(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ガスシール構造及び抽出乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F27D 7/06 20060101AFI20230804BHJP
F26B 13/00 20060101ALI20230804BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20230804BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20230804BHJP
F27B 9/04 20060101ALI20230804BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20230804BHJP
C21D 9/56 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
F27D7/06 B
F26B13/00 A
F16J15/16 C
F16J15/447
F27B9/04
C08J9/26 102
C21D9/56 101J
(21)【出願番号】P 2019217414
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】結城 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝義
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-014558(JP,U)
【文献】実開平03-025559(JP,U)
【文献】国際公開第2012/150618(WO,A1)
【文献】特開昭58-131470(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02108445(EP,A1)
【文献】特開2006-194546(JP,A)
【文献】特開2018-145411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/06
F26B 13/00
F16J 15/16
F16J 15/447
F27B 9/04
C08J 9/26
C21D 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を区画し、シート状部材が通る開口部を有する隔壁における前記処理室側の面の反対側の面側に配置されるシールロールと、
前記シールロールの外周面に対向する位置で、且つ、前記開口部から搬送される前記シート状部材を前記シールロールとの間に通すことができる位置に配置され、前記シート状部材の搬送方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有する搬送部ラビリンスシールと、
前記搬送部ラビリンスシールを保持する搬送部覆い体と、
前記シールロールの延在方向における前記搬送部覆い体が配置される位置の両側に配置され、前記シールロールの円周方向における所定の範囲を覆う端部覆い体と、
前記開口部と、前記搬送部覆い体及び前記端部覆い体との間に配置され、前記開口部と、前記シールロールの前記外周面と前記搬送部ラビリンスシールとの間の位置とを連通する空間を区画する仕切体と、
前記処理室内を、前記シールロールが配置される側に対して負圧にする排気ダクトと、
を備え
、
前記搬送部覆い体は、前記シールロールの前記外周面からの距離を変化させることができ、
前記搬送部覆い体と前記端部覆い体とには、前記搬送部ラビリンスシールの位置が前記シート状部材の搬送状態の位置となる状態では互いに接触し、前記搬送部ラビリンスシールが前記シールロールの前記外周面から離れた位置となる状態では互いに離間するシール部材がそれぞれ配置されており、
前記シール部材は、互いの接触面が前記搬送部覆い体の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されることを特徴とするガスシール構造。
【請求項2】
処理室を区画し、シート状部材が通る開口部を有する隔壁における前記処理室側の面の反対側の面側に配置されるシールロールと、
前記シールロールの外周面に対向する位置で、且つ、前記開口部から搬送される前記シート状部材を前記シールロールとの間に通すことができる位置に配置され、前記シート状部材の搬送方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有する搬送部ラビリンスシールと、
前記搬送部ラビリンスシールを保持する搬送部覆い体と、
前記シールロールの延在方向における前記搬送部覆い体が配置される位置の両側に配置され、前記シールロールの円周方向における所定の範囲を覆う端部覆い体と、
前記開口部と、前記搬送部覆い体及び前記端部覆い体との間に配置され、前記開口部と、前記シールロールの前記外周面と前記搬送部ラビリンスシールとの間の位置とを連通する空間を区画する仕切体と、
前記空間部に位置するガスを前記空間部から前記処理室の外に向けて排気する排気構造と、
を備え
、
前記搬送部覆い体は、前記シールロールの前記外周面からの距離を変化させることができ、
前記搬送部覆い体と前記端部覆い体とには、前記搬送部ラビリンスシールの位置が前記シート状部材の搬送状態の位置となる状態では互いに接触し、前記搬送部ラビリンスシールが前記シールロールの前記外周面から離れた位置となる状態では互いに離間するシール部材がそれぞれ配置されており、
前記シール部材は、互いの接触面が前記搬送部覆い体の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されることを特徴とするガスシール構造。
【請求項3】
前記端部覆い体には、前記シールロールの延在方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有するロール端部ラビリンスシールが形成される請求項
1または2に記載のガスシール構造。
【請求項4】
樹脂材料と液状可塑剤とを溶融混練後に成形して得られたシート状部材から溶剤を用いて前記液状可塑剤を抽出する抽出装置と、
前記シート状部材を乾燥させることにより前記シート状部材に付着した前記溶剤を取り除く乾燥装置と、
前記乾燥装置の乾燥室を区画し、前記シート状部材が通る開口部を有する隔壁における前記乾燥室側の面の反対側の面側に配置されるシールロールと、
前記シールロールの外周面に対向する位置で、且つ、前記開口部から搬送される前記シート状部材を前記シールロールとの間に通すことができる位置に配置され、前記シート状部材の搬送方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有する搬送部ラビリンスシールと、
前記搬送部ラビリンスシールを保持する搬送部覆い体と、
前記シールロールの延在方向における前記搬送部覆い体が配置される位置の両側に配置され、前記シールロールの円周方向における所定の範囲を覆う端部覆い体と、
前記開口部と、前記搬送部覆い体及び前記端部覆い体との間に配置され、前記開口部と、前記シールロールの前記外周面と前記搬送部ラビリンスシールとの間の位置とを連通する空間を区画する仕切体と、
前記乾燥室内を、前記シールロールが配置される側に対して負圧にする排気ダクトと、
を備え
、
前記搬送部覆い体は、前記シールロールの前記外周面からの距離を変化させることができ、
前記搬送部覆い体と前記端部覆い体とには、前記搬送部ラビリンスシールの位置が前記シート状部材の搬送状態の位置となる状態では互いに接触し、前記搬送部ラビリンスシールが前記シールロールの前記外周面から離れた位置となる状態では互いに離間するシール部材がそれぞれ配置されており、
前記シール部材は、互いの接触面が前記搬送部覆い体の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されることを特徴とする抽出乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシール構造及び抽出乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の薄膜のシート状の部材を成形する製造装置は、一般的に複数の処理工程を有し、各処理工程を経てシート状部材の成形を行うが、成形時の処理工程の中には、処理室からシート状部材を搬送する際に、処理室からの気体の流出を抑えつつ、シート状部材を搬送する必要があることがある。シール性を確保して気体の流出を抑えつつ、シート状部材を搬送するための1つの手法としては、処理室の出口に水を張った槽を配置し、処理室の出口が水に浸かるようにすることにより、処理室からの気体の流出を抑える方法が考えられる。しかし、この場合、処理室から搬送するシート状部材は、水の中を通してから処理室の外に搬送することになるため、処理室から搬出した後に、水を切る工程が必要となり、水を切るための装置が増えるため、コストが増加したり、装置が大型化し易くなったりする虞がある。このため、処理室から薄膜のシート状部材を搬出するための出口は、水を用いることなく気体の流出を抑えることができる構成が好ましいが、シート状部材の成形に用いる従来の装置の中には、水を用いることなく、シート状部材の搬送を行う際のシール性の確保を図っているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたロールシール装置では、高圧側と低圧側と仕切る一対のロールを収容するケーシングと、ロールを搬送する板の上下に配置されると共にロールの周面に先端が近接し、ケーシングに気密に支持されるシールバーと、上下のシールバーにより区画される空間を塞ぐようにシールバーの両側面部に配置されるアダプターとを有することにより、高圧側と低圧側との間でのガスの移動を極力小さくしている。また、特許文献2に記載されたガスシール構造では、第1の処理室と第2の処理室との間に仕切壁が設けられ、仕切壁には、シート状材料が通過する開口と、開口をガスシールする一対のシールロールとが設けられ、一対のシールロールは、シート状材料が両ロールにそれぞれ所定の抱き角で接触して走行するように配設されることにより、表面処理室への不純ガスの混入を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-13572号公報
【文献】特開2003-27234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、一対のシールロールの間にシート状部材を通すことによってシール性を確保する場合、シールロール間の隙間が重要になる。即ち、一対のシールロール間の隙間が大き過ぎると、シール性を確保し難くなる虞がある。一方、一対のシールロール間の隙間が小さ過ぎると、実際の運転前の準備段階においてシールロール同士の間にシート状部材を通す際に、シート状部材を通し難くなり、装置の使い勝手が悪くなる虞がある。このため、装置の使い勝手を悪化させることなくシール性を確保するためには、一対のシールロールの間隔を高い精度で配置する必要があり、シール性を確保する際における容易性の観点で、改良の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易にシール性を確保することのできるガスシール構造及び抽出乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るガスシール構造は、処理室を区画し、シート状部材が通る開口部を有する隔壁における前記処理室側の面の反対側の面側に配置されるシールロールと、前記シールロールの外周面に対向する位置で、且つ、前記開口部から搬送される前記シート状部材を前記シールロールとの間に通すことができる位置に配置され、前記シート状部材の搬送方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有する搬送部ラビリンスシールと、前記処理室内を、前記シールロールが配置される側に対して負圧にする排気ダクトと、を備える。
