることが知られている。より具体的には、例えば、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体と、ブロック剤としての1,1,3,3-テトラメチルグアニジンおよび3,5-ジメチルピラゾールとを反応させて得られるブロックイソシアネートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ブロックイソシアネートは、用途に応じて、優れた貯蔵安定性が要求される。しかしながら、上記のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性が十分ではない場合がある。
【0006】
本発明は、貯蔵安定性に優れるブロックイソシアネート、および、そのブロックイソシアネートを含有するコーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートであって、前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、前記ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有する、ブロックイソシアネートを含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記キシリレンジイソシアネート誘導体は、さらに、2価アルコールにより変性されており、前記2価アルコールの割合が、前記キシリレンジイソシアネート誘導体の固形分100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下である、上記[1]に記載のブロックイソシアネートを含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、マクロポリオールを含む主剤とを含有することを特徴とする、コーティング剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブロックイソシアネートでは、キシリレンジイソシアネート誘導体が、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、そのキシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、特定のブロック剤によりブロックされている。
【0011】
そのため、本発明のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性に優れる。
【0012】
本発明のコーティング剤は、本発明のブロックイソシアネートを含有するため、貯蔵安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のブロックイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされている。
【0014】
換言すれば、ブロックイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との反応生成物である。
【0015】
キシリレンジイソシアネート誘導体は、イソシアネート基を含有するポリイソシアネート組成物である。キシリレンジイソシアネート誘導体は、主成分として(キシリレンジイソシアネート誘導体の総量に対して90質量%以上の割合で)、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体からなる群から選択される少なくとも1種を含有している。
【0016】
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、分子中に1つ以上のアロファネート基を含有する、キシリレンジイソシアネートのアロファネート多分子体である。アロファネート多分子体としては、例えば、アロファネート2分子体、アロファネート3分子体などが挙げられる。
【0017】
なお、アロファネートn分子体(n:自然数)とは、n分子(n:自然数)のキシリレンジイソシアネートがアロファネート基を介して結合した誘導体を示す。
【0018】
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、例えば、キシリレンジイソシアネートと、1~2価アルコールとをウレタン化反応させた後、公知のアロファネート化触媒の存在下でアロファネート化反応させることにより、得ることができる。
【0019】
より具体的には、この方法では、まず、キシリレンジイソシアネートとアルコールとをウレタン化反応させる。
【0020】
キシリレンジイソシアネートとしては、1,2-キシリレンジイソシアネート(o-キシリレンジイソシアネート(o-XDI))、1,3-キシリレンジイソシアネート(m-キシリレンジイソシアネート(m-XDI))、1,4-キシリレンジイソシアネート(p-キシリレンジイソシアネート(p-XDI))が、構造異性体として挙げられる。
【0021】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0022】
キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
1~2価アルコールは、1分子中に水酸基を1~2つ有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。1~2価アルコールとしては、1価アルコールおよび2価アルコール(後述)が挙げられ、好ましくは、1価アルコールが挙げられる。
【0024】
1価アルコールは、1分子中に水酸基を1つ有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。
【0025】
1価アルコールとしては、例えば、1価の脂肪族アルコール、1価の芳香族アルコールなどが挙げられ、好ましくは、1価の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0026】
1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、直鎖状1価脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなどの炭素数1~20の直鎖状1価脂肪族アルコールなど)、例えば、分岐鎖状1価脂肪族アルコール(例えば、イソプロパノール、イソブタノール(イソブチルアルコール)、sec-ブタノール、tert-ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2-ヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノールなどの炭素数1~20の分岐鎖状1価脂肪族アルコールなど)などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0027】
