(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 29/10 20060101AFI20230804BHJP
H01Q 3/28 20060101ALI20230804BHJP
H04B 17/345 20150101ALI20230804BHJP
【FI】
G01R29/10 A
H01Q3/28
H04B17/345
(21)【出願番号】P 2020033637
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2021-12-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】國澤 良雄
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
【審査官】越川 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-118469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/10
H01Q 3/28
H04B 17/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定演算部を備え、
mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、
前記推定演算部は、
アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置の
m個の無線局
を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布
である第1電力分布から、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、
i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、
前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様
を用いる、
情報処理装置。
【請求項2】
前記推定演算部は、
前記m個の前記無線局のそれぞれである前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、前記第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性の複数のパターンのそれぞれについて前記パターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、これらのうちで最大の相関係数が得られた前記パターンおよび前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンおよび方向の推定結果と判定する態様を用いる、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定演算部は、2次元平面における前記パターンの情報を用いて前記相関係数を演算する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記推定演算部は、3次元空間における前記パターンの情報を用いて前記相関係数を演算する、
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記推定演算部は、
前記m個の前記無線局のそれぞれである前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様において、前記第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局について想定される空間的な前記電力分布との一方または両方について所定の重み付けを行い、前記重み付けが行われた結果に基づいて前記相関係数を演算する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、
推定演算部が、
アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置の
m個の無線局
を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布
である第1電力分布から、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、
i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、
前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様
を用いる、
情報処理方法。
【請求項7】
mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、
推定演算部が、
アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置の
m個の無線局
を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布
である第1電力分布から、
前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、
i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、
前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様
を用いるステップを、
コンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された受信電力推定装置では、空間的に配置された電波センサーでの受信電力と、遮蔽物を考慮した伝搬損失推定値から、無線局の送信アンテナ利得(EIRPの指向性)を推定することが行われる。また、当該受信電力推定装置では、送信アンテナ利得の推定値と、第2の伝搬損失推定値から、空間的な受信電力を推定することが行われる(特許文献1の段落0067~0076、
