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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】有機半導体層を含む有機発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/19 20230101AFI20230804BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20230804BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20230804BHJP
   H10K 50/826 20230101ALI20230804BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230804BHJP
   H10K 102/20 20230101ALN20230804BHJP
【FI】
H10K50/19
H10K85/60
H10K50/16
H10K50/826
C07D519/00 311
H10K102:20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022067115
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2017103301の分割
【原出願日】2017-05-25
(65)【公開番号】P2022105040
(43)【公開日】2022-07-12
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】16172006.5
(32)【優先日】2016-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ホヮン
(72)【発明者】
【氏名】カルステン,ローテ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ローゼノ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーン,ケーラー
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/145666(WO,A1)
【文献】特開2014-123687(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182547(WO,A1)
【文献】特開2015-156439(JP,A)
【文献】特開2008-177459(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145667(WO,A1)
【文献】特開2001-338771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 50/88
C07D 519/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、少なくとも一つの発光層と、少なくとも一つの有機半導体層と、を含む有機発光ダイオードであって、
上記少なくとも一つの発光層および上記少なくとも一つの有機半導体層は、上記陽極と上記陰極との間に構成され、
上記少なくとも一つの有機半導体層は、実質的に金属の希土類金属ドーパントと、第一基質化合物と、を含み、
上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含み、
上記実質的に金属の希土類金属ドーパントは、Ybであり;
上記陰極は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、第3族の遷移金属、およびそれらの混合物からなる群から選択される、第一の0価の金属を含む、少なくとも一つの実質的に金属の陰極層を含み;
上記用語「実質的に金属の」は、少なくとも部分的に、実質的に元素の形態にある金属を含み;
上記用語「実質的に元素の」は、元素金属または自由金属原子の形態、金属原子のクラスターの形態、金属塩または金属と非金属との間の共有結合を含む有機金属化合物の形態、または、金属の配位子化合物の形態であり;
上記実質的に金属の陰極層は、上記第一の0価の金属を含む、または、からなり;
上記有機発光ダイオードは、第一発光層と第二発光層とを含み、
上記有機半導体層は、上記第一発光層と上記第二発光層との間に構成され;
上記有機発光ダイオードは、p型電荷発生層をさらに含み、
上記有機半導体層は、上記第一発光層と上記p型電荷発生層との間に構成され;
上記有機半導体層は、上記p型電荷発生層に直接接触し;
上記p型電荷発生層は、ラジアレンドーパントおよびホストを含む、有機発光ダイオード。
【請求項2】
上記第一基質化合物は、式1の化合物であり、
【化1】

ここで、R~Rは、互いに独立して、水素、置換または非置換のC~C18アリール基、置換または非置換のピリジル基、置換または非置換のキノリル基、置換または非置換のC~C16アルキル基、置換または非置換のC~C16アルコキシ基、ヒドロキシル基、または、カルボキシル基からなる群から選択され、および/または、上記それぞれのR~Rの隣接した群は、環を形成するために互いに結合されていてもよく、
は、単結合、または、C~C30アリーレン基、C~C30ヘテロアリーレン基、C~Cアルキレン基、または、C~Cアルコキシアルキレン基からなる群から選択され、
Arは、置換または非置換のC~C18アリール基、または、ピリジル基であり、
nは、2~4の整数であり、括弧内の上記n個のフェナントロリニル基のそれぞれは、互いに同じであっても異なってもよい、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
上記ホストは、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、およびN,N’,N’-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
上記ラジアレンドーパントは、2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)である、請求項1~3の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項5】
上記p型電荷発生層は、上記ラジアレンドーパントおよび上記ホストからなる、請求項1~4の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項6】
上記有機発光ダイオードは、第一有機半導体層と第二有機半導体層とを含み、
上記第一有機半導体層は、上記第一発光層と上記第二発光層との間に構成され、
上記第二有機半導体層は、上記陰極と、上記陰極に最も近い上記発光層と、の間に構成される、請求項の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項7】
上記有機発光ダイオードは、電子輸送層をさらに含み、
上記電子輸送層は、上記少なくとも一つの発光層と上記少なくとも一つの有機半導体層との間に構成される、請求項1~の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項8】
上記有機発光ダイオードは、p型電荷発生層をさらに含み、
上記p型電荷発生層は、上記有機半導体層と上記陰極との間に構成される、請求項1~の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項9】
上記陰極は、第一陰極層と第二陰極層とを含む、請求項1~の何れか一項に記載の有機発光ダイオード。
【請求項10】
nは2または3であり、好ましくは2である、請求項2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項11】
は、単結合である、請求項2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項12】
Arは、フェニレンである、請求項2に記載の有機発光ダイオード。
【請求項13】
~Rは、独立して、水素、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C12アリール基、およびC~C12ヘテロアリール基からなる群から選択され、好ましくは水素、C~Cアルキル基、およびフェニル基から選択される、請求項2に記載の有機発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[簡単な説明]
本発明は、有機半導体層を含む有機発光ダイオード(OLED)、および上記有機半導体層を含む上記有機発光ダイオード(OLED)の製造方法に関する。式1の化合物は、上記有機発光ダイオード(OLED)に含まれる。
【0002】
[先行技術]
有機発光ダイオード(OLED)は、自己発光装置であり、広い視野角を有し、コントラストに優れ、反応が速く、光度が高く、駆動電圧特性に優れ、かつ色の再現性がよい。従来のOLEDは、基板上に連続的に積層される、陽極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、および陰極を含む。この点に関して、上記HIL、上記HTL、上記EML、および上記ETLは、有機化合物から形成される薄膜である。
【0003】
電圧が上記陽極および上記陰極に掛けられるとき、上記陽極から注入された正孔は、上記HILおよび上記HTLを通って、上記EMLに移動し、かつ、上記陰極から注入された電子は、上記ETLを通って、上記EMLに移動する。上記正孔および上記電子は、励起子を発生するために、上記EMLで再結合する。
【0004】
上記技術の有機発光ダイオードに含まれる半導体層は、CsまたはLiのような金属ドーパントと共に有機基質物質を堆積することによって形成され得る。しかしながら、上記先行技術のOLEDは、性能不振に陥り得る。さらに、これらのOLEDを製造するとき、上記金属ドーパントの蒸発率に対する制御に乏しい点は、重要な問題である。特に、Liのドーピング濃度は、非常に低く、それゆえ、制御するのは困難である。さらに、真空熱蒸着(VTE)源を入れるとき、および、メンテナンスのために蒸発チャンバーを開けるときの、上記金属ドーパントの安全なハンドリングが非常に望まれている。
【0005】
EP 2 833 429 A1には、有機電界発光装置が開示されている。当該有機電界発光装置は、陽極と、発光層を含む一つ以上の有機薄膜層と、ドナー含有層と、アクセプター含有層と、光透過性を有する陰極(light-transmissive cathode)と、をこの順で含む。上記ドナー含有層は、以下の式(I)または式(II)によって示される化合物を含む。
【0006】
【化1】
【0007】
JP 2008-243932には、有機電界発光素子が開示されている。当該有機電界発光素子においては、陽極と、発光機能層と、光透過性を有する陰極とがこの順で積層されている。上記有機電界発光素子は、発光層と上記陰極との間に一般式(1)に示される有機材料を用いた電子輸送層を有する。上記陰極は、透明伝導性材料中にアルカリ金属元素、第2族元素、または希土類元素を含有させた第1層を有する。ただし、一般式(1)中のAは、フェナントロリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する置換基であり、(n)は、2以上の自然数であり、Bは、ベンゼン環、ターフェニル骨格を有する置換基、またはナフタレン環の中から選ばれる少なくとも1種で表される。ただし、Bがベンゼン環であるとき、全てのAは上記骨格にアルキル基およびアリール基の少なくとも一方を含む。
【0008】
[要約]
従って、本発明の目的は、上記先行技術の問題点を克服する、金属のドープされた有機半導体層を含む、有機発光ダイオードを提供することである。上記有機発光ダイオードは、特に、電圧制御、外部量子効率、および/または、時間経過電圧上昇が改善されている。さらに、本発明の目的は、減少した空気感度、および当該金属ドーパントの蒸発率に対する優れた制御を有するOLEDの製造に適した金属ドーパントを提供することである。
【0009】
上述した目的は、陽極と、陰極と、少なくとも一つの発光層と、少なくとも一つの有機半導体層と、を含む有機発光ダイオードであって、上記少なくとも一つの発光層および上記少なくとも一つの有機半導体層は、上記陽極と上記陰極との間に構成され、上記少なくとも一つの有機半導体層は、実質的に金属の希土類金属ドーパントと、第一基質化合物と、を含み、上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基、好ましくは二つ~四つのフェナントロリニル基を含む、有機発光ダイオードによって達成される。
【0010】
他の面では、陽極と、陰極と、少なくとも一つの発光層と、少なくとも一つの有機半導体層と、を含む有機発光ダイオードであって、上記少なくとも一つの発光層および上記少なくとも一つの有機半導体層は、上記陽極と上記陰極との間に構成され、上記少なくとも一つの有機半導体層は、実質的に金属の希土類金属ドーパントと、第一基質化合物と、を含み、上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基、好ましくは二つ~四つのフェナントロリニル基を含む、有機発光ダイオードが提供される。
【0011】
好ましくは、上記第一基質化合物は、実質的に有機化合物である。より好ましくは、上記第一基質化合物は、モル質量が450~1100g/molである。
【0012】
用語「実質的に有機」は、C、H、N、O、S、B、P、または、Si元素を含む化合物を含むと理解され得ることができ、金属ではない。
【0013】
より好ましくは、上記フェナントロリニル基は、フェナントロリニル基の一部に含まれる二つの窒素原子のうちの一つに隣接する3価の炭素原子との共有結合によって、上記第一基質化合物に含まれる。
【0014】
好ましくは、上記第一基質化合物は式1の化合物である。
【0015】
【化2】
【0016】
