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特許7325509板金用装飾フィルム及びこれを含む金属装飾板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】板金用装飾フィルム及びこれを含む金属装飾板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20230804BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230804BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230804BHJP
   B44C 1/165 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B32B27/40
B32B27/00 E
B32B15/08 H
B44C1/165 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530210
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 KR2019016827
(87)【国際公開番号】W WO2020111909
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0151684
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0101593
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510244710
【氏名又は名称】エルエックス・ハウシス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ム・ソン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヘ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ホ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ゴ・ヒョク・イム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ラ・ヤン
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-018298(JP,A)
【文献】特開2017-186500(JP,A)
【文献】特開2015-145103(JP,A)
【文献】特開2015-196246(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136638(WO,A1)
【文献】特開2007-245409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B44C 1/16-1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルム;
接着層;
ポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーを含み、前記キャリアフィルムと前記接着層の間に配置された、透明樹脂層;及び
前記接着層と前記透明樹脂層の間に配置された装飾層;を含み、
前記ポリマーは、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーであり、
前記ポリアクリルポリオール:前記ポリエステルポリオールの含量比は、固形分を基準にして95:5ないし80:20である板金用装飾フィルムであって、
5mm厚さのEGI鋼板上にポリエステル接着プライマーが20μm厚さで塗布された板金の表面温度が230℃になるように加熱した後、前記板金用装飾フィルムを転写させた時、前記板金用装飾フィルムのASTM E643‐09によるエリクセン値(厚さ方向)が6mm以上である、板金用装飾フィルム
【請求項2】
前記ポリアクリルポリオールの重量平均分子量は10,000ないし150,000で、水酸基価(OH value)は20KOH mg/gないし200KOH mg/gである、請求項1に記載の板金用装飾フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールの水酸基価(OH value)は10KOH mg/gないし600KOH mg/gである、請求項1に記載の板金用装飾フィルム。
【請求項4】
前記板金用装飾フィルムは板金に転写させるものである、請求項1に記載の板金用装飾フィルム。
【請求項5】
金属層;
透明樹脂層;
前記金属層と前記透明樹脂層の間に配置されたプライマー層;
前記プライマー層と前記透明樹脂層の間に配置された接着層;及び
前記接着層と前記透明樹脂層の間に配置された装飾層;を含む金属装飾板であって、
前記金属装飾板は、ASTM E643‐09によるエリクセン値(厚さ方向)が6mm以上であり、
前記透明樹脂層は、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーを含み、
