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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】電気自動車用の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20230804BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230804BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021079287
(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公開番号】P2022172931
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】小島 健太
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074244(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163815(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/063393(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151084(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016013633(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013014004(DE,A1)
【文献】特開2018-131136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体中央下部に配置されたバッテリと、
前記バッテリの車幅方向外側にて車体前後方向に延びる中空状のサイドシルと、
前記サイドシルの下側かつ前記バッテリの車幅方向外側に配置され、車体前後方向に延び、車体前後方向に垂直な断面が閉断面で形成されている中空状の第1部材と、
前記バッテリから前記第1部材に向かって車幅方向に延び、車幅方向に垂直な断面が閉断面形状の少なくとも一部を構成する少なくとも一つの鋼鉄製の第2部材と
を備え
前記第2部材は、車体前後方向に間隔を空けて複数配置され、
車体前後方向中央部に配置された前記第2部材は、車体前後方向外側部における前記第2部材に比べて高強度である、電気自動車用の車体構造。
【請求項2】
前記第2部材は、他部材と合わせて閉断面形状を構成する、請求項1に記載の電気自動車用の車体構造。
【請求項3】
前記第2部材は、単独で閉断面形状を構成する、請求項1に記載の電気自動車用の車体構造。
【請求項4】
前記第1部材は、押出材からなる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気自動車用の車体構造。
【請求項5】
前記第1部材は、鋼鉄製である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気自動車用の車体構造。
【請求項6】
前記第1部材の前記閉断面は、矩形である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車体構造。
【請求項7】
車体前後方向中央部における前記第2部材の配置間隔は、車体前後方向外側部と比べて狭くなっている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、バッテリの保護等の観点から一般の燃料自動車よりも高い衝突安全性能が求められる。電気自動車では航続距離を確保するために車室の床下全面に広くバッテリが配置されることが多いため、特に側面衝突時の高い衝突安全性能(以降、側突性能ともいう。)が求められる。つまり、車体がスピンするなどして車体側部にポール等の物体が衝突した際に、車室やバッテリが損傷することなく保護されることが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1,2には、車室の変形を抑制でき、車体の側突性能を向上できる車体下部構造が開示されている。当該車体下部構造では、高い側突性能を得るために、サイドシルと称される車体下方側部の柱状部材の内側または下側に補強部材を配置し、側突性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/151084号
