(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】吻合用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/115 20060101AFI20230804BHJP
【FI】
A61B17/115
(21)【出願番号】P 2019529197
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 NL2017050810
(87)【国際公開番号】W WO2018101832
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-12
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519190953
【氏名又は名称】インプリカン ベー.フェー.
(73)【特許権者】
【識別番号】519190964
【氏名又は名称】ライクスウニヴェルズィテート フローニンゲン
(73)【特許権者】
【識別番号】512122366
【氏名又は名称】アカデミス ズィーケンハイス フローニンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェンガ,クラース
(72)【発明者】
【氏名】ニーウェンフウィス,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ボーエスウェス,オルフ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223765(JP,A)
【文献】実開昭50-39086(JP,U)
【文献】特開2014-193329(JP,A)
【文献】米国特許第4700703(US,A)
【文献】特表2009-515569(JP,A)
【文献】特開2013-154187(JP,A)
【文献】特表2005-529675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11 ― 17/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の胃腸管切断部と第2の胃腸管切断部との吻合を行うための外科用器具であって、
圧縮中に、第1の加圧域を生じさせる第1の本体と、
圧縮中に、第2の加圧域を生じさせる第2の本体と、
前記第1の本体と前記第2の本体とを連結する連結手段であり、前記第1の本体を、前記第2の本体から遠い開位置と前記第2の本体に近い閉位置との間で動かす構成とされた連結手段と、
前記第1の胃腸管切断部と前記第2の胃腸管切断部を固着させる固着手段と
を備え、
前記第1および第2の本体は、使用中、前記第1の胃腸管切断部および前記第2の胃腸管切断部を封着するように圧縮中に前記第1の加圧域
が加圧する面積と前記第2の加圧域
が加圧する面積とを足し合わせた量が増加するように、前記第1の胃腸管切断部および前記第2の胃腸管切断部を前記第1の加圧域と前記第2の加圧域との間で圧縮し、
隣接する筋層および/または粘膜層から粘膜下層を剥がす、または、押しつぶして、両方の粘膜下層を互いに接触させる
外科用器具。
【請求項2】
前記第1の本体および/または前記第2の本体は、膨潤性ヒドロゲルを備える、
請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記膨潤性ヒドロゲルは、前記第1の胃腸管切断部と前記第2の胃腸管切断部とが接触し封着されるところに、前記膨潤性ヒドロゲルが膨張すると前記封着される切断部上に力を掛けることができるように配置される構成とされた、
請求項2に記載の外科用器具。
【請求項4】
一次治癒を促進するように、前記膨潤性ヒドロゲルは、その膨張により、粘膜下層間に追加の接触を、それらの追加的に接触した粘膜下層の血管新生を脅かすことなくもたらすように配置される構成とされた、
請求項3に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記膨潤性ヒドロゲルは、その原体積量
を基準に0~100体積%の範囲で増加して膨張する、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記膨潤性ヒドロゲルは、その原体積量
を基準に10~80体積%の範囲で増加して膨張する
請求項5に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記膨潤性ヒドロゲルは、1つまたは複数の抗生物質を含む、
請求項2乃至6のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項8】
抗生物質の送達が前記封着される切断部の方に向けられるように、前記膨潤性ヒドロゲルの、前記第1の胃腸管切断部または前記第2の胃腸管切断部に少なくとも一部が接触しない表面のカバーを備える、
請求項7に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記カバーは、前記膨潤性ヒドロゲルを覆う
請求項8に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記第1および/または第2の本体は、傾いた第1の加圧域、または傾いた第2の加圧域との間で前記第1の胃腸管切断部および前記第2の胃腸管切断部を圧縮する構成とされた、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項11】
前記固着手段は、
前記第1の本体
が備えるアンビル、
前記第2の本体
が備える、ステープルカートリッジとステープルとがその中を通って前記アンビルに対して動かされ得るステープラ基部とを含むケーシングを備える、外科用ステープラである、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記アンビルおよび/またはステープル基部は、内側加圧域を生じさせる内側加圧部材と、外側加圧域を生じさせる外側部材と、を備え、