ここで、R~Rは、互いに独立して、水素、置換または非置換のC~C18アリール基、置換または非置換のピリジル基、置換または非置換のキノリル基、置換または非置換のC~C16アルキル基、置換または非置換のC~C16アルコキシ基、ヒドロキシル基、または、カルボキシル基からなる群から選択され、および/または、上記それぞれのR~Rの隣接した群は、環を形成するために互いに結合されていてもよく、
は、単結合、または、C~C30アリーレン基、C~C30ヘテロアリーレン基、C~Cアルキレン基、または、C~Cアルコキシアルキレン基からなる群から選択され、
Arは、置換または非置換のC~C18アリール基、または、ピリジル基であり、
nは、2~4の整数であり、括弧内の上記n個のフェナントロリニル基のそれぞれは、互いに同じであっても異なってもよい。
【0017】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、分岐状アルキルおよび環状アルキルだけでなく直鎖アルキルも含み得る。例えば、Cアルキルは、n-プロピルおよびイソプロピルから選択され得る。また、Cアルキルは、n-ブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルを含む。また、Cアルキルは、n-ヘキシル、およびシクロヘキシルを含む。
【0018】
のnに入る数は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアルコキシ基のそれぞれにおける炭素原子の全数である。
【0019】
本明細書で使用される用語「アリール」は、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン等のような、フェニル(Cアリール)、縮合芳香族を含み得る。さらに含まれるものは、テルフェニル等のような、ビフェニル、オリゴフェニル、ポリフェニルである。さらに含まれるものは、フルオレニル等のような、芳香族炭化水素置換基をさらに含み得る。アリーレンは、二つの基(moieties)がさらに付加した官能基を指す。
【0020】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、少なくとも一つの炭素原子が、好ましくはN、O、S,B、またはSiから選択されるヘテロ原子によって置換されたアリール基である。ヘテロアリーレンは、二つの基がさらに付加した官能基を指す。
【0021】
また、本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、アルキルが上述したように定義された、アルコキシ基(-O-アルキル)である。
【0022】
-ヘテロアリールのnに入る数は、ヘテロ原子の数を除いた炭素原子の数であるに過ぎない。この文脈では、C-ヘテロアリーレン基は、ピリジルのような五つの炭素原子を含む芳香族化合物であることは明らかである。
【0023】
本発明によると、それぞれの官能基がR~Rである場合、LおよびArは、置換され、上記官能基は、好ましくはC~C12アルキル基またはC~C12アルコキシ基の少なくとも一つに置換され得ることができ、より好ましくはC~Cアルキル基またはC~Cアルコキシ基の少なくとも一つに置換され得る。上記それぞれの置換体を適切に選択することによって、特に、炭化水素鎖の長さ、上記化合物の物性(例えば有機溶剤における上記化合物の溶解度、または蒸発率)を調整することができる。
【0024】
また、nは、2または3であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、Lは単結合である。
【0026】
好ましくは、Arはフェニレンである。
【0027】
より好ましくは、R~Rは、独立して、水素、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基、C~C12アリール基、およびC~C12ヘテロアリール基からなる群から選択され、好ましくは水素、C~Cアルキル基、およびフェニル基から選択される。
【0028】
好ましくは、上記第一基質化合物は、以下に示す化合物MX1~MX38からなる群から選択される。
【0029】
【化3】




【0030】
この点について、上記第一基質化合物は、化合物MX1であることが最も好ましい。
【0031】
【化4】
【0032】
本発明の目的では、IUPACによって定義される、希土類元素または希土類金属は、元素周期表における17個の化学元素の一つであり、具体的には、スカンジウムおよびイットリビウムだけでなく、15個のランタノイドも含まれる。
【0033】
好ましくは、実質的に金属の希土類金属ドーパントは、0価の金属ドーパントであり、より好ましくはSm、Eu、Ybから選択される。
【0034】
この点について、実質的に金属の希土類金属ドーパントは、Ybであることが最も好ましい。
【0035】
用語「実質的に金属の」は、少なくとも部分的に、実質的に元素の形態にある金属を含むと理解され得る。用語「実質的に元素の」は、電子状態および電子エネルギーの観点から、並びに含有金属原子の化学結合の観点から、元素金属または遊離金属原子の形態、金属原子のクラスターの形態、それから金属塩、金属と非金属との間の共有結合を含む、有機金属化合物または他の化合物の形態、または、金属の配位子化合物の形態に近い形態であると理解される。
【0036】
希土類金属ドーパントによって提供される利点の一つは、アルカリ金属、特に、リチウムと重量パーセントで比べて測定されるとき、ドーピング濃度がより高くなる。それゆえ、蒸発率に対する制御に優れ、製造工程における再生能力は改善され得る。さらに、希土類金属は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属よりも空気感度および湿気感度に乏しい。それゆえ、当該希土類金属は、大量生産に用いるのに安全である。さらなる面において、希土類金属ドーパントは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属よりも拡散し難い。それゆえ、時間経過とともに安定性を改善し得ることができ、例えば時間経過とともに操作電圧が上昇する。
【0037】
他の実施形態において、上記有機半導体層は、上記発光層と上記陰極との間に構成される。それゆえ、上記陰極から上記電子発光層への電子注入および/または電子輸送は、改善され得る。
【0038】
さらなる実施形態において、上記有機半導体層は、上記陰極に直接接触する。
【0039】
他の面において、上記有機発光ダイオードは、第一発光層と第二発光層とを含み、上記有機半導体層は、上記第一発光層と上記第二発光層との間に構成される。
【0040】
他の実施形態において、上記有機発光ダイオードは、第一有機半導体層と第二有機半導体層とを含む。上記第一有機半導体層は、上記第一発光層と上記第二発光層との間に構成され、上記第二有機半導体層は、上記陰極と、上記陰極に最も近い上記発光層と、の間に構成される。それゆえ、n型電荷発生層並びに電子輸送層および/または電子注入層において上記化合物のみを使用することで、優れた性能が達成され得る。
【0041】
さらなる実施形態において、上記有機発光ダイオードは、p型電荷発生層をさらに含み、上記有機半導体層は、上記第一発光層と上記p型電荷発生層との間に構成される。それゆえ、上記第一発光層と上記第二発光層との間の、電子の発生および電子の輸送が改善され得る。
【0042】
他の実施形態において、上記有機半導体層は、上記p型電荷発生層に直接接触する。
【0043】
好ましくは、上記有機半導体層は、上記陰極でない。上記陰極は、実質的に金属である。好ましくは、上記陰極は、有機化合物でない。
【0044】
他の実施形態において、上記少なくとも一つの有機半導体層は、上記少なくとも一つの発光層に直接接触しない。それゆえ、上記実質的に金属の希土類金属ドーパントを通る発光のクエンチが減少され得る。
【0045】
好ましくは、上記有機半導体層は、本質的に非発光である。
【0046】
本明細書の文脈において用語「本質的に非発光」は、上記有機半導体層から、可視発光スペクトルと比べて10%未満であり、好ましくは5%未満である、装置からの可視発光スペクトルへの寄与を意味する。上記可視発光は、波長略380nm以上、略780nm以下の発光スペクトルである。
【0047】
他の実施形態において、上記有機発光ダイオードは、電子輸送層をさらに含み、上記電子輸送層は、上記少なくとも一つの発光層と上記少なくとも一つの有機半導体層との間に構成される。
【0048】
他の実施形態において、上記陰極は、可視発光を通す透明である。
【0049】
この点について、用語「透明」は、少なくとも50%の、好ましくは少なくとも80%の、より好ましくは少なくとも90%の可視発光が物質を通過できる物性を指す。
【0050】
他の実施形態において、上記陽極および上記陰極は、可視発光を通す透明である。
【0051】
他の実施形態において、上記陰極は、第一陰極層と第二陰極層とを含み得る。
【0052】
この点について、上記第一陰極層および/または上記第二陰極層は、スパッタリング処理によってこれら層を堆積させることによって得ることができる。好ましくは、上記第二陰極はスパッタリング処理によって形成される。
【0053】
さらに、本発明の目的は、陽極と、少なくとも一つの発光層と、少なくとも一つの有機半導体層と、陰極とを、基板上に連続的に形成する工程と、少なくとも二つのフェナントロリニル基、好ましくは二つ~四つのフェナントロリニル基を含む第一基質化合物と共に、実質的に金属の希土類金属ドーパントを共堆積することによって、上記少なくとも一つの有機半導体層を形成する工程と、を含む、有機発光ダイオードの製造方法によって達成される。
【0054】
本発明の上記有機発光ダイオードの様々な実施形態によると、上記有機半導体層の厚さは、略5nm以上、略500nm以下の範囲であり、好ましくは略10nm以上、略200nm以下の範囲であり得る。
【0055】
上記陰極がスパッタリング処理を通じて堆積される場合、上記有機半導体層の厚さは、好ましくは略100nm以上、略500nm以下の範囲である。
【0056】
上記有機半導体層が上記第一発光層と上記p型電荷発生層との間、および/または、上記発光層と上記陰極との間に構成される場合、上記有機半導体層の厚さは、好ましくは略5nm以上、略100nm以下の範囲であり、より好ましくは略5nm以上、略40nm以下の範囲である。
【0057】
本発明において、特許請求の範囲または本明細書の他の場所で異なる定義が与えられていない場合でも、以下に定義される用語、これらの定義は、適用されるものとする。
【0058】
本明細書の文脈において、基質物質との結合において用語「異なる」は、上記基質物質はそれらの構造式において異なることを意味する。
【0059】
本明細書の文脈において、リチウム化合物との結合において用語「異なる」は、上記リチウム化合物はそれらの構造式において異なることを意味する。
【0060】
用語「でない」、用語「を含まない」は、堆積前に化合物に存在し得る不純物を除外しない。不純物は、本発明によって達成される目的に関して技術的な効果を有さない。
【0061】
真空熱蒸着(VTE)は、VTE源で化合物を加熱し、かつ、減圧下でVTE源から上記化合物を蒸発する工程を指す。
【0062】
外部量子効率(EQE)は、百分率(%)で測定される。
【0063】
初期発光と元の97%の発光との間の寿命(LT)は、時間で測定される。
【0064】
操作電圧(V)は、10ミリアンペア/センチメートル(mA/cm)でのボルト(V)で測定される。
【0065】
時間経過電圧上昇(V上昇)は、30ミリアンペア/センチメートル(mA/cm)、温度85℃でのボルト(V)で測定される。
【0066】
色空間は、CIE-xおよびCIE-yによって示される(国際照明委員会1931)。青色発光のために、上記CIE-yは、特に重要である。より小さいCIE-yは、より深い青色を示す。
【0067】
最高占有分子軌道(HOMO)および最低非占有分子軌道(LUMO)は、エレクトロンボルト(eV)で測定される。
【0068】
用語「OLED」、用語「有機EL装置」、および用語「有機発光ダイオード」は、同時に用いられ、同じ意味を有する。
【0069】
ここで用いられる「重量パーセント」、「wt%」、および「重量%」は、構成、成分、物質、または作用物質において、それぞれの電子輸送層の成分、物質、または作用物質の重量を、それらのそれぞれの電子輸送層の全重量で割り、100を掛けたものを指す。それぞれの有機半導体層の、全ての成分、物質、および作用物質の合計の重量%は、100重量%を超えないように選択されるものと理解される。
【0070】
ここで用いられる「モルパーセント」、「mol%」、および「モル%」は、構成、成分、物質、または作用物質において、それぞれの電子輸送層の成分、物質、または作用物質のモル質量を、それらのそれぞれの電子輸送層の全モル質量で割り、100を掛けたものを指す。それぞれの有機半導体層の、全ての成分、物質、および作用物質の合計のモル%は、100モル%を超えないように選択されるものと理解される。
【0071】
ここで用いられる「体積パーセント」、「vol%」、および「体積%」は、構成、成分、物質、または作用物質において、それぞれの電子輸送層の成分、物質、または作用物質の体積を、それらのそれぞれの電子輸送層の全体積で割り、100を掛けたものを指す。陰極層の、全ての成分、物質、および作用物質の合計の体積%は、100体積%を超えないように選択されるものと理解される。
【0072】
全ての数値は、ここでは、明確に示されていてもされていなくでも、用語「略」によって修飾されるものとする。ここで用いられる用語「略」は、起こり得る、数量における変動を示す。用語「略」によって修飾されていてもされていなくても、特許請求の範囲は当該量と同量を含む。
【0073】
本明細書および添付の特許請求の範囲中、明確に「一つの」と書かれていない場合、一つまたは複数の場合を含むとされるべきである。
【0074】
ここでは、第一素子が第二素子「の上に」形成される、または積層されることを指す。上記第一素子は、上記第二素子の上に直接積層され得る。または、一つまたは複数の他の素子は、間に積層され得る。第一素子が、第二素子「の上に直接」形成される、または積層されると記すとき、他の素子は間に積層されない。