【文献】独国特許出願公開102016013633号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2の車体構造では、補強部材が車幅方向に延びるとともに車幅方向に垂直な断面が閉断面となった筒状構造を有している。一般に、筒状構造は側部への荷重によって曲げ変形し易いが軸方向の荷重には強い。従って、このような車幅方向に延びる筒状の補強部材は、車体側面からの衝撃に強く、側突性能の向上に有効である。しかし、電気自動車の車体構造として採用する場合には、衝撃吸収性能の観点で、バッテリ保護性能に改善の余地ある。
【0006】
本発明は、軽量かつ高いバッテリ保護性能を有する電気自動車用の車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体中央下部に配置されたバッテリと、前記バッテリの車幅方向外側にて車体前後方向に延びる中空状のサイドシルと、前記サイドシルの下側かつ前記バッテリの車幅方向外側に配置され、車体前後方向に延び、車体前後方向に垂直な断面が閉断面で形成されている中空状の第1部材と、前記バッテリから前記第1部材に向かって車幅方向に延び、車幅方向に垂直な断面が閉断面形状の少なくとも一部を構成する少なくとも一つの鋼鉄製の第2部材とを備える、電気自動車用の車体構造を提供する。
【0008】
この構成によれば、車体側部にポール等の物体が衝突した際、まず中空状の第1部材がサイドシルとともに潰れることによって衝撃を吸収できるとともに、サイドシルおよび第1部材によって車体前後方向に衝撃を分散できる。次に、車幅方向に延びる第2部材が第1部材を車幅方向内側から支持するため、第2部材は車両側面からの衝撃を強固に受け止めることができるとともに、第2部材が圧壊することによって衝撃をさらに吸収できる。従って、電気自動車用の車体構造において、軽量かつ高いバッテリ保護性能を実現できる。
【0009】
前記第2部材は、他部材と合わせて閉断面形状を構成してもよい。また、前記第2部材は、単独で閉断面形状を構成してもよい。
【0010】
これらの構成によれば、第2部材が形成する閉断面形状を様々に設計し得る。
【0011】
前記第1部材は、押出材からなってもよい。また、前記第1部材は、鋼鉄製であってもよい。
【0012】
これらの構成によれば、第1部材を低コストで簡易に製造できる。例えば、押出材が押し出し材の場合は、アルミニウム合金製であり得る。また、第1部材が鋼鉄製の場合は、鋼鉄製の板が組み合わされて構成され得る。
【0013】
前記第1部材の前記閉断面は、矩形であってもよい。
【0014】
この構成によれば、第1部材を低コストで簡易に製造できる。また、車幅方向において第1部材の外側の面でポール等の物体から受けた力を内側の面で車体フレームなどに逃がすことができる。即ち、車幅方向において対向する2つの面を、力を受ける面および逃がす面として作用させることができる。また、第1部材の上面および下面において必要に応じて他部材と容易に接合できる。なお、ここでの矩形とは、1つの矩形だけでなく、2つ以上の矩形の集合も含む。
【0015】
前記第2部材は、車体前後方向に間隔を空けて複数配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、側突時に、複数の第2部材によって、車体前後方向において複数個所で第1部材を支持できる。即ち、第1部材を橋桁とし、かつ、第2部材を橋脚とするような強固な橋構造を構成できる。この構造により、車体側部にポール等の物体が衝突した際に橋桁(第1部材)から橋脚(第2部材)へと衝撃を複数に分散できる。さらに、車体前後方向において間隔を空けて離散的に第2部材が配置されるため、第2部材が連続的に配置される場合と比べて軽量化できる。また、第2部材が複数配置されるため、高強度が求められる箇所に配置された第2部材のみを、高強度に設計することもできる。換言すれば、高強度が求められない箇所には低強度の材料や薄い厚みを採用し得るため、低コストおよび軽量化を図ることができる。
【0017】
車体前後方向中央部における前記第2部材の配置間隔は、相対的に狭くなっていてもよい。
【0018】
この構成によれば、高い強度が求められる箇所(車体前後方向中央部)において、第2部材が密に配置されるため、当該箇所の強度を向上できる。車体前後方向中央部に高い強度が求められるのは、車体前後方向中央部に重心が位置することによる。例えば、重心以外に向かってポール等の物体が衝突した際には車体が回転することにより衝撃が逃げるが、重心に向かってポール等の物体が衝突した際には車体が回転しないため衝撃が逃げずに車体に加えられる。従って、相対的に大きな衝撃が加えられるおそれのある車体前後方向中央部には相対的に高い強度が求められる。
【0019】
車体前後方向中央部に配置された前記第2部材は、相対的に高強度であってもよい。
【0020】