【0008】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る抽出乾燥装置は、樹脂材料と液状可塑剤とを溶融混練後に成形して得られたシート状部材から溶剤を用いて前記液状可塑剤を抽出する抽出装置と、前記シート状部材を乾燥させることにより前記シート状部材に付着した前記溶剤を取り除く乾燥装置と、前記乾燥装置の乾燥室を区画し、前記シート状部材が通る開口部を有する隔壁における前記乾燥室側の面の反対側の面側に配置されるシールロールと、前記シールロールの外周面に対向する位置で、且つ、前記開口部から搬送される前記シート状部材を前記シールロールとの間に通すことができる位置に配置され、前記シート状部材の搬送方向に並び前記シールロール側が開口する複数の空間部を有する搬送部ラビリンスシールと、前記乾燥室内を、前記シールロールが配置される側に対して負圧にする排気ダクトと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガスシール構造及び抽出乾燥装置は、容易にシール性を確保することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る抽出乾燥装置の装置構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す搬送部ラビリンスシールの詳細図である。
【
図11】
図11は、
図4に示す仕切体を搬送部側壁部が位置する側から見た状態を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図4に示す仕切体を仕切体開口部が位置する側から見た状態を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図2に示すガスシール構造が有する搬送部上部覆い体を上方に移動させた状態を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係るガスシール構造の正面図であり、
図1のA-A矢視図である。
【
図22】
図22は、
図20に示す端部覆い体を水平方向に切断した状態を示す要部斜視図である。
【
図23】
図23は、
図20に示す端部覆い体を溝部に沿って切断した状態を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係るガスシール構造及び抽出乾燥装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る抽出乾燥装置1の装置構成を示す模式図である。なお、以下の説明では、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における上下方向を、抽出乾燥装置1における上下方向Zとして説明し、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における上側を、抽出乾燥装置1における上側とし、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における下側を、抽出乾燥装置1における下側として説明する。また、抽出乾燥装置1の通常の使用状態における水平方向を、抽出乾燥装置1においても水平方向として説明する。さらに、水平方向のうち、後述するガスシール構造30のシールロール40の延在方向を抽出乾燥装置1における幅方向Yとし、抽出乾燥装置1の上下方向Zと幅方向Yとの双方に直交する方向を、抽出乾燥装置1における長さ方向Xとして説明する。また、抽出乾燥装置1においてシート状部材Sを搬送する際には、シート状部材Sの搬送方向は水平方向においては幅方向Yとなるため、以下の説明では、シート状部材Sの搬送方向と幅方向Yと同義に扱うこともある。
【0013】
<抽出乾燥装置1>
本実施形態1に係る抽出乾燥装置1は、主に、リチウムイオン電池に用いられるセパレータフィルムの製造に用いられ、抽出装置5と、乾燥装置10とを有している。セパレータフィルムの製造時における抽出乾燥装置1の上流側の工程では、セパレータフィルムの原料となる樹脂材料と液状可塑剤とを溶融混練後にシート状に成形してシート状部材Sを得るが、抽出乾燥装置1は、得られたシート状部材Sから液状可塑剤を除去する装置になっている。
【0014】
詳しくは、セパレータフィルムの原料となる樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が用いられる。また、液状可塑剤としては、例えば、オイルや流動パラフィン等が用いられる。セパレータフィルムの製造時における抽出乾燥装置1の上流側の工程では、これらの樹脂材料と液状可塑剤とを溶融混練後にシート状にし、さらに、シートを延伸することにより、ポリオレフィン系樹脂に多数の微細孔が開孔して微細孔に液状可塑剤が入り込んだ薄膜のフィルム状のシート状部材Sにする。抽出乾燥装置1は、このよう形成されるシート状部材Sから、シート状部材Sに含浸されている液状可塑剤を抽出、除去することにより、ポリオレフィン系樹脂に開孔した多数の微細孔から液状可塑剤が抜けて、多数の微細孔が開孔したシート状部材Sにするための装置として構成されている。
【0015】
抽出乾燥装置1が有する抽出装置5は、抽出乾燥装置1に搬送されたシート状部材Sに対して、溶剤7を用いて液状可塑剤の抽出を行う。このため、抽出装置5は、溶剤7の槽である溶剤槽6を有しており、溶剤7は、溶剤槽6に溜められる。溶剤7としては、例えば、塩化メチレンが用いられる。抽出装置5では、シート状部材Sを搬送しながら溶剤槽6内の溶剤7にシート状部材Sを浸けることにより液状可塑剤を抽出し、シート状部材Sから液状可塑剤を除去する。
【0016】
抽出乾燥装置1が有する乾燥装置10は、シート状部材Sの搬送方向における抽出装置5の下流側に配置されており、抽出装置5でシート状部材Sに付着した溶剤7を乾燥させる。即ち、乾燥装置10は、シート状部材Sを乾燥させることにより、抽出装置5でシート状部材Sに付着した溶剤7をシート状部材Sから取り除く。
【0017】
乾燥装置10は、シート状部材Sの乾燥を行う処理室である乾燥室11を有しており、乾燥室11は、溶剤槽6を介して抽出装置5と連通している。また、乾燥装置10は、シート状部材Sを乾燥させるエアナイフ25と、シート状部材Sを搬送するロール26と、エアナイフ25に対してエアを供給する給気ダクト21と、乾燥室11内のガスを排気する排気ダクト22とを有している。このうち、ロール26は、円柱状の形状で形成され、円柱の軸方向が抽出乾燥装置1の幅方向Yに沿った向きで乾燥室11内に配置されている。また、乾燥室11には、ロール26が複数配置されており、複数のロール26は、円柱の軸方向が互いに平行になる向きで、抽出乾燥装置1の長さ方向Xにおける位置や上下方向Zにおける位置がそれぞれ異なる位置で配置されている。ロール26は、乾燥室11内でシート状部材Sを掛け回しながら回転することにより、シート状部材Sを搬送することが可能になっている。
【0018】
エアナイフ25は、乾燥室11内において、ロール26に巻き掛けられるシート状部材Sに対してエアを吹きつけることができる位置に配置されている。エアナイフ25は、例えば、複数のロール26のうちの1つのロール26の近傍に配置されており、シート状部材Sにおける当該ロール26に巻き掛けられている部分に対してエアを吹きつけることができる位置に配置されている。このように、シート状部材Sにエアを吹きつけるエアナイフ25は、給気ダクト21に接続されており、給気ダクト21からエアを供給されることにより、シート状部材Sにエアを吹きつけることができ、シート状部材Sにエアを吹きつけることにより、シート状部材Sを乾燥させる。給気ダクト21は、乾燥装置10の外側に配置され、ブロワ等の送風装置(図示省略)から供給されるエアをエアナイフ25に供給することが可能になっている。
【0019】
排気ダクト22は、乾燥装置10の外側に配置され、乾燥室11内のガスを乾燥室11の外に排出することが可能になっている。また、排気ダクト22は、乾燥室11内のガスを吸気するブロワ等の送風装置(図示省略)と、気体中の所定の成分を回収するガス回収装置(図示省略)に接続されている。つまり、乾燥装置10は、溶剤7が付着したシート状部材Sを乾燥させるため、抽出乾燥装置1の運転時は、乾燥室11内は溶剤7が気化したガスが充満することになるが、排気ダクト22から排気したガスを送風装置で吸気し、ガス回収装置に送ることにより、気化した溶剤7を回収することができる。
【0020】
また、乾燥装置10における、乾燥装置10で搬送するシート状部材Sの搬送方向における下流側には、シート状部材Sが通る開口部16が形成されている。即ち、乾燥装置10の乾燥室11を区画する隔壁15における、シート状部材Sの搬送方向における下流側に位置する隔壁15には、シート状部材Sが通る開口部16が形成されている。
【0021】
さらに、開口部16を有する隔壁15における乾燥室11側の面の反対側の面側には、シールロール40が配置されている。シールロール40は、本実施形態1に係るガスシール構造30を構成している。つまり、開口部16を有する隔壁15における乾燥室11側の面の反対側の面側には、ガスシール構造30が配置されており、シート状部材Sは、乾燥室11内側からガスシール構造30を通って、乾燥室11の外側に搬送されるように構成されている。本実施形態1に係るガスシール構造30は、排気ダクト22も含んで構成されている。排気ダクト22は、乾燥室11内のガスを乾燥室11の外に排出することにより、乾燥室11内を、シールロール40が配置される側に対して負圧にすることが可能になっている。
【0022】
<ガスシール構造30>
図2は、
図1のA-A矢視図である。
図3は、
図2に示すガスシール構造30の斜視図である。ガスシール構造30が有するシールロール40は、略円柱形の形状で形成されており、中心軸が抽出乾燥装置1の幅方向Yに延在する向きで配置され、フレーム31に配置される軸受部35によって、回転自在に支持されている。軸受部35は、フレーム31が有する支持板33に配置されている。支持板33は、2枚がシールロール40の長さ方向における両端付近にそれぞれ配置されており、板の厚さ方向が幅方向Yになる向きで配置されている。
【0023】
2枚の支持板33は、それぞれ略矩形状の板状の形状に形成されており、2枚の支持板33の間には、ステー32が配置されている。ステー32は、例えば、角パイプによって形成されており、矩形状の形状で形成される支持板33の四隅付近同士の間に亘って、4本が配置されている。つまり、ステー32は、幅方向Yに離間する2枚の支持板33の四隅付近同士の間に亘って、4本のステー32がそれぞれ幅方向Yに延びて配置されており、各ステー32の両端は、2枚の支持板33にそれぞれ接続されている。これにより、フレーム31は、ガスシール構造30の骨格を成している。
