(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】車両のスイッチOFF時の状況を考慮したステアリングホイールの絶対角度位置の評価の改良
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230804BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20230804BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230804BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D113:00
B62D101:00
(21)【出願番号】P 2020540789
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 FR2019050194
(87)【国際公開番号】W WO2019150036
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルト ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェリ アンドレ
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521971(JP,A)
【文献】特開2013-241131(JP,A)
【文献】特開2017-024439(JP,A)
【文献】特開2017-024440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
B62D 101/00-137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリング装置(1)を備えるステアリングホイール(2)の絶対角度位置(P_absolute_SW)を推定するための方法において、「ステアリングホイール相対位置」(P_relative_SW)と呼ばれ、第1の基準フレームで表される、前記ステアリングホイール(2)以外の前記パワーステアリング装置の可動部材(13)の前記絶対角度位置の測定値に対応する位置を、測定し、同じ後車軸における左車輪(14)と右車輪(15)との間の速度差のような、車両のダイナミクスを表す第1のローリングパラメータの解析に基づいた少なくとも第1のモデルから、前記ステアリングホイール(2)の前記絶対角度位置の少なくとも第1の推定値(Angle1)を、評価し、前記ステアリングホイール(2)の前記絶対角度位置の前記第1の推定値(Angle1)と、前記ステアリングホイールの前記相対位置(P_relative_SW)と、の間の差分を表す第1のダイナミックオフセット(OffsetDYN_RS)を、評価し、前記ステアリングホイール相対位置(P_relative_SW)に、前記第1のダイナミックオフセット(OffsetDYN_RS)から決定される全補正オフセット(Offset_final)を加えることによって、前記ステアリングホイールの前記絶対角度位置を、計算する、ステアリングホイールの絶対角度位置の推定方法であって、
前記車両がスイッチOFFされる時に、「スイッチOFFオフセット」(Offset_save)と呼ばれ、イグニッションスイッチOFF時における前記全補正オフセットによって得られる、値を記録し、
前記車両の次のリスタート時に、前記スイッチOFFオフセット(Offset_save)を考慮して、前記全補正オフセット(Offset_final)を、計算
し、
前記スイッチOFFオフセット(Offset_save)は、前記全補正オフセット(Offset_final)の計算中に、スイッチOFFオフセット重み付けスコア(Score_save)によって、重み付けされ、
前記スイッチOFFオフセット重み付けスコアの値は、前記イグニッションスイッチがOFFされた条件下に従って、調整され、
前記全補正オフセット(Offset_finaI(n))の計算は、第1のダイナミックオフセット重み付けスコア(Score_RS(n))によって各々が重み付けされる、複数の連続する前記第1のダイナミックオフセット(OffsetDYN_RS(n))の重み付け平均を含み、
前記スイッチOFFオフセット重み付けスコア(Score_save)の設定値は、前記イグニッションスイッチOFF時における、前記第1のダイナミックオフセットの前記重み付けスコア(Score_RS(n))の累積和に対応する第1のグローバル基準スコア(Score_RS_ref)によって導かれる値に、依存し、
前記第1のグローバル基準スコア(Score_RS_ref)、又は前記第1のグローバル基準スコア(Score_RS_ref)と第2のグローバル基準スコア(Score_YR_ref)との間の最大値(X)は、それぞれ、信頼性の程度を増大させることによって分類されるN個の信頼性レベル(L1,L2,L3)を区切る増大スコア閾値(S1、S2)と比較され、
前記スイッチOFFオフセット重み付けスコア(Score_save)は、導かれた前記信頼性レベル(L1、L2、L3)が高いほどより一層高い、導かれた前記信頼性レベルに関連する所定の値(Score_save_L1、Score_save_L2、Score_save_L3)を得る、
ことを特徴とするステアリングホイールの絶対角度位置の推定方法。
【請求項2】
前記ステアリングホイール(2)の前記絶対角度位置の少なくとも第2の推定値(Angle2)は、前記第1のローリングパラメータとは別個の、前記車両のヨー速度のような、前記車両のダイナミクスを表す第2のローリングパラメータの解析に基づいた、少なくとも第2のモデルから、評価され、
前記ステアリングホイールの前記絶対角度位置の前記第2の推定値(Angle2)と、前記ステアリングホイールの前記相対位置(P_relative_SW)と、の間の差分を表す第2のダイナミックオフセット(OffsetDYN_YR)が、評価され、
前記全補正オフセットは、以下の(i)乃至(iii)の重み付け平均を実行することによって、計算される、
ことを特徴とする請求項
1に記載のステアリングホイールの絶対角度位置の推定方法。
