(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/02 20060101AFI20230804BHJP
A45D 40/10 20060101ALI20230804BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
A45D40/02 A
A45D40/10
B65D83/00 C
(21)【出願番号】P 2020080697
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2020065042
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】本間 友梨
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-031608(JP,A)
【文献】特開2008-212613(JP,A)
【文献】特開2001-158197(JP,A)
【文献】特開2015-127222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/02
A45D 40/10
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びるとともに内容物が上方に突出可能な上端開口部を有するノズル筒と、
前記ノズル筒の下部に相対回転可能に装着された下筒部と、
前記ノズル筒の内側に配置され、前記ノズル筒に対して回転不能かつ前記下筒部に対して回転可能に設けられ、径方向の内側に突出した第1係止爪を有する爪付筒部と、
前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記爪付筒部を前記下筒部に対して回転させることで前記爪付筒部を前記下筒部に対して所定の距離上昇させるカム機構と、
前記ノズル筒と前記爪付筒部との間に介在し、前記爪付筒部を前記ノズル筒に対して下方に付勢する付勢部材と、
前記爪付筒部の内側に挿入されて前記内容物を前記内容物の下方から支持し、外周面に前記第1係止爪に係合した被係止歯が上下方向に複数配設され、前記第1係止爪によって前記爪付筒部に対する下降を規制されかつ上昇を許容された被係止軸と、
前記下筒部に対する上昇を規制され、前記被係止歯に係合して前記被係止軸の上昇を許容し、かつ下降を規制した第2係止爪と、
を備える繰出容器。
【請求項2】
前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記下筒部に対する前記爪付筒部の一方向の回転を規制する規制部を備え、
前記カム機構は、前記下筒部に対する前記爪付筒部の他方向の回転に伴って、前記下筒部に対して前記爪付筒部を上昇させる、
請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記ノズル筒に対する前記爪付筒部の前記他方向への回転を許容し、かつ前記一方向への回転を規制する回転規制部を備える、
請求項2に記載の繰出容器。
【請求項4】
前記被係止歯は、前記所定の距離と一致したピッチで配設されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、内筒部、および内筒部に相対的に回転可能に外装され、内筒部から容器軸方向に沿った一方側に向けて延在する外筒部を有する容器本体と、容器本体内に、外筒部との相対的な回転が規制された状態で、前記内筒部に対して相対的に回転可能に配設され、内筒部に対する外筒部の回転に伴って容器軸方向に進退する保持部材と、を備え、保持部材には、外筒部内に位置する内容物を、容器軸方向に沿った他方側から保持する本体部と、本体部から他方側に向けて突出し、内筒部内に挿入された突出部と、が備えられた繰出容器であって、突出部は筒状に形成され、突出部の外周面には内筒部の内周面に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成された繰出容器が知られている。
この繰出容器では、内筒部と外筒部とを相対的に回転させて、保持部材を容器本体内で容器軸方向に進退させることで、容器本体の繰出口から内容物を出没させるとともに、繰出口からの内容物の突出量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の繰出容器では、内筒部と外筒部との相対回転量に比例して内容物が繰出口から突出するので、内容物を出し過ぎるおそれがあった。内容物が例えばアイライナーやリップライナー等の細い形状に形成された場合や、比較的軟らかい材質の場合には、内容物を繰り出し過ぎると内容物の折れや崩れが生じる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、内容物の出し過ぎを抑制できる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繰出容器は、上下方向に延びるとともに内容物が上方に突出可能な上端開口部を有するノズル筒と、前記ノズル筒の下部に相対回転可能に装着された下筒部と、前記ノズル筒の内側に配置され、前記ノズル筒に対して回転不能かつ前記下筒部に対して回転可能に設けられ、径方向の内側に突出した第1係止爪を有する爪付筒部と、前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記爪付筒部を前記下筒部に対して回転させることで前記爪付筒部を前記下筒部に対して所定の距離上昇させるカム機構と、前記ノズル筒と前記爪付筒部との間に介在し、前記爪付筒部を前記ノズル筒に対して下方に付勢する付勢部材と、前記爪付筒部の内側に挿入されて前記内容物を前記内容物の下方から支持し、外周面に前記第1係止爪に係合した被係止歯が上下方向に複数配設され、前記第1係止爪によって前記爪付筒部に対する下降を規制されかつ上昇を許容された被係止軸と、前記下筒部に対する上昇を規制され、前記被係止歯に係合して前記被係止軸の上昇を許容し、かつ下降を規制した第2係止爪と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ノズル筒を下筒部に対して回転させると、ノズル筒の回転に伴って爪付筒部も下筒部に対して回転する。これにより、カム機構が作動して、下筒部に対して爪付筒部が所定の距離上昇する。
ここで、被係止軸の被係止歯には、爪付筒部の第1係止爪、および第2係止爪が係合している。被係止軸は、第1係止爪によって爪付筒部に対する下降が規制されている。このため、爪付筒部が下筒部に対して上昇すると被係止軸も上昇する。一方で、第2係止爪は、被係止軸の上昇を許容し、かつ下筒部に対する上昇を規制されている。このため、被係止軸は、第2係止爪に被係止歯を乗り越えさせつつ、下筒部に対して爪付筒部とともに所定の距離上昇する。
下筒部に対する爪付筒部の回転が進み、下筒部に対して爪付筒部が上昇端位置に達すると、下筒部に対して爪付筒部が下降可能な状態となる。爪付筒部は、付勢部材によってノズル筒に対して下方に付勢されている。ノズル筒は下筒部に対して上昇不能に設けられているので、爪付筒部はノズル筒に対して下降する。この際、第2係止爪は、被係止軸の下降を規制している。一方で、第1係止爪は、爪付筒部に対する被係止軸の上昇を許容している。このため、爪付筒部は、第1係止爪に被係止歯を乗り越えさせつつ、下筒部に対して所定の距離下降する。
以上により、被係止軸に支持された内容物を所定の距離だけ上昇させて、ノズル筒の上端開口部から内容物を繰り出すことができる。したがって、内容物の出し過ぎを抑制することが可能な繰出容器を提供できる。
【0008】
上記の繰出容器において、前記下筒部および前記爪付筒部に設けられ、前記下筒部に対する前記爪付筒部の一方向の回転を規制する規制部を備え、前記カム機構は、前記下筒部に対する前記爪付筒部の他方向の回転に伴って、前記下筒部に対して前記爪付筒部を上昇させてもよい。
【0009】
本発明によれば、内容物を繰り出す際にノズル筒を回転させる方向を使用者に直感的に認識させることができる。
【0010】
上記の繰出容器において、前記ノズル筒に対する前記爪付筒部の前記他方向への回転を許容し、かつ前記一方向への回転を規制する回転規制部を備えていてもよい。
【0011】
本発明によれば、ノズル筒を下筒部に対して一方向に回転させると、規制部によって爪付筒部が下筒部に対する回転を規制された状態で、ノズル筒が爪付筒部に相対回転する。これにより、下筒部に対してノズル筒を一方向に回転させた際に規制部に大きな力が作用して繰出容器が破損することを抑制できる。
【0012】
上記の繰出容器において、前記被係止歯は、前記所定の距離と一致したピッチで配設されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、カム機構によって被係止軸が下筒部に対して上昇端位置に達した時点で第2係止爪を被係止歯に係合させることができる。このため、爪付筒部が被係止軸に対して下降を開始する際に、被係止軸が第1係止爪に引き摺られて上下方向に変位することを抑制できる。また、爪付筒部が被係止軸に対して下降端位置に達した時点で第1係止爪を被係止歯に係合させることができる。このため、繰り出した内容物が使用時に上下方向に変位することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内容物の出し過ぎを抑制できる繰出容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の繰出容器を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す断面図の要部を拡大した図である。
【
図4】第1実施形態に係るラチェット筒部を示す側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る中継筒を示す側面図である。
【
図6】第1実施形態の繰出容器の動作を説明する断面図である。
【
図7】第1実施形態の繰出容器の動作を説明する断面図である。
【