【0075】
用語「接触して挟まれる」は、二つの隣接層に直接接触する中間の層による三層の構成を指す。
【0076】
上記陽極および上記陰極は、陽極/陰極、または、陽極/陰極、または、陽極層/陰極層と表され得る。
【0077】
本発明による有機発光ダイオードは、以下に示す構成を含み得る。この点について、それぞれの構成は以下に示すものであり得る。
【0078】
〔基板〕
上記基板は、有機発光ダイオードの製造において一般に用いられる基板であり得る。光が上記基板を通って発光される場合、上記基板は透明な物質であり得、例えば、硝子基板または透明なプラスチック基板であり得、機械強度、熱安定性、透過性、表面の平滑性、ハンドリングの容易性、および防水性に優れている。光が上面を通って発光される場合、上記基板は、透明な物質または非透明な物質であり得、例えば、硝子基板、プラスチック基板、金属基板、またはシリコン基板であり得る。
【0079】
〔陽極〕
上記陽極は、上記陽極を形成するために用いられる化合物を、堆積するまたはスパッタリングすることによって、形成され得る。上記陽極を形成するために用いられる上記化合物は、高機能性化合物であり得るため、正孔注入を容易にする。上記陽極物質はまた、低機能性物質(即ちアルミニウム)から選択され得る。上記陽極は、透明な電極または反射する物質であり得る。インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物(SnO)、および亜鉛酸化物(ZnO)のような、透明な伝導性化合物は、上記陽極120を形成するために用いられ得る。上記陽極120はまた、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)、銀(Ag)、金(Au)、または同様のものを用いて形成され得る。
【0080】
〔陰極〕
さらに好ましい実施形態において、上記陰極は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、第3遷移金属、およびそれらの混合物からなる群から選択される、第一の0価の金属を含む、少なくとも一つの実質的に金属の陰極層を含む。
【0081】
用語「実質的に金属の」は、少なくとも部分的に、実質的に元素の形態にある金属を含むと理解され得る。用語「実質的に元素の」は、電子状態および電子エネルギーの観点から、並びに含有金属原子の化学結合の観点から、元素金属または自由金属原子の形態、金属原子のクラスターの形態、それから金属塩、金属と非金属との間の共有結合を含む、有機金属化合物または他の化合物の形態、または、金属の配位子化合物の形態に近い形態であると理解される。
【0082】
金属合金は、適切な元素金属、原子にされた金属、金属分子、および金属クラスターのように表され、金属の実質的に元素の形態の他の例であると理解される。実質的に金属の形態のこれらの代表例は、好ましくは、実質的に金属の陰極層の構成である。
【0083】
特に、上記第一の0価の金属がこの群から選択されるとき、低操作電圧および高製造率が得られ得る。
【0084】
他の面によると、そこに有機発光ダイオードが備えられ、上記有機発光ダイオードでは、上記実質的に金属の陰極層は、金属ハロゲンおよび/または金属有機錯体でない。
【0085】
好ましい実施形態によると、上記実質的に金属の陰極層は、上記第一の0価の金属を含む、または、からなる。特に好ましい実施形態において、上記実質的に金属の陰極層は、さらに第二の0価の金属をさらに含む。上記第二の0価の金属は、金属または遷移金属の主な群から選択される。上記第二の0価の金属は、上記第一の0価の金属とは異なる。
【0086】
この点に関して、上記第二の0価の金属は、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ag、Au、Al、Ga、In、Sn、Te、Bi、Pb、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、上記第二の0価の金属は、Ag、Au、Zn、Te、Yb、Ga、Bi、Ba、Ca、Al、およびそれらの混合物からなる群から選択され、最も好ましくは、上記第二の0価の金属は、Ag、Zn、Te、Yb、Ga、Bi、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0087】
上記第二の0価の金属は、堆積工程の信頼性および堆積層の装置安定性を改善し得る。それゆえ、この一覧から選択されるとき、上記第二の0価の金属は、製造率を改善し得る。さらに、上記第二の0価の金属は、上記第一の陰極層の反射力を改善し得る。
【0088】
他の実施形態によると、上記実質的に金属の陰極層は、少なくとも略15体積%以上、略99体積%以下の上記第一の0価の金属と、略85体積%以下、略1体積%以上の上記第二の0価の金属と、を含み得ることができ、好ましくは、少なくとも15体積%以上、略95体積%以下の上記第一の0価の金属と、略85体積%以下、略5体積%以上の上記第二の0価の金属と、を含み得ることができ、より好ましくは、少なくとも20体積%以上、略90体積%以下の上記第一の0価の金属と、略80体積%以下、略10体積%以上の上記第二の0価の金属と、を含み得ることができ、また好ましくは、少なくとも15体積%以上、略80体積%以下の上記第一の0価の金属と、略85体積%以下、略20体積%以上の上記第二の0価の金属と、を含み得ることができ。
【0089】
特に好ましくは、上記実質的に金属の陰極層は、Mgから選択される少なくとも略20体積%以上、略85体積%以上の上記第一の0価の金属と、Agから選択される略80体積%以下、略15体積%以上の上記第二の0価の金属と、を含む。
【0090】
上記第一の0価の金属は、上記陰極から効果的な電子注入を可能にし得る。上記第二の0価の金属は、上記陰極層を安定化し、かつ/または、上記陰極の堆積段階の率を上昇させ、かつ/または、上記陰極の透過性または反射率を上昇させ得る。
【0091】
さらなる実施形態において、上記陰極に含まれる上記実質的に金属の陰極層は、第一陰極層であり、上記陰極はさらに第二陰極層を含む。上記第一陰極層は、上記有機半導体層の近くに構成され、上記第二陰極層は、上記有機半導体層からさらに遠くに構成される。上記第二陰極層は、少なくとも一つの、0価の金属、合金、酸化物、またはそれらの混合物の形態における第三金属を含み、上記第三金属は、金属、遷移金属、希土類金属、またはそれらの混合物の主な群から選択され、好ましくは、上記第三金属は、0価の、Ag、Al、Cu、Au、MgAg合金、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、イッテリビウム酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物から選択され、より好ましくは、上記第三金属は、Ag、Al、またはMgAg合金から選択され、最も好ましくは、上記第三金属は、0価の、AgまたはAlから選択される。
【0092】
上記第二の陰極層は、上記第一の陰極層を環境から保護し得る。さらに、光が上記陰極を通って発光されるとき、装置における発光のアウトカップリングを高め得る。
【0093】
上記第一の陰極層の厚さは、略0.2nm~100nm、好ましくは1~50nmであり得る。第二の陰極層が存在しない場合、上記第一の陰極層の厚さは、1~25nmであり得る。第二の陰極層が存在する場合、上記第一の陰極層の厚さは、0.2~5nmであり得る。
【0094】
上記第二の陰極層の厚さは、0.5~500nm、好ましくは10~200nm、より好ましくは50~150nmであり得る。
【0095】
上記陰極の厚さが5nm~50nmであるとき、上記陰極は、例え金属または金属合金が用いられても、透明であり得る。
【0096】
さらなる実施形態において、上記陰極は、透明伝導性酸化物(TCO)、金属硫化物、および/または、Agを含み、好ましくは、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛硫化物、またはAgを含む。最も好ましくは、ITOおよびAgである。上記陰極がこれらの化合物を含む場合、可視発光を通す透明である。
【0097】
上記透明な陰極の厚さは、5~500nmであり得る。上記透明な陰極が透明伝導性酸化物(TCO)または金属硫化物からなる場合、上記透明な陰極の厚さは、30~500nm、好ましくは50~400nm、より好ましくは70~300nmから選択され得る。上記透明な陰極がAgからなる場合、上記透明な陰極の厚さは、5~50nm、好ましくは5~20nmから選択され得る。
【0098】
〔正孔注入層〕
上記正孔注入層(HIL)130は、真空堆積、スピンコーティング、プリンティング、キャスティング、スロットダイコーティング、ラングミュア-ブロジェット(LB)堆積、または同様のものによって、上記陽極120上に形成され得る。上記HIL130が真空堆積を用いて形成されるとき、堆積条件は、所望の構造および熱特性を有する上記HIL130を形成するために用いられる上記化合物によって、変化し得る。しかしながら、一般に、真空堆積の条件は、100℃~500℃の堆積温度、10-8~10-3トル(1トル=133.322Pa)の圧力、および0.1~10nm/秒の堆積速度を含み得る。
【0099】
上記HIL130がスピンコーティング、プリンティングを用いて形成されるとき、コーティング条件は、所望の構造および熱特性を有する上記HIL130を形成するために用いられる化合物によって、変化し得る。例えば、上記コーティング条件は、略2000rpm~略5000rpmのコーティング速度、および略80℃~略200℃の熱処理温度を含み得る。上記コーティングが行われた後に、熱処理は溶媒を除去する。
【0100】
上記HIL130は、HILを形成するために一般に用いられる化合物から形成され得る。上記HIL130を形成するために用いられ得る化合物の例は、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、TDATA、2T-NATA、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、およびポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホン酸塩)(PANI/PSS)のような、フタロシアニン化合物を含む。
【0101】
上記HIL130は、pドーパントの純粋層であり得、またはpドーパントでドープされた正孔輸送膜化合物から選択され得る。公知の酸化還元ドープされた正孔輸送材料の一般例は、LUMOレベルが略-5.2eVであるテトラフルオロテトラシアノキノンジメタン(F4TCNQ)でドープされたHOMOレベルが略-5.2eVである銅フタロシアニン(CuPc);F4TCNQでドープされた亜鉛フタロシアニン(ZnPc)(HOMO=-5.2eV);F4TCNQでドープされたα-NPD(N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン);2,2’-(パーフルオロナフタレン-2,6-ジイリデン)ジマロノニトリル(PD1)でドープされたa-NPD;2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)(PD2)でドープされたa-NPD;である。ドーパント濃度は、1~20重量%、より好ましくは3重量%~10重量%から選択できる。
【0102】
上記HIL130の厚さは、略1nm~100nmであり得、例えば、略1nm~略25nmであり得る。上記HIL130の厚さがこの範囲内にあるとき、上記HIL130は、駆動電圧が実質的に上昇しない、優れた正孔注入特性を有し得る。
【0103】
〔正孔輸送層〕
上記正孔輸送層(HTL)140は、真空堆積、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、ラングミュア-ブロジェット(LB)堆積、または同様のものによって、上記HIL130上に形成され得る。上記HTL140が真空堆積またはスピンコーティングによって形成されるとき、堆積およびコーティングの条件は、上記HIL130の形成の条件と同様であり得る。しかしながら、上記HTL140を形成するために用いられる化合物によって、真空堆積または溶液堆積の条件は変化し得る。
【0104】
上記HTL140は、HTLを形成するために一般に用いられる化合物によって形成され得る。好適に用いられることができる化合物は、例えば、Yasuhiko Shirota and Hiroshi Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010、およびその参考文献に開示されている。上記HTL140を形成するために用いられ得る化合物の例は、N-フェニルカルバゾールまたはポリビニルカルバゾールのようなカルバゾール誘導体;N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン(α-NPD)のような芳香族縮合環を有するアミン誘導体;および4,4’,4''-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)のようなトリフェニルアミン系化合物;である。これらの化合物の中で、TCTAは正孔に輸送でき、かつ励起子が上記EMLに散乱されるのを抑制することができる。
【0105】
上記HTL140の厚さは、略5nm~略250nm、好ましくは略10nm~略200nm、さらに略20nm~略190nm、さらに略40nm~略180nm、さらに略60nm~略170nm、さらに略80nm~略160nm、さらに略100nm~略160nm、さらに略120nm~略140nmであり得る。好ましい上記HTL140の厚さは、170nm~200nmであり得る。
【0106】
上記HTLの厚さがこの範囲内にあるとき、駆動電圧が実質的に上昇することなく、上記HTL140は優れた正孔輸送特性を有し得る。
【0107】
〔電子遮断層〕
