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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】移動式トイレ
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20230804BHJP
   E03D 1/02 20060101ALI20230804BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
E03D11/00 A
E03D1/02
E04H1/12 301
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020073291
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169727
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 立行
(72)【発明者】
【氏名】福本 克久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】板野 美咲
(72)【発明者】
【氏名】荒濱 満治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅司
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110397135(CN,A)
【文献】国際公開第2012/077352(WO,A1)
【文献】特開平11-208359(JP,A)
【文献】特開2013-151274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC E03D 1/02
7/00
11/00
E04H 1/12
B60P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に移動自在である車両と、
前記車両内に配置した衛生器具と、
前記衛生器具に供給する清水を貯留する給水タンクと、
前記衛生器具から排出される汚水を貯留する排水タンクと、
を備えており、
前記車両の移動方向に対して直交する左右方向の中央部に前記給水タンク及び前記排水タンクを配置した移動式トイレ。
【請求項2】
前記給水タンクを前記排水タンクの上方に配置した請求項1に記載の移動式トイレ。
【請求項3】
前記給水タンク及び前記排水タンクを上下に並べて収納する上下二段のボックスを備えている請求項1から請求項2までのいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【請求項4】
前記左右方向において、2つの前記衛生器具のそれぞれを前記給水タンク及び前記排水タンクの左右両側に並べて配置している請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の移動式トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は移動式トイレに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の移動式トイレを開示している。この移動式トイレは、便器からの排水を浄化槽で浄化して便器に対して給水する循環システムを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-208359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移動式トイレは、便器からの排水を浄化して便器へ給水する循環システムを利用するため、浄化槽等を設置するためのスペースが嵩みがちである。これによって、この移動式トイレは、トイレ室として利用することができるスペースが小さくなってしまい、車いす利用者にとって利用し難いものになるおそれがある。このため、便器に供給する清水を貯留する給水タンクと、便器からの汚水を貯留する排水タンクを利用することによって、給排水システムを簡易化して、トイレ室として利用することができるスペースを大きくすることが考えられる。この場合、給水タンク及び排水タンクは、清水や汚水を貯留すると重くなり、それぞれのタンクに貯留する清水及び汚水の量が増減するため、給水タンク及び排水タンクを配置する位置によっては車両が傾くおそれがある。特に、車両が左右方向に傾いていると、車両の移動の妨げになるおそれがある。このため、左右方向の重量バランスを考慮した給水タンク及び排水タンクの配置が重要である。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車両の左右バランスを良好に保つことができる移動式トイレを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の移動式トイレは、前後方向に移動自在である車両と、前記車両内に配置した衛生器具と、前記衛生器具に供給する清水を貯留する給水タンクと、前記衛生器具から排出される汚水を貯留する排水タンクと、を備えており、前記車両の移動方向に対して直交する左右方向の中央部に前記給水タンク及び前記排水タンクを配置している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の移動式トイレを左方から見た縦断面図である。
