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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】セグメントの製造方法及びセグメント
(51)【国際特許分類】
   B28B 7/10 20060101AFI20230804BHJP
   E21D 11/14 20060101ALI20230804BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20230804BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20230804BHJP
   B28B 23/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B28B7/10 B
E21D11/14
E21D11/08
E21D11/38 Z
B28B23/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020017351
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123013
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小林 一博
(72)【発明者】
【氏名】田中 隼
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-215376(JP,A)
【文献】特開2007-231663(JP,A)
【文献】特開2019-002191(JP,A)
【文献】特開平08-108413(JP,A)
【文献】特開2002-194996(JP,A)
【文献】特開2005-264556(JP,A)
【文献】特開2004-188660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/10
B28B 23/00 - 23/22
E21D 11/00 - 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に円弧状に延びる一対の主桁と、前記主桁の周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板と、前記主桁及び継手板の外周側に設けられたスキンプレートと、からなる鋼製の枠体内にコンクリートを充填するセグメントの製造方法であって、
前記スキンプレートに固定された裏当て材の開口を通して前記コンクリートを枠体内に充填する工程と、
前記コンクリートの充填後に前記開口を蓋体で閉鎖して前記蓋体及び裏当て材を液密に溶接する工程と、を備え、
前記裏当て材の厚みは、14mm以上に設定されており、
溶接時に前記裏当て材の厚みによってコンクリート温度が200℃未満に抑制されることを特徴とするセグメントの製造方法。
【請求項2】
前記枠体内のコンクリート内には鉄筋かごが配設され、
該鉄筋かごは前記裏当て材によって溶接時に温度が400℃以下に抑制される請求項1に記載されたセグメントの製造方法。
【請求項3】
周方向に円弧状に延びる一対の主桁と、前記主桁の周方向両端に設けられた一対の継手板と、前記主桁及び継手板の外周側に設けられたスキンプレートとからなる鋼製の枠体内にコンクリートを充填したセグメントであって、
前記スキンプレートに連結されていてコンクリートを充填する開口を有する裏当て材と、
前記開口を覆って前記裏当て材に溶接された蓋体と、を備え、
前記蓋体の溶接部から前記裏当て材を介したコンクリートまでの距離はコンクリート温度200℃未満になるように前記裏当て材の厚みが14mm以上に設定されていることを特徴とするセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に複数連結することにより掘削穴の軸方向に筒状壁体を構成するセグメントの製造方法及びセグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工法として、シールドマシンによって地盤を掘削しながら、その後方において円弧版状のセグメントを周方向及び軸方向に順次据え付けて円筒状のトンネル壁体(筒状壁体)を構築するシールド工法が一般的である。
このようなセグメントの一例として特許文献1に記載されたセグメントは、鋼製の主桁と継手面とスキンプレートで形成された鋼枠内にコンクリートを打設して円弧状に湾曲した板状に形成されている。このセグメントはスキンプレートの周方向中央の開口部に固定されたベースプレートにコンクリートの打設口と排気口が個別に形成され、打設口から鋼枠内にコンクリートを打設した後に蓋で打設口と排気口を閉鎖し、ボルトで蓋をベースプレートに固定する製造方法と構造を採用している。
【0003】