前記ポリマーは、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーであり、
前記ポリアクリルポリオール:前記ポリエステルポリオールの含量比は、固形分を基準にして95:5ないし80:20である、金属装飾板。
【請求項6】
前記透明樹脂層は、ASTM D5402によってMEK損傷試験による光沢変化時点が50回以上である、請求項に記載の金属装飾板。
【請求項7】
前記透明樹脂層は、ASTM D3363による表面硬度がHB以上である、請求項に記載の金属装飾板。
【請求項8】
前記金属層は、GI、EGI、SUS304、SUS430、SUS201及びSUS316からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項に記載の金属装飾板。
【請求項9】
前記金属層は1~10mmの厚さを有するものである、請求項に記載の金属装飾板。
【請求項10】
前記プライマー層は1~30μmの厚さを有するものである、請求項に記載の金属装飾板。
【請求項11】
前記プライマー層はポリエステル系列のプライマーを含む、請求項に記載の金属装飾板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板金用装飾フィルム及びこれを含む金属装飾板に関する。
【背景技術】
【0002】
大概の家電製品は表面に様々なデザインが具現されていて、特に、プラスチック製品の場合はその価置を高めるために、金属のような天然素材のデザインが具現されるよう、表面に装飾シートを付着している。このような家電製品用板金材を飾る従来の方法として、板金材を成形加工する前に塗料で先にコーティングした後で成形加工するPCM(Pre‐Coated Metal)方式がある。しかし、このようなPCM方式の板金材装飾方法は板金材の外観が多様でなく、単調な特徴がある。
【0003】
このようなPCM方式は安価であるものの、デザインの具現が良好でない問題があり、これを改善するためにVCM(Vinyl Coated Metal)方式が開発された。VCM方式はポリエステルフィルム(例えば、PETフィルム)基材上の装飾層を形成した装飾フィルムの一面にポリ塩化ビニル(PVC)フィルムをラミネーションし、ポリ塩化ビニルフィルムを鉄板に張り付ける方式で進めた。しかし、このようなVCMは、PETのみであるため、後加工時PETが破れたり、信頼性問題で浮き上がったり剥がれる問題点が発生した。
【0004】
また、VCM方式の場合、高温や高湿の環境でPETが浮き上がったり変色したり、加工収率が低下して鉄板に熱接着された後、曲げたり折り畳む工程で成形性が落ち、プレスやベンディングなどの後加工時に装飾フィルムが浮き上がったり剥離される問題が発生した。
【0005】
また、装飾フィルムを板金などにラミネートした後で板金を加工する後加工方式の場合、装飾フィルムの伸び率が落ちる問題によってフィルムが破れたり変形されるなど、後加工性が非常に落ちる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第2006‐78530号、「金属効果を表す装飾フィルム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らは、前記問題を解決するために研究した結果、従来使用していた板金用装飾フィルムと異なって、基材フィルム上に表面を保護する透明樹脂層を形成した後、透明樹脂層上に金属の質感などを表す印刷層と接着層やプライマー層を順次形成した板金用装飾フィルムを製造した後、これを板金上に転写する方式で板金を製造する場合、装飾フィルムが転写された金属装飾板の伸び率が高いため、板金に装飾フィルムを付着した後で加工しても優れた成形性及び後加工性を示す板金用装飾フィルムを開発するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、成形性が落ちて、プレスやベンディングなどの後加工時に装飾フィルムが浮き上がる従来技術の問題点を改善し、従来に比べて成形性及び後加工性に優れる板金用装飾フィルム及び板金の装飾方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、前記板金の装飾方法を利用して得られた金属装飾板を提供することである。
【0010】
発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものに制限されず、言及されていない課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、キャリアフィルム;接着層;ポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマー;を含み、前記キャリアフィルムと前記接着層の間に配置された透明樹脂層;及び前記接着層と前記透明樹脂層の間に配置された装飾層;を含む板金用装飾フィルムを提供する。
【0012】
また、本発明は、金属層;透明樹脂層;前記金属層と前記透明樹脂層の間に配置されたプライマー層;前記プライマー層と前記透明樹脂層の間に配置された接着層;及び前記接着層と前記透明樹脂層の間に配置された装飾層;を含む金属装飾板であって、前記金属装飾板はASTM E643‐09によるエリクセン値(厚さ方向)が6mm以上である、金属装飾板を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による板金用装飾フィルムは従来技術に比べて、
従来に使用していた板金用装飾フィルムに比べて伸び率が高くて加工性に優れるため、既に加工された板金に付着させた後で加工しても優れた成形性及び加工性を示すすことができ、プレスやベンディングなどの後加工時に板金用装飾フィルムが浮き上がる問題点を改善することができ、表面で白濁またはクラック(crack)が発生されないという効果がある。
【0014】
発明による効果は、以上で例示した内容によって制限されず、さらに様々な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】板金用装飾フィルムの模式的な断面図である。
図2】板金の装飾方法の模式図である。
図3】金属装飾板の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の利点及び特徴、そして、それらを達成する方法は添付の図面とともに詳細に後述する実施形態と実験例を参照すれば明確になる。添付の図面は、本明細書に開示された技術の思想を容易に理解させるためのものに過ぎず、添付の図面によって技術の思想が制限されるものとして解釈してはならないことに留意しなければならない。
【0017】
また、発明は以下で開示される内容に限定されず、様々な形態で具現されることができ、以下で掲示される内容は発明の開示を完全たるものとし、発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるもので、発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0018】
関連公知技術に対する具体的な説明が技術の要旨を曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明を省略することができる。
【0019】
明細書全体にわたって同一な参照符号は同一な構成要素を称する。図面で層及び領域の大きさ及び相対的な大きさは、説明の明瞭性のために誇張されたものである。
【0020】
第1、第2などの用語が多様な構成要素を述べるために使われるが、これらの構成要素は、これらの用語によって制限されないことは勿論である。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使うもので、特に反対の記載がない限り、第1構成要素は第2構成要素になりえることは勿論である。
【0021】
明細書全体において、特に反対の記載がない限り、各構成要素は単数であってもよく複数であってもよい。
【0022】
明細書全体において、どの部分がどんな構成要素を「含む(including)」、「持つ(having)」という時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
明細書全体において、「A及び/またはB」という時、これは特に反対の記載がない限り、A、BまたはA及びBを意味し、「CないしD」という時、これは特に反対の記載がない限り、C以上でD以下であることを意味する。
【0024】
素子(elements)または層が他の素子または層の「うえ(on)」または「上(on)」と称されることは、他の素子または層の真上だけでなく、中間に別の層または別の素子を介在した場合を全て含む。一方、素子が「直接上に(directly on)」または「真上」と称されることは、中間に別の素子または層を介在していないことを示す。
【0025】
空間的に相対的な用語の「下(below)」、「下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図面に図示されているように一つの素子または構成要素と異なる素子または構成要素との相関関係を容易に記述するために使われることができる。空間的に相対的な用語は図面に図示されている方向に加え、使用時または動作時、素子が互いに異なる方向を含む用語と理解しなければならない。
【0026】
以下、図面を参考して発明についてより詳細に説明する。
【0027】
図1は板金用装飾フィルム100の模式的な断面図である。本発明の板金用装飾フィルム100は、キャリアフィルム10、透明樹脂層20、装飾層30及び接着層40を含む。板金用装飾フィルム100は、透明樹脂層20がキャリアフィルム10上に配置され、装飾層30が透明樹脂層20上に配置され、接着層40が装飾層30上に配置された構造を持つ。
【0028】
本発明において、前記キャリアフィルム10は、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリアクリレート系樹脂フィルム、熱可塑性ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ABS(Acrylonitrile‐Butadiene‐Styrene)樹脂フィルムなどを挙げることができる。前記ポリエステル系樹脂フィルムの例では、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムを挙げることができ、ポリアミド系樹脂フィルムの例では、ナイロン樹脂フィルムを挙げることができ、ポリオレフィン系樹脂フィルムの例では、ポリエチレン樹脂フィルムまたはポリプロピレン樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0029】
本発明において、前記キャリアフィルム10の厚さは、例えば、おおよそ10μm以上おおよそ100μm未満であってもよい。前記キャリアフィルム10の厚さが約10μm未満の場合、板金用装飾フィルム10の加工性と取り扱い性が不利であり、キャリアフィルム10の厚さが約100μm以上の場合、板金用装飾フィルム100の価格競争力が低下する恐れがある。このため、キャリアフィルム10の厚さは、例えば、約20μmないし約80μmであってもよい。
【0030】
本発明において、前記キャリアフィルム10は、その表面に予めパターンが加工されたフィルムであってもよい。この時、透明樹脂層20はキャリアフィルム10のパターン上に形成される。板金用装飾フィルム100が板金と接合された後キャリアフィルム10が取り除かれると、透明樹脂層20の表面にはキャリアフィルム10のパターンが残るようになるので、透明樹脂層20は金属装飾板に表面の質感を提供することができる。
【0031】
本発明において、前記透明樹脂層20はポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーを含むことができる。
【0032】
前記透明樹脂層20は前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオール及びイソシアネート硬化剤を含むコーティング液をキャリアフィルム10の一面に塗布した後、塗布膜を熱硬化することによって得られ、この時、メラミン樹脂などをさらに含むことができる。
【0033】
前記透明樹脂層20は前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールを含むことができ、前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールのポリマーブレンド形態で含むことができる。また、前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールは熱硬化型樹脂であってもよい。例えば、前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールの含量比は、重量を基準にして95:5ないし50:50であってもよく、好ましくは90:10ないし60:40であってもよく、より好ましくは80:20ないし70:30であってもよい。前記ポリアクリルポリオールを前記範囲より多く含むと、ガラス転移温度が高いポリアクリルポリオールの含量があまりに高くなることによって常温加工性の落ちる問題があり、前記ポリエステルポリオールを前記範囲より多く含むと、硬度や引張強度が低下する問題がある。
【0034】
前記ポリアクリルポリオールは、アクリレート反復単位を含むものであってもよい。前記ポリアクリルポリオールは透明樹脂層全体含量を基準にして40重量%ないし80重量%で含まれてもよい。
【0035】
前記ポリアクリルポリオールの重量平均分子量は10,000ないし150,000で、水酸基価(OH value)は20KOH mg/gないし200KOH mg/g(on solid 基準)であってもよい。前記ポリアクリルポリオールの重量平均分子量が150,000を超過すれば、前記ポリアクリルポリオールの粘度が著しく増加してコーティング液を塗布する時にコーティング不良が発生することがある。前記ポリアクリルポリオールの重量平均分子量が10,000以下の場合、前記ポリアクリルポリオールの耐化学性が低下してMEKのような溶剤に対する耐溶剤性が落ちることがある。また、前記ポリアクリルポリオールのコーティング性及び耐化学性を考慮して、好ましくは前記ポリアクリルポリオールの重量平均分子量は5万ないし10万であってもよい。
【0036】
また、前記ポリアクリルポリオールの水酸基価が20KOH mg/gより低い場合、硬化反応に参加せずに表面硬化度が落ちて耐溶剤性及び耐汚染性などに弱い問題があり、前記ポリアクリルポリオールの水酸基価が200KOH mg/gより大きい場合、硬化反応に参加していない水酸基官能基による耐湿性のため、外観の変化による製品への適用が難しい問題がある。
【0037】
前記ポリエステルポリオールはエステル反復単位を含むものであってもよい。前記ポリエステルポリオールは透明樹脂層全体含量を基準にして2重量%ないし20重量%で含まれてもよい。前記ポリエステルポリオールの水酸基価(OH value)は10KOH mg/gないし600KOH mg/gであってもよい。
【0038】
また、前記ポリエステルポリオールの水酸基価が10KOH mg/gより低い場合、ポリエステルポリオールのOH当量が非常に低くなってコーティング塗膜が形成されても塗膜の表面がべたついたり硬化されなくて、ロールツーロール工程で基材とくっ付いてしまう現象によってラインへの適用が厳しくなる問題があり、前記ポリエステルポリオールの水酸基価が600KOH mg/gより大きい場合、相溶性が悪化してコーティング後に塗膜が不透明になる現象が発生し、高い水酸基価によって硬化剤を追加した後、粘度の上昇がとても速くてコーティングの際に縞模様が発生してコーティングの外観が良くなくなる問題がある。
【0039】
図2は板金の装飾方法の模式図で、図3図2の板金の装飾方法で製造された金属装飾板の模式的な断面図である。図2及び図3を参照すれば、キャリアフィルム10は金属装飾板200の製造工程中、板金用装飾フィルム100から取り外され、透明樹脂層20は金属装飾板200の最外郭層の一つを構成する。
【0040】
このため、透明樹脂層20には耐化学性が要求されるが、透明樹脂層20の硬化密度が高いほど耐化学性は増加するものの、透明樹脂層20の硬化密度が高くなるほど金属装飾板200のベンディング(bending)などのような常温成形工程時に透明樹脂層20の表面でクラックが発生する可能性が高くなる。
【0041】
よって、高い硬化密度による耐化学性を確保し、靭性(toughness)の向上を通じて常温加工時のクラックの発生可能性を最小化するために、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーを利用して透明樹脂層20が得られる。
【0042】
再度図1を参照して装飾層30について説明すれば、装飾層30は印刷層及び/または金属質感層であってもよい。印刷層は色相及び/または模様を備えることができる。前記印刷層は色相及び/または模様を通じて板金用装飾フィルム100に審美性を与える役目をすることができる。
【0043】
本発明の印刷層は有色層または透明層であってもよい。有色層を形成するインクの組成や印刷方法などは特に限定されるものではない。例えば、アクリル系、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系、ウレタン系、ポリエステル系、繊維素誘導体系、塩素化ポリプロピレン系、ポリビニルブチラール系などの1種または2種以上の混合系印刷インク、または塗料を使って有色層が形成されることができる。印刷層には転写印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、ロータリー印刷またはフレキソ印刷などの様々な方式で模様が形成されることができる。
【0044】
本発明の金属質感層は、板金用装飾フィルム100に金属の質感を与える役目をすることができる。金属質感層は金属素材をスパッタリング(Sputtering)、熱蒸着などの方法で透明樹脂層20上に蒸着することによって得られる。金属質感層を形成する金属素材としては、スズ、インジウム、アルミニウム、銅、銀、白金、クロム、ニッケルまたはこれらの合金などが使われることができる。
【0045】
前記装飾層30が印刷層と金属質感層を全て含む場合、印刷層は金属質感層上に形成されることができる。言い換えれば、装飾層30が印刷層と金属質感層を全て含む場合、板金用装飾フィルム100は透明樹脂層20と印刷層の間に金属質感層が介在された構造を持つことができる。
【0046】
本発明の装飾層30の厚さは約5nmないし約10μmであってもよい。装飾層30は金属質感層からなってもよく、金属質感層と印刷層の積層構造を含むこともできる。この時、金属質感層の厚さは約5nmないし約100nmであってもよい。
【0047】
本発明の装飾層30は印刷層からなってもよく、印刷層と金属質感層の積層構造を含むこともできる。この時、印刷層の厚さは約0.1μmないし約10μmであってもよい。印刷層の厚さが前記範囲の厚さを維持することによって、板金用装飾フィルム100は精密な印刷効果を具現することができ、乾燥性を確保することによって加工性及び生産性を高めることができる。
【0048】
図1ないし図3を参照すれば、前記接着層40は板金用装飾フィルム100を板金80に接合する役目をするもので、具体的に板金用装飾フィルム100を板金80のプライマー層82に接合する役目をする。前記接着層40を構成する材料は、板金用装飾フィルム100と板金80のプライマー層82との間で十分な接着力を確保することができるものであれば制限されずに使われることができ、例えば、ポリエステル系樹脂と硬化剤を含むことができる。
【0049】
図2は板金の装飾方法の模式図で、図1の板金用装飾フィルムを板金に転写する工程を模式的に図示し、図3図2の板金の装飾方法で得られた金属装飾板の模式図である。
【0050】
図2の板金の装飾方法は、加熱段階、接合段階及び除去段階を含み、このような過程を通じて本発明の前記板金用装飾フィルムは板金に転写されることができる。前記加熱段階は図2の(A)に図示されていて、板金80を用意して所定温度で加熱することである。すなわち、前記加熱段階は金属層上にプライマー層が塗布された板金を加熱することである。前記板金80は金属層81と金属層81上に配置されたプライマー層82を含み、プライマー層82は金属層81の一面に塗布されてもよい。板金80の加熱は、例えば、おおよそ200℃ないしおおよそ350℃で約5秒ないし約30秒間行われてもよい。
【0051】
前記接合段階は、前記加熱段階以後、板金用装飾フィルム100と板金80のプライマー層82を接合することで、図2の(B)に図示されている。前記接合段階は、図2の(B)に図示されているように、板金80のプライマー層82から接着層40、装飾層30、透明樹脂層20、キャリアフィルム10が順次配置されるように板金用装飾フィルム100をプライマー層82の上部に配置した後、接着層40とプライマー層82を互いに接合する方式で行われることができる。
【0052】
前記除去段階は、前記接合段階以後、キャリアフィルム10を板金用装飾フィルム100から取り除くことで、前記除去段階の結果物として図3の金属装飾板200が得られる。
【0053】
図3を参照すれば、前記板金の装飾方法によって金属装飾板が得られ、前記金属装飾板200は金属層81上にプライマー層82、接着層40、装飾層30及び透明樹脂層20が順次配置された構造を持つ。前述したように、透明樹脂層20は空気などの外部環境と直接接触し、透明樹脂層20上にはキャリアフィルム10が配置されない。
【0054】
前記金属層81は、GI、EGI、SUS304、SUS430、SUS201からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。前記金属層は、どんな製品に使われるかによって変わることがあって、金属の種類によって変わることがある。前記金属層は1~10mmの厚さを持つことができ、例えば、GI鋼板の場合、5ないし8mmの厚さを持つことができる。
【0055】
前記プライマー層82はポリエステル系列のプライマーを含むことができる。前記プライマー層に含まれるプライマーは、当該業種で使われるポリエステル系列であれば特に制限されずに使うことができる。前記プライマー層は1~30μmの厚さを持つことができ、好ましくは10~20μmの厚さを持つことができる。
【0056】
その他、接着層40、装飾層30及び透明樹脂層20の構成は、前述した板金用装飾フィルムと同様である。
【0057】
本発明の金属装飾板は、ASTM E643‐09によるエリクセン値が6mm以上であってもよく、好ましくは8mm以上であってもよく、より好ましくは9mm以上であってもよく、最も好ましくは10mm以上であってもよい。前記エリクセン値は厚さ方向に固定ピンの軸に一定の力を加えて亀裂(crack)が発生する直前まで圧入された深さ(mm)をいい、数値が高いほど柔軟性(成形性)に優れることを示す。
【0058】
前記ASTM E643‐09によるエリクセン値を測定するために、例えば、5mm厚さのEGI鋼板上にポリエステル接着プライマーが20μm厚さで塗布された板金の表面が230℃の温度になるように加熱した後、本発明の板金用装飾フィルムを転写した後、常温に冷却させた後で表面のキャリアフィルムを取り除いた後、ASTM E643‐09によるエリクセン値(厚さ方向)を測定した値が6mm以上であってもよく、好ましくは8mm以上であってもよく、より好ましくは9mm以上であってもよく、最も好ましくは10mm以上であってもよい。
【0059】
また、前記透明樹脂層は、ASTM D5402によってMEK損傷試験による光沢変化時点が50回以上であってもよく、好ましくは70回以上であってもよく、より好ましくは80回以上であってもよい。
【0060】
また、前記透明樹脂層は、ASTM D3363による表面硬度がHB以上であってもよく、好ましくはF以上であってもよい。
【0061】
また、前記透明樹脂層は、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールがイソシアネート化合物とウレタン結合して形成されたポリマーを含むことができ、ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオールに対する具体的内容は前述した板金用装飾フィルムでの内容と同様である。
【0062】
以下、本発明を理解しやすくするために、好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【実施例
【0063】
実施例:実施例1ないし3及び比較例1ないし2
【0064】
[実施例1]
MEK35重量部、MIBK35重量部、MMA15重量部、BMA5重量部、スチレン5重量部、HEMA5重量部、ノーマルドデカンチオール0.3重量部を反応器フラスコに入れて60度温度に維持しながら窒素を内部に満たす。60度で維持された反応器内部にAIBN 0.5重量部を入れて反応を開始し、12時間反応させて分子量10万のアクリレートポリオールを得た。
【0065】
前記で得たポリアクリルポリオール80重量%(固形分基準)、ポリエステルポリオール(ユニチカ(日本)UE‐3620ポリエステルポリオール)20重量%(固形分基準)を含み、前記ポリアクリルポリオールとポリエステルポリオール100重量部(固形分基準)に対してイソシアネート系硬化剤(愛敬化学AK‐75)10重量部を含む透明樹脂液を準備した。キャリアフィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PETフィルム)を使用し、PETフィルム上に前記透明樹脂液を10μmの厚さで塗布した後、110℃で2分間乾燥して熱硬化された透明樹脂層を形成した。続いて、透明樹脂層上にウレタンインクバインダー(サムヨンインク、NT‐medium)71重量部、MEK25重量部、アルミニウムペースト(旭化成、FD‐5060)4重量部で製造した印刷層を1μmの厚さでグラビア印刷機を利用して形成し、ポリイソシアネートを硬化剤で使用したポリエステル系列の接着プライマー(SKC SKYBON_ES_460M 30重量部、MEK35重量部、トルエン28重量部、ポリイソシアネート硬化剤DOW、Voranate T‐80 7重量部)製造社名、製品名)の接着層を1μmの厚さでグラビア印刷機を利用して形成し、この時、100℃で2分乾燥して板金用装飾フィルムを準備した。