これら1~2価アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
1~2価アルコールとして、好ましくは、1価の脂肪族アルコール、より好ましくは、分岐状の1価脂肪族アルコール、さらに好ましくは、炭素数3~6の分岐状1価脂肪族アルコール、とりわけ好ましくは、イソブタノールが挙げられる。
【0029】
ウレタン化反応において、キシリレンジイソシアネートと1~2価アルコールとの配合割合および反応条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0030】
次いで、この方法では、ウレタン化反応により得られる反応液に、公知のアロファネート化触媒(ビスマス触媒など)を、適宜の割合で配合し、キシリレンジイソシアネートと1~2価アルコールとの反応生成物を、アロファネート化反応させる。
【0031】
アロファネート化反応において、アロファネート化触媒の配合割合および反応条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜選択される。
【0032】
また、アロファネート化反応では、任意のタイミングで、触媒失活剤(スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミドなど)など)を添加し、反応を停止させこともできる。
【0033】
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を得ることができる。
【0034】
また、上記のウレタン化反応およびアロファネート化反応では、必要により、公知の有機溶剤、酸化防止剤、助触媒(例えば、有機亜リン酸エステルなど)などを、適宜の割合で添加することができる。
【0035】
また、この方法では、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のキシリレンジイソシアネート(さらに、必要に応じて、触媒、反応溶剤および/または触媒失活剤など)を、公知の方法(例えば、薄膜蒸留など)で除去することができる。
【0036】
これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を含むキシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)を、得ることができる。
【0037】
キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体は、分子中に1つ以上のビウレット基を含有するキシリレンジイソシアネートの2分子体である。
【0038】
キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体は、例えば、キシリレンジイソシアネートと、ビウレット変性剤とを、ビウレット化反応させることにより、得ることができる。
【0039】
キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、上記のキシリレンジイソシアネートが挙げられ、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
ビウレット変性剤としては、例えば、水、第3級アルコール、第2級アミンなどが挙げられる。
【0041】
第3級アルコールとしては、例えば、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール、2-エチル-2-ブタノール、トリエチルカルビノール、1,1-ジメチルベンジルアルコール、1-メチル-1-フェニルベンジルアルコール、ジメチルフェニルカルビノール、ジフェニルメチルカルビノール、トリフェニルカルビノール、3-エチル-5,5-ジメチル3-ヘキサノールなどの1価の第3級アルコールが挙げられる。
【0042】
これら第3級アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
第2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクタデシルアミン、N-メチルエチルアミン、N-エチルプロピルアミンなどのジアルキルアミンなどが挙げられる。
【0044】
これら第2級アミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0045】
また、ビウレット変性剤としては、上記の他、さらに、蟻酸、硫化水素なども挙げられる。
【0046】
これらビウレット変性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0047】
ビウレット変性剤として、好ましくは、水が挙げられる。
【0048】
ビウレット化反応において、キシリレンジイソシアネートとビウレット変性剤との配合割合および反応条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0049】
また、ビウレット化反応では、必要により、公知のビウレット化触媒、公知の有機溶剤、酸化防止剤、助触媒などを、適宜の割合で添加することができる。
【0050】
これにより、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体を、得ることができる。
【0051】
また、この方法では、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のキシリレンジイソシアネート(さらに、必要に応じて、触媒、反応溶剤および/または触媒失活剤など)を、公知の方法(例えば、薄膜蒸留など)で除去することができる。
【0052】
これにより、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体を含むキシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)を、得ることができる。
【0053】
キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体は、3価アルコールにキシリレンジイソシアネートが付加した付加体(アダクト体)である。
【0054】
キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体は、例えば、キシリレンジイソシアネートと、3価アルコールとを、ウレタン化反応(アダクト反応)させることにより、得ることができる。
【0055】
キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、上記のキシリレンジイソシアネートが挙げられ、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0056】