このセグメントを周方向に連結してセグメントリングを構築し、更に軸方向に連結することでトンネルを構築している。このセグメントの構造では、トンネルの地山側の地下水がトンネル内に漏水しないように、ベースプレートの打設口及び排気口と蓋との間に止水用のシール材を介在させて蓋をボルト止めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6576095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引用文献1に記載のセグメントでは、鋼枠内にコンクリートを充填した後に、シール材をベースプレートの周囲に設置して蓋をボルト止めするという複数の工程が必要である。そのため、工数が多く製造工程が煩雑であった。
また、この構造に代えて蓋をベースプレートに溶接して地下水が漏水しないように固定する方法も考えられる。しかし、コンクリート充填後にベースプレートと蓋を溶接すると、溶接時の熱が数ミリ厚のベースプレートを通してコンクリートに伝達され、溶接時の高温でコンクリートが劣化して強度が低下するおそれがある。
【0006】
この場合、溶接時の熱によってベースプレート表面の熱は約1000℃~1200℃程度の高温になり、ペースプレートを介してコンクリートに伝達されてベースプレートに接するコンクリートの表面付近は200℃~300℃程度の高温になる。そのため、ベースプレートの厚さが3~4mm程度ではコンクリートの表面が高温になって強度低下するため構造部材として機能せず、トンネルの強度や寿命に悪影響を与えるという不具合がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、コンクリートの強度を低下させることなく蓋体を溶接で液密に固定できるようにしたセグメントの製造方法及びセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるセグメントの製造方法は、周方向に円弧状に延びる一対の主桁と、主桁の周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板と、主桁及び継手板の外周側に設けられたスキンプレートと、からなる鋼製の枠体内にコンクリートを充填するセグメントの製造方法であって、スキンプレートに固定された裏当て材の開口を通してコンクリートを枠体内に充填する工程と、コンクリートの充填後に開口を蓋体で閉鎖して蓋体及び裏当て材を液密に溶接する工程と、を備え、溶接時に裏当て材の厚みによってコンクリート温度が200℃未満に抑制されることを特徴とする。
本発明によれば、蓋体の溶接時に裏当て材の内側に設けられたコンクリートの温度が裏当て材の厚みによって200℃未満に抑制されるため、コンクリートの表面が溶接時の熱によって劣化することを防止して構造部材として機能させることができ、セグメントを高強度に保持できる。
【0009】
また、枠体内のコンクリート内には鉄筋かごが配設され、鉄筋かごは裏当て材によって溶接時に温度が400℃以下に抑制されることが好ましい。
蓋材の溶接時におけるコンクリート内の鉄筋かごに伝達される温度が400℃以下に抑制されることで鉄筋かごを含むセグメントの強度低下を抑制できる。
【0010】
本発明によるセグメントは、周方向に円弧状に延びる一対の主桁と、主桁の周方向両端にそれぞれ設けられた一対の継手板と、主桁及び継手板の外周側に設けられたスキンプレートとからなる鋼製の枠体内にコンクリートを充填したセグメントであって、スキンプレートに連結されていてコンクリートを充填する開口を有する裏当て材と、開口を覆って裏当て材に溶接された蓋体と、を備え、蓋体の溶接部から裏当て材を介したコンクリートまでの距離はコンクリート温度200℃未満になるように裏当て材の厚みが設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、セグメントにおける蓋体の溶接部から裏当て材を介したコンクリートまでの距離をコンクリート温度が200℃未満になるように裏当て材の厚みを設定したため、蓋体の溶接時にコンクリートが200℃以上の高温になって劣化することを抑制できるため、コンクリートは構造部材として機能し、セグメントを高強度に製造できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるセグメントの製造方法及びセグメントは、スキンプレートに連結された裏当て材の開口を蓋体で閉鎖させて蓋体及び裏当て材を溶接する際、裏当て材によってコンクリートが高温になることを抑制することができる。そのため、蓋体を溶接で裏当て材に固定する際、コンクリートの強度を低下させることがなくコンクリートをセグメントの構造部材とすることができる。
しかも、裏当て材の開口に対して蓋体を固定する際、シール材を介在させる手間が必要なく溶接によって簡単に液密にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態による合成セグメントの斜視図である。
図2】合成セグメントの枠体とスキンプレートの分解斜視図である。
図3図1に示すセグメントの溶接部のA-A線断面図である。
図4】(a)、(b)は蓋体の溶接部の例を示す部分断面図である。
図5】(a)~(c)は合成セグメントの製造工程を示す図である。
図6】(a)~(d)は合成セグメントの試験用コンクリート打設第一工程を示す図である。
図7】(a)~(d)は合成セグメントの試験用コンクリート打設第二工程を示す図である。
図8】(a)~(d)は合成セグメントの蓋体溶接と漏水試験の工程を示す図である。
図9】(a)~(d)は試験例1~4の蓋体溶接例を示す図である。
図10】(a)~(c)は蓋体の溶接工程を示す図である。
図11】試験例1の溶接時におけるコンクリート表面の温度変化を示す図である。
図12】試験例2の溶接時におけるコンクリート表面の温度変化を示す図である。
図13】試験例3の溶接時におけるコンクリート表面の温度変化を示す図である。
図14】試験例4の溶接時におけるコンクリート表面の温度変化を示す図である。
図15】開口部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による合成セグメント1とその製造方法について添付図面により説明する。
図1において、本実施形態による合成セグメント1は複数個を周方向にリング状に連結させてセグメントリングを構築し、これを順次軸方向に連結することでシールドトンネル等の筒状構造物を構築するものである。合成セグメント1は略長方形板状で周方向に円弧状に湾曲して形成されている。合成セグメント1は、トンネルの軸方向に対向して配設されていて周方向に円弧状に湾曲して形成された一対の主桁2と、主桁2の両端部に周方向に対向して配設された長方形状の一対の継手板3とを有している。これら主桁2及び継手板3の外周面側には薄板状のスキンプレート4が湾曲して形成されている。
【0014】
これら主桁2及び継手板3とスキンプレート4とで5面を鋼板で覆う枠体状の鋼枠5を形成している。鋼枠5内には、図2に示すように主筋と配力筋とが互いに直交する方向に配設された格子鉄筋6が鉄筋かごとして位置決め固定されている。鋼枠5内は格子鉄筋6を囲ってコンクリートCが充填されている。そのため、残りの1面であるスキンプレート4に対向する内周面はコンクリートCによって形成されている。各主桁2には合成セグメント1同士を軸方向に連結するための継手として例えばリング継手7が設けられ、継手板3には合成セグメント1同士を周方向に連結するための継手として例えばセグメント継手8が設けられている。
【0015】
また、図1乃至図3において、合成セグメント1の製造時にスキンプレート4を上向きにして後述する型枠に設置した状態で、スキンプレート4の長手方向中央部が最も高い位置にあり、その長手方向中央部に開口部10が形成されている。開口部10の内側には、コンクリートCを充填するための開口窓部11aを有する鋼製の開口枠11が配設されている。開口枠11の四辺は溶接等によって予めスキンプレート4の開口部10の縁部に固定されている。
【0016】
開口枠11の下側には打設開口13aを形成していて所定厚みLを有する鋼製の裏当て材13が溶接等で固定されている。図3及び図4(a)に示すように、裏当て材13は開口窓部11aの内側に所定長さ突出して開口枠11に固定されている。そして、裏当て材13の打設開口13aを閉鎖する蓋体14が設けられ、蓋体14は打設開口13aを覆って裏当て材13に着座した状態で、裏当て材13と溶接によって固定されている。裏当て材13に形成された打設開口13aがコンクリートを打設・充填するための開口になる。
【0017】
図4(a)に示すように、裏当て材13の打設開口13aを閉鎖するための蓋体14との溶接部Yは例えば断面三角形の隅肉溶接部であり、蓋体14及び裏当て材13の全周に亘って連続して形成されることで水密にシールされている。
また、図4(b)に示すように、蓋体14と開口枠11と裏当て材13とを一体に溶接する溶接部Yとして溝埋め溶接部を蓋体14の全周に亘って水密にシールして形成してもよく、溶接部Yの種類は適宜選定できる。
【0018】
ここで、蓋体14と裏当て材13の溶接は鋼枠5内にコンクリートCを充填した後に行われるため、コンクリートCは溶接部Yでの溶接時の熱の影響を受けてしまう。例えば、蓋体14と裏当て材13を溶接する際、蓋体14と裏当て材13の溶接部Yの表面温度は約1000℃~1200℃の高温になる。そのため、裏当て材13がスキンプレート4と同様に厚さ3~4mm程度の薄板である場合や裏当て材13を設けない場合には表面側のコンクリートCは200℃以上の高温になり、構造部材としての機能を発揮し得ない。また、例えば裏当て材13の厚みLが3~4mm程度ではコンクリートCの強度が劣化して構造部材たり得ず、耐火部材としてのみ機能するといえる。
【0019】
そのため、本実施形態では、スキンプレート4の板厚を3mmとし、溶接部Yの溶接脚長4mmとして、裏面側に設けた裏当て材13の厚みL、溶接部YからコンクリートCの表面までの距離Mを14mm以上に設定することで、コンクリートCの表面温度が200℃未満となるようにコントロールできるようにした。なお、厚みL=距離Mに設定することが好ましい。これによって、コンクリートCの表面側部分も溶接時の熱による劣化を抑制できて構造部材としての機能を発揮できる。なお、スキンプレート4の板厚が3mm以上に厚くなるほど、溶接部Yの溶接脚長が大きくなり熱量も高くなるため、裏当て材13の厚さMも14mm以上に設定する。