(i)複数の連続する繰り返し(n)において連続的に評価され、各々が前記第1のダイナミックオフセットの重み付けスコア(Score_RS(n))を割り当てられた、前記第1のダイナミックオフセット(OffsetDYN_RS(n))の重み付け平均
(ii)前記複数の連続する繰り返し(n)において連続的に評価され、各々が前記第2のダイナミックオフセットの重み付けスコア(Score_YR(n))を割り当てられた、前記第2のダイナミックオフセット(OffsetDYN_YR(n))の重み付け平均
(iii)前記スイッチOFFオフセット重み付けスコア(Score_save)によって、重み付けられる、前記スイッチOFFオフセット(Offset_save)の重み付け平均
【請求項3】
前記スイッチOFFオフセットの重み付けスコア(Score_save)は、一方で前記第1のダイナミックオフセット重み付けスコア(Score_RS)の累積和と同等の第1のグローバル基準スコア(Score_RS_ref)と、他方で前記第2のダイナミックオフセットの重み付けスコア(Score_YR)の累積和と同等の第2のグローバル基準スコア(Score_YR_ref)と、の間の最大値(X)の関数として、決定される、
ことを特徴とする請求項
2に記載のステアリングホイールの絶対角度位置の推定方法。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1つに記載のステアリングホイールの絶対角度位置の推定方法を実装するように、アレンジ又はプログラムされたコンピュータを備える、パワーステアリング装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「角度探知:Angle Finding」(「ANF」と略す)と呼ばれる関数を備え、車両の直線上の軌道に対応する中心位置に対するステアリングホイールの絶対角度位置を評価することが可能な、パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人によって出願された特許出願FR‐2992937は、このような角度検出機能を実施するための方法を、記載している。
【0003】
この方法の一般原理は、アシストモータに取り付けられた第1の基準フレーム(reference frame)(相対)で表される、アシストモータシャフトの絶対角度位置の測定値に対応する、「ステアリングホイール相対位置」P_relative_SWと呼ばれる値を測定し、次に、アシストモータに取り付けられた第1の基準フレームと、ステアリングホイールに取り付けられた(より具体的には、ステアリングホイールの回転の基準であり、車両に固定された固定サポートに取り付けられた)第2の基準フレームとの間に、時間とともに変化し得る角度シフトに対応する補正値(「オフセット」)Offset_finalを適用することによって、このステアリングホイール相対位置の値を補正すること、から構成される。
【0004】
したがって、ステアリングホイールに取り付けられた基準フレームにおける直線の中心位置に対して表される、ステアリングホイールの絶対角度位置P_absolute_SWは、以下の通りである。
【0005】
P_absolute_SW = P_relative_SW + Offset_final
補正値(オフセット)Offset_finalは、実質的にリアルタイムで、モデルから、又は、好ましくは、「ダイナミックモデル」と呼ばれる複数のモデルから、決定され、これらのモデルは、例えば、限定するものではないが、車両のヨーレート、又は、さらに車両の後(リア)車軸の2つの車輪間の速度偏差のような、車両のダイナミックパラメータから、パワーステアリングシステムのステアリングアングルを評価することを可能にし、通常、所謂「Jeantaud/Ackermann」幾何学的表現に、基づく。
【0006】
より具体的には、各繰り返しnにおいて、ダイナミックモデル毎に、一方で考慮されたダイナミックモデルから評価されるステアリングアングルと、他方でアシストモータに取り付けられた基準フレームで表されるステアリングホイール相対位置P_relative_SWと、の間における、考慮された繰り返しについての、差分と同等な、ダイナミックオフセットOffsetDYNを、定めることが可能である。
【0007】
次に、補正値Offset_finalを、一連の繰り返しにおいて、又は車両のスタート以降に実行される繰り返しのまさに全てにおいて、決定されるダイナミックオフセット値OffsetDYNの重み付け和と、同等であるとして、計算することができる。各ダイナミックオフセット値は、「スコア」と呼ばれる重み付け係数によって、重み付けされる。重み付け係数は、車両の利用状況(life situation)を考慮して、ダイナミックモデルから得られる推定値に含むことが可能な、信頼性の指標を、表す。
【0008】
そして、このような進化学習の形成によって、例えば、次のタイプの補正値Offset_finalを、得ることができる。
【0009】
【0010】
と、
【0011】
【0012】
そして、
【0013】
【0014】
そして、
【0015】
【0016】
ここで、OffsetDYN_RS(n)は、考慮される繰り返しnについて、後部速度偏差(「リアスピード:Rear Speed」)を使用する第1のダイナミックモデルから、得られる第1のダイナミックオフセットである。
【0017】
Score_RS (n)は、考慮される繰り返しにおいて、第1のダイナミックオフセットに適用可能な、重み付け係数である。
【0018】
OffsetDYN_YR (n)は、考慮される繰り返しnについて、車両の(「ヨーレート:Yaw Rate」)を使用する第2のダイナミックモデルから、得られる第2のダイナミックオフセットである。
【0019】
Score_YR (n)は、考慮される繰り返しにおいて、第2のダイナミックオフセットに適用可能な、重み付け係数である。
【0020】
Σ...(n)は、n個の関連する連続する値の和演算(i=1~nの和)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