図6~10などを参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなアンテナ指向性を推定する手法では、電波センサーの受信電力をもとに1つの無線局の送信アンテナ利得を推定するが、複数の無線局からの電波が電波センサーで重畳されて受信されるときには、送信アンテナ利得の推定値に誤差が生じる場合があった。このため、送信アンテナ利得の推定値の誤差により、推定受信電力にも誤差が生じる場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、複数の無線局からの電波が重畳されて電波センサーで受信されるときにおいても、アンテナ指向性のパターンの方向を精度良く推定することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一構成例として、推定演算部を備え、mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、前記推定演算部は、アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置のm個の無線局を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布である第1電力分布から、前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様を用いる、情報処理装置である。
一構成例として、情報処理装置において、前記推定演算部は、前記m個の前記無線局のそれぞれである前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、前記第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性の複数のパターンのそれぞれについて前記パターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、これらのうちで最大の相関係数が得られた前記パターンおよび前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンおよび方向の推定結果と判定する態様を用いる。
一構成例として、情報処理装置において、前記推定演算部は、2次元平面における前記パターンの情報を用いて前記相関係数を演算する。
一構成例として、情報処理装置において、前記推定演算部は、3次元空間における前記パターンの情報を用いて前記相関係数を演算する。
一構成例として、情報処理装置において、前記推定演算部は、前記m個の前記無線局のそれぞれである前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様において、前記第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局について想定される空間的な前記電力分布との一方または両方について所定の重み付けを行い、前記重み付けが行われた結果に基づいて前記相関係数を演算する。
【0007】
一構成例として、mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、推定演算部が、アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置のm個の無線局を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布である第1電力分布から、前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様を用いる、情報処理方法である。
【0008】
一構成例として、mが2以上の整数を表し、iが2以上で前記m以下のそれぞれの整数を表し、jが1以上で前記m以下のそれぞれの整数を表すとして、推定演算部が、アンテナ指向性の推定対象となる異なる位置のm個の無線局を1番目から前記m番目まで1個ずつ順番に演算対象として、前記1番目の前記演算対象の前記無線局については、前記m個の前記無線局の周囲に存在する複数の電波センサーによる電力の測定結果に基づく空間的な電力分布である第1電力分布から、前記1番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第2電力分布を演算し、i番目の前記演算対象の前記無線局については、第i電力分布から、前記i番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布である第(i+1)電力分布を演算し、前記m個の前記無線局のそれぞれであるj番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンを推定する態様として、第j電力分布と、前記j番目の前記演算対象の前記無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の前記仮の方向のそれぞれについて得られた前記相関係数のうちで最大の相関係数が得られた前記仮の方向を前記アンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する態様を用いるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る情報処理装置、情報処理方法およびプログラムによれば、複数の無線局からの電波が重畳されて電波センサーで受信されるときにおいても、アンテナ指向性のパターンの方向を精度良く推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る情報処理システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る無線局と電波センサーの配置および電力分布を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る無線局と電波センサーの配置および仮のアンテナ指向性のパターンの方向における電力分布を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る情報処理装置において行われる処理の手順の一例を示す図である。
【
図5】(A)~(D)は本発明の実施形態に係るアンテナ指向性のパターンの方向を推定する手法の一例を示す図である。
【
図6】(A)~(C)は元の電力分布から推定された電力分布を差し引く処理の一例を示す図である。
【
図7】(A)~(F)は本発明の実施形態に係る複数種類のアンテナ指向性のパターンの例を示す図である。
【
図8】(A)~(B)は本発明の実施形態に係る無線局のアンテナおよび電波センサーの配置の例を示す図である。
【