図8】第2実施形態の繰出容器の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る繰出容器1の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の繰出容器1は、内部に収容された棒状の内容物Xをノズル筒20から繰り出して使用する。内容物Xは、比較的軟らかい材質のものを細い棒状に形成したものであって、例えば化粧料(アイライナーやリップライナー等)や薬剤、糊などが円柱状に形成されてなる。繰出容器1は、上下方向に延びるとともに内容物Xが上方に突出可能な上端開口部20aを有するノズル筒20と、ノズル筒20の下部に相対回転可能に装着された下筒部10と、下筒部10に着脱自在に装着されたキャップ体30と、を備える。ノズル筒20、下筒部10およびキャップ体30は、それぞれ円筒状に形成され、それぞれの中心軸が上下方向に延びる共通軸上に位置するように配置されている。以下の説明では、この共通軸を容器軸Oといい、上下方向に沿う下筒部10側を下方、上下方向に沿うキャップ体30側を上方という。また、上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。また、本実施形態では周方向のうち上方から見て反時計回りに周回する方向を第1側R1と定義し、その反対方向を第2側R2と定義する。
【0017】
下筒部10は、有底筒状に形成された本体部11と、本体部11の上端部に相対回転不能に組み付けられた中継筒12と、を備える。中継筒12は、中継筒12の上部に位置し、ノズル筒20が装着される小径部13と、小径部13より大径の円筒状の大径部14と、小径部13と大径部14とを連結する連結部15と、大径部14から径方向の外側に突出するとともに周方向に沿って全周に延びる鍔部16と、を備える。小径部13は、本体部11の上端部に位置している。小径部13の外周面には、径方向の外側に突出するとともに周方向に沿って全周に延びる環状の係合凸部17が形成されている。連結部15は、円環状に形成され、小径部13の下端部から径方向の外側に張り出している。大径部14は、連結部15の外周縁から下方に延びている。大径部14の下部は、本体部11の内側に上方から嵌入されている。大径部14の内周面には、上下方向に沿って延在する縦リブ18が周方向に間隔をあけて複数形成されている。縦リブ18の上端縁は、連結部15の下面に接続している。鍔部16は、大径部14における上下方向の中間部から突出している。鍔部16は、円環状に形成され、全周にわたって本体部11の上端縁にその上方から接触している。
【0018】
ノズル筒20は、上端が先細る円筒状に形成されている。ノズル筒20の下部は、中継筒12の小径部13の外周面に装着されている。ノズル筒20の下端縁は、中継筒12の連結部15にその上方から接触している。ノズル筒20の上部には、内容物Xを摺動可能に通過させる孔部21が形成されている。孔部21は、ノズル筒20の内周面の上端部に位置し、上端開口部20aから下方に延びている。孔部21は、内容物Xの外径よりも僅かに大きい一定の内径で上下方向に延びている。孔部21の下端縁は、下方を向く環状の段差面22に接続している。
【0019】
ノズル筒20の内周面には、上下方向に沿って延在する複数の支持リブ23および嵌合リブ26と、径方向の内側に突出した突起24および被係合凸部25と、が形成されている(
図2および
図3を併せて参照)。複数の支持リブ23は、周方向に間隔をあけて配置されている。支持リブ23は、孔部21よりも下方の位置から下方に延びて、ノズル筒20における上下方向の中間部に至る。突起24は、支持リブ23の下方で支持リブ23に隣り合うように設けられている。突起24の突端は、支持リブ23の径方向内側の端部よりも径方向の外側に位置している。被係合凸部25は、ノズル筒20の下端部に設けられ、中継筒12の係合凸部17に下方から係合している。これにより、ノズル筒20は、下筒部10に対して回転可能かつ上昇不能に設けられている。嵌合リブ26は、突起24と被係合凸部25との間に設けられている。複数の嵌合リブ26は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0020】
キャップ体30は、有頂筒状に形成され、ノズル筒20を覆うように配置されている。キャップ体30は、ノズル筒20に対して離間している。キャップ体30は、中継筒12の大径部14の上部に着脱自在に外嵌されている。キャップ体30の下端縁は、中継筒12の鍔部16に上方から当接している。
【0021】
繰出容器1は、ノズル筒20の内側に配置され、ノズル筒20に対して回転不能かつ下筒部10に対して回転可能に設けられたラチェット筒部40(爪付筒部)と、下筒部10およびラチェット筒部40に設けられたカム機構60(規制部)と、ノズル筒20とラチェット筒部40との間に介在した付勢部材70と、ラチェット筒部40の内側に挿入されたラチェット軸50(被係止軸)と、下筒部10の内側に配置された受筒部80と、ラチェット軸50に支持されるとともに内容物Xを保持する受皿90と、をさらに備える。
【0022】
図3に示すように、ラチェット軸50は、受皿90に保持された内容物Xを下方から支持し、下筒部10に対して内容物Xと一体に上昇可能に形成されている。ラチェット軸50は、後述する第1ラチェット爪49(第1係止爪)および第2ラチェット爪89(第2係止爪)それぞれとラチェット機構を構成し、下筒部10に対して上昇可能かつ下降不能に設けられている。ラチェット軸50は、容器軸Oを中心に上下方向に延びる円柱状に形成されている。ラチェット軸50の上端面には、受皿90の一部が嵌入される凹部51が開口している。凹部51は、ラチェット軸50の上端面から下方に延びている。凹部51は、横断面で容器軸Oを中心とする円形状に形成され、一定の内径で延びている。
【0023】