それでもなお、本願発明者らは、上述の特許出願に記載された角度探知方法の精度及び信頼性にもかかわらず、上記方法の実施の中で、特に、「ステアリングホイール相対位置」P_relative_SWとして知られるI値を測定するためのセンサ技術に関連して、時として、多少の困難がある可能性があることを、指摘した。
【0022】
事実、車両のイグニッションをスイッチOFF(パワーOFF」)した後の、次のスタート中に、すなわち、イグニッションスイッチON(「パワーON」)中に、十分な数の信頼できるダイナミックデータ、したがって十分な数の信頼できるダイナミックオフセット値OffsetDYNの、取得まで進む必要があり、ステアリングホイールの角度位置の推定値を信用できるほど十分に高いグローバルスコア(連続した繰り返しで得られるスコアの合計)に到達できるようにする必要がある。
【0023】
結果として、車両をスイッチONした直後に、ステアリングホイールの絶対角度位置の正確な推定値を、迅速に処理することは、時として困難である。しかしながら、ステアリングホイールの角度位置の推定値を取得して信頼性のあるものにするために必要な時間は、ステアリングホイールの絶対角度位置のこの推定値に依存する機能を、一時的に使用不可能にする可能性がある。
【0024】
したがって、本発明に与えられた目的は、上述の欠点を是正することを目的とし、特に、車両がスイッチONされた直後に、ステアリングホイールの絶対角度位置の推定値を迅速且つ高信頼に提供することが可能な、ステアリングホイールの絶対角度位置を推定するための新たな改良された方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に与えられた目的は、パワーステアリング装置を備えるステアリングホイールの絶対角度位置を推定するための方法によって、達成される。
【0026】
この方法において、「ステアリングホイール相対位置」と呼ばれる、前記ステアリングホイール以外の前記ステアリング装置の可動部材の位置、例えば、前記パワーステアリング装置のアシストモータのシャフトの前記位置を、測定し、同じ後車軸における左車輪と右車輪との間の速度差のような、車両ダイナミクスを表す第1のローリングパラメータの解析に基づいた少なくとも第1のモデルから、前記ステアリングホイールの前記絶対角度位置の少なくとも第1の推定値を、評価し、前記ステアリングホイールの前記絶対角度位置の前記第1の推定値と、前記ステアリングホイール相対位置と、の間の差分を表す第1のダイナミックオフセットを、評価し、前記ステアリングホイール相対位置に、前記第1のダイナミックオフセットから決定される全補正オフセットを加えることによって、前記ステアリングホイールの前記絶対角度位置を、計算する、方法であって、前記車両のスイッチOFF中に、「スイッチOFFオフセット」と呼ばれ、前記スイッチOFF時における前記全補正オフセットによって得られる、値を記録し、前記車両の次のリスタート中に、前記スイッチOFFオフセットを考慮して、前記全補正オフセットを、計算する、ことを特徴とする。
【0027】
好適には、この方法は、スイッチOFFオフセットを記憶することによって、スイッチOFFと次の車両スタートとの間に、スイッチOFFが起こった時点で何があったかに関する情報を、ステアリングホイール相対位置を測定するために使用される可動部材に関連する基準フレームと、ステアリングホイールに取り付けられた基準フレームと、の間のシフトに、保持することを、可能にし、これにおいて、ステアリングホイールの絶対位置を知ることが望まれる。
【0028】
リスタート時に、このスイッチOFFオフセット値を呼び出すことによって、及び、車両がリスタートして即座に適用可能な新たな全補正オフセットを評価するためのベースとして、それを使用することによって、全補正オフセットがスイッチOFF中にゼロにリセットされたことを、任意且つ人為的に考慮するのではなく、スイッチOFF前に実行された学習の利点が有利に保持され、したがって、ステアリングホイールの絶対角度位置を計算するために、直接的に適用可能な全補正オフセットを、即座に決定することができる。
【0029】
したがって、本発明に係る方法は、車両がスタートする時に、全補正オフセットが不確定であるか、又は少なくともかなり不正確である状況から、再びスタートしないことを、可能にする。
【0030】
スタート時から、全補正オフセットの信頼できる値を利用することができるので、可動部材の位置の測定値がリフレッシュされると即座に、典型的には、アシストモータのシャフトの角度位置の測定値、すなわち、ステアリングホイールの相対位置がリフレッシュされると即座に、上記全補正オフセットから、ステアリングホイールの絶対角度位置の信頼できる推定値を遅延なく生成する、ことが可能になる。
【0031】
もちろん、記載された方法を実装するパワーステアリング装置は、スイッチOFFオフセットの信頼できる値を、不揮発性メモリに記録することを可能にする、アーキテクチャを含む。その結果、上記値は、スタート時から利用可能である。
【0032】
さらに、以下の説明から分かるように、記憶されたスイッチOFFオフセットを、スイッチOFFオフセットの信頼性の関数として、重み付けすることができ、したがって、適正な重み付けのスコアによって、必要に応じて、上記スイッチOFFオフセットを、補正することができる。このようにして、ステアリングホイールの絶対角度位置を計算するためのプロセスの信頼性は、アシストモータの基準フレームシステムとステアリングホイールに取り付けられた基準フレームシステムとの間で、発生したであろう未知のシフトに起因して、歪み、ゆえに不正確であろう、スイッチOFFオフセットを、上記計算に導入することを回避することによって、最適化される。
【0033】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の説明を読むことによって、及び、純粋に例示的且つ非限定的な目的のために提供される添付の図面の助けを借りることによって、より詳細に明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明に係る方法を適用したパワーステアリング装置を備えた車両を、模式的に示す。
【
図2】
