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特許7325341非天然ヌクレオチドの組み込み及びその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】非天然ヌクレオチドの組み込み及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230804BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12P21/00 C
【請求項の数】 56
(21)【出願番号】P 2019572821
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018041509
(87)【国際公開番号】W WO2019014267
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】62/531,325
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520000928
【氏名又は名称】シンソークス,インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】501244222
【氏名又は名称】ザ スクリプス リサーチ インスティテュート
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プタシン,ジェロド
(72)【発明者】
【氏名】カファロ,カロリーナ
(72)【発明者】
【氏名】エルニ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ヨーク
(72)【発明者】
【氏名】フィシャー,エミル シー.
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン,アーロン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ディエン,ヴィヴィアン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロムズバーグ,フロイド イー.
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/115168(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/157555(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0183761(US,A1)
【文献】国際公開第2009/038195(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/021432(WO,A1)
【文献】Zhang, Y. et al.,A semisynthetic organism engineered for the stable expansion of the genetic alphabet,PNAS,2017年,114 (6),1317-1322
【文献】Wan, W. et al.,Pyrrolysyl-tRNA synthase: an ordinary enzyme but an outstanding genetic code expansion tool,Biochim Biophys Acta,2014年,1884(6),1059-1070
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
15/00 - 15/90
C12P 1/00 - 41/00
C07K 1/00 - 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非天然アミノ酸を含有するタンパク質を産生する方法であって、該方法は、
突然変異体tRNAを調製する工程であって、該突然変異体tRNAは、
GGY、GYG、YGG、GAY、GYA、YGA、GCY、GYC、YGC、GUY、GYU、YGU、CAY、CYA、YCA、CGY、CYG、YCG、CUY、CYU、YCU、CCY、CYC、YCC、AAY、AYA、YAA、AGY、AYG、YAG、ACY、AYC、YAC、AUY、AYU、YAU、UUY、UYU、YUU、UAY、UYA、YUA、UGY、UYG、YUG、UCY、UYC、YUC、GYY、YGY、YYG、CYY、YCY、YYC、AYY、YAY、YYA、UYY、YUY、YYU、YYY、GGX、GXG、XGG、GAX、GXA、XGA、GCX、GXC、XGC、GUX、GXU、XGU、CAX、CXA、XCA、CGX、CXG、XCG、CUX、CXU、XCU、CCX、CXC、XCC、AAX、AXA、XAA、AGX、AXG、XAG、ACX、AXC、XAC、AUX、AXU、XAU、UUX、UXU、XUU、UAX、UXA、XUA、UGX、UXG、XUG、UCX、UXC、XUC、GXX、XGX、XXG、CXX、XCX、XXC、AXX、XAX、XXA、UXX、XUX、XXU、又はXXXから選択される突然変異体アンチコドン配列を含み、ここで、X及びYはそれぞれ
【化1】
から選択される非天然核酸塩基を含む非天然ヌクレオチドである、工程、
突然変異体mRNAを調製する工程であって、該突然変異体mRNAは、
GGY、GYG、YGG、GAY、GYA、YGA、GCY、GYC、YGC、GUY、GYU、YGU、CAY、CYA、YCA、CGY、CYG、YCG、CUY、CYU、YCU、CCY、CYC、YCC、AAY、AYA、YAA、AGY、AYG、YAG、ACY、AYC、YAC、AUY、AYU、YAU、UUY、UYU、YUU、UAY、UYA、YUA、UGY、UYG、YUG、UCY、UYC、YUC、GYY、YGY、YYG、CYY、YCY、YYC、AYY、YAY、YYA、UYY、YUY、YYU、YYY、GGX、GXG、XGG、GAX、GXA、XGA、GCX、GXC、XGC、GUX、GXU、XGU、CAX、CXA、XCA、CGX、CXG、XCG、CUX、CXU、XCU、CCX、CXC、XCC、AAX、AXA、XAA、AGX、AXG、XAG、ACX、AXC、XAC、AUX、AXU、XAU、UUX、UXU、XUU、UAX、UXA、XUA、UGX、UXG、XUG、UCX、UXC、XUC、GXX、XGX、XXG、CXX、XCX、XXC、AXX、XAX、XXA、UXX、XUX、XXU、又はXXXから選択される突然変異体コドン配列を含み、ここで、X及びYはそれぞれ
【化2】
から選択される非天然核酸塩基を含む非天然ヌクレオチドである、工程、及び
非天然アミノ酸を含有するタンパク質を、突然変異体tRNA及び突然変異体mRNAを利用して合成する工程であって、ここで、突然変異体tRNAの突然変異体アンチコドンは、突然変異体mRNAの突然変異体コドンと対になる、工程、を含み、
ここで、前記タンパク質は、細胞において合成され、細胞は、フェオダクチルム・トリコルヌーツムからのヌクレオシド三リン酸輸送体及びアミノアシルtRNAシンテターゼを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記細胞は微生物を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞は細菌を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は大腸菌を含む、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記突然変異体mRNA又は前記突然変異体tRNAの前記非天然核酸塩基は、
【化3】
から選択される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記突然変異体mRNA又は前記突然変異体tRNAの前記非天然核酸塩基は、
【化4】
から選択される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記突然変異体mRNA及び/又は前記突然変異体tRNA中の非天然核酸塩基は、
【化5】
から選択される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記突然変異体mRNA中の非天然核酸塩基は、
【化6】
である、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記突然変異体tRNA中の非天然核酸塩基は、
【化7】
である、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記非天然ヌクレオチドは更に非天然糖部分を含む、ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記非天然ヌクレオチドの前記非天然糖部分は、2’位置での修飾:OH;置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、又はO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NHF;O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニル、N-アルキニル;O-アルキル-O-アルキル、2’-F、2’-OCH、2’-O(CHOCHであって、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換のC-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCHであってもよく、n及びmは1~10である、2’位置での修飾;及び/又は、5’位置での修飾:5’-ビニル、5’-メチル(R又はS)、4’位置での修飾、4’-S、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
突然変異体アンチコドン又は突然変異体コドンは更に非天然バックボーンを含む、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1つに記載の方法。
【請求項13】
突然変異体アンチコドン及び突然変異体コドンは更に非天然バックボーンを含む、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってmRNAへと転写中に組み込まれて、前記突然変異体コドンを含有する前記突然変異体mRNAを生成する、ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1つに記載の方法
【請求項15】
非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってtRNAへと転写中に組み込まれて、前記突然変異体アンチコドンを含有する前記突然変異体tRNAを生成する、ことを特徴とする請求項1乃至14の何れか1つに記載の方法。
【請求項16】
前記突然変異体tRNAに、非天然アミノ酸残基がチャージされる、ことを特徴とする請求項1乃至15の何れか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記非天然アミノ酸はp-アジド-フェニルアラニン(pAzF)である、ことを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の方法。
【請求項18】
前記非天然アミノ酸は、N-[(2-プロピニルオキシ)カルボニル]-L-リジン(PrK)である、ことを特徴とする請求項1乃至16の何れか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記突然変異体tRNAは、メタノサルシナ・マゼイからのtRNAの突然変異体である、ことを特徴とする請求項1乃至18の何れか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、ピロリシルtRNAシンテターゼである、ことを特徴とする請求項1乃至19の何れか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、チロシルtRNAシンテターゼである、ことを特徴とする請求項1乃至19の何れか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、メタノサルシナ・バーケリに由来する、ことを特徴とする請求項1乃至21の何れか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、メタノカルドコックス・ヤンナスキイに由来する、ことを特徴とする請求項1乃至21の何れか1つに記載の方法。
【請求項24】
a.フェオダクチルム・トリコルヌーツムからのヌクレオシド三リン酸輸送体と、
b.
【化8】
から選択される非天然核酸塩基を含む突然変異体アンチコドンを含む突然変異体tRNAと、
c.アミノアシルtRNAシンテターゼと、
d.
【化9】
から選択される非天然核酸塩基を含む突然変異体コドンを含むmRNAと
を含み、ここで、突然変異体tRNAの突然変異体アンチコドンは、突然変異体mRNAの突然変異体コドンと対になる、細胞。
【請求項25】
前記細胞は更に、tRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項24に記載の細胞。
【請求項26】
前記細胞は更に、アミノアシルtRNAシンテターゼをコードするオリゴヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項24又は25に記載の細胞。
【請求項27】
前記細胞は更に、mRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項24乃至26の何れか1つに記載の細胞。
【請求項28】
前記細胞は更に、tRNA及びmRNAをコードするオリゴヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項24乃至27の何れか1つに記載の細胞。
【請求項29】
前記細胞は更に、tRNA、mRNA、及びアミノアシルtRNAシンテターゼをコードするオリゴヌクレオチドを含む、ことを特徴とする請求項24乃至28の何れか1つに記載の細胞。
【請求項30】
tRNAは、GYT及びGYCから選択される1つ以上のアンチコドンを含み、ここで、Yは前記非天然核酸塩基である、ことを特徴とする請求項24乃至29の何れか1つに記載の細胞。
【請求項31】
tRNAはアンチコドンGYTを含む、ことを特徴とする請求項30に記載の細胞。
【請求項32】
tRNAはアンチコドンGYCを含む、ことを特徴とする請求項30に記載の細胞。
【請求項33】
mRNAは、AXC及びGXCから選択される1つ以上のコドンを含み、ここで、Xは前記非天然核酸塩基である、ことを特徴とする請求項24乃至32の何れか1つに記載の細胞。
【請求項34】
mRNAはコドンAXCを含む、ことを特徴とする請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
mRNAはコドンGXCを含む、ことを特徴とする請求項33に記載の細胞。
【請求項36】
非天然核酸塩基Yは、
【化10】
であることを特徴とする、請求項30乃至32の何れか1つ、あるいは請求項30乃至32の何れか1つに従属する場合の請求項33乃至35の何れか1つ、に記載の細胞。
【請求項37】
非天然核酸塩基Yは、
【化11】
であることを特徴とする、請求項30乃至32の何れか1つ、あるいは請求項30乃至32の何れか1つに従属する場合の請求項33乃至35の何れか1つ、に記載の細胞。
【請求項38】
非天然核酸塩基Xは、
【化12】
である、ことを特徴とする請求項33乃至35あるいは37の何れか1つに記載の細胞。
【請求項39】
非天然核酸塩基Xは、
【化13】
である、ことを特徴とする請求項33乃至36の何れか1つに記載の細胞。
【請求項40】
mRNAは以下の非天然核酸塩基
【化14】
を含み、tRNAは以下の非天然核酸塩基
【化15】
を含む、ことを特徴とする請求項24乃至35、37、及び38の何れか1つに記載の細胞。
【請求項41】
突然変異体mRNA及び/又は突然変異体tRNA中の前記非天然核酸塩基は、
【化16】
から選択される、ことを特徴とする請求項24乃至29の何れか1つに記載の細胞。
【請求項42】
突然変異体mRNA中の前記非天然核酸塩基は、
【化17】
である、ことを特徴とする請求項41に記載の細胞。
【請求項43】
突然変異体tRNA中の前記非天然核酸塩基は、
【化18】
である、ことを特徴とする請求項41又は42に記載の細胞。
【請求項44】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼはメタノサルシナ・バーケリに由来する、ことを特徴とする請求項24乃至43の何れか1つに記載の細胞。
【請求項45】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼはメタノカルドコックス・ヤンナスキイに由来する、ことを特徴とする請求項24乃至43の何れか1つに記載の細胞。
【請求項46】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、ピロリシルtRNAシンテターゼである、ことを特徴とする請求項24乃至45の何れか1つに記載の細胞。
【請求項47】
前記アミノアシルtRNAシンテターゼは、チロシルtRNAシンテターゼである、ことを特徴とする請求項24乃至45の何れか1つに記載の細胞。
【請求項48】
前記突然変異体tRNAはメタノサルシナ・マゼイからのtRNAの突然変異体である、ことを特徴とする請求項24乃至47の何れか1つに記載の細胞。
【請求項49】
前記細胞は微生物である、ことを特徴とする請求項24乃至48の何れか1つに記載の細胞。
【請求項50】
前記細胞は細菌である、ことを特徴とする請求項24乃至48の何れか1つに記載の細胞。
【請求項51】
前記細胞は大腸菌である、ことを特徴とする請求項24乃至48の何れか1つに記載の細胞。
【請求項52】
非天然アミノ酸を含むタンパク質を細胞内で生成する方法であって、前記方法は、
ヌクレオシド三リン酸輸送体を使用して、請求項24乃至51の何れか1つに記載の細胞内に非天然ヌクレオチドを輸送する工程と、
前記細胞に非天然アミノ酸を提供する工程と
を含み、
ここで、前記非天然ヌクレオチドは、非天然オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチドの転写中に、RNAポリメラーゼによって組み込まれて、突然変異体mRNA及び突然変異体tRNAを生成し、及び、
前記非天然アミノ酸を含むタンパク質は、前記突然変異体mRNAの翻訳中に、前記突然変異体tRNAを利用して生成される、
方法。
【請求項53】
前記細胞に輸送された前記非天然ヌクレオチドは、非天然核酸塩基を含む、ことを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記非天然核酸塩基は、
【化19】
である、ことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記非天然アミノ酸はp-アジド-フェニルアラニン(pAzF)である、ことを特徴とする請求項52乃至54の何れか1つに記載の方法。
【請求項56】
前記非天然アミノ酸はN-[(2-プロピニルオキシ)カルボニル]-L-リジン(PrK)である、ことを特徴とする請求項52乃至54の何れか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年7月11日出願の米国仮特許出願62/531,325号の利益を主張するものであり、当該文献は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチド及びその適用は生物工学に革新をもたらした。しかし、DNAとRNAの両方を含むオリゴヌクレオチドは各々、DNAでは4つの天然ヌクレオチドとしてアデノシン(A)、グアノシン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、ならびに、RNAでは4つの天然ヌクレオチドとしてアデノシン(A)、グアノシン(G)、シトシン(C)、及びウリジン(U)のみを含有し、これによりオリゴヌクレオチドの潜在的な機能及び用途が大きく制限される。
【0003】
例えば、PCR又は等温の増幅系よってポリメラーゼを用いてオリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)を配列特異的に合成する/増幅する能力(例えば、T7 RNAポリメラーゼを用いる転写)には、生物工学に革新をもたらした。ナノテクノロジーにおける潜在的な適用の全てに加えて、これにより、RNAとDNAのアプタマーと酵素のSELEX(試験管内進化法(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment))を介してインビトロの発達などの多様な範囲の新しい技術が使用可能となった。例えば、Oliphant AR, Brandl CJ & Struhl K (1989), Defining the sequence specificity of DNA-binding proteins by selecting binding sites from random-sequence oligonucleotides: analysis of yeast GCN4 proteins, Mol. Cell Biol.,9:2944-2949;Tuerk C & Gold L (1990), Systematic evolution of ligands by exponential enrichment: RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase, Science, 249:505-510;Ellington AD & Szostak JW (1990), In vitro selection of RNA molecules that bind specific ligands, Nature, 346:818-822を参照。
【0004】
幾つかの態様において、こうした適用は、天然の遺伝子アルファベット(DNA中の4つの天然ヌクレオチドA、C、G、及びT、ならびに、RNA中の4つの天然のヌクレオチドA、C、G、及びU)に存在する限定された化学的/物理的な多様性によって制限される。本明細書には、拡張された遺伝子アルファベットを含有する核酸を生成する付加的な方法が開示される。
【発明の概要】
【0005】
本明細書には、特定の実施形態において、非天然アミノ酸を含有するタンパク質を産生する方法が開示され、該方法は、突然変異体tRNAを調製する工程であって、該突然変異体tRNAは表1又は2から選択される突然変異体アンチコドン配列を含む、工程;突然変異体mRNAを調製する工程であって、該突然変異体mRNAは表1又は2から選択される突然変異体コドン配列を含む、工程;及び非天然アミノ酸を含有するタンパク質を、突然変異体tRNA及び突然変異体mRNAを利用して合成する工程を含む。幾つかの例において、タンパク質は無細胞翻訳系において合成される。幾つかの例において、タンパク質は細胞(半合成生物又はSSO)において合成される。幾つかの例において、半合成生物は微生物を含む。幾つかの例において、半合成生物は細菌を含む。幾つかの例において、半合成生物は大腸菌を含む。幾つかの例において、突然変異体tRNAの突然変異体アンチコドンは、表1-3から選択された突然変異体コドンと対になる。幾つかの例において、非天然アミノ酸は少なくとも1つの非天然ヌクレオチドを含む。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは非天然核酸塩基を含む。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドの非天然塩基は、2-アミノアデニン-9-イル、2-アミノアデニン、2-F-アデニン、2-チオウラシル、2-チオ-チミン、2-チオシトシン、アデニン及びグアニンの2-プロピル及びアルキル誘導体、2-アミノ-アデニン、2-アミノ-プロピル-アデニン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、2’-デオキシウリジン、2-アミノ-2’-デオキシアデノシン、3-デアザグアニン、4-チオ-ウラシル、4-チオ-チミン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、5-メチル-シトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、5-ブロモ、ならびに、5-トリフルオロメチルウラシル及びシトシン;5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-プロピニルシトシン、5-ウラシル、5-置換、5-ハロ、5-置換ピリミジン、5-ヒドロキシシトシン、5-ブロモシトシン、5-ブロモウラシル、5-クロロシトシン、塩素付加されたシトシン、シクロシトシン、シトシンアラビノシド、5-フルオロシトシン、フルオロピリミジン、フルオロウラシル、5,6-ジヒドロシトシン、5-ヨードシトシン、ヒドロキシ尿素、ヨードウラシル、5-ニトロシトシン、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、及び5-ヨードウラシル、アデニンとグアニンの6-アルキル誘導体、6-アザピリミジン、6-アゾ-ウラシル、6-アゾ-シトシン、アザシトシン、6-アゾ-チミン、6-チオ-グアニン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザグアノシン(deazaguanosine)、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザグアニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、及び8-ヒドロキシルで置換されたアデニンならびにグアニン;N4-エチルシトシン、N-2置換プリン、N-6置換プリン、O-6置換プリン、二重形成の安定を増加させるもの、ユニバーサル核酸、疎水性核酸、乱交雑の核酸、サイズ拡張した核酸、フッ素処理した核酸、三環式ピリミジン、フェノキサジン、シチジン([5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン、G-クランプ、フェノキサジンシチジン(9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-カルボキシヒドロキシメチルウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5オキシ酢酸、ワイブトシン、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピルウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリン、ならびに、プリン塩基又はピリミジン塩基が複素環式化合物により置換されるものから成る群から選択される。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、以下の式(核酸塩基部分のみを示し、リボース及びリン酸塩のバックボーンは明瞭さのために省略する)から成る群から選択される。
【0006】
【化1】
【0007】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、以下の式(核酸塩基部分のみを示し、リボース及びリン酸塩のバックボーンは明瞭さのために省略する)から成る群から選択される。
【0008】
【化2】
【0009】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは更に非天然糖部分を含む。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドの非天然糖部分は、2’位置での修飾:OH;置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、又はO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SO、CH、ONO、NO、N、NHF;O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニル、N-アルキニル;O-アルキル-O-アルキル、2’-F、2’-OCH、2’-O(CHOCHから成る群から選択され、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換のC-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び-O(CHON[(CHCHであってもよく、n及びmは1~約10であり;及び/又は、前記非天然糖部分は、5’位置での修飾:5’-ビニル、5’-メチル(R又はS)、4’位置での修飾、4’-S、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、介入物、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。幾つかの例において、突然変異体アンチコドン又は突然変異体コドンは更に非天然バックボーンを含む。幾つかの例において、突然変異体アンチコドン及び突然変異体コドンは更に非天然バックボーンを含む。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、又は逆転写酵素によって認識される。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってmRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体コドンを含有する突然変異体mRNAを生成する。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってtRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体アンチコドンを含有する突然変異体tRNAを生成する。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってmRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体mRNAを生成する。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、RNAポリメラーゼによってtRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体tRNAを生成する。幾つかの例において、突然変異体tRNAに非天然アミノ酸残基がチャージされる。幾つかの例において、非天然アミノ酸を含有するタンパク質は、翻訳中に突然変異体tRNA及び突然変異体mRNAを利用して生成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の様々な態様はとりわけ添付の請求項で説明されている。本開示の特徴と利点についてのよりよい理解は、本開示の原則が用いられている例証的な実施形態と添付の図面を説明する以下の詳細な記載を参照することによって得られる:
図1A】dNaM-dTPT3 UBP及び天然dA-dT塩基の対の化学構造を例示する。
図1B】sfGFP(AXC)151及びtRNA(GYT)Serを発現するために使用される遺伝子カセットを例示する。PT7及びTT7は、それぞれT7 RNAPプロモーター及びターミネーターを意味する。sfGFPがserTの不在下で発現される対照において、sfGFP T7ターミネーターに従う配列は存在しない。
図1C】位置151-コドン及びアンチコドンがそれぞれ示されているsfGFP及びtRNASerを発現する細胞の蛍光のグラフを例示する。マイナス記号は、発現カセットにおけるserTの欠如を意味する。t=0は、T7 RNAP及びtRNASer(存在する場合)の発現を誘導するためのIPTGの追加に相当し;aTcは、sfGFPの発現を誘導するためにt=0.5hにて追加された。AGT、天然Serコドン;TAG、アンバー終止コドン;CTAアンバーサプレッサーアンチコドン。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図1D】位置151-コドン及びアンチコドンがそれぞれ示されているsfGFP及びtRNASerを発現する細胞の成長のグラフを例示する。マイナス記号は、発現カセットにおけるserTの欠如を意味する。t=0は、T7 RNAP及びtRNASer(存在する場合)の発現を誘導するためのIPTGの追加に相当し;aTcは、sfGFPの発現を誘導するためにt=0.5hにて追加された。AGT、天然Serコドン;TAG、アンバー終止コドン;CTAアンバーサプレッサーアンチコドン。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図1E図1C図1Dに示される最後の時点にて集められ、α-GFP抗体(N末端エピトープ)によりプローブされる、細胞からの溶解物のウエスタンブロット(OD600により標準化)を例示する。
図1F】LC-MS/MS及び前駆体イオン強度に基づく定量により判定されるような、sfGFP(AGT)151又はsfGFP(AXC)151及びtRNASer(GYT)を発現する細胞から精製されたsfGFPの位置151にて検出される、(図の説明文において1文字のコードにより示される)アミノ酸の相対存在量のグラフを例示する(<0.1%(平均。両コドンに対して)にて検出されたアミノ酸は示されない;詳細については方法を、検出されたアミノ酸の完全なリストについて表4を参照)。データは個々のデータポイントの平均として示され、n=4の精製sfGFPサンプル、培養から各々は個々のコロニーから伝播され、図1C図1Dに示される最後の時点にて集められる。
図2A】培地における、同族のアンチコドン、PylRS、又は20mMのPrK(N-[(2-プロピニルオキシ)カルボニル]-L-リジンを有するtRNAPylの存在下(+)又は不在下(-)において、位置151のコドンが示されているsfGFPを発現する細胞の蛍光のグラフを例示する。蛍光は、図2Bに示される最後の時点にて判定された。アスタリスクは、sfGFP(TAC)151を発現する細胞におけるtRNAPylの欠如を意味する。TAC、天然Tyrコドン;TAG、アンバー終止コドン;n.d、判定されず。データは個々のデータポイントの平均として示され、各々は個々のコロニーから伝播される。
図2B図2Aに示されるデータの部分集合の時間的経過解析を例示する。プラス及びマイナスの記号は、それぞれ培地における20mMのPrKの存在又は不在を意味する。t=0は、PylRS、T7 RNAP、及びtRNAPylの発現を誘導するためのIPTGの追加に相当し;aTcは、sfGFPの発現を誘導するためにt=1hにて追加された。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図2C】示された位置151のコドン及びアンチコドンを有するsfGFP及びtRNAPylを発現する細胞から精製されたsfGFPのウェスタンブロットを例示し、それぞれTAMRAのクリック抱合(click conjugation)及び/又は20mMのPrKの培地への添加を伴う又は伴わないものである。tRNAPylはsfGFP(TAC)151を発現する細胞には存在しない(-)。sfGFPは、図2Bに示される最後の時点にて集めた培養から精製された。ウェスタンブロットは、α-GFP抗体により探索され、画像化されることで、sfGFPと抱合TAMRAの両方を検出した。
図2D】それぞれLC-MS/MS及び前駆体イオン強度に基づく定量により判定されるような、sfGFP(TAC)151を発現する(図2Bに示される最後の時点にて集められる)細胞から精製されたsfGFP、又は、示された位置151のコドン及び同族のアンチコドンを有するsfGFP及びtRNAPylの位置151での、(図の説明文における一文字のコードにより示される)アミノ酸の相対存在量のグラフを例示する(<0.1%で検出されたアミノ酸(平均、全てコドンに対する)は示されず;詳細については方法、及び検出されたアミノ酸の完全なリストについては表4を参照)。データを個々のデータポイントの平均として示し、n=4の精製されたsfGFPサンプル、培養からそれぞれが個々のコロニーから伝播される。
図3A】それぞれ培地における5mMのpAzFの存在下(+)又は欠如下(-)における、示された位置151のコドン及び同族のアンチコドンを有するsfGFP及びtRNApAzFのsfGFP(TAC)151を発現する細胞の蛍光のグラフを例示する。t=0は、pAzFRS、T7 RNAP、及びtRNApAzFの発現を誘導するためのIPTGの追加に相当し;aTcは、sfGFPの発現を誘導するためにt=0.5hにて追加された。TAC、天然Tyrコドン;TAG、アンバー終止コドン;データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。pAzFが存在しない場合のsfGFP(AXC)151と共に観察された蛍光は、天然アミノ酸(恐らくTyr)でのtRNApAzF(GYT)のチャージ(charging)に起因する。
図3B】示された位置151のコドン及びアンチコドンを有するsfGFP及びtRNApAzFを発現する細胞から精製されたsfGFPのウェスタンブロットを例示し、それぞれTAMRAのクリック抱合及び/又は5mMのpAzFの培地への添加を伴う又は伴わないものである。示される場合、マイナス記号は、sfGFP(TAC)151を発現する細胞におけるtRNApAzFの不在を意味する。sfGFPは、図3Aに示される最後の時点にて集めた培養から精製された。ウェスタンブロットは、α-GFP抗体により探索され、画像化されることで、sfGFPと抱合TAMRAの両方を検出した。
図4】位置151にて様々なコドンを有するsfGFPを発現する細胞の蛍光を例示する。示された位置151のコドンを有するsfGFPプラスミドを運ぶ細胞は、OD600~0.5にまで成長し、IPTG及びaTcにより誘導された。蛍光測定値を誘導の3時間後に得た。データを個々のデータポイントにより平均として示し、n=単一コロニーから分割され且つ並行して成長される3つの培養である。
図5A】示されたアンチコドンを有するtRNASerを伴う又は伴わないsfGFP(AXC)151を発現する細胞の蛍光のグラフを用いた、天然のほぼ同族(near-cognate)のAXCコドンのデコーディングを例示する。細胞を図1C図1Dに記載されるように誘導し、蛍光測定値は図1Cに示される最後の時点に相当する。GYTアンチコドンに関する、及びtRNASerの不在下(-tRNA)での値は、図1CとDにおいて同じ値に相当する。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図5B】示されたアンチコドンを有するtRNASerを伴う又は伴わないsfGFP(AXC)151を発現する細胞の成長のグラフを用いた、天然のほぼ同族のAXCコドンのデコーディングを例示する。細胞を図1C図1Dに記載されるように誘導し、蛍光測定値は図1Cに示される最後の時点に相当する。GYTアンチコドンに関する、及びtRNASerの不在下(-tRNA)での値は、図1CとDにおいて同じ値に相当する。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図6A】tRNAPylを有するAXC及びGXCコドンをデコードする細胞のウェスタンブロット及び成長を例示する。培地において同族のアンチコドン、PylRS、又は20mMのPrKを有するtRNAPylの存在下(+)又は不在下(-)での、示された位置151のコドンを有する細胞からの(OD600により標準化される)溶解物のウェスタンブロット。ブロットはα-GFP抗体(N末端エピトープ)により探索された。細胞は図2Bに記載されるように当量時点にて誘導され且つ集められた。
図6B図6Aにおいて分析される培養の成長を例示する。tRNAPylをアミノアシル化するのに必要な全ての構成要素が存在する場合、sfGFP(t=1h)の誘導と最終時点との間のOD600の倍率変化は最大である。OD600の絶対値における変動は、T7 RNAP(及び存在する場合にはtRNAPyl)の誘導(t=0)の開始時の細胞密度における小さな変動によるものである。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図7A】添加された非天然リボトリホスフェートに応じたtRNAPyl及び細胞の増殖を伴うAXC及びGXCコドンのデコーディングを例示する。非天然リボトリホスフェート各々の存在下(+)又は不在下(-)での、20mMのPrKを伴う又は伴わない、示された位置151のコドン/アンチコドンを有するsfGFP及びtRNAPylを発現する細胞から精製されたsfGFP(下方のパネル)の蛍光。細胞は図2Bに記載されるように誘導され、蛍光測定値は、細胞を集める前、及びTAMRA及びウェスタンブロットのクリック抱合のためにsfGFPタンパク質を精製する前に、誘導の終了時(~3.5h)に得られた。
図7B】添加された非天然リボトリホスフェートに応じたtRNAPylを有するAXC及びGXCコドンをデコードするゲルを例示する。ウェスタンブロットは、α-GFP抗体により探索され、画像化されることで、sfGFPと抱合TAMRAの両方を検出し;全てのレーンは添加されたPrKにより成長される細胞から精製されたsfGFPに相当する。データを個々のデータポイントにより平均として示し、n=3の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播され;n.d、判定されず。
図7C】非天然デオキシリボトリホスフェート及び各非天然リボトリホスフェートの両方の存在下(+)又は不在下(-)における、sfGFP(TAC)151を発現する細胞の蛍光及び成長のグラフを例示する。t=0は、T7 RNAPの発現を誘導するためのIPTGの追加に相当し;aTcは、sfGFPの発現を誘導するためにt=1hにて追加された。データは平均±s.dとして示され、n=3の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。使用される濃度では(方法を参照)、dNaMTP及びdTPT3TPは細胞成長を阻害しないが、一方で両方の非天然リボトリホスフェート、具体的にTPT3TP、は、ある程度の成長阻害を示す。
図7D】PrK(20mM)を添加した培養に相当する細胞増殖のグラフを例示し、その蛍光は図2Bに示される。天然コドンを有するsfGFPを発現する細胞は、あらゆる非天然トリホスフェートを用いることなく成長したが、一方で非天然コドンを有するsfGFPを発現する細胞は、非天然デオキシリボトリホスフェート及びリボトリホスフェートの両方を用いて成長した。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図8A】培地におけるPrK濃度に応じたtRNAPylを有するAXC及びGXCコドンをデコードするゲルを例示する。TAMRAのクリック抱合及び示された濃度でのPrKの培地への添加を伴う、示された位置151のコドン/アンチコドンを有するsfGFP及びtRNAPylを発現する細胞から精製されたsfGFPのウェスタンブロット。sfGFPは、図2Bに記載されるように集められた細胞から誘導され且つ精製された。ウェスタンブロットは、α-GFP抗体により探索され、画像化されることで、sfGFPと抱合TAMRAの両方を検出した。
図8B】培地におけるPrK濃度に応じたtRNAPylを有するAXC及びGXCコドンのデコーディングのグラフを例示する。それぞれ培地におけるPrK濃縮に応じた、示された位置151のコドン及びアンチコドンを有するsfGFP及びtRNAPylを発現する(cに示される最後の時点にて測定される)細胞の蛍光。0及び20mMのPrKでの蛍光値は、それぞれ図2Bに示される(-)及び(+)のPrK値と同じである。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
図8C】蛍光の時間的経過解析を例示する。鮮明度に関して、1つの代表的な培養のみが、各コドン/アンチコドンの対及びPrK濃度に対して示される。理論に縛られることなく、我々は、内因的なtRNA及びsfGFPにおけるUBP保持の損失によるデコーディングに対するPrKの不在下で産生される低レベルのsfGFPに起因すると考えた(表5)。しかし、PrKを含むsfGFPの相対量(図8A)、及び発現されたsfGFPの絶対量(図8B及び図8C)は、培地におけるPrKの増加に伴い用量依存的様式で増加し、最終的にほぼ完全なPrKの取り込みをもたらし、このことは、AXC及びGXCコドンの内因的なリードスルーが、十分な濃度のチャージされたPrK-tRNAPyl(GYT)又はPrK-tRNAPyl(GYC)により効率的に抑えることができることを示唆している。
図8D図8Cに示される実験に対するPrKの様々な濃度における細胞成長の時間的経過解析を例示する。
図9】蛍光が図3Aに示される培養の細胞成長を例示する。データは平均±s.dとして示され、n=4の培養、それぞれ個々のコロニーから伝播される。
【0011】
表4|図1F及び図2Dに記載される実験に対するsfGFPにおける位置151でのアミノ酸の相対存在量。それぞれ示された位置151のコドン及びアンチコドンを有するtRNAを有する又は有していないsfGFPを発現する細胞から精製されたsfGFPは、LC-MS/MSによって分析された。レポーターペプチドLEYNFNSHNVX151ITADK(X=PrK、或いはK又はRを除く識別された天然アミノ酸)及びLEYNFNSHNVX151(X=K又はRの場合)に対する抽出されたMS1イオン強度は、全ての観察可能なレポーターペプチドに対するイオン強度の合計のパーセンテージとして表される。値の表は、sfGFPの位置151にて検出される全てのアミノ酸の平均相対存在量及び95%CIに相当し、n=4つの精製されたsfGFPサンプルであり、培養から各々個々のコロニーから伝播される。<0.1%の値(平均、それぞれの図において示されるコドンに対する)は、図1F及び図2Dに提示されるデータから除外される。
【0012】
表5|UBPの保持。sfGFPの示された位置151のコドン及び示されたtRNAのアンチコドンを有するプラスミドにおけるUBPの保持は、方法に記載されるように、sfGFP誘導の前の時点、及び誘導の終了時に判定される。報告された値は、±95%のCIの(これらの2つの時点での保持から算出される)誘導の期間にわたる平均UBP保持であり、n=各々が個々のコロニーから伝播される4つの培養であり、アスタリスクで示される値は除外され、n=3である。n/aは適用可能でないことを示す(関連配列が天然又は不在であるためである)。全てのプラスミドは、20mMのPrK又は5mMのpAzFの存在下で成長された培養から単離された(Serデコーディング実験を除く)。SerRSは、内因的な大腸菌シンテターゼによるチャージを示す。マイナス記号は、tRNAPylを有する細胞におけるPylRSの不在、又は異所的に発現されたtRNAの不在を意味する。§により示される行における保持は培養に相当し、当該培養から、sfGFPが更に精製され、且つ、TAMRA抱合sfGFPのLC-MS/MS及び/又はウェスタンブロットによってから分析され(図1F(Ser)、図2D(PrK)、及び図3B(pAzF)を参照);アスタリスクを有する行は図7A-Dにおいて分析された培養に相当する。4つ全ての非天然トリホスフェートが同じ輸送体を介して細胞に侵入し、それにより互いの移入を競合的に阻害するという事実にもかかわらず、UBP保持における差異は、培地におけるNaMTP及び/又はTPT3TPの存在下(+)又は不在下(-)では観察されなかった。これらのデータ、及び、高忠実度でのPrKの取り込みを伴う高レベルのsfGFP発現のための両方の非天然リボトリホスフェートの要件(図7A-D)は、YZ3におけるPtNTT2輸送体の発現レベルがUBP複製及び転写を維持するのに必要とされる、必須レベルの非天然トリホスフェートを移入することを総体的に実証する。
【0013】
表6|Ser、Prk、及びpAzFの取り込み実験において発現されるsfGFPタンパク質の収率。収率は、精製されたタンパク質の総量、及び精製に使用される培養の容積から算出された(方法を参照)。データは平均±s.dであり(n=4つのsfGFPサンプル、それぞれ個々のコロニーから伝播される培養から精製)、及び、図3A(pAzFRSに対する)における(+)pAzFサンプルに相当する培養と同様に、図1F(SerRSに対する)及び図2D(PylRSに対する)において分析された同じ培養から判定された。精製されたsfGFPの収率は、それらが精製された培養の平均の全蛍光(OD600へと標準化されず)に匹敵する。蛍光値は、細胞がsfGFP精製のために集められた時点に相当する。図1C(Ser)、図2B(PrK)、及び図3A(pAzF)を参照。
【発明を実施するための形態】
【0014】
特定の用語
別段の定めのない限り、本明細書で使用される技術用語と科学用語は全て、主張される主題が属する当該技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を持っている。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、典型的且つ例示的なものにすぎず、請求された主題の内容を限定するものではないことを理解されたい。本出願において、単数形の使用は、特に別記しない限り複数を含む。明細書と添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、他にその内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むということに留意しなければならない。本出願において、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含むこと(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、制限はない。
【0015】
本明細書で使用されるように、範囲と量は、「およその(about)」特定の値又は範囲として表現可能である。「約」は正確な量も含んでいる。従って、「約5μL」は、「約5μL」と「5μL」も意味する。一般に、用語「約」は、実験誤差内にあると予想される量を含んでいる。
【0016】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、単に構成上の目的のためであり、記載される主題を制限すると解釈されるものではない。
【0017】
概要
生命の情報は、4文字の遺伝子アルファベットによってコードされ、これは2つの塩基対の選択的な形成によって可能とされる:(d)G-(d)C及び(d)A-dT/U。2つの合成ヌクレオチド間に形成される第3の非天然塩基対(UBP)はこのシステムを拡張し、それにより情報記憶の可能性を増大させ、潜在的な学術的意味及び実用的意味を持つ。報告されている種々様々な合成ヌクレオチドアナログの中で幾つかは、他の天然DNA二重螺旋内で互いに安定して対になるが、ポリメラーゼによって認識されず、このことは、二重螺旋DNAにおいて安定した対を管理する力が、ポリメラーゼで媒介された複製を管理する力と同じではないことを示している。その結果、様々な手法が、複製可能なUBP、例えば、天然ヌクレオチドにより利用されない相補的な水素結合(H結合)パターンを介して相互作用するように設計されるUBP、を発達させるために取られている。天然塩基対はH結合を介して形成されるが、H結合が遺伝子情報の記憶(又は回収)の基礎となるのに十分な唯一の力であると演繹的に仮定する理由は存在しない。例えば、大腸菌DNAポリメラーゼI(Kf)のクレノウ断片が、非天然ヌクレオチドdFによりdAと対になり、そのジフルオロトルエン核酸塩基は、有意なH結合が可能でないチミンの模倣形状であることが、実証されている。このことは、DNA複製の「幾何学的な選択」機構を支持し、且つ、H結合以外の力も複製に起因することを示唆している。
【0018】
インビトロでタンパク質へと複製され、転写され、且つ翻訳されるUBPの発達は、天然情報の記憶及び回収の基礎となる力への見識をもたらし、及び、更に化学的及び合成的な生物学において広範な適用を可能とする。しかし、UBPを発達させる多くの労力の最終目標は、半合成生物(SSO)、増加した(非天然又は合成、ヒトにより作成されたものを意味する)情報を安定して記憶及び回収する有機体、の土台としてのインビボでの使用である。更に、そのようなSSOには、ヒトの健康に対するものを含む革新的な実際的応用がある。最も著しいことに、SSOは、タンパク質治療の分野の成長に革新をもたらす。しかし、従来の小分子治療と比較して、タンパク質治療は、20の天然アミノ酸と共に利用可能な有限の化学的多様性により、それらの分子特性がひどく制限されている。
【0019】
我々は近年、大腸菌SSOの作成を報告しており、当該大腸菌SSOは、海洋性羽状珪藻(Phaeodactylum tricornutum)からのヌクレオシド三リン酸輸送体により(PtNTT2)、培地から必要な非天然トリホスフェートを移入し、その後、それらを使用してUBP dNaM-dTPT3を含有するプラスミドを複製する。我々はそれ以来、UBPを含有するDNAがT7 RNAポリメラーゼによりSSOにおいて転写され得ること、及び、非天然ヌクレオチドがmRNAのコドンへと組み込まれる場合に、ncAAをチャージされ且つアンチコドンにおいて同族の非天然ヌクレオチドを含有する様々なtRNAが効率的且つ選択的に非天然コドンをデコードし得ることを示している。UBPは様々なコドンの様々な位置にて組み合わることができるので、このことはUBPを使用して多数の異なるncAAを有するタンパク質をコードすることができることを示唆している。
【0020】
本明細書には、特定の実施形態において、突然変異体tRNAを利用する非天然アミノ酸を含有するタンパク質の合成のための方法、組成物、及びキットが開示される。幾つかの例において、タンパク質は無細胞翻訳系において合成される。幾つかの例において、タンパク質は細胞又は半合成生物(SSO)において合成される。幾つかの例において、半合成生物は微生物を含む。幾つかの例において、半合成生物は細菌を含む。幾つかの例において、半合成生物は大腸菌を含む。幾つかの例において、突然変異体tRNAは突然変異体アンチコドン配列を含んでいる。幾つかの例において、突然変異体アンチコドン配列は表1に例示されるアンチコドン配列である。幾つかの例において、突然変異体アンチコドン配列は表2に例示されるアンチコドン配列である。幾つかの例において、突然変異体アンチコドン配列は表3に例示されるアンチコドン配列である。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
幾つかの例では、突然変異体tRNAの突然変異体アンチコドンは、突然変異体コドンと対になっている。幾つかの実施形態において、突然変異体コドンは表1において例示される突然変異体コドンである。幾つかの実施形態において、突然変異体コドンは表2において例示される突然変異体コドンである。幾つかの実施形態において、突然変異体コドンは表3において例示される突然変異体コドンである。
【0025】
幾つかの実施形態において、表1、表2、及び表3で例示されるY及びXは、非天然ヌクレオチドの非天然塩基を表わす。幾つかの実施形態において、非天然塩基は、2-アミノアデニン-9-イル、2-アミノアデニン、2-F-アデニン、2-チオウラシル、2-チオ-チミン、2-チオシトシン、アデニンとグアニンの2-プロピル及びアルキル誘導体、2-アミノ-アデニン、2-アミノ-プロピル-アデニン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、2’-デオキシウリジン、2-アミノ-2’-デオキシアデノシン、3-デアザグアニン、4-チオ-ウラシル、4-チオ-チミン、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、5-メチル-シトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、5-ブロモ、ならびに、5-トリフルオロメチルウラシル及びシトシン;5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-プロピニルシトシン、5-ウラシル、5-置換、5-ハロ、5-置換ピリミジン、5-ヒドロキシシトシン、5-ブロモシトシン、5-ブロモウラシル、5-クロロシトシン、塩素付加されたシトシン、シクロシトシン、シトシンアラビノシド、5-フルオロシトシン、フルオロピリミジン、フルオロウラシル、5,6-ジヒドロシトシン、5-ヨードシトシン、ヒドロキシ尿素、ヨードウラシル、5-ニトロシトシン、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、及び5-ヨードウラシル、アデニンとグアニンの6-アルキル誘導体、6-アザピリミジン、6-アゾ-ウラシル、6-アゾ-シトシン、アザシトシン、6-アゾ-チミン、6-チオ-グアニン、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザグアノシン(deazaguanosine)、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザグアニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、及び8-ヒドロキシルで置換されたアデニンならびにグアニン;N4-エチルシトシン、N-2置換プリン、N-6置換プリン、O-6置換プリン、二重形成の安定を増加させるもの、ユニバーサル核酸、疎水性核酸、乱交雑の核酸、サイズ拡張した核酸、フッ素処理した核酸、三環式ピリミジン、フェノキサジン、シチジン([5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン、G-クランプ、フェノキサジンシチジン(9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-カルボキシヒドロキシメチルウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5オキシ酢酸、ワイブトシン、シュードウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピルウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリン、ならびに、プリン塩基又はピリミジン塩基が複素環式化合物と取り替えられるものから成る群から選択される。
【0026】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、以下の式(核酸塩基部分のみを示しており、明確にするためにリボースとリン酸塩の骨格は省略されている)から成る群から選択される。
【0027】
【化3】
【0028】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、以下の式(核酸塩基部分のみを示しており、明確にするためにリボースとリン酸塩の骨格は省略されている)から成る群から選択される。
【0029】
【化4】
【0030】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドはさらに非天然糖部分を含む。幾つかの例において、非天然糖部分は、2’位置での修飾:OH;置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、又はO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NHF;O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニル、N-アルキニル;O-アルキル-Oアルキル、2’-F、2’-OCH、2’-O(CHOCHから成る群から選択され、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換のC-C10アルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、-O[(CH)nO]mCH、-O(CH)nOCH、-O(CH)nNH、-O(CH)nCH、-O(CH)n-ONH、及び-O(CH)nON[(CH)nCH)]であってもよく、n及びmは1~約10であり;及び/又は、前記非天然糖部分は、5’位置での修飾:5’-ビニル、5’-メチル(R又はS)、4’位置での修飾、4’-S、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA開裂基、レポーター基、介入物、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するための基、又はオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基、及びこれらの任意の組み合わせから成る群から選択される。
【0031】
幾つかの例において、突然変異体アンチコドン又は突然変異体コドンはさらに非天然骨格を含む。幾つかの例において、突然変異体アンチコドンはさらに非天然骨格を含む。幾つかの例において、突然変異体コドンはさらに非天然骨格を含む。例によっては、非天然骨格は、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ジチオリン酸、ホスホトリエステラーゼ、アミノアルキルホスホトリエステラーゼ、C-C10ホスホン酸塩、3’アルキレンホスホン酸塩、キラルホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホロアミド酸、3’-アミノホスホロアミド酸、アミノアルキルホスホロアミド酸、チオノホスホロアミド酸、チオノアルキルホスホン酸塩、チオノアルキルホスホトリエステラーゼ、及びボラノリン酸塩からなる群から選択される。
【0032】
幾つかの例では、非天然ヌクレオチドはポリメラーゼによって認識される。幾つかの例において、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、又は逆転写酵素である。幾つかの例では、ポリメラーゼはΦ29、B103、GA-1、PZA、Φ15、BS32、M2Y、Nf、G1、Cp-1、PRD1、PZE、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、L17、ThermoSequenase(登録商標)、9°Nm(商標)、Therminator(商標)DNAポリメラーゼ、Tne、Tma、TfI、Tth、TIi、ストッフェル断片、Vent(商標)and Deep Vent(商標)DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tgo、JDF-3、Pfu、Taq、T7 DNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、PGB-D、UlTma DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIII、古細菌DP1I/DP2 DNAポリメラーゼII、9°N DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Phusion(登録商標) DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、RB69 DNAポリメラーゼ、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、SuperScript(登録商標)II逆転写酵素、及びSuperScript(登録商標) III逆転写酵素である。
【0033】
幾つかの例では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ1-クレノウ断片、Ventポリメラーゼ、Phusion(登録商標)DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、Therminator(商標) DNAポリメラーゼ、POLBポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIII、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、SuperScript(登録商標)II逆転写酵素、又はSuperScript(登録商標)III逆転写酵素である。
【0034】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、ポリメラーゼによってmRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体コドンを含有する突然変異体mRNAを生成する。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、ポリメラーゼによってmRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体mRNAを生成する。
【0035】
幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、ポリメラーゼによってtRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体アンチコドンを含有する突然変異体tRNAを生成する。幾つかの例において、非天然ヌクレオチドは、ポリメラーゼによってtRNAへと転写中に組み込まれて、突然変異体tRNAを生成する。
【0036】
幾つかの例では、突然変異体tRNAは非天然アミノ酸残基を表す。幾つかの例では、非天然アミノ酸残基は、Liu C.C.,Schultz, P.G. Annu. Rev. Biochem. 2010, 79, 413に記載されるような非天然アミノ酸である。
【0037】
幾つかの例において、非天然アミノ酸を含有するタンパク質は、突然変異体tRNA及び突然変異体mRNAを利用して翻訳中に生成される。幾つかの例では、非天然アミノ酸を含有するタンパク質は、無細胞翻訳系で生成される。幾つかの例において、タンパク質は細胞あるいは半合成生物(SSO)において合成される。幾つかの例において、半合成生物は微生物を含む。幾つかの例において、半合成生物は細菌を含む。幾つかの例において、半合成生物は大腸菌を含む。
【0038】
核酸
核酸(例えば、本明細書では、標的核酸、標的ヌクレオチド配列、所望の核酸配列、あるいは所望の核酸領域とも呼ばれる)は、例えば、DNA、cDNA、gDNA(ゲノムDNA)、RNA、siRNA(短い阻害RNA)、RNAi、tRNA、あるいはmRNAなどの任意のソースあるいは組成物であり得、及び、任意の形態(例えば、線形、円形、スーパーコイル、一本鎖、二本鎖など)であり得る。核酸はヌクレオチド、ヌクレオシド、又はポリヌクレオチドを含み得る。核酸は天然及び非天然の核酸を含み得る。核酸はさらに、DNA又はRNAのアナログ(例えば、塩基アナログ、糖アナログ、及び/又は、非天然骨格など)などの非天然核酸を含み得る。「核酸」との用語は、ポリヌクレオチド鎖の特定の長さを指すか意味するものと理解され、したがって、ポリヌクレオチドとオリゴヌクレオチドもその定義に含まれる。典型的な天然ヌクレオチドとしては、限定されないが、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、GMP、dATP、dTTP、dCTP、dGTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dAMP、dTMP、dCMP、及びdGMPが挙げられる。典型的な天然デオキシリボヌクレオチドとしては、dATP、dTTP、dCTP、dGTP、dADP、dTDP、dCDP、dGDP、dAMP、dTMP、dCMP、及びdGMPが挙げられる。典型的な天然リボヌクレオチドとしては、ATP、UTP、CTP、GTP、ADP、UDP、CDP、GDP、AMP、UMP、CMP、及びGMPが挙げられる。RNAに関しては、ウラシル塩基がウリジンである。核酸はしばしば、ベクター、プラスミド、ファージ、自己複製配列(ARS)、セントロメア、人工染色体、酵母人工染色体(例えば、YAC)、又は複製するあるいは複製されることが可能な他の核酸である。非天然核酸は核酸アナログであり得る。
【0039】
非天然核酸
ヌクレオチドアナログ(すなわち、非天然ヌクレオチド)は、塩基、糖、又はリン酸塩部分のいずれかになんらかの修飾を含有するヌクレオチドを含む。修飾は化学的修飾を含み得る。修飾は、例えば、3’OΗ又は5’OΗの基、骨格、糖成分、又はヌクレオチド塩基の修飾であり得る。修飾は、非天然型リンカー分子及び/又は鎖間あるいは鎖内の架橋の追加を含み得る。一態様において、修飾された核酸は、3’OΗ又は5’OΗの基、骨格、糖成分、あるいはヌクレオチド塩基の1つ以上の修飾、及び/又は非天然型リンカー分子の追加を含む。一態様において、修飾された骨格は、ホスホジエステル骨格以外の骨格を含む。一態様において、修飾された糖は、(修飾されたDNA中の)デオキシリボース以外の、又はリボース(修飾されたRNA)以外の糖を含む。一態様において、修飾された塩基は、(修飾されたDNA中の)アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンとは別の塩基、あるいは、(修飾されたRNA中の)アデニン、グアニン、シトシン、又はウラシルとは別の塩基を含む。
【0040】
核酸は少なくとも1つの修飾された塩基を含み得る。塩基部分の修飾は、異なるプリン又はピリミジン塩基と同様に、A、C、G、及びT/Uの天然及び合成の修飾も含むことになる。幾つかの実施形態において、修飾は、(修飾されたDNA中の)アデニン、グアニン、シトシン、又はチミンの修飾された形態、又は(修飾されたRNA中の)アデニン、グアニン、シトシン、又はウラシルの修飾された形態に対する。
【0041】