3価アルコールは、1分子中に水酸基を3つ有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。
【0057】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの炭素数3~20の3価アルコールなどが挙げられる。これら3価アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0058】
3価アルコールとして、好ましくは、炭素数3~20の3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0059】
ウレタン化反応(アダクト反応)において、キシリレンジイソシアネートと3価アルコールとの配合割合および反応条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0060】
また、ウレタン化反応(アダクト反応)では、必要により、公知のウレタン化触媒、公知の有機溶剤、酸化防止剤、助触媒などを、適宜の割合で添加することができる。
【0061】
これにより、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体を、得ることができる。
【0062】
また、この方法では、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のキシリレンジイソシアネート(さらに、必要に応じて、触媒、反応溶剤および/または触媒失活剤など)を、公知の方法(例えば、薄膜蒸留など)で除去することができる。
【0063】
これにより、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体を含むキシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)を、得ることができる。
【0064】
キシリレンジイソシアネート誘導体において、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
すなわち、キシリレンジイソシアネート誘導体は、上記アロファネート誘導体、上記ビウレット誘導体および上記3価アルコール付加体のうち、2種類以上を含有することができる。
【0066】
製造容易性の観点から、好ましくは、上記アロファネート誘導体、上記ビウレット誘導体および上記3価アルコール付加体のうち、いずれか1種類のみを含有する。
【0067】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)は、さらに、不可避的不純物として、その他の誘導体(アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、および、3価アルコール付加体を除く誘導体)を含有することができる。
【0068】
すなわち、キシリレンジイソシアネート誘導体の製造条件によって、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体などが、副生成物として得られる場合がある。
【0069】
このような場合、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)において、その他の誘導体(アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、および、3価アルコール付加体を除く誘導体)の質量割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲において、適宜設定される。例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体(ポリイソシアネート組成物)の総量に対して、その他の誘導体(アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、および、3価アルコール付加体を除く誘導体)の質量割合は、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0070】
また、この方法では、キシリレンジイソシアネート誘導体に、必要により、公知の有機溶剤を適宜の割合で添加して、固形分濃度を調整することができる。
【0071】
このような場合において、その固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、100質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0072】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体は、好ましくは、さらに、2価アルコールにより変性される。
【0073】
2価アルコールは、1分子中に水酸基を2つ有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。
【0074】
2価アルコールとしては、炭素数1~20の2価アルコールなどが挙げられ、より具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール(1,4-ブチレングリコール、1,4-BG)、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタンなどの炭素数2~20のアルカンジオール、例えば、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2~20のエーテルジオール、例えば、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0075】
これら2価アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0076】
2価アルコールとして、好ましくは、炭素数1~20の2価アルコール、より好ましくは、炭素数2~20のエーテルジオール、さらに好ましくは、炭素数2~8のエーテルジオール、とりわけ好ましくは、1,4-ブタンジオール(1,4-ブチレングリコール、1,4-BG)、ジエチレングリコール(DEG)が挙げられる。
【0077】
そして、2価アルコールがキシリレンジイソシアネート誘導体に添加され、ウレタン化反応する。これにより、キシリレンジイソシアネート誘導体が2価アルコールにより変性される。
【0078】
2価アルコールの割合は、キシリレンジイソシアネート誘導体の固形分100質量部に対して、貯蔵安定性の向上を図る観点から、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、また、高粘度化を抑制し、ブロックイソシアネートの製造容易性の向上を図る観点から、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0079】