図2に示すように、ラチェット軸50の外周面は、横断面で非円形状に形成されている。具体的には、ラチェット軸50の外周面には、上下方向に延びる一対の切欠52が形成されている。切欠52は、容器軸Oに平行な平面状に形成されている。一対の切欠52は、互いに反対方向を向いている。切欠52は、ラチェット軸50の上端部から下端部にわたって連続して延びている。
【0024】
さらに、
図3に示すように、ラチェット軸50の外周面には、ラチェット歯53(被係止歯)が上下方向に複数配設されている。ラチェット歯53は、ラチェット軸50の外周面のうち周方向で一対の切欠52の間の部分のそれぞれに形成されている。複数のラチェット歯53は、等ピッチで上下方向に並んでいる。複数のラチェット歯53は、ラチェット軸50の上端部から下端部にわたって配設されている。ラチェット歯53は、周方向に延びている。ラチェット歯53は、径方向の内側から外側に向かうに従い上下方向に先細るように形成されている。ラチェット歯53は、径方向外側の先端部から径方向内側に延びて下方を向く係止面53aと、先端部から上方かつ径方向内側に延びて上方かつ径方向外側を向く摺接面53bと、を備える。
【0025】
ラチェット筒部40は、容器軸Oを中心軸とする円筒状の上ガイド筒41と、上ガイド筒41の外周面から径方向の外側に突出する外フランジ44と、上ガイド筒41の上端縁から上方に突出する第1突片部47と、第1突片部47から径方向の内側に突出した第1ラチェット爪49と、を備える。
【0026】
上ガイド筒41の下端部は、中継筒12の上端部の内側に挿入されている。上ガイド筒41の外周面には、中継筒12よりも上方で径方向の外側に突出した凸部42が形成されている。凸部42における径方向外側の端部は、外フランジ44の外周面よりも径方向の内側に位置している。上ガイド筒41の内側には、ラチェット軸50が挿通されている。上ガイド筒41の内周面は、ラチェット軸50の横断面形状に対応して、横断面で非円形状に形成されている(
図2参照)。これにより上ガイド筒41は、ラチェット軸50を上下方向に変位可能かつ相対回転不能に支持している。
【0027】
外フランジ44は、上ガイド筒41における上下方向の中間部から突出している。外フランジ44は、凸部42の下方に位置している。外フランジ44の上面には、凸部42が接続している。外フランジ44は、周方向に沿って全周に延びて環状に形成されている。外フランジ44の外周面には、径方向の外側に突出する複数の嵌合凸部45が形成されている(
図4を併せて参照)。複数の嵌合凸部45は、周方向に配設されている。周方向で隣り合う一対の嵌合凸部45の間には、ノズル筒20の嵌合リブ26が入り込んでいる(
図2参照)。これにより、ラチェット筒部40およびノズル筒20の相対回転が規制されているとともに、ラチェット筒部40およびノズル筒20の上下方向の相対移動が許容されている。
【0028】
第1突片部47は、ラチェット歯53に径方向で対向する位置のそれぞれに設けられている。第1突片部47は、周方向に間隔をあけて一対設けられている。第1突片部47は、上ガイド筒41における周方向の一部を上方に延長するように形成されている。第1突片部47は、径方向から見て一定の幅で上下方向に延びている。第1突片部47は、上ガイド筒41との接続部を基端として径方向に撓み変形可能とされている。
【0029】
第1ラチェット爪49は、各第1突片部47の上端部から突出している。第1ラチェット爪49は、周方向に延在している。第1ラチェット爪49は、ラチェット軸50のラチェット歯53の歯溝に入り込み、ラチェット歯53に係合している。第1ラチェット爪49は、ラチェット歯53を下方に乗り越え可能、かつ上方に乗り越え不能に形成されている。具体的には、第1ラチェット爪49は、径方向内側の先端部から径方向外側に延びて上方を向く被係止面49aと、先端部から下方かつ径方向の外側に延びて下方かつ径方向の内側を向く被摺接面49bと、を備える。第1ラチェット爪49は、ラチェット歯53の係止面53aと第1ラチェット爪49の被係止面49aとの接触により、ラチェット軸50の下方への相対移動を規制している。また、第1ラチェット爪49は、ラチェット歯53の摺接面53bを第1ラチェット爪49の被摺接面49bに対して上方に摺接させることで、第1突片部47の弾性変形を伴いながら径方向の外側に変位してラチェット歯53を乗り越えるので、ラチェット軸50の上方への相対移動を許容している。これにより、ラチェット軸50は、ラチェット筒部40に対する下降を規制されかつ上昇を許容されている。
【0030】
カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して回転させることで、ラチェット筒部40を下筒部10に対して上昇させる。カム機構60は、下筒部10に設けられた下カム部61と、ラチェット筒部40に設けられた上カム部65と、を備える。下カム部61および上カム部65は、端面カムとして機能する。下カム部61は、中継筒12の小径部13から上方に突出している。上カム部65は、中継筒12の小径部13の上方に配置されている。上カム部65は、ラチェット筒部40の上ガイド筒41とノズル筒20との間に配置されている。上カム部65は、ラチェット筒部40の外フランジ44から下方に突出している。下カム部61および上カム部65は、互いに径方向の同じ位置に配置されている。
【0031】