【0024】
シールロール40を回転自在に支持する軸受部35は、2枚の支持板33のそれぞれに配置されており、シールロール40は、長さ方向における両端側に位置する軸端部45が、それぞれ回転自在に軸受部35に支持されている。これにより、シールロール40は、回転軸が抽出乾燥装置1の幅方向Yに延在する向きで、2枚の支持板33同士の間に回転自在に配置されている。ガスシール構造30を通って搬送されるシート状部材Sは、シールロール40が配置される2枚の支持板33同士の間を通って搬送される。
【0025】
また、シールロール40が配置される2枚の支持板33同士の間には、搬送部覆い体50と端部覆い体90とが配置されている。このうち、搬送部覆い体50は、シート状部材Sがガスシール構造30を通って搬送される際における、幅方向Yにおいてシート状部材Sが通る位置に配置されている。搬送部覆い体50は、上下方向Zにおけるシールロール40の上側と下側とに配置されており、シールロール40の上側に配置される搬送部上部覆い体51と、シールロール40の下側に配置される搬送部下部覆い体52とを有している。また、端部覆い体90は、シールロール40の延在方向における搬送部覆い体50が配置される位置の両側に配置されている。
【0026】
<ストローク構造70>
搬送部覆い体50が有する搬送部上部覆い体51と搬送部下部覆い体52とのうち、搬送部上部覆い体51は、上下方向Zに移動可能になっている。詳しくは、上下方向Zにおけるフレーム31の上側には、搬送部上部覆い体51を上下方向Zに移動させるためのストローク構造70が配置されており、搬送部上部覆い体51は、ストローク構造70に連結されることにより、ストローク構造70によって上下方向Zに移動可能になっている。
【0027】
図4は、
図2のB-B断面図である。
図5は、
図2のB-B断面における要部斜視図である。ストローク構造70は、2組が幅方向Yに間隔をあけてフレーム31の上側に配置されている。各ストローク構造70は、エアシリンダ71を有してり、エアシリンダ71は、支柱80と支持部材81とによって支持されている。支柱80は、1つのストローク構造70あたり4本が設けられており、4本の支柱80は、幅方向Yと長さ方向Xとに間隔をあけて、フレーム31が有する上側のステー32の上部に上下方向Zに向かって立設している。支持部材81は、長さ方向Xに延びて配置されており、4本の支柱80の上端に連結されている。
【0028】
エアシリンダ71は、ロッド73がストロークする方向が上下方向Zになる向きで、支持部材81の上側に取り付けられている。即ち、エアシリンダ71は、ロッド73がエアシリンダ71の本体部72に対して上下方向Zにおける下側に位置する向きで配置され、本体部72が支持部材81の上側に取り付けられており、ロッド73は、支持部材81を上下方向Zに貫通している。
【0029】
ロッド73の先端は、ブラケット85の上端に連結されており、ブラケット85の下端は、搬送部上部覆い体51に連結されている。これにより、搬送部上部覆い体51は、エアシリンダ71のロッド73が本体部72に対して上下方向Zに伸縮することにより、搬送部上部覆い体51もロッド73と共に上下方向Zに移動可能になっている。
【0030】
このように、ロッド73と搬送部上部覆い体51とに連結されるブラケット85は、長さ方向Xの両側に延びるアーム86を有している。アーム86は、幅方向Yに間隔をあけて隣り合って配置される支柱80同士の間に入り込んでいる。
【0031】
詳しくは、幅方向Yに隣り合う支柱80同士における、互いに他方の支柱80が位置する側の面には、アーム86をガイドするガイドブロック82がそれぞれ取り付けられており、隣り合う支柱80のガイドブロック82同士は、対向して配置されている。対向するガイドブロック82同士の間隔は、幅方向Yにおけるブラケット85のアーム86の厚さよりも、僅かに広い程度の間隔になっている。
【0032】
図6は、
図2のG-G断面図である。ブラケット85のアーム86には、長さ方向Xにおける両端部分に、長さ方向Xにおける中央寄りの部分よりも幅方向Yの厚さが薄くなった幅狭部86aが形成されている。対向するガイドブロック82同士の間隔は、このようにブラケット85のアーム86に形成される幅狭部86aの厚さよりも、僅かに広い程度の間隔になっている。ブラケット85のアーム86は、幅狭部86aが、支柱80に取り付けられて対向するガイドブロック82の間に入り込んでいる。このため、ブラケット85は、エアシリンダ71のロッド73が伸縮してブラケット85が上下方向Zに移動する際に、ガイドブロック82にガイドされながら移動するため、幅方向Yのブレが規制される。
【0033】
また、ブラケット85のアーム86には、幅狭部86aが形成されることにより、アーム86の長さ方向Xにおける中央寄りの部分と幅狭部86aとの境界に、段差部86bが形成されている。アーム86の幅狭部86aが、対向するガイドブロック82の間に入り込んでいる状態では、段差部86bは、ガイドブロック82との間に長さ方向Xに僅かな隙間を有する位置に配置される。このため、エアシリンダ71のロッド73が伸縮してブラケット85が上下方向Zに移動する際には、段差部86bがガイドブロック82にガイドされながら移動することにより、ブラケット85は、長さ方向Xのブレも規制される。
【0034】
さらに、ブラケット85のアーム86には、上下方向Zの下側の面に、ストッパ87が取り付けられている。ストッパ87は、支柱80が立設しているフレーム31のステー32の上面に対向する位置に配置されており、エアシリンダ71のロッド73が伸びた際には、ステー32に当接するように配置されている。また、ストッパ87は、ブラケット85のアーム86からの、下方への突出量を調節することができ、これにより、ストッパ87は、当該ストッパ87がステー32に当接した際における、搬送部上部覆い体51の上下方向Zにおける位置を調節することが可能になっている。即ち、ストッパ87は、ストッパ87がステー32に当接した際における、シールロール40に対する搬送部上部覆い体51の上下方向Zの相対的な位置を調節することができる。
【0035】
搬送部上部覆い体51は、これらのように構成されて幅方向Yに間隔をあけて配置される2組のストローク構造70によって、上下方向Zに移動可能になっている。つまり、搬送部覆い体50が有する搬送部上部覆い体51は、ストローク構造70によって上下方向Zに移動することにより、シールロール40の外周面41からの距離を変化させることができる。
【0036】
一方、搬送部覆い体50のうち、シールロール40の下側に配置される搬送部下部覆い体52は、ジャッキ構造36によって上下方向Zに移動可能になっている。ジャッキ構造36は、ボルトやナットを用いることにより、搬送部下部覆い体52の上下方向Zにおける位置を調節することができ、搬送部下部覆い体52は、このジャッキ構造36によって、シールロール40に対する上下方向Zの相対的な位置を調節することができる。
【0037】
<搬送部ラビリンスシール60>
また、搬送部覆い体50には、シールロール40の外周面41に対向する位置に、搬送部ラビリンスシール60が配置されている。詳しくは、搬送部覆い体50が有する搬送部上部覆い体51は、幅方向Yに見た際における形状が、下側が開口するコの字状となるケーシング53を有しており、搬送部上部覆い体51のケーシング53は、下側が開口する形状で、幅方向Yに延在している。搬送部上部覆い体51に配置される搬送部ラビリンスシール60である搬送部上部ラビリンスシール61は、このように下側が開口する搬送部上部覆い体51のケーシング53における、開口している部分に配置されている。つまり、搬送部上部覆い体51のケーシング53は、シールロール40の外周面41に対向する部分が開口しており、搬送部上部覆い体51に配置される搬送部上部ラビリンスシール61は、ケーシング53におけるシールロール40の外周面41に対向する側の部分に配置されている。
【0038】
また、搬送部覆い体50が有する搬送部下部覆い体52は、幅方向Yに見た際における形状が、上側が開口するコの字状となるケーシング53を有しており、搬送部下部覆い体52のケーシング53は、上側が開口する形状で、幅方向Yに延在している。搬送部下部覆い体52に配置される搬送部ラビリンスシール60である搬送部下部ラビリンスシール62は、このように上側が開口する搬送部下部覆い体52のケーシング53における、開口している部分に配置されている。つまり、搬送部下部覆い体52のケーシング53は、シールロール40の外周面41に対向する部分が開口しており、搬送部下部覆い体52に配置される搬送部下部ラビリンスシール62は、ケーシング53におけるシールロール40の外周面41に対向する側の部分に配置されている。
【0039】
搬送部ラビリンスシール60は、これらのように搬送部覆い体50のケーシング53における、上下方向Zの開口部に配置されることにより、搬送部覆い体50に保持されており、即ち、ケーシング53におけるシールロール40の外周面41に対向する側の位置で保持されている。
【0040】
ここで、シート状部材Sがガスシール構造30を通って搬送される場合には、シート状部材Sは、シールロール40の外周面41に巻き掛けられて搬送されるが、その際に、シート状部材Sは、シールロール40の外周面41における、上下方向Zの上端付近に巻き掛けられる。つまり、シート状部材Sがガスシール構造30を通って搬送される場合には、シート状部材Sは、シールロール40の外周面41と搬送部上部覆い体51との間を通って搬送される。このため、搬送部覆い体50によって保持される搬送部ラビリンスシール60のうち、搬送部上部覆い体51によって保持される搬送部上部ラビリンスシール61は、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16(
図1参照)から搬送されるシート状部材Sを、シールロール40との間に通すことができる位置に配置されている。即ち、搬送部上部ラビリンスシール61は、シールロール40の外周面41に巻き掛けられるシート状部材Sにおける、シールロール40が位置する側の反対側の面側に配置されている。
【0041】
図7は、
図5に示す搬送部ラビリンスシール60の詳細図である。なお、
図7では、搬送部覆い体50に保持される搬送部ラビリンスシール60のうち、搬送部上部覆い体51に保持される搬送部上部ラビリンスシール61を図示しているが、搬送部下部覆い体52に保持される搬送部下部ラビリンスシール62も同様の構成になっている。
【0042】
搬送部ラビリンスシール60は、複数の仕切板63と、複数のスペーサ64とを有しており、これらを保持ボルト65で重ねてケーシング53に取り付けることにより、搬送部覆い体50に保持されている。詳しくは、仕切板63は、厚さが比較的薄めの樹脂製の板状の部材になっており、長さがケーシング53の幅方向Yにおける長さと同程度の長さになっている。本実施形態1では、1つの搬送部ラビリンスシール60は、このように形成される仕切板63を6枚有しており、板の厚さ方向が長さ方向Xになり、板の長さ方向が幅方向Yになる向きで配置される。
【0043】