上記電子遮断層(EBL)150の機能は、電子が上記発光層から上記正孔輸送層へ輸送されるのを防ぐことであり、それゆえ、電子を上記発光層に閉じ込める。それゆえ、効率、操作電圧、および/または寿命が改善される。一般的に、上記電子遮断層はトリアリールアミン化合物を含む。上記トリアリールアミン化合物は、上記正孔輸送層のLUMOレベルよりも真空レベルに近いLUMOレベルを有し得る。上記電子遮断層は、上記正孔輸送層のHOMOレベルに比べて真空レベルからさらに離れたHOMOレベルを有し得る。上記電子遮断層の厚さは2~20nmから選択される。
【0108】
上記電子遮断層は以下に示す式Zの化合物を含み得る。
【0109】
【化5】
【0110】
式Zにおいて、
CY1およびCY2は、それぞれ同一、または互いに異なり、それぞれ独立してベンゼン環またはナフタレン環を示し、
Ar1~Ar3は、それぞれ同一、または互いに異なり、それぞれ独立して、水素、置換または非置換の6~30個の炭素原子を有するアリール基、および置換または非置換の5~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基からなる群から選択され、
Ar4は、置換または非置換のフェニル基、置換または非置換のビフェニル基、置換または非置換のテルフェニル基、置換または非置換のトリフェニレン基、および置換または非置換の5~30個の炭素原子を有するヘテロアリール基からなる群から選択され、
Lは、置換または非置換の5~30個の炭素原子を有するアリーレン基である。
【0111】
上記電子遮断層が高い三重項レベルを有する場合、上記電子遮断層は三重項調節層としても示され得る。
【0112】
リン光性の緑色発光層またはリン光性の青色発光層が用いられる場合、上記三重項調節層の機能は、三重項のクエンチを減少することである。それゆえ、リン光性の発光層からの発光の、より高い効率を達成することができる。上記三重項調節は、隣接する発光層におけるリン光性のエミッタの三重項レベルの上の三重項レベルを有するトリアリールアミン化合物から選択される。好適な三重項調節層は、特に上記トリアリールアミン化合物は、EP 2 722 908 A1に記載されている。
【0113】
〔発光層(EML)〕
上記EML150は、真空堆積、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB、または同様のものによって、上記HTL上に形成され得る。上記EMLが真空堆積またはスピンコーティングを用いて形成されるとき、堆積およびコーティングの条件は、上記HIL形成の条件と同様であり得る。しかしながら、上記EMLを形成するために用いられる化合物によって、堆積およびコーティングの条件は変化し得る。
【0114】
上記発光層(EML)は、ホストおよびドーパントの組み合わせから形成され得る。上記ホストの例は、Alq3、4,4’-N,N’-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)、ポリ(n-ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4''-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBI)、3-tert-ブチル-9,10-ジ-2-ナフチルアントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、ビス(2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト)亜鉛(Zn(BTZ)2)、以下に示すE3、AND、以下に示す化合物1、および以下に示す化合物2である。
【0115】
【化6】
【0116】
上記ドーパントは、リン光性のまたは蛍光性のエミッタであり得る。リン光性のエミッタおよび熱活性化遅延蛍光(TADF)機構による光を発光するエミッタは、効率がより高いため好ましい。上記エミッタは、低分子またはポリマーであり得る。
【0117】
赤色ドーパントの例は、PtOEP、Ir(piq)、およびBtpIr(acac)であるが、それらに制限されない。これらの化合物は、リン光性のエミッタである。しかしながら、リン光性の赤色ドーパントも用いることができる。
【0118】
【化7】
【0119】
リン光性の緑色ドーパントの例は、以下に示す、Ir(ppy)(ppy=フェニルピリジン)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mpyp)である。化合物3は、蛍光性の緑色エミッタの例であり、その構造を以下に示す。
【0120】
【化8】
【0121】
リン光性の青色ドーパントの例は、FIrpic、(Fppy)Ir(tmd)、およびIr(dfppz)、ter-フルオレンであり、その構造を以下に示す。4,4’-ビス(4-ジフェニル-アミノスチリル)ビフェニル(DPAVBi)、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(TBPe)、および以下に示す化合物4は、蛍光性の青色ドーパントの例である。
【0122】
【化9】
【0123】
上記ドーパントの量は、上記ホストを100重量部として、略0.01~略50重量部である。また、上記発光層は、発光ポリマーからなり得る。上記EMLは、略10nm~略100nmの厚さを有することができ、例えば、略20nm~60nmの厚さであり得る。上記EMLの厚さがこの範囲内であるとき、上記EMLは、駆動電圧が実質的に上昇することなく、優れた発光を有し得る。
【0124】
〔正孔遮断層(HBL)〕
上記EMLがリン光性のドーパントを含むとき、上記ETLへの三重項励起子または正孔の散乱を防ぐために、正孔遮断層(HBL)は、真空堆積、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、LB堆積、または同様のものによって、上記EML上に形成され得る。
【0125】
上記HBLが真空堆積またはスピンコーティングを用いて形成されるとき、堆積およびコーティングの条件は、上記HILの形成の条件と同様であり得る。しかしながら、上記HBLを形成するために用いられる化合物によって、堆積およびコーティングの条件は変化し得る。HBLを形成するために一般に用いられる化合物が用いられ得る。上記HBLを形成する化合物の例は、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、およびフェナントロリン誘導体を含む。
【0126】
上記HBLは、略5nm~略100nmの厚さを有し得ることができ、例えば、略10nm~略30nmの厚さを有し得る。上記HBLの厚さがこの範囲内にあるとき、上記HBLは、駆動電圧が実質的に上昇することなく、優れた正孔遮断特性を有し得る。
【0127】
〔電子輸送層(ETL)〕
本発明に係る上記OLEDは、電子輸送層(ETL)を含んでいなくてもよい。しかしながら、本発明による上記OLEDは、電子輸送層(ETL)を任意に含んでいてもよい。
【0128】
本発明によると、上記電子輸送層は、上記発光層と上記有機半導体層との間に構成される。上記電子輸送層は、本発明に係る上記有機半導体層から上記発光層への電子輸送を容易にする。好ましくは、上記電子輸送層は、上記発光層と本発明に係る上記有機半導体層との間に接触して挟まれる。他の好ましい実施形態において、上記電子輸送層は、上記正孔遮断層と本発明に係る上記有機半導体層との間に接触して挟まれる。
【0129】
好ましくは、上記電子輸送層は、エミッタドーパントではない。他の好ましい面において、上記電子輸送層は、金属、金属ハライド、金属塩、および/または、リチウム有機金属複合体ではない。
【0130】
様々な実施形態によると、上記OLEDは、少なくとも第一電子輸送層、および少なくとも第二電子輸送層を含む、電子輸送層または電子輸送層堆積を含み得る。
【0131】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記電子輸送層は、少なくとも一つの基質化合物を含み得る。好ましくは、上記少なくとも一つの基質化合物は、実質的に共有結合の基質化合物である。さらに好ましくは、上記電子輸送層の上記基質化合物は、有機基質化合物である。
【0132】
「実質的に共有結合の」は、大部分が共有結合によって結合する成分を含む化合物を意味すると理解されることである。実質的に共有結合の基質材料は、少なくとも一つの実質的に共有結合の化合物からなる。実質的に共有結合の材料は、好ましくは真空熱蒸着(VTE)によって安定に十分処理でき得る低分子重量化合物を含むことができる。また、実質的に共有結合の基質材料は、ポリマー化合物、好ましくは溶媒に可溶な化合物を含むことができる。従って、実質的に共有結合の基質材料は、溶液の形態で処理できる。ポリマーの実質的に共有結合の材料は、無限の不規則なネットワークを形成するために架橋され得ると理解される。しかしながら、上記架橋されたポリマーの実質的に共有結合の基質化合物は、周辺原子だけでなく骨格原子も両方含むと推定される。上記実質的に共有結合の化合物の骨格原子は、少なくとも二つの隣接した原子の共有結合である。
【0133】
カチオンおよびアニオンを含む化合物は、少なくとも上記カチオンまたは少なくとも上記アニオンが少なくとも9個の共有結合原子を含む場合、実質的に共有結合としてみなされる。
【0134】
実質的に共有結合の基質化合物の好ましい例は、大部分がC、H、O、N、Sの共有結合からなる有機基質化合物である。上記有機基質化合物は、さらにB、P、As、Seの共有結合も任意に含み得る。炭素-金属の共有結合を含む有機金属化合物、有機配位子を含む金属複合体、および有機酸の金属塩は、有機基質化合物として機能し得る有機化合物のさらなる例である。
【0135】
より好ましい面によると、上記有機基質化合物は金属原子を欠き、その骨格原子の大部分は、C、O、S、Nから選択される。
【0136】
より好ましい面によると、上記実質的に共有結合の基質化合物は、少なくとも6個の、より好ましくは少なくとも10個の、さらに好ましくは少なくとも14個の非局在化電子の共役系を含む。
【0137】
非局在化電子の共役系の例は、π結合およびσ結合の交互する系である。さらに、原子間の上記π結合を有する一つまたは二つ以上の原子の構造単位は、少なくとも一つの孤立電子対を有する原子、一般的に、O、S、Se、Te、から選択される二価の原子、またはN、P、As、Sb、Biから選択される三価の原子に置き換えられることができる。好ましくは、上記非局在化電子の共役系は、ヒュッケル則による少なくとも一つの芳香環または複素芳香環を含む。また好ましくは、上記実質的に共有結合の基質化合物は、それぞれが共有結合または縮合によって結合された、少なくとも二つの芳香環または複素芳香環を含み得る。
【0138】
上記電子輸送層は、好ましくは少なくとも第二基質化合物を含む。好適な基質化合物は、EP 15201418.9に開示されている。
【0139】
より好ましい面によると、上記第二有機基質化合物は、有機基質化合物であり、ベンゾ[k]フルオランテン、ピレン、アントラセン、フルオレン、スピロ(ビフルオレン)、フェナンスレン、ペリレン、トリプチセン、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]、コロネン、トリフェニレン、キサンテン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ジナフトフラン、アクリジン、ベンゾ[c]アクリジン、ジベンゾ[c,h]アクリジン、ジベンゾ[a,j]アクリジン、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、カルバゾール、フェニルトリアゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリン、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、キナゾリン、ベンゾ[h]キナゾリン、ピリド[3,2-h]キナゾリン、ピリミド[4,5-f]キナゾリン、キノリン、ベンゾキノリン、ピロロ[2,1-a]イソキノリン、ベンゾフロ[2,3-d]ピリダジン、チエノピリミジン、ジチエノチオフェン、ベンゾチエノピリミジン、ベンゾチエノピリミジン、ホスフィンオキサイド、ホスホール、トリアリールボラン、2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体、2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体、またはそれらの混合物を含む群から選択されることができる。
【0140】
より好ましい面によると、有機発光ダイオード(OLED)が備えられ、上記有機発光ダイオードは、少なくとも第二有機基質化合物を含む少なくとも一つの電子輸送層を含み、上記有機半導体層は、上記第一陰極層と上記電子輸送層との間に接触して挟まれる。上記電子輸送層は、略0デバイ以上、略2.5デバイ以下、好ましくは0デバイ以上、2.3デバイ未満、より好ましくは0デバイ以上、2デバイ未満の双極子モーメントを有する第二有機基質化合物を含み得る。
【0141】
他の面によると、有機発光ダイオード(OLED)が備えられ、上記有機発光ダイオードは、少なくとも二つの、第一電子輸送層および第二輸送層からなる電子輸送層を含む。上記第一電子輸送層は、第二有機基質化合物を含み得ることができ、上記第二電子輸送層は、第三有機基質化合物を含み得ることができ、上記第一電子輸送層の上記第二有機基質化合物は、上記第二電子輸送層の上記第三有機基質化合物と異なっていてもよい。
【0142】
他の実施形態によると、上記第二有機基質化合物の双極子モーメントは、0デバイ以上、2.5デバイ以下から選択され得ることができ、上記第二有機基質化合物は、非極性基質化合物としても示すことができる。
【0143】
N原子を含む分子の上記双極子モーメント
【0144】
【数1】
【0145】
は以下の式によって与えられる。
【0146】
【数2】
【0147】
および、
【0148】
【数3】
【0149】
は、上記分子における原子iの、部分電荷および配置である。上記双極子モーメントは、半経験的な分子軌道法によって決定される。表5における値は、以下に示す方法を用いて算出した。部分電荷および原子配置は、TURBOMOLE V6.5プログラムパッケージで実行するとき、def-SV(P)basisを有するBeckeおよびPerdew BPのDEF関数、またはdef2-TZVP basisセットを有する混成汎関数B3LYPの何れかを用いて得られる。一つより多いコンフォメーションが実行可能な場合、最も低い全エネルギーを有する上記コンフォメーションは、上記双極子モーメントを決定するために選択される。
