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特許7325407ガレクチン-3タンパク質に対する特異的結合分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ガレクチン-3タンパク質に対する特異的結合分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230804BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230804BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230804BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230804BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230804BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230804BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230804BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230804BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230804BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230804BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230804BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230804BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
A61P29/00
A61P9/10 101
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K49/00
G01N33/53 D
C07K16/18
C12P21/08
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020519382
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2018077131
(87)【国際公開番号】W WO2019068863
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】17306337.1
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】320013274
【氏名又は名称】ラボラトワール フランセ デュ フラクションヌメント エ デ バイオテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】フォンテーヌ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】モンドン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ-トレノー,ジェニー
(72)【発明者】
【氏名】ジャコバン-ヴァラ,マリ-ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】チェルッティ,マルティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】クロフェント-サンチェス,ジゼル
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツァート,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ヘマドウ,オドレイ
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/004093(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/112559(WO,A1)
【文献】特表2017-512205(JP,A)
【文献】特表2012-507724(JP,A)
【文献】特表2010-533850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61P
A61K
C12P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する特異的結合分子であって、前記特異的結合分子は、
配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、そして配列番号3、配列番号4および配列番号5からそれぞれ構成されるCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、そして配列番号6、配列番号7および配列番号8からそれぞれ構成されるCDR、CDRおよびCDR領域を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、
を含む、特異的結合分子。
【請求項2】
特異的結合分子がヒト化特異的結合分子である、請求項1に記載の特異的結合分子。
【請求項3】
前記特異的結合分子が抗体またはその断片である、請求項1又は2に記載の特異的結合分子であって、前記抗体またはその断片が、抗原に結合する機能を果たす、特異的結合分子。
【請求項4】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項3に記載の特異的結合分子。
【請求項5】
前記断片が、Fab、F(ab’)若しくはFv断片、またはscFv分子である、請求項3に記載の特異的結合分子。
【請求項6】
配列番号10に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の特異的結合分子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子をコードする核酸。
【請求項8】
配列番号11の核酸配列に対して少なくとも85%の同一性を含む、請求項1~3および5~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子をコードする核酸。
【請求項9】
配列番号11の核酸配列を有する、請求項1~3およびのいずれか一項に記載の特異的結合分子をコードする核酸。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子と、ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片とを含む、融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子と、ヒトIgG1 Fc断片とを含む、融合タンパク質。
【請求項14】
医薬品として使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
炎症性疾患の予防および/または治療に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
アテローム性動脈硬化症の予防および/または治療に使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
活性物質として治療有効量の請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項18】
診断剤として使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項19】
炎症性疾患のインビボ診断方法で使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
アテローム性動脈硬化症のインビボ診断方法で使用するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
診断剤としての請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12に記載の融合タンパク質と、担体とを含む、診断用組成物。
【請求項22】
ガレクチン-3タンパク質の検出用診断キットであって、前記キットが、請求項1~6のいずれか一項に記載の特異的結合分子または請求項12の融合タンパク質を含む、診断キット。
【請求項23】
炎症性疾患に罹患しているまたは罹患している疑いのある患者における、請求項22に記載のガレクチン-3タンパク質の検出用診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する特異的結合分子、その産生方法およびその使用方法に関する。
【0002】
レクチンは、特異的な炭化水素構造に結合するタンパク質である。これにより特定の複合糖質を認識することができる。ガレクチンは、ベータ-ガラクトシドと結合する、構造的に関連したレクチンのファミリーであり、その数は10を超える。ガレクチン-3は、ガレクチンファミリーに属する、26kDaのベータ-ガラクトシド結合タンパク質である。このタンパク質は、カルボキシ末端糖鎖認識ドメイン(CRD)およびアミノ末端縦列反復配列から構成される。ガレクチン-3は、多くの臓器の上皮ならびにマクロファージ、樹状細胞およびクッパー細胞を含む種々の炎症細胞に見られる。ガレクチン-3の発現は、炎症中、細胞増殖中、細胞分化中およびウイルスタンパク質によるトランス活性化を介して増加する。ガレクチン-3は、心臓線維化、心臓リモデリングおよび炎症に関与している。多くの研究により、ガレクチン-3が種々の機構を介して炎症を調節し得ることが示されてきた。内在性ガレクチン-3は、肺、肝臓および心臓における線維化、糖尿病、虚血性心疾患、アレルギー性疾患など、種々の炎症性疾患の原因に関与していると示されてきた。ガレクチン-3は、ヒトアテローム動脈硬化プラーク内のマクロファージに高く発現することが知られている。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、大きい径または中程度の径を有する、動脈に悪影響を及ぼす慢性および全身性炎症性疾患である。この病状は、安定または不安定アテロームプラークへと成長し得る、脂質に富んだプラークを動脈壁内に形成することによって特徴づけられる。安定アテロームは、アテローム性動脈硬化病変の拡張による重篤な管腔閉塞が生じ、その結果の1つとして虚血が存在するまで無症状の傾向がある。不安定アテロームは、破裂および血栓形成といった高いリスクがある、薄い線維性被膜で覆われた大きい脂質コアが存在するため、より大きな影響がある。こうした事象は、脳卒中や心筋梗塞の病態を誘発する。現在、患者への動脈内膜切除術の提案前には、内頸動脈の高度狭窄症(>70%の管腔狭窄)が生じると想定されている。ただし管腔狭窄の程度は、高リスク患者の特定にいつでも有効であるわけではなく、動脈血管床における閉塞が50%未満でも大きな事象へとつながり得る。アテローム性動脈硬化症は、西欧世界では主要な死因であり、年間1900万人が死亡する。
【0004】
したがって、新規かつ有効な形態の炎症性疾患の診断または治療、特に、副作用が低い局所投与による持続的で制御された療法を提供可能な治療に対する必要性が存在している。炎症性疾患、詳細にはアテローム性動脈硬化症の予防、治療および診断を行うため、本発明者らは、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する、新規の特異的結合分子を開発した。
【0005】
本発明は、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する特異的結合分子に関し、当該特異的結合分子は、
-配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、
を含む。
【0006】
詳細には、本発明者らは本発明の特異的結合分子は、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合可能であることを示した。
【0007】
本明細書にて使用する場合、「特異的結合分子」は互いに対して結合特異性を有する一対の分子のメンバーである。特異的結合対のメンバーは、天然に誘導されるか、または全体的もしくは部分的に合成して産生されてよい。分子の対の一方のメンバーは、その表面上に突起または空隙であり得る領域を有する。これは、分子の対の他方のメンバーの特定の空間的組織または極性組織に特異的に結合し、それゆえに補完的である。したがって、対の両メンバーは、互いに特異的に結合する特性を有する。特異的結合対の型の事例には、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質がある。本発明は、一般には抗原-抗体型反応に関係する。本発明の特異的結合分子は、他の分子に対するよりもガレクチン-3タンパク質に対し大きな親和力で結合する。例えば、この分子はガレクチン-3タンパク質に対して特異的に結合する。ガレクチン-3タンパク質に対して結合する特異的結合分子には、抗ガレクチン-3タンパク質抗体およびアプタマーが挙げられる。典型的には、特異的結合分子は、約10-6M未満、より詳細には約10-7M未満、または10-8M未満または10-9M未満または更に低い親和力(KD)により結合する。