前記内側加圧域および外側加圧域は、前記第1の加圧域であり、
内側部材は、前記第1の胃腸管切断部および前記第2の胃腸管切断部が、まず外側アンビル加圧域と前記第2の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮され、その後、さらに内側アンビル加圧域と前記第2の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮され得るように、前記外側部材とは無関係に動く構成とされた、
請求項11に記載の外科用器具。
【請求項13】
前記ステープラ基部は、内側ステープラ基部加圧域を生じさせる内側ステープラ基部部材と、外側ステープラ基部加圧域を生じさせる外側ステープラ基部部材と、を備え、
前記内側ステープラ基部加圧域および外側ステープラ基部加圧域は、前記第2の加圧域であり、
前記内側ステープラ基部部材は、前記第1の胃腸管切断部および前記第2の胃腸管切断部が、まず、前記外側ステープラ基部加圧域と前記第1の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮され、その後、さらに前記内側ステープラ基部加圧域と前記第1の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮されるように、前記外側ステープラ基部部材とは無関係に動く構成とされた、
請求項11または12に記載の外科用器具。
【請求項14】
管状の胃腸管切断部の切断部分に切り込みをつくるためのナイフをさらに備え、
前記第1の本体および/または前記第2の本体は、さらに、使用中、前記第1の加圧域
が加圧する面積と前記第2の加圧域
が加圧する面積とを足し合わせた量が前記管状の胃腸管切断部の前記切断部分の方向に増加する構成とされた、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項15】
前記外科用ステープラは、外科用円形ステープラまたは外科用直線状ステープラである、
請求項11乃至13のいずれか1項に記載の外科用器具。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の外科用器具を有し、
膨潤性ヒドロゲルを備える植え込み可能医療用デバイスであって、
前記膨潤性ヒドロゲルの膨張により力が2つの封着される胃腸管切断部のうちの少なくとも一方に掛けられるように、2つの封着される胃腸管切断部上に配置されるように適用される、
植え込み可能医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体組織を結合し固着させるための外科用器具およびその方法を対象とする。より詳細に、本発明は、胃腸管の吻合を行うための外科用器具を対象とする。
【背景技術】
【0002】
食道、結腸またはその他の部位などの胃腸管の管状器官の2つの切断部の吻合、すなわち接合は、漏出、感染症および線維症などの合併症を伴うことが多い。例えば、吻合部漏出は、従来の円形ステープラによる結腸部分の吻合を含む低位前方切除の場合の約10%に見られる。
【0003】
圧縮吻合術を用いることで、吻合後の合併症の防止に関する良好な結果が得られる(例えば、Kaider-Personら、The American Journal of Surgery(2008)195、818-826参照)。従来の圧縮吻合術は、例えば、胃腸管の2つの組織層を、既知のMurphyボタン、Boeremaノット(knot)、Valtrac(登録商標)または磁気リング(それぞれ、Cossuら、The American Surgeon(2000)(8)、759-762、および、Jansenら、Surgery、Gynecoloy&Obstetrics(1981)153、537-545を参照)などのクランピングデバイスの2つの部材間にクランピングし固着させることを含んでいる。
【0004】
結果が良好にも関わらず、圧縮吻合術には依然として課題がある。よって、吻合処置では、一般に、従来の外科用ステープラの使用が標準である。従来の外科用ステープラは、結腸部分に圧縮を与えず、ステープル間に血液循環が残る。よって、特により実施しやすく、より利用しやすくなるように圧縮吻合術をさらに改善することが望まれる。術後の合併症を減少させるように治癒過程に関して圧縮吻合術を改善することが望まれる。
【0005】
胃腸管の組織は、基本的に、異なるタイプの組織からなる3つの層を含む管状の層状構造となっている。外周層は、主に筋層を含み、次の粘膜下層は、主にコラーゲンを含み、管腔層は、主に粘膜を含む。本発明者らは、吻合部の創傷治癒のための最適な条件に、組織の一次治癒を可能にするために結合すべき胃腸管切断部の粘膜下層を接触させ固着させることが含まれることを発見した。一次治癒は、治癒過程の速度を速め、漏出、感染症および線維症などの危険を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】Kaider-Personら、The American Journal of Surgery(2008)195、818-826
【文献】Cossuら、The American Surgeon(2000)(8)、759-762
【文献】Jansenら、Surgery、Gynecoloy&Obstetrics(1981)153、537-545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
胃腸管切断部の粘膜下層を互いに接触するためには、胃腸管切断部の結合するべき粘膜下層を、隣接する筋層および/または粘膜層から剥がすことが好ましい。本発明者らは、驚くことに、それが、2つの胃腸管切断部の結合するべき部分を互いに重ねて配置し、次いで、筋層および/または粘膜層を押しつぶすように、その2つの胃腸管切断部を加圧域間で圧縮し、続いて、筋層および/または粘膜層が押し分けられ、それに付随して粘膜下層がその筋層および/または粘膜層から剥がされ、両方の粘膜下層が互いに接触するように前記加圧域を増加させることで達成されることを実現した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって、本発明は、ともに2つの表面層(例えば、筋層および粘膜層)および中間層(例えば、粘膜下層)を含む第1の胃腸管切断部と第2の胃腸管切断部との吻合を行う方法およびその外科用器具を提供する。前記方法は、前記胃腸管切断部のそれぞれの表面層(筋層)を接触させることと、接触された切断部を第1の加圧域と第2の加圧域との間で圧縮することと、を含み、第1の加圧域と第2の加圧域とを足し合わせた量(sum)は、圧縮する間に、表面層が押し分けられ中間層が互いに接触するように増加する。
【0009】
本発明は、さらに具体的には、外科用ステープラである外科用器具であって、
- 第1の加圧域を有する第1の本体と、
- 第2の加圧域を有する第2の本体と、
- 第1の本体と第2の本体とを連結する連結手段であり、第1の本体を、第2の本体から遠い開位置と第2の本体に近い閉位置との間で動かす構成とされた連結手段と、を備え、第1および第2の本体は、第1の胃腸管切断部および第2胃腸管切断部を第1の加圧域と第2の加圧域との間で圧縮する構成とされ、圧縮中に第1の加圧域と第2の加圧域とを足し合わせた量が増加する、外科用器具を提供する。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の圧縮の間に、粘膜下層を筋層および/または粘膜層から剥がすことによって吻合方法を改善できることを見出した。本発明の方法は、圧縮中に全加圧域を足し合わせた量を増加させることによって、この圧縮および剥離を可能にする。したがって、圧縮は、最終的な全加圧域に比べ、より小さな全加圧域にて開始される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部を示す。
【
図1B】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、第1および第2の胃腸管切断部内にある外科用器具の第1の本体(20)および第2の本体(30)を示す。
【
図1C】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が第1の本体20と第2の本体30との間で圧縮されている。
【
図1D】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、圧縮中、筋層(11)および粘膜層(13)が押し分けられている。
【
図1E】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、圧縮中、筋層(11)および粘膜層(13)が押し分けられている。
【
図1F】本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図で、
図1Eよりも大きな第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量を示す。
【
図2A】好ましい一実施形態において、膨潤性ヒドロゲル(22,32)を、圧縮された第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部における、結合され封着されるべき部分に適用する。
【
図2B】好ましい一実施形態において、封着される胃腸管切断部に力を掛けるように膨潤性ヒドロゲル(22,32)を膨張させる。
【
図3】ヒドロゲル22、32の特定の一実施形態を概略的に示す。
【
図4A】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、外科用ステープラは、一般的に胃腸管の管腔内で開位置にて適用される。
【
図4B】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、外科用ステープラの使用中、第1の本体20が、第2の本体30から遠い開位置から第2の本体30に近い閉位置の方に向けて動かされる。
【
図4C】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の圧縮が開始される。
【
図4D】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、中間層が粘膜下層12の間にほぼ水密封着が得られる程度まで接触される。
【
図4E】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、中間層が粘膜下層12の間にほぼ水密封着が得られる。
【
図4F】本発明の特に好ましい一実施形態を示し、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の管腔をつなげる。
【
図5A】本発明に係る外科用ステープラの特定の一実施形態の断面図である。
【
図5B】本発明に係る外科用ステープラの特定の一実施形態の切断図である。
【
図6A】内側アンビル部材と外側アンビル部材70とを備えるアンビルの特定の一実施形態の一部を示す。
【
図6B】内側アンビル部材と外側アンビル部材70とを備えるアンビルの特定の一実施形態の一部を示す。
【
図6C】内側アンビル部材と外側アンビル部材70とを備えるアンビルの特定の一実施形態の一部を示す。
【
図6D】内側アンビル部材と外側アンビル部材70とを備えるアンビルの特定の一実施形態の一部を示す。
【
図7A】アンビル40のさらなる一例で、内側アンビル加圧域211および外側アンビル加圧域212が単一加圧域を形成するように接合されるような摺動位置にある連結手段60を示す。
【
図7B】アンビル40のさらなる一例で、内側アンビル加圧域211および外側アンビル加圧域212が単一加圧域を形成するように接合されない摺動位置にある連結手段60を示す。
【
図8A】膨潤性ヒドロゲル22,32の2つのリングを備える外科用ステープラの特定の一実施形態の一部を示す断面図である。
【
図8B】膨潤性ヒドロゲル22,32の2つのリングを備える外科用ステープラの特定の一実施形態の一部を示す斜視図である。
【
図9A】ケーシング50の特定の一実施形態の断面図である。
【
図9B】ケーシング50の特定の一実施形態の切断図である。
【
図10A】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図10B】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図10C】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図10D】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図10E】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図10F】ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える本発明の特定の実施形態の動作を示す。
【
図11】本発明の外科用円形ステープラの特定の一実施形態を示す。
【
図12A】膨潤性ヒドロゲル22,32の表面の、封着適用後に胃腸管切断部に接触しない少なくとも一部に、カバー220を備える外科用器具の好ましい一実施形態を示す。
【
図12B】膨潤性ヒドロゲル22,32の表面の、封着適用後に胃腸管切断部に接触しない少なくとも一部に、カバー220を備える外科用器具の好ましい一実施形態を示す。
【
図13】ヒドロゲル22,32がカバー220および胃腸管切断部にて、ほぼ全体が囲繞されるように、ヒドロゲル22,32の表面全体がカバー220にて覆われる状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1A~
図1Fは、本発明に係る外科用器具の操作方法の特定の一実施形態の概略図である。
図1Aは、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部を示し、各切断部は、粘膜下層(12)(すなわち、中間層)に加え、筋層(11)および粘膜層(13)(すなわち、表面層)を含む。各胃腸管切断部の筋層(11)は、互いに接触される。
図1Bは、それぞれ第1および第2の胃腸管切断部内にある外科用器具の第1の本体(20)および第2の本体(30)を示す。第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部は、第1の加圧域21を含む第1の本体20と、第2の加圧域31を含む第2の本体30との間で圧縮され(
図1C)、その間、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量が圧縮中に増加する(
図1Fは、
図1Eよりも大きな第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量を示す)。圧縮中、筋層(11)および粘膜層(13)は、押し分けられ(
図1Dおよび
図1E)、粘膜下層12は、互いに接触される(
図1F)。筋層(11)および粘膜層(13)は、(
図1Dおよび
図1Eに示すように)胃腸管切断部の管腔の方に向けて、または腸の方(すなわち、図示しないが、胃腸管切断部の外)に向けて押し分けられる。
【0013】
第1および第2の胃腸管切断部の一部は、第1および第2の胃腸管切断部の内腔がつなげられ吻合が完了するように、例えばナイフを用いた切断にて取り除かれ得る(
図1F)。
【0014】
例えば、
図1A~
図1Fに示す本発明の特定の一実施形態において、第1の加圧域21は、第2の加圧域31に対して傾いている、または傾斜している。その結果、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量は、圧縮中に増加する。言い換えると、使用中、第1の加圧域21および/または第2の加圧域31は、圧縮されるべき第1および第2の胃腸管切断部に対して傾斜している、または傾いている。
【0015】
粘膜下層が互いに接触することによって水密封着が実現され、それによって、特に接触部分での細菌汚染が制限され、一次治癒過程が促進される。
【0016】
図2Aおよび
図2Bに示す好ましい一実施形態において、外科用器具の操作方法は、膨潤性ヒドロゲル(22,32)を、圧縮された第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部における、結合され封着されるべき部分に適用する(
図2A)ことと、前記膨潤性ヒドロゲル(22,32)を接触している胃腸管切断部の少なくとも一部上に固着させることと、封着される胃腸管切断部に力を掛けるように前記膨潤性ヒドロゲル(22,32)を膨張させる(
図2B)ことと、をさらに含む。前記膨潤性ヒドロゲル(22,32)は、水または他の流体を吸着することで膨張し、例えば約150体積%の膨張の結果、さらなる粘膜下組織が接触するが(
図2Aおよび
図2B参照)、これらの追加的に接触した粘膜下層12の血管新生が脅かされることはない。腸の層の十分な血管新生は、治癒過程を促進する。
【0017】
例えば、
図2Aおよび
図2Bに示す第1および第2の胃腸管切断部のそれぞれの粘膜下層のさらなる接触は、典型的には、2つのリングであって、それらが内部に配置される第1および第2の胃腸管切断部の内径とほぼ同じ外径をそれぞれ有する2つのリングとなった膨潤性ヒドロゲル(22,32)をもたらすことで達成され得る。膨潤性ヒドロゲル(22,32)の膨張の結果、外向きの力が掛かることになり、その結果、さらなる粘膜下相互接触となる。
【0018】
膨潤性ヒドロゲル(22,32)は、膨潤性ポリウレタンなどの既知のヒドロゲルを含むことができる。膨潤性ヒドロゲル(22,32)は、典型的には、水分を吸着して、ヒドロゲルの原体積量に対して0~100体積%、好ましくは10~80体積%、より好ましくは約50体積%膨張することができる。封着されるべき層の上に配置後の膨潤性ヒドロゲル(22,32)の膨張は、封着および治癒過程を促進する。
【0019】
医療用途の膨潤性ヒドロゲルは既知である。CaloおよびKhutoryanskiyによる、European Polymer Journal 65(2015)、252-267には、膨潤性のヒドロゲル、例えば欧州特許第0524718号明細書に記載のヒドロゲルが開示されている。この目的のためのさらなる適当なヒドロゲルは、例えば、ポリエチレングリコール、および、商品名PolyActive(登録商標)にて販売される、Bosら、Pharmaceutical Technology、2001年10月、p.110-120にて開示されているポリブチレンテレフタレートマルチブロックコポリマー、または、商品名Tecophilic(登録商標)にて販売される、Verstraeteら、International Journal of Pharmaceutics、2016、15、214-221にて開示されている親水性脂肪族ポリエーテルをベースとした熱可塑性ポリウレタンを含むことができる。
【0020】
図3は、ヒドロゲル22、32の特定の一実施形態を概略的に示しており、ここで、ヒドロゲル22,32は、ステープル80にて固着される。
【0021】
ヒドロゲル22,32、要するに第1および第2の胃腸管切断部を固着させる適当な手段には、ステープル、縫合糸、糊および/またはリベットが含まれる。
【0022】
図4A~
図4Fは、本発明の特に好ましい一実施形態を示しており、ここで、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部は、第1の加圧域21を含むアンビル(40)と第2の加圧域32を含むケーシング50とを含む外科用ステープラを用いて圧縮される。外科用ステープラは、一般的に、胃腸管の管腔内で開位置(
図4A)にて適用され、ここで、アンビル40は、第1の胃腸管切断部(例えば、腸の近位部)内に配置され、ケーシング50は、第2の胃腸管切断部(例えば、腸の遠位部)内に配置される。
【0023】
外科用ステープラ上には、ヒドロゲル22,32が用いられてもよい。
【0024】
外科用ステープラの使用中、第1の本体20は、第2の本体30から遠い開位置から、第2の本体30に近い閉位置の方に向けて動かされ(
図4B)、それによって第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の圧縮が開始される(
図4C)。圧縮の間、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量が増加する(
図4B~
図4E参照)。
図4Bにおいて、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量は、傾斜した第1の加圧域21と第2の加圧域31との最初の接触点からなる。
図4Fにおいて、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量は、
図4Bにおける足し合わせた量よりも大きい。
【0025】
圧縮の間、表面層(例えば、筋層(11)および粘膜層(13))が押し分けられ、中間層は、それら(例えば、粘膜下層12)の間にほぼ水密封着が得られる(
図4E)程度まで接触される(
図4D)。
【0026】
外科用ステープラによる圧縮が完了した後、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の管腔をつなげるため(
図4F)、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の一部が、例えばステープラ内に設けられたナイフ(図示せず)を用いた切断にて切り取られる。このナイフによる切断は、従来の円形ステープラにおいても一般的である。
【0027】
好ましくは、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量は、管状切断部の最も近い切断部分(cutting section)の方向、すなわち切断の間、ナイフに最も近い部分の方向、例えばステープラが円形ステープラの場合、ステープラの断面の中心方向に(すなわち、腸の管腔の方に向けて)増加する。これは、加圧域(結合される胃腸管切断部の粘膜下層12の接触部位)の周辺にある癒合が必要な創傷近くに破片、細菌およびその他の望ましくない物質が堆積することを防止する。要するに、この破片および細菌などは、連続性が再生される腸の管腔の方へと押しやられるからである。腸の管腔は、一般に多くの細菌および破片を含むので、破片および細菌を腸の外(すなわち腹腔内に向かう)方向よりも管腔内へと押し込む方が害が少ない。
【0028】
本発明の特別な利点は、膨潤性ヒドロゲル22,32が、接触している中間層上に配置され(例えば、ステープルまたは他の固着手段にて)固着され得ることであり、また、膨潤性ヒドロゲル22,32の膨張によって、血管新生を脅かすことなく粘膜および筋層がさらに押し分けられ、それによって粘膜下層12の水密結合および一次治癒が促進され得ることである。
【0029】
固着手段および膨潤性ヒドロゲル22,32は、典型的には、粘膜下層12の壊死によって患者身体から解放される。
【0030】
好ましい一実施形態において、外科用器具の第1の本体20および/または第2の本体21は、膨潤性ヒドロゲル22,32を備える。膨潤性ヒドロゲル22,32は、使用中、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が膨潤性ヒドロゲル22,32の間で少なくとも部分的に圧縮されるように、第1および/または第2の本体20,21上に位置決めされる。
【0031】
膨潤性ヒドロゲル22,32がある場合、膨潤性ヒドロゲル22,32の表面域の少なくとも一部は、胃腸管切断部が間で圧縮される第1および/または第2の加圧域21,31の一部である。特定の一実施形態では、全加圧域が、全体的に膨潤性ヒドロゲル22,32にて構成される。他の実施形態で、膨潤性ヒドロゲル22,32は、胃腸管切断部が間で圧縮される全加圧域の一部のみをもたらす。
【0032】
膨潤性ヒドロゲル22,32は、例えば、固着手段によって、第1および/または第2の本体20,30に固着される。そのような手段の例としては、例えば、第1および/または第2の本体20,30から膨潤性ヒドロゲル22,32の内部へと突出するピンが挙げられる。それに加え、または別法として、ヒドロゲル22,32、ならびに/または、第1および/または第2の本体20,30が、ヒドロゲル22,32が第1および/または第2の本体20,30に緩く接着する接着性を有してもよい。第1および/または第2の本体20,30への膨潤性ヒドロゲル22,32の固着は、解放可能または解放不能にできる。
【0033】
好ましい解放不能な固着は、例えば、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部の、例えばナイフを用いた切断により(上記参照)除去される切断部の一部と一緒に除去される切断部にヒドロゲル22,32を固着させることで実現される。言い換えると、ヒドロゲル22,32もナイフにて切断され、第1および/または第2の本体20,30に固着している部分は、第1および/または第2の本体20,30ならびに第1および第2の胃腸管切断部の除去されるべき切断部と一緒に除去される。
【0034】
例えば、外科用ステープラが円形の外科用ステープラであり、ヒドロゲル22,32が1つまたは2つのリングにて構成され(上記参照)、円形の外科用ステープラが円形ナイフを備える特定の一実施形態において、ヒドロゲル22,32を含むリングの内径は、ヒドロゲル22,32を固着させる手段(例えば、ステープルおよび/またはリベット)にてヒドロゲル22,32が固着された後となるように、円形ナイフの直径よりも小さくてよい。円形の外科用ステープラは、さらに、円形の外科用ステープラに固着されたヒドロゲル22,32を含むリングの部分と、胃腸管切断部に固着されたヒドロゲル22,32を含むリングの部分とを分離するように、ナイフが切り込みを作り出すことができるように構成され得る。切り込みは、外科用ステープラのアンビル40とケーシング50との間で位置リングを維持することによって、ヒドロゲル22,32を含むリングが胃腸管切断部に固着される前に作り出されてもよい。
【0035】
外科用ステープラのような従来の外科用器具は、EthiconおよびMedtronicによるそれぞれ商品名Endopath(登録商標)、およびDST Series(登録商標) EEA(登録商標)ステープラとして既知であり、例えば、本明細書にともに組み込まれる米国特許公開第2005059996号明細書、および米国特許第6503257号明細書に開示されている。従来のステープラは、腸の粘膜下層に接触できない。従来のステープラは、一般的に、動作およびステープル留めの間に、アンビルとステープラケーシングとの間にわずかな距離(約1.5~2mm)が残るように構成されている。その結果、従来通りにステープル留めされた吻合部となり、それが二次的(secundam)に(二次)治癒する。
【0036】
本発明に係る外科用器具は、粘膜下層12の接触を可能にし、接触した粘膜下層12間に水密封着をもたらすことを可能にする。これは、一次治癒過程による吻合部の創傷治癒を可能にする。本外科用器具の第1および第2の本体20,30は、吻合が実施される胃腸管切断部が間で圧縮される総加圧域(すなわち、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量)が圧縮中に増加するように、形作られるまたは構成される。圧縮が比較的小さな総加圧域により始まるそのような形状をもたらすことによって、中間層を覆う表面層(すなわち、筋層11および粘膜層13)が圧縮されて押し分けられる。さらなる圧縮の間、これらの表面層は、総加圧域の増加によりさらに押し分けられる。こうして、露出した粘膜下層12の総面積が増加し、それ自体が接触および固着される。
【0037】
特定の一実施形態で、第1および/または第2の本体20,30は、(例えば、
図4A~
図4Fおよび
図10A~
図10Fに示すように)、使用中、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が、まず、傾いた第1の加圧域21および/または傾いた第2の加圧域31の間で圧縮されるように構成される。
【0038】
特に好ましい一実施形態で、外科用器具は、第1の本体20がアンビル40を備え、第2の本体30は、ステープルカートリッジおよびステープル80がアンビル40に対してその中を動くことが可能なステープラ基部を含むケーシング50を備える、外科用ステープラを具備する。
【0039】
図5Aおよび
図5Bは、本発明に係る外科用ステープラの特定の一実施形態の断面図(
図5A)および切断(cut-through)図(
図5B)である。第1の加圧域21を含むアンビル40は、連結手段60(例えば、ねじ山を備える伸縮シャフト)によって、第2の加圧域31を含むケーシング50に連結される。アンビル40およびケーシング50における、第1および第2の加圧域21,31を含む部分は、膨潤性ヒドロゲル22,32を備えることができる。
【0040】
本外科用ステープラは、上述した
図4A~
図4Fに示すように操作できる。ヒドロゲル22,32は、典型的には、最適な封着が得られるように、中間(粘膜下)層が第1と第2の加圧域21,31とを足し合わせた量の全体に亘って接触され固着され得るように(
図4Dおよび
図4F参照)、多少抵抗可能に圧縮可能(resistibly compressible)である。
【0041】
発明者らは、驚くことに、吻合部の漏出の一部がマイクロバイオームによるものであることを見出した。いかなる理論にも拘束されずに、特定の細菌(例えば、エンテロコッカスファエカリス)が、コラーゲンを溶解できる酵素を分泌できると考えられる。(例えば、Van Praaghら、Surgical Endoscopy(2016)30、2259-2265、および、Shoganら、Science Translational Medicine(2015)7、286ra68参照)。そのような細菌の増殖を制限または阻止するため、ヒドロゲル22,32は、1つまたは複数の抗生物質を含むことが好ましい。適当な抗生物質としては、ポリミキシンE、トブラマイシン、アンホテリシンB、バンコマイシンおよびゲンタマイシンが挙げられる。(例えば、Schardeyら、Annals of Surgery(1997)225、172-180、および、Roosら、British Journal of Surgery(2013)100、1579-1588参照)