図2】実施形態1の移動式トイレを示す平面図である。
図3】実施形態1の移動式トイレを前方から見た縦断面図である。
図4】実施形態1の移動式トイレを左方から見た側面図である。
図5】実施形態1のトイレ室を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の移動式トイレ1を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向は、図1及び図4に示すX軸の正方向を上方向とし、X軸の負方向を下方向とする。左右方向については、図2及び図3に示すZ軸の正方向を左方向とし、Z軸の負方向を右方向とする。前後方向は、図1図2及び図4に示すY軸の正方向を前方向とし、Y軸の負方向を後方向とする。
【0009】
移動式トイレ1は、図1から図4に示すように、車両であるトレーラ50を備えている。トレーラ50はシャーシ51に取り付けられた前後方向に長い略直方体形状の荷箱3を有している。トレーラ50は、図示しないトラクタ等によってけん引される。シャーシ51は、前後方向に延びて形成されている。シャーシ51は、前端部に連結部52を備えている。連結部52は、トラクタに連結可能となっている。
【0010】
シャーシ51の前後中央部には左右2個ずつの車輪53が回転自在に取り付けられている。トレーラ50は、前後方向に移動自在である。各車輪53は、シャーシ51に対して上下方向に移動可能とされている。具体的には、各車輪53がシャーシ51に対して移動可能な範囲内において最も下に移動した場合、各車輪53の中央部はシャーシ51の下端に位置する。各車輪53がこの位置に移動した状態で、トレーラ50は、走行可能である。各車輪53がシャーシ51に対して移動可能な範囲内において最も上に移動した場合、各車輪53の下端はシャーシ51の下端に揃った位置、及びシャーシ51の下端よりも上の位置のいずれかになる。各車輪53がこの位置に移動した状態で、トレーラ50は移動しない状態に設置される。
【0011】
移動式トイレ1は、図1及び図2に示すように、荷箱3内に設けられた設備室10、トイレ室20、及び前室30を備えている。移動式トイレ1はスロープ部40を備えている。設備室10、トイレ室20、及び前室30は、前後方向に並んで設けられている。設備室10は、荷箱3の前部に配置されている。トイレ室20は、設備室10の後に隣接して配置されている。前室30は、トイレ室20の後に隣接し、荷箱3の後部に配置されている。移動式トイレ1は、設備室10内の空気を排気する換気扇F1と、トイレ室20及び前室30の空気を排気する換気扇F2と、を備えている。
【0012】
設備室10は、図1及び図3に示すように、ボックス11、給水タンク12、排水タンク13、及び給水ポンプ14を収納している。ボックス11は、上下二段に仕切られている。ボックス11は、設備室10の左右方向の中央部に固定されている(図3参照。)。ボックス11は、左右壁、上壁及び後壁が平板で形成されて閉じており、前側が開口している。設備室10は、ボックス11の開口を開閉する扉10Aを有している(図1参照。)。
【0013】
設備室10の右側の壁部、及び左側の壁部の各々には、設備室に出入り可能な開口が形成されている。右側の壁部には、右側の壁部の開口を開閉する右側扉10Bが設けられ、左側の壁部には、左側の壁部の開口を開閉する左側扉10Cが設けられている(図2参照。)。設備室10内の右側の領域10Dには、右側扉10Bを開放して右側の壁部の開口を介して出入りする。設備室10内の右側の領域10Dは、主として便器22の設置やメンテナンス等をする作業スペースとして利用する。設備室10内の左側の領域10Eには、左側扉10Cを開放して左側の壁部の開口を介して出入りする。設備室10内の左側の領域10Eは、主として汚物流し21の設置やメンテナンス等をする作業スペースとして利用する。本開示において、一方の領域10Dは、便器22の設置やメンテナンス等をする作業スペースであり、他方の領域10Eは、汚物流し21の設置やメンテナンス等をする作業スペースである。
【0014】
給水タンク12は、ボックス11の上側の棚11Aに収納されている。給水タンク12は、後述する衛生器具である汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29(以下、各衛生器具21,22,26,29ともいう)に供給する清水を貯留する。給水タンク12と各衛生器具21,22,26,29とは、給水路14Aによって連通している。各衛生器具21,22,26,29には給水路14Aを介して給水タンク12に貯留した清水が流入する。
【0015】
排水タンク13は、ボックス11の下側の棚11Bに収納されている。各衛生器具21,22,26,29と排水タンク13とは、排水路13A及び13Bによって連通している。排水タンク13は、各衛生器具21,22,26,29から排出された汚水が流入し、流入した汚水を貯留する。給水タンク12及び排水タンク13は同じ容量を有している。排水タンク13は、設備室10の扉10Aを開けて、ボックス11の前側の開口から荷箱3の外側へ引き出すことができる。排水路13Aは可撓性を有するホースによって形成されており、排水タンク13はこのホースを接続したまま荷箱3の外側へ引き出すことができる。
【0016】
給水タンク12は排水タンク13の上方に配置されている。これによって、仮に排水タンク13から汚水が漏出した場合であっても、汚水が給水タンク12にかかったり、給水タンク12に流入したりすることを防止できる。給水タンク12及び排水タンク13は、上下に並べてボックス11に収納されて配置されている。これによって、給水タンク12内の清水の貯留量が変化し、排水タンク13内の汚水の貯留量が変化しても、トレーラ50の左右方向の重量バランスは、変化することがない。給水タンク12、及び排水タンク13は、上下二段に仕切られたボックス11に収納されることによって、トレーラ50の移動方向に対して直交する左右方向の中央部に配置される。これによって、設備室10における、メンテナンス作業をするスペースとしての領域10D,10Eを確保している。給水タンク12、及び排水タンク13の左右両側には、作業するスペースとしての領域10D,10Eが設けられている。各領域10D,10Eは、給水タンク12、及び排水タンク13の左右両側であって、衛生器具(汚物流し21及び便器22)よりも後方の空間に位置している。ここでいう、衛生器具よりも後方とは、衛生器具を挟んで、この衛生器具を使用する使用者と反対側の位置である。
【0017】
排水タンク13は、給水タンク12から各衛生器具21,22,26,29を経由して流入する清水の他に、し尿やロールペーパー等が流入する。このため、給水タンク12には、排水タンク13の容量よりも少ない量の清水を貯留しておく。これによって、給水タンク12に貯留した全ての清水が、し尿やロールペーパー等とともに排水タンク13に流入しても、排水タンク13から汚水が溢れることを防止できる。
【0018】
給水タンク12内、及び排水タンク13内の各々には、図示しない水位センサが設けられている。給水タンク12内の水位センサは、給水タンク12に貯留された清水の水位が所定の水位以下になると、水位が所定の水位よりも低いことを示す水位低下信号を外部に出力する構成とされている。排水タンク13内の水位センサは、排水タンク13に貯留された汚水の水位が所定の水位以上になると、水位が所定の水位よりも高いことを示す水位増加信号を外部に出力する構成とされている。水位低下信号や水位増加信号に基づいて、給水タンク12における水位の低下や、排水タンク13における水位の増加を外部に報知する図示しない報知部が設けられている。報知部は、給水タンク12に清水を補給するタイミングや、排水タンク13に貯留した汚水を抜き取るタイミングを外部に報知する。
【0019】
給水ポンプ14は、設備室10において、ボックス11よりも右側に配置されている(図3参照。)。給水ポンプ14は給水路14Aの途中に設けられている。給水路14Aは、給水ポンプ14よりも下流側において、各衛生器具21,22,26,29に連通するように分岐している(図2参照。)。
【0020】
給水ポンプ14の動作は、マイクロコンピュータなどの情報処理装置によって構成された図示しない制御部によって制御される。制御部は、各衛生器具21,22,26,29に設けられ、給水路14Aに連通した開閉弁を開弁する信号が入力されると、給水ポンプ14を駆動させる。設備室10は、給水ポンプ14や換気扇F1,F2等に電力を供給する図示しない発電機を配置している。
【0021】
トイレ室20は、図5に示すように、第1キャビネット20A、第2キャビネット20B、汚物流し21、便器22、背もたれ23、跳ね上げ手すり24、トイレットペーパーホルダー25、手洗器26、及び洗面器29等を有している。第1キャビネット20Aは、箱状をなし、トイレ室20の右側に立ち上がる第1壁部20Cに背面が接触して設置されている。第2キャビネット20Bは、第1キャビネット20Aよりも一回り大きい箱状をなし、トイレ室20と設備室10とを仕切る第2壁部20Dに背面が接触して設置されている。
【0022】
汚物流し21は、第2キャビネット20Bの正面の左側に取り付けられている。ここでいう第2キャビネット20Bの正面とは、第2キャビネット20Bにおいて後に向いた面である。便器22は、第2キャビネット20Bの正面の右側に取り付けられている。背もたれ23は、第2キャビネット20Bの正面であって、便器22の上方に取り付けられている。跳ね上げ手すり24及びトイレットペーパーホルダー25は、第2キャビネット20Bの正面であって、汚物流し21と便器22との間に取り付けられている。第2キャビネット20Bは、背面が第2壁部20Dに接触したミラーキャビネット20Kを上面に載置している。ミラーキャビネット20Kは汚物流し21が取り付けられた上方に位置している。左右方向において、2つの衛生器具である汚物流し21及び便器22は、給水タンク12及び排水タンク13の左右両側に並べて配置している(図2参照。)。これによって、前方(すなわち、汚物流し21、及び便器22の背後)から汚物流し21、及び便器22のメンテナンスを行う場合、給水タンク12、及び排水タンク13に妨げられることがない。