【0150】
例えば、上記第二有機基質化合物は、0~2.5デバイの双極子モーメントを有し得ることができ、上記第一有機基質化合物は、転化Iの中心、水平鏡面、一つより多いC軸(n>1)および/またはCに対して垂直のnCを含み得る。
【0151】
上記第二有機基質化合物が0~2.5デバイの双極子モーメントを有する場合、上記第一有機基質化合物は、アントラセン基、ピレン基、ペリレン基、コロネン基、ベンゾ[k]フルオランテン基、フルオレン基、キサンテン基、ジベンゾ[c,h]アクリジン基、ジベンゾ[a,j]アクリジン基、ベンゾ[c]アクリジン基、トリアリールボラン基、ジチエノチオフェン基、トリアジン基、またはベンゾチエノピリミジン基を含み得る。
【0152】
上記第二有機基質化合物は、略0デバイ以上、略2.5デバイ以下の双極子モーメントを有し、上記第二有機基質化合物は、イミダゾール基、フェナントロリン基、ホスフィンオキサイド基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリミジン基、キナゾリン基、ベンゾ[h]キナゾリン基、またはピリド[3,2-h]キナゾリンではない。
【0153】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、以下に示す化合物またはそれらの誘導体から選択される。上記化合物は、アントラセン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、フルオレン、スピロ-フルオレン、キサンテン、カルバゾール、ジベンゾ[c,h]アクリジン、ジベンゾ[a,j]アクリジン、ベンゾ[c]アクリジン、トリアリールボラン化合物、2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体、2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体、トリアジン、ベンゾチエノピリミジン、ジチエノチオフェン、ベンゾ[k]フルオランテン、ペリレン、またはそれらの混合物である。
【0154】
さらに好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、式(2)のジベンゾ[c,h]アクリジン化合物、
【0155】
【化10】
【0156】
および/または式(3)のジベンゾ[a,j]アクリジン化合物、
【0157】
【化11】
【0158】
および/または式(4)のベンゾ[c]アクリジン化合物を含む。
【0159】
【化12】
【0160】
ここで、Arは、独立して、C~C20アリーレン、好ましくはフェニレン、ビフェニレン、またはフルオレニレンから選択され、
Arは、独立して、非置換または置換のC~C40アリール、好ましくはフェニル、ナフチル、アントラニル、ピレニル、またはフェナンスリルから選択され、
Arが置換される場合、一つまたは複数の置換体は、C~C12アルキルおよびC~C12ヘテロアルキルからなる群から独立して選択され、C~Cアルキルであることが好ましい。
【0161】
好適なジベンゾ[c,h]アクリジン化合物は、EP 2 395 571に開示されている。好適なジベンゾ[a,j]アクリジン化合物は、EP 2 312 663に開示されている。好適なベンゾ[c]アクリジン化合物は、WO 2015/083948に開示されている。
【0162】
さらなる実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたジベンゾ[c,h]アクリジン化合物、好ましくは7-(ナフタレン-2-イル)ジベンゾ[c,h]アクリジン、7-(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジン、7-(3-(ピリジン-4-イル)フェニル)ジベンゾ[c,h]アクリジンを含むことが好ましい。
【0163】
さらなる実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたジベンゾ[a,j]アクリジン化合物、好ましくは14-(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ジベンゾ[a,j]アクリジンを含むことが好ましい。
【0164】
さらなる実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたベンゾ[c]アクリジン化合物、好ましくは7-(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ベンゾ[c]アクリジンを含むことが好ましい。
【0165】
上記第二有機基質化合物は、式(5)のトリアジン化合物を含むことがさらに好ましい。
【0166】
【化13】
【0167】
ここで、Arは、独立して、非置換または置換のC~C20アリール、またはAr5.1~Ar5.2から選択され、
Ar5.1は、非置換または置換のC~C20アリーレンから選択され、
Ar5.2は、非置換または置換のC~C20アリール、または非置換または置換のC~C20ヘテロアリールから選択され、
Arは、C~C20アリーレン、好ましくはフェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、フルオレニレンから選択され、
Arは、独立して、置換または非置換のアリール、置換または非置換のヘテロアリールからなる群から選択される。上記アリールおよび上記ヘテロアリールは、6~40個の環形成原子を有し、好ましくはフェニル、ナフチル、フェナンチル、フルオレニル、ターフェニル、ピリジル、キノリル、ピリミジル、トリアジニル、ベンゾ[h]キノリニル、またはベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジンであり、
xは、1または2から選択され、
Arが置換される場合、一つまたは複数の置換体は、C~C12アルキルおよびC~C12ヘテロアルキル、好ましくはC~Cアルキルから独立して選択され得、
Arが置換される場合、一つまたは複数の置換体は、C~C12アルキル、C~C12ヘテロアルキル、およびC~C40アリール、好ましくはC~Cアルキルから独立して選択され得る。
【0168】
好適なトリアジン化合物は、US 2011/284832、WO 2014/171541、WO 2015/008866、WO 2015/105313、JP 2015-074649 A、JP 2015-126140、およびKR 2015/0088712に開示されている。
【0169】
さらに、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたトリアジン化合物、好ましくは3-[4-(4,6-ジ-2-ナフタレニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]キノロン、2-[3-(6’-メチル[2,2’-ビピリジン]-5-イル)-5-(9-フェナントレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(3-(フェナントレン-9-イル)-5-(ピリジン-2-イル)フェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(5'''-フェニル-[1,1’:3’,1'':3'',1''':3''',1''''-キンクフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4-(3’-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、および/または、2-(3’-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-4-フェニルベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジンを含むことが好ましい。
【0170】
好適な2-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体または2-(ベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェノキシ金属複合体は、WO 2010/020352に開示されている。
【0171】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたベンゾチエノピリミジン化合物、好ましくは2-フェニル-4-(4’,5’,6’-トリフェニル-[1,1’:2’,1'':3'',1'''-クアテルフェニル]-3'''-イル)ベンゾ[4,5]チエノ[3,2-d]ピリミジンを含む。好適なベンゾチエノピリミジン化合物は、WO 2015/0105316に開示されている。
【0172】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたベンゾ[k]フルオランテン化合物、好ましくは7,12-ジフェニルベンゾ[k]フルオランテンを含む。好適なベンゾ[k]フルオランテン化合物は、JP 10189247 A2に開示されている。
【0173】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたペリレン化合物、好ましくは3,9-ビス([1,1’-ビフェニル]-2-イル)ペリレン、3,9-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレン、または3,10-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレンを含む。好適なペリレン化合物は、US 2007/202354に開示されている。
【0174】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ピレン化合物を含む。好適なピレン化合物は、US 2005/0025993に開示されている。
【0175】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、スピロ-フルオレン化合物を含む。好適なスピロ-フルオレン化合物は、JP 2005-032686に開示されている。
【0176】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、キサンテン化合物を含む。好適なキサンテン化合物は、US 2003/168970 AおよびWO 2013/149958に開示されている。
【0177】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、コロネン化合物を含む。好適なコロネン化合物は、Adachi, C.; Tokito, S.; Tsutsui, T.; Saito, S., Japanese Journal of Applied Physics, Part 2: Letters (1988), 27(2), L269-L271に開示されている。
【0178】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、トリフェニレン化合物を含む。好適なトリフェニレン化合物は、US 2005/0025993に開示されている。
【0179】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、カルバゾール化合物から選択される。好適なカルバゾール化合物は、US 2015/207079に開示されている。
【0180】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ジチエノチオフェン化合物から選択される。好適なジチエノチオフェン化合物は、KR 2011/085784に開示されている。
【0181】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、アントラセン化合物を含む。特に好ましくは、以下に示す式400で示されるアントラセン化合物である。
【0182】
【化14】
【0183】
式400において、Ar111およびAr112は、それぞれ独立して、置換または非置換のC~C60アリーレン基であり得、Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、置換または非置換のC~C10アルキル基または置換または非置換のC~C60アリール基であり得、g、h、iおよびjは、それぞれ独立して、0~4の整数であり得る。
【0184】
いくつかの実施形態において、式400におけるAr111およびAr112は、それぞれ独立して、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、もしくはピレニレン基;または、少なくとも一つのフェニル基、ナフチル基、もしくはアンチリル基でそれぞれ置換された、フェニレン基、ナフチレン基、フェナントレニレン基、フルオレニル基、もしくはピレニレン基の一つであり得る。
【0185】
式400において、g、h、iおよびjは、それぞれ独立して、0、1、または2の整数であり得る。
【0186】
式400において、Ar113~Ar116は、それぞれ独立して、少なくとも一つのフェニル基、ナフチル基、またはアンチリル基で置換された、C~C10アルキル基;フェニル基、ナフチル基、アンチリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基;少なくとも一つの重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基もしくはその塩、スルホン酸基もしくはその塩、リン酸基もしくはその塩、C~C60アルキル基、C~C60アルケニル基、C~C60アルキニル基、C~C60アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、アンチリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基でそれぞれ置換された、フェニル基、ナフチル基、アンチリル基、ピレニル基、フェナントレニル基、またはフルオレニル基、或いは、