この構成によれば、前述と同様に、高い強度が求められる車体前後方向中央部において相対的に強度を向上できる。ここで、第2部材を相対的に高強度に設計するためには、高強度の材料を採用してもよいし、厚みを増してもよいし、強固な形状を採用してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、軽量かつ高いバッテリ保護性能を有する電気自動車用の車体構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電気自動車用の車体構造を示す斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係る電気自動車用の車体構造の断面図。
図3図2の電気自動車用の車体構造の斜視図。
図4図3の電気自動車用の車体構造から底パネルを省略した斜視図。
図5】橋脚部材の車幅方向に垂直な断面図。
図6】第2実施形態に係る電気自動車用の車体構造の斜視図。
図7】橋脚部材の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1を参照して、本実施形態の車体構造1では、車体中央下部に推進用のバッテリ10が配置されている。即ち、本実施形態の車体構造1は、バッテリ10を搭載する電気自動車用のものである。バッテリ10は、保護ケースなどを含めて模式的に図示されており、車室Rの床下全面に配置されている。本実施形態では、車体がスピンするなどして車体側部にポール等の物体が衝突(即ち側突)した際、車室Rやバッテリ10が損傷することなく保護される側突性能の高い車体構造1について説明する。
【0025】
図1では、車体側方(詳細には左側方)を符号Yで示し、車体後方を符号Xで示し、車体上方を符号Zで示している。即ち、車幅方向が向きYおよびその反対の向きで示され、車体前後方向が向きXおよびその反対の向きで示され、車高方向が向きZおよびその反対の向きで示されている。これらの方向については図2以降でも同じである。
【0026】
バッテリ10の車幅方向における両外側には、車体前後方向に延びる中空状の一対のサイドシル20が配置されている。一対のサイドシル20は、車室Rの車幅方向の両側下部に沿って配置されている。なお、サイドシル20は、車体構造1においてロッカーとも称される部材である。
【0027】
図2を参照して、バッテリ10の上方には、フロアパネル11が配置されている。フロアパネル11は、車室Rの下面を構成する板材である。また、バッテリ10の上方には、車幅方向に延びるクロスメンバ12が配置されている。詳細を図示しないが、クロスメンバ12は、車体前後方向に間隔をあけて複数設けられている。複数のクロスメンバ12によって、一対のサイドシル20の上部は、互いに接続されている。なお、図2では、一対のサイドシル20のうち一方のみが示されている。
【0028】
本実施形態のサイドシル20は、車幅方向外側に配置されるアウター部材21と、車幅方向内側に配置されるインナー部材22とを貼り合わせて構成されている。アウター部材21およびインナー部材22はともに板金をハット形に曲げ成形して形成されており、これらが中空の空間S1を形成するように貼り合わされて溶接されている。アウター部材21の内面上部には、強度向上のために補強板23が貼り付けられている。
【0029】
上記空間S1は、車体前後方向に延びている。空間S1は仕切板24によって車幅方向中央で仕切られている。仕切板24は、アウター部材21とインナー部材22との間に挟まれて固定されている。アウター部材21、インナー部材22、仕切板24、および補強板23は、例えば鋼製の板金からなる。なお、これらは、例えばアルミニウム合金製の板金からなってもよい。
【0030】
サイドシル20の下方には、橋桁部材(第1部材)30と、橋脚部材(第2部材)40とが配置されている。橋脚部材40およびバッテリ10の下方には、これらを支持する底パネル13が配置されている。底パネル13は、車体構造1の下面を構成する部材である。
【0031】
図3を合わせて参照して、橋桁部材30は、サイドシル20に沿って車体前後方向に延びる2つの中空状の筒状部材31,32からなる。2つの筒状部材31,32は同形状であり、車体前後方向に垂直な断面形状が閉断面(本実施形態では矩形)となっている。2つの筒状部材31,32は互いに車幅方向に並んで接合された状態で、アウター部材21の下方に配置され、アウター部材21に接合されている。詳細には、2つの互いに接合された筒状部材31,32のうち車幅方向内側に配置された筒状部材31がアウター部材21にボルト止めされている。橋桁部材30は、例えばアルミニウム合金の押出材である。代替的には、橋桁部材30は、鋼鉄製であり得る。この場合、板(鋼板)をプレス成形したもの組み合わせて閉断面を構成して橋桁部材30として使用し得る。即ち、筒状部材31,32は押し出し成形により一体的に構成され得る。