【0008】
用語「KD」は、特定のscFv抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。典型的には本発明の特異的結合分子は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いるビアコア(Biacore)を用いて測定、またはOctet HTX機器によるバイオレイヤー干渉法(BLI)技術を用いて測定した場合、約10-6M未満、より詳細には約10-7M未満または10-8M未満または10-9M未満または更に低い平衡解離定数(KD)により標的抗原へと結合する。
【0009】
有利な実施形態では、特異的結合分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、特異的結合分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、特異的結合分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0010】
有利な実施形態では、特異的結合分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、特異的結合分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、特異的結合分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0011】
当該技術分野で既知の「同一性」とは、配列同士を比較することで決定される、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係性である。当該技術分野では、同一性はポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列類似度もまた意味する。場合によっては、この配列類似度は上記配列の紐間での一致度によって決定される。2つのポリペプチド配列間または2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定する方法は数多く存在しているが、同一性決定のために一般的に使用される方法は、コンピュータプログラム中で分類するものである。2つの配列間での同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラムとしては、EMBOSS(The European Molecular Biology Open Software Suite(2000)-Rice,P.Longden,I.and Bleasby,A.,Trends in Genetics 16,(6)pp276-277)、Clustal Omega、Needleが挙げられるがこれらに限定されない。
【0012】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当業者に既知の数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。2つの配列間を比較するための数学的アルゴリズムの一例としては、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268によるアルゴリズムであり、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877にあるように改良されたものが挙げられる。Altschul,et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムは、当該アルゴリズムを既に組み込んでいる。
【0013】
一実施形態では、特異的結合分子はヒト化され得る。分子が治療剤として使用されることになる場合、特異的結合分子のヒト化が所望されてよい。特に有利な実施形態では、特異的結合分子は、ヒト特異的結合分子である。

【0014】
特に有利な実施形態では、特異的結合分子は抗体であるか、またはその断片であり得る。本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫学的に免疫グロブリン分子の活性部分を指す。これはすなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子であり、天然または部分的もしくは完全に合成的にかのどちらかで産生される。当該用語は、抗体結合ドメインまたはそれと相同なドメインである結合ドメインを有する任意のポリペプチドまたはタンパク質もまた網羅する。こうしたポリペプチドやタンパク質は、天然源に由来する場合もあり得るが、部分的または完全に合成的に産生される場合もある。
【0015】
抗体は、「重」鎖および「軽」鎖と命名された、異なる2つのポリペプチド鎖から構成される大まかにはY字型の分子であり、ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖および2つの軽鎖から構成されている。各重鎖は、可変ドメイン(「VHドメイン」)および3つの定常ドメイン(「CH1」、「CH2」および「CH3」ドメイン)から構成される。一方、各軽鎖は、可変ドメイン(「VLドメイン」)および定常ドメイン(「CLドメイン」)から構成される。更に、各可変ドメイン(VHまたはVLドメイン)は、4つの「フレームワーク領域」(FR1、FR2、FR3およびFR4)および一般的に「相補性決定領域」1、2および3(CDR1、CDR2、CDR3)と命名された3つの高頻度可変性領域から構成される。前者は、より少ない抗体間での可変性を示し、可変ドメインの構造的フレームワークを形成するベータシートの形成に関与するものである。後者は、各ベータシート端部に折りたたまれた可変ドメイン内に並べられた3つのループに対応するものである。3つのCDR領域は、抗体または抗体断片の特異度を決定する上で決定的である。これは、3つのCDR領域が主に抗原に接触する可変ドメインの一部であり、特に各鎖のCDR3領域は、重鎖および軽鎖の再編成領域に対応し、他のものに比べて更により可変であり、かつ特異的抗原とより直接的に接触するためである。抗体例としては、免疫グロブリンのアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)およびそのアイソタイプのサブクラスが挙げられる。抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体は、本明細書では「mAb」と呼ばれる場合がある。
【0016】
抗体は多くの方法で修飾されることが可能であるが、用語「抗体」は、任意の特異的結合メンバーおよびまたは必要とされる特異度を有する結合ドメインを有する物質を網羅すると解釈される。したがって、本用語は、免疫グロブリン結合ドメインを含む任意のポリペプチドを含み、天然または全体的もしくは部分的に合成するもののいずれかである、抗体断片、誘導体、機能性同等物および抗体の相同体、ヒト化抗体を網羅する。これにより、別のポリペプチドへと融合される免疫グロブリン結合ドメイン、またはその同等物を含むキメラ分子も含まれる。
【0017】
本発明の特異的結合分子は抗体であり得る。より有利には、モノクローナル抗体であり得る。
【0018】
一実施形態では、本発明の特異的結合分子は、ガレクチン-3タンパク質に対するモノクローナル抗体であり、
-配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、
を含む。
【0019】
有利な実施形態では、モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。モノクローナル抗体の好適な重鎖可変ドメイン(VH)は、QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNNFGWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVRSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARQGSTYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号1)である。
【0020】
有利な実施形態では、モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0021】
モノクローナル抗体の好適な軽鎖可変ドメイン(VL)は、DIVMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTISSSLAWFQQRPGEAPNLLIYSASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYSCQQTYSAPPTFGGGTKLEIK(配列番号2)である。
【0022】
有利には、ガレクチン-3タンパク質に対するモノクローナル抗体は、
-配列番号3、配列番号4および配列番号5から構成されるCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、配列番号1の重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号6、配列番号7および配列番号8から構成されるCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、配列番号2の軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む。
【0023】
モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR1は、GDSVSSNNFG(配列番号3)である。
【0024】
モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR2は、TYYRSKWYN(配列番号4)である。
【0025】
モノクローナル抗体の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR3は、ARQGSTYFDY(配列番号5)である。
【0026】
モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR1は、QTISSS(配列番号6)である。
【0027】
モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR2は、SAS(配列番号7)である。
【0028】
モノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR3は、QQTYSAPPT(配列番号8)である。
【0029】
一実施形態では、本発明のモノクローナル抗体はヒト化されている。本発明のモノクローナル抗体は、抗体のアミノ酸配列を修飾することによってヒト化され得る。本発明の特異的結合分子の免疫原性を減少させる方法には、好適な抗体フレームワーク足場上へのCDRグラフト、または例えば変異誘発性により誘導される部位による可変表面残基のリモデリング、または他の一般的に使用される分子生物学的技術により実施される。ヒト化抗体は、例えばマウス抗体といった非ヒトの可変領域およびヒト抗体の定常領域を有する修飾抗体であってよい。一実施形態では、本発明のモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。
【0030】
別の有利な実施形態では、本発明の特異的結合分子は、抗体の断片であり得る。全抗体の断片は、結合抗原の機能を果たし得ることが示されている。結合断片の例としては、
(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片、
(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、
(iii)単抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片、
(iv)VドメインからなるdAb断片、
(v)単離されたCDR領域、
(vi)F(ab’)2断片であって、2つの連結されたFab断片を含む二価断片、
(vii)一本鎖可変断片分子(scFv)であって、VHドメインおよびVLドメインにおいて2つのドメインを関連付けさせ、抗原結合部位形成を可能にするペプチドリンカーによりこれらのドメインを連結する一本鎖可変断片分子(scFv)、
(viii)二重一本鎖Fv二量体、
(ix)「二重特異性抗体」であって、遺伝子の融合により構築される多価または多重特異性断片、