非天然核酸の修飾された塩基としては、限定されないが、ウラシル-5-イル、ヒポキサンチン-9-イル(I)、2-アミノアデニン-9-イル、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチル、シトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンとグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、 5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、及び他の8-置換されたアデニン及びグアニン、5-ハロ、とりわけ、5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換されたウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザデニン、ならびに、3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンが挙げられる。特定の非天然核酸、例えば、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、及び、N-2置換プリン、N-6置換プリン、O-6置換プリン、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、5-プロピニルシトシン、5-メチルシトシン、二本鎖形成の安定性を増大させるもの、ユニバーサル核酸、疎水性核酸、乱交雑の核酸、サイズ拡張した核酸、フッ素処理した核酸、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびに、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、及び5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6、及びO-6で置換されたプリン、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル、アデニンとグアニンの他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン、ならびに2-チオシトシン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、5-プロピニル(-C≡C-CI1/4)ウラシル、5-プロピニルシトシン、ピリミジン核酸の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、6-アゾシトシン、6-アゾチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル、及び他の8-置換されたアデニン及びグアニン、5-ハロ、とりわけ、5-ブロモ、5-トリフルオロメチル、他の5-置換されたウラシル、7-メチルグアニン、7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン、8-アザアデニン、7-デアザグアニン、7-デアザアデニン、3-デアザグアニン、3-デアザアデニン、三環式ピリミジン、フェノキサジンシチジン([5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、G-クランプ、フェノキサジンシチジン(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)、プリン又はピリミジン塩基が他の複素環と取り替えられたもの、7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、2-ピリドン、アザシトシン、5-ブロモシトシン、ブロモウラシル、5-クロロシトシン、塩素付加されたシトシン、シクロシトシン、シトシンアラビノシド、5-フルオロシトシン、フルオロピリミジン、フルオロウラシル、5,6-ジヒドロシトシン、5-ヨードシトシン、ヒドロキシ尿素、ヨードウラシル、5-ニトロシトシン、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-フルオロウラシル、及び5-ヨードウラシル、2-アミノ-アデニン、6-チオ-グアニン、2-チオ-チミン、4-チオ-チミン、5-プロピニル-ウラシル、4-チオ-ウラシル、N4-エチルシトシン、7-デアザグアニン、7-デアザ-8-アザグアニン、5-ヒドロキシシトシン、2’-デオキシウリジン、2-アミノ-2’-デオキシアデノシン、ならびに、米国特許第3,687,808号;第4,845,205号;第4,910,300号;第4,948,882号;第5,093,232号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,645,985号;第5,681,941号;第5,750,692号;第5,763,588号;第5,830,653号、及び第6,005,096号;WO99/62923;Kandimalla et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9:807-813;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, Kroschwitz, J.I.,Ed.,John Wiley & Sons, 1990, 858- 859;Englisch et al.,Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613;及び、Sanghvi, Y.S.,Chapter 15, Antisense Research and Applications, Crooke, S.T. and Lebleu, B.,Eds.,CRC Press, 1993, 273-288に記載されるもの。追加の塩基修飾は、例えば、米国特許第3,687,808号、Englisch et al.,Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613, and Sanghvi, Y. S.,Chapter 15, Antisense Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B. ed.,CRC Press, 1993で見られる。
【0042】
様々な複素環塩基及び様々な糖部分(及び糖アナログ)を含む非天然核酸は当該技術分野で入手可能であり、この核酸は、天然の核酸の主要な5つの塩基成分以外の1つ又は複数の複素環塩基を含み得る。例えば、複素環塩基としては、ウラシル-5-イル、シトシン-5-イル、アデニン-7-イル、アデニン-8-イル、グアニン-7-イル、グアニン-8-イル、4-アミノピロロ[2.3-d]ピリミジン-5-イル、2-アミノ-4-オキソピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル、2-アミノ-4-オキソピロロ[2.3-d]ピリミジン-3-イルの基が挙げられ、プリンは9-位置を介して、核酸の糖部分に結合し、ピリミジンは1-位置を介して、ピロロピリミジンは7-位置を介して、ピラゾロピリミジンは1-位置を介して、核酸の糖部分に結合する。
【0043】
ヌクレオチドアナログもリン酸塩部分で修飾され得る。修飾されたリン酸塩部分としては、限定されないが、2つのヌクレオチド間の結合が、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル、及び、3’-アルキレンホスホン酸塩とキラルホスホン酸塩を含む他のアルキルホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、3’-アミノホスホロアミダートとアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホロアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及びボラノリン酸塩を含むように、修飾され得るリン酸塩部分が挙げられる。2つのヌクレオチド間のこれらのリン酸塩結合又は修飾されたリン酸塩結合は、3’-5’結合あるいは2’-5’結合を介することがあり得、及び、その結合は、3’-5’から5’-3’あるいは2’-5’から5’-2’などの逆極性を含み得ることが理解されよう。様々な塩、混合塩、及び遊離酸形態も含まれる。多くの米国特許は、修飾されたリン酸塩を含有するヌクレオチドをどのようにして作って使用するかについて教示しており、限定されないが、第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,196号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,306号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;及び第5,625,050号を含み、その各々は引用によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
非天然核酸は、2’,3’-ジデオキシ-2’,3’-ジデヒドロ-ヌクレオシド(PCT/US2002/006460)、5’-置換されたDNA及びRNA誘導体(PCT/US2011/033961;Saha et al, J. Org Chem.,1995, 60, 788-789;Wang et al, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 1999, 9, 885-890;及び、Mikhailov et al, Nucleosides & Nucleotides, 1991, 10(1-3), 339-343;Leonid et al, 1995, 14(3-5), 901-905;及び、Eppacher et al, Helvetica Chimica Acta, 2004, 87, 3004-3020;PCT/JP2000/004720; PCT/JP2003/002342; PCT/JP2004/013216; PCT/JP2005/020435; PCT/JP2006/315479; PCT/JP2006/324484; PCT/JP2009/056718; PCT/JP2010/067560),あるいは、修飾塩基を用いて一リン酸塩として作られた5’置換された単量体(Wang et al, Nucleosides Nucleotides & Nucleic Acids, 2004, 23 (1 & 2), 317-337)を含み得る。
【0045】
非天然核酸は、糖環(PCT/US94/02993)の5’-位置及び2’-位置の修飾、例えば、5’-CH置換された2’-O-保護されたヌクレオシド(Wu et al.,Helvetica Chimica Acta, 2000, 83, 1127-1143 及び Wu et al. Bioconjugate Chem. 1999, 10, 921-924)を含み得る。非天然核酸は、オリゴヌクレオチドへの取り込みのために調製されたアミド結合ヌクレオシド二量体を含み得、ここで、二量体中の3’結合ヌクレオシド(5’~3’まで)は、2’-OCHと5’-(S)-CHを含む(Mesmaeker et al, Synlett, 1997, 1287-1290)。非天然核酸は2’置換された5’-CH(又はO)修飾されたヌクレオシドを含むことができる(PCT/US92/01020)。非天然核酸は5’メチレンホスホナートDNA及びRNA単量体、及び二量体を含み得る(Bohringer et al, Tet. Lett.,1993,34,2723-2726;Collingwood et al,Synlett, 1995,7,703-705; 及び、Hutter et al, Helvetica Chimica Acta,2002,85,2777-2806)。非天然核酸は、2’-置換(US2006/0074035)を有する5’-ホスホン酸塩単量体、及び他の修飾された5’-ホスホン酸塩単量体(WO97/35869)を含むことができる。非天然核酸は5’修飾されたメチレンホスホナート単量体(EP614907及びEP629633)を含むことができる。非天然核酸は、5’又は6’位置にヒドロキシル基を含む5’又は6’-ホスホン酸塩リボヌクレオシドのアナログを含み得る(Chen et al, Phosphorus, Sulfur and Silicon, 2002, 777, 1783-1786; Jung et al, Bioorg. Med. Chem.,2000, 8, 2501-2509, Gallier et al, Eur. J. Org. Chem.,2007, 925-933 and Hampton et al, J. Med. Chem.,1976, 19(8), 1029-1033)。非天然核酸は、5’-リン酸基を有する、5’-ホスホン酸塩デオキシリボヌクレオシド単量体及び二量体を含み得る(Nawrot et al, Oligonucleotides, 2006, 16(1), 68-82)。非天然核酸は6’-ホスホン酸塩基を有するヌクレオシドを含み得、5’又は/及び6’-位置は、非置換であるか、あるいは、チオ-tert-ブチル基(SC(CH)3)(及びそのアナログ);メチレンアミノ基(CHNH)(及びそのアナログ)、あるいはシアノ基(CN)(及びそのアナログ)で置換される(Fairhurst et al, Synlett, 2001, 4, 467-472;Kappler et al, J. Med. Chem.,1986, 29, 1030-1038 and J. Med. Chem.,1982, 25, 1179-1184;Vrudhula et al, J. Med. Chem.,1987, 30, 888-894;Hampton et al, J. Med. Chem.,1976, 19, 1371-1377;Geze et al, J. Am. Chem. Soc, 1983, 105(26), 7638-7640 and Hampton et al, J. Am. Chem. Soc, 1973, 95(13), 4404-4414)
【0046】
非天然核酸は、糖部の修飾を含み得る。本発明の核酸は、1つ以上のヌクレオシドを随意に含み得、糖類は修飾されている。そのような糖修飾されたヌクレオシドは、増強されたヌクレアーゼ安定性、増加した結合親和性、又は他のある程度の有益な生物学的なプロパティを与え得る。特定の実施形態において、核酸は化学的に修飾されたリボフラノース環部分を含む。化学的に修飾されたリボフラノース環の実施例としては、限定されないが、置換基(5’及び/又は2’置換基を含む)の追加;二環式核酸(BNA)を形成するための2つの環原子の架橋;リボシル環酸素原子のS、N(R)、又はC(R)(R)(R=H、C-C12アルキル、又は保護基)との取り替え;及び、これらの組み合わせが挙げられる。化学的に修飾された糖の例は、WO 2008/101157、US2005/0130923、及びWO 2007/134181で見られる。
【0047】
修飾された核酸は修飾された糖又は糖アナログを含み得る。したがって、リボース及びデオキシリボースに加えて、糖部分は、ペントース、デオキシペントース、ヘキソース、デオキシヘキソース、グルコース、アラビノース、キシロース、リキソース、及び糖「アナログ」シクロペンチル基であり得る。糖はピラノシル、又はフラノシル形態であり得る。糖部分は、リボース、デオキシリボース、アラビノース、又は、2’-O-アルキルリボースのフラノシドであり得、糖は、[α]又は[β]アノマー構成のいずれかのそれぞれの複素環塩基に結合し得る。糖修飾としては、限定されないが、2’-アルコキシ-RNAアナログ、2’-アミノRNAアナログ、2’-フルオロDNA、及び2’-アルコキシ又はアミノRNA/DNAキメラが挙げられる。例えば、糖修飾は、2’-O-メチル-ウリジン及び2’-O-メチル-シチジンを含み得る。糖修飾は、2’-O-アルキル置換されたデオキシリボヌクレオシド、及び、2’-O-エチレングリコール様リボヌクレオシドを含む。これらの糖又は糖アナログ、及び、それぞれの「ヌクレオシド」(ここで、上記糖又はアナログは複素環塩基(核酸塩基)に結合している)の調製は知られている。糖修飾は他の修飾を用いて作られ、他の修飾と組み合わされてもよい。
【0048】
糖部分の修飾は、非天然修飾と同様に、リボース及びデオキシリボースの天然修飾も含む。糖修飾は、限定されないが、2’位置の以下の修飾:OH;F;O-アルキル、S-アルキル、N-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニル、N-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニル、N-アルキニル;あるいはO-アルキル-O-アルキルを含み、ここで、アルキル、アルケニル、及びアルキニルは、置換又は非置換のC-C10アルケニル、あるいはC-C10アルキニル及びアルキルであり得る。2’糖修飾はさらに、限定されないが、-O[(CHO]CH、-O(CHOCH、-O(CHNH、-O(CHCH、-O(CH-ONH、及び、-O(CHON[(CHCH)Jを含み、nとmは1~約10までである。
【0049】
2’位置での他の修飾は、限定されないが、C-C10低級アルキル、置換された低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O-アルカリル、又はO-アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレータ、オリゴヌクレオチドの薬物速度論的特性を向上させるための基、あるいは、オリゴヌクレオチドの薬力学的な特性を改善するための基、及び、同様の特性を有する他の置換基を含む。同様の修飾が、糖での他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上又は2’-5’結合オリゴヌクレオチド中の糖の3’位置、及び5’末端ヌクレオチドの5’位置でも行われ得る。修飾された糖はさらに、CHとSなどの架橋環酸素で修飾を含むものを含んでいる。ヌクレオチド糖アナログは、ペントフラノシル糖の適所にシクロブチル部分などの糖ミメティックを有し得る。そのような修飾された糖構造の調製を教示する多くの米国特許があり、例えば、第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;第4,845,205号;第5,130,302号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号;第5,596,091号;第5,614,617号;第5,681,941号;及び第5,700,920号などであり、これらの各々は全体として引用することで本明細書に組み込まれ、一連の塩基修飾について詳述及び記載している。これらの特許の各々は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
修飾された糖部分を有する核酸の例は、限定されないが、5’-ビニル、5’-メチル(R又はS)、4’-S、2’-F、2’-OCH、及び2’-O(CHOCH置換基を含む核酸を含む。2’位置の置換基は、アリル、アミノ、アジド、チオ、O-アリル、及びO-C C10アルキル、OCF、O(CHSCH、O(CH-O-N(R)(R)、及びO-CH-C(=O)-N(R)(R)から選択され得、ここで、R及びRはそれぞれ独立してHあるいは置換又は非置換のC-C10アルキルである。
【0051】
特定の実施形態において、本発明の核酸は1つ以上の二環式核酸を含む。特定のそのような実施形態において、二環式核酸は、4’及び2’リボシル環原子との間に架橋を含む。ある実施形態では、本明細書で提供される核酸は1つ以上の二環式核酸を含み、ここで、架橋は4’~2’の二環式核酸を含む。こうした4’~2’の二環式核酸は、限定されないが、以下の式の1つを含む:4’-(CH)-O-2’(LNA);4’-(CH)-S-2’;4’-(CH-O-2’(ENA);4’-CH(CH)-O-2’及び4’-CH(CHOCH)-0-2’、及びこれらのアナログ(2008年7月15日に発行された米国特許第7,399,845号);4’-C(CH)(CH)-0-2’及びそのアナログ(WO2009/006478、WO2008/150729、US2004/0171570、米国特許第7,427,672号、Chattopadhyaya, et al, J. Org. Chem.,2 09, 74, 118-134)、及び2008年12月8日に公開されたWO2008/154401)。例えば、Singh et al.,Chem. Commun.,1998, 4, 455-456; Koshkin et al, Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630; Wahlestedt et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,2000, 97, 5633-5638; Kumar et al.,Bioorg. Med. Chem. Lett.,1998, 8, 2219-2222; Singh et al.,J. Org. Chem.,1998, 63, 10035-10039; Srivastava et al, J. Am. Chem. Soc, 129(26) 8362-8379 (Jul. 4, 2007); Elayadi et al, Curr. Opinion Invens. Drugs, 2001, 2, 558-561; Braasch et al, Chem. Biol, 2001, 8, 1-7; Oram et al, Curr. Opinion Mol Ther.,2001, 3, 239-243;米国特許第7,053,207号、第6,268,490号、第6,770,748号、第6,794,499号、第7,034,133号、第6,525,191号、第6,670,461号、及び、第7,399,845号;国際出願WO2004/106356、WO1994/14226、WO2005/021570、及びWO2007/134181;米国特許公報US2004/0171570号、US2007/0287831号、及びUS2008/0039618号;米国特許シリアル番号12/129,154号、60/989,574号、61/026,995号、61/026,998号、61/056,564号、61/086,231号、61/097,787号、61/099,844号;及びPCT国際出願番号PCT/US2008/064591、PCT/US2008/066154、及びPCT/US2008/068922、PCT/DK98/00393;及び、米国特許4,849,513号;5,015,733号;5,118,800号;及び5,118,802号を参照。
【0052】
特定の実施形態において、核酸は連結された核酸を含み得る。核酸は任意の核酸間結合も使用して一緒に結合され得る。核酸間結合基の2つのメインクラスは、リン原子の存在あるいは不在によって定義される。核酸間結合を含有する代表的なリンとしては、限定されないが、ホスホジエステル、ホスホトリエステル、メチルホスホネート、ホスホロアミダート、及びホスホロチオエート(P=S)が挙げられる。核酸間結合を含有する代表的な非リンとしては、限定されないが、メチレンメチルイミノ(-CH-N(CH)-O-CH-)、チオジエステル(-O-C(O)-S-)、チオノカルバメート(-O-C(O)(NH)-S-);シロキサン(-O-Si(H)2-O-);及び、N,N-ジメチルヒドラジン(-CH-N(CH)-N(CH)-)が挙げられる。ある実施形態では、キラル原子を有する核酸間結合は、別のエナンチオマー、例えば、アルキルホスホネート及びホスホロチオエートとして、ラセミ混合物を調製することができる。非天然核酸は単一の修飾を含み得る。非天然核酸は、複数の部分の1つ内に、又は異なる部分間に、複数の修飾を含み得る。
【0053】
核酸への骨格リン酸塩の修飾は、限定されないが、ホスホン酸メチル、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート(架橋又は非架橋)、ホスホトリエステル、ホスホロジチオエート、ホスホジチオエート、及びボラノリン酸塩を含み、任意の組み合わせで使用され得る。他の非リン酸塩結合も使用され得る。
【0054】
幾つかの実施形態において、骨格修飾(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、及びホスホロジチオエートヌクレオチド間結合)は、修飾された核酸に免疫調節活性を与えることができ、及び/又は、そのインビボでの安定性を増強することができる。
【0055】
亜リン酸誘導体(あるいは修飾されたリン酸基)は、糖又は糖アナログ部分に結合され得、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、アルキルホスホナート、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダートなどであり得る。修飾されたリン酸塩結合あるいは非リン酸塩結合を含有する例示的なポリヌクレオチドは、Peyrottes et al. (1996) Nucleic Acids Res. 24: 1841-1848; Chaturvedi et al. (1996) Nucleic Acids Res. 24:2318-2323; and Schultz et al. (1996) Nucleic Acids Res. 24:2966-2973; Matteucci (1997) “Oligonucleotide Analogs: an Overview” in Oligonucleotides as Therapeutic Agents, (DJ. Chadwick and G. Cardew, ed.) John Wiley and Sons, New York, NY; (Zon (1993) “Oligonucleoside Phosphorothioates” in Protocols for Oligonucleotides and Analogs, Synthesis and Properties (Agrawal, ed.) Humana Press, pp. 165-190); (Miller et al. (1971) JACS 93:6657-6665) ; (Jager et al. (1988) Biochem. 27:7247-7246), (Nelson et al. (1997) JOC 62:7278-7287) (U.S. Patent No. 5,453,496); Micklefield, J. 2001, Current Medicinal Chemistry 8: 1157-1179で見つけることができる。
【0056】
骨格の修飾は、ホスホジエステル結合を、アニオン性基、中性基、あるいはカチオン基などの代替部分と取り替えることを含む。そのような修飾の例としては、以下が挙げられる:アニオン性ヌクレオシド間結合;N’~P5’ホスホロアミダート修飾;ボラノリン酸塩DNA;プロオリゴヌクレオチド;ホスホン酸メチルなどの中性のヌクレオシド間結合;アミド結合DNA;メチレン(メチルイミノ)結合;ホルムアセタール及びチオホルムアセタール結合;スルホニル基を含む骨格;モルホリノオリゴ;ペプチド核酸(PNA);及び、正電荷のデオキシリボ核酸グアニジン(DNG)オリゴ(Micklefield, J. 2001, Current Medicinal Chemistry 8: 1157-1179)。修飾された核酸は、1つ以上の修飾、例えば、ホスホジエステルとホスホロチオエートの結合の組み合わせなどのリン酸塩結合の組み合わせを含む、キメラあるいは混合骨格を含み得る。
【0057】
リン酸塩の置換基は、例えば、短鎖アルキルあるいはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルあるいはシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は、1つ以上の短鎖ヘテロ原子あるいは複素環ヌクレオシド間結合であり得る。これらは、(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成された)モルホリノ結合;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、及びスルホンの骨格;ホルムアセチル(formacetyl)及びチオホルムアセチル(thioformacetyl)の骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチルの骨格;骨格を含むアルケン;スルファミン酸塩骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノの骨格;スルフォナートとスルホンアミドの骨格;アミド骨格;ならびに、混合したN、O、S、及びCHの構成部分を有する他のもの、を含む。多くの米国特許は、これらのタイプのリン酸塩交換物をどのように作り使用するかについて開示しており、限定されないが、第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,264,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,610,289号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;及び第5,677,439号を含み、その各々は引用によって本明細書に組み込まれる。ヌクレオチドの糖とリン酸塩の部分の両方が例えば、アミド型結合(aminoethylglycine)(PNA)と取り替えられ得ることも、ヌクレオチド置換で理解される。米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;及び、第5,719,262号は、PNA分子をどのようにして作り使用するかを教示しており、その各々は、引用によって本明細書に組み込まれる。(同様に、Nielsen et al.,Science, 1991, 254, 1497-1500も参照)。抱合体は、ヌクレオチド又はヌクレオチドのアナログに化学的に結合され得る。そのような抱合体としては、限定されないが、コレステロール部分(Letsinger et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1989, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg. Med. Chem. Let. , 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル(例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール)(Manoharan et al.,Ann. KY. Acad. Sci.,1992, 660, 306-309; Manoharan et al.,Bioorg. Med. Chem. Let. , 1993, 3, 2765-2770)、チオールコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl. Acids Res. , 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールあるいはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al.,EM5OJ, 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al, FEBS Lett.,1990, 259, 327-330; Svinarchuk et al.,Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールあるいはトリエチルアンモニウム l-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-S-H-ホスホン酸塩(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett. , 1995, 36, 3651-3654; Shea et al.,Nucl. Acids Res. , 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンあるいはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、あるいはアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett. , 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al.,Biochem. Biophys. Acta, 1995,1264, 229-237)、あるいは、オクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステリン部分(Crooke et al.,J. Pharmacol. Exp.Ther.,1996, 277, 923-937)が挙げられる。多くの米国特許がそのような抱合体の調製を教示しており、限定されないが、以下を含む:米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号;第5,580,731号;第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号;第5,391,723号;第5,416,203号;第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号;及び、第5,688,941号を含み、これらの各々は全体的に参照によって本明細書に組み込まれる。
【0058】
ポリメラーゼ
ポリメラーゼのとりわけ有益な機能は、既存の核酸を鋳型として使用して、核酸鎖の重合を触媒することである。有益な他の機能は本明細書の他の場所に記載される。有益なポリメラーゼの実施例はDNAポリメラー及びRNAポリメラーゼを含む。
【0059】
ポリメラーゼ非天然核酸の特異性、処理能力、あるいは他の特徴を改善するための能力は、例えば、増幅、配列決定、標識、検出、クローニング、及び他の多くのものを含む、非天然核酸取り込みが望まれる様々な文脈において非常に望ましい。本発明は、非天然核酸のための修飾された特性を有するポリメラーゼ、そのようなポリメラーゼを製造する方法、そのようなポリメラーゼを使用する方法、及び以下の完全な検討後に明らかになるだろう他の多くの特徴を提供する。
【0060】
幾つかの例では、本明細書に開示されるのは、例えば、DNA増幅中に、成長する鋳型コピーに非天然核酸を組み込むポリメラーゼを含む。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼの活性部位を修飾して、活性部位への非天然核酸の立体の侵入阻害を減少するように、ポリメラーゼを修飾することができる。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、非天然核酸の1つ以上の非天然な特徴との相補性を提供するように修飾することができる。従って、本発明は、異種あるいは組換えポリメラーゼを含む組成物及びそれらの使用方法を含む。
【0061】
ポリメラーゼはタンパク質工学に関する方法を使用して修飾することができる。例えば、結晶構造に基づいて分子モデリングを実行して、標的活動を変更するために突然変異を起こすことができるポリメラーゼの位置を同定することができる。置換の標的として同定された残基は、Bordo, et al. J Mol Biol 217: 721-729 (1991) and Hayes, et al. Proc Natl Acad Sci, USA 99: 15926- 15931 (2002)などに記載されるエネルギー最小化モデリング、相同性モデリング、及び/又は保存的アミノ酸置換を使用して、選択された残基と交換することができる。
【0062】
様々なポリメラーゼのいずれかは、例えば、生物系及びその機能的変異体から単離されたタンパク質ベースの酵素を含む、本明細書に記載される方法あるいは組成物に使用することができる。以下に例証されるものなどの特定のポリメラーゼへの言及は、特に明記しない限り、それらの機能的変異体を含むと理解されるだろう。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは野生型ポリメラーゼである。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、修飾ポリメラーゼあるいは突然変異ポリメラーゼである。
【0063】
活性部位領域への非天然核酸の侵入を改善するための、及び活性部位領域における非天然ヌクレオチドと配位させる(coordinating)ための特徴を有するポリメラーゼも使用することができる。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは修飾ヌクレオチド結合部位を有する。
【0064】
幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは、非天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である非天然核酸に対する特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、修飾された糖を含まない天然核酸及び/又は非天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である修飾された糖を含む非天然核酸に対する特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、修飾された塩基を含まない天然核酸及び/又は非天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である修飾された塩基を含む非天然核酸に対する特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、三リン酸塩を含む天然核酸及び/又は三リン酸塩を含まない非天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、三リン酸塩を含む非天然核酸に対する特異性を有する。例えば、修飾野生型ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、二リン酸塩又は一リン酸塩を有する非天然核酸、リン酸塩を有しない非天然核酸、又はそれらの組み合わせに対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、三リン酸塩を含む非天然核酸に対する特異性を有する。
【0065】
幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、非天然核酸に対して緩い特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、非天然核酸に対する特異性、及び天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である天然核酸に対する特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、修飾された糖を含む非天然核酸に対する特異性、及び天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である天然核酸に対する特異性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、修飾された塩基を含む非天然核酸に対する特異性、及び天然核酸に対する野生型ポリメラーゼの特異性の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である天然核酸に対する特異性を有する。
【0066】
エキソヌクレアーゼ活性の欠如は、野生型の特徴であるか、あるいは変異体又は組換えられたポリメラーゼによって付与される特徴であり得る。例えば、エキソマイナスクレノウ断片は、3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を欠くクレノウ断片の突然変異型である。
【0067】
本発明の方法は、内因性3~5’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を欠くか、あるいは例えば、突然変異により3~5’エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性が無効になっている、任意のDNAポリメラーゼの基質範囲を拡張するために使用することができる。DNAポリメラーゼの例には、polA、polB(例えば、Parrel & Loeb, Nature Struc Biol 2001を参照)polC、polD、polY、polX及び逆転写酵素(RT)が含まれるが、好ましくは、進行性忠実度が高いポリメラーゼ(PCT/GB2004/004643)である。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、非天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼあるいは野生型ポリメラーゼは、天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有し、非天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く。
【0068】
幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは、野生型ポリメラーゼのプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性の少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは、天然核酸に対する野生型ポリメラーゼのプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性の少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、非天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは、天然核酸に対する野生型ポリメラーゼのプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性の少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、非天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性及び天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。幾つかの実施形態において、修飾ポリメラーゼは、天然核酸に対する野生型ポリメラーゼのプルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性の少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.99%である、天然核酸に対する3’~5’プルーフリーディングエキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0069】
関連する態様において、本発明は修飾ポリメラーゼを製造する方法を提供し、上記方法は、親ポリメラーゼ(例えば、DNAポリメラーゼ)を構造的にモデル化する工程と、1つ以上の複合体の安定性、あるいは複合体の安定性又はヌクレオチドのアクセス又は活性部位での結合に影響を与えるヌクレオチド相互作用特徴、あるいは活性部位のヌクレオチドアナログに対する相補的特徴とを同定する工程と、及びこれらの特徴を含むかあるいは除去するように親ポリメラーゼを変異させる工程と、を含む、修飾ポリメラーゼを製造する方法を提供する。例えば、ポリメラーゼを突然変異させて、活性部位に対する非天然ヌクレオチドの立体アクセス(steric access)を改善するか、あるいは非天然ヌクレオチドとポリメラーゼとの間の電荷-電荷あるいは疎水的相互作用を改善することができる。上記方法は、結果として得られる修飾ポリメラーゼが、親ポリメラーゼと比較して、成長する核酸コピーへのヌクレオチドあるいは非天然ヌクレオチドの取り込みの増加を示すか否かを判断することも含む。
【0070】
ポリメラーゼは、核酸からの解離の速度に従って特徴づけることができる。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、1つ以上の天然及び非天然核酸の比較的低い解離速度を有する。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、1つ以上の天然及び非天然核酸の比較的高い解離速度を有する。上記解離速度は、本明細書に記載される方法で反応速度を合わせるために調整することができるポリメラーゼの活性である。
【0071】
ポリメラーゼは、特定の天然核酸及び/又は非天然核酸、あるいは天然核酸及び/又は非天然核酸の収集物と共に使用される場合、それらの忠実度に従って特徴づけることができる。忠実度とは、核酸鋳型のコピーを作る際に、ポリメラーゼが成長する核酸鎖へと正確な核酸を組み込む精度を一般的に指す。ポリメラーゼ鎖鋳型核酸二元複合体中の同じ部位で鎖合成をめぐって競い合うために、天然核酸及び非天然核酸が、例えば、等しい濃度で存在する場合、正確な天然核酸及び非天然核酸の組み込み対不正確な天然核酸及び非天然核酸の組み入れの比率として、DNAポリメラーゼの忠実性を測定することができる。DNAポリメラーゼ忠実度は、天然核酸及び非天然核酸の(kcat/KM)と、不正確な天然核酸及び非天然核酸の(kcat/K)の比率として計算可能であり:ここで、kcat及びkは、 定常状態酵素反応速度論(Fersht, A. R. (1985) Enzyme Structure and Mechanism, 2nd ed.,p 350, W. H. Freeman & Co.,New York.、参照により本明細書に組み込まれる)におけるミハエリス・メンテンパラメータである。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、プルーフリーディング活性の有無に関わらず、少なくとも約100、1000、10,000、100,000、又は1x10の忠実度値を有する。
【0072】
天然源あるいはその変異体からのポリメラーゼは、特定の構造を有する非天然核酸の取り込みを検出するアッセイを使用してスクリーニングすることができる。一実施例において、ポリメラーゼは、非天然核酸あるいはUBP;例えば、d5SICSTP、dNaMTP、あるいはd5SICSTP-dNaMTP UBPを組み込む能力についてスクリーニングすることができる。野生型ポリメラーゼと比較して、非天然核酸の修飾された特性を呈するポリメラーゼ、例えば、異種ポリメラーゼを使用することができる。例えば、修飾された特性は、例えば、K、kcat、Vmax、非天然核酸(又は、自然発生のヌクレオチド)の存在下におけるポリメラーゼ処理能力、非天然核酸の存在下におけるポリメラーゼによる平均鋳型リード長、非天然核酸に対するポリメラーゼの特異性、非天然核酸の結合速度、生成物(ピロリン酸、三リン酸塩など)の放出速度、分岐速度、あるいはそれらの任意の組み合わせであり得る。一実施形態では、修飾された特性は、非天然核酸のkの減少及び/又は非天然核酸のkcat/KあるいはVmax/Kの増加である。同様に、ポリメラーゼは、野生型ポリメラーゼと比較して、非天然核酸の結合速度の増加、生成物放出速度の増加、及び/又は分岐速度の減少を随意に有する。
【0073】
同時に、ポリメラーゼは、成長する核酸コピーへと、天然核酸、例えば、A、C、G、Tを組み込むことができる。例えば、ポリメラーゼは、対応する野生型ポリメラーゼより少なくとも約5%(例えば、5%、10%、25%、50%、75%、100%以上)高い天然核酸の比活性と、天然核酸の存在下における野生型ポリメラーゼより少なくとも5%(例えば、5%、10%、25%、50%、75%、100%以上)高い、鋳型の存在下における天然核酸の処理能力とを随意に示す。随意に、ポリメラーゼは、野生型ポリメラーゼより少なくとも約5%(例えば、約5%、10%、25%、50%、75%、あるいは100%以上)高い、自然発生のヌクレオチドに対するkcat/KあるいはVmax/Kを示す。
【0074】
特定の構造の非天然核酸を組み込む能力を有し得る本明細書で使用されるポリメラーゼは、定向進化アプローチを使用して生成することもできる。核酸合成アッセイは、様々な非天然核酸のいずれかに対して特異性を有するポリメラーゼ変異体をスクリーニングするために使用することができる。例えば、ポリメラーゼ変異体は、核酸へと、非天然核酸あるいはUBP;例えば、dTPT3、dNaMアナログ、又はdTPT3-dNaM UBPを組み込む能力についてスクリーニングすることができる。幾つかの実施形態において、そのようなアッセイは、例えば、組換えポリメラーゼ変異体を使用するインビトロのアッセイである。そのような定向進化技術は、本明細書に記載される非天然核酸のいずれかに対する活性に適したポリメラーゼの変異体をスクリーニングするために使用することができる。
【0075】
記載される組成物の修飾ポリメラーゼは随意に、修飾された及び/又は組換えΦ29型DNAポリメラーゼであり得る。随意に、ポリメラーゼは、修飾された及び/又は組換えΦ29、B103、GA-1、PZA、Φ15、BS32、M2Y、Nf、G1、Cp-1、PRD1、PZE、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、あるいはL17ポリメラーゼであり得る。
【0076】
本発明における一般的に有用な核酸ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及び突然変異体あるいはそれらの変化型を含む。DNAポリメラーゼ及びその特性は、とりわけ、DNA Replication 2nd edition, Kornberg and Baker, W. H. Freeman, New York, N. Y. (1991)に詳細が記載されている。本発明における有用な既知の従来のDNAポリメラーゼとしては、限定されないが、パイロコッカス・フリオサス (Pfu) DNAポリメラーゼ (Lundberg et al.,1991, Gene, 108: 1, Stratagene), バイロコッカス・ヴェッセイ (Pwo) DNAポリメラーゼ (Hinnisdaels et al.,1996, Biotechniques, 20:186-8, Boehringer Mannheim), サーマス・サーモフィラス (Tth) DNAポリメラーゼ (Myers and Gelfand 1991, Biochemistry 30:7661),バチルス・ステアロサーモフィルス DNAポリメラーゼ (Stenesh and McGowan, 1977, Biochim Biophys Acta 475:32), Thermococcus litoralis(サーモコッカス・リトラリス)(TIi) DNAポリメラーゼ (Vent(商標)DNAポリメラーゼとも呼ばれる, Cariello et al, 1991, Polynucleotides Res, 19: 4193, New England Biolabs), 9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs), ストッフェルフラグメント(Stoffel fragment), サーモシーケナーゼ(Thermo Sequenase)(登録商標)(Amersham Pharmacia Biotech UK), Therminator(商標)(New England Biolabs), テルモトガ・マリティマ(Tma) DNAポリメラーゼ(Diaz and Sabino, 1998 Braz J Med. Res, 31 :1239), テルムス・アクウァーティクス (Taq) DNAポリメラーゼ (Chien et al, 1976, J. Bacteoriol, 127: 1550), DNAポリメラーゼ, パイロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis) KOD DNAポリメラーゼ (Takagi et al.,1997, Appl. Environ. Microbiol. 63:4504), JDF-3 DNAポリメラーゼ(thermococcus sp. JDF-3, 特許出願国際公開第0132887からの), パイロコッカス GB-D (PGB-D) DNAポリメラーゼ (Deep Vent(商標)DNAポリメラーゼとも呼ばれる, Juncosa-Ginesta et al.,1994, Biotechniques, 16:820, New England Biolabs), UlTma DNAポリメラーゼ (好熱性テルモトガ・マリティマからの; Diaz and Sabino, 1998 Braz J. Med. Res, 31 :1239; PE Applied Biosystems), Tgo DNAポリメラーゼ (サーモコッカス ゴルゴナリウス(thermococcus gorgonarius)からの, Roche Molecular Biochemicals), 大腸菌DNAポリメラーゼ I (Lecomte and Doubleday, 1983, Polynucleotides Res. 11 :7505), T7 DNAポリメラーゼ (Nordstrom et al, 1981, J Biol. Chem. 256:3112), 及び古細菌DP1I/DP2 DNAポリメラーゼ II (Cann et al, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:14250)が挙げられる。中温性ポリメラーゼ及び好熱性ポリメラーゼの両方が考慮される。好熱性DNAポリメラーゼとしては、限定されないが、ThermoSequenase(登録商標)、9°Nm(商標)、Therminator(商標)、Taq、Tne、Tma、Pfu、TfI、Tth、TIi、ストッフェルフラグメント、Vent(商標)及びDeep Vent(商標)DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tgo、JDF-3、及びその突然変異体、変異体、ならびに誘導体が挙げられる。3‘エキソヌクレアーゼが欠損している突然変異体であるポリメラーゼが考慮される。本発明において有用な逆転写酵素は、限定されないが、HIV、HTLV-I、HTLV-II、FeLV、FIV、SIV、AMV、MMTV、MoMuLV、及び他のレトロウイルス(Levin, Cell 88:5-8 (1997); Verma, Biochim Biophys Acta. 473:1-38 (1977); Wu et al, CRC Crit Rev Biochem. 3:289- 347(1975)を参照)からの逆転写酵素を含む。さらに、ポリメラーゼの例としては、限定されないが、9°N DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Phusion(登録商標) DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、RB69 DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、及びVentR(登録商標) DNAポリメラーゼ(Gardner et al. (2004) “Comparative Kinetics of Nucleotide Analog Incorporation by Vent DNA Polymerase (J. Biol. Chem.,279(12), 11834-11842; Gardner and Jack “Determinants of nucleotide sugar recognition in an archaeon DNA polymerase” Nucleic Acids Research, 27(12) 2545-2553.)を含む。非好熱生物から単離されたポリメラーゼは熱失活であり得る。例はファージからのDNAポリメラーゼである。様々なソースのいずれかからのポリメラーゼを改変して、高温条件に対するそれらの耐性を増大あるいは減少することができることが理解されるだろう。幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは好熱性であり得る。幾つかの実施形態において、好熱性ポリメラーゼは熱失活であり得る。好熱性ポリメラーゼは、高温条件又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術に利用されるような熱サイクリング条件に典型的に有用である。
【0077】
幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、Φ29、B103、GA-1、PZA、Φ15、BS32、M2Y、Nf、G1、Cp-1、PRD1、PZE、SF5、Cp-5、Cp-7、PR4、PR5、PR722、L17、ThermoSequenase(登録商標)、9°Nm(商標)、Therminator(商標) DNAポリメラーゼ、Tne、Tma、TfI、Tth、TIi、ストッフェルフラグメント、Vent(商標)及びDeep Vent(商標)DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Tgo、JDF-3、Pfu、Taq、T7 DNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、PGB-D、UlTma DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIII、古細菌DP1I/DP2 DNAポリメラーゼII、9°N DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Phusion(登録商標) DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、RB69 DNAポリメラーゼ、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、SuperScript(登録商標)II逆転写酵素、及びSuperScript(登録商標)III逆転写酵素を含む。
【0078】
幾つかの実施形態において、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ1-クレノウ断片、Ventポリメラーゼ、Phusion(商標)DNAポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、Therminator(商標)DNAポリメラーゼ、POLBポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIII、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素、SuperScript(商標)II逆転写酵素、又はSuperScript(商標)III逆転写酵素である。
【0079】
加えて、そのようなポリメラーゼは、例えば、ポリメラーゼによるDNAへの非天然核酸残基の取り込みを含む増幅あるいは配列決定の文脈におけるリアルタイムアプリケーションを含む、DNA増幅及び/又は配列決定アプリケーションに使用することができる。他の実施形態では、組み込まれる非天然核酸は天然残基と同じであり得、例えば、その場合、非天然核酸の標識あるいは他の部分が、取り込み中にポリメラーゼの作用によって除去されるか、あるいは、非天然核酸は、天然核酸と区別する1つ以上の特徴を有することができる。
【0080】
地球上の全ての生命の少なくとも最後の共通の祖先以来、遺伝子情報は、2つの塩基対の形成によって伝播及び検索される4文字のアルファベットで保存されている。合成生物学の中心となる目標は、新たな生命体及び機能を作成することであり、この目標への最も一般的な経路は、そのDNAが第3の非天然塩基対(UBP)を形成する2つの追加の文字を抱える半合成生物(SSO)を作成することである。以前に、そのようなSSOを生成する我々の努力は、フェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)(PtNTT2)からのヌクレオシド三リン酸トランスポーターのおかげで結果的に大腸菌の菌株の作成へと至り、培地から必要な非天然三リン酸塩を移入し、その後、それらを使用して、UBP dNaM-dTPT3を含むプラスミドを複製する(図1A)。SSOは、増加した情報を保存するが検索はせず、それは、mRNA及びtRNAへのUBPのインビボの転写、非天然アミノ酸を有するtRNAのアミノアシル化、及び最後に、リボソームでデコードする際のUBPの効率的な参加を必要とする。ここで、我々は、2つの異なる非天然コドンを有するmRNA及び同族の非天然アンチコドンを有するtRNAへの、dNaMとdTPT3を含むDNAのインビボの転写、及び、superfolder緑色蛍光タンパク質(sfGFP)への天然あるいは非基準アミノ酸(ncAA)の部位特異的な取り込みを指示するためのリボソームでのそれらの効率的なデコードを報告する。結果は、水素結合とは別の相互作用が情報蓄積及び検索のすべてのステップに寄与し得ることを実証する。結果として生じるSSOは、増加した情報をコード化と検索の両方を行い、新たな生命体ならびに機能の作成のためのプラットフォームとして機能するべきである。
【0081】
緑色蛍光タンパク質、及びsfGFPなどの変異体は、様々な天然及びncAAを許容すると示されている位置Y151を含むアンバー抑制システムを使用する、ncAAの取り込みに関する研究のためのモデルシステムとして機能した(図4)。非天然コドンのデコードを調査するために、我々は、まず、sfGFPの位置151でのSerの取り込みに注目した。なぜなら、大腸菌セリン・アミノアシルtRNAシンテターゼ(SerRS)がtRNAアミノアシル化のアンチコドン認識に依拠せず、したがって、非効率的なチャージの潜在的な合併症を排除するためである。SSO株YZ3は、sfGFP及び大腸菌tRNASer遺伝子(serT)をコードするプラスミドで形質転換され、sfGFPコドン151(TAC)は非天然コドンAXC(sfGFP(AXC)151;X=NaM)と置き換えられ、ならびにserTのアンチコドンは非天然アンチコドンGYT(tRNASer(GYT);Y=TPT3と置き換えられた(図1B)。形質転換体を、dNaMTP及びdTPT3TPで補足された培地中で成長させ、その後、NaMTP及びTPT3TP、ならびにイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPTG)でさらに補足して、T7 RNAポリメラーゼ(T7 RNAP)及びtRNASer(GYT)の発現を誘発した。tRNA誘発の短い期間の後、アンヒドロテトラサイクリン(aTc)を加えて、sfGFP(AXC)151の発現を誘発した。
【0082】
誘発後、sfGFP(AXC)151をコードするがtRNASer(GYT)を欠く対照プラスミドで形質転換された細胞は、位置151で天然Serコドンを有するsfGFP(sfGFP(AGT)151図1C)をコードするプラスミドで形質転換された細胞と比較して、劇的に減少した蛍光を示した。さらに、細胞増殖は、おそらくリボソームの停止及び分離(sequestering)により、sfGFP(AXC)151図1D)の誘発の際にプラトーに達し始めた。これらの細胞の溶解物を、抗GFPの抗体を用いたウェスタンブロットにさらし、それは、sfGFP発現の有意な減少と、非天然コドンの位置で切断されたsfGFPの存在を明らかにした(図1E)。これに対して、sfGFP(AXC)151及びtRNASer(GYT)の両方をコードするプラスミドで形質転換された細胞は、sfGFP(AGT)151図1C)を発現する対照細胞とほぼ等しい蛍光を示し、細胞増殖はsfGFP(AXC)151図1D)の誘発の際にプラトーに達することなく、及び、これらの細胞からの溶解物のウェスタンブロットは完全長のsfGFPタンパク質のみを明らかにした(図1E)。さらに、我々は、AXCコドンをデコードするために、同一様式で発現される4つすべての天然のほぼ同族(near-cognate)のtRNA(tRNASer(GNT);N=G、C、A、又はT)の能力を評価した。いずれの場合にも、蛍光はほとんど観察されず、増殖異常が残った(図5A及び5B)。これらのデータは、PtNTT2が、両方の非天然ヌクレオチドのデオキシトリホスフェート及びリボトリホスフェートの両方を移入することができること、T7 RNAポリメラーゼが、インビボで非天然ヌクレオチドを含むmRNA及びtRNAを転写することができること、ならびに、リボソームが、非天然アンチコドンを用いて非天然コドンを効率的にデコードすることを実証する。
【0083】
デコードの忠実度を評価するために、我々は、LC/MS-MSによって、sfGFP(AXC)151及びtRNASer(GYT)の両方を発現する細胞から精製されたタンパク質を分析し、ピーク強度によって相対的定量を分析した。これは、位置151でのSerの98.5±0.7%(95%のCI、n=4)の取り込みを明らかにし、Ile/Leuは主な不純物であった(図1F及び表4)。sfGFP(AXC)151遺伝子におけるUBPの保持が98±2%(95%のCI、n=4)であり(表5)、及び、X→Tは、典型的に、複製中の主要な突然変異である(AXCの場合はIleコドンATCを結果としてもたらす)ことを考慮すると、我々は、位置151にSerを含まないタンパク質の大部分は複製中のUBPの損失が原因であるとし、非天然コドンを用いた翻訳の忠実度は高いとの結論を下す。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
UBPを有するncAAのコード化を実証するために、我々は、上記で使用されるものと類似するが、tRNASer遺伝子がメタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei)tRNAPyl(GYT)遺伝子と置き換えられたプラスミドを構築した。tRNAPylは、ncAA N-[(2-プロピニルオキシ)カルボニル]-L-リジン(PrK)を有するメタノサルシナ・バーケリ(Methanosarcina barkeri)ピロリジン・アミノアシルtRNAシンテターゼ(PylRS)によって選択的に負荷することができる。コドンAXCに加えて、我々は、コドンGXC及び対応するtRNAPyl(GYC)も分析した。IPTG誘導性PylRSをコードする別個のプラスミドを保有するSSOは、必要なプラスミドを用いて形質転換され、PrKの添加の有無にかかわらず成長した。PylRS、同族の非天然tRNAPyl、又はPrKのいずれかの不在下でsfGFP(AXC)151あるいはsfGFP(GXC)151のいずれかを発現する細胞用いた対照実験において、我々は、低い細胞の蛍光(図2A)、sfGFPのトランケーション(図6A及び6B)、ならびに細胞増殖(図6B)におけるプラトーのみを観察した。これに対して、その同族の非天然tRNAを有するいずれかの非天然mRNAについては、PylRSが存在し、かつPrKが加えられた場合、我々は、高い蛍光(AXCとGXCについてそれぞれsfGFP(TAC)151の64%及び69%)(図2A及び2B)、完全長のsfGFPの強固な生成(図6A)、及び正常な成長(図6B)を観察した。
【0087】
PrKの取り込みを検証するために、sfGFPを、C末端Strep-tag IIを使用して、細胞溶解物からアフィニティー精製し、銅触媒されたクリックケミストリーにさらして、カルボキシテトラメチルローダミン(carboxytetramethylrhodamine)(TAMRA)色素(TAMRA-PEG-N)を付着させることにより、SDS-PAGE中にsfGFPの電気泳動移動度がシフトすることが分かったため、ウエスタンブロット(図2C)によってPrK取り込みの忠実度を評価することができた。我々は、強いTAMRA信号を観察し、及び、PrKで補足された培地中で培養され、sfGFP(AXC)151とtRNAPyl(GYT)あるいはsfGFP(GXC)151とtRNAPyl(GYC)を発現する細胞から精製される場合には、実質的に全てのsfGFPがシフトしたことを観察した(図2C)。これに対して、NaMTP、TPT3TP、又はその両方が不在の場合、TAMRA信号あるいはシフトしたsfGFPは、ほとんど又は全く観察されなかった(図7A及び7B)。最後に、TAMRA信号あるいはシフトしたsfGFPは、いずれかの非天然tRNAを有するsfGFP(TAC)151を発現する細胞から精製されたタンパク質においては観察されなかった(図2C)。このデータは、非天然アンチコドンを有するtRNAによって非天然コドンをデコードすることにより、PrKがsfGFPへと特異的に組み込まれることを実証する。
【0088】
我々は、最適なPrK濃縮(図8A-8D)で、sfGFPの54±4及び55±6μg/mLを精製した(s.d.、n=4、それぞれAXC及びGXCコドンのsfGFP(TAC)151対照の~40%(表6))。さらに、質量分析に基づいて、PrKを有するsfGFPの純度は、AXCコドンで96.2±0.3%(95%のCI、n=4)及びGXCコドンで97.5±0.7%(95%のCI、n=4)であった(図2D)。精製されたsfGFPタンパク質の収率は、非天然リボトリホスフェート(図7C及び7D)の添加による成長の中程度の低下のために、アンバー抑制よりもわずかに低く(87±6μg/mL、s.d.、n=4(表6))、両方の非天然コドンのデコードは、細胞密度に正規化される場合、アンバー抑制よりも高い蛍光を結果としてもたらし(図2A及び2B)、非天然コドンでデコードすることは、アンバー抑制よりも効率的であることを示唆する。
【0089】
UBPを有する他のncAAのコード化を調べるために、我々は、AXCコドンを有するp-アジド-フェニルアラニン(pAzF)及び進化したメタノカルドコックス・ヤンナスキイ TyrRS/tRNATyrペア(pAzFRS/tRNApAzF)のコード化を調べた。シンテターゼの誘導及び成長培地へのpAzFの添加により、我々は、天然sfGFP(TAC)151を発現する細胞と同等の強固な蛍光、ならびにsfGFP(AXC)151とtRNApAzF(GYT)による正常な成長を観察した(図3A図9)。完全長のsfGFPを精製し(86±6μg/mL、s.d.、n=4;sfGFP(TAC)151対照の68%、表6)、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)群を使用する銅を含まないクリックケミストリーを行い、TAMRA(TAMRA-PEG4-DBCO)を結合した。我々は、sfGFP(AXC)151及びtRNApAzF(GYT)を発現する細胞から単離され、pAzFの存在下において培養されたsfGFPへの、強固なTAMRAの結合を観察した(図3B)。我々は、アジド部分の分解のためにpAzF取り込みの忠実度を正確に評価することができなかったが、sfGFPタンパク質の~93%がシフトし、これは、アンバー抑制によって生成された~95%がシフトしたsfGFPと比べて優れている(図3B)。
【0090】
【表6】
地球上の全ての生命の少なくとも最後の共通の祖先以来、4ヌクレオチド遺伝子アルファベットのみで書かれたコドンのデコードによって、タンパク質が生成されてきた。我々は、拡張された遺伝子アルファベットで書かれた2つの新たなコドンのデコードをここで実証し、ncAAをタンパク質へと部位特異的に組み込むために上記新たなコドンを使用した。情報の蓄積及び検索の全てのステップにおいて、非常に明らかに天然塩基対の中心となる水素結合は、相補的なパッキング及び疎水性力と少なくとも部分的に置き換えられることを我々は見つけた。デコードの新規なメカニズムにもかかわらず、非天然コドンは、完全に天然な相当物と同じくらい効率的にデコードすることができる。我々は、2つの非天然コドンのデコードのみを調べたが、UBPはこれらに制限される可能性は低く、UBPの保持を補強する最近報告されたCas9編集システムと組み合わされた場合、それは、今まで使用されてきたよりも多くのコドンを利用可能にする可能性が高いだろう。したがって、報告されたSSOは、天然生物には利用できない様々な形態及び機能を利用することができる半合成生命の新たな形態の最初のものにすぎないかもしれない。
【0091】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示されかつ記載されてきたが、こうした実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないということは当業者にとって明白である。多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9