図2は、ステアリングホイールの相対位置から、ステアリングホイールの絶対角度位置の値を導くための、オフセット補正の原理を、示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、パワーステアリング装置1を備えるステアリングホイール2の絶対角度位置P_absolute_SWを推定するための方法に、関する。
【0036】
それ自体公知の方法で、
図1に示すように、パワーステアリング装置1は、ドライバーが車両の向きを定めることを可能にするステアリングホイール2、及び、1つ又は複数のステアードホイール3,4を方向付けることを可能にするステアリング機構、を備える。
【0037】
上記ステアリング機構は、好ましくは、車両6のフレームに固定されることを意図したステアリングケーシング内で並進移動可能に取り付けられたラック5を、備える。
【0038】
上記ラック5の端部はステアリングタイロッド7,8に接続され、それ自体はスタブアクスルに接続されている。スタブアクスルは、ヨー方向に向くことができ、ステアードホイール3,4を運ぶことができる。
【0039】
好ましくは、ステアリングホイール2は、上記ラック5と噛み合う駆動ピニオン10を支持するステアリングコラム9によって、ラック5に、機械的に接続される。
【0040】
それでもなお、本発明は、ステアリングホイール2とラック5との間の直接運動伝達のための機械的接続をなくした、「ワイヤによるステアリング:steer by wire」タイプのパワーステアリング装置に、完全に適用することができる。
【0041】
装置1はまた、アシストモータ11、好ましくは電気モータ、例えばブラシレスモータを、備える。
【0042】
好ましくは、上記アシストモータ11は、ロータリモータである。
【0043】
好ましくは、アシストモータ11は、減速ギアに連結され、ステアリングコラム9を介して、又は例えば二次ピニオン若しくはボールねじのような、駆動ピニオン10とは別個の連結部材12によって直接的に、のいずれか一方で、ラック5に係合させることができる。
【0044】
ステアリングホイール2の絶対角位置P_absolute_SWは、車両6の直線軌道に対応する中心位置P0に対して、考慮される瞬間においてステアリングホイール2によって占められる角度位置に、対応する。
【0045】
好ましくは、ステアリングホイールの有用な移動距離は、中心位置P0に対して各方向(左又は反対の右に)において、1ターンよりも大きい。その結果、ステアリングホイール2の全移動可能距離は、例えば3ターンである。したがって、絶対角度位置は、このように360度(1ターンに等しい)よりも大きいマルチターン位置に、対応する。
【0046】
ステアリングホイールのこの絶対角度位置P_absolute_SWは、ステアリングホイール2の固定サポートに取り付けられた第1の基準フレームR_absで、表される。この第1の基準フレームR_absは、実際には、車両のフレームに取り付けられた基準フレームに、同化してもよい。
【0047】
本発明に係る方法に中で、ステアリングホイール2以外のステアリング装置1の可動部材13の、「ステアリングホイール相対位置」P_relative_SWと呼ばれる位置、が測定される。
【0048】
上記可動部材13は、その位置がステアリングホイール2の絶対角度位置と相関するように、選択される。
【0049】
例えば、パワーステアリング装置1のアシストモータ11の(回転)シャフトを、可動部材として選択すること、が可能である。
【0050】
次に、ステアリングホイール相対位置P_relative_SWは、アシストモータ11のシャフト13の絶対角度位置に、対応する。
【0051】
ステアリングホイール相対位置P_relative_SWは、第2の基準フレームR_relで表され、これに対して、可動部材13の移動が行われる。
【0052】
好ましくは、第2の基準フレームは、アシストモータ11に取り付けられ、より詳細には、上記アシストモータ11のステータに取り付けられる。
【0053】
したがって、好ましくは、ステアリングホイール相対位置P_relative_SWは、アシストモータのステータに取り付けられた第2の基準フレームR_relで表される、アシストモータ11のシャフト13の絶対角度位置に、対応することになる。
【0054】
この位置は、例えば、好ましくはアシストモータ11に統合されたレゾルバタイプの適切な位置センサによって、測定することができる。
【0055】
理想的には、ステアリングホイール2の固定サポートに取り付けられた第1の基準フレームR_absと、アシストモータ11に取り付けられた第2の基準フレームR_relとは、重ね合わされるべきである。それにもかかわらず、実際には、上記基準フレーム間の角度シフトの出現及び変動を見ることができる。この角度シフトは、以下に詳述されるように、全補正オフセットOffset_finalの計算によって、特徴付けられなければならず、したがって、考慮されなければならない。
【0056】
本発明に係る方法の中で、ステアリングホイール2の絶対角度位置の少なくとも第1の推定値Angle1もまた、車両ダイナミクスを表す第1のローリングパラメータの解析に基づいた、少なくとも第1のモデルから、評価される。
【0057】
この第1のローリングパラメータは、例えば、同じ後車軸の左車輪14と右15車輪との間における、(回転の)速度V14-V15の、差分であってもよい。
【0058】
これらの速度は、例えば、アンチロックブレーキシステム(ABS)によって、測定することができる。
【0059】
後輪14,15の速度の差分に関するこの情報から、Jeantaud-Ackermannの幾何学的構造を参照して、考慮される瞬間における車両6の軌道の曲率半径、及び、結果的に、車両の横方向加速度を、決定することができる。次に、それから、ステアードホイール3,4のステアリング角度、及び、結果的に、ステアリングホイール2の絶対角度位置の第1の推定値Angle1を、推定することができる。
【0060】
そのような第1のモデルは、特に、本出願人によって出願された特許出願FR-2992937に記載されており、したがって、全ての有用な目的のために、参照により組み込まれるとみなすことができる。