【0023】
第2キャビネット20Bは、図2に示すように、第1搬送装置20H及び第2搬送装置20Jを収納している。第1搬送装置20Hは、入水ポートを汚物流し21の排水用接続部に連通している。第1搬送装置20Hは、排水ポートを排水路13Aに連通している。第1搬送装置20Hは、汚物流し21から流入した汚水をポンプ機能によって排水路13Aに排水する。
【0024】
第2搬送装置20Jは、入水ポートを便器22の排水用接続部と、手洗器26及び洗面器29からの汚水が流入する排水路13Bと、に連通している。第2搬送装置20Jは、排水ポートを排水路13Aに連通している。第2搬送装置20Jは、便器22、手洗器26及び洗面器29から流入した汚水をポンプ機能によって排水路13Aに排水する。第1搬送装置20H、及び第2搬送装置20Jの動作は、制御部によって制御される。制御部は、第1搬送装置20H及び第2搬送装置20Jに流入した汚水が所定量になると、第1搬送装置20H及び第2搬送装置20Jのポンプ機能を駆動させる。
【0025】
手洗器26は、図5に示すように、第1キャビネット20Aの便器22の近く(すなわち、トイレ室20の前側)に設けられている。手洗器26の下方に位置する第1キャビネット20Aの正面には、トイレットペーパーホルダー27及び固定手すり28が取り付けられている。ここでいう第1キャビネット20Aの正面とは、第1キャビネット20Aにおいて左に向いた面である。洗面器29は、第1キャビネット20Aの便器22から離れた位置(すなわち、トイレ室20の後側)に設けられている。
【0026】
各衛生器具21,22,26,29は、図示しない操作部を使用者が操作することによって給水タンク12から清水が供給される。操作部は、汚物流し21や便器22においては、押しボタンの形態であり、手洗器26や洗面器29においては、使用者の手などの物体を検知するセンサの形態である。各操作部は、操作されたり、使用者の手などの物体の接近を検知したりすると、制御部に対して吐水信号を出力する。
【0027】
便器22を洗浄する場合、操作部が操作されると、便器22に設けられた開閉弁が開弁する。操作部の操作に伴って、操作部から出力した吐水信号が制御部に入力され、制御部によって給水ポンプ14の動作が開始する。給水ポンプ14が動作すると、給水タンク12から清水が給水路14Aを介して便器22に流入する。便器22に流入した清水は、便器22を洗浄した後、第2搬送装置20Jに汚水として流入する。制御部は、第2搬送装置20Jに流入した汚水が所定量になると、ポンプ機能を駆動し、汚水が排水路13Aを介して排水タンク13に流入し、貯留する。制御部は、第2搬送装置20Jの内部の汚水が排出されると、第2搬送装置20Jのポンプ機能を停止する。操作部の操作後、所定の時間が経過すると、便器22の開閉弁が閉弁するとともに、制御部によって給水ポンプ14の動作が停止する。このようにして、便器22の洗浄が終了する。汚物流し21を洗浄する場合、給水ポンプ14及び第1搬送装置20Hは同様に駆動し、洗浄が行われる。汚物流し21に設けられた操作ハンドルを操作して開閉弁を開弁すると、制御部によって給水ポンプ14が動作し、操作ハンドルを操作して開閉弁を閉弁すると、制御部によって給水ポンプ14が停止する。このようにして、汚物流し21の吐水部から清水が吐水される。
【0028】
手洗器26及び洗面器29を使用する場合、使用者の手などをセンサが検知している間、手洗器26及び洗面器29に設けられた開閉弁が開弁し、使用者の手などをセンサが検知しなくなると、手洗器26及び洗面器29に設けられた開閉弁は閉弁する。センサが使用者の手などを検知している間、操作部から吐水信号が制御部に入力し続け、制御部によって給水ポンプ14の動作が継続する。このようにして、手洗器26及び洗面器29に設けられた吐水部から清水が吐水される。手洗器26及び洗面器29から流出した汚水は、第2搬送装置20Jによって、排水路13Aを介して排水タンク13に流入し、貯留される。制御部は、上述したように、第2搬送装置20Jに流入した汚水が所定量になると、ポンプ機能を駆動し、第2搬送装置20Jの内部の汚水が排出されると第2搬送装置20Jのポンプ機能を停止する。
【0029】
トイレ室20と前室30とは、図2に示すように、第3壁部20Eによって仕切られている。第3壁部20Eには、トイレ室20と前室30とを出入するためにトイレ室20と前室30との間に第1出入口20Fが開口して設けられている。第1出入口20Fには、第1出入口20Fを開閉する第1扉20Gが設けられている。第1扉20Gは、第3壁部20Eに沿う方向A(すなわち、左右方向)にスライドすることによって第1出入口20Fを開閉する。第1扉20Gは、引き戸である。
【0030】
前室30は、折畳みベッド31及び鏡32を有している。折畳みベッド31は、前室30の右側に立ち上がる第4壁部30Aに沿うように設置されている。折畳みベッド31のベッド本体31Aは、使用しない非使用状態の際、第4壁部30Aに沿った状態にされ、使用する使用状態の際には、前室30の床面に平行な状態にされる。ベッド本体31Aが前室30の床面に平行な状態は図示しない。鏡32は、前室30の後側に立ち上がる第5壁部30Bに取り付けられている。第5壁部30Bは、前室30内の空間を挟み、第3壁部20Eの反対側に立ち上がっている。第5壁部30B、及び第3壁部20Eは、互いに概ね平行である。鏡32は、第1出入口20Fの正面に配置されている。