図12Aおよび
図12Bに示す好ましい一実施形態において、外科用器具は、膨潤性ヒドロゲル22,32の表面の、封着適用後に胃腸管切断部に接触しない少なくとも一部に、カバー220を備える。したがって、抗生物質の送達は、胃腸管の組織の封着組織切断部の方に向けられ、また、より高用量の抗生物質が送達され得るようになる。
図13に示すように、ヒドロゲル22,32がカバー220および胃腸管切断部にて、ほぼ全体が囲繞されるように、ヒドロゲル22,32の前記表面全体がカバー220にて覆われることが好ましい。
【0042】
従来の外科用ステープラと同様、ケーシング50は、ステープルカートリッジと、ステープル80がアンビル40に対してその中を動くことが可能なステープラ基部とを備えることができる。別法として、またはそれに加え、ケーシング50は、リベットカートリッジ、および、リベットを封着される中間(粘膜下)層の中および任意の選択で存在するヒドロゲル22,32の中に通すための1つまたは複数のドライバを備えることもできる。
【0043】
特定の一実施形態において、外科用ステープラのアンビル40は、内側アンビル加圧域を有する内側アンビル部材と、外側アンビル加圧域を有する外側アンビル部材とを備える。前記内側アンビル加圧域および外側アンビル加圧域は、第1の加圧域部である。内側アンビル部材は、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が、まず、外側アンビル加圧域と第2の加圧域31の少なくとも一部との間で圧縮され、その後、さらに内側アンビル加圧域と第2の加圧域31の少なくとも一部との間で圧縮され得るように、外側アンビル部材とは無関係に動くことができる構成とされる。
【0044】
図6A~
図6Dは、内側アンビル加圧域211を含む内側アンビル部材と、さらに、外側アンビル加圧域212を含む外側アンビル部材70とを備えるアンビルの特定の一実施形態の一部を示している。外側アンビル加圧域212を含む外側アンビル部材70のリムの幅は、典型的には約1mmである。この幅は、アンビルを備える外科用ステープラの所望の用途に応じて変えることができる。
【0045】
内側および外側アンビル部材70は、アンビルをケーシング(図示せず)にも連結する連結手段60にて連結され得る。この特定の実施形態で、連結手段60は、内側アンビル加圧域211および外側アンビル加圧域212が単一の加圧域を形成するように接合されるように、内側アンビル部材が外側アンビル部材70とは無関係に摺動できる構成とされる。術中、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部は、まず、表面組織層を押し分け中間(粘膜下)層を互いに結合するように、外側アンビル加圧域212と第2の加圧域(図示せず)との間で圧縮される。その後、内側アンビル加圧域211が外側アンビル加圧域212に接合するように内側アンビル部材を摺動させることによって、第1の加圧域21と第2の加圧域31を足し合わせた量が増加し、それによって表面組織層のより多くがわきへと摺動し、中間層間の完全な接触が可能になる。
【0046】
図7Aおよび
図7Bは、内側アンビル部材および外側アンビル部材70を備えるアンビル40のさらなる一例である。
図7Bは、内側アンビル加圧域211および外側アンビル加圧域212が単一加圧域を形成するように接合されない摺動位置にある連結手段60を示す。
図7Aにおいて、連結手段60は、内側アンビル加圧域211および外側アンビル加圧域212が単一加圧域を形成するように接合されるような摺動位置にある。
【0047】
アンビル40が内側アンビル部材および外側アンビル部材70を備える実施形態において、アンビル40は、膨潤性ヒドロゲル22,32をさらに備えることもできる。
図8Aおよび
図8Bは、膨潤性ヒドロゲル22,32の2つのリングを備える外科用ステープラの特定の一実施形態の一部を示している。
図8Aは断面図、
図8Bは斜視図である。膨潤性ヒドロゲルの一方のリング22は、外側アンビル部材70内において、内側アンビル部材上に位置している。膨潤性ヒドロゲルの他方のリング32は、ケーシング50の突出リムを備える部分内に位置している。加圧域311を含む膨潤性ヒドロゲルのリング22は、加圧域312と相まって、第2の加圧域を形成する。
【0048】
他の特定の実施形態において、外科用ステープラのステープラ基部は、内側ステープラ基部加圧域を有する内側ステープラ基部部材と、外側ステープラ基部加圧域を有する外側ステープラ基部部材とを備える。前記内側ステープラ基部加圧域および外側ステープラ基部加圧域は、第2の加圧域部である。内側ステープラ基部部材は、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が、まず、外側ステープラ基部加圧域と第1の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮され、その後、さらに内側ステープラ基部加圧域と第1の加圧域の少なくとも一部との間で圧縮されるように、外側ステープラ基部部材とは無関係に動くことができるように構成される。
【0049】
図9Aおよび
図9Bは、内側ステープラ基部部材51および外側ステープラ基部部材52を含むステープラ基部を備えるケーシング50の特定の一実施形態の断面図(
図9A)および切断図(
図9B)である。例示のため、特定のアンビルも図示しているが、図示するステープラ基部は、他のアンビル(例えば、上述した内側アンビル部材と外側アンビル部材とを備えるアンビル)とを組み合わせることもできる。さらに、図には、任意の選択で存在するヒドロゲル31も示している。ヒドロゲル31がある場合、内側ステープラ基部加圧域311および外側ステープラ基部加圧域312は、ヒドロゲル31の一部にできる。ステープラ基部は、内側ステープラ基部加圧域311および外側ステープラ基部加圧域312が単一の加圧域を形成するように接合されるように内側ステープラ基部部材51が外側アンビルとは無関係に摺動できる構成とされ得る。
【0050】
図10A~
図10Fは、ステープラ基部が内側ステープラ基部部材51と外側ステープラ基部部材52とを備える、上述した本発明の特定の実施形態の動作を示している。本明細書の上記と同様に、ステープル留め器具は、層11,12,13を有する第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部が、まず、表面組織層を押し分け中間(粘膜下)層を互いに結合するように、第1の加圧域21と外側ステープラ基部加圧域312との間で圧縮されるように操作される(
図10A~
図10D参照)。その後、内側ステープラ基部加圧域311が外側ステープラ基部加圧域312に接合するように内側ステープラ基部部材51を摺動させることで、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量が増加し、それによって表面組織層のより多くが脇へと摺動し、中間層間の完全な接触が可能になる(
図10E参照)。例えばステープル80によるヒドロゲルのリング22,32の固着後、ナイフ(図示せず)が、固着された管切断部を残すようにして(
図10F参照)、第1の胃腸管切断部および第2の胃腸管切断部のドーナッツ形切断部を切り取ることができる。
【0051】
アンビル40および/またはステープル基部が内側部材と外側部材とを備える実施形態の場合、それがアンビル40および/またはケーシング50の外縁から突出していることが好ましい。例えば、外科用器具が外科用円形ステープラである場合、ヒドロゲルのリング22,32の外径は、アンビル40および/またはケーシング50のどちらかが内側部材および外側部材を備えるとしても、アンビル40および/またはケーシング50の外径よりも大きいことが好ましい。アンビル40および/またはステープル基部の縁からのヒドロゲル22,32の突出は、圧縮されたときにヒドロゲルが外側部材にて内側に向けて押される危険を減少させる。それによって、本発明の器具および方法の全体的な信頼性が向上する。
【0052】
本発明による外科用器具は、典型的には、胃腸管切断部の切断部分に切り込みを作り出すためのナイフをさらに備える。第1の本体20および/または第2の本体30は、さらに使用中、第1の加圧域21と第2の加圧域31とを足し合わせた量が、例えば円形ステープラの断面の中心方向、すなわち腸の管腔である管状の胃腸管切断部の最も近い切断部分の方向に増加するように構成されることが好ましい。切断後、胃腸管切断部の一部は、第1および第2の胃腸管切断部の管腔を繋げるために除去され得る。第1および第2の本体20,30を、加圧域21,31を足し合わせた量が切断部分の方に向けて増加するように構成することによって、破片、細菌およびその他の望ましくない材料が腸の管腔の方に向けて押されるようになり、それによって本明細書にて上述したように一次創傷治癒部位を妨害しなくなる。それによって、吻合部の創傷治癒が促進される。
【0053】
図11は、本発明の外科用円形ステープラの特定の一実施形態を示している。外科用円形ステープラは、連結手段60によって連結されるアンビル40とケーシング50とを備える。外科用円形ステープラは、膨潤性ヒドロゲルのリング22,32をさらに備えることもできる。
【0054】
外科用円形ステープラの好ましい一実施形態で、膨潤性ヒドロゲルのリング22,32の一方または両方は、これらリング22,32の内径のところに隆起縁214,314を備える(
図9Aおよび
図9B参照)。この隆起縁214,314は、例えば接着剤を用いておよび/またはクランピングによって、アンビル40またはケーシング50の膨潤性ヒドロゲルのリング22,32に固着される。ヒドロゲルのリング22,32が胃腸管切断部に配置され、例えばステープル80にて固着された後、ナイフが、隆起縁214,314を備えるヒドロゲルのリング22,32の内側部が除去されるべき胃腸管切断部のドーナツ形状部と一緒に除去されるように、ヒドロゲルのリング22,32の隆起縁214,314と外径との間に切り込みを作り出すことができる。
【0055】
アンビル40およびケーシング50を連結する連結手段60は、アンビル40をケーシング50から遠い開位置とケーシング50に近い閉位置との間で動かすように構成される。開位置と閉位置との間の動きは、例えば、調節手段90を回すことで実施できる。圧縮は、アンビル40を閉位置にした後に調節手段90を回し続けることで実施できる。アンビル40をケーシング50に対して所望の位置にした後、接触した胃腸管切断部を固着させるようにレバー100を操作できる。
【0056】
本発明に係る外科用ステープラは、アンビル40が、閉位置ではケーシング50から、例えば約1.4mmである最小の所定距離にある構成とされる。典型的には、腸切断部の粘膜下層12は、1.4mmよりも若干厚い。アンビル40とケーシング50との間の距離が最小距離(例えば、1.4mm)未満になり得ないように外科用ステープラを構成することによって、粘膜下層12の望ましくない過圧縮およびこれらの層12の切断または引き裂きが防止される。しかしながら、粘膜下層12の厚さは、患者ごとに様々である。
【0057】
本発明に係る外科用ステープラは、圧縮力が示されるように適用されることが好ましい。そのような構造の利点は、加圧域21,31に粘膜下層12を押しつぶさせ破壊させることがある過剰な圧縮力を回避することである。
【0058】
好ましい一実施形態において、外科用器具の圧縮は、段階的に修正可能に達成できる。不完全に圧縮されたステープラは、操作する外科医が、例えば必要に応じて胃腸管のうちの1つにおける任意の張力を解放するようにステープラの位置を動かすことができるように、解放され得ることが好ましい。
【0059】
図4~
図11は、外科用円形ステープラの特定の実施形態を示している。しかしながら、本発明に係る外科用ステープラは、外科用円形ステープラに限定されず、外科用直線状ステープラを含むこともできる。