図9】(A)~(B)は本発明の実施形態に係る水平および垂直のアンテナ指向性のパターンの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
<情報処理システム>
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理システム1の概略的な構成を示す図である。
情報処理システム1は、情報処理装置11と、複数の電波センサー21-11~21-MNと、ネットワーク31を備える。
情報処理装置11と、それぞれの電波センサー21-11~21-MNは、ネットワーク31と接続されている。そして、情報処理装置11と、それぞれの電波センサー21-11~21-MNとは、ネットワーク31を介して、通信することが可能である。
ネットワーク31は、有線のネットワークであってもよく、無線のネットワークであってもよく、あるいは、有線と無線の両方を含むネットワークであってもよい。
【0013】
それぞれの電波センサー21-11~21-MNは、空間的に分散されて設置されている。そして、それぞれの電波センサー21-11~21-MNは、所定の周波数について電波の受信電力を検出(測定)し、その検出結果を、ネットワーク31を介して、情報処理装置11に送信する。
ここで、本実施形態では、MおよびNをそれぞれ2以上の整数として、(M×N)個の電波センサー21-11~21-MNを示す。本実施形態では、説明の便宜上、(M×N)個の電波センサー21-11~21-MNは、所定の方向に等間隔にM行分が配置されており、各行ごとに当該所定の方向とは直交する方向に等間隔にN列分が配置されているとする。
なお、複数の電波センサーの数および配置は、それぞれ、任意であってもよい。MとNとは、例えば、同じ値であってもよく、あるいは、異なる値であってもよい。
【0014】
<情報処理装置>
情報処理装置11は、入力部111と、出力部112と、通信部113と、記憶部114と、制御部115を備える。
制御部115は、取得部131と、推定演算部132と、出力制御部133を備える。
【0015】
入力部111は、例えば、ユーザ(人)によって操作される操作部と、外部の装置から直接的に情報を入力する機能部などを備える。
出力部112は、例えば、情報を表示出力する画面と、情報を音出力するスピーカと、外部の装置に直接的に出力する機能部などを備える。
通信部113は、ネットワーク31を介して外部の装置(本実施形態では、電波センサー21-11~21-MN)と通信する。
記憶部114は、情報を記憶する。
【0016】
制御部115は、各種の処理または制御を行う。
取得部131は、情報を取得する。本実施形態では、取得部131は、通信部113によって電波センサー21-11~21-MNから受信された検出結果の情報を取得する。
推定演算部132は、取得部131によって取得された情報に基づいて、所定のアンテナの指向性を推定するための演算を行う。
出力制御部133は、推定演算部132によって行われた演算の結果を出力部112により出力するように制御する。
【0017】
<本実施形態の前提条件>
本実施形態では、複数の無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を推定する。無線局としては、無線により通信を行う局が用いられ、例えば、携帯電話システムなどの基地局装置あるいは中継装置などが用いられてもよい。
また、無線局の位置、空中線電力、および、伝搬損失は既知であるとする。これらの情報は、例えば、既知の技術により推定などにより求められてもよく、あるいは、ユーザなどにより設定されてもよい。
また、推定対象となるアンテナ指向性のパターンは既知であるとする。当該パターンは、例えば、無線局の登録情報などから得られてもよく、あるいは、ユーザなどにより設定されてもよい。
また、アンテナ指向性のパターンは1種類のみであるとする。
また、空間として、地図上の2次元の平面を想定する。なお、本実施形態では、図示を簡易化するために、地図の情報の図示を省略するが、例えば、空間が表される場合に、2次元または3次元の地図の情報が組み合わされて表示等されてもよい。
【0018】
本実施形態では、情報処理装置11において、電波センサー21-11~21-MNによる検出結果に基づく電力分布を初期値として、そこから1個の無線局のアンテナ指向性のパターンごとに推定された電力分布を差し引いていく。つまり、情報処理装置11では、複数の無線局について、アンテナ指向性のパターンの方向の推定を1局ずつ順に行い、既に推定が行われた分についての電力分布を初期の電力分布から減じた結果を用いて次の順番の無線局についてアンテナ指向性のパターンの方向の推定を行う。これにより、情報処理装置11では、すべての無線局についてアンテナ指向性のパターンの方向の推定結果を得る。
【0019】
まず、1個の無線局についてアンテナ指向性のパターンの方向を推定する処理について説明する。
なお、ここでは、説明を簡易化するために、1つのアンテナ指向性のパターンについて図示および説明を行う。
【0020】
情報処理装置11において、推定演算部132によって行われる[処理T1]~[処理T5]を説明する。
[処理T1]
推定演算部132は、複数の電波センサー21-11~21-MNから取得された検出結果に基づいて、空間的な電力分布を取得する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る無線局211と電波センサー21-11~21-MNの配置および電力分布を示す図である。
図2の例では、アンテナ指向性の推定対象となる1個の無線局211と、その周囲に存在する電波センサー21-11~21-MNを示してある。なお、
図2の例では、推定演算に使用される電波センサー21-11~21-MNを示してあるが、他の電波センサーが情報処理システム1に備えられていてもよい。
また、
図2の例では、図示を簡易化するために、それぞれの電波センサー21-11~21-MNによる検出結果(受信電力の強度)の概略を示してあるが、当該検出結果は受信電力の数値[dB]であり、当該数値が情報処理装置11により取得される。
【0022】
[処理T2]
推定演算部132は、無線局211のアンテナ指向性のパターンを仮の方向に配置した場合について、電波センサー21-11~21-MNによる検出結果(空間的な電力分布)を推定する。推定演算部132は、例えば、無線局211の空中線電力(送信機出力電力)、無線局211から電波センサー21-11~21-MNへの方向におけるアンテナ利得、伝搬損失に基づいて、電波センサー21-11~21-MNによる受信電力を推定する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係る無線局211と電波センサー21-11~21-MNの配置および仮のアンテナ指向性のパターン311の方向における電力分布を示す図である。
図3には、仮のアンテナ指向性のパターン311について、中心方向331と、角度幅351を示してある。
なお、
図3の例では、
図2の例と同様に、図示を簡易化するために、それぞれの電波センサー21-11~21-MNによる検出結果(受信電力の強度)の概略を示してあるが、当該検出結果は受信電力の数値[dB]である。
また、情報処理装置11では、パターン311について、中心方向331および角度幅351は、例えば、パターン311の情報として、記憶部114に記憶され、制御部115によって処理される。
【0024】
[処理T3]
推定演算部132は、電波センサー21-11~21-MNによる検出結果に基づいて得られた空間的な電力分布(測定値に基づく電力分布)と、無線局211について仮のアンテナ指向性のパターン311の方向を想定した場合に電波センサー21-11~21-MNにより得られると想定される空間的な電力分布(想定値に基づく電力分布)との相関係数を演算する。
【0025】
本実施形態では、式(1)に示される相関係数rが用いられる。
式(1)において、t(t=1~T)は変数であり、Tは電波センサー21-11~21-MNの数(本実施形態では、M×N)を表しており、P0,tはt番目の電波センサーによる受信電力(測定値)を表しており、P1,tは仮のアンテナ指向性のパターン311の方向を想定した場合におけるt番目の電波センサーによる受信電力(想定値)を表している。また、P0,tの上に横線が引かれたものはP0,tの平均値を表しており、P1,tの上に横線が引かれたものはP1,tの平均値を表している。
ここで、t=1~Tのそれぞれに対応する複数の電波センサー21-11~21-MNの順序は任意であってもよい。
なお、相関係数としては、例えば、他のパラメータを含む演算式が用いられてもよく、あるいは、同じパラメータであっても他の演算式による相関係数が用いられてもよい。
【0026】
【0027】
ここで、相関係数を求めるときに、演算対象とする電波センサー21-11~21-MNの範囲が一部の電波センサーに設定されてもよく、また、電波センサー21-11~21-MNによる受信電力(測定値と想定値の一方または両方)に重み付けが行われてもよい。
【0028】
具体例として、演算対象とする電波センサー21-11~21-MNの範囲としては、必ずしもすべての電波センサーが相関係数の演算に用いられなくてもよく、無線局211からの距離が一定の範囲内に存在する電波センサーが相関係数の演算に用いられてもよく、これにより、無線局211に対して遠方に存在する別の無線局の影響を低減することができる。
【0029】
また、相関係数の演算において、無線局211からの距離に応じた重み付けが、電波センサー21-11~21-MNによる受信電力(測定値と想定値の一方または両方)に行われてもよい。具体例として、無線局211に近いほど重み付けの値を高くし、無線局211から遠いほど重み付け値を低くしてもよく、これにより、無線局211に対して遠方に存在する別の無線局の影響を低減し、また、無線局211からの電力が低い領域でのノイズの影響を低減することができる。逆に、無線局211に近いほど重み付けの値を低くし、無線局211から遠いほど重み付け値を高くしてもよい。
【0030】
[処理T4]
推定演算部132は、仮のアンテナ指向性のパターン311の方向を初期値から変化させながら、それぞれの仮定の方向について相関係数を演算する。
【0031】
[処理T5]
推定演算部132は、算出された相関係数の値が最も高くなったアンテナ指向性のパターン311の方向を、推定結果とする。
【0032】
ここで、相関係数を演算する仮定の方向の数としては、任意に設定されてもよい。
また、仮定の方向を変化させる手法としては、任意の手法が用いられてもよい。
【0033】
一例として、均等なステップで仮定の方向を変化させる手法が用いられてもよい。
図4は、本発明の実施形態に係る情報処理装置11において行われる処理の手順の一例を示す図である。
図4の例では、無線局211(1点とみなす)を中心として全方向を360度の角度として、これをL(Lは2以上の整数)で等分割したステップ(一定の角度ステップ)が用いられている。また、n(n=1~L)を変数とする。Lは、例えば、36などであってもよい。
【0034】
(ステップS1)
推定演算部132は、n=0に設定する。そして、推定演算部132は、ステップS2の処理へ移行する。
【0035】
(ステップS2)
推定演算部132は、相関係数r(θn)を計算する。そして、推定演算部132は、ステップS3の処理へ移行する。ここで、相関係数r(θn)は、仮定の方向を角度θnとした場合における相関係数である。
【0036】
(ステップS3)
推定演算部132は、nに1を追加(加算)する。そして、推定演算部132は、ステップS4の処理へ移行する。
【0037】
(ステップS4)
推定演算部132は、nがLよりも小さいか否かを判定する。
この判定の結果、推定演算部132は、nがLよりも小さいと判定した場合(ステップS4:YES)、ステップS2の処理へ移行する。
一方、この判定の結果、推定演算部132は、nがLよりも小さくないと判定した場合(ステップS4:NO)、ステップS5の処理へ移行する。
【0038】
(ステップS5)
推定演算部132は、算出されたL個の相関係数のうち最大となる相関係数MAX(r(θn))が求められた角度θnをアンテナ指向性のパターン311の方向の推定結果と判定して、当該推定結果の情報を出力する。そして、推定演算部132は、本フローの処理を終了する。
【0039】
他の例として、相関係数が高い領域の角度分割を繰り返す手法が用いられてもよい。
図5の(A)~(D)は、本発明の実施形態に係るアンテナ指向性のパターン311の方向を推定する手法の一例を示す図である。
図5(A)は、アンテナ指向性のパターン311の方向の角度の定義を示してある。
本例では、北の方向を0度(°)とし、右回り(時計回り)に360度の角度を定義する。この場合、東の方向が90度となり、南の方向が180度となり、西の方向が270度となる。
【0040】
推定演算部132は、初期の領域から始めて、対象となる領域(対象領域)を2つ以上の分割領域に分けて、それぞれの分割領域ごとに1つの仮定の方向を設定して相関係数を計算し、相関係数が最も高い仮定の方向を含む分割領域を次の対象領域とする。そして、推定演算部132は、最終的に絞り込まれた分割領域に含まれる仮定の方向を採用する。初期の領域としては、例えば、360度の領域が用いられてもよい。
【0041】
具体例として、推定演算部132は、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)の順に処理を行う。
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)において、矢印は、相関係数を算出するアンテナ指向性のパターン311の仮定の方向を表している。
図5(B)では、推定演算部132は、初期の対象領域を0度~360度の領域として、0度~180度の分割領域に90度の仮定の方向を設定して相関係数を算出し、180度~360度の分割領域に270度の仮定の方向を設定して相関係数を算出する。そして、推定演算部132は、これらの相関係数を比較して、90度の仮定の方向の相関係数の方が高いと判定して、0度~180度の分割領域を次の対象領域とする。
【0042】
図5(C)では、推定演算部132は、対象領域を0度~180度の領域として、0度~90度の分割領域に45度の仮定の方向を設定して相関係数を算出し、90度~180度の分割領域に135度の仮定の方向を設定して相関係数を算出する。そして、推定演算部132は、これらの相関係数を比較して、45度の仮定の方向の相関係数の方が高いと判定して、0度~90度の分割領域を次の対象領域とする。
【0043】
図5(D)では、推定演算部132は、対象領域を0度~90度の領域として、0度~45度の分割領域に22.5度の仮定の方向を設定して相関係数を算出し、45度~90度の分割領域に67.5度の仮定の方向を設定して相関係数を算出する。そして、推定演算部132は、これらの相関係数を比較して、22.5度の仮定の方向の相関係数の方が高いと判定して、0度~45度の分割領域を次の対象領域とする。
【0044】
これ以降の処理も同様である。推定演算部132は、例えば、分割領域の角度幅が所定値以下となるという条件あるいは処理回数が所定値以上となる条件などの所定の条件が満たされると、そのときの仮定の方向を最終的な推定結果とする。ここで、目標とするアンテナ指向性のパターン311の方向の粒度としては、任意に設定されてもよい。
【0045】
ここで、2つの仮定の方向について算出された相関係数が同じであった場合、推定演算部132は、例えば、あらかじめ設定された決定手法によって、いずれか一方を選択して採用してもよい。例えば、推定演算部132は、2つの仮定の方向のうちの一方または両方をずらして相関係数の算出をやり直してもよく、あるいは、他の手法によって1つの仮定の方向を選択してもよい。
【0046】
次に、1局目の無線局211について得られた推定結果に基づいて、2局目の無線局について使用する仮想的な測定結果に基づく電力分布(すなわち、1局目の推定結果の分が差し引かれた電力分布)、および2局目の無線局のアンテナ指向性のパターンの推定について説明する。
ここで、3局目以降の無線局についてのアンテナ指向性のパターンの推定についても、2局目の無線局の場合と同様であるため、まとめて説明する。
また、それぞれの無線局のアンテナ指向性のパターンの推定の手法については、例えば、1局目の無線局211のアンテナ指向性のパターンの推定について説明した手法と同様である。
【0047】
図6の(A)~(C)は元の電力分布から推定された電力分布を差し引く処理の一例を示す図である。
図6(A)は、元の電力分布を示す。
図6(A)の例では、当該電力分布は、複数の無線局211、212のアンテナから放射される電力の影響を受けた電力分布となっている。
図6(B)は、無線局211のアンテナ指向性のパターン311の方向が推定された電力分布を示す。当該電力分布は、例えば、
図3に示される電力分布と同じである。
図6(C)は、
図6(A)に示される元の電力分布から、
図6(B)に示される推定された電力分布が差し引かれた処理の結果の電力分布である。本実施形態では、推定演算部132は、当該処理を行う。
【0048】
ここで、電波センサー21-11~21-MNによって検出された電力分布が元の電力分布であり、1局目の無線局211のアンテナ指向性のパターン311の方向が推定された電力分布が推定された電力分布である場合、差し引かれた電力分布は、元の電力分布から当該推定された電力分布が除かれた結果に相当する。そして、本実施形態では、推定演算部132は、差し引かれた電力分布を次の順番(ここでは、2局目)における元の電力分布として、2局目の無線局212のアンテナ指向性のパターンの方向の推定を行う。さらに、3局目以降の無線局(図示せず)についての推定が行われる場合には、推定演算部132は、同様な処理を繰り返して行うことで、3局目以降の無線局についてアンテナ指向性のパターンの推定を行う。
【0049】
このように、推定演算部132は、[処理T1]~[処理T5]を行うことで得られた1局目の無線局211のアンテナ指向性のパターンの方向の推定結果を用いて、1局目の無線局211のアンテナ指向性のパターンによる電波センサー21-11~21-MNでの受信電力を推定する。この推定には、例えば、無線局211の空中線電力(送信機出力電力)、無線局211のアンテナから見た該当する場所への方向のアンテナ利得、伝搬損失などが考慮されてもよい。
そして、推定演算部132は、無線局211の推定結果の電力分布を、電波センサー21-11~21-MNで取得された電力分布から差し引いて、その結果として空間的な電力分布を求める。推定演算部132は、このようにして求められた空間的な電力分布を、仮想的に、電波センサー21-11~21-MNによる検出結果から得られる電力分布とみなして、2局目の無線局212についてアンテナ指向性のパターンの方向を推定する。
推定演算部132は、3局目以降の無線局についても同様に、直前までの無線局のアンテナによる電波センサー21-11~21-MNでの推定受信電力を、電波センサー21-11~21-MNで取得された受信電力から差し引いて得られる空間的な電力分布を用いて、アンテナ指向性のパターンの方向の推定を行う。
このような一連の処理を、すべての無線局に対して順番に行うことで、各無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を推定することができる。
【0050】