図5に示すように、下カム部61は、中継筒12と一体的に成形されている。下カム部61は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。下カム部61は、中継筒12の小径部13における周方向の一部を上方に延長するにように形成されている。下カム部61は、径方向を厚さ方向として一定の厚さで延びている。下カム部61は、中継筒12の小径部13の上端面から周方向の第1側R1かつ上方に延びて下カム部61の先端部に至り、周方向の第2側R2かつ上方を向く下カム面62と、小径部13の上端面から上方に延びて下カム部61の先端部に至り、周方向の第1側R1を向く下規制面63と、を備える。
【0032】
図4に示すように、上カム部65は、ラチェット筒部40と一体的に成形されている。上カム部65は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。上カム部65は、径方向を厚さ方向として、一定の厚さでラチェット筒部40の上ガイド筒41の外周面に沿って延びている。上カム部65は、上ガイド筒41の外周面に接続している。上カム部65は、ラチェット筒部40の外フランジ44の下面から周方向の第2側R2かつ下方に延びて上カム部65の先端部に至り、周方向の第1側R1かつ下方を向く上カム面66と、外フランジ44の下面から下方に延びて上カム部65の先端部に至り、周方向の第2側R2を向く上規制面67と、を備える。上カム面66は、下カム部61の下カム面62と平行に延びている。
【0033】
図3から
図5に示すように、カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させた場合に、下カム部61の下規制面63と上カム部65の上規制面67とが接触した時点で、それ以上の回転を規制する。また、カム機構60は、ラチェット筒部40を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させた場合に、下カム部61の下カム面62と上カム部65の上カム部65とを摺接させることで、ラチェット歯53のピッチと一致した所定の距離だけ下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる。なお、ラチェット歯53のピッチは、上下方向で隣り合う一対のラチェット歯53の係止面53aの間隔と同義である。
【0034】
図3に示すように、付勢部材70は、容器軸Oを中心とするコイルスプリングである。付勢部材70は、圧縮された状態でノズル筒20の内側に配置されている。付勢部材70の上端部は、ノズル筒20の支持リブ23の下端縁に下方から当接しているとともに、突起24の内側に嵌入されている。付勢部材70の下端部は、ラチェット筒部40の外フランジ44の上面に上方から当接しているとともに、凸部42に外嵌されている。これにより、付勢部材70は、ラチェット筒部40をノズル筒20に対して下方に付勢している。
【0035】
図1に示すように、受筒部80は、容器軸Oを中心軸とする有頂筒状に形成され周壁82および頂壁83を有する受本体81と、受本体81の頂壁83から上方に延びる下ガイド筒85と、下ガイド筒85の上端縁から上方に突出する第2突片部87と、第2突片部87から径方向の内側に突出した第2ラチェット爪89と、を備える。受本体81の周壁82は、下筒部10の本体部11の内周面に沿って配置されている。周壁82の下端部は、下筒部10の本体部11の内側に嵌入されて下筒部10に対する径方向の変位が規制されているとともに、下筒部10の本体部11の底壁に上方から接触している。受本体81の頂壁83は、中継筒12の下端縁に下方から接触している。具体的には、頂壁83の上面は、大径部14の下端縁および縦リブ18の下端縁に下方から接触している。これにより、受筒部80は、下筒部10に対する上昇および下降を規制されている。頂壁83には、ラチェット軸50が挿通される貫通孔83aが形成されている。貫通孔83aは、ラチェット軸50の横断面形状に対応して、横断面で非円形状に形成されている。下ガイド筒85は、頂壁83の内周縁から上方に延び、容器軸Oを中心軸とする円筒状に形成されている。下ガイド筒85の内周面は、横断面で頂壁83の貫通孔83aの形状に一致している。下ガイド筒85の内側には、ラチェット軸50が相対回転不能、かつ上下方向に変位可能に挿通されている。
【0036】
図3に示すように、第2突片部87は、ラチェット歯53に径方向で対向する位置のそれぞれに設けられている。第2突片部87は、周方向に間隔をあけて一対設けられている。第2突片部87は、下ガイド筒85における周方向の一部を上方に延長するように形成されている。第2突片部87は、径方向から見て一定の幅で上下方向に延びている。第2突片部87は、下ガイド筒85との接続部を基端として径方向に撓み変形可能とされている。
【0037】
第2ラチェット爪89は、各第2突片部87の上端部から突出している。第2ラチェット爪89は、ラチェット軸50のラチェット歯53の歯溝に入り込み、ラチェット歯53に係合している。第2ラチェット爪89は、第1ラチェット爪49と同様に形成されている。すなわち、第2ラチェット爪89は、被係止面89aおよび被摺接面89bを備え、ラチェット歯53を下方に乗り越え可能、かつ上方に乗り越え不能に形成されている。第2ラチェット爪89は、ラチェット歯53の係止面53aと第2ラチェット爪89の被係止面89aとの接触により、ラチェット軸50の下方への相対移動を規制している。また、第2ラチェット爪89は、ラチェット歯53の摺接面53bを第2ラチェット爪89の被摺接面89bに対して上方に摺接させることで、第2突片部87の弾性変形を伴いながら径方向の外側に変位してラチェット歯53を乗り越えるので、ラチェット軸50の上方への相対移動を許容している。これにより、ラチェット軸50は、受筒部80に対する上昇を許容されかつ下降を規制されている。