【0032】
底パネル13は、車幅方向から見て波状に形成されている。底パネル13は、車幅方向端部においてL字板金15を介してサイドシル20のインナー部材22に接合されている。L字板金15は、車体前後方向に垂直な断面の形状がL字形であり、サイドシル20に沿って車体前後方向に延びる部材である。
【0033】
図4は、図3に示す状態から底パネル13が取り外された状態を示している。
【0034】
橋脚部材40は、バッテリ10から橋桁部材30に向かって車幅方向に延びている。橋脚部材40は、車体前後方向に間隔を空けて複数配置されており、例えば等間隔(距離d)で配置されている。好ましくは、橋脚部材40は、鋼鉄製である。橋脚部材40は、鋼鉄製の板金をハット形に曲げ成形することにより形成されている。橋脚部材40には接合用に複数のフランジ部41が設けられ、フランジ部41でS字板金14およびL字板金15に固定されている。S字板金14は、車体前後方向に垂直な断面の形状がS字形であり、サイドシル20に沿って車体前後方向に延びる部材である。S字板金14は、サイドシル20のインナー部材22とバッテリ10とに接合されている。
【0035】
詳細には、車幅方向において、橋脚部材40の一端42がS字板金14を介してバッテリ10に固定され、他端43がL字板金15を介してサイドシル20のインナー部材22に固定されている(図2参照)。橋脚部材40の他端43の車幅方向外側には橋桁部材30が隣接して配置されている。また、車高方向においては、橋脚部材40は上面においてS字板金14に固定されている(図4参照)。車高方向において、橋脚部材40は、橋桁部材30と概略同じ高さ位置に配置されている。従って、車体の側突時において、橋桁部材30が受けた側突荷重は複数の橋脚部材40に分散される。
【0036】
橋脚部材40は、車体の側突時において、車幅方向に蛇腹状に圧壊することにより衝突エネルギーを効率的に吸収する。橋脚部材40には、そのような圧壊を促進するためのビード44が複数設けられている。複数のビード44は、橋脚部材40のハット形状の角部45において車幅方向に垂直な方向に延びるように形成されている。
【0037】
図5は、橋脚部材40の車幅方向に垂直な断面を示している。図5では、図示を明瞭にするため、1つの橋脚部材40とS字板金14のみが示されている。
【0038】
橋脚部材40は、車幅方向に垂直な断面における閉断面形状の少なくとも一部を構成している。本実施形態では、橋脚部材40とS字板金14によって内部空間S2を画定する閉断面形状が形成されている。図5では、一つの内部空間S2が示されているが、詳細にはこのような内部空間S2を画定する閉断面形状が車体前後方向に並んで複数構成されている。
【0039】
本実施形態の車体構造1によれば、車体側部にポール等の物体が衝突した際、まず中空状の橋桁部材30がサイドシル20とともに潰れることによって衝撃を吸収できるとともに、サイドシル20および橋桁部材30によって車体前後方向に衝撃を分散できる。次に、車幅方向に筒状(内部空間S2を画定する形状)に延びる橋脚部材40およびS字板金14が橋桁部材30を車幅方向内側から支持するため、橋脚部材40は車両側面からの衝撃を強固に受け止めることができるとともに、橋脚部材40が軸圧壊(車幅方向の圧壊)することによって衝撃をさらに吸収できる。従って、電気自動車用の車体構造1において、軽量かつ高いバッテリ保護性能を実現できる。
【0040】
また、橋桁部材30が押出材からなるため、橋桁部材30を低コストで簡易に製造できる。
【0041】
また、橋桁部材30の車体前後方向に垂直な断面は矩形であるため、橋桁部材30を低コストで簡易に製造できる。また、車幅方向において橋桁部材30の外側の面でポール等の物体から受けた力を内側の面で車体フレームなどに逃がすことができる。即ち、車幅方向において対向する2つの面を、力を受ける面および逃がす面として作用させることができる。また、橋桁部材30の上面においてサイドシル20と容易に接合できる。
【0042】
また、複数の橋脚部材40が車体前後方向に並んで配置されているため、側突時に車体前後方向において複数個所で橋桁部材30を支持できる。即ち、橋桁部材30を橋桁とし、かつ、橋脚部材40を橋脚とするような強固な橋構造を構成できる。この構造により、車体側部にポール等の物体が衝突した際に橋桁(第1部材)から橋脚(第2部材)へと衝撃を複数に分散できる。さらに、車体前後方向において間隔を空けて離散的に橋脚部材40が配置されるため、橋脚部材40が連続的に配置される場合と比べて軽量化できる。また、橋脚部材40が複数配置されるため、以下の第1,2変形例に示すように、高強度が求められる箇所に配置された橋脚部材40のみを高強度に設計することもできる。換言すれば、高強度が求められない箇所には低強度の材料や薄い厚みの橋脚部材40を採用し得るため、低コストおよび軽量化を図ることができる。