ここで、複数の無線局について推定を行う場合、推定を行う無線局の順番としては、任意の順番が用いられてもよい。
一例として、推定を行う無線局の順番として、ランダムな順番が用いられてもよい。この場合、推定演算部132は、例えば、乱数などを用いて、推定を行う無線局の順番をランダムに決定してもよい。
他の例として、推定を行う無線局の順番として、相関係数の演算を行う領域の中心から遠い無線局から近い無線局への順番が用いられてもよい。この場合、推定演算部132は、例えば、当該領域の情報およびそれぞれの無線局の位置の情報を用いて、推定を行う無線局の順番を決定してもよい。この場合、例えば、ある無線局についての推定が行われるときに、当該領域の中心からより遠方に存在する無線局の影響を低減することが可能である。なお、相関係数の演算を行う領域およびその中心は、任意に設定されてもよい。具体例として、推定対象となるすべての無線局の位置を含む所定の領域が相関係数の演算を行う領域として設定され、当該領域の中心が設定されてもよい。
【0051】
なお、本実施形態では、次に推定を行う対象となる無線局が対象無線局であり、既に元の電力分布から差し引かれた電力分布に係る他の無線局が対象無線局以外の無線局である。具体例として、2局目の無線局212が対象無線局であるとき、1局目の無線局211が対象無線局以外の無線局である。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とは異なる点について詳しく説明し、同様な点については説明を省略する。
本実施形態は、例えば、複数の無線局のうちの1以上(すべてでもよい)に適用されてもよい。
本実施形態では、概略的には、無線局211に複数種類のアンテナ指向性のパターンが想定されており、推定演算部132は、アンテナ指向性のパターンの種類および方向を推定する。
【0053】
第1実施形態では、アンテナ指向性のパターンとして、既知の1種類が想定されていた。これに対して、無線局211の登録情報などに複数のアンテナが登録されている場合などには、複数種類のアンテナ指向性のパターンが使用され得る。
そこで、本実施形態では、推定演算部132は、複数種類のアンテナ指向性のパターンを順番に用いて第1実施形態の場合と同様に各パターンについて相関係数の最大値を求め、複数種類のパターンのなかで相関係数の最大値が最大となるパターンを推定結果とする。そして、推定演算部132は、当該パターンにおいて、相関係数の最大値が得られた方向を推定結果とする。これにより、推定演算部132は、アンテナ指向性のパターンおよび方向の推定結果を得る。
【0054】
図7の(A)~(F)は本発明の実施形態に係る複数種類のアンテナ指向性のパターン511~513の例を示す図である。
図7(A)は、1番目のアンテナ指向性のパターン511を示してある。
図7(B)は、無線局211に対して1番目のパターン511の方向が想定されたパターン531が配置された場合の様子を示してある。なお、
図7(B)に示される電力分布の概略は、
図3の例の場合と同様である。
【0055】
図7(C)は、2番目のアンテナ指向性のパターン512を示してある。
図7(D)は、無線局211に対して2番目のパターン512の方向が想定されたパターン532が配置された場合の様子を示してある。なお、
図7(D)に示される電力分布の概略は、
図3の例の場合と同様である。
【0056】
図7(E)は、3番目のアンテナ指向性のパターン513を示してある。
図7(F)は、無線局211に対して3番目のパターン513の方向が想定されたパターン533が配置された場合の様子を示してある。なお、
図7(D)に示される電力分布の概略は、
図3の例の場合と同様である。
【0057】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態~第2実施形態とは異なる点について詳しく説明し、同様な点については説明を省略する。
本実施形態は、例えば、複数の無線局のうちの1以上(すべてでもよい)に適用されてもよい。
本実施形態では、概略的には、推定演算部132は、アンテナ指向性のパターンの方向を推定する際に、三次元の空間を考慮した演算を行う。
【0058】
第1実施形態における[処理T4]では、推定演算部132は、仮定するアンテナ指向性のパターンの方向を変化させて相関係数を求める際、アンテナ指向性のパターンの方向を均等なステップで変化させる場合に、仮の方向を二次元の水平方向で変化させる。つまり、第1実施形態では、無線局211のアンテナと電波センサー21-11~21-MNとで設置高が同じであり、かつ、無線局211のアンテナが大地に対して垂直に設置されている場合を想定している。この場合、電波センサー21-11~21-MNは無線局211のアンテナから見て水平方向に存在するため、アンテナ指向性のパターンは、アンテナの水平面における指向性のパターンを用いることで十分である。
なお、アンテナ指向性のパターンの方向を推定する空間的な範囲と比べて、無線局211および無線局211のアンテナは、1点であるとみなしている。
【0059】
本実施形態では、無線局211のアンテナと電波センサー21-11~21-MNとで設置高が異なる場合、あるいは、無線局211のアンテナが大地に対して傾けて設置される場合などに対応する。
【0060】
図8の(A)~(B)は本発明の実施形態に係る無線局211のアンテナ611および電波センサー21-11~21-MNの配置の例を示す図である。
図8(A)は、無線局211のアンテナ611の設置高と、電波センサー21-11の設置高とが同じである場合を示してある。また、アンテナ611は、大地に対して垂直に設置されている。
図8(A)には、アンテナ611と、電波センサー21-11と、アンテナ611から見た水平方向の水平面631と、アンテナ611から電波センサー21-11への相対方向651を示してある。なお、
図8(A)の例では、複数の電波センサー21-11~21-MNのうち、電波センサー21-11以外のものについては図示を省略してある。
【0061】
図8(B)は、無線局211のアンテナ611の設置高と、電波センサー21-11の設置高とが異なる場合を示してある。また、アンテナ611は、大地に対して垂直に設置されている。
図8(B)には、アンテナ611と、電波センサー21-11と、アンテナ611から見た水平方向の水平面631と、アンテナ611から電波センサー21-11への相対方向671を示してある。なお、
図8(B)の例では、複数の電波センサー21-11~21-MNのうち、電波センサー21-11以外のものについては図示を省略してある。
【0062】
このように、無線局211のアンテナ611と電波センサー21-11とで設置高が異なる場合には、無線局211のアンテナ611から見た電波センサー21-11の方向が、水平方向に対して垂直方向にずれて傾斜する。なお、無線局211のアンテナ611が大地に対して傾けられて設置される場合についても同様である。
【0063】
図9の(A)~(B)は本発明の実施形態に係る水平および垂直のアンテナ指向性のパターンの例を示す図である。
図9(A)は、アンテナ指向性のパターンのうち、水平面(
図8(A)、(B)の例では、水平面631)におけるパターン711を示してある。また、
図9(A)には、所定の360度の水平面が定められた場合における45度の方向731を示してある。
図9(B)は、アンテナ指向性のパターンのうち、垂直面(水平面に対して垂直な面)におけるパターン712を示してある。また、
図9(B)には、所定の360度の垂直面が定められた場合における15度の方向732を示してある。
【0064】
本実施形態では、推定演算部132は、第1実施形態における[処理T4]において、第1実施形態の場合の代わりに、アンテナ指向性の方向(水平方向)とアンテナの傾きを変化させて、相関係数を求める。
また、推定演算部132は、電波センサー21-11~21-MNでの受信電力を、例えば、無線局211の空中線電力(送信機出力電力)、無線局211のアンテナから見たその場所(電波センサー21-11~21-MNの場所)の指向方向(水平方向)およびアンテナから見た水平方向に対する垂直方向の角度から求まるアンテナ利得、伝搬損失、から演算により求める。また、当該受信電力の演算において、例えば、ビルなどの障害物の情報が用いられてもよい。なお、これらの値は、それぞれ、例えば、既知の手法によって求められてもよく、あるいは、ユーザなどによって設定されてもよい。
【0065】
具体例として、無線局211のアンテナから電波センサー21-11を見た指向方向(水平方向)が45度であり、無線局211のアンテナから電波センサー21-11を見た水平方向に対する垂直方向の角度が15度である場合、無線局211のアンテナの利得は垂直方向の利得と水平方向の利得との積(dBの単位では、値の加算)となる。
【0066】
図9(A)、(B)の例では、方向731に対応する垂直方向の利得が-5dBであり、方向732に対応する水平方向の利得が-10dBである場合、これらの利得の積は-15dB(=-5dB+(-10dB))となる。
ここで、
図9(A)、(B)の例では、無線局211のアンテナの最大利得で正規化してある。例えば、アンテナの最大利得が23dBiである場合、方向731および方向732の方向の利得は8dBi(=23dBi-15dB)となる。
【0067】
(以上の実施形態について)
以上のように、実施形態に係る情報処理システム1における情報処理装置11では、無線システムにおいて無線送信を行う複数の異なる無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を推定する。
実施形態に係る情報処理装置11では、推定対象となる無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を推定する際に、複数の電波センサーを用いて取得された空間的な電力分布から他の無線局についての推定結果の分が差し引かれた電力分布と、当該推定対象となる無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに電波センサーで得られると想定される空間的な電力分布との相関係数を求める。そして、実施形態に係る情報処理装置11では、仮の方向を変化させて、相関係数の値が最も高くなった仮の方向を、推定結果の方向とする。
そして、実施形態に係る情報処理装置11では、複数の無線局について順番に推定を行う。
【0068】
したがって、実施形態に係る情報処理装置11では、複数の無線局からの電波が重畳されて電波センサーで受信されるときにおいても、アンテナ指向性のパターンの方向を高精度に推定することが可能となる。そして、実施形態に係る情報処理装置11では、例えば、電波センサーがない方向の場所の受信電力の推定誤差を低減して、当該受信電力を高精度に推定することができる。また、実施形態に係る情報処理装置11では、例えば、それぞれの無縁局のアンテナ指向性のパターンごとに、任意の場所の受信電力の推定誤差を低減して、当該受信電力を高精度に推定することができる。
なお、アンテナ指向性のパターンの推定、あるいは、受信電力の推定においては、例えば、無線局の空中線電力(送信機出力電力)、無線局のアンテナから見た対象となる場所の方向のアンテナ利得、伝搬損失などの情報が用いられてもよく、これにより、推定の精度を向上させることができる。
【0069】
なお、実施形態では、1回の推定で対象無線局における1つのアンテナ指向性のパターンの方向を推定する場合を示したが、他の例として、1回の推定で対象無線局における2つ以上のアンテナ指向性のパターンの方向をまとめて推定する場合があってもよい。このように1回の推定で対象無線局における2つ以上のアンテナ指向性のパターンの方向をまとめて推定することは、例えば、毎回行われてもよく、あるいは、複数回の推定が行われるうちの1以上の任意の回で行われてもよい。1回の推定で対象無線局における2つ以上のアンテナ指向性のパターンの方向をまとめて推定することが行われた場合、推定演算部132は、例えば、この推定結果に応じた空間的な電力分布を、この推定で使用された仮想的な測定結果に基づく電力分布(この推定で使用された元の電力分布)から差し引く。
【0070】
<構成例>
一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、電力の測定結果に基づく空間的な電力分布から対象無線局以外の無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布と、対象無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算する。そして、情報処理装置11では、推定演算部132によって、複数の仮の方向のそれぞれについて得られた相関係数のうちで最大の相関係数が得られた仮の方向をアンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する。