(x)Fc部分を有する2つのscFv断片によりなるscFv-Fcが挙げられる。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖の第1(アミノ最末端)定常領域ドメインを含む。これは例えば、Kabatナンバリングシステムではおおよそ114~223の位置(EU位置118~215)から延びるものである。CH1ドメインは、VHドメインに隣接しており、アミノ末端は免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に隣接している。また、CH1ドメインは、免疫グロブリン重鎖のFc領域の一部を形成しない。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「CLドメイン」は、免疫グロブリン軽鎖の定常領域ドメインを含む。これは例えば、Kabat位置ではおおよそ107A~216の位置(EU位置108~214(カッパ))から延びるものである。カッパCドメイン向けのEu/Kabat変換表を以下に提供する。CLドメインはVLドメインに隣接しており、免疫グロブリン軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の特異的結合分子は、一本鎖可変断片(scFv)分子である。本発明の文脈内では、用語「一本鎖可変断片」または「scFv分子」または「scFv断片」または「scFv抗体」または「scFv」は、ペプチドリンカーを介して連結された抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む、折りたたまれた一本のポリペプチドを指す。当該scFv分子においては、VHドメインおよびVLドメインは、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHの順のいずれかであり得る。こうしたドメインの産生を促進する以外に、scFv分子は、スペーサを介してscFvと連結されるタグ分子を含有してよい。したがって、scFv分子は、対応する抗体の免疫原性定常ドメイン以外を認識する抗原へと関連付けられるVHドメインおよびVLドメインを含む。
【0034】
「ペプチドリンカー」は、柔軟なペプチドを意味し、scFv分子を適切に折りたたむことが可能である。これはすなわち、VHドメインおよびVLドメインを適切に折りたたみ、これらをまとめることが可能ということである。更に当該ペプチドリンカーは、単量体機能化単位への折りたたみが可能でなければならない。有利には、ペプチドリンカーは重鎖可変ドメイン(VH)と軽鎖可変ドメイン(VL)の間に位置づけられる。scFvがVHからVLへの向き(VH-リンカー-VL)で会合される場合、3~12個の残基のリンカーを有するscFvは、機能性Fvドメインへと折りたたむことができない。代わりに別の分子と関連付けられ、二価二量体を形成する。3個未満に残基を減少させることで、三量体が発生する。この場合、好適なリンカーは、結果として少なくとも12個、好ましくは25個未満のアミノ酸、好ましくは15~25個のアミノ酸、好ましくは16~22個のアミノ酸または好ましくは18~21個のアミノ酸を有する必要がある。また、好ましくは、好適なリンカーのアミノ酸配列に対して高い比率のグリシン残基を含む必要があり、好ましくは、好適なリンカーの少なくとも50%のアミノ酸はグリシン残基である。18個のアミノ酸残基リンカーは、使用され得る最小の配列サイズである。次いで好適なペプチドリンカーは、18~25個のアミノ酸、好ましくは18~21個のアミノ酸を有する必要がある。有利には、本発明の好適なペプチドリンカーは、18個のアミノ酸を有する。好適なペプチドリンカーの例としては、配列番号9に対して少なくとも85%の同一性を有するペプチドが挙げられる。有利には、ペプチドリンカーは、配列番号9に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%の同一性を有するペプチドを含む。好適なリンカーの一例は、配列EFGGGGSGGGGSGGGGSR(配列番号9)のリンカーである。
【0035】
特に有利な実施形態では、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)分子は、
-配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号9に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドリンカーと、
-配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(VL)と、
を含む。
【0036】
有利な実施形態では、一本鎖可変断片(scFv)分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、一本鎖可変断片(scFv)分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、一本鎖可変断片(scFv)分子の重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1のアミノ酸配列を有する。scFv分子の好適な重鎖可変ドメイン(VH)は、QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNNFGWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVRSRITINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARQGSTYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号1)である。
【0037】
有利な実施形態では、一本鎖可変断片(scFv)分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、一本鎖可変断片(scFv)分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、一本鎖可変断片(scFv)分子の軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。scFv分子の好適な軽鎖可変ドメイン(VL)は、DIVMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQTISSSLAWFQQRPGEAPNLLIYSASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYSCQQTYSAPPTFGGGTKLEIK(配列番号2)である。
【0038】
有利な実施形態では、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)分子は、
-配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号9のアミノ酸配列を有するペプチドリンカーと、
-配列番号2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む。
【0039】
有利には、ガレクチン-3タンパク質に対するscFv分子は、
-配列番号3、配列番号4および配列番号5から構成されるCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、配列番号1の重鎖可変ドメイン(VH)と、
-配列番号9のアミノ酸配列を有するペプチドリンカーと、
-配列番号6、配列番号7および配列番号8から構成されるCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、配列番号2の軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む。
【0040】
scFv分子の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR1は、GDSVSSNNFG(配列番号3)である。
【0041】
scFv分子の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR2は、TYYRSKWYN(配列番号4)である。
【0042】
scFv分子の重鎖可変ドメイン(VH)の好適なCDR3は、ARQGSTYFDY(配列番号5)である。
【0043】
scFv分子の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR1は、QTISSS(配列番号6)である。
【0044】
scFv分子の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR2は、SAS(配列番号7)である。
【0045】
scFv分子の軽鎖可変ドメイン(VL)の好適なCDR3は、QQTYSAPPT(配列番号8)である。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明による当該scFv分子はペプチドタグを更に含むことができる。これは特に、ナノ物体、任意選択的にはコアscFv抗体(VHドメインおよびVLドメインならびにペプチドリンカーを含む)とペプチドタグの間の短いペプチドスペーサへとscFv分子をグラフトする場合には、精製または表面の機能化に有利である。
【0047】
精製用として好適なペプチドタグの例としては、His6タグ(HHHHHH、配列番号15)、タンパク質Cタグ(HPC4)(EDQVDPRLIDGK、配列番号16)、strepタグ(WSHPQFEK、配列番号17)、V5エピトープタグ(GKPIPNPLLGLDST、配列番号18)、短いバージョンのV5エピトープタグ(IPNPLLGLD、配列番号19)またはc-mycタグ(EQKLISEEDL、配列番号20)が挙げられる。特にナノ物体へとscFv分子をグラフトする場合、表面を機能化するために好適なペプチドタグの例としては、ソルターゼLPETG(GGGGSLPETGGAA、配列番号21)、IgM-Tail(PTLYNVSLVMSDTAGTCY、配列番号23)、CC-Tag(GGGGSCCAA、配列番号22)が挙げられる。
【0048】
好適なペプチドスペーサの例としては、配列番号24に対して少なくとも85%の同一性を有するペプチドが挙げられる。有利には、ペプチドスペーサは、配列番号24に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%の同一性を有するペプチドを含む。
【0049】
好適なペプチドスペーサの例としては、配列GGTGGCGGTGGCTCGGGCGGTGGTGGGTCTGGTGGCGGCGGT(配列番号24)のペプチドスペーサである。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明による当該scFv分子は完全ヒトscFv分子である。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明はガレクチン-3タンパク質に対する特異的結合分子に関し、配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸を含むか、またはこれからなる。この中で、当該245アミノ酸配列の1~120および139~245のアミノ酸はそれぞれ配列番号1および配列番号2から構成される。
【0052】
特定の実施形態では、本発明はガレクチン-3タンパク質に対する抗体に関し、配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸を含むか、またはこれからなる。この中で、当該245アミノ酸配列の1~120および139~245のアミノ酸はそれぞれ配列番号1および配列番号2から構成される。
【0053】
特定の実施形態では、本発明はガレクチン-3タンパク質に対するscFv分子に関し、配列番号10と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸を含むか、またはこれからなる。この中で、当該245アミノ酸配列の1~120、121~138および139~245のアミノ酸はそれぞれ配列番号1、配列番号9、配列番号2から構成される。
【0054】
本発明はまた、上記のような特異的結合分子をコードする核酸配列に関する。
【0055】
特定の実施形態では、特異的結合分子をコードする核酸配列は、配列番号11に対して核酸配列と少なくとも85%の同一性を含む。有利には、核酸配列は、配列番号11に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を含む。特定の実施形態では、特異的結合分子をコードする核酸配列は、配列番号11の核酸配列を有する。
【0056】
特定の実施形態では、当該特異的結合分子は、配列番号10を含むか、またはこれからなり、特異的結合分子の核酸配列は、配列番号11もしくは例えば遺伝子コードを縮重した結果としての配列番号10をコードする任意の誘導された核配列を含むか、またはこれからなる。
【0057】
本発明の別の目的は、例えばウイルスベクターまたはプラスミドベクターといった発現ベクターである。これは、本明細書で定義されるような特異的結合分子をコードする核酸配列を含む。本発明の文脈では、用語「ベクター」は、所望のコード配列を含有するポリヌクレオチド配列および操作可能な結合を用いた制御配列を指す。こうした配列を用いて変換された宿主は、コードされたタンパク質を産生することができる。ベクターは選択された宿主細胞内で自律的に複製してもよく、または問題となっている宿主細胞に対する組込みベクターであってよい。当該ベクターは当業者によく知られた方法により調製される。得られたクローンは、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、遺伝子銃の使用、ポリカチオン剤、熱ショックまたは化学的方法といった標準的な方法で好適な宿主細胞へと導入されてよい。
【0058】