【0061】
代わりに、上記第1のモデルは、車両6の横方向のダイナミクスを特徴付けることを可能にし、したがってステアリングホイールの角度位置の評価を得ることを可能にする、任意の他のローリングパラメータを、もちろん、使用してもよい。
【0062】
したがって、例えば、車両6のヨー速度は、上述の用途においても説明したように、ローリングパラメータとして、使用してもよい。
【0063】
以下において、後輪の速度の差分を使用する第1のモデルから導出される、若しくは第1のモデルに関連する、拡張子_RSを実行するパラメータ及び推定値を、説明の便宜上、参照することが好ましい。それらは、本発明の範囲から逸脱することなく、任意の他の適切なモデル、特に、拡張子_YRにより識別されるヨー速度に基づいたモデルに関連するパラメータ又は推定値によって、置き換えることができる、ことを理解されたい。
【0064】
本発明に係る方法の中で、第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RSが、評価される。第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RSは、(第1のモデルよって得られる)ステアリングホイール2の絶対角度位置の第1の推定値Angle1と、(好ましくはアシストモータ11のシャフト13の位置を測定することによって得られる)ステアリングホイール相対位置P_relative_SWと、の間の差分を表しており、より好ましくは等しい。
【0065】
OffsetDYN_RS= Angle1 - P_relative_SW
ダイナミックモデルによって与えられる第1の推定値Angle1及び可動部材13(ここではアシストモータ11のシャフト13)の位置の測定値から与えられるステアリング相対位置P_relative_SWは、原理的には、同じ物理量、すなわち、ステアリングホイール2の絶対角度位置を表すので、したがって、この第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RSは、考慮される瞬間における、ステアリングホイール2の固定サポートに取り付けられた第1の基準フレームR_absと、アシストモータ11に取り付けられた第2の基準フレームR_relと、の間に存在する、差分(シフト)の第1の評価を、示す。
【0066】
この差分は、例えば、ステアリングホイールの相対位置P_relative_SWを測定するための役割を果たすレゾルバタイプセンサ、すなわち、より詳細にはアシストモータ11のシャフト13の角度位置を測定するための役割を果たすセンサ、の測定誤差又はドリフトに、起因することがある。
【0067】
このプロセスは、時間をかけて連続的に、繰り返される。
【0068】
したがって、各繰り返しnにおいて、ステアリングホイール相対位置P_relative_SW(n)の測定値、第1のモデルによって与えられるステアリングホイール2の絶対角度位置の第1の推定値Angle1(n)、そして対応する第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RS(n)の計算が、リフレッシュされる。
【0069】
本発明に係る方法によれば、結果として、第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RSから全補正オフセットOffset_finalを決定し、ステアリングホイール相対位置P_relative_SWに上記全補正オフセットOffset_finalを加えることによってステアリングホイールの絶対角度位置P_absolute_SWを計算する、ことが可能である。
【0070】
P_absolute_SW = P_relative_SW + Offset_final
好ましくは、考慮される繰り返しnに適用可能な全補正オフセットOffset_final(n)の計算は、各々が第1のダイナミックオフセットの重み付けのスコアscore_RS(n)によって重み付けされる、複数の連続する第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RS(n)の、重み付け平均を、含む。
【0071】
上記重み付け平均は、その分子が好ましくは関係するn回の繰り返しに亘る積OffsetDYN_RS(n)* Score_RS(n)の(少なくとも)和を含み、その分母がこれらの繰り返しでの重み付けスコアScore_RS(n)の(少なくとも)和を含む、商の形式で、表してもよい。
【0072】
本発明によれば、車両のスイッチOFF(「パワーOFF」)中に、値が記録される。より詳細には、「スイッチOFFオフセット」Offset_saveと呼ばれる最後の値が、記録される。これは、上記スイッチOFFの時点における、全補正オフセットOffset_finalによって、得られる。
【0073】
Offset_save = Offset_final (Power OFF)
実際には、このスイッチOFFオフセットOffset_saveは、より詳細には、スイッチOFF時(キーカット)の直前の、時点又は繰り返し中において、スイッチOFF前にリフレッシュされた、全補正オフセットOffset_finalの最後の値に、対応する。
【0074】
車両の次のリスタート(「パワーON」)中、すなわち、イグニッションがONにスイッチされた時、そして、上記リスタートに続く繰り返し中に、上記スイッチOFFオフセットOffset_saveを考慮することによって、全補正オフセットOffset_finalを、結果として、有利に計算することができる。
【0075】
したがって、全補正オフセットの計算は、次式の関数の形で、形式化することができる。
【0076】
Offset_final = f (OffsetDYN_RS, Offset_save)
上述したように、次のスタートまでスイッチOFFオフセットOffset_saveを記憶し且つ保存するとともに、前のスイッチOFFの時点で取得されたスイッチOFFオフセットOffset_saveのパラメータを、スタート後の上記計算の再開中に、全補正オフセットOffset_finalの計算に含むことによって、上記計算を完了するという事実は、車両6がリスタートする時における、信頼性のある全補正オフセットOffset_finalの迅速な提供、したがって計算されたステアリングホイール2の絶対角度位置P_absolute_SWの迅速な提供、を促進する情報要素を処理することを、可能にする。
【0077】
したがって、一般に、本発明は、車両をリスタートする時に、ステアリングホイールの絶対角度位置の計算を実行するために使用されるパラメータに関する履歴情報を考慮して、上記計算に加えることを、構成する。ここでは、スイッチOFF中に記憶され、ここで好ましくは最後のスイッチOFFの時(好ましくは直前)に記憶された、スイッチOFFオフセットOffset_saveを、考慮する。
【0078】
したがって、本発明は、1つ又は複数の連続したスイッチOFF及びリスタートサイクルにもかかわらず、全補正オフセットOffset_finalの学習プロセスの連続性、したがって、ステアリングホイールの絶対角度位置P_absolute_SWの有効性の連続性(又は準連続性)を保証することを、可能にする。
【0079】
本発明をそれ自体の力で構成することが可能な特に好ましい特徴によれば、スイッチOFFオフセットOffset_saveは、スイッチOFFが起こる条件下に従って値が調整される、スイッチOFFオフセット重み付けスコアScore_saveによって、全補正オフセットOffset_finalの計算中に、重み付けされる。
【0080】
したがって、上で使用した形式を再開することによって、次のように記述することができる。
【0081】
Offset_final = f (OffsetDYN_RS、Offset_save * Score_save)
実際には、重み付けスコアScore_saveは、スイッチOFFの時に取得される全補正オフセットの信頼性を特徴付ける、すなわち、スイッチOFFオフセットOffset_saveの信頼性を特徴付ける、信頼性指標に、対応する。したがって、重み付けスコアScore_saveは、そこで、イグニッションがOFFにスイッチされているときの次のリスタート時において、パワーステアリング装置1がそれ自体を使用する状況を忠実に表すために、上記スイッチOFFオフセットOffset_saveの容量を、定量化する。
【0082】
スイッチOFFが起こる直前に、車両6の利用環境が信頼性のある全補正オフセットOffset_finalを決定することを可能にする場合、スイッチOFFオフセットのこの重み付けスコアScore_saveは、より一層高い。
【0083】
これは、特に、イグニッションがOFFにスイッチされる前の数分間において、車両が、例えば、十分に高い縦方向速度、典型的には5km/hを超える速度で、滑りにくい道路上で、ステアリングホイール2に対するドライバーによるいかなる特別な動作もなしに、実質的に直線状のコースを達成することによって、第1のモデルに有利な運転条件で運転された時、の場合である。
【0084】
反対に、上記スイッチOFFオフセットOffset_saveが誤っているか又は十分な信頼性を示さないと判断された場合には、リスタート後の新たな全補正オフセットOffset_finalの計算において上記スイッチOFFオフセットOffset_saveの影響を低減するように、又はリスタート後の新たな全補正オフセットOffset_finalの計算において上記スイッチOFFオフセットOffset_saveを考慮すらしないように、スイッチOFFオフセットの上記重み付けスコアScore_saveを、低減する(絶対値で)、又はキャンセルする(ゼロに設定する)ことさえできる。
【0085】
これは、例えば、イグニッションがOFFにスイッチされる前に車両6がほとんど循環しておらず、その結果、取得されたデータが全補正オフセットOffset_finalを有効に計算するのに十分に信頼できないか、若しくは不十分な数であった場合、又は、ステアリングホイール2の固定サポートに取り付けられた第1の基準フレームR_absと、アシストモータ11に取り付けられた第2の基準フレームR_relとの間の制御不能なシフトの出現を助長する条件下で、したがって全補正オフセットOffset_finalの評価における不適切に定量化されたエラーの生成に関する適切な条件下で、スイッチOFFが起こった場合であっても、あり得る事例である。
【0086】
このような制御不能なシフトは、例えば、イグニッションスイッチOFFと次のリスタートとの間において、ステアリングシステムの絶対角度位置の測定に障害が発生した場合に、起こり得る。
【0087】
全ての場合について、全補正オフセットOffset_finalの計算において、したがって、最終的には、ステアリングホイールの絶対角度位置P_absolute_SWの計算において、スイッチOFFオフセットの重み付けスコアScore_saveを導入することは、ケースバイケースで上記スイッチOFFオフセットOffset_saveの影響を補正すること、より詳細には、スイッチOFFオフセットOffset_save値が信頼できるときに、この影響をより一層好ましくすることを、有利に可能にする。
【0088】
全補正オフセットOffset_finalの計算が、上述のように、各々が第1のダイナミックオフセットの重み付けスコアScore_RS(n)によって重み付けされる、複数の連続する第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RS(n)の重み付け平均を好適に含む場合には、結果として、好ましくは、スイッチOFFオフセット重み付けスコアScore_saveの設定値は、スイッチOFFの時における、第1のダイナミックオフセットの重み付けのスコアの累積和(スイッチOFF PowerOFF 時及びスイッチOFFオフセットの記録時)に対応する第1のグローバル基準スコアScore_RS_refによって導かれる値に、依存し得る。
【0089】
したがって、便宜上、スイッチOFFオフセットの重み付けスコアScore_saveの決定を、次式の「g」によって示される法則の形式で、表すことができる。
【0090】
Score_save = g (Score_RS_ref)
と、
Score_RS_ref = ΣScore_RS (n = PowerOFF)