【0066】
[実施例2]
前記ポリアクリルポリオール90重量%、ポリエステルポリオール10重量%を使ったことを除いては、実施例1と同様の方法で板金用装飾フィルムを準備した。
【0067】
[実施例3]
前記ポリアクリルポリオール70重量%、ポリエステルポリオール30重量%を使ったことを除いては、実施例1と同様の方法で板金用装飾フィルムを準備した。
【0068】
[比較例1]
ポリエステルポリオールを使用せずに、前記ポリアクリルポリオールのみを使ったことを除いては、実施例1と同様の方法で板金用装飾フィルムを準備した。
【0069】
[比較例2]
ポリアクリルポリオールを使用せずに、前記ポリエステルポリオールのみを使ったことを除いては、実施例1と同様の方法で板金用装飾フィルムを準備した。
【0070】
実験例
<透明樹脂層の耐化学性試験>
金属層上にプライマー層が塗布された板金を230℃の温度で加熱した後、前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2の板金用装飾フィルムを板金に転写した後、PETフィルムを取り除いて試料を準備した。
【0071】
試料を150℃オーブンで1分間乾燥し、3日間50℃オーブンでエイジングした。ASTM D5402によってMEK損傷試験を行い、5枚の脱脂綿を重ねてメチルエチルケトンに30秒間浸漬した後、メチルエチルケトンを含む脱脂綿を3kg荷重の振り子を利用して透明樹脂層の表面で往復させた。
【0072】
前記耐化学性試験前後、目立つスクラッチが観察される時点を光沢の変化が発生する時点として、下記表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
<板金用装飾フィルムの伸び率試験>
5mm厚さのEGI鋼板上にポリエステル接着プライマーが20μm厚さで塗布された板金(サムヤンスチール社)を230℃の温度になるように加熱した後、前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2の板金用装飾フィルムを板金に転写した後、PETフィルムを取り除いて試料を準備した。
【0075】
ASTM E643‐09に基づいて、エリクセン(Erichsen)機器を利用して試料の厚さ方向に固定ピンの軸に一定の力を加え、亀裂(crack)が発生する直前まで圧入された深さ(mm)を確認した。
【0076】
【表2】
【0077】
前記表2のように、パンチの深さ(mm)を測定したエリクセン値を示し、実施例1ないし3の場合、エリクセン値が10mm以上で柔軟性に優れ、成形性に優れることが分かった。これに比べて、比較例1場合、エリクセン値が6mm未満で柔軟性が落ち、成形性が良くないうえ、表面に白化が発生することが分かった。
【0078】
<表面硬度試験>
金属層上にプライマー層が塗布された板金を230℃の温度で加熱した後、前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2の板金用装飾フィルムを板金に転写した後、PETフィルムを取り除いて試料を準備した。
【0079】
ASTM D3363に基づいて、鉛筆(三菱第2B~2H)を使用して1kgの荷重で塗膜試片の表面を掻く方法で硬度を測定し、引っかき度合いによって硬度を示す。硬度値は鉛筆の黒芯の硬度及び濃度によって示す。
【0080】
【表3】
【0081】
<耐熱性試験>
金属層上にプライマー層が塗布された板金を230℃の温度で加熱した後、前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2の板金用装飾フィルムを板金に転写した後、PETフィルムを取り除いて試料を準備した。
【0082】
金属層に5mm間隔でカッターを使用して傷をつけた後、傷をつけた部分をエリクセン機器を使って金属層の外形に変化を与えた。以後、金属層を80℃の水に入れて1時間放置した。
金属層を水から取り出して外観の変化を観察した結果を下記表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
前記表4のように、実施例1ないし2の場合、光沢及び色相に変化がないことが確認されたが、実施例3、比較例2の場合、光沢及び色相に変化があることが分かった。
【0085】
以上、添付の図面を参照して実施例を説明したが、発明は前記実施例に限定されるものではなく、各実施例に掲示された内容を組み合わせて互いに異なる様々な形態で製造されてもよく、発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずに別の具体的な形態で実施することができるということを理解することができる。よって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的ではないものとして理解しなければならない。
【符号の説明】
【0086】
100:板金用装飾フィルム
10:キャリアフィルム
20:透明樹脂層
30:装飾層
40:接着層
200:金属装飾板
80:板金
図1
図2(A)】
図2(B)】
図3