【0187】
【化15】
【0188】
の一つであり得るが、本発明の実施形態はこれらに制限されない。
【0189】
他の面において、上記電子輸送層は、極性の第二有機基質化合物を含み得る。好ましくは、上記第二有機基質化合物は、略2.5デバイより大きく、10デバイ未満、好ましくは3デバイより大きく、5デバイ未満、より好ましくは2.5デバイより大きく、4デバイ未満の双極子モーメントを有する。
【0190】
有機基質化合物が2.5デバイより大きく、10デバイ未満の双極子モーメントを有する場合、上記有機基質化合物は、C、C、Cnv、またはCの対称群の一つによって示され得る。
【0191】
有機基質化合物が2.5デバイより大きく、10デバイ未満の双極子モーメントを有するとき、上記有機基質化合物は、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ジナフトフラン、ピリジン、アクリジン、フェニルトリアゾール、ベンズイミダゾール、フェナントロリン、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、オキサゾール、キナゾリン、ベンゾキナゾリン、ピリド[3,2-h]キナゾリン、ピリミド[4,5-f]キナゾリン、キノリン、ベンゾキノリン、ピロロ[2,1-a]イソキノリン、ベンゾフロ[2,3-d]ピリダジン、チエノピリミジン、ホスフィンオキサイド、ホスホール、またはそれらの混合物を含み得る。
【0192】
上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたホスフィンオキサイド化合物、好ましくは(3-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、3-フェニル-3H-ベンゾ[b]ジナフト[2,1-d:1’,2’-f]ホスフェピン-3-オキサイド、フェニル-ジ(ピレン-1-イル)ホスフィンオキサイド、ビス(4-(アントラセン-9-イル)フェニル)(フェニル)ホスフィンオキサイド、(3-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、フェニル-ジ(ピレン-1-イル)-ホスフィンオキサイド、ジフェニル(5-(ピレン-1-イル)ピリジン-2-イル)ホスフィンオキサイド、ジフェニル(4’-(ピレン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)ホスフィンオキサイド、ジフェニル(4’-(ピレン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)ホスフィンオキサイド、(3’-(ジベンゾ[c,h]アクリジン-7-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジフェニルホスフィンオキサイド、および/または、フェニルビス(3-(ピレン-1-イル)フェニル)ホスフィンオキサイドを含むことがさらに好ましい。
【0193】
第二有機基質化合物として用いられ得るジアリールホスフィンオキサイド化合物は、EP 2395571 A1、WO 2013/079217 A1、EP 13187905、EP 13199361、およびJP 2002-063989 A1に開示されている。ジアルキルホスフィンオキサイド化合物は、EP 15195877.4に開示されている。
【0194】
上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたベンズイミダゾール化合物、好ましくは2-(4-(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン-2-イル)フェニル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、1-(4-(10-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)アントラセン-9-イル)フェニル)-2-エチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール、および/または、1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼンを含むことがさらに好ましい。
【0195】
第二有機基質化合物として用いることができるベンズイミダゾール化合物は、US 6878469およびWO 2010/134352に開示されている。
【0196】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、キノリン化合物を含む。好適なキノリン化合物は、US 2009/0108746およびUS 2009/0166670に開示されている。
【0197】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ベンゾキノリン化合物を含む。好適なベンゾキノリン化合物は、JP 2004-281390およびUS 2012/0280613に開示されている。
【0198】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ピリミジン化合物を含む。好適なピリミジン化合物は、JP 2004-031004に開示されている。
【0199】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、オキサゾール化合物を含む。好ましいオキサゾール化合物は、JP 2003-007467およびWO 2014/163173に開示されている。
【0200】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、オキサジアゾール化合物を含む。好ましいオキサジアゾール化合物は、US 2015/280160に開示されている。
【0201】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ベンゾオキサゾール化合物を含む。好ましいベンゾオキサゾール化合物は、Shirota and Kageyama, Chem. Rev. 2007, 107, 953-1010に開示されている。
【0202】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、トリアゾール化合物を含む。好適なトリアゾール化合物は、US 2015/280160に開示されている。
【0203】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、ピリミド[4,5-f]キナゾリン化合物を含む。好適なピリミド[4,5-f]キナゾリン化合物は、EP 2504871に開示されている。
【0204】
好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、以下の、式2によって示される化合物、および式3によって示される化合物からなる群から選択され得る。
【0205】
【化16】
【0206】
式2および式3において、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、置換もしくは非置換のC~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC~C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC~C30アクリル基、置換もしくは非置換のC~C30アルケニル基、置換もしくは非置換のC~C30アルキニル基、置換もしくは非置換のC~C30アリール基、または置換もしくは非置換のC~C30ヘテロアリール基である。少なくとも二つの隣接したR~Rの官能基は、飽和環または不飽和環を形成するために、必要に応じてさらに互いに結合する。Lは、単結合、置換もしくは非置換のC~C30アルキレン基、置換もしくは非置換のC~C30アリーレン基、または、置換もしくは非置換のC~C30ヘテロアリーレン基である。Q~Qは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のC~C30アリール基、または置換もしくは非置換のC~C30ヘテロアリール基であり、「a」は、1~10の整数である。
【0207】
例えば、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基、およびピラジニル基からなる群から選択され得る。
【0208】
特に、式2および/または式3において、R~Rは、それぞれ水素原子であり得、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基、およびピラジニル基からなる群から選択され得る。さらに、式3において、R~Rはそれぞれ水素原子であり得る。
【0209】
例えば、式2および/または式3において、Q~Qは、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基、およびピラジニル基である。特に、式2および/または式3において、Q、Q~Q、QおよびQは、水素原子であり、QおよびQは、それぞれ独立して、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピリジニル基、およびピラジニル基からなる群から選択され得る。
【0210】
例えば、式2および/または式3において、Lは、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピリジニレン基、およびピラジニレン基からなる群から選択され得る。特に、Lは、フェニレン基またはピリジニレン基であり得る。例えば、「a」は1、2、または、3であり得る。
【0211】
上記第二有機基質化合物は、以下に示す化合物5、6、または7からさらに選択され得る。
【0212】
【化17】
【0213】
好ましくは、上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたフェナントロリン化合物、好ましくは2,4,7,9-テトラフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-2,9-ジ-p-トリル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジ(ビフェニル-4-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、および/または、3,8-ビス(6-フェニル-2-ピリジニル)-1,10-フェナントロリンを含む。
【0214】
第二有機基質化合物として用いることができるフェナントロリン化合物は、EP 1786050 A1およびCN 102372708に開示されている。
【0215】
他に好適に用いることができる第二有機基質化合物は、アリール基またはヘテロアリール基で置換されたキナゾリン化合物、好ましくは9-フェニル-9’-(4-フェニル-2-キナゾリニル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾールである。上記第一有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたキナゾリン化合物、好ましくは9-フェニル-9’-(4-フェニル-2-キナゾリニル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾールを含むことがさらに好ましい。第一有機基質材料として用いることができるキナゾリン化合物は、KR 2012/102374に開示されている。
【0216】
上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたベンゾ[h]キナゾリン化合物、好ましくは4-(2-ナフタレニル)-2-[4-(3-キノリニル)フェニル]-ベンゾ[h]キナゾリンを含むことがさらに好ましい。第一有機基質材料として用いることができるベンゾ[h]キナゾリン化合物は、KR 2014/076522に開示されている。
【0217】
上記第二有機基質化合物は、C~C40アリール基、C~C40ヘテロアリール基、および/または、C~C12アルキル基で置換されたピリド[3,2-h]キナゾリン化合物、好ましくは4-(ナフタレン-1-イル)-2,7,9-トリフェニルピリド[3,2-h]キナゾリン含むことも好ましい。第一有機基質材料として用いることができるピリド[3,2-h]キナゾリン化合物は、EP 1970371に開示されている。
【0218】
さらに好ましい実施形態において、上記第二有機基質化合物は、アクリジン化合物から選択される。好適なアクリジン化合物は、CN 104650032に開示されている。
【0219】
他の面によると、上記電子輸送層は、本発明に係る上記有機半導体層に直接接触することができる。複数の電子輸送層が存在する場合、上記有機半導体層は、上記第一電子輸送層と上記第一陰極層との間に接触して挟まれる。複数の電子輸送層が存在する場合、上記第二電子輸送層は、上記発光層と上記第一電子輸送層との間に接触して挟まれる。
【0220】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記電子輸送層の厚さは、略0.5nm以上、略95nm以下、好ましくは略3nm以上、略80nm以下、さらに好ましくは略5nm以上、略60nm以下、また好ましくは略6nm以上、略40nm以下、さらに好ましくは略8nm以上、略20nm以下、より好ましくは略10nm以上、略18nm以下であり得る。
【0221】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記電子輸送層堆積の厚さは、略25nm以上、略100nm以下、好ましくは略30nm以上、略80nm以下、さらに好ましくは略35nm以上、略60nm以下、より好ましくは略36nm以上、略40nm以下であり得る。