【0031】
前室30の左側には、第6壁部30Cが立ち上がっている。第6壁部30Cは、前後方向に拡がっている。第6壁部30Cは、移動式トイレ1の外部と前室30とを出入するための第2出入口30Dが開口して形成されている。つまり、前室30は、第2出入口30Dを備えている。第2出入口30Dは第2扉30Eが設けられている。第2扉30Eは、例えば、蛇腹状をなしており、第6壁部30Cに沿う方向B(すなわち、前後方向)にスライドすることによって、第2出入口30Dを開閉する。
【0032】
スロープ部40は、図2及び図4に示すように、踊り場41及びスロープ部本体42を有している。スロープ部40は、第2出入口30Dを形成した側におけるトレーラ50の側面に沿って配置されている(図4参照。)。スロープ部40の下面は、シャーシ51の下端と概ね同じ高さに位置している(図4参照。)。これによって、各車輪53の下端が、シャーシ51の下端に揃った位置、及びシャーシ51の下端よりも上の位置のいずれかになると、シャーシ51の下端と、スロープ部40の下面とが地面に接触し、トレーラ50は移動しない状態に設置される。踊り場41は、上方から見た平面視において、四角形状をなし、前室30の左側に隣合うように配置されている(図2参照。)。スロープ部40の踊り場41の上面は、前室30の床面と概ね同じ高さであり、第2出入口30Dに連続している(図4参照。)。
【0033】
スロープ部本体42の上面は、踊り場41の前端に連続している。スロープ部本体42は、踊り場41(第2出入口30D)に向けて上り勾配である。スロープ部本体42の前端は、連結部52よりも前方に位置している。踊り場41及びスロープ部本体42の上面には、手すり43が設けられている。手すり43は、踊り場41の後端部及び左端部、及びスロープ部本体42の左端部に沿って配置されている。
【0034】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0035】
本開示の移動式トイレ1は、前後方向に移動自在であるトレーラ50と、トレーラ50に配置した各衛生器具21,22,26,29と、各衛生器具21,22,26,29に供給する清水を貯留する給水タンク12と、各衛生器具21,22,26,29から排出される汚水を貯留する排水タンク13とを備えており、トレーラ50の移動方向に対して直交する左右方向の中央部に給水タンク12、及び排水タンク13を配置している。この構成によれば、給水タンク12からの清水が流出し、排水タンク13に貯留される汚水の量が増しても、トレーラ50の左右方向の重量バランスが崩れ難い。
【0036】
本開示の移動式トイレ1は、給水タンク12を排水タンク13の上方に配置している。この構成によれば、排水タンク13から汚水が漏れた場合であっても、給水タンク12への汚水の流入を抑えることができる。
【0037】
本開示の移動式トイレ1は、給水タンク12、及び排水タンク13を上下に並べて収納する上下二段のボックス11を備えている。この構成によれば、給水タンク12から清水が漏れたり、排水タンク13から汚水が漏れたりしてもボックス11内に漏れ出すだけで他のスペースに漏れることを防止し易い。
【0038】
本開示の移動式トイレ1は、左右方向において、汚物流し21及び便器22のそれぞれを給水タンク12、及び排水タンク13の左右両側に並べて配置している。この構成によれば、トレーラ50における左右方向の重量バランスをとることができる。
【0039】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、給水タンク及び排水タンクとして、同じ容量のものが用いられている。これに限らず、排水タンクの容量に比べて小さい容量のタンクを給水タンクとして用いてもよい。
(2)実施形態1では、給水タンクと排水タンクとが上下に並べて配置されている。これに限らず、給水タンクと排水タンクとを前後に並べて配置してもよい。
(3)車輪の個数や配置は、実施形態1に限らない。
(4)実施形態1では、ボックスを備えている。これに限らず、給水タンク及び排水タンクを設置する棚のみを設けてもよい。
(5)実施形態1では、複数種類の衛生器具を一つずつ備えている。これに限らず、一種類の衛生器具を一つ以上備える構成でもよく、一種類以上の衛生器具を備える構成でもよい。
(6)実施形態1では、設備室、トイレ室、及び前室をトレーラの荷箱に設けている。これに限らず、設備室、トイレ室、及び前室を自動車の荷室に設けて移動式トイレを構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…移動式トイレ、11…ボックス、12…給水タンク、13…排水タンク、21…汚物流し(衛生器具)、22…便器(衛生器具)、26…手洗器(衛生器具)、29…洗面器(衛生器具)、50…トレーラ(車両)
図1
図2
図3
図4
図5