第1のグローバル基準スコアScore_RS_refは、第1のモデルによって与えられる推定値から導出される全補正オフセットOffset_finalの計算の全体的な信頼度を、有利に表す。
【0091】
この第1のグローバル基準スコアScore_RS_refが高いとき、より詳細には、それが所定の閾値S1、S2を超えるとき、これは、全補正オフセットOffset_finalの値に関するエラーのリスクが低減されることを、意味する。なぜなら、第1のモデルによって得られた推定が好適な条件下で実行されて、したがって、高い重み付けスコアScore_RS(n)を取得しており、信頼性を保証するから、及び/又は、重み付け平均が多数の項を含んで、したがって、多数の重み付けスコアScore_RS(n)と、ダイナミックオフセットOffsetDYN_RS(n)の多数の連続する評価と、に基づいており、これらの項の一連の複数の値が個別に不確定若しくは誤っている場合であっても、高いエラーの可能性を統計的に低減するから、である。
【0092】
好ましくは、第1のグローバル基準スコアScore_RS_refは、信頼性の増大する程度によって分類される、N個の信頼性レベル、できれば正確に3つの信頼性レベルL1、L2、L3を区切る、増大スコア閾値S1、S2と比較することができ、そして、スイッチOFFオフセット重み付けスコアScore_saveは、導かれた信頼性レベルL1、L2、L3に関連する所定の値Score_save_L1、Score_save_L2、Score_save_L3を、得ることができる。これは、導かれた信頼性レベルが高いほど、より一層高い。
【0093】
したがって、形式的には、例えば、対応表(上述の法則「g」に対応)の形をとることができる。
【0094】
Score_RS_ref < S1、信頼性が低い又はないレベルL1の場合には、結果として、Score_save = Score save_L1
S1 < Score_RS_ref < S2、平均信頼性のレベルL2の場合には、結果として、Score_save = Score save_L2
S2 < Score_RS_ref、信頼性の高いレベルL3の場合には、結果として、Score_save = Score save_L3
Score_save_L1 < score_save_L2 < score_save_L3として、
限られた数の信頼性レベルL1、L2、L3(例えば3つのレベル)、したがって、スイッチOFFオフセットの重み付けスコアScore_saveの限られた数の可能な値(例えば3つの可能な値)は、実際には、十分な程度の精度及び信頼性をもたらす一方、複雑な計算を制限する可能性がある、ことに留意されたい。
【0095】
本発明を実装する優先的な可能性によれば、ステアリングホイール2の絶対角度位置の少なくとも第2の推定値 Angle2は、第1のローリングパラメータとは別個の、車両ダイナミクスを表す第2のローリングパラメータの解析に基づいた、少なくとも1つの第2のモデルから、評価される。
【0096】
この第2のローリングパラメータは、例えば、車両のヨー速度、又は、車両の横方向加速度の測定値であってもよい。
【0097】
ヨー速度及び/又は横方向加速度の測定値は、例えば、電子軌道安定性制御システム(ESP)によって、与えられてもよい。
【0098】
ヨー速度に(又は横方向加速度に)関するこの情報から、機械法則を参照して、考慮される瞬間における、車両6の軌道の曲率半径を決定し、次に、それからステアードホイール3,4のステアリングアングルを推定し、これにより、ステアリングホイール2の絶対角度位置の(第2の)推定値Angle2を与えることができる。
【0099】
このような第2のモデルは、特に、本出願人によって出願された特許出願FR-2992937に記載されており、したがって、この目的のために参照によって組み込まれると考えることができる。
【0100】
第1のモデルを参照して、上述のものと同様のアプローチをとることによって、次に、ステアリングホイールの絶対角度位置の第2の推定値Angle2と、ステアリングホイールの相対位置P_relative_SWと、の間の差分を表す第2のダイナミックオフセットOffsetDYN_YRを、評価することができる(ここで、相対位置P_relative_SWは、より詳細には、アシストモータ11のステータに取り付けられた基準フレームR_relにおいて考慮される、上記アシストモータ11のシャフト13の絶対角度位置に対応する)。
【0101】
OffsetDYN_YR = Angle2 - P_relative_SW
そして、最終的に、以下の(i)~(iii)の重み付け平均を実行することによって、全補正オフセットOffset_finalを、優先的に計算することができる。
【0102】
(i)複数の連続する繰り返しnにおいて(第1のモデルから)連続的に評価され、各々が第1のダイナミックオフセットの重み付けスコアOffset Score_RS (n)を割り当てられた、第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RS (n) の重み付け平均
(ii)複数の連続する繰り返しnにおいて(第2のモデルから)連続的に評価され、各々が第2のダイナミックオフセットの重み付けスコアScore_YR(n)を割り当てられた、第2のダイナミックオフセットOffsetDYN_YR(n)の重み付け平均
(iii)スイッチOFFオフセット重み付けスコアScore_saveによって、重み付けられる、スイッチOFFオフセットOffset_saveの重み付け平均
これは、形式的に、以下によって、表すことができる。
【0103】
【0104】
と、
【0105】
【0106】
そして、
【0107】
【0108】
そして、
【0109】
【0110】
ここで、OffsetDYN_RS(n)は、考慮される繰り返しnについて、第1のダイナミックモデルから得られる第1のダイナミックオフセットであり、これは、後輪の速度偏差(「リアスピード:Rear Speed」)を、ローリングパラメータとして優先的に使用する。
【0111】
Score_RS (n)は、考慮される繰り返しにおいて、第1のダイナミックオフセットに適用可能な、重み付け係数である。
【0112】
OffsetDYN_YR (n)は、考慮される繰り返しnについて、第2のダイナミックモデルから得られる第2のダイナミックオフセットであり、これは、 車両のヨーレートを、ローリングパラメータとして優先的に使用する。
【0113】
Score_YR (n)は、考慮される繰り返しにおいて、第2のダイナミックオフセットに適用可能な、重み付け係数である。
【0114】
Σ(n)は、関連するn個の連続する値の和演算(i=1~nの和)である。
【0115】
上記重み付け平均における項Offset_save * score_saveの存在は、簡単な方法でスイッチOFFオフセットOffset_saveを考慮し、重み付けスコアScore_saveによって全補正オフセットOffset_finalの計算における上記スイッチOFFオフセットの影響を測定する、ことを有利に可能にする。
【0116】
もちろん、変形例として、本発明、したがって、上記式は、特に、上で説明した重み付け平均における対応する項を追加若しくは削除することによって、上述の2つのモデルのうちの1つのみを使用する方法に、又は、さもなければ、第3のローリングパラメータに基づいた第3のモデルを使用して、全補正オフセットOffset_finalの計算に関係する第3のダイナミックオフセットを推定する方法に、適合させることができる。
【0117】
好ましくは、本方法が複数のモデル、この場合好適には第1及び第2のモデルを使用して、複数の一連の対応するダイナミックオフセット、ここでは一連の第1のダイナミックオフセットOffsetDYN_RS(n)及び一連の第2のダイナミックオフセットOffsetDYN_YR(n)を決定する場合、結果として、一方で第1のダイナミックオフセットの重み付けスコアの累積和(スイッチOFF PowerOFF の時及びスイッチOFFオフセットの記録時)と同等の第1のグローバル基準スコアScore_RS_refと、他方で第2のダイナミックオフセットの重み付けスコアの累積和(スイッチOFF PowerOFF の時及びスイッチOFFオフセットの記録時)と同等の第2のグローバル基準スコアScore_YR_refと、の間の最大値に従って、スイッチOFFオフセットの重み付けスコアScore_saveを、決定することができる。
【0118】
Score_RS_ref = Σ Score_RS (n = PowerOFF)
Score_YR_ref = ΣScore_YR (n = PowerOFF)
これは、次の形式で、形式化することができる。
【0119】
Score_save = g (X)
と、
X = MAX (Score_RS_ref; Score_YR_ref)
すなわち、
X = MAX [ΣScore_RS (n = PowerOFF); ΣScore_YR (n = PowerOFF)]
もちろん、ここでも、また、上記の関数gは、上記一連の各々についてグローバル基準スコアを計算するために、及び、適用可能なスイッチOFFオフセット重み付けスコア値Score_saveを決定するべく、こうして考慮されたグローバル基準スコアの設定から、最大グローバル基準スコアXを、サーチするために、使用されるモデルの数及びこのように確立された別個の動的オフセットの一連の数の関数として、適合させることができる。
【0120】
好適には、最大値Xの使用は、使用されるモデルのうちの少なくとも1つが、スイッチOFFの前に十分な信頼性のあるデータを与えたかどうかを、簡単な方法でテストすることを可能にし、その結果、記録されたスイッチOFFオフセットに、依存することができる。
【0121】
実際には、グローバル基準スコアScore_RS_ref,Score_YR_refのうちの少なくとも1つ、特に、上記グローバル基準スコアのうちの少なくとも最高のものが、所定の閾値S1、S2に到達するか、又はそれを超える場合には、そのとき、これは、少なくとも対応するモデルが、スイッチOFF前に、十分な信頼性のあるデータを合計したことを、意味しており、その結果、これらのデータから計算される全補正オフセット、したがって、記録されたスイッチOFFオフセットOfset_saveは、妥当な程度の確実性で現実を表す。
【0122】
好ましくは、上述したものと同様に、第1のグローバル基準スコアScore_RS_refを参照して、第1と第2のグローバル基準スコアとの間の最大値Xは、信頼性の程度を増大させることによって分類される、N個の信頼性レベル、好ましくは、正確に3つの信頼性レベルL1、L2、L3を区切る、増大スコア閾値S1、S2と、比較することができる。そして、スイッチOFFオフセット重み付けスコアSore_saveは、導かれた信頼性レベルL1、L2、L3が高いほどより一層高い、導かれた信頼性レベルに関連する所定の値Sore_save_L1、Sore_save_L2、Sore_save_L3を、得ることができる。
【0123】
例えば、以下の対応表を、適用することができる。
【0124】
X < S1、信頼性が低い又はゼロでさえあるレベルL1の場合には、結果として、Score_save = Score save_L1
S1 < X < S2、平均的信頼性のレベルL2の場合には、結果として、Score_save = Score save_L2
S2 < X、高信頼性のレベルL3の場合には、結果として、Score_save = Score save_L3
Score_save_L1 < Score_save_L2 < Score_save_L3 として、
好適には、スイッチOFFオフセット重み付けスコアSore_saveは、ダイナミックオフセットに割り当てられる可能性がある、重み付けスコアScore_RS,Score_YRと、同じレンジ(例えば0と1との間)に、含まれる。
【0125】
もちろん、本発明は、本発明の変形実施形態のいずれかに係る方法を実行するように、アレンジ又はプログラムされたコンピュータを備えるパワーステアリング装置1、及び、そのようなパワーステアリング装置1を備える車両6、等にも、関する。
【0126】
さらに、本発明は、上で記載した変形例に決して限定されず、当業者は、特に、上記特徴の全て若しくは一部を分離してもよく、又は、自由に一緒に組み合わせてもよい。