本発明の別の目的は、当該1つまたは複数のベクターによって遺伝子導入された宿主細胞である。宿主細胞は、例えば細菌細胞だけでなく、酵母細胞または詳細には哺乳動物細胞などの動物細胞といった原核生物系または真核生物系の中から選択されてよい。昆虫細胞または植物細胞もまた使用されてよい。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、特異的結合分子が抗体である場合、この抗体は結果的に宿主細胞における組換えにより産生され、1つまたは複数のベクターを用いて変換される。このベクターにより、抗体の重鎖および/または軽鎖に対し、ヌクレオチド配列コードの発現および/または分泌が可能となる。ベクターは通常、プロモータ、翻訳開始および終止シグナル、ならびに好適な転写調節領域を含む。ベクターは、宿主細胞内で安定した方法で維持され、翻訳されたタンパク質の分泌を特定する特異的なシグナルを任意選択的に有し得る。使用される宿主細胞によっては、こうした種々の要素は当業者により選択および最適化される。当該ベクターは当業者により一般的に使用される方法により調製される。得られたクローンは、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、遺伝子銃の使用、ポリカチオン剤の使用、熱ショックまたは化学的方法といった標準的な方法で好適な宿主へと導入されてよい。宿主細胞は、例えば細菌細胞だけでなく、酵母細胞または詳細には哺乳動物細胞などの動物細胞といった原核生物系または真核生物系から選択されてよい。モノクローナル抗体産生用の好ましい哺乳動物細胞は、ラット系統YB2/0、ハムスター系統CHOである。後者は詳細にはCHO dhfr-およびCHO Lec13、PER.C6(商標)、EB66、HEK293、K562、NS0、SP2/0、BHKまたはCOSである。S2、Sf9、Sf21といった昆虫細胞を使用することもまた可能である。別の産生方式は、遺伝子導入生物内での組換え抗体の発現である。例えば植物または詳細にはウサギ、ヤギまたはブタといった遺伝子導入動物の乳においてである。遺伝子導入乳もまた、組換え抗体産生のための方法として使用され得る。
【0060】
好ましい実施形態によれば、抗体は、非ヒト遺伝子導入哺乳動物の乳内で産生され、遺伝子組換えを行ってこの糖タンパク質を産生する。哺乳動物は、例えば、ヤギ、雌ヒツジ、雌のバイソン、バッファロー、ラクダ、ラマ、マウスもしくはラット、またはウシ、雌ブタ、ウサギまたは雌ウマであってよい。
【0061】
乳腺により抗体は分泌される。これは遺伝子導入哺乳動物の乳内に存在することが可能であり、抗体の発現を組織によって制御することに関係している。こうした制御方法は当業者に周知である。動物の特定細胞内において、糖タンパク質を発現可能とする配列により、発現は制御される。こうした配列は、詳細には「WAP」、「ベータ-カゼイン」、「ベータ-ラクトグロブリン」型のプロモータ配列であり、ペプチドシグナル型の配列であり得る。好ましくは抗体は、5’ベータ-カゼインプロモータの制御下にあり、タンパク質の産生に必要とされるコード配列のシークエンスを含む発現ベクターを用いて、遺伝子導入ヤギの乳腺で産生される。遺伝子導入動物の乳から目的のタンパク質を抽出するプロセスは、欧州特許第0264166号に記載されている。
【0062】
有利には、1リットルの乳につき4グラムを超える抗体が産生され、有利には1リットルの乳につき5グラム、10グラム、15グラム、20グラム、25グラム、30グラム、35グラムを超える、有利には1リットルにつき最大70グラムの抗体が産生される。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、特異的結合分子がscFv分子である場合、scFv分子は、
1)ファージクローンから構成されるscFv分子ライブラリを調製する工程であって、該ファージクローンのそれぞれが、表面上にてscFv分子を発現する工程と、
2)抗原によりscFv分子ライブラリを選別することにより、該当する抗原に結合可能なscFv分子(「scFv-ファージ」)を発現するファージクローンを選択する工程と、を組み込むことによって産生され得る。
【0064】
有利な実施形態では、工程1)のscFv分子ライブラリは国際公開第2007/137616号に開示されている方法によって得られる。簡潔には、国際公開第2007/137616号に開示されている方法は、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドのランダム変異導入を実行する工程を含み、ランダム変異導入は、重鎖の可変領域および/または軽鎖の可変領域をコードする配列を含むポリヌクレオチドのライブラリに基づいて実行され、ランダム変異導入プロセスにより、可変領域をコードする配列の少なくとも70%に沿って無作為に分布した突然変異が引き起こされる。
【0065】
特に有利な実施形態によれば、scFv分子ライブラリはファージディスプレイにより発現され、インビボにて選択される。該当する抗原はガレクチン-3タンパク質である。
【0066】
特に有利な実施形態によれば、繊維状ヘルパーファージを対数期の組換えファージミド感染細菌へと加えた後に、ファージ表面にscFvを発現させることにより、scFv-ファージミドコンビナトリアルライブラリからscFvファージを得た。3ラウンドのバイオパニングをアテローム損傷したウサギに実行した。簡潔には、この手順は以下の通りであった。すなわち、scFv-ファージの2.4×1012のコロニー形成ユニット(cfu)を、アテローム性ウサギへと投与した。1時間循環させた後、このウサギを屠殺し、大動脈を回収した。大動脈に結合したscFv-ファージを異なる分画にて溶出させた。溶出されたscFv-ファージは、XL1-Blue細菌で再度増幅され、続いて上記のようにファージ表面にてscFvを発現した。増幅されたscFvファージを別のアテローム性動物へと再投与した。同様の手順に従ってラウンド2およびラウンド3を実施した。再投与されたコロニー形成ユニット数は、ラウンド2では4.8×1011、ラウンド3では3.9×1011であった。
【0067】
次いで、scFv-ファージをXL1-Blue細菌で増幅した。詳細には、この細菌はXL1-Blue大腸菌(E.coli)である。細胞をペレット化し、詳細には、50μg/ml~200μg/mlの間の濃度で、有利には100μg/mlの濃度であるアンピシリンおよび詳細には1%(w/v)~4%(w/v)、有利には2%(w/v)の濃度で、2xTY寒天(2TYGA)を含有するグルコース上に播く。これを少なくとも10時間、有利には16時間、20℃~40℃の温度、有利には30℃の温度でインキュベートする。バイオパニングの3度目のラウンド後、FACSスクリーニング用に、播いたクローンを2TYGA選択培地で満たされたディープウェルマスターブロックへと別々に採取する。
【0068】
本発明の別の目的は、上記のような特異的結合分子を含む融合タンパク質およびヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片に関する。有利には、ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片は、ヒトIgG1 Fc断片である。特定の実施形態では、ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片は、配列番号12に対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。有利には、ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片は、配列番号12に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特に有利な実施形態では、ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片は、配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0069】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号13に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号13である。
【0070】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号14に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.6%、少なくとも99.7%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%の同一性を有する核酸配列を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号14の核酸配列を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、当該融合タンパク質は、配列番号13を含むか、またはこれからなり、当該核酸配列は、配列番号14もしくは例えば遺伝子コードを縮重した結果としての配列番号13をコードする、任意の誘導された核配列を含むか、またはこれからなる。
【0073】
本発明における融合タンパク質の構築は、従来の分子クローニング技術に基づくものである。PCR合成法を使用し、上記融合タンパク質をベクターへとコードするDNAのクローニングを行った。融合タンパク質を発現するためのベクターは、分子生物学で一般的に使用されるプラスミドであってよい。シグナルペプチド配列は、細胞からのタンパク質分泌を保証するため、融合タンパク質のアミノ末端前方に含まれる。ベクター配列には、遺伝子発現を駆動するためのプロモータ、タンパク質翻訳のための開始シグナルおよび停止シグナル、ならびにポリアデニル化(ポリA)配列が含まれる。ベクターは抗生物質耐性遺伝子を含んでよく、細菌内でのプラスミド複製を促進させる。更に、ベクターはまた、安定した遺伝子導入細胞株の選択のため、真核生物細胞選択遺伝子を含んでよい。
【0074】
プラスミド構築後、融合タンパク質のDNA配列は配列決定により確認される。次いで、対応するタンパク質はプラスミドDNAを細胞内へと遺伝子導入することにより発現され得る。多くの発現系は、融合タンパク質発現用に利用可能である。哺乳動物細胞、細菌、酵母、昆虫細胞などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、融合タンパク質はscFv分子およびヒト免疫グロブリンG(IgG)Fc断片を含む。これらはそれぞれ上に記載された通りである。
【0076】
本発明はまた、医薬品として使用することを目的とした、特異的結合分子または上で定義したような融合タンパク質に関する。詳細には、本発明は炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、慢性腎疾患((Rebholz et al.,Kidney international,31 august 2017,「Plasma galectin-3 level are associated with the risk of incident chronic kidney disease」)、心房細動(Takemoto et al.,JACC Basic Transl Sci.,2016,vol 1(3),pages 143-154:「Galectin-3 regulates atrial fibrillation remodeling and predicts catheter ablation outcomes」)、がん(Fang et al.2017)、重篤な甲状腺腫瘍(D’alessandria et al.2016)または直腸がん(Tao et al.2017)、肥大型心筋症(Gawor et al.2017)、HIV感染症(Xue et al.2017;Wang et al.2014)の診断、予防および/または治療で使用することを目的とした特異的結合分子または融合タンパク質に関する。
【0077】
用語「予防(prevention)」または「予防(prophylaxis)」または「予防的治療(preventative treatment)」または「予防的治療(prophylactic treatment)」は、疾患の予防につながる治療、ならびに疾患の発生または疾患が生じるリスクを減少および/または遅延させる治療を含む。
【0078】
本発明によれば、特異的結合分子または融合タンパク質は、高い血清コレステロールにもかかわらずアテロームプラークの形成または進行を予防または低減させることに対し特に有用である。
【0079】
用語「治療」または「治癒的治療」は、治癒につながる治療または疾患の症状または疾患が引き起こす苦痛を緩和、改善および/または排除、低減および/または安定させるような治療として定義される。
【0080】
本発明によれば、特異的結合分子または融合タンパク質は、ガレクチン-3タンパク質を阻害またはこれと拮抗させることにより、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓疾患、心房細動、がん、重篤な甲状腺腫瘍または直腸がん、肥大型心筋症、HIV感染症の治療に特に有用である。結果として、アテロームプラークの形成または進行の低減、詳細には高い血清コレステロールにもかかわらず、特にアテロームプラーク体積の減少へとつなげる。
【0081】
本発明の別の目的は、活性物質として上で定義されるような、薬学有効量の特異的結合分子または融合タンパク質および少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関する。
【0082】
有利には、活性物質として上で定義されるような、治療有効量の特異的結合分子または融合タンパク質を含む医薬組成物は、炎症性疾患に罹患している対象または罹患している疑いのある対象に投与される。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0083】
一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は非ヒト動物であり、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギまたは霊長類である。
【0084】
本明細書で提供される治療有効量の抗体を、治療の必要がある対象に投与することに関する実施形態によれば、「治療有効」または「治療するための有効量」または「薬学的に有効」は、特異的結合分子または融合タンパク質または疾患状態を阻害するか、もしくは元に戻すため(例えば、炎症性疾患および好ましくはアテローム性動脈硬化症を治療するため)必要な組成物の量を示す。治療有効量の決定は、医薬品の毒性および有効性などの要因によって特異的に変化する。これらの要因は、効能、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度、好ましい投与方式といった他の要因によって異なる。毒性は、当該技術分野で周知の方法を使用して測定されてよい。有効性は、同様の教示を使用して測定されてよい。有効性は、例えば、アテロームプラークの体積減少によって測定され得る。したがって、薬学有効量は、臨床医が、毒物学的に許容可能であるが効果的であると見なす量である。
【0085】
投与量は、投与方式に応じて、局所的または全身的な、所望の薬物(例えば、特異的結合分子または融合タンパク質)レベルを達成するために適切に調整され得る。当該用量では対象における応答が不十分である場合、更に高い容量(または異なるより局所的な送達経路による高い有効量)が、患者が許容可能な程度まで使用されてよい。適切な全身レベルの抗体を得るために、1日につき複数回の投与も使用されてよい。適切な全身レベルは、例えば、薬物の患者のピークまたは維持される血漿レベルの測定によって決定され得る。「用量」および「投与量」は、本明細書では互換的に使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、対象に投与される特異的結合分子または融合タンパク質または医薬組成物の量は、毎週または2週間ごとまたは4週間ごとまたは8週間ごとに0.1mg~500mg/kg、毎週または2週間ごとまたは4週間ごとまたは8週間ごとに1~400mg/kg、毎週または2週間ごとまたは4週間ごとまたは8週間ごとに5~300mg/kgである。
【0087】
他の実施形態では、対象に投与される特異的結合分子または融合タンパク質または医薬組成物の量は、約0.05mg/m~2,000mg/m、詳細には10mg/m~2,000mg/mの範囲の用量である。詳細には、投与される単位用量は、患者あたり15mg~約3gまで変動し得る。
【0088】
投与される単位用量は、患者あたり100μg~約1gまで変動し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、提供される組成物は、インビボ用途に使用される。インビボにて意図される投与方式によっては、使用される組成物は例えば、錠剤、丸剤、粉末、カプセル、ゲル、軟膏、液体、懸濁液など、固体、半固体または液体の剤形であってよい。好ましくは、組成物は、正確な投与量を単回投与するに好適である、単位剤形で投与される。組成物はまた、所望される製剤によっては少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含んでよい。これらは、動物またはヒトへ投与するための医薬組成物を処方するために一般的に使用される水性ベースのビヒクルとして定義されている。希釈剤は、目的の特異的結合分子または融合タンパク質の生物学的活性に悪影響を与えないように選択される。当該希釈剤の事例としては、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス溶液が挙げられる。同様の希釈剤は、凍結乾燥した目的の組換えタンパク質を再構成するために使用されてよい。更に、医薬組成物はまた、他の薬剤、医薬品、担体、アジュバント、無毒性であり非治療的、非免疫原性の安定剤などを含んでよい。当該希釈剤または担体の有効量は、成分の可溶性、生物学的活性に関して薬学的に許容可能な製剤を得るために有効な量のことである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は滅菌状態である。
【0090】
インビボ治療中、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、眼内、膣内、直腸内を含む任意の経路によって投与される。関節内、静脈内および腹腔内の投与経路もまた使用されてよい。当業者は、治療すべき障害によって投与経路を変更することを認識している。例えば、本明細書による組成物または特異的結合分子または融合タンパク質は、経口、非経口、または局所投与を介して対象へと投与されてよい。一実施形態では、本明細書による組成物または特異的結合分子または融合タンパク質は、静脈内注入により投与される。
【0091】
全身的に送達することを所望する場合、組成物は例えば急速静注または持続投与といった注射による非経口投与のために処方されてよい。注射用製剤は、例えば防腐剤を添加したアンプルまたは複数用量容器といった単位剤形にて呈示されてよい。組成物は懸濁液、油性または水性ビヒクル中溶液またはエマルジョンなどの形態をとってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤といった処方用薬剤を含有してよい。
【0092】
非経口投与用の薬学的製剤は、水に可溶な形態である活性組成物の水溶液を含む。更には、活性組成物の懸濁液は、必要に応じて油性懸濁注射液として調製されてよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油またはエチルオレートもしくはトリグリセライドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポソームが挙げられる。水性懸濁注射液は、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してよい。これは例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランである。任意選択的には、懸濁液はまた、好適な安定剤または組成物の溶解度を増加させて、高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含有してよい。代替的には、活性組成物は、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱物質を含まない滅菌水を用いて構成するための粉末形態であってよい。
【0093】
経口投与の場合、医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フィラー(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容可能な賦形剤を用いて、例えば錠剤またはカプセルなどの従来手段で調製された形態をとってよい。錠剤は、当該技術分野で周知の方法によってコーティングされてよい。経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップまたは懸濁液の形態をとってよく、またはそれらは、使用前に水または他の好適なビヒクルを用いて構成するための乾燥製品として呈示されてよい。当該液体製剤は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂肪)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油)および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾアートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いた従来手段によって調製されてよい。製剤はまた、必要に応じて緩衝塩、香味剤、着色剤および甘味剤を含有してよい。1つまたは複数の成分は、抗体の経口送達が効果的であるように化学的に修飾されてよい。一般的に、企図される化学修飾は、抗体へ少なくとも1つの分子を付着させることであり、この場合、当該分子はa)タンパク質分解の阻害および(b)胃または腸管から血流への取り込みを可能にする。抗体の全体的な安定性の増加および体内循環時間の増加も望ましい。当該分子の例には、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロリンが挙げられる。使用可能と考えられる他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソランおよびポリ-1,3,6-チオキソカンである。上記にて示したように、薬学用途に好ましいのはポリエチレングリコール分子である。経口組成物の場合、放出場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸もしくは回腸)または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、十二指腸または腸の他の場所で物質を放出するような利用可能な製剤を有する。好ましくは、腸管内といった胃環境外にて、抗体を保護するか、または生物学的活性物質を放出することのいずれかにより、放出は胃環境の有害効果を避けられる。
【0094】
口腔内投与の場合、組成物は、従来手段で処方された錠剤またはトローチ剤の形態をとってよい。
【0095】
吸入による投与の場合には、本開示による使用のための組成物は、好適な噴霧剤を使用することによる、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの呈示形態で従来のように送達されてよい。好適な噴霧剤とは例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または別の好適なガスである。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は計量された量を送達するためのバルブを提供することにより決定されてよい。吸入剤または吸入器に使用するためであり、組成物の粉末混合物およびラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベースを含有した、例えばゼラチンのカプセルおよび薬包が処方されてよい。
【0096】
本明細書では、肺送達もまた企図されている。吸入し、血流へとつながる肺上皮細胞を横切りながら、組成物は哺乳動物の肺へと送達され得る。治療用製品を肺送達するために設計されている、当業者には既知である広範囲の機械的デバイスは、本開示の実践にて使用されることが企図されている。これはネブライザー、計量済容量の吸入器、粉末吸入器を含むがこれらに限定されない。
【0097】
本明細書に開示されている医薬組成物の経鼻送達も企図されている。本開示の医薬組成物は、治療用製品を鼻へと投与した後に肺に製品を沈着させる必要なく、経鼻送達により直接血流への経路を通ることができる。経鼻送達用の製剤には、デキストランまたはシクロデキストランを有するものが含まれる。
【0098】
例えばココアバターまたは他のグリセリドといった従来の坐薬ベースを含有する坐薬または停留浣腸剤などの組成物は、直腸内または膣内組成物中に処方されてよい。
【0099】
医薬組成物はまた、好適な固体もしくはゲル相の担体または賦形剤を含んでよい。当該担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
好適な液体または固体薬学調製形態は例えば、吸入用の水溶液または生理食塩溶液、マイクロカプセルにされるもの、渦巻形状にされるもの、微小金粒子上へコーティングされるもの、リポソーム内に含有されるもの、噴霧されるもの、エアロゾル、皮膚中への移植用ペレットまたは引っかくことで皮膚中へと導入されるための鋭い物体へと乾燥させたものといったものがある。医薬組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ、乳濁液、懸濁液、クリーム、飴または活性組成物の持続放出を伴う製剤を含む。これらの製剤中の賦形剤および添加剤および/または崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味料または可溶化剤といった助剤が上記のように慣習的に使用されている。医薬組成物は、種々の薬物送達系での使用に好適である。
【0101】
本発明の別の主題は、必要のある患者に炎症性疾患の予防的治療を行うための方法に関し、当該患者への特異的結合分子または融合タンパク質、または活性物質として治療有効量の特異的結合分子もしくは融合タンパク質および上で定義されるような少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物の投与を含む。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0102】
特に有利な実施形態では、本発明は、炎症性疾患の予防を目的とする医薬品の製造において、活性成分として、治療有効量の特異的結合分子または融合タンパク質を含む医薬組成物の使用に関する。
【0103】