【0222】
上記HBLが形成される場合、上記ETLは、EML上にまたは上記HBL上にさらに形成され得る。
【0223】
上記ETLは、堆積構造、好ましくは二つのETL層の堆積構造を有し得るため、電子の注入と電子の輸送とのバランスを取り得ることができ、正孔は効果的に遮断され得る。従来のOLEDにおいて、電子および正孔の量は時が経つにつれて変化するため、駆動開始後、発光領域で発生した励起子の数は減少し得る。その結果、上記OLEDの寿命が減少するために、運搬バランスは維持され得ない。
【0224】
しかしながら、上記ETLにおいて、電子運搬率を制御する間、上記第一層および上記第二層は、同様のまたは同一のエネルギーレベルを有し得るため、上記運搬バランスは均一に維持され得る。
【0225】
有機発光装置は、電子輸送層、好ましくは第三電子輸送層および任意の第四電子輸送層をさらに含み得ることができ、上記第三電子輸送層および任意の第四電子輸送層は、上記電荷発生層と上記陰極との間に構成される。好ましくは、上記第一電子輸送層および第三電子輸送層は、同一のものが選択され、上記第二電子輸送層および第四電子輸送層は、同一のものが選択される。
【0226】
上記ETLは、真空堆積、スピンコーティング、スロットダイコーティング、プリンティング、キャスティング、または同様のものによって、上記EML上に形成され得る。上記ETLが真空堆積またはスピンコーティングによって形成されるとき、堆積およびコーティングの条件は、上記HILの形成の条件と同様であり得る。しかしながら、上記ETLを形成するために用いられる化合物によって、堆積およびコーティングの条件は変化し得る。
【0227】
他の実施形態において、上記ETLは、アルカリ有機複合体および/またはアルカリハライド、好ましくはリチウム有機複合体および/またはリチウムハライドを含み得る。
【0228】
異なる面によると、上記リチウムハライドは、LiF、LiCl、LiBr、またはLiIを含む群から選択されることができ、好ましくはLiFである。
【0229】
異なる面によると、上記アルカリ有機複合体は、リチウム有機複合体であり得、好ましくは、上記リチウム有機複合体は、リチウムキノレート、リチウムボレート、リチウムフェノレート、リチウムピリジノレート、またはリチウムシッフ塩基およびリチウムフルオライド、好ましくはリチウム2-(ジフェニルホスホリル)-フェノレート、リチウムテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ボレート、式(III)のリチウムキノレート、リチウム2-(ピリジン-2-イル)フェノレート、およびLiF、より好ましくはリチウム2-(ジフェニルホスホリル)-フェノレート、リチウムテトラ(1H-ピラゾール-1-イル)ボレート、式(III)のリチウムキノレート、およびリチウム2-(ピリジン-2-イル)フェノレートからなる群から選択される。
【0230】
より好ましくは、上記アルカリ有機複合体は、リチウム有機複合体であり、および/または、上記アルカリハライドは、リチウムハライドである。
【0231】
好適なリチウム有機複合体は、WO 2016/001283 A1に開示されている。
【0232】
〔電荷発生層〕
本発明の上記OLEDに好適に用いることができる電荷発生層(CGL)は、US 2012/098012 Aに開示されている。上記電荷発生層は、一般的に二重層からなる。上記電荷発生層は、n型電荷発生層およびp型電荷発生層に接合するpn接合電荷発生層であり得る。上記pn接合電荷発生層は電荷を発生し、または電荷を正孔および電子に分離し、かつ上記電荷を個々の光発光層に注入する。つまり、上記n型電荷発生層は、上記陽極に隣接する第一光発光層の電子を供給し、一方、上記p型電荷発生層は、上記陰極に隣接する第二光発光層に正孔を供給する。それによって、複数の光発光層を併合した有機発光装置の発光効率をさらに改善でき、同時に駆動電圧を低くできる。
【0233】
上記n型電荷発生層は、n型でドープされた金属または有機材料からなり得る。上記金属は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、およびYbからなる群から一つ選択することができる。また、上記n型でドープされた有機材料に用いるn型ドーパントおよびホストは、従来の材料を用いることができる。例えば、上記n型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、またはアルカリ土類金属化合物であり得る。より具体的には、上記n型ドーパントは、Cs、K、Rb、Mg、Na、Ca、Sr、Eu、およびYbからなる群から一つ選択され得る。上記ホスト材料は、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、トリアジン、ヒドロキシキノリン誘導体、ベンザゾール誘導体、およびシロール誘導体からなる群から一つ選択することができる。
【0234】
上記p型電荷発生層は、p型ドーパントでドープされた金属または有機材料からなり得る。ここで、上記金属は、Al、Cu、Fe、Pb、Zn、Au、Pt、W、In、Mo、Ni、およびTiからなる群から選択される一つの金属、または二つ以上からなる合金であり得る。また、上記p型でドープされた有機材料に用いるp型ドーパントおよびホストは、従来の材料を用いることができる。例えば、上記p型ドーパントは、テトラフルオレ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、テトラシアノキノジメタン誘導体、ラジアレン誘導体、ヨウ素、FeCl、FeF、およびSbC15からなる群から一つ選択され得る。好ましくは、上記p型ドーパントはラジアレン誘導体から選択される。上記ホストは、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N-ジフェニル-ベンジジン(NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD)、およびN,N’,N’-テトラナフチル-ベンジジン(TNB)からなる群から一つ選択され得る。
【0235】
他の実施形態において、上記p型電荷発生層は、上記有機半導体層に隣接して構成される。一実施形態による上記p型電荷発生層は、以下に示す化学式16の化合物を含み得る。
【0236】
【化18】
【0237】
ここで、A~Aは、それぞれ、水素、ハロゲン原子、ニトリル(-CN)、ニトロ(-NO)、スルホニル(-SOR)、スルホキサイド(-SOR)、スルホンアミド(-SONR)、スルホネート(-SOR)、トリフルオロメチル(-CF)、エステル(-COOR)、アミド(-CONHRまたは-CONRR’)、置換または非置換の、直鎖または分岐鎖のC~C12アルコキシ、置換または非置換の、直鎖または分岐鎖のC~C12アルキル、置換または非置換の、直鎖または分岐鎖のC~C12アルケニル、置換または非置換の、芳香族または非芳香族ヘテロ環、置換または非置換のアリール、置換または非置換の、モノ-またはジ-アリールアミン、置換または非置換のアラルキルアミン、または同様のものであり得る。
【0238】
ここで、上記RおよびR’は、それぞれ、置換もしくは非置換のC~C60アルキル、置換もしくは非置換のアリール、または置換もしくは非置換の5~7員ヘテロ環、または同様のものであり得る。
【0239】
特に、p型電荷発生層は、式(17)の化合物を含むことが好ましい。
【0240】
【化19】
【0241】
上記p型電荷発生層は、上記n型電荷発生層の一番上に構成される。上記p型電荷発生層の物質として、アリールアミン-ベース化合物が用いられ得る。上記アリールアミン-ベース化合物の一実施形態は、以下に示す化学式(18)の化合物を含む。
【0242】
【化20】
【0243】
ここで、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立して、水素または炭化水素基である。ここで、Ar、ArおよびArの少なくとも一つは、芳香族炭化水素置換基を含み得ることができ、かつ、それぞれの置換基は同一のものであり得、または、それらは異なる置換基からなるものであり得る。Ar、ArおよびArが芳香族炭化水素でないとき、それらは水素;直鎖、分岐鎖もしくは環式の脂肪族炭化水素;またはN、O、SまたはSeを含む複素環式官能基であり得る。
【0244】
他の面において、本発明の有機発光ダイオードでは、上記有機発光ダイオードはp型電荷発生層をさらに含み、上記有機半導体層は上記第一発光層と上記p型電荷発生層との間に構成される。上記p型電荷発生層は、好ましくはラジアレンドーパントおよびホストを含み、より好ましくはラジアレンドーパントおよびホストからなる。
【0245】
他の実施形態において、上記p型電荷発生層は、本発明の上記有機半導体層に直接接触する。好ましくは、ラジアレンドーパントおよびホストを含む、または、からなる、上記p型電荷発生層は、上記有機半導体層に直接接触する。
【0246】
他の面において、本発明の有機発光ダイオードでは、上記有機発光ダイオードはp型電荷発生層をさらに含み、上記p型電荷発生層は上記有機半導体層と上記陰極との間に構成される。上記陰極が可視発光を通す透明である場合、本構成によって、上記発光層への効率的な電子注入が可能となり得る。
【0247】
〔有機発光ダイオード(OLED)〕
本発明の他の面によると、有機発光ダイオード(OLED)は、基板、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、任意の電子遮断層、発光層、任意の正孔遮断層、任意の電子輸送層、本発明の有機半導体層、任意の電子注入層、および陰極層を含み、上記層はこの順で構成される。
【0248】
本発明の他の面によると、有機発光ダイオード(OLED)は、基板、陽極、第一正孔注入層、第一正孔輸送層、任意の第一電子遮断層、第一発光層、任意の第一正孔遮断層、任意の第一電子輸送層、任意の本発明の有機半導体層、n型電荷発生層、p型電荷発生層、第二正孔輸送層、任意の第二電子遮断層、第二発光層、任意の第二正孔遮断層、任意の第二電子輸送層、上記有機半導体層、任意の電子注入層、および陰極層を含み、上記層はこの順で構成される。
【0249】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記OLEDは電子輸送層を含んでいなくてもよい。
【0250】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記OLEDは電子遮断層を含んでいなくてもよい。
【0251】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記OLEDは正孔遮断層を含んでいなくてもよい。
【0252】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記OLEDは電荷発生層を含んでいなくてもよい。
【0253】
本発明の上記OLEDの様々な実施形態によると、上記OLEDは第二発光層を含んでいなくてもよい。
【0254】
〔電子装置〕
他の面において、電子装置は少なくとも一つの有機発光ダイオード(OLED)を含む。有機発光ダイオード(OLED)を含む電子装置は、例えばディスプレイまたは発光パネルである。
【0255】
本発明のさらなる面および/または利点は、以下に示す記載によってその一部分が述べられ、一部、記載から明らかであり得、本発明の実施によって習得され得る。
【0256】
〔製造方法〕
上述したように、本発明は、陽極と、少なくとも一つの発光層と、少なくとも一つの有機半導体層と、陰極とを、基板上に連続的に形成する工程と、少なくとも二つのフェナントロリニル基、好ましくは二つ~四つのフェナントロリニル基を含む第一基質化合物と共に、実質的に金属の希土類金属ドーパントを共堆積することによって、上記少なくとも一つの有機半導体層を形成する工程と、を含む、有機発光ダイオードの製造方法に関する。
【0257】
しかしながら、また、本発明によると、上記有機発光ダイオードは、基板上に陰極、少なくとも一つの有機半導体層、少なくとも一つの発光層、および陽極を連続的に形成することによって製造される。上記少なくとも一つの有機半導体層は、少なくとも二つのフェナントロリニル基、好ましくは二つ~四つのフェナントロリニル基を含む第一基質化合物と共に、実質的に金属の希土類金属ドーパントを共堆積することによって形成される。
【0258】
この点における上記共堆積は、特に、第一真空源および上記第一基質化合物から、好ましくは第二真空源から、上記実質的に金属の希土類金属ドーパントを堆積することを指す。
【0259】
驚くことに、希土類金属ドーパントは、有機基質化合物と共堆積され得る。ドープ濃度が希土類金属と比較して非常に低いため、アルカリ金属、特にLiが達成するのは非常に困難である。従って、アルカリ金属は、一般的に上記有機基質化合物の後に堆積される。
【0260】
他の実施形態において、上記有機半導体層は、同じ真空チャンバーの中で、少なくとも二つのフェナントロリン基を含む第一基質化合物と共に、実質的に金属の希土類金属ドーパントを共堆積することによって形成される。
【0261】
他の実施形態によると、上記方法は、上記発光層上に電子輸送層を堆積する工程をさらに含む。この場合、上記有機半導体層は、代わりに上記電子輸送層上に堆積されることは明らかである。
【0262】
本発明の堆積は、真空熱蒸着による堆積、または溶液法による堆積によって達成され得、上記工程は、好ましくはスピンコーティング、プリンティング、キャスティング、および/または、スロットダイコーティングから選択される。
【0263】
上記有機半導体層の堆積は、真空熱蒸着を含むことが好ましい。
【0264】
本発明の様々な実施形態によると、上記方法は、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、任意の電子遮断層、発光層、任意の正孔遮断層、任意の電子輸送層、上記有機半導体層、任意の電子注入層、および陰極層を基板上に形成することをさらに含み得る。上記層はこの順に構成され、または、上記層は上記陰極層から始まる逆の順に堆積され得る。より好ましい上記有機半導体層は、上記陰極層が堆積される前に堆積される。