一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、複数のパターンのそれぞれについて相関係数を演算し、最大の相関係数が得られたパターンおよび仮の方向をアンテナ指向性のパターンおよび方向の推定結果と判定する。
一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、2次元平面におけるパターンの情報を用いて相関係数を演算する。
一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、3次元空間におけるパターンの情報を用いて相関係数を演算する。
一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、電力の測定結果に基づく空間的な電力分布から対象無線局以外の無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布と、対象無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との一方または両方について所定の重み付けを行い、重み付けが行われた結果に基づいて相関係数を演算する。
なお、1回目は、一構成例として、情報処理装置11では、推定演算部132によって、電力の測定結果に基づく空間的な電力分布と、対象無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との一方または両方について所定の重み付けを行い、重み付けが行われた結果に基づいて相関係数を演算する。
一構成例として、情報処理方法(実施形態では、情報処理装置11において行われる方法)では、推定演算部132によって、電力の測定結果に基づく空間的な電力分布から対象無線局以外の無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布と、対象無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の仮の方向のそれぞれについて得られた相関係数のうちで最大の相関係数が得られた仮の方向をアンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定する。
一構成例として、プログラム(実施形態では、情報処理装置11においてプロセッサーにより実行されるプログラム)は、推定演算部132によって、電力の測定結果に基づく空間的な電力分布から対象無線局以外の無線局のアンテナ指向性のパターンについて推定された電力分布を差し引いた結果の電力分布と、対象無線局のアンテナ指向性のパターンの方向を仮の方向としたときに想定される空間的な電力分布との相関係数を演算し、複数の仮の方向のそれぞれについて得られた相関係数のうちで最大の相関係数が得られた仮の方向をアンテナ指向性のパターンの方向の推定結果と判定するステップを、コンピュータ(実施形態では、情報処理装置11を構成するコンピュータ)に実行させるためのプログラムである。
【0071】
なお、以上に説明した情報処理装置11などの任意の装置における任意の構成部の機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピュータシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disc)-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0072】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイルであってもよい。差分ファイルは、差分プログラムと呼ばれてもよい。
【0073】
以上に説明した任意の装置における任意の構成部の機能は、プロセッサーにより実現されてもよい。例えば、実施形態における各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサーと、プログラム等の情報を記憶するコンピュータ読み取り可能な記録媒体により実現されてもよい。ここで、プロセッサーは、例えば、各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよく、あるいは、各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。例えば、プロセッサーはハードウェアを含み、当該ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路のうちの少なくとも一方を含んでもよい。例えば、プロセッサーは、回路基板に実装された1または複数の回路装置、あるいは、1または複数の回路素子のうちの一方または両方を用いて、構成されてもよい。回路装置としてはIC(Integrated Circuit)などが用いられてもよく、回路素子としては抵抗あるいはキャパシターなどが用いられてもよい。
【0074】
ここで、プロセッサーは、例えば、CPUであってもよい。ただし、プロセッサーは、CPUに限定されるものではなく、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)等のような、各種のプロセッサーが用いられてもよい。また、プロセッサーは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によるハードウェア回路であってもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUにより構成されていてもよく、あるいは、複数のASICによるハードウェア回路により構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、複数のCPUと、複数のASICによるハードウェア回路と、の組み合わせにより構成されていてもよい。また、プロセッサーは、例えば、アナログ信号を処理するアンプ回路あるいはフィルター回路等のうちの1以上を含んでもよい。
【0075】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…情報処理システム、11…情報処理装置、21-11~21-MN…電波センサー、31…ネットワーク、111…入力部、112…出力部、113…通信部、114…記憶部、115…制御部、131…取得部、132…推定演算部、133…出力制御部、211、212…無線局、311、511~513、711~712…パターン、331…中心方向、351…角度幅、611…アンテナ、631…水平面、651…相対方向、731~732…方向