スペーサ64は、厚さが仕切板63の厚さよりも厚く、長さが仕切板63の長さと同程度の長さになっており、仕切板63と同様に、板の厚さ方向が長さ方向Xになり、板の長さ方向が幅方向Yになる向きで配置される。また、スペーサ64は、上下方向Zにおける幅が、同方向における仕切板63の幅よりも狭くなっている。このように形成されるスペーサ64は、長さ方向Xにおいて隣り合う仕切板63同士の間に配置されており、スペーサ64は、複数の仕切板63における、隣り合う全ての仕切板63同士の間に配置されている。換言すると、複数の仕切板63と複数のスペーサ64とは、交互に重ねて配置されている。複数の仕切板63と複数のスペーサ64とが重ねられる方向は、シート状部材Sがガスシール構造30通って搬送される際における、シート状部材Sの搬送方向になっている。
【0044】
搬送部ラビリンスシール60は、このように仕切板63とスペーサ64とが重ねられた状態で、搬送部覆い体50のケーシング53における、シールロール40の外周面41に対向して開口している部分に配置されている。つまり、仕切板63とスペーサ64とは、それぞれ複数が交互に重ねられた状態で、搬送部覆い体50のケーシング53に対して、ケーシング53の開口部から内側に入り込んで配置されている。
【0045】
また、仕切板63とスペーサ64とには、それぞれ保持ボルト65が通る孔(図示省略)が形成されており、それぞれの孔には、ケーシング53の内側に入り込んで仕切板63とスペーサ64とが重ねられた状態で、保持ボルト65が通される。ケーシング53の長さ方向Xにおける両側の内側部分のうち、ケーシング53に対して外側から保持ボルト65を通す側の反対側に位置する内側部分には、保持ボルト65と螺合するネジ孔(図示省略)が形成された取付け部材66が配置されている。保持ボルト65は、交互に重ねられる仕切板63とスペーサ64とに通された状態で、取付け部材66のネジ孔に締め付けられることにより、ケーシング53に取り付けられる。
【0046】
その際に、仕切板63は、スペーサ64やケーシング53よりも、シールロール40が位置する側に突出する状態で取り付けられる。例えば、搬送部上部覆い体51に保持される搬送部ラビリンスシール60である搬送部上部ラビリンスシール61では、仕切板63の上下方向Zにおける下側の端部が、スペーサ64やケーシング53の下側の端部よりも下方に位置しており、シールロール40の外周面41寄りに位置している。このため、隣り合う仕切板63同士の間の部分は、隣り合う仕切板63と、これらの間に位置するスペーサ64とにより区画される空間部67が形成されている。隣り合う仕切板63同士の間には、それぞれの仕切板63同士の間に、これらのように空間部67が形成されている。空間部67は、仕切板63とスペーサ64とが重なり合う方向に複数が並んで配置されているため、空間部67は、シート状部材Sの搬送方向に並んで配置されている。
【0047】
また、これらの複数の空間部67は、シールロール40が位置する側が開口している。例えば、搬送部上部ラビリンスシール61では、仕切板63同士の間に位置する空間部67は、上下方向Zにおける下側に開口しているが、搬送部上部ラビリンスシール61の下側にはシールロール40が配置されるため、各空間部67は、シールロール40側が開口している。
【0048】
なお、仕切板63とスペーサ64とは、保持ボルト65が通る孔に保持ボルト65が通されることによりケーシング53に取り付けられるが、仕切板63に形成される保持ボルト65用の孔は、上下方向Zが長尺側となる長孔になっている。このため、仕切板63は、保持ボルト65を締め付ける際に、上下方向Zにおける位置を長孔に沿って移動させることにより、ケーシング53に取り付けられた際における上下方向Zにおける位置を調節することができる。つまり、仕切板63は、ケーシング53からシールロール40が位置する側に突出する際における突出量を調節して、ケーシング53に取り付けることができる。これにより、仕切板63は、シールロール40の外周面41との距離を調節することができ、仕切板63の端部とシールロール40の外周面41との間の隙間を調節することができる。ガスシール構造30の使用時は、仕切板63は、シールロール40の外周面41との隙間を、例えば1mm程度に調節して使用される。
【0049】
<端部覆い体90>
図8は、
図2のC-C断面図である。
図9は、
図2のC-C断面における要部斜視図である。シールロール40の延在方向における搬送部覆い体50の両側に配置される端部覆い体90は、シールロール40の延在方向において搬送部覆い体50が位置する側の端部の反対側の端部が、フレーム31が有する支持板33に取り付けられている。これにより、搬送部覆い体50は、フレーム31と一体となって配置されている。
【0050】
フレーム31に取り付けられる端部覆い体90は、シールロール40の円周方向における所定の範囲を覆って配置されている。詳しくは、端部覆い体90は、シールロール40の外周面41における、上下方向Zの上端の位置から、長さ方向Xにおいて乾燥装置10の乾燥室11が位置する側を通り、上下方向Zの下端の位置までの、約半周に亘ってシールロール40の外周面41を覆って配置されている。このため、端部覆い体90は、シールロール40の外周面41における、シールロール40の円周方向の約180°の範囲を覆って配置されている。
【0051】
端部覆い体90におけるシールロール40の外周面41に対向する側の面である内周面91は、シールロール40の外周面41に沿って形成される面になっている。このため、端部覆い体90の内周面91は、端部覆い体90を幅方向Yに見た場合における形状が、円弧状となる形状で形成されている。また、端部覆い体90における、長さ方向Xにおいて乾燥装置10の乾燥室11が位置する側の面である外周面92も、端部覆い体90を幅方向Yに見た場合における形状が、内周面91と同心円となる円弧状の形状で形成されている。
【0052】
このように、シールロール40の外周面41を円周方向に覆って配置される端部覆い体90の内周面91には、ロール端部ラビリンスシール95が形成されている。ロール端部ラビリンスシール95は、シールロール40の外周面41に対向する位置に、シールロール40の円周方向に沿って形成されている。
【0053】
図10は、
図9に示す端部覆い体90の斜視図である。端部覆い体90に形成されるロール端部ラビリンスシール95は、シールロール40の円周方向に沿って端部覆い体90の内周面91に形成される溝部96によって形成されている。1つの端部覆い体90には、溝部96は2本が形成されており、2本の溝部96は、幅方向Y、即ち、シールロール40の延在方向に並んで形成されている。
【0054】
ロール端部ラビリンスシール95は、このように溝部96によって形成されるため、シールロール40が位置する側が開口する空間部97を有している。つまり、溝部96の内側は空間になっており、また、溝部96は、シールロール40の外周面41に対向する内周面91に開口する溝として形成されているため、溝部96からなるロール端部ラビリンスシール95は、シールロール40側が開口する空間部97を有している。
【0055】
また、ロール端部ラビリンスシール95は、シールロール40の延在方向に並ぶ2本の溝部96を有して形成されているため、空間部97も、シールロール40の延在方向に2本が並んでいる。このため、ロール端部ラビリンスシール95は、シールロール40の延在方向に並びシールロール40側が開口する複数の空間部97を有している。
【0056】
さらに、ロール端部ラビリンスシール95を形成する溝部96の内側には、端部覆い体90の内周面91の円周方向における両端付近に、閉塞部98が形成されている。閉塞部98は、溝部96の内側における、溝底や溝壁に連結される突起状の形状で形成されており、端部覆い体90の内周面91よりも突出しない高さで形成されている。これにより、ロール端部ラビリンスシール95における溝部96の内側に位置する空間部97は、端部覆い体90の内周面91の円周方向における両端付近が、閉塞部98によって閉塞されている。
【0057】
<仕切体100>
これらのように構成される端部覆い体90及び搬送部覆い体50と、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16(
図1参照)との間には、仕切体100が配置されている。仕切体100は、仕切体100をフレーム31に取り付けるブラケット101と、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16に連通する仕切体開口部104と、仕切体開口部104の位置から搬送部覆い体50や端部覆い体90が位置する側に向かって配置される搬送部側壁部102及び端部側壁部103とを有している。
【0058】
図11は、
図4に示す仕切体100を搬送部側壁部102が位置する側から見た状態を示す斜視図である。
図12は、
図4に示す仕切体100を仕切体開口部104が位置する側から見た状態を示す斜視図である。仕切体100が有する仕切体開口部104は、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16と上下方向Zにおける大きさがほぼ同じ大きさの矩形状の孔になっている。本実施形態1では、仕切体開口部104は、幅方向Yに平行な辺と、上下方向Zに平行な辺とを有する矩形状の形状で形成されている。仕切体開口部104は、ガスシール構造30を乾燥装置10に配置した状態では、隔壁15の開口部16の位置とほぼ一致し、実質的に隔壁15の開口部16と同じ役割を果たす。
【0059】
また、仕切体100は、幅方向Yにおける長さが、同方向における搬送部覆い体50の長さよりも長くなっており、仕切体100をガスシール構造30に配置する状態では、仕切体100は、一部が端部覆い体90と長さ方向Xに重なって配置される。さらに、仕切体100が有する仕切体開口部104も同様に、幅方向Yにおける長さが搬送部覆い体50の長さよりも長くなっており、仕切体100をガスシール構造30に配置する状態では、仕切体開口部104の一部も端部覆い体90と長さ方向Xに重なる。
【0060】
仕切体100のブラケット101は、板状の形状で仕切体開口部104の周囲に形成される部位になっており、ブラケット101は、仕切体開口部104の周囲に、鍔状、或いはフランジ状の形状で形成されている。
【0061】
搬送部側壁部102は、仕切体100をガスシール構造30に配置した状態において、仕切体開口部104の上下方向Zにおける上側の辺の位置と下側の辺の位置とから、搬送部覆い体50が位置する側に延びる板状の部材になっている。つまり、搬送部側壁部102は、厚さ方向が上下方向Zとなる向きで形成される板状の部材になっており、幅方向Yにおける幅が、仕切体開口部104の同方向における幅と同じ幅となって形成されている。
【0062】
また、搬送部側壁部102は、搬送部覆い体50の搬送部上部覆い体51と搬送部下部覆い体52とに対応して2箇所に形成され、仕切体開口部104の上側の辺の位置から搬送部上部覆い体51が位置する側に延びる部分と、仕切体開口部104の下側の辺の位置から搬送部下部覆い体52が位置する側に延びる部分とを有している。これらの搬送部側壁部102は、仕切体100をガスシール構造30に配置した状態では、長さ方向Xにおける仕切体開口部104側の端部の反対側の端部が、搬送部上部覆い体51や搬送部下部覆い体52の近傍に位置している(
図4参照)。また、搬送部側壁部102における、搬送部上部覆い体51や搬送部下部覆い体52の近傍に位置する側の端部は、互いに他方の搬送部側壁部102が位置する側に向かって折り曲げられている。
【0063】
端部側壁部103は、仕切体100をガスシール構造30に配置した状態において、仕切体開口部104の幅方向Yにおける両側2箇所の辺の位置から、端部覆い体90が位置する側に延びる板状の部材になっている。つまり、2箇所の端部側壁部103は、いずれも厚さ方向が幅方向Yとなる向きで形成される板状の部材になっており、上下方向Zにおける幅が、仕切体開口部104の同方向における幅と同じ幅となって形成されている。
【0064】
また、端部側壁部103は、仕切体100をガスシール構造30に配置した状態では、長さ方向Xにおける仕切体開口部104側の端部の反対側の端部が、端部覆い体90の近傍に位置している(
図8参照)。また、端部側壁部103における、端部覆い体90の近傍に位置する側の端部は、端部覆い体90の外周面92の形状に沿って円弧状に形成される部分を有している。
【0065】
これらのように形成される仕切体100の搬送部側壁部102と端部側壁部103とは、矩形状に形成される仕切体開口部104の辺の位置から長さ方向Xに延びて形成されるため、仕切体100を長さ方向Xに見た場合、搬送部側壁部102と端部側壁部103も、仕切体開口部104と同様に矩形状になっている。つまり、それぞれ2箇所ずつに形成される搬送部側壁部102と端部側壁部103とは、隣り合う搬送部側壁部102と端部側壁部103とが接続されることにより、角筒状の形状で形成されている。このため、搬送部側壁部102と端部側壁部103とは、仕切体100をガスシール構造30に配置した状態では、仕切体開口部104の位置から、搬送部覆い体50や端部覆い体90の位置にかけて、角筒の外部とは隔てる通路を形成している。
【0066】
長さ方向Xに見た場合における、搬送部側壁部102と端部側壁部103とにより形成される角筒の内側には、搬送部ラビリンスシール60やシールロール40が位置するため、搬送部側壁部102と端部側壁部103とにより形成される通路は、仕切体開口部104から、シールロール40と搬送部ラビリンスシール60との間の位置に向かった通路になっている。換言すると、仕切体開口部104は、実質的に隔壁15の開口部16と同じ役割を果たすため、仕切体100は、開口部16と、シールロール40の外周面41と搬送部ラビリンスシール60との間の位置とを連通する空間を区画している。
【0067】
<シール部材110>
さらに、フレーム31、ステー32、搬送部覆い体50、端部覆い体90、仕切体100には、それぞれが互いに近接、或いは接触する部分に、気密性を確保するシール部材110が配置されている。例えば、搬送部覆い体50の幅方向Yにおける両端には、シール部材110として搬送部覆い体側シール部材111が配置され、端部覆い体90の幅方向Yにおける搬送部覆い体50が位置する側の端部には、シール部材110として端部覆い体側シール部材112が配置されている(
図2参照)。これらの搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とは、上下方向Zに移動可能な搬送部上部覆い体51の位置が、ガスシール構造30の実際の使用状態の位置、即ち、搬送部上部覆い体51が下寄りに位置してシールロール40に近付いた状態の位置では、互いに接触する位置関係になっている。また、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とは、搬送部上部覆い体51の上下方向Zにおける位置が上寄りに位置し、シールロール40から上方に離れた状態の位置では、互いに離間する。さらに、これらのように接触したり離間したりする搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とは、互いの接触面が、搬送部覆い体50の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されている。
【0068】
また、搬送部覆い体50には、仕切体100の搬送部側壁部102が近接している部分付近に、搬送部側壁部102における、端部側壁部103とによって形成する通路の外側の面に接触するシール部材110である、覆い体仕切体用シール部材114が配置されている(
図4参照)。覆い体仕切体用シール部材114は、搬送部上部覆い体51と搬送部下部覆い体52との双方に配置されており、いずれの覆い体仕切体用シール部材114も、搬送部上部覆い体51や搬送部下部覆い体52に沿って幅方向Yに延在して形成されている。また、仕切体100には、ブラケット101におけるステー32やフレーム31に接する側の面に、シール部材110である仕切体ブラケットシール部材118(
図5、
図8参照)が配置されている。仕切体ブラケットシール部材118は、仕切体100のブラケット101における仕切体開口部104を囲む位置に、仕切体開口部104の一周に亘って配置されている。
【0069】
さらに、仕切体100には、シール部材110として仕切体外側シール部材116と仕切体内側シール部材117とが配置されている(
図8参照)。このうち、仕切体外側シール部材116は、仕切体100の搬送部側壁部102における、仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部において、端部覆い体90の上端に上側に位置する部分と、端部覆い体90の下端に下側に位置する部分とに、それぞれ配置されており、それぞれ端部覆い体90に接触する。
【0070】
また、仕切体内側シール部材117は、仕切体100の端部側壁部103における、仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部において、搬送部側壁部102とによって形成する通路の内側の面に配置されている。つまり、仕切体100の端部側壁部103における、仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部は、端部覆い体90の外周面92に沿って円弧状に形成される部分を含んで形成されているが、仕切体内側シール部材117は、仕切体開口部104の端部と同様に端部覆い体90の外周面92に沿って形成され、端部覆い体90の外周面92に接触する。
【0071】
これらのように、異なる部材同士が近接したり接触したりする部分に配置されるシール部材110は、ゴム部材等の弾力性を有する材料からなり、弾性変形によって、目的の部材に対して接触面が密着して接触することにより、気密性を確保することが可能になっている。
【0072】
<ガスシール構造30及び抽出乾燥装置1の作用>
本実施形態1に係るガスシール構造30及び抽出乾燥装置1は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。抽出乾燥装置1に備えられるガスシール構造30の使用時は、まず、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を調節する。搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を調節する際には、例えば、搬送部ラビリンスシール60が有する保持ボルト65を緩めた状態で、仕切板63をシールロール40の外周面41に接触させ、仕切板63がシールロール40の外周面41に接触している状態で保持ボルト65を締め付ける。その後、仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間が所望の隙間になるように、搬送部ラビリンスシール60を保持する搬送部覆い体50の上下方向Zにおける位置を調節する。
【0073】
搬送部覆い体50の調節は、搬送部上部覆い体51では、ストローク構造70に備えられるストッパ87の調節によって行う。つまり、搬送部上部覆い体51は、ストローク構造70によって上下方向Zに移動可能になっているが、エアシリンダ71のロッド73が伸びた状態における搬送部上部覆い体51の上下方向Zにおける位置は、ストッパ87によって調節可能になっている。このため、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間の調節は、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63がシールロール40の外周面41に接触している状態から、ストッパ87を調節することにより、所望の隙間分、搬送部上部覆い体51を上方に移動させる。これにより、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を、所望の隙間にする。
【0074】
また、搬送部下部覆い体52では、ジャッキ構造36の調節によって行う。つまり、搬送部下部覆い体52は、ジャッキ構造36によって上下方向Zに移動可能になっているため、搬送部下部ラビリンスシール62の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間の調節は、搬送部下部ラビリンスシール62の仕切板63がシールロール40の外周面41に接触している状態から、ジャッキ構造36を調節することにより、所望の隙間分、搬送部下部覆い体52を下方に移動させる。これにより、搬送部下部ラビリンスシール62の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を、所望の隙間にする。
【0075】
これらのようにして調節する搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間は、例えば、1mm程度に調節する。
【0076】
なお、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間は、これ以外の手法によって行ってもよい。例えば、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との間に、所望の隙間と同じ大きさの厚さを有する調節用シート(図示省略)を搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との間に位置させ、この状態で仕切板63の上下方向Zの位置を調節して、仕切板63を当該調節用シートに接触させる。その後、調節用シートを引く抜くことにより、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を、所望の隙間にすることができる。
【0077】
これらのようにして、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を所望の隙間にした後、抽出乾燥装置1でシート状部材Sの抽出・乾燥を行う際には、連続する薄膜のフィルム状に形成されるシート状部材Sを、装置の運転前に抽出乾燥装置1における搬送経路に通す。このため、抽出乾燥装置1に配置されるガスシール構造30におけるシート状部材Sの搬送経路にも、シート状部材Sを通す。
【0078】
ガスシール構造30では、シート状部材Sの搬送経路は、搬送部上部覆い体51が保持する搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の外周面41との間の部分になっている。このため、ガスシール構造30におけるシート状部材Sの搬送経路にシート状部材Sを通す際には、搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の外周面41との間の部分に通すが、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間は、小さな隙間に調節されている。
【0079】
一方、シート状部材Sは、薄膜のフィルム状であり、剛性が低いため、小さな隙間の搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との間にシート状部材Sを通すのは、非常に困難になっている。このため、シート状部材Sを搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の外周面41との間に通す際には、搬送部上部ラビリンスシール61を保持する搬送部上部覆い体51を上方に移動させる。この場合における搬送部上部覆い体51の上下方向Zの移動は、ストローク構造70を作動させることにより行う。
【0080】
図13は、
図2に示すガスシール構造30が有する搬送部上部覆い体51を上方に移動させた状態を示す説明図である。
図14は、
図13のD-D断面図である。搬送部上部覆い体51を上方に移動させる際には、ストローク構造70が有するエアシリンダ71のロッド73を縮める。これにより、ロッド73に連結されているブラケット85がガイドブロック82にガイドされながら上方に移動し、ガイドブロック82に連結されている搬送部上部覆い体51も、ブラケット85の移動に伴って上方に移動する。
【0081】
搬送部上部覆い体51が上方に移動することにより、搬送部上部覆い体51に保持されている搬送部上部ラビリンスシール61も上方に移動するため、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間は、非常に大きくなる。シート状部材Sは、このように搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間が大きくなった状態で、双方の間に通す。
【0082】
搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の外周面41との間にシート状部材Sを通したら、ストローク構造70が有するエアシリンダ71のロッド73を伸ばすことにより、搬送部上部覆い体51を下方に移動させる。
【0083】
ここで、ストローク構造70が有するブラケット85に取り付けられているストッパ87は、エアシリンダ71のロッド73を伸ばしてブラケット85が下方に移動した場合には、フレーム31の上側のステー32の上面に当接する(
図2参照)。これにより、ブラケット85は、上下方向Zにおける下方への移動が規制され、ストッパ87がステー32に当接している位置よりも下方に移動することができなくなる。これに伴い、ブラケット85に連結されている搬送部上部覆い体51も、ストッパ87がステー32に当接している位置よりも下方に移動することができなくなる。
【0084】
このため、エアシリンダ71のロッド73を伸ばすことにより、搬送部上部覆い体51を下方に移動させた場合、搬送部上部覆い体51の上下方向Zにおける位置は、搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との隙間を所望の隙間に調節した際における位置になる。従って、シート状部材Sは、所望の隙間に調節された搬送部上部ラビリンスシール61の仕切板63とシールロール40の外周面41との間に通された状態になり、シート状部材Sを搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40と挟んで搬送することができる状態になる。
【0085】
また、搬送部上部覆い体51には、シール部材110である搬送部覆い体側シール部材111と覆い体仕切体用シール部材114とが配置されているため、搬送部上部覆い体51を下方に移動させた際には、搬送部覆い体側シール部材111と覆い体仕切体用シール部材114とは、他の部材と接触してシール面を形成する。詳しくは、幅方向Yにおける搬送部上部覆い体51の両端に配置されている搬送部覆い体側シール部材111は、搬送部上部覆い体51を下方に移動させた際には、端部覆い体90の幅方向Yにおける端部に配置される端部覆い体側シール部材112に接触する。
【0086】
つまり、搬送部覆い体側シール部材111は、搬送部上部覆い体51を上方に移動させた際には端部覆い体側シール部材112から離間するが、搬送部上部覆い体51を下方に移動させた際には、搬送部覆い体側シール部材111は端部覆い体側シール部材112に接触する。換言すると、搬送部上部覆い体51に配置される搬送部覆い体側シール部材111と、端部覆い体90に配置される端部覆い体側シール部材112とは、搬送部上部ラビリンスシール61がシールロール40の外周面41から離れた位置となる状態では互いに離間し、搬送部上部ラビリンスシール61の位置がシート状部材Sの搬送状態の位置となる状態では互いに接触する。
【0087】
これにより、搬送部上部覆い体51の幅方向Yにおける端部と、端部覆い体90の幅方向Yにおける端部とは、搬送部上部覆い体51を下方に移動させて搬送部上部ラビリンスシール61の位置がシート状部材Sの搬送状態の位置となる状態では、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とにより、気密性が確保される。その際に、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とは、互いの接触面が、搬送部上部覆い体51の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されているため、搬送部上部覆い体51を下方に移動させる際でも、搬送部上部覆い体51は、降下動作が妨げられない。即ち、搬送部覆い体側シール部材111や端部覆い体側シール部材112の形状が、搬送部上部覆い体51の移動方向に対して直交する面を有する形状である場合には、搬送部上部覆い体51を下方に移動させる際に、搬送部上部覆い体51の移動方向に対して直交する面同士が接触し、搬送部上部覆い体51の降下動作中に搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とが引っ掛かる虞がある。これに対し、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112との互いの接触面が、搬送部上部覆い体51の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されている場合には、搬送部上部覆い体51を下方に移動させる際でも、搬送部上部覆い体51の降下動作を妨げることなく移動させることができる。
【0088】
また、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112との互いの接触面が楔状の形状で形成されているため、搬送部上部覆い体51を下方に移動させることによって双方の接触面が接触した際には、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112とは、搬送部上部覆い体51の幅方向Yにおける位置を所定の位置に位置させるセンタリング作用を発生する。これにより、搬送部上部覆い体51の配置位置の再現性を高めることができる。さらに、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112との互いの接触面が楔状の形状で形成されているため、互いが接触する際には、それぞれ圧縮される状態で接触する。これにより、より高い気密性が確保される。
【0089】
また、覆い体仕切体用シール部材114は、搬送部上部覆い体51を上方に移動させた際には仕切体100から離間するが、搬送部上部覆い体51を下方に移動させた際には、覆い体仕切体用シール部材114は仕切体100の搬送部側壁部102に接触する。換言すると、搬送部上部覆い体51に配置される覆い体仕切体用シール部材114は、搬送部上部ラビリンスシール61がシールロール40の外周面41から離れた位置となる状態では、仕切体100から離間し、搬送部上部ラビリンスシール61の位置がシート状部材Sの搬送状態の位置となる状態では、仕切体100に接触する。これにより、搬送部上部覆い体51と仕切体100とが接近している部分では、搬送部上部覆い体51を下方に移動させて搬送部上部ラビリンスシール61の位置がシート状部材Sの搬送状態の位置となる状態では、覆い体仕切体用シール部材114により、気密性が確保される。
【0090】
抽出乾燥装置1は、このようにシート状部材Sを、ガスシール構造30の搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の間を通して搬送することができる状態で、シート状部材Sの抽出・乾燥を行う。抽出乾燥装置1で、シート状部材Sの抽出・乾燥を行う際には、抽出乾燥装置1には、シート状部材Sの搬送方向における上流側の工程で成形した、ポリオレフィン系樹脂に多数の微細孔が開孔して微細孔に液状可塑剤が入り込んだ薄膜のフィルム状のシート状部材Sが、抽出装置5に搬送される。抽出装置5では、シート状部材Sを搬送しながら溶剤槽6に溜められた溶剤7にシート状部材Sを浸け、シート状部材Sから液状可塑剤を除去する。
【0091】
液状可塑剤が除去されたシート状部材Sは、抽出装置5から乾燥装置10に搬送される。乾燥装置10では、シート状部材Sを搬送しながら、乾燥室11内でエアナイフ25によってシート状部材Sに対してエアを吹きつけることにより、シート状部材Sを乾燥させ、シート状部材Sに付着した溶剤7をシート状部材Sから取り除く。
【0092】
乾燥したシート状部材Sは、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16からガスシール構造30に送られる。ガスシール構造30では、シート状部材Sが搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の間を通って搬送されるように予め準備されているため、シート状部材Sは、搬送部上部ラビリンスシール61とシールロール40の間を通って、抽出乾燥装置1から下流側の工程に搬送される。
【0093】
ここで、乾燥装置10の乾燥室11内では、シート状部材Sが乾燥させられることにより、抽出装置5でシート状部材Sに付着した溶剤7は乾燥室11内で気化し、乾燥室11内に充満している。このため、乾燥室11内のガスは、乾燥室11の外に漏出しないのが好ましいが、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間には、僅かな隙間があいており、この隙間から漏れ易くなっている。詳しくは、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間には、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との間に、僅かな隙間があいている。
【0094】
一方で、搬送部ラビリンスシール60は、複数の仕切板63と複数のスペーサ64とにより区画されてシールロール40が位置する側が開口する複数の空間部67が、シート状部材Sの搬送方向、或いは、長さ方向Xに並んで形成されている。このため、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間を通って漏れようとするガスは、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との間の部分と、空間部67とを交互に通って流れることになる。
【0095】
従って、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間を通るガスは、搬送部ラビリンスシール60の仕切板63とシールロール40の外周面41との間を通って空間部67に到達する度に減圧され、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間を通って流れようとする圧力が弱まる。これにより、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間を通って漏れようとするガスは、ガスの流れ方向における圧力が弱まることによりガスの流れが弱まり、長さ方向Xにおける搬送部ラビリンスシール60の両側同士の間では、いずれの方向にも、ガスは搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間を通って漏れ難くなる。
【0096】
また、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16、或いは、仕切体開口部104の位置から、搬送部覆い体50や端部覆い体90の位置にかけて、仕切体100によって通路が形成されているが、仕切体100における、長さ方向Xにおいて仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部には、シール部材110が配置されている。このため、仕切体100における、仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部と、搬送部覆い体50や端部覆い体90とは、シール部材110によってシールされ、気密性が確保されている。
【0097】
つまり、仕切体100における、長さ方向Xにおいて仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部と、搬送部覆い体50とは、搬送部覆い体50に配置される覆い体仕切体用シール部材114が、仕切体100の搬送部側壁部102に接触することによりシールされている。また、仕切体100における、長さ方向Xにおいて仕切体開口部104が位置する側の端部の反対側の端部と、端部覆い体90とは、仕切体100の端部側壁部103に配置される仕切体外側シール部材116と仕切体内側シール部材117とが端部覆い体90に接触することにより、シールされている。これにより、仕切体100の搬送部側壁部102と端部側壁部103とによって、仕切体開口部104の位置から搬送部覆い体50や端部覆い体90の位置にかけて形成される通路は、仕切体100における搬送部覆い体50や端部覆い体90が位置する側の端部と、搬送部覆い体50や端部覆い体90とが、シール部材110によってシールされることにより、気密性が確保されている。
【0098】
また、搬送部覆い体50の幅方向Yにおける両側の端部と、端部覆い体90における搬送部覆い体50が位置する側の端部も、搬送部覆い体50に配置される搬送部覆い体側シール部材111と、端部覆い体90に配置される端部覆い体側シール部材112とが互いに接触することによりシールされ、気密性が確保されている。これらにより、乾燥室11内からのガスは、搬送部覆い体50や端部覆い体90と仕切体100との間の部分や、搬送部覆い体50と端部覆い体90との間の部分からも漏れ難くなっている。
【0099】
また、端部覆い体90の内周面91には、シールロール40側が開口する複数の空間部97がシールロール40の延在方向に並ぶロール端部ラビリンスシール95が形成されている。このため、端部覆い体90の内周面91とシールロール40との間にガスが入り込んだ場合でも、このガスは、シールロール40の延在方向におけるロール端部ラビリンスシール95の両側同士の間で流れ難くなるため、ガスはロール端部ラビリンスシール95とシールロール40との間を通って漏れ難くなる。
【0100】
また、乾燥装置10には、乾燥室11内で気化した溶剤7を大気中に放出しないように、排気ダクト22が配置されている。排気ダクト22は、乾燥室11内のガスを吸引して乾燥室11の外に排気し、排気したガスをガス回収装置に送る。ガス回収装置は、排気ダクト22から送られてきた気体中より、気化した溶剤7を回収する。乾燥室11内は、このように内部の気体が排気ダクト22から排気されるため、乾燥室11の外側に対して気圧が低くなっている。即ち、乾燥室11の内部は、乾燥室11の外部に対して負圧になっている。
【0101】
このため、長さ方向Xにおける搬送部ラビリンスシール60の両側同士の間では、ガスは、乾燥室11の外側、或いは、シート状部材Sの搬送方向における下流側の位置から、乾燥室11が位置する側に向けて流れ易くなっている。これにより、乾燥室11内のガスは、乾燥室11の外側により確実に漏れ難くなっており、ガスシール構造30は、乾燥室11内のガスを乾燥室11の外に漏出させることなく、シート状部材Sを乾燥室11内から乾燥室11の外に向けて搬送することができる。
【0102】
これらのように、ガスの漏出を抑制できるガスシール構造30は、メンテナンス時にはシールロール40を着脱することがあるが、シールロール40の延在方向における搬送部覆い体50の両側に配置される端部覆い体90は、シールロール40の外周面41を覆う範囲が、シールロール40の円周方向の約180°の範囲になっている。このため、シールロール40は、軸端部45を回転自在に支持する軸受部35を軸端部45から取り外したら、端部覆い体90で覆われていない方向にシールロール40を移動させることにより、シールロール40を容易に取り外すことができる。
【0103】
シールロール40をガスシール構造30に取り付ける際には、端部覆い体90に対して、円周方向において端部覆い体90が形成されていない位置からシールロール40を配置し、軸端部45に軸受部35を取り付けることにより、容易に取り付けることができる。これにより、シールロール40をガスシール構造30に対して容易に着脱することができ、メンテナンス性を確保することができる。
【0104】
<実施形態1の効果>
以上の実施形態1に係るガスシール構造30及び抽出乾燥装置1では、シールロール40の外周面41に対向する位置に、シート状部材Sの搬送方向に並びシールロール40側が開口する複数の空間部67を有する搬送部ラビリンスシール60が配置されているため、シート状部材Sの搬送方向におけるシールロール40の両側で、ガスが互いの方向に向かって流れることを抑制することができる。また、処理室である乾燥室11内を、シールロール40が配置される側に対して負圧にする排気ダクト22が備えられているため、シート状部材Sの搬送方向における搬送部ラビリンスシール60の両側では、ガスの流れはシート状部材Sの搬送方向における下流側から、乾燥室11が位置する側に流れ易くすることができる。このため、シート状部材Sに対してシール性を確保する部分の隙間を、必要以上に小さくすることなくガスの漏れを抑制することができ、製造時における精度を高めることなく、シール性を確保するができる。この結果、容易にシール性を確保することができる。
【0105】
また、乾燥装置10の隔壁15に形成される開口部16と、搬送部覆い体50及び端部覆い体90との間には、開口部16と、シールロール40の外周面41と搬送部ラビリンスシール60との間の位置とを連通する空間を区画する仕切体100が配置されているため、乾燥室11内のガスが、シールロール40の外周面41と搬送部ラビリンスシール60との間の位置以外から漏れることを抑制することができる。この結果、より確実にシール性を向上させることができる。
【0106】
また、端部覆い体90には、シールロール40の延在方向に並びシールロール40側が開口する複数の空間部97を有するロール端部ラビリンスシール95が形成されているため、シールロール40の延在方向へのガスの流れを、ロール端部ラビリンスシール95によって抑制することができる。この結果、より確実にシール性を向上させることができる。
【0107】
また、搬送部覆い体50は、シールロール40の外周面41からの距離を変化させることができるため、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40の外周面41との間にシート状部材Sを通す際には、搬送部ラビリンスシール60を保持する搬送部覆い体50とシールロール40の外周面41との距離を大きくすることより、容易に通すことができる。これにより、シート状部材Sが、薄膜のフィルム状であることにより剛性が低い場合でも、搬送部ラビリンスシール60とシールロール40の外周面41との間に、シート状部材Sを容易に通すことができる。この結果、ガスシール構造30の使い勝手を向上させることができる。
【0108】
また、搬送部覆い体50に配置される搬送部覆い体側シール部材111と、端部覆い体90に配置される端部覆い体側シール部材112とは、互いの接触面が搬送部覆い体50の移動方向に対して傾斜する楔状の形状で形成されているため、双方のシール部材110が近付く方向に搬送部覆い体50が移動することにより、互いが接触する際には、それぞれ圧縮される状態で接触する。これにより、より高い気密性を確保することができ、搬送部覆い体50と端部覆い体90との間の部分のシール性を高めることができる。この結果、より確実にシール性を向上させることができる。
【0109】
また、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112との互いの接触面が楔状の形状で形成されているため、搬送部上部覆い体51を下方に移動させる際でも、搬送部上部覆い体51の降下動作を妨げることなく移動させることができる。また、搬送部覆い体側シール部材111と端部覆い体側シール部材112との互いの接触面が接触した際におけるセンタリング作用により、搬送部上部覆い体51の配置位置の再現性を高めることができる。これらの結果、搬送部上部覆い体51を上方位置から降下させてシート状部材Sを搬送させることができる状態にする際に、搬送部上部覆い体51を、より容易に、且つ、確実に適切な位置に配置することができる。
【0110】
[実施形態2]
実施形態2に係るガスシール構造30は、実施形態1に係るガスシール構造30と略同様の構成であるが、排気構造150を備える点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0111】
図15は、実施形態2に係るガスシール構造30の正面図であり、
図1のA-A矢視図である。
図16は、
図15のE-E断面図である。
図17は、
図15のE-E断面における要部斜視図である。実施形態2に係るガスシール構造30は、実施形態1に係るガスシール構造30と同様に、抽出乾燥装置1(
図1参照)に備えられており、シールロール40と、搬送部覆い体50に保持される搬送部ラビリンスシール60と、端部覆い体90に形成されるロール端部ラビリンスシール95とを有している。また、実施形態2に係るガスシール構造30は、搬送部ラビリンスシール60が有する空間部67や、ロール端部ラビリンスシール95が有する空間部97に位置するガスを、空間部67、97から乾燥室11(
図1参照)の外に向けて排気する排気構造150を備えている。
【0112】
<搬送部側排気構造151>
搬送部ラビリンスシール60が有する空間部67から乾燥室11の外に向けて排気する排気構造150である搬送部側排気構造151は、スペーサ貫通孔155と、搬送部側排気口161とを有して構成されている。スペーサ貫通孔155は、搬送部ラビリンスシール60が有するスペーサ64を上下方向Zに貫通する孔になっている。スペーサ貫通孔155は、スペーサ64を上下方向Zに貫通することにより、搬送部ラビリンスシール60の空間部67と、搬送部覆い体50のケーシング53の内部とを連通しており、幅方向Yに延在するスペーサ64に対して、幅方向Yに複数が並んで形成されている。このように形成されるスペーサ貫通孔155は、搬送部上部ラビリンスシール61のスペーサ64と、搬送部下部ラビリンスシール62のスペーサ64との双方に形成されている。本実施形態2では、スペーサ貫通孔155は、仕切板63と交互に重ねられて配置される複数のスペーサ64のうち、重ねる方向における中央寄りの3つのスペーサ64に形成されている。
【0113】
搬送部側排気口161は、搬送部ラビリンスシール60が有する空間部67から乾燥室11の外に向けて排気するための排気口160になっている。搬送部側排気口161は、搬送部覆い体50のケーシング53の上下方向Zにおける、搬送部ラビリンスシール60を保持する側の反対側の端部に配置されている。つまり、搬送部上部覆い体51では、搬送部側排気口161は、ケーシング53の上下方向Zにおける上端に配置されており、搬送部下部覆い体52では、搬送部側排気口161は、ケーシング53の上下方向Zにおける下端に配置されている。
【0114】
これらのように配置される搬送部側排気口161は、ケーシング53の内部に連通している。搬送部側排気口161は、搬送部ラビリンスシール60の空間部67に位置するガスを排気することが可能になっており、乾燥装置10が有する排気ダクト22(
図1参照)と同様に、吸気するブロワ等の送風装置(図示省略)と、気体中の所定の成分を回収するガス回収装置(図示省略)に接続されている。
【0115】
<端部側排気構造152>
図18は、
図15のF-F断面図である。
図19は、
図15のF-F断面における要部斜視図である。ロール端部ラビリンスシール95が有する空間部97から乾燥室11の外に向けて排気する排気構造150である端部側排気構造152は、端部覆い体貫通孔156と、端部覆い体排気室157と、端部側排気口162とを有して構成されている。端部覆い体排気室157は、端部覆い体90の外周面92寄りの位置に形成される空間になっており、端部覆い体貫通孔156は、ロール端部ラビリンスシール95の空間部97と、端部覆い体排気室157とを貫通する孔になっている。
【0116】
図20は、
図19に示す端部覆い体90の斜視図である。
図21は、
図20に示す端部覆い体90を外周面92側から見た斜視図である。
図22は、
図20に示す端部覆い体90を水平方向に切断した状態を示す要部斜視図である。
図23は、
図20に示す端部覆い体90を溝部96に沿って切断した状態を示す要部斜視図である。端部覆い体排気室157は、端部覆い体90の外周面92に形成される溝に、外周面92と同一平面となる排気室蓋部材158によって蓋が施されることにより形成される空間になっており、幅方向Yにおける位置が、ロール端部ラビリンスシール95の溝部96と同じ位置に形成されている。詳しくは、端部覆い体排気室157を形成する溝は、端部覆い体90の外周面92における、幅方向Yにおける位置がロール端部ラビリンスシール95の溝部96と同じ位置に、溝部96に沿って円弧状に形成される溝になっている。このため、端部覆い体排気室157を形成する溝は、ロール端部ラビリンスシール95の溝部96と同様に、幅方向Yに2本が並んで形成されている。
【0117】
排気室蓋部材158は、このように形成される溝の、外周面92に対する開口部分を塞ぐ蓋になっている。これにより、端部覆い体90の外周面92に形成された溝は閉塞され、当該溝は、排気室蓋部材158によって閉塞された空間になる。このように形成される空間が、端部覆い体排気室157として形成され、端部覆い体排気室157は、ロール端部ラビリンスシール95が有する2本の溝部96に対応して、2本が形成される。2本の端部覆い体排気室157は、幅方向Yにおける位置が、それぞれロール端部ラビリンスシール95における対応する溝部96と同じ位置に配置される。
【0118】
端部覆い体貫通孔156は、このように形成される端部覆い体排気室157と、対応する溝部96との間で貫通する孔になっている。このため、端部覆い体貫通孔156は、端部覆い体排気室157と、ロール端部ラビリンスシール95の空間部97とを連通している。また、端部覆い体貫通孔156は、各ロール端部ラビリンスシール95の空間部97に複数が形成されており、複数の端部覆い体貫通孔156は、端部覆い体90の内周面91の円弧の中心を中心とする、放射状に並んで形成されている。
【0119】
端部側排気口162は、ロール端部ラビリンスシール95が有する空間部97から乾燥室11の外に向けて排気するための排気口160になっている。端部側排気口162は、端部覆い体排気室157の蓋となる排気室蓋部材158に取り付けられており、端部側排気口162は、端部覆い体排気室157ごとに1つずつが配置されている。また、幅方向Yに並ぶ端部覆い体排気室157の端部側排気口162同士は、端部覆い体90の外周面92の円弧の円周方向における位置が、互いに異なる位置に配置されている。なお、本実施形態2では、製造時に端部覆い体90の外周面92に端部側排気口162を取り付ける際に、2つの端部側排気口162を取り付け易くするように、端部側排気口162同士の位相を異ならせて配置しているが、製造時に2つの端部側排気口162を端部覆い体90に適切に取り付けることができれば、2つの端部側排気口162は同位相で配置してもよい。
【0120】
これらのように配置される端部側排気口162は、ロール端部ラビリンスシール95の空間部97に位置するガスを排気することが可能になっており、搬送部側排気口161と同様に、吸気するブロワ等の送風装置(図示省略)と、気体中の所定の成分を回収するガス回収装置(図示省略)に接続されている。
【0121】
<ガスシール構造30の作用>
本実施形態2に係るガスシール構造30は、以上のような構成を含み、以下、その作用について説明する。実施形態2に係るガスシール構造30では、ガスシール構造30を備える抽出乾燥装置1でシート状部材Sの抽出・乾燥を行う際には、搬送部ラビリンスシール60の空間部67に位置するガスを、搬送部側排気構造151によって排気し、ロール端部ラビリンスシール95の空間部97に位置するガスを、端部側排気構造152によって排気する。
【0122】
詳しくは、搬送部側排気構造151は、搬送部側排気構造151に接続される送風装置の吸引力により、搬送部ラビリンスシール60の空間部67に位置するガスをスペーサ貫通孔155から吸引し、搬送部覆い体50のケーシング53の内部を介して搬送部側排気口161から排気する。これにより、乾燥装置10の乾燥室11内が負圧であることにより、乾燥室11の外から搬送部ラビリンスシール60とシールロール40との間の部分に流れてきたガスを、乾燥室11内に取り込むことなく、搬送部側排気口161から排気することができる。
【0123】
同様に、端部側排気構造152は、端部側排気構造152に接続される送風装置の吸引力により、ロール端部ラビリンスシール95の空間部97に位置するガスを端部覆い体貫通孔156から吸引し、端部覆い体排気室157を介して端部側排気口162から排気する。これにより、乾燥装置10の乾燥室11内が負圧であることにより、乾燥室11の外からロール端部ラビリンスシール95とシールロール40との間の部分に流れてきたガスを、乾燥室11内に取り込むことなく、端部側排気口162から排気することができる。
【0124】
<実施形態2の効果>
以上の実施形態2に係るガスシール構造30は、搬送部ラビリンスシール60の空間部67に位置するガスを、空間部67から乾燥室11の外に向けて排気する排気構造150を有しているため、乾燥室11の外のガスが乾燥室11内に入り込むことを抑制することができる。従って、乾燥室11内のガスの漏出を抑制するのみでなく、乾燥室11の外のガスが乾燥室11内に入り込むことも容易に抑制することができる。この結果、より確実に、容易にシール性を確保することができる。
【0125】
また、乾燥室11内では、溶剤7が蒸発する際における気化熱により温度が低下し易くなっているため、水分量の多い外気が乾燥室11内に入り込んだ場合、空気中の水分が、溶剤7が気化する際の気化熱で冷やされて乾燥室11内で凍結し易くなる。このため、外気の空調管理が困難な環境で抽出乾燥装置1が使用される場合、管理が行われていない外気が乾燥室11内に入り込んだ際に、空気中の水分が乾燥室11内で凍結する虞がある。これに対し、本実施形態2では、乾燥室11の外のガスが乾燥室11内に入り込むことを抑制することができるため、外気の管理が行われていない環境で抽出乾燥装置1が使用される場合でも、水分量の多い外気が乾燥室11内に入り込むことを抑制できる。この結果、乾燥室11内での水分の凍結を抑制することができる。
【0126】
[変形例]
なお、上述した実施形態1、2では、ガスシール構造30は、抽出乾燥装置1におけるシート状部材Sを送り出す側に配置されているが、ガスシール構造30は、抽出乾燥装置1におけるシート状部材Sの搬入側に配置されていてもよい。つまり、ガスシール構造30は、抽出乾燥装置1が有する抽出装置5におけるシート状部材Sの入口側に配置されていてもよい。
【0127】
また、上述した実施形態1、2では、ガスシール構造30は、抽出乾燥装置1に配置されているが、ガスシール構造30が配置される装置は、抽出乾燥装置1以外であってもよい。シート状部材Sの搬送を行う際におけるシール性を確保する装置であれば、ガスシール構造30が適用される装置は問わない。
【符号の説明】
【0128】
1…抽出乾燥装置、5…抽出装置、6…溶剤槽、7…溶剤、10…乾燥装置、11…乾燥室(処理室)、15…隔壁、16…開口部、21…給気ダクト、22…排気ダクト、25…エアナイフ、26…ロール、30…ガスシール構造、31…フレーム、32…ステー、33…支持板、35…軸受部、36…ジャッキ構造、40…シールロール、41…外周面、45…軸端部、50…搬送部覆い体、51…搬送部上部覆い体、52…搬送部下部覆い体、53…ケーシング、60…搬送部ラビリンスシール、61…搬送部上部ラビリンスシール、62…搬送部下部ラビリンスシール、63…仕切板、64…スペーサ、65…保持ボルト、66…取付け部材、67…空間部、70…ストローク構造、71…エアシリンダ、72…本体部、73…ロッド、80…支柱、81…支持部材、82…ガイドブロック、85…ブラケット、86…アーム、86a…幅狭部、86b…段差部、87…ストッパ、90…端部覆い体、91…内周面、92…外周面、95…ロール端部ラビリンスシール、96…溝部、97…空間部、98…閉塞部、100…仕切体、101…ブラケット、102…搬送部側壁部、103…端部側壁部、104…仕切体開口部、110…シール部材、111…搬送部覆い体側シール部材、112…端部覆い体側シール部材、114…覆い体仕切体用シール部材、116…仕切体外側シール部材、117…仕切体内側シール部材、118…仕切体ブラケットシール部材、S…シート状部材