【0043】
(第1変形例)
上記実施形態では、橋脚部材40は車体前後方向に等間隔d(図4参照)で配置されているが、橋脚部材40は等間隔で配置されていなくてもよい。例えば、車体前後方向中央部2における橋脚部材40の配置間隔は、相対的に狭くなっていてもよい。詳細には、図4に示す間隔dが車体前後方向外側部分よりも車体前後方向中央部2の方が短く設定されてもよい。車体前後方向中央部2は、車体の重心を含む部分であり、例えば橋脚部材40の配置領域のうち中央半分程度の領域をいう。
【0044】
本変形例によれば、高い強度が求められる箇所(車体前後方向中央部2)において、橋脚部材40が密に配置される(図4の間隔dを狭く設計する)ため、当該箇所の強度を向上できる。車体前後方向中央部2に高い強度が求められるのは、車体前後方向中央部2に重心が位置することによる。例えば、重心以外に向かってポール等の物体が衝突した際には車体が回転することにより衝撃が逃げるが、重心に向かってポール等の物体が衝突した際には車体が回転しないため衝撃が逃げずに車体に加えられる。従って、相対的に大きな衝撃が加えられるおそれのある車体前後方向中央部2には相対的に高い強度が求められる。
【0045】
(第2変形例)
上記実施形態では、橋脚部材40は全て同じ強度で構成されているが、橋脚部材40は全て同じ強度で構成されていなくてもよい。例えば、車体前後方向中央部2における橋脚部材40の強度を相対的に高めてもよい。詳細には、車体前後方向中央部2における橋脚部材40の材質を、車体前後方向外側の橋脚部材40の材質に比べて高強度にしてもよい。代替的には、車体前後方向中央部2における橋脚部材40の厚みを、車体前後方向外側の橋脚部材40の厚みに比べて厚くしてもよい。代替的には、車体前後方向中央部2における橋脚部材40の形状を、車体前後方向外側の橋脚部材40の形状に比べて高強度にしてもよい。
【0046】
本変形例によれば、前述と同様に、高い強度が求められる車体前後方向中央部2において相対的に強度を向上できる。ここで、橋脚部材40を相対的に高強度に設計するためには、高強度の材料を採用してもよいし、厚みを増してもよいし、強固な形状を採用してもよい。
【0047】
(第2実施形態)
図6に示す第2実施形態の電気自動車用の車体構造1では、橋脚部材40が車体前後方向に分離されておらず繋がった構成を有している。これに関する構成以外は、第1実施形態の電気自動車用の車体構造1の構成と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した構成と同じ部分については同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、一つの橋脚部材40が設けられている。橋脚部材40は、一枚の板材を曲げ成形して複数の連続したハット形に形成されている。
【0049】
本実施形態のように、橋脚部材40は、必ずしも車体前後方向に複数分離配置される必要はなく、連続した構成を有していてもよい。
【0050】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【0051】
また、橋脚部材40の形状として、車幅方向に垂直な断面がハット形のものを例示しているが、橋脚部材40の形状はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、橋脚部材40の形状として車幅方向に垂直な断面が概略等脚台形であってよく、橋脚部材40単独で空間S2を画定する閉断面を形成してもよい。また、橋脚部材40の形状は、これ以外の多角形または円形のように単独で閉断面を構成する形状であってもよいし、その他閉断面の一部を構成する形状であってもよい。
【0052】
また、橋桁部材30の形状として、車体前後方向に垂直な断面が矩形のもの(2つ矩形の集合)を例示しているが、橋桁部材30の形状はこれに限定されない。例えば、橋桁部材30の形状として、車体前後方向に垂直な断面が矩形以外の多角形または円形などの閉断面を構成する形状であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 車体構造(電気自動車用の車体構造)
2 車体前後方向中央部
10 バッテリ
11 フロアパネル
12 クロスメンバ
13 底パネル
14 S字板金
15 L字板金
20 サイドシル
21 アウター部材
22 インナー部材
23 補強板
24 仕切板
30 橋桁部材(第1部材)
31,32 筒状部材
40 橋脚部材(第2部材)
41 フランジ部
42 一端
43 他端
44 ビード
45 角部
R 車室
S1,S2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7