特に有利な実施形態では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の予防を目的とする医薬品の製造において、活性成分として、治療有効量の特異的結合分子または融合タンパク質を含む医薬組成物の使用に関する。
【0104】
本発明の別の主題は、必要のある患者に炎症性疾患の治療を行うための方法に関し、当該患者への特異的結合分子または融合タンパク質または活性物質として治療有効量の特異的結合分子もしくは融合タンパク質および上で定義されるような少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物の投与を含む。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0105】
特に有利な実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療を目的とする医薬品の製造において、活性成分として、治療有効量の特異的結合分子または融合タンパク質を含む医薬組成物の使用に関する。
【0106】
特に有利な実施形態では、本発明は、アテローム性動脈硬化症の治療を目的とする医薬品の製造において、活性成分として、治療有効量の特異的結合分子または融合タンパク質を含む医薬組成物の使用に関する。
【0107】
本発明はまた、診断剤として使用することを目的とした、特異的結合分子または上で定義されるような融合タンパク質に関する。有利には、本発明は、医療用画像化または治癒的治療の有効性を診断モニタリングすることを目的とした診断用組成物の調製のため、上で定義されるような特異的結合分子または融合タンパク質および上で言及したような薬学的に許容可能な量の特異的結合分子または融合タンパク質の投与を含む、診断方法にする。医療用画像化システムの例には、コンピュータ断層撮影(CT)システム、X線システム(従来のシステムおよびコンピュータX線撮影(CR)を含むデジタルまたはデジタル化画像システムの両方が含まれる)、磁気共鳴(MR)システム、ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、超音波システムおよび核医学システムが含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
磁気共鳴画像法(MRI)での診断では、通常は生理食塩水などの注入による静脈内投与は、典型的には1~500μmolのGd/kg(例:ガドリニウムベースの分子:magnevist(登録商標)-100~300μmolのGd/kg、dotarem(登録商標)-100μmolのGd/kg、酸化鉄ベースの分子:endorem(登録商標)(15μmolのFe/kg)、sinerem(登録商標)(45μmolのFe/kg)、resovist(登録商標)(13μmolのFe/kg)、ferumoxsil(登録商標)またはlumirem(登録商標)(6μmolのFe/kg)、feridex(登録商標)(15μmolのFe/kg)の用量で実行される。薬学的に許容可能な単位用量は、キレートの性質、投与経路、および患者、特に研究される障害の性質によって変化することになる。静脈内投与および磁気共鳴による観察の場合、特異的結合分子または融合タンパク質の濃度は、典型的には0.001~0.5mol/Lであり、場合によっては0.001~0.1mmol/kgが患者に投与されることになる。例えば3回の用量(0.3mmol/kg)といった、より高い臨床容量もまた実施されてよい。投与速度、濃度、注入速度は、臨床的適応および製品仕様によって適用される。最終的にはMRI手順中の造影剤の挙動もまた考慮される。患者のデータ、最初に行われる試験投与、得られた濃度曲線を考慮した上で、実行可能な投与の調節をしながら任意の適切なプロトコールが使用される。プロトコールによっておよび取得途中の緩和曲線を考慮したプロトコール中に、注入速度を算出してよい(有利には、データ処理ツールにより自動的に算出される)。例えば、投与速度(rate/speed)がデータベースを考慮した最適濃度にとって十分ではない場合、注射器は自動的にMRI手順中の投与速度を増加させる。
【0109】
有利な実施形態では、本発明は、炎症性疾患のインビボ診断方法で使用するための、特異的結合分子または融合タンパク質に関する。特に有利な実施形態では、本発明は、磁気共鳴画像法(RMI)を使用することにより、炎症性疾患のインビボ診断方法で使用するための、特異的結合分子または融合タンパク質に関する。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。

【0110】
本発明によれば、特異的結合分子または融合タンパク質は、特異的に結合するガレクチン-3タンパク質によりアテローム性動脈硬化症の診断に特に有用である。この特異的に結合するガレクチン-3タンパク質は、アテローム性動脈硬化症におけるアテローム性動脈硬化炎症プロセスにて過剰発現し、これはアテロームプラークの形成または進行の特定につながる。
【0111】
本発明の別の主題は、診断剤および「担体」としての化学ナノ粒子といった、上で定義されるような特異的結合分子または融合タンパク質を含む診断用組成物に関する。「担体」とは、所望の解剖学的部位に化学ナノ粒子を輸送するための、結合タンパク質または融合タンパク質に結合された化学媒体を意図している。本発明によれば、担体は、固体または液体形態であり得る。担体の例としては、例えば酸化鉄、金-酸化鉄、鉄-コバルト、鉄-白金ナノ粒子といった金属ナノ粒子などのナノ粒子、フェライトまたはガドリニウムイオンを大部分含有するランタニド金属複合材、磁性リポソーム、ボロカプテイトナトリウム、磁性SLN(固体脂質ナノ粒子)、LON(脂質油性ナノ粒子)、磁性水中油滴型ナノエマルジョン、USPIO(超小型常磁性酸化鉄)、近赤外蛍光色素またはPETイメージング用の放射性分子(F18、Cu64)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
特に有利な実施形態では、担体はナノ粒子である。特に有利な実施形態では、上で定義されるような特異的結合分子または融合タンパク質は、ナノ粒子上に移植される。特に有利な実施形態では、診断用組成物は、磁気共鳴画像法(RMI)を使用することにより、炎症性疾患のインビボ診断方法で使用される。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0113】
実施形態によれば、こうした診断用組成物は、患者の診断プロファイルの関数、特に造影剤への患者の許容プロファイルの関数の通り、先行技術の診断用組成物と組み合わせてまたはその代わりに投与されるために選択されてよい。熟練者によりおよび/または自動的に任意のタグシステム(患者により携帯されるRFIDタグ)により選択が行われてよく、例えば、本用途の製剤などに最適な造影剤の選択など、投与タイプを調整してよい。
【0114】
本発明の別の主題は、好ましくは、炎症性疾患に罹患しているまたは罹患している疑いのある患者におけるガレクチン-3タンパク質の検出用診断キットに関するものであり、当該キットは、上で定義されるような特異的結合分子または融合タンパク質を含む、注射可能な溶液を含む。より好ましくは、炎症性疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0115】
本発明によれば、診断キットは特異的結合分子または融合タンパク質および対象体内のアテローム病変を選択的に特定するための担体を含む注射可能溶液、および有効量の注射可能溶液を対象へと静脈内投与するために構成された送達器具を含み、対象体内の複数のアテロームプラークを選択的に特定する。
【0116】
本発明によれば、診断キットは特異的結合分子または融合タンパク質および対象体内のアテローム病変を選択的に標識するための蛍光マーカーを含む注射可能溶液、および有効量の注射可能溶液を対象へと静脈内投与するために構成された送達器具を含み、対象体内の複数のアテロームプラークを選択的に特定する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1】本発明の特異的結合分子のベクターの制限酵素カードである。
図2図2は、アテローム標本から調製され、パラフィン包埋されたヒト、マウスおよびウサギのアテローム切片に結合する、HEK細胞内で産生された融合タンパク質の容量を示す。断面の異なる領域を同定した。すなわち、(a)外膜、(M)中間部、(I)内膜である。アテローム性動脈硬化したウサギ、マウスおよびヒト組織切片を用いてP3抗体をインキュベートした。最初の行は二次抗体のみに対応している(抗ヒトFc HRP)。下の行はscFv-Fc P3に対応する。二次ヤギ抗ヒトFc抗体を添加した後、HRPと結合させ、DAB基質キット試薬を用いて切片を明らかにした。scFv-Fc P3によって認識される抗原は、暗色染色によりその存在を示した。二次抗体の存在下では染色は観察されなかった。ヒト切片では低いバックグラウンド染色のみが認められた。スケールバーは100μmを表す。核をヘマトキシリンで対比染色した。
図3】P3 scFv-Fcまたは市販の制御抗体を用いたヒト動脈内膜切除による切片ならびにApoE-/-マウスおよびWTマウスの大動脈の免疫蛍光染色である。(A)ヒトの動脈内膜切除術による切片の二重免疫蛍光染色。Alexa-fluor488抗マウス抗体(+488-Ab抗Ms)を使用し、市販の抗ヒトガレクチン-3抗体(Ms抗ガレクチン-3)の特異的結合を明らかにした。Alexa-fluor568抗ヒト抗体(+568-Ab抗ヒト)を使用し、P3 scFv-Fc(ヒトP3 scFv-Fc)の特異的結合を明らかにした。ここでは、a)二次抗体のみ、b)一次抗体を指す。ヒト動脈内膜切除術の切片における共免疫蛍光染色からわかるように、P3 scFv-Fcおよび抗ヒトGal3抗体は重複染色を示した。サイズバー:50μm。(B)ApoE-/-マウスおよびWTマウスにおけるエクスビボ注射後の、P3 scFv-Fc蛍光肉眼検査。ヒトIgGをネガティブコントロール抗体として使用した。P3 scFv-Fcは、ApoE-/-マウスにおけるアテロームの特異的な標識を示した。
図4】OptiHEK C3 h/l(図4A)およびOptiHEK C3 I/hベクター(図4B)の制限酵素カードである。
図5】OptiHEKV4-CH-C3およびOptiHEKV4-CL-C3ベクターの制限酵素カードである。
図6図6は、アテローム標本から調製され、パラフィン包埋されたヒトおよびマウスのアテローム切片に結合する、HEK細胞内で産生された特異的結合分子(IgG1)の容量を示す。
図7図7は、APOE-/-マウスの磁気共鳴画像(RMI)を使用して、インビボのアテローム性動脈硬化症を診断するための酸化鉄を含有するナノ粒子上に移植された特異的結合分子(P3 scFv-Fc-2C抗体)の容量を示す。a.セグメント化されたR2*マップは、3mgFeKg-1でApoE-/-マウス内へのSPIO-NE-P3の注入前(左)および注入後(右)のプラークレベルを推定したものであり、対応する振幅のMR画像(TE=4ms)で重ねあわされた。I.黒*:肝臓。b.3匹のマウスで測定された平均R2*値(マウスあたり最大8スライス、合計23スライス)。エラーバー:各スライス(SEM)で測定された平均R2*の標準誤差。
【実施例
【0118】
実施例1:アテローム性動脈硬化したウサギモデルにおけるインビボファージディスプレイ選択
ニュージーランドウサギ動物モデルにおける不安定プラーク形成
全ての動物実験は、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(NIH Publication No.85-23,revised 1996)に基づいて実施され、地域の倫理委員会により承認されていた。ウサギモデルは、事前に記載したように高コレステロールの食事を与えられており、2か月間隔で2回の外科手術を実施した。最初の手術は胸部から腹部大動脈までの脱内皮化で構成され、次の手術はX線透視ガイドの下で胸部下行大動脈まで大腿動脈を切開することによる、バルーンを用いて実施される血管形成術からなる。
【0119】
アテローム性動脈硬化したウサギモデルにおけるインビボファージディスプレイ選択
ScFv-ファージライブラリの調製
特許文献である国際公開第2007137616号に記載される、完全ヒト組換え断片scFv抗体ライブラリは、インビボファージディスプレイ選択にて使用された。ファージレスキューのため、ファージライブラリをM13-KO7ヘルパーファージ(Invitrogen,France)で感染させ、続いてPEG/NaClを用いてファージを沈殿させた。11,000gにて4℃、45分間遠心分離にかけた後、scFv-ファージ粒子を含有するペレットを最終容積500μLの滅菌冷PBSで再懸濁させ、ろ過した。
【0120】
インビボファージディスプレイ
ファージディスプレイ法により、3ラウンドのバイオパニングをアテローム性ウサギに実行した。ウサギの耳翼辺縁静脈へと30分間注入された、scFv-ファージの2.4×1012コロニー形成ユニット(cfu)の連続フロー(150μL/分)を用いて最初の選択を実施した。1時間循環させたのち、このウサギを屠殺して心臓を介して120mLのPBSで灌流させ、血液からファージが排出されたことを確認した。大動脈は大動脈弓から腸骨分岐部まで回収され、E1(大動脈弓および胸部領域)とE2(擦過した腎臓および腹腔領域)切片に分割した。scFv-ファージの量が4.8×1011および3.9×1011cfuにそれぞれ低下させた以外は同様の手順に従い、ラウンド2およびラウンド3が実施された。
【0121】
内皮細胞表面に結合するscFv-ファージだけでなく、内膜へと遊走するものおよび病変へと浸潤する細胞へと内部移行するものにもアクセスするため、大動脈組織からF1、F2およびF3画分をそれぞれ回収した。
【0122】
内皮組織内および内皮細胞内のscFv画分の溶出プロトコールは、Deramchia et alによるプロトコールを少し変更したものに従い実行された。内皮細胞表面結合scFv-ファージ画分(F1画分)は、500μL、0.1Mのグリシン-HCl(pH2.2)で溶出され、直ちに15μL、2.5Mのトリス-HCl(pH8)で中和された。溶出手順を繰り返して異なる試料をプールし、プロテアーゼ阻害剤混合物(ThermoScientific)を添加した。細菌に感染させる前にフラクションを4℃で保存した。
【0123】
組織内scFvファージ画分(F2画分)を溶出させるため、大動脈組織を、2.5%のトリプシン-EDTA(Eurobio)で1mLへと調節した2,000U/mLのコラーゲン分解酵素2型(Gibco)を含有する、900μLのPBS(Ca2+、Mg2+を含まない)でインキュベートした。ガラススライドを用いて引っかき傷を形成し、組織解離を促進させた。次いで、4℃で20秒、Polytronホモジナイザー(Ultraturax TP-20,Kinematica)を動作させ、均質な溶液を得た。次いで、破砕物を37℃で30分、時間に正確にボルテックスミキサーにかけながらインキュベートさせ、最終的に、1,000gで10分間遠心分離にかけ、不溶物質を除去した。同様の手順に従い、製剤を更に2回均質化した。それぞれ遠心分離にかけた後、溶出されたscFv-ファージを含有する上澄みを収集して、プロテアーゼ阻害剤混合物が存在する清浄な管にプールした。
【0124】
内部移行されたscFv-ファージ画分(F3画分)にアクセスするため、不溶物質を0.1MのTEA(テトラエチルアンモニウムクロリド)(Sigma-Aldrich)(pH11.5)を500μL用いて、5分間室温でインキュベートさせ、次いで更に5分間、強力にボルテックスミキサーにかけた。試料を150μL、1Mのトリス-HCl(pH7.4)を添加することにより中和させた。1,000gで10分間遠心分離にかけた後、上澄みを収集した。
【0125】
ScFv-ファージ画分F1、F2およびF3は、XL1-Blue大腸菌(E.coli)(Stratagene,France)(OD=0.5)に感染させることにより別々にレスキューされた。細胞をペレット化させ、2xTY寒天(2TYGA)を含有するアンピシリン(100μg/mL)およびグルコース(2%(w/v))上に播き、30℃で16時間インキュベートした。145mmのペトリ皿に広げることにより、グリセロールストックを構成することが可能となり、80mm皿上で限界希釈することにより、選択した濃縮度を評価することが可能となった。バイオパニングの3度目のラウンド後、FACSスクリーニングおよび更なる分析用として、播いたクローンを2TYGA選択培地(Greiner Bio one,France)で満たされたディープウェル96マスターブロックへと別々に採取した。
【0126】
ファージ抗体の調製
個別のファージ感染したXL1 Blueを、10μg/mLのテトラサイクリンを加え、500μLの2xTY/アンピシリン/5%グルコースの入った96ディープウェルプレート(Greiner Bio one,France)内で増殖させた。一晩インキュベートした後、25μLの細菌培養物を500μLの2xTYGATで播種させ、3時間インキュベートした。3.10個のヘルパーファージ(Stratagene,France)を含有する25μLの2TYを添加することにより、ファージ産生を誘発させた。1時間37℃で感染させた後、26℃で回転させながら、最終成長させるため、細菌をペレットとし、40μg/mLのカナマイシンを加えた500μLの2x2TYGA中に再懸濁させた(Newbrunswik,Edison,USA)。次いで10,000gで10分間、細菌をスピンダウンさせ、上澄みを直ちにフローサイトメトリーアッセイのために使用した。
【0127】
実施例2:組換え抗体の開発、HEK細胞または昆虫細胞の発現、精製、特性解析
1.昆虫細胞からの産生および精製
融合タンパク質ScFv-Fcは、バキュロウイルス-昆虫細胞系を使用して産生した。簡潔には、本発明のscFvをコードするcDNAは、以下、P3/A-VH 5’用には、GCTA CTTAAG GGT GTC CAG TGC CAGGTGCAGCTGCAGCAGTCTGGACCCGG 3’(配列番号25)、P3/A-VL 5’には、GCTA CGTACG CTTGATTTCCAGCTTGGTGCCGCCT 3’(配列番号26)およびテンプレートとしてScFvP3-Fcといったプライマーを用いたPCRにより増幅された。
【0128】
次いで、5’末端でIgG1シグナルペプチドをコードする配列、およびC末端にて2つの余分なシステイン残基を有するヒトIgG1 FcドメインをコードするcDNAを用いて、PCR断片をインフレームで特異的転換ベクターへと挿入した。
【0129】
Sf9細胞は転換ベクターを用いたリポフェクションにより同時導入され、40μLのDOTAPリポソーム遺伝子導入剤(Roche)の存在の下、ウイルスDNAを精製した(P.L.Felgner,G.M.Ringold.Cationic liposome-mediated transfection.Nature,337,1989,p.387-388)。組換えウイルスをプラークアッセイにより単離し、ELISAにより増殖クローンを選別した。組換えウイルスのゲノム構造をサザンブロッティング法により制御した。統合された遺伝子の配列は、PCRによる増幅および配列決定(Eurofins Genomics,Germany)後に検証された。
【0130】
1細胞あたり3つのプラーク形成ユニット(PFU)の感染多重度で選択された組換えウイルスを用いて、無血清培地での増殖に適合したSf9細胞を感染させることにより、ScFv-Fcを産生した。感染後3日間、細胞培養物の上澄みを採取し、scFv-FcをAKTA Puriferにて、HiTrap FF、製造者(GE Healthcare)が推奨するタンパク質Aで精製した。精製済scFv-Fcの品質は、SDS-PAGEおよび銀染色により評価された。ScFv製剤は0.22μmメンブレン(Millex GP,Millipore)でろ過後滅菌され、使用前に4℃で保存した。
【0131】
2.HEK細胞からの産生と精製
ScFv-Fcを、FreeStyle(商標)293-F発現系(Invitrogen,France)を用いた一過性トランスフェクションにより産生した。発現ベクター(図1)は、ホモサピエンス用に最適化されたコドンを有する線形断片としてscFvをコードしたcDNA断片を最初に合成する(Invitrogen GeneArt)ことにより調製された。次いで断片は、シグナルペプチドおよびヒトIgG1 Fc断片を含有するpCEP4ベクター(Invitrogen)のBamHIとNotI制限酵素部位間で、Infusionキットを用いて組換えすることにより、サブクローニングした。1/2の比率(DNA/遺伝子導入剤)で250kDaのPEI(Sigma-Aldrich)を用いて、供給者の指示に従い、HEK FreeStyle細胞を精製した発現ベクターを用いて遺伝子導入した。37℃、8%のCO、8mMグルタミンを加えたF17培地にて7日間産生した後、上澄みを採取して遠心分離にかけて分画した。ヒトIgG向けのFastELISAキット(RD Biotech,France)を用いたELISAにより、投与に先立ち0.2μmで滅菌ろ過した。精製済分子としてscFv-Fcを使用した場合、精製はAKTA avant 80でHiTrapp FF、タンパク質A(GE Healthcare,France)を用いたワンステップのアフィニティークロマトグラフィーで実行された。分子は、25mMのシトラートを用いて溶出、中和され、PBSに対して透析を行い、0.2μmで滅菌ろ過され、使用前に4℃で保存した。精製済scFv-Fcの品質は、SDS-PAGE、Superdex 200(GE Healthcare,France)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより評価され、エンドトキシンレベルをLALテストにより測定した。
【0132】
3.フローサイトメトリーおよび免疫組織化学による特性解析
3.1アテロームタンパク質でコーティングされた磁気ビーズ上でのフローサイトメトリー
a/タンパク質抽出
タンパク質抽出は、前述のように実行した。簡潔には、アテローム性動脈硬化したタンパク質および健康なタンパク質を、プロテアーゼ阻害剤混合物(Thermo Fischer scientific,France)で補足した、市販にて入手可能なT-PER溶解バッファ(Thermo Fisher Scientific,France)で可溶化させた。可溶化は、Polytron TP-20 Homogenizer 8(Kinematica,Lucerne,Switzerland)を用いて実行された。13,000g、4℃で45分間、2度遠心分離にかけた後、上澄み由来の不溶物質を廃棄し、製造者(Thermo Fisher Scientific,France)の指示に従いBradfordアッセイキットを用いて、各可溶抽出物のタンパク質濃度を測定した。
【0133】
b/アテローム性動脈硬化したウサギモデルから抽出されたタンパク質と磁気ビーズの結合
以前に記載したように、高脂肪の食事を与えられ、アテロームプラークを成長させたウサギから抽出された50マイクログラムのタンパク質を、製造者(Ademtech,France)の指示に従って300nmのカルボキシル-アデムビーズに共有結合させた。再現性のために、試料ごとにコーティングされたタンパク質ビーズの3つのバッチを使用した。(Deramchia K et al Am J Pathol 2012 Jun;180(6):2576-89およびHemadou A et al Scientific Reports.)
【0134】
c/フローサイトメトリー分析
アテローム性動脈硬化したウサギタンパク質へのscFv-ファージおよびScFv-Fc融合抗体の結合は、フローサイトメトリーによって測定された。ビーズ上にコーティングされた40マイクロリットルのアテローム性動脈硬化したウサギタンパク質を、5μg/mL~100μLのscFv-ファージに添加し、scFv-FcはPBSバッファ中、10μg/mLで希釈させ、4℃で3時間、回転させながらインキュベートさせた。マウス抗-pVIII(Abcam,France)およびウサギ抗ヒトFcγ特異的一次抗体(Jackson Immunoresearch,USA)を、1:1,000または1:65の希釈でそれぞれ添加した。これを4℃で一晩回転させながらインキュベートした。scFv-ファージまたはscFv-Fcの最終検出のため、Alexa 488標識抗マウス抗体(Life technologies,France)およびAlexa 488標識抗ウサギ抗体(Life technologies,France)を1:40および1:30の希釈でそれぞれ使用した。
【0135】
3.2.ウサギ、マウスおよびヒト切片の免疫組織化学
ScFv-Fc融合抗体を、アテローム標本から調製され、パラフィン包埋されたヒト、マウスおよびウサギのアテローム切片への結合について評価した。各パラフィン包埋された標本を脱パラフィン化し、再水和した。ブロッキング工程(HブロッキングおよびPBS/1%BSA/0.2%Triton X100を用いた非特異部位ブロッキング)および賦活化工程(pH9)を実行した。ヒト切片の補足的ブロッキングは5%ヤギ血清を用いて実行され、続いて100μg/mLで特異的に希釈されたヤギ抗ヒトIgG H+LまたはFcγを添加した。PBS/1%BSAで洗浄後、次いでスライドをScFv-Fc抗体を用いて10μg/mL、4℃で一晩インキュベートした。標本をPBS/1%BSA/0.025%Triton X100で洗浄した。次いで、標本を二次HRP-結合ヤギ抗ヒト(Fcγ特異的)抗体(1:1,000)Jackson Immunoresearch,USA)でインキュベートした。ネガティブコントロールスライドは二次抗体でのみインキュベートされた。
得られた結果を図2に示す。
【0136】
4.標的の特定
a-ELISA
ELISAプレートは、5または10μg/mLの濃度である組換えガレクチン-3(Abcam,France)、ガレクチン3BP(Abcam,France)またはガレクチン3/ガレクチン3BP複合体を用いて、4℃で一晩コーティングされた。翌日、PBS/5%乳を用いて1時間ブロックした。市販で入手可能な抗体またはscFv-Fc融合抗体を各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。続いてホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合検出抗体を添加した。市販の抗体およびscFv-Fc融合抗体をそれぞれ10μg/mLと50μg/mLで希釈した。
【0137】
b-免疫蛍光染色
ヒト組織標本は、CHU Pellegrinの血管外科医であるPr DUCASSE Ericから提供された。免疫蛍光染色のために、ヒト切片を脱パラフィン化し、再水和した。賦活化工程(pH9)後、スライドを(1)PBS/1%BSA/0.2%Triton X10、続いて(2)5%ヤギ血清、(3)100μg/mLで特異的に希釈されたヤギ抗ヒトIgG H+LおよびFcγを添加することでブロックした。バキュロウイルスで産生された一次scFv-Fcまたは市販で入手可能な抗体を4℃で一晩添加した。スライドを、PBS/1%BSA内で50μg/mLにて希釈したscFv-Fcでインキュベートし、対照群として、二次抗体のみまたは製造者の指示に従って市販の抗体をインキュベートした。スライドを、PBS/1%BSA/0.025%Triton X100で10分間6回洗浄し、二次抗体の希釈液を添加した(scFv-Fc用にAlexa 568標識抗ヒト抗体(1:200)または市販の抗体用にAlexa 488標識抗マウス(1:200))。1時間のインキュベーション後、スライドをPBSで3回洗浄し、Vectashield(VWR,France)でマウントした。スライドを蛍光顕微鏡(Nikon,France)で観察した。
【0138】
結果は、Alexa488抗マウス抗体で明らかにしたマウス抗ガレクチン3MAbsおよびAlexa568標識抗ヒト抗体で明らかにした本発明の融合タンパク質の結合の重層化を示しており、これは同様の構造の標識を強調していた。Nikon製の蛍光顕微鏡を用いて結果を得た。
【0139】
c-エクスビボ蛍光イメージング
開胸により胸を開き、心臓を露出させて右心房を切開した。30ゲージの針を左心室に挿入した。PBS-ヘパリン(50UI/mL、2.5mL(Sanofi Aventis,238 Vitry-sur-Seine,France))を接種させ、続いて、scFv-Fc P3抗体または製造者の指示に従い、蛍光染料であるAlexa647と結合させた対照IgG(Alexa 647抗体標識キット、Thermofisher Scientific,France)のいずれかの製剤を含有する2mLのPBSを用いて、10mLのPBS灌流を継続させた。20分後、再びマウスへと5mLの4%v/vパラホルムアルデヒド(PFA)で灌流を行った。次いで大動脈を取り出し、0.8%p/vの高品位、245の低融点アガロースを含有した80mmのペトリ皿に埋め込んだ。大動脈は、Alexa647取得用の専用キューブを備えた蛍光マクロスコープ(Leica Microsystem France)を用いて画像化された。
【0140】
大動脈において、アテローム性マウスのアテロームプラークの検出が確認された結果を図3で示す。
【0141】
実施例3:ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する特異的結合タンパク質(IgG1)の調製
1.バイシストロン性ベクターの構築
2つのバイシストロン性ベクターOptiHEK-C3 h/lおよびOptiHEK-C3 l/hを、軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列の中間産物のために使用した。
【0142】
A.OptiHEK-C3 h/lの構造
軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは、PCRによってpCEP4ベクター(実施例2区分2)から単離された。定常軽鎖(CL、図4ではCKとも呼ばれる)および定常重鎖CH(CH1、CH2、CH3)ドメインは、イントロンを有するゲノム形態の下で提供される。表1で言及されるように、プライマーP1-VH-C3、P2-VH-C3、P1-VL-C3およびP2-VL-C3をそれぞれ使用し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをPCRにより単離した。表1で言及されるように、プライマーCH-Int5’、CH-Int3’、CK-Int5’およびCKI-Xbal-5’をそれぞれ使用し、定常重鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインをPCRにより単離した。
【0143】
【表1】
【0144】
簡潔には、発現ベクターOptiHEK-bicistronicを制限酵素であるNheIおよびAscIにより消化させ、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey-Nagel)を使用して、ゲル上で精製した。
【0145】
次いで、重鎖可変ドメイン(VH)および定常重鎖ドメイン(CH)断片を、OptiHEK-V4ベクターのNheIとAscI制限酵素部位間で、注入キット(Ozyme)を用いて組換えすることによりサブクローニングし、中間ベクターOptiHEK-C3-hを得た。次いで、中間ベクターであるOptiHEK-C3-hを大腸菌細菌細胞へと形質転換させた。大腸菌コロニーを選別し、挿入VHおよびCHを含む、適合するOptiHEK-C3-hベクターを有するものを特定した。次いで適合OptiHEK-C3-hベクターを制限酵素であるSpeIおよびXbaIで消化させ、NucleoSpin Extract IIキットを用いてゲル上で精製した。次いで、軽鎖可変ドメイン(VL)および定常軽鎖ドメイン(CL)断片を、OptiHEK-C3-hベクターのSpeIとXbaI制限酵素部位間で、注入キットを用いて組換えすることによりサブクローニングし、OptiHEK-C3-h/lベクターを得た。次いで、OptiHEK-C3-h/lベクターを大腸菌細菌細胞へと形質転換させた。大腸菌コロニーを選別し、適合するOptiHEK-C3-h/lベクターを有するものを特定した(図4Aを参照されたい)。
【0146】
B.OptiHEK-C3l/hの構築
軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは、PCRによってpCEP4ベクター(実施例2区分2)から単離された。定常軽鎖(CL、図5ではCKとも呼ばれる)および定常重鎖CH(CH1、CH2、CH3)ドメインは、イントロンを有するゲノム形態の下で提供される。表2で言及されるように、プライマーP1-VH-C3-2、P2-VH-C3、P1-VL-C3-2およびP2-VL-C3-2をそれぞれ使用し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをPCRにより単離した。表2で言及されるように、プライマーCH-Int5’、CH-Int3’、CK-Int5’およびCKI-Xbal-5’をそれぞれ使用し、定常重鎖ドメインおよび定常軽鎖ドメインをPCRにより単離した。
【0147】
【表2】
【0148】
簡潔には、発現ベクターOptiHEK-bicistronicを制限酵素であるNheIおよびAscIにより消化させ、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey-Nagel)を使用して、ゲル上で精製した。次いで、軽鎖可変ドメイン(VL)および定常軽鎖ドメイン(CL)断片を、OptiHEK-V4ベクターのNheIとAscI制限酵素部位間で、注入キット(Ozyme)を用いて組換えすることによりサブクローニングし、中間ベクターOptiHEK-C3-lを得た。次いで、中間ベクターであるOptiHEK-C3-lを大腸菌細菌細胞へと形質転換させた。大腸菌コロニーを選別し、挿入VLおよびCLを含む、適合するOptiHEK-C3を有するものを特定した。次いで適合OptiHEK-C3-lベクターを制限酵素であるNheIおよびAscIで消化させ、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey-Nagel)を用いてゲル上で精製した。次いで、重鎖可変ドメイン(VH)および定常重鎖ドメイン(CH)断片を、OptiHEK-C3-lベクターのSpeIとXbaI制限酵素部位間で、注入キットを用いて組換えすることによりサブクローニングし、OptiHEK-C3-l/hベクターを得た。次いで、OptiHEK-C3-l/hベクターを大腸菌細菌細胞へと形質転換させた。大腸菌コロニーを選別し、適合するOptiHEK-C3-l/hベクターを有するものを特定した(図4Bを参照されたい)。
【0149】
2.モノシストロン性ベクターの構築
軽鎖と重鎖は、以下のプライマーを使用し、上で言及されたバイシストロン性ベクターからPCRにより増幅される。
【0150】
【表3】
【0151】
簡潔には、発現ベクターOptiHEKV4を制限酵素であるNheIおよびXhoIにより消化させ、NucleoSpin Extract IIキット(Macherey-Nagel)を使用して、ゲル上で精製した。次いで、PCR断片を、OptiHEKV4ベクターのNheIとXhoI制限酵素部位間で、注入キットを用いて組換えすることによりサブクローニングした(図5を参照されたい)。次いで、以前に得たモノシストロン性ベクターであるOptiHEKv4-CL-C3およびOptiHEKv4-CH-C3を、大腸菌細菌細胞へと形質転換させた。大腸菌コロニーをPCRによって選別した。
【0152】
3.免疫グロブリンIgG1の発現
HEK FreeStyle細胞は、1/4の比率(DNA/遺伝子導入剤)で250kDaのPEI(Sigma-Aldrich)を用いて、供給者の指示に従い、重鎖および軽鎖をコードする、指示されたLC(OptiHEKv4-CL-C3)およびHC(OptiHEKv4-CH-C3)プラスミドを用いて遺伝子導入された。37℃、8%のCO、8mMグルタミンを加えたF17培地にて7日間産生した後、上澄みを採取して遠心分離にかけて分画した。ヒトIgG向けのFastELISAキット(RD Biotech,France)を用いたELISAにより、投与に先立ち0.2μmで滅菌ろ過した。精製済分子としてIgG1を使用した場合、精製はAKTA avant 80でHiTrapp FF、タンパク質A(GE Healthcare,France)を用いたワンステップのアフィニティークロマトグラフィーで実行された。IgG1分子は、25mMのシトラートを用いて溶出され、PBSに対して透析を行い、0.2μmで滅菌ろ過され、使用前に4℃で保存した。精製済IgG1の品質は、SDS-PAGE、Superdex 200(GE Healthcare,France)でのサイズ排除クロマトグラフィーにより評価され、エンドトキシンレベルをLALテストにより測定した。
【0153】
4.マウスおよびヒト切片の免疫組織化学
IgG1分子は、2人の異なるドナーに由来するヒト生体組織検査から得られたパラフィン包埋されたアテローム性ヒト切片およびマウス動物モデルから調製されたマウス切片への結合について評価された。各パラフィン包埋された標本を脱パラフィン化し、再水和した。ブロッキング工程(HブロッキングおよびPBS/1%BSA/0.2%Triton X100を用いた非特異部位ブロッキング)および賦活化工程(pH9)を実行した。ヒト切片の補足的ブロッキングは5%ヤギ血清を用いて実行され、続いて100μg/mLで特異的に希釈されたヤギ抗ヒトIgG H+LまたはFcγを添加した。PBS/1%BSAで洗浄後、次いでスライドをScFv-Fc抗体を用いて10μg/mL、4℃で一晩インキュベートした。標本をPBS/1%BSA/0.025%Triton X100で洗浄した。次いで、標本を二次HRP-結合ヤギ抗ヒト(Fcγ特異的)抗体(1:1,000)Jackson Immunoresearch,USA)でインキュベートした。ネガティブコントロールスライドは二次抗体でのみインキュベートされた。
【0154】
得られた結果を図6に示す。
【0155】
IgG分子は、マウスおよびヒトのアテローム構造を染色することが可能である。
【0156】
実施例4:酸化鉄を含有するナノ粒子上に移植されたscFv-Fc-2C P3抗体を使用する、APOE-/-マウスにおけるMRIイメージング
scFv-Fc-2C P3抗体(実施例2.1にて産生された)を用いたナノ粒子(MRIイメージング用の酸化鉄ナノ粒子(SPIO)を含有するナノエマルジョンである、SPIO-NE)の生体機能化は、マレイミドを基にしたタンパク質結合を用いて実行された。最初に、100μgのヒト抗体(1mg.mL-1)の2つのシステインを、1mMであり、4℃の18μLのTCEP溶液(分子比TCEP/P3は20に等しい)を用いて45分間活性化した。次いで、ナノエマルジョンを4℃で一晩活性化した抗体と共にインキュベートした。機能化後、磁気選別を利用したNEの超常磁特性により移植されていない抗体をナノエマルジョンから除去した。機能化は10mMのHEPESバッファおよび0.5mMのEDTA(pH7)で実行された。
【0157】
プラークレベルでセグメント化されたR2*マップを推定することにより、標的造影剤の蓄積を可視化し、水平方向の4.7T Biospec system(Bruker,Ettlingen,Germany)を用いて測定されたマルチグラジエントエコーシークエンスからこれを推定した。
【0158】
マルチスライスMGEシークエンス:繰り返し時間TR 1,000±100ms、最初のエコー時間TE=3.5ms、△TE=4.5ms、15回のエコー、α=60゜、NEx=4、解像度=0.1×0.1×1mm。R2*マップは、次の等式
【数1】
を用いたMRシグナル(S)の適合度から抽出された。この場合、S0はTEアプローチが0ms時のシグナルである。
【0159】
局所的な勾配磁場(△B0/dz)のマップおよびR2*マップを、Dahnke et alにより提案された通りに推定した。標的ナノ粒子注入の24時間後、MRIナノ粒子上に移植されたヒト抗体により、インビボでのアテロームプラークの蓄積を強調させることにより、平均R2*値の増加を観察した。
【0160】
得られた結果を図7に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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