【0038】
受皿90は、有底筒状に形成されて内容物Xの下端部を保持する保持部91と、保持部91の底壁から下方に延びてラチェット軸50の凹部51に嵌入された軸部92と、を備える。保持部91の内側には、内容物Xの下端部が嵌入されている。保持部91の底壁は、ラチェット軸50の上端面に上方から当接している。
図1に示すように、保持部91の外径は、ノズル筒20の孔部21の内径よりも大きい。これにより、保持部91の上端縁はノズル筒20の段差面22にその下方から接触可能とされ、内容物Xが孔部21を通過することが許容されつつ受皿90が孔部21を通過することが規制されている。
【0039】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。
繰出容器1を使用する際には、最初にキャップ体30を下筒部10から取り外す。これにより、ノズル筒20が露出した状態となる。
【0040】
ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させると、ノズル筒20の回転に伴ってラチェット筒部40も下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転する。これにより、ラチェット筒部40が中継筒12に対して周方向の第1側R1に回転し、カム機構60が作動する。具体的には、ラチェット筒部40に設けられた上カム部65の上カム面66が中継筒12に設けられた下カム部61の下カム面62に接触し、ラチェット筒部40および中継筒12の相対回転に伴って上カム面66および下カム面62が摺接することで、
図6に示すように下筒部10に対してラチェット筒部40が上昇する。
【0041】
ここで、ラチェット軸50のラチェット歯53には、ラチェット筒部40の第1ラチェット爪49、および受筒部80の第2ラチェット爪89が係合している。第1ラチェット爪49は、ラチェット軸50の下方への相対移動を規制している。このため、ラチェット筒部40が下筒部10に対して上昇すると、ラチェット軸50も上昇する。一方で、第2ラチェット爪89は、ラチェット軸50の上方への相対移動を許容し、かつ下筒部10に対する上昇を規制されている。このため、ラチェット軸50は、第2ラチェット爪89にラチェット歯53を乗り越えさせつつ、下筒部10に対してラチェット筒部40とともに上昇する。このとき、カム機構60は、下筒部10に対してラチェット筒部40をラチェット歯53のピッチと一致する距離だけ上昇させる。これにより、ラチェット軸50は、ラチェット歯53の1歯分だけ下筒部10に対して上昇する。
【0042】
中継筒12に対するラチェット筒部40の回転が進み、下カム部61および上カム部65それぞれの先端部が互いに摺接する時点で、中継筒12に対してラチェット筒部40が上昇端位置に達する。すると、その後は下カム部61がラチェット筒部40の外フランジ44に接近可能、かつ上カム部65が中継筒12の小径部13の上端面に接近可能な状態となる。すなわち、下カム部61が設けられた中継筒12に対して、上カム部65が設けられたラチェット筒部40が下降可能な状態となる。ラチェット筒部40は、付勢部材70によってノズル筒20に対して下方に付勢されている。ノズル筒20は下筒部10に対して上昇不能に設けられているので、ラチェット筒部40はノズル筒20に対して下降する。この際、第2ラチェット爪89は、ラチェット軸50の下降を規制している。一方で、第1ラチェット爪49は、ラチェット筒部40に対するラチェット軸50の上昇、すなわちラチェット軸50に対するラチェット筒部40の下降を許容している。このため、
図7に示すように、ラチェット筒部40は、第1ラチェット爪49にラチェット歯53を1歯乗り越えさせつつ、下筒部10に対してラチェット歯53の1歯分だけ下降する。
【0043】
以上により、ラチェット軸50に支持された内容物Xをラチェット歯53の1歯分だけ上昇させて、ノズル筒20の上端開口部20aから繰り出すことができる。ところで、ノズル筒20の回転操作によってラチェット軸50が上昇すると、付勢部材70の付勢力がカム機構60に作用し、ノズル筒20に対する回転抵抗として発生する。このため、ノズル筒20の回転操作によって上カム部65が下カム部61を乗り越えてラチェット軸50がラチェット歯53の1歯分上昇する度に、ノズル筒20に作用する回転抵抗が増減する。なお、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させると、上カム部65の上規制面67が下カム部61の下規制面63に接触し、それ以上のラチェット筒部40および中継筒12の相対回転が規制される。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態によれば、内容物Xをラチェット歯53の1歯分ずつノズル筒20から繰り出すことができる。したがって、繰出容器1によれば、内容物Xの出し過ぎを抑制することが可能となる。
【0045】
また、ノズル筒20の回転操作によってラチェット軸50がラチェット歯53の1歯分上昇する度にノズル筒20に作用する回転抵抗が増減するので、内容物Xがラチェット歯53の1歯分繰り出される度に、下筒部10およびノズル筒20に触れる使用者にクリック感を付与することができる。したがって、ノズル筒20を回転させすぎることを抑制して、内容物Xの出し過ぎを抑制できる。
【0046】
また、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させた場合には、上カム部65と下カム部61の下規制面63とが接触した時点でそれ以上の回転が規制されるので、内容物Xを繰り出す際にノズル筒20を回転させる方向を使用者に直感的に認識させることができる。
【0047】
また、ラチェット歯53のピッチは、カム機構60によってラチェット筒部40が下筒部10に対して上昇する距離と一致している。この構成によれば、カム機構60によってラチェット軸50が下筒部10に対して上昇端位置に達した時点で第2ラチェット爪89をラチェット歯53に係合させることができる。このため、ラチェット筒部40がラチェット軸50に対して下降を開始する際に、ラチェット軸50が第1ラチェット爪49に引き摺られて下方に変位することを抑制できる。また、ラチェット筒部40がラチェット軸50に対して下降端位置に達した時点で第1ラチェット爪49をラチェット歯53に係合させることができる。このため、繰り出した内容物Xが使用時に上下方向に変位することを抑制できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る繰出容器1Aの第2実施形態について図面を参照して説明する。第2実施形態では、ラチェット筒部40がノズル筒20に対して周方向の第2側R2のみ回転不能となるように設けられている点で、第1実施形態と異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態では周方向のうち上方から見て時計回りに周回する方向を第1側R1と定義し、その反対方向を第2側R2と定義する。
【0049】
図8および
図9に示すように、繰出容器1Aは、ノズル筒20に対するラチェット筒部40の周方向第1側R1の回転を許容するとともに周方向第2側R2の回転を規制する回転ラチェット機構100(回転規制部)を備える。これによりラチェット筒部40は、ノズル筒20に対して周方向の第2側R2のみ回転不能となっている。ただし、ラチェット筒部40は、ノズル筒20に対して周方向の第2側R2に360°未満の範囲で空転するように設けられていてもよい。回転ラチェット機構100は、ノズル筒20の内周面に設けられた係合突起27と、ラチェット筒部40に設けられた係合腕48と、を備える。
【0050】
ノズル筒20は、第1実施形態の嵌合リブ26に替えて、係合突起27を備える。係合突起27は、ノズル筒20の内周面に複数(図示の例では6個)突設されている。複数の係合突起27は、周方向に間隔をあけて配置されている。係合突起27は、周方向の第1側R1を向く係合面27aと、周方向に対して傾斜して周方向の第2側R2かつ係方向の内側に向く非係合面27bとを有する。係合突起27の平面視形状は、係方向の外側から内側に向かうに従い周方向の幅が漸次狭まるように形成されている。
【0051】
ラチェット筒部40は、第1実施形態の外フランジ44に替えて、鍔部46および係合腕48を備える。鍔部46は、周方向に複数(図示の例では2個)設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。鍔部46は、上ガイド筒41における上下方向の中間部から径方向の外側に突出している。鍔部46は、周方向に沿って円弧状に延びている。鍔部46の外周面は、ノズル筒20の係合突起27に摺接可能に近接している。鍔部46の上面には、付勢部材70の下端部が上方から当接している。鍔部46の下面には、上カム部65が突設されている。係合腕48は、周方向に鍔部46と同数設けられて、容器軸O回りに等角度間隔で配置されている。係合腕48は、周方向に沿って円弧状に延びている。係合腕48における周方向の第1側R1の端部は、鍔部46における周方向の第2側R2の端部に連なっている。係合腕48は、上ガイド筒41の外周面から離間し、周方向の第2側R2の先端部が径方向の内側に変位するように弾性変形可能とされている。係合腕48の先端部には、周方向の第2側R2を向き係合突起27の係合面27aに係合する先端面48aが形成されている。
【0052】
次に、上述した繰出容器1Aの作用について説明する。
ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させると、ラチェット筒部40の係合腕48の先端面48aがノズル筒20の係合突起27の係合面27aに係合する。このため、ラチェット筒部40がノズル筒20と共回りして下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転する。これにより、第1実施形態と同様に、カム機構60が作動して下筒部10に対してラチェット筒部40が所定の距離上昇し、内容物Xがノズル筒20の上端開口部20aから繰り出される。
【0053】
一方で、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第2側R2に回転させると、ノズル筒20の係合突起27がラチェット筒部40の係合腕48の先端部に周方向の第1側R1から接触して第2側R2に押し、ラチェット筒部40がノズル筒20と共回りする。下筒部10に対するノズル筒20の回転が進むと、上カム部65の上規制面67が下カム部61の下規制面63に接触し、それ以上のラチェット筒部40および中継筒12の相対回転が規制される。すると、ラチェット筒部40の係合腕48がノズル筒20の係合突起27の非係合面27bに摺接して係合突起27を乗り越える。これにより、下カム部61および上カム部65によってラチェット筒部40が下筒部10に対する回転を規制された状態で、ノズル筒20がラチェット筒部40に相対回転する。よって、下筒部10に対してラチェット筒部40を周方向の第2側R2に回転させた際に下カム部61および上カム部65に大きな力が作用して繰出容器1Aが破損することを抑制できる。
【0054】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、ノズル筒20を下筒部10に対して周方向の第1側R1に回転させることで内容物Xが上昇するように形成されているが、これに限定されない。すなわち、ノズル筒を下筒部に対して周方向の第2側R2に回転させることで内容物が上昇するように形成されていてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、ラチェット軸50がラチェット筒部40に対して回転不能、かつ下筒部に対して回転可能に設けられているが、これに限定されない。例えば、ラチェット軸がラチェット筒部に対して回転可能、かつ下筒部に対して回転不能に設けられていてもよい。この場合、第2ラチェット爪を下筒部と一体的に設けることが可能となる。なお、ラチェット軸のうち第1ラチェット爪が係合し得る部分の外周面の全周にラチェット歯を設けることで、ラチェット軸およびラチェット筒部が相対回転しても第1ラチェット爪をラチェット歯に係合させることができる。なお、ラチェット軸がラチェット筒部および下筒部の両方に対して回転可能に設けられていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、カム機構60を構成する下カム部61および上カム部65の両方がカム面を備えている。すなわち、下カム部61および上カム部65の両方がカム本体として機能するとともに、他方に対するフォロアとしても機能している。しかしながらこれに限定されず、下カム部61および上カム部65の一方を、カム面を有さず他方のカム部のカム面に摺接する凸状の構造体に替えてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、下カム部61および上カム部65が下規制面63および上規制面67を備えることにより、下筒部10に対するノズル筒20の周方向の第2側R2の回転を規制しているが、これに限定されない。下カム部および上カム部の少なくともいずれか一方が周方向の第1側R1を向く傾斜面(カム面)と周方向の第2側R2を向く傾斜面(カム面)とを備えていてもよい。これにより、ノズル筒20を下筒部10に対していずれの方向に回転させてもラチェット筒部を下筒部10に対して上昇させることができる。よって、ノズル筒20を下筒部10に対していずれの方向に回転させても内容物を繰り出すことが可能な繰出容器とすることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、ラチェット軸50が受皿90を介して内容物Xを内容物Xの下方から支持しているが、これに限定されない。ラチェット軸は、内容物と一体に上下動可能に設けられていればよく、内容物を内容物の下方から直接支持していてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ラチェット軸50の外周面に一対の平面状の切欠52が形成されているが、これに限定されない。ラチェット軸はラチェット筒部および受筒部に対して相対回転不能に形成されていればよい。例えば、切欠を周方向の1箇所のみに設けてDカット面としてもよいし、切欠を周方向の3箇所以上に設けてもよい。また、切欠を曲面状に形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、カム機構60が下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる距離をラチェット歯53のピッチに一致させているが、これに限定されない。カム機構60が下筒部10に対してラチェット筒部40を上昇させる距離は、ラチェット歯のピッチよりも大きくてもよい。これにより、ノズル筒20を下筒部10に対して回転させることで、内容物を少なくともラチェット歯の1ピッチ以上繰り出すことができる。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,1A…繰出容器 10…下筒部 20…ノズル筒 20a…上端開口部 40…ラチェット筒部(爪付筒部) 49…第1ラチェット爪(第1係止爪) 50…ラチェット軸(被係止軸) 53…ラチェット歯(被係止歯) 60…カム機構(規制部) 70…付勢部材 89…第2ラチェット爪(第2係止爪) 100…回転ラチェット機構(回転規制部) R1…周方向の第1側(他方向) R2…周方向の第2側(一方向) X…内容物