【0265】
特に、低い制御電圧および/または高い外部量子効率EQEは、上記有機半導体層が上記第一陰極層の前に堆積されるとき、達成され得る。
【0266】
本発明の様々な実施形態によると、上記方法は、陽極、第一正孔注入層、第一正孔輸送層、任意の第一電子遮断層、第一発光層、任意の第一正孔遮断層、任意の第一電子輸送層、任意の本発明の上記有機半導体層、p型電荷発生層、第二正孔輸送層、任意の第二電子遮断層、第二発光層、任意の第二正孔遮断層、任意の第二電子輸送層、上記有機半導体層、および陰極層を基板上に形成することをさらに含み得る。上記層はこの順に構成され、または、上記層は上記陰極層から始まる逆の順に堆積される。より好ましい上記有機半導体層は、上記陰極層が堆積される前に堆積される。
【0267】
しかしながら、一面によると、上記層は上記陰極から始まる逆の順に堆積され、上記陰極と上記陽極との間に挟まれる。
【0268】
例えば、上記第一陰極層で始まり、上記有機半導体層、任意の電子輸送層、任意の正孔遮断層、発光層、任意の電子遮断層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順である。
【0269】
上記陽極および/または陰極は、基板上に堆積され得る。上記陽極は、好ましくは基板上に堆積する。
【0270】
本発明の他の面によると、有機発光ダイオード(OLED)の製造方法では、上記方法は、
少なくとも一つの堆積源、好ましくは二つの堆積源、より好ましくは少なくとも三つの堆積源、および/または、
真空熱蒸着(VTE)による堆積、および/または、
溶液法による堆積、上記工程は、好ましくはスピンコーティング、プリンティング、キャスティング、および/または、スロットダイコーティングから選択される堆積
を用いる。
【0271】
[図面の簡単な説明]
これらおよび/または他の、本発明の面および利点は、添付の図面と共に、典型的な実施形態の以下の説明から、明確になり、かつより容易に正しく理解され得る。
【0272】
図1は、本発明の典型的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略の断面図である。
【0273】
図2は、本発明の他の典型的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
【0274】
図3は、本発明の他の典型的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
【0275】
図4は、本発明の典型的な実施形態に係る電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略の断面図である。
【0276】
図5は、本発明の典型的な実施形態に係る上記陰極に直接接触する電荷発生層を含むOLEDの概略の断面図である。
【0277】
〔詳細な説明〕
本発明の典型的な実施形態、部材番号の付いた添付の図面に示される例を詳細に説明する。上記典型的な実施形態は、図を参照することによって、本発明の面を説明するために、以下に示される。
【0278】
ここで、第一素子が第二素子「上に」形成または積層されると記すとき、上記第一素子は、上記第二素子上に直接堆積され得ることができ、一つまたは複数の他の素子は、それらの間に積層され得る。第一素子が第二素子「上に直接」形成または積層されると記すとき、他の素子は、それらの間に積層され得ない。
【0279】
図1は、本発明の典型的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)100の概略の断面図である。上記OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150を含む。上記発光層(EML)150上に、上記有機半導体層170が積層される。実質的に金属の希土類金属ドーパントおよび第一基質化合物を含む、または、からなる、上記有機半導体層170は、上記EML150上に直接形成される。上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む、好ましくは式1を含む。上記陰極層190は、上記有機半導体層170上に直接積層される。
【0280】
図2は、本発明の他の典型的な実施形態に係るOLED100の概略の断面図である。図2の上記OLED100が電子輸送層160を含む点において、図2図1と異なる。
【0281】
図2の上記OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150を含む。上記発光層(EML)150上に、電子輸送層(ETL)160が積層される。上記電子輸送層(ETL)160上に、上記有機半導体層170が積層される。実質的に金属の希土類金属ドーパントおよび第一基質化合物を含む、または、からなる、上記有機半導体層170は、上記ETL160上に直接形成される。上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む、好ましくは式1を含む。上記陰極層190は、上記有機半導体層170上に直接積層される。
【0282】
図3は、本発明の他の典型的な実施形態に係るOLED100の概略の断面図である。図3の上記OLED100が電子遮断層(EBL)145、および、第一陰極層191と第二陰極層192とを含む陰極190を含む点において、図3図2と異なる。
【0283】
図3の上記OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、電子遮断層(EBL)145、および発光層(EML)150を含む。上記発光層(EML)150上に、電子輸送層(ETL)160が積層される。上記電子輸送層(ETL)160上に、上記有機半導体層170が積層される。実質的に金属の希土類金属ドーパントおよび第一基質化合物を含む、または、からなる、上記有機半導体層170は、上記ETL160上に直接形成される。上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む、好ましくは式1を含む。上記陰極層190は、第一陰極層191および第二陰極層192を含む。上記第一陰極層191は、実質的に金属の層であり、かつ上記有機半導体層170上に直接積層される。上記第二陰極層192は、上記第一陰極層191上に直接積層される。
【0284】
図4は、本発明の他の典型的な実施形態に係るタンデムOLED100の概略の断面図である。図4の上記OLED100がさらに電荷発生層および第二発光層を含む点において、図4図2と異なる。
【0285】
図4の上記OLED100は、基板110、陽極120、第一正孔注入層(HIL)130、第一正孔輸送層(HTL)140、第一電子遮断層(EBL)145、第一発光層(EML)150、第一正孔遮断層(HBL)155、第一電子輸送層(ETL)160、n型電荷発生層(n型CGL)185、p型電荷発生層(p型CGL)135、第二正孔輸送層(HTL)141、第二電子遮断層(EBL)146、第二発光層(EML)151、第二正孔遮断層(EBL)156、第二電子輸送層(ETL)161、上記有機半導体層170、第一陰極層191、および第二陰極層192を含む。実質的に金属の希土類金属ドーパントおよび第一基質化合物を含む、または、からなる、上記有機半導体層170は、上記第二電子輸送層161上に直接積層され、上記第一陰極層191は上記有機半導体層170上に直接積層される。上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む、好ましくは式1を含む。上記第二陰極層192は、上記第一陰極層191上に直接積層される。任意に、上記n型電荷発生層(n型CGL)185は、本発明の上記有機半導体層であり得る。
【0286】
図5は、本発明の他の典型的な実施形態に係るOLED100の概略の断面図である。図5の上記OLED100が上記陰極に直接接触するp型電荷発生層をさらに含む点において、図5図1と異なる。
【0287】
図5の上記OLED100は、基板110、陽極120、正孔注入層(HIL)130、正孔輸送層(HTL)140、発光層(EML)150を含む。上記発光層(EML)150上に、上記有機半導体層170が積層される。実質的に金属の希土類金属ドーパントおよび第一基質化合物を含む、または、からなる、上記有機半導体層170は、上記EML150上に直接形成される。上記第一基質化合物は、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む、好ましくは式1を含む。p型電荷発生層(p型CGL)135は、本発明の上記有機半導体層170上に直接形成される。上記陰極層190は、上記p型電荷発生層135上に直接積層される。
【0288】
上記説明において、上述した本発明のOLED100の製造方法は、基板110上に陽極120が形成されることで始まり、陽極120、第一正孔注入層130、第一正孔輸送層140、任意の第一電子遮断層145、第一発光層150、任意の第一正孔遮断層155、任意のETL160、n型CGL185、p型CGL135、第二正孔輸送層141、任意の第二電子遮断層146、第二発光層151、任意の第二正孔遮断層156、任意の少なくとも一つの第二電子輸送層161、上記有機半導体層170、第一陰極層191、および任意の第二陰極層192をこの順で、または逆の順で形成する。
【0289】
図1図2図3図4、および図5に示されていないが、上記OLED100を密閉するために、上記陰極190上に密閉層がさらに形成され得る。さらに、様々な他の形態はそれらに適用され得る。
【0290】
[実施例]
少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む第一基質化合物は、JP 2002-352961に開示されているように合成され得る。
【0291】
〔蒸発発光層を有する基部発光装置〕
実施例1~3および比較例1~5の基部発光装置のために、90nmのITOを有する15Ω/cmのガラス基板(Corning Co.から入手)を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄し、それから純水で5分間超音波洗浄し、UVオゾンで30分間再度洗浄し、第一電極を作製した。
【0292】
それから、10nmの厚さを有するHILを形成するために、97重量%のビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)、および3重量%の2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)を、上記ITO電極上に真空堆積した。130nmの厚さを有するHTLを形成するために、ビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンを、上記HIL上に真空堆積した。20nmの厚さを有する青色発光EMLを形成するために、ホストとして97重量%のABH113(Sun Fine Chemicals)、およびドーパントとして3重量%のNUBD370(Sun Fine Chemicals)を、上記HTL上に堆積した。
【0293】
それから、実施例1~3並びに比較例1,5に従って、基質化合物および金属ドーパントを堆積することによって、上記有機半導体層を形成した。即ち、第一堆積源から上記基質化合物を、第二堆積源から希土類金属ドーパントを、上記EML上に直接堆積することによって、上記有機半導体層を形成した。上記有機半導体層の構成を、表1に示す。実施例1~3において、上記基質化合物は、式1の化合物である。上記有機半導体層の厚さは36nmであった。
【0294】
それから、10-7バールの超高真空で上記陰極材料を蒸発および/またはスパッタリングさせて、上記有機半導体層上に上記陰極層を直接堆積することによって、上記陰極層を形成した。5~1000nmの厚さを有する均一な陰極を作製するために、一つまたはいくつかの金属の熱単一共蒸発(thermal single co-evaporation)またはスパッタリング工程は、0.1~10nm/s(0.01~1Å/s)の速度で行った。上記陰極層の厚さは100nmであった。上記陰極の構成を、表1に示す。RFマグネトロンスパッタリング工程を用いて、ITOを上記有機半導体層上にスパッタする間、AlおよびAgを蒸発させた。
【0295】
〔溶液法で処理された発光層を有する基部発光装置〕
基部発光装置のために、90nmのITOを有する15Ω/cmのガラス基板(Corning Co.から入手)を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄し、それから純水で5分間超音波洗浄し、UVオゾンで30分間再度洗浄し、第一電極を作製した。
【0296】
それから、厚さ55nmのHILを形成するために、PEDOT:PSS(Clevious P VP AI 4083)を、上記第一電極の表面に直接スピンコートした。ホットプレート上で、150℃で5分間、上記HILを焼いた。それから、厚さ40nmのEMLを形成するために、発光ポリマー、例えばMEH-PPVを、上記HILの表面に直接スピンコートした。ホットプレート上で、80℃で10分間、上記EMLを焼いた。蒸発チャンバーに上記装置を運び、高真空で以下に示す層を堆積した。
【0297】
4nmの厚さを有する上記有機半導体層を形成するために、少なくとも二つのフェナントロリニル基を含む第一基質化合物、および希土類金属ドーパントを、上記EMLの表面に直接堆積した。上記有機半導体層の表面に、厚さ100nmのアルミニウムの層を直接堆積することによって、陰極層を形成した。
【0298】
〔上部発光装置〕
実施例2,3の上部発光装置のために、ガラス基板上に、100nmの銀から上記陽極を形成した。上記ガラス基板は、基部発光装置のための上述した同様の方法によって作製した。
【0299】
基部発光装置のために上述したように、上記HIL,HTL,EML、および有機半導体層を堆積した。
【0300】
それから、上記陰極を堆積した。実施例2においては、基部発光装置のために上述したように、高真空で13nmのAgの層を形成した。実施例3においては、スパッタリング工程を用いて100nmのