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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/028 20190101AFI20230804BHJP
   F24F 1/022 20190101ALI20230804BHJP
   F24F 1/0284 20190101ALI20230804BHJP
【FI】
F24F1/028
F24F1/022
F24F1/0284
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019230999
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099182
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000104836
【氏名又は名称】クボタ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 耕平
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-136319(JP,U)
【文献】実開平06-059724(JP,U)
【文献】実開昭52-036851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/02
F24F 1/022
F24F 1/028-1/0287
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に蒸発ユニットと凝縮ユニットを配置し、ケーシング内で双方の入口側が連通し、
蒸発ユニットの出口側に蒸発ユニットを通った給気が吹き出す給気口を有し、凝縮ユニットの出口側に凝縮ユニットを通った排気が吹き出す排気口を有し、蒸発ユニットと凝縮ユニットの双方の入口側の間に、ケーシング周囲の環境空気が流入する環境空気流入路と、給気の一部が還流する給気還流路が連通し、
給気還流路が途中で分岐し、一方の分岐路が蒸発ユニットの入口側に連通し、他方の分岐路が凝縮ユニットの入口側に連通し、還流する給気を一方の分岐路と他方の分岐路に分配する分配装置を給気還流路に介装したことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
給気還流路の途中に風量調整装置を介装したことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
ケーシングに二つの給気の給気口を設け、一方の給気口から給気を吹き出し、他方の給気口が給気還流路に連通することを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関し、冷気もしくは暖気をスポット的に給気するヒートポンプ式の空気調和機の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機として、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、空調機本体内に吸入した空気を冷却する冷却器を空調機本体に出し入れ自在に収納し、冷却器で発生したドレン水を収容するドレンタンクを有し、ドレンタンク内に溜まったドレン水が所定量以上に達したとき冷却装置の運転を停止するものである。そして、蒸発器と凝縮器を一体型として、装置周囲の環境空気を吸い込み、蒸発器側から冷房空気を給気し、凝縮器側から廃熱を排出している。
【0003】
また、特許文献2に記載するものがある。これは、空調機本体の空気吸入口から吸入した空気を冷凍回路の蒸発器によって冷却し、この空気を空調機本体に設けた吹出ダクトを介して任意の空調位置に吹出す局所冷房型空調機であって、蒸発器から流出した空気の一部を蒸発器の空気流入側に戻す空気再循環通路を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-40727
【文献】実開平6-59724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の構成では、空調機本体内に吸入する周囲の環境空気の温度負荷が大きくなると、装置から吹き出す冷気の吹き出し温度が上昇し、保護のための能力制限が発生し、十分な冷却効果を発揮できない。
【0006】
また、特許文献2の構成では、蒸発器から流出した空気の一部を蒸発器の空気流入側に戻すことで、給気温度を下げることができる。しかし、凝縮器には周囲の環境空気のみが流入するので、環境空気の温度負荷が大きくなると、冷媒を十分に凝縮させることができず、結果として装置から吹き出す冷気の吹き出し温度が上昇し、保護のための能力制限が発生し、十分な冷却効果を発揮できない。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、装置周囲の環境空気の温度負荷が大きくなっても給気の温度を十分に必要温度に制御することができる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る空気調和機は、ケーシング内に蒸発ユニットと凝縮ユニットを配置し、ケーシング内で双方の入口側が連通し、蒸発ユニットの出口側に蒸発ユニットを通った給気が吹き出す給気口を有し、凝縮ユニットの出口側に凝縮ユニットを通った排気が吹き出す排気口を有し、蒸発ユニットと凝縮ユニットの双方の入口側の間に、ケーシング周囲の環境空気が流入する環境空気流入路と、給気の一部が還流する給気還流路が連通し、給気還流路が途中で分岐し、一方の分岐路が蒸発ユニットの入口側に連通し、他方の分岐路が凝縮ユニットの入口側に連通し、還流する給気を一方の分岐路と他方の分岐路に分配する分配装置を給気還流路に介装したことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る空気調和機において、給気還流路の途中に風量調整装置を介装したことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る空気調和機において、ケーシングに二つの給気の給気口を設け、一方の給気口から給気を吹き出し、他方の給気口が給気還流路に連通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、蒸発ユニットを通って冷却された給気の一部を、蒸発ユニットおよび凝縮ユニットの入口側に供給することで、蒸発ユニットおよび凝縮ユニットにおける入口空気の温度が低下する。この結果、能力制限条件下(給気温度の抑制が必要)においても蒸発ユニットおよび凝縮ユニットに流入する環境空気の入口温度を緩和して給気温度を抑制する能力制限を回避できる。
【0013】
また、風量調整装置により還流させる給気量を調整し、あるいは分配装置により蒸発ユニットに還流する給気量と凝縮ユニットに還流する給気量の割合を調整することができるので、環境空気の温度負荷が低いときには、給気の還流を停止でき、あるいは周囲に吹き出す給気の温度をより下げたいときには、凝縮ユニットへの給気の還流を抑制し、あるいは停止し、蒸発ユニットへの給気の還流を増加させることで、給気温度の低減が可能となる。すなわち、給気の吹出温度を下げつつ、凝縮ユニットの能力維持を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における空気調和機を示す模式図
図2】本発明の他の実施の形態における空気調和機を示す正面図
図3】同実施の形態における空気調和機の断面図
図4】本発明の実施の形態における空気調和機において給気を還流させない場合の空気の変化を示す空気線図
図5】本発明の実施の形態における空気調和機において給気を蒸発ユニットおよび凝縮ユニットに還流させる場合の空気の変化を示す空気線図
図6】本発明の実施の形態における空気調和機において給気を蒸発ユニットにのみ還流させる場合の空気の変化を示す空気線図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、本発明に係る空気調和機1は、ケーシング2の内部に蒸発ユニット3と凝縮ユニット4を配置している。蒸発ユニット3と凝縮ユニット4は双方の入口側が相対向する状態に配置し、ケーシング2の内部空間を通して双方の入口側が連通している。
【0016】
蒸発ユニット3は蒸発器3aとファン装置3bを有し、凝縮ユニット4は圧縮機4aと凝縮器4bとファン装置4cを有している。
【0017】
ケーシング2の一側面には、蒸発ユニット3を通った給気5が吹き出す給気口6を有し、ケーシング2の他側面には凝縮ユニット4を通った排気7が吹き出す排気口8を有している。
【0018】
蒸発ユニット3と凝縮ユニット4の双方の入口側の間には、ケーシング2の周囲の環境空気9が流入する環境空気流入路10と、給気5の一部が還流する給気還流路12が連通している。
【0019】
環境空気流入路10は、蒸発ユニット3と凝縮ユニット4の双方の入口側を連通するケーシング2の上部空間13であり、ケーシング2の天面に設けた環境空気流入口14でケーシング2の周囲の環境に連通している。
【0020】
給気還流路12は、給気口6の前方を覆って設けたダクト15のダクト流路16と、ケーシング2の内部に設けた仕切板17で仕切った前部流路18と後部流路19からなる。ダクト15は給気5を装置外部に吹き出す吹出口20を設けている。
【0021】
仕切板17はケーシング2の下部空間を前後の空間に仕切って分岐路を形成している。ケーシング2の前部側にある一方の分岐路である前部流路18は、蒸発ユニット3の入口側に連通し、ケーシング2の後部側にある他方の分岐路である後部流路19は、凝縮ユニット4の入口側に連通する。前部流路18と後部流路19は双方が上部空間13に連通している。
【0022】
給気還流路12は、ダクト流路16と前部流路18の間に風量調整装置21を介装し、前部流路18と後部流路19の間に分配装置22を介装している。風量調整装置21は、装置外部に吹き出す外部給気量とケーシング2の内部に還流させる還流給気量の割合を調整するものである。分配装置22は、還流する給気5を、前部流路18を通して蒸発ユニット3の入口側に導く第1分配量と後部流路19を通して凝縮ユニット4の入口側に導く第2分配量の割合を調整するものである。
【0023】
上記構成において、環境空気9は、環境空気流入口14から環境空気流入路10に入り、蒸発ユニット3と凝縮ユニット4に流入する。
【0024】
蒸発ユニット3は蒸発器3aで空気を冷却し、蒸発ユニット3を通った給気5をファン装置3bによって周囲の環境へ送り出す。凝縮ユニット4は、圧縮機4aで冷媒を圧縮し、凝縮器4bで冷媒を冷却して凝縮させ、凝縮ユニット4を通った排気7をファン装置4cで周囲の環境へ排出する。
【0025】
給気5は給気口6および吹出口20通って装置外部へ吹き出し、一部が給気還流路12を通してケーシング2の内部に還流し、環境空気9とともに蒸発ユニット3と凝縮ユニット4に流入する。
(給気の還流停止)
図4は、蒸発ユニット3と凝縮ユニット4の入口側に給気5を還流させない場合の空気の状態の変化を示す空気線図である。
【0026】
風量調整装置21は、装置外部に吹き出す給気5の外部給気量を100%とし、ケーシング2の内部に還流させる給気5の還流給気量なくす調整をする。
【0027】
この場合に、環境空気9が220m/minで流入し、蒸発ユニット3の入口側に80m/minで流入し、凝縮ユニット4の入口側に140m/minで流入する。そして、給気5を80m/minで外部へ吹き出し、排気7を140m/minで外部へ排出する。
【0028】
環境空気9は、空気線図上で(1)で示し、給気5は、空気線図上で(2)で示している。すなわち、乾球温度35℃、絶対湿度0.0193kg/kg(DA)、相対湿度54%程度の環境空気9が空気調和機1を通ることで、乾球温度22℃、絶対湿度0.016kg/kg(DA)、相対湿度95%程度の給気5に冷却される。
(給気の還流)
図5は、蒸発ユニット3と凝縮ユニット4の入口側に給気5を還流させる場合の空気の状態の変化を示す空気線図である。
【0029】
風量調整装置21は、装置外部に吹き出す給気5の外部給気量を50%とし、ケーシング2の内部に還流させる給気5の還流給気量を50%にする調整を行う。
【0030】
分配装置22は、還流した給気5の50%を蒸発ユニット3の入口側に分配し、還流した給気5の50%を凝縮ユニット4の入口側に分配する調整を行う。
【0031】
この場合に、環境空気9が180m/minで流入し、給気5が80m/minで流出し、給気5の40m/minが還流する。還流した給気5と環境空気9は、蒸発ユニット3の入口側に80m/minで流入し、凝縮ユニット4の入口側に140m/minで流入する。
【0032】
そして、給気5を40m/minで外部へ吹き出し、排気7を140m/minで外部へ排出する。
【0033】
環境空気9は、空気線図上で(1)で示し、給気5は、空気線図上で(2)で示し、還流する給気5が環境空気9に合流した空気を(3)、(4)で示している。
【0034】