また、コンクリートC内に埋設された格子鉄筋6は溶接時に400℃以下に制限されれば補強用鉄筋としてコンクリートCと一体に構造部材として機能を発揮できる。そのため、コンクリートCの表面部分が200℃未満であれば格子鉄筋6も確実に200℃未満に温度を抑制できる。
【0020】
本実施形態による合成セグメント1は上述した構成を有しており、次に合成セグメント1の製造方法について図5を参照して説明する。合成セグメント1の製造方法として例えば背面打設方法を用いる。
図5(a)において、合成セグメント1は、予め主桁2及び継手板3で四面を覆われた鋼枠5の内部に格子鉄筋6が収納され、鋼枠5の上面のスキンプレート4の開口部10に予め開口枠11及び裏当て材13が固定された構成に組み立てる。次に、図5(b)において、裏当て材13の打設開口13aにコンクリートC充填用のホッパ18を設置して、不図示のミキサーからコンクリートCを打設し、鋼枠5内に流動させて充填する。
【0021】
次にコンクリートCの充填完了後、養生してコンクリートCを硬化させる。コンクリートCの硬化後に、同図(c)に示すように、蓋体14で裏当て材13の打設開口13aを閉鎖して、蓋体14と裏当て材13との溶接部Yを蓋体14の周方向に連続して溶接する。溶接時に、溶接部Yの裏当て材13や蓋体14の表面温度は約1000℃~1200℃に昇るが、鋼枠5の内部のコンクリートCとの間に設けた裏当て材13の厚みLや距離Mが14mm以上であるため、裏当て材13や蓋体14に接するコンクリートCの表面温度は200℃未満に抑えられる。そのため、コンクリートCの表面が劣化することが抑制され、構造部材として機能する。
合成セグメント1でトンネルを構築した際、各合成セグメント1の蓋体14と裏当て材13との溶接部Yは全体に液密にシールされており、地山中の地下水が溶接部Yの隙間からトンネル内に漏れ出ることを防止できる。
【0022】
次に、背面打設方法におけるトンネル内への止水試験方法について図6図8により説明する。
本実施形態による合成セグメント1において、予め主桁2及び継手板3で四面を覆われた鋼枠5の上面に開口枠11及び裏当て材13が固定された構成に組み立てる。図6(a)~(c)において、スキンプレート4が取り外された鋼枠5を、合成セグメント1の打設用型枠16の上面凹部17内に装着する。図6(d)において、裏当て材13の打設開口13aにコンクリートC充填用のホッパ18を介して不図示のミキサーから一部のコンクリートCを打設し、鋼枠5内に流動させて充填する。
【0023】
次に図7(a)において、鋼枠5の上面で開口枠11の両側に分割されたスキンプレート4を設置する。そして、図7(b)において、残りのコンクリートCをミキサーからホッパ18を介して鋼枠5内に充填する。
鋼枠5が型枠16に設置された状態で、裏当て材13の打設開口13aはスキンプレート4の最上面に位置するため、打設開口13aまでコンクリートCを充填することで鋼枠5への充填が完了する。図7(c)において、コンクリートCの充填後に養生してコンクリートCの硬化を待ち、硬化後に図7(d)に示すように、二分割したスキンプレート4を取り外す。なお、図7(a)~(d)において、スキンプレート4を二分割して着脱するのは、背面打設方法においてコンクリートCの鋼枠5内への充填を確認するためである。
【0024】
図8(a)において、蓋体14を開口枠11内の開口窓部11aに挿入し、裏当て材13に着座させて打設開口13aを閉鎖させる。そして、図8(b)において、蓋体14の周縁部を裏当て材13に溶接する。これによって、蓋体14と裏当て材13は全周に亘って溶接されて、打設開口13aを水密にシールする。
【0025】
次に得られた合成セグメント1において、蓋体14が水密にシールされているか否かの止水試験方法を実施する。
先ず図8(c)において、製造された合成セグメント1を型枠16から脱型する。そして、合成セグメント1の蓋体14の周縁部と裏当て材13との間の溶接部Yの全周にシール検知剤として例えば石鹸水20(膨張性シール被膜)を塗布する。そして、図8(d)において、バキューム治具21を溶接部Yを覆う石鹸水20の塗布領域に沿って移動させながら空気を吸引することで、圧力差による石鹸水20の膨張の有無を検出する。
【0026】
即ち、溶接部Yにシール漏れがない場合には、溶接部Yを通して合成セグメント1の外周面から空気が漏出しないから石鹸水20の膜は膨張しない。一方、溶接部Yにシール漏れがある場合には、合成セグメント1の外周面から溶接部Yの隙間を通って空気が流出して石鹸水20の膜が風船状に膨張して破裂する。これによって溶接部Yが水密にシールされているか否かを検出できる。
【0027】
次に、合成セグメント1の鋼枠5内にコンクリートCを充填した後、裏当て材13と蓋体14の溶接部Yを溶接する際に裏面側のコンクリートCに伝達される熱の測定試験を行った。これについて図9図14及び表1によって説明する。
図9において、合成セグメント1の試験体として試験体1、2、3、4を用いた。試験体1と試験体4は裏当て材13の横×縦の寸法を50mm×1000mmとし、厚さ(L)を19mmとした。試験体2と試験体3は裏当て材13の横×縦の寸法を50mm×1000mmとし、厚さ(L)を16mmとした。なお、溶接部Yから裏当て材13の裏面までの厚さLはコンクリートCまでの距離Mと同一またはより短いものとする。
【0028】
試験体1と2では、蓋体14は裏当て材13と横方向に19mm重なる位置で隅肉溶接した。試験体3では、蓋体14は裏当て材13と横方向に16mm重なる位置で隅肉溶接した。各隅肉溶接の脚長は4mmとした。試験体4では、蓋体14は裏当て材13と横方向に25mm重なる位置で溝埋溶接した。各裏当て材13の縦方向に延びる溶接部Yに沿って、裏当て材13の裏面(コンクリートCの表面)に250mm間隔または230mm間隔で温度計測器23をそれぞれ設置した。
そして、蓋体14と裏当て材13の溶接部Yの溶接において、CO2半自動/自動溶接機を用いて、電流180~200A、電圧22~28V、溶接速度35cm/min程度に設定して連続して溶接した。
【0029】
温度計測試験では、蓋体14と裏当て材13の溶接部Yにおいて、最初に所定間隔ごとに仮溶接をドット状に行い、次にこれらドットを連続させる本溶接を行った。試験項目として、温度計測器23による裏当て材13の上面側の溶接部Yに対して裏面側のコンクリートCの表面の温度計測を行った。
【0030】
図10(a)~(c)は試験体1~4の試験の手順を示すものである。図10(a)はコンクリート充填前の鋼枠5を示すもので、開口枠11の裏面側に裏当て材13が先溶接部Yoで溶接されている。図10(b)では、裏当て材13の裏面側に所定間隔で温度計測器23を固定し、図10(c)では、裏当て材13の打設開口13aを覆う蓋体14の周縁部を溶接して溶接部Yを形成した。試験体1~3では、隅肉溶接の溶接部Yは温度計測器23の固定位置に表裏面で対向するように連続して形成した。試験体4では溝埋溶接の溶接部Yは温度計測器23の固定位置に表裏面で対向して形成した。
各試験体1~4において、図9図10に示す裏当て材13の裏面における溶接部Yに沿った各5台の温度計測器23の設置位置が計測点1、2、3、4、5とされている。
【0031】
試験結果は表1に示す通りになった。表1において、各試験体1~4はいずれも溶接時における裏当て材13の裏面(コンクリートCの表面)の最高温度が163℃以下であり、コンクリートCの温度を低く抑制できた。そのため、溶接時の熱でコンクリートCが劣化することを抑制できて、高強度な構造部材として利用できることを確認できた。
また、図11図14は、各試験体1~4について、裏当て材13の裏面側に所定間隔で設置した5基の温度計測器23をNo.1~5として溶接時の温度変化を測定したものである。図11図14のグラフにおいて、横軸を時間、縦軸を温度とし、溶接時の温度変化を計測した。
【0032】
【表1】
【0033】
上述したように本実施形態による合成セグメント1によれば、蓋体14の周縁部を裏当て材13と溶接しても、裏当て材13の所定厚みLによって鋼枠5内に充填・硬化されたコンクリートCは163℃以下となり、高温による劣化を防止できる。また、コンクリートC内の格子鉄筋6の温度も400℃以下に抑制できる。そのため、蓋体14を溶接で固定する際、コンクリートCの強度を低下させることがなくコンクリートCを合成セグメント1の構造部材として高強度に保持することができる。
しかも、打設開口13aに対して蓋体14を固定する際、シール材を介在させる手間が必要ないため工程数が少なくて済み、溶接部Yによって簡単に液密にシールすることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態による合成セグメント1とその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。
以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0035】
例えば、上述した実施形態による合成セグメント1では、スキンプレート4の中央部に形成した開口部10に開口枠11を溶接して、開口枠11の開口窓部11aに蓋体14を装着して、その裏面の裏当て材13と溶接した。しかし、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、開口枠11を設けずに、スキンプレート4の周方向中央部に開口部10を形成してもよい。この場合、図15に示すように、開口部10の裏面側に裏当て材13を突出させて固定し、裏当て材13の打設開口13aを蓋体14で閉鎖させて蓋体14と裏当て材13を溶接してもよい。
また、本発明は合成セグメント1に限定されることなく、RCセグメント等の各種のセグメントにも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 合成セグメント
2 主桁
3 継手板
4 スキンプレート
5 鋼枠
6 格子鉄筋
10 開口部
11 開口枠
11a 開口窓部
13 裏当て材
13a 打設開口
14 蓋体
16 型枠
18 ホッパ
23 温度計測器
C コンクリート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15