また、2価アルコールの水酸基に対する、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)は、イソシアネート基過剰であり、例えば、5以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、15以上、さらに好ましくは、20以上であり、例えば、1000以下、好ましくは、100以下、より好ましくは、50以下である。
【0080】
また、キシリレンジイソシアネート誘導体が、2価アルコールにより変性される場合、それらの反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において、反応温度が例えば、室温(例えば、25℃)以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、60℃以上であり、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下、より好ましくは、80℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.05時間以上、好ましくは、0.2時間以上、より好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、3時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下、より好ましくは、4時間以下である。
【0081】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類、有機金属化合物、カリウム塩などの公知のウレタン化触媒を、適宜の割合で添加してもよい。好ましくは、無触媒でウレタン化反応させる。
【0082】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
なお、ウレタン化触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0084】
このような反応により、キシリレンジイソシアネート誘導体が2価アルコールで変性される。
【0085】
キシリレンジイソシアネート誘導体が2価アルコールで変性されていれば、より優れた貯蔵安定性を得ることができる。
【0086】
そして、ブロックイソシアネートは、上記のキシリレンジイソシアネート誘導体(好ましくは、2価アルコールで変性されたキシリレンジイソシアネート誘導体(以下同じ))とブロック剤とを反応させることにより得られる。
【0087】
本発明において、ブロック剤は、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有する。
【0088】
ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール(DMP、解離温度120℃)、3,5-ジイソプロピルピラゾール、3,5-ジフェニルピラゾール、3,5-ジ-t-ブチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)が挙げられる。
【0089】
イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール(IMZ、解離温度100℃)、ベンズイミダゾール(解離温度120℃)、2-メチルイミダゾール(解離温度70℃)、4-メチルイミダゾール(解離温度100℃)、2-エチルイミダゾール(解離温度70℃)、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、イミダゾール(IMZ)が挙げられる。
【0090】
ブロック剤が、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤を含有することにより、優れた貯蔵安定性を得ることができる。
【0091】
また、ブロック剤は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、その他のブロック剤(例えば、オキシム系ブロック剤、イミダゾリン系ブロック剤、ピリミジン系ブロック剤、グアニジン系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、フェノール系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミン系ブロック剤、カルバミン酸系ブロック剤、尿素系ブロック剤、酸アミド系(ラクタム系)化合物、酸イミド系ブロック剤、トリアゾール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、重亜硫酸塩など)を含有できる。好ましくは、ブロック剤は、その他のブロック剤を含有せず、ピラゾール系ブロック剤および/またはイミダゾール系ブロック剤からなり、より好ましくは、ピラゾール系ブロック剤またはイミダゾール系ブロック剤からなる。
【0092】
そして、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させるには、例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを混合する。
【0093】
キシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤との配合割合としては、ブロック剤中のイソシアネート基と反応する活性基(すなわち、ブロック基)の、キシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基に対する当量比(活性基/イソシアネート基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、1.0以上であり、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下、より好ましくは、1.1以下である。
【0094】
また、上記の反応は、例えば、大気圧下、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)雰囲気下において、実施される。
【0095】
反応条件として、反応温度が、例えば、20℃以上、好ましくは、30℃以上であり、また、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下であり、また、反応時間が、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、また、例えば、6時間以下、好ましくは、3時間以下である。
【0096】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法、アミン当量の測定を用い、イソシアネート基の消失または減少を確認することによって、判断することができる。
【0097】
また、上記の反応は、無溶剤下であってもよく、例えば、溶剤の存在下であってもよい。
【0098】
溶剤としては、例えば、公知の有機溶剤が挙げられる。
【0099】
また、上記の反応では、必要により、ブロック化触媒を添加することができる。
【0100】
ブロック化触媒としては、例えば、塩基性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチララート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラートなどのアルカリ金属アルコラート、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、例えば、テトラアルキルアンモニウムなどの酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩などの有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、ヘキサメチレンジシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。また、これらブロック化触媒は、必要により、上記の溶剤や水、メタノール、エタノール、プロピルアルコールなどのアルコール類に溶解された溶液として用いることもできる。
【0101】
これらブロック化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
ブロック化触媒の配合割合は、特に制限されないが、例えば、キシリレンジイソシアネート誘導体100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上であり、例えば、3質量部以下、好ましくは、2質量部以下、より好ましくは、0.3質量部以下、さらに好ましくは、0.2質量部以下である。
【0103】
そして、上記のようにキシリレンジイソシアネート誘導体とブロック剤とを反応させることにより、キシリレンジイソシアネート誘導体(具体的には、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体)のイソシアネート基が、ブロック剤によってブロックされ、ブロックイソシアネートが得られる。
【0104】
また、このようなブロックイソシアネートは、例えば、上記の溶剤に溶解された溶液として用いることもできる。
【0105】
ブロックイソシアネートを溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0106】
このようなブロックイソシアネートでは、キシリレンジイソシアネート誘導体が、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、および、キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、そのキシリレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基が、特定のブロック剤によりブロックされている。
【0107】
そのため、上記のブロックイソシアネートは、貯蔵安定性に優れる。
【0108】
その結果、上記のブロックイソシアネートは、例えば、コーティング剤、塗料、インキ、接着剤などの分野において、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の樹脂の硬化剤(架橋剤)として、好適に用いられる。
【0109】
とりわけ、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤の分野において、ポリウレタン樹脂の硬化剤として、好適に用いられる。
【0110】
本発明のコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを含有する。このコーティング剤は、例えば、上記のブロックイソシアネートからなる硬化剤と、ポリオール成分からなる主剤とを、それぞれ個別に調製し、それらを配合することにより得られる。
【0111】
硬化剤は、上記のブロックイソシアネートとともに、他のブロックイソシアネートを含むこともできる。
【0112】
他のブロックイソシアネートとしては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)などの脂環族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)などの芳香族ジイソシアネートまたはその誘導体のブロックイソシアネートなどが挙げられる。
【0113】
誘導体としては、例えば、イソシアヌレート誘導体、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体、ウレトジオン誘導体、3価アルコール付加体(アダクト体)などが挙げられる。
【0114】
他のブロックイソシアネートの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0115】
ポリオール成分は、マクロポリオールを含んでいる。つまり、主剤は、マクロポリオールを含んでいる。
【0116】
マクロポリオールは、水酸基を2つ以上有する、数平均分子量が、300以上、好ましくは、400以上、さらに好ましくは、500以上、通常、20000以下、好ましくは、10000以下の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数(C)2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0117】
マクロポリオールの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以上であり、また、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、180mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、100mgKOH/g以下である。
【0118】
マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0119】
マクロポリオールとして、好ましくは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0120】
また、ポリオール成分は、低分子量ポリオールを含むこともできる。
【0121】
低分子量ポリオールは、1分子中に水酸基を2つ以上有する、分子量40以上400未満、好ましくは、300未満の有機化合物である。低分子量ポリオールとしては、例えば、上記のアルコール類が挙げられ、好ましくは、多価アルコール、より好ましくは、2~8価アルコール、さらに好ましくは、上記2価アルコール、上記3価アルコール、とりわけ好ましくは、上記2価アルコールが挙げられる。
【0122】
低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0123】
低分子量ポリオールの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0124】
ポリオール成分は、好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0125】
なお、ポリオール成分の使用形態は、特に制限されず、ポリオール成分をそのまま使用してもよく、また、ポリオール成分を上記の有機溶剤に溶解させたポリオール成分溶液を使用してもよい。
【0126】
ポリオール成分を、ポリオール成分溶液として使用する場合、有機溶剤として、好ましくは、酢酸ブチル、シクロヘキサンが挙げられる。
【0127】
また、ポリオール成分の有効成分濃度(ポリオール成分の含有割合)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0128】
ブロックイソシアネートを含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤との配合割合は、例えば、ポリオール成分の水酸基に対するブロックイソシアネートのイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされているイソシアネート基)の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.2以上、さらに好ましくは、0.3以上、とりわけ好ましくは、0.9以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、1.1以下となる割合である。
【0129】
そして、このようなコーティング剤は、その使用時において、ブロックイソシアネートからブロック剤を、例えば、加熱することにより、解離させる。
【0130】
解離条件は、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤が解離する条件であれば、特に制限されないが、具体的には、解離温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、160℃以下である。
【0131】
ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール化合物の水酸基との加熱条件下における反応時間は、例えば、10分以上、好ましくは、20分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
【0132】
これにより、ブロックイソシアネートにおけるブロック剤を解離させるとともに、ブロックイソシアネートの再生したイソシアネート基と、ポリオール成分の水酸基とを反応させ、コーティング剤を硬化させることができる。
【0133】
また、硬化反応は、室温(20~30℃)で熟成させることによっても進行することもできる。
【0134】
また、このようなコーティング剤は、例えば、溶剤に溶解させて用いることができる。
【0135】
溶剤としては、上記の有機溶剤が挙げられ、好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
コーティング剤(主剤および硬化剤)を溶剤に溶解させる場合において、その固形分濃度は、例えば、1質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上であり、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0137】
また、コーティング剤は、必要に応じて、さらに、上記の酸性化合物、硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、顔料分散剤、染料、有機または無機微粒子、防黴剤、難燃剤、密着改良剤、つや消し剤などの添加剤を含有することができる。
【0138】
なお、これら添加剤の添加のタイミングは、特に制限されず、上記の各成分(ブロックイソシアネート、マクロポリオールなど)に予め添加してもよく、また、上記の各成分の混合時に同時に添加してもよく、さらに、上記の各成分の混合後に、別途添加してもよい。
【0139】
このようなコーティング剤は、上記のブロックイソシアネートを含有するため、貯蔵安定性に優れる。
【0140】
そして、コーティング剤から硬化膜を得る方法としては、例えば、コーティング剤を基材に塗布し、上記の条件で、硬化反応させる。
【0141】
基材としては、特に制限されず、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂などの(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
【0142】
コーティング剤を基材に塗布する方法としては、特に制限されず、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法などによる塗布、例えば、バーコーター、アプリケーターなどを用いたキャスティングなどが挙げられる。
【0143】
これにより、硬化膜が得られる。
【0144】
また、必要により、硬化膜を、20℃以上300℃以下にて1分間以上30日間以下養生することもできる。
【0145】
このように、上記のブロックイソシアネートは、コーティング剤として好適に用いられる。
【実施例】
【0146】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0147】
1.ブロックイソシアネートの製造
(1)キシリレンジイソシアネートの3価アルコール付加体
実施例2~7、実施例9~14、参考実施例1および8、比較例1および参考例1~20
キシリレンジイソシアネート誘導体として、タケネートD-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、三井化学社製、固形分濃度75%、溶剤(酢酸エチル)を準備した。
【0148】
そして、温度計、撹拌装置、冷却管、窒素導入管が装置された反応器において、窒素雰囲気下で、タケネートD-110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、三井化学社製、固形分濃度75%、溶剤(酢酸エチル))の固形分100質量部に対して、表1~表2に記載される処方(種類および質量部)の2価アルコールをで配合し、70~80℃で、2時間ウレタン化反応させた。これにより、キシリレンジイソシアネート誘導体を2価アルコールで変性した。なお、表中に2価アルコールが記載されていない場合は、2価アルコールで変性していないものである。
【0149】
その後、キシリレンジイソシアネート誘導体(2価アルコールで変性されたキシリレンジイソシアネート誘導体)のイソシアネート基1モルに対して、表1~表2に記載のブロック剤を、1.02モル(ブロック剤/イソシアネート基=1.02(mol/mol))添加し、40~60℃で1~2時間反応させ、アミン当量が20,000以上となったところで反応を停止し、その後、固形分濃度70%になるように酢酸エチルを添加した。
【0150】
これにより、ブロックイソシアネートの溶液を得た。
【0151】
その後、得られたブロックイソシアネートの溶液と、Q-166(アクリルポリオール、オレスターQ-166(商品名、三井化学社製)の溶剤置換品、溶剤(酢酸ブチル、シクロヘキサン)、水酸基価(固形分)60mgKOH/g、水酸基価(溶剤中)29mgKOH/g、固形分濃度40%)とを、当量比1.0(NCO/OH=1.0)で混合し、固形分濃度50%になるようにイソプロピルアルコールを添加し、23℃、5分間混合し、次いで、10分間超音波処理することにより、脱泡して、コーティング剤を得た。
【0152】
得られたコーティング剤を、4milのアプリケーターによって、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)および鋼板(SPCC鋼板、PBN-144処理品)に塗工し、150℃のオーブンで30分加熱し、硬化膜を得た。
【0153】
(2)キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体
実施例16~21、実施例23~28、参考実施例15および22、および参考例21~40
キシリレンジイソシアネート誘導体として、タケネートA-14(キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、三井化学社製、固形分濃度40%、溶剤(酢酸エチル)を準備した。そして、タケネートA-14の溶剤を、エバポレーター(真空度0.1kPa、80℃)にて除去し、また、必要により溶剤(酢酸エチル)を添加して、固形分濃度を75質量%に調整した。
【0154】
そして、タケネートD-110Nに代えて、固形分濃度が75質量%に調整されたタケネートA-14を用いた以外は、表3~表4に記載の処方で、参考実施例1と同じ方法により、ブロックイソシアネートの溶液および硬化膜を得た。
【0155】
(3)キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体
実施例30~35、実施例37~42、参考実施例29および36、および参考例41~60
キシリレンジイソシアネート誘導体として、以下の方法で、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を準備した。
【0156】
すなわち、撹拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,3-キシリレンジイソシアネート(三井化学社製、m-XDI)100質量部と、イソブタノール(IBA)15.8質量部(当量比NCO/OH=5)と、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト(酸化防止剤)0.06質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](酸化防止剤)0.06質量部とを仕込み、75℃で3.5時間、ウレタン化反応させた。これにより、ウレタン化物を得た。
【0157】
次いで、ウレタン化物を含む反応液に、アロファネート化触媒としてのXK-628(商品名、楠本化成社製、カルボン酸ビスマス、ビスマス含有割合31質量%)を0.06質量部添加し、90℃で11時間、アロファネート化反応させ、ウレタン結合のアロファネート結合への変換がほぼ完了したことを確認し(ウレタン基/アロファネート基のIR比率が0.1以下)、オルトトルエンスルホンアミド(反応停止剤)0.10質量部を添加してアロファネート化反応を停止させた。
【0158】
得られた反応液から、薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度150℃)により、未反応のイソブタノールおよび1,3-キシリレンジイソシアネートを留去(除去)した。これにより、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を得た。
【0159】
そして、キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体に、溶剤(酢酸エチル)を添加して、固形分濃度を75質量%に調整した。
【0160】
そして、タケネートD-110Nに代えて、固形分濃度が75質量%に調整されたキシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体を用いた以外は、表5~表6に記載の処方で、参考実施例1と同じ方法により、ブロックイソシアネートの溶液および硬化膜を得た。
【0161】
2.評価
(貯蔵安定性)
ブロックイソシアネートの溶液を、100mLガラス瓶に入れ、窒素置換した後、金属製の蓋で密閉し、60℃のオーブンにて保管した。
【0162】
8週間後、ブロックイソシアネートの溶液の色相(APHA)を、JIS K 0071-1(2017年)に準拠して、目視により評価した。
【0163】
評価基準を、以下に示す。
◎:保管前後で変化なし
○:保管前後での色相(APHA)変化量50未満
△:保管前後での色相(APHA)変化量50以上100未満
×:保管前後での色相(APHA)変化量50以上100以上
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
表中の略号の詳細を下記する。
XDI:m-キシリレンジイソシアネート
D-110N:タケネートD-110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、三井化学社製
A-14:タケネートA-14、キシリレンジイソシアネートのビウレット誘導体、三井化学社製
XDIアロファネート:キシリレンジイソシアネートのアロファネート誘導体
DEG:ジエチレングリコール
1,4-BG:1,4-ブタンジオール(1,4-ブチレングリコール)
DMP:3,5-ジメチルピラゾール
IMZ:イミダゾール
MEKO:メチルエチルケトンオキシム
DEM:マロン酸ジエチル
TMG:1,1,3,3-テトラメチルグアニジン