すなわち、乾球温度35℃、絶対湿度0.0193kg/kg(DA)、相対湿度54%程度の環境空気9が還流する給気5と合流して、乾球温度32.7℃程度、絶対湿度0.0187kg/kg(DA)程度、相対湿度60%程度の空気となって蒸発ユニット3と凝縮ユニット4の入口側に流入することで、乾球温度21℃、絶対湿度0.0148kg/kg(DA)、相対湿度95%程度の給気5に冷却される。
(給気の還流の一部停止)
図6は、蒸発ユニット3の入口側にのみ給気5を還流させる場合の空気の状態の変化を示す空気線図である。
【0035】
風量調整装置21は、装置外部に吹き出す給気5の外部給気量を50%とし、ケーシング2の内部に還流させる給気5の還流給気量を50%にする調整を行う。
【0036】
分配装置22は、還流した給気5の100%を蒸発ユニット3の入口側に分配する調整を行う。
【0037】
この場合に、環境空気9が180m/minで流入し、給気5が80m/minで流出し、給気5の40m/minが還流する。還流した給気5と環境空気9が蒸発ユニット3の入口側に80m/minで流入し、凝縮ユニット4の入口側に環境空気9だけが140m/minで流入する。
【0038】
そして、給気5を40m/minで外部へ吹き出し、排気7を140m/minで外部へ排出する。
【0039】
環境空気9は、空気線図上で(1)で示し、給気5は、空気線図上で(2)で示し、還流する給気5が環境空気9に合流した空気を(3)で示している。
【0040】
すなわち、乾球温度35℃、絶対湿度0.0193kg/kg(DA)、相対湿度54%程度の環境空気9が還流する給気5と合流して、乾球温度28.6℃程度、絶対湿度0.0176kg/kg(DA)程度、相対湿度71%程度の空気となって蒸発ユニット3の入口側に流入することで、乾球温度19.3℃、絶対湿度0.0134kg/kg(DA)、相対湿度95%程度の給気5に冷却される。
【0041】
すなわち、図4の構成では、環境空気9が220m/minで、給気5が乾球温度22℃、絶対湿度0.016kg/kg(DA)、相対湿度95%程度になり、図5の構成では、環境空気9が180m/minで、給気5が乾球温度21℃、絶対湿度0.0148kg/kg(DA)、相対湿度95%程度になり、図6の構成では、給気5が乾球温度19.3℃、絶対湿度0.0134kg/kg(DA)、相対湿度95%程度になる。
【0042】
以上のように本実施の形態によれば、蒸発ユニット3を通って冷却された給気5の一部を、蒸発ユニット3および凝縮ユニット4の入口側に供給することで、ケーシング2に流入する環境空気9を220m/minから180m/minに抑制でき、蒸発ユニット3および凝縮ユニット4における入口空気の温度が低下する。
【0043】
この結果、能力制限条件下(給気温度の抑制が必要)においても蒸発ユニット3および凝縮ユニット4に流入する環境空気9の入口温度を緩和して給気温度を抑制する能力制限を回避できる。
【0044】
また、風量調整装置21により還流させる給気量を調整し、あるいは分配装置22により蒸発ユニット3に還流する給気量と凝縮ユニット4に還流する給気量の割合を調整することができるので、環境空気9の温度負荷が低いときには、給気5の還流を停止でき、あるいは周囲に吹き出す給気5の温度をより下げたいときには、凝縮ユニット4への給気5の還流を抑制し、あるいは停止し、蒸発ユニット3への給気5の還流を増加させることで、給気温度の低減が可能となる。すなわち、給気5の吹出温度を下げつつ、凝縮ユニット3の能力維持を図れる。
(他の実施の形態)
本実施の形態では、図2図3に示すように、ケーシング2に二つの給気5の給気口61、62を設け、一方の給気口61から給気5を外部に吹き出し、他方の給気口62が給気還流路12に連通する。先の実施の形態と同様の機能を奏する部材には同符号を付して説明を省略する。
【0045】
この実施の形態によれば、外部へ吹き出す給気量と還流する給気量を独立して制御できる。他の作用効果は先に実施の形態と同様である。
【符号の説明】
【0046】
1 空気調和機
2 ケーシング
3 蒸発ユニット
4 凝縮ユニット
3a 蒸発器
3b ファン装置
4 凝縮ユニット
4a 圧縮機
4b 凝縮器
4c ファン装置
5 給気
6、61、62 給気口
7 排気
8 排気口
9 環境空気
10 環境空気流入路
12 給気還流路
13 上部空間
14 環境空気流入口
15 ダクト
16 ダクト流路
17 仕切板
18 前部流路
19 後部流路
20 吹出口
21 風量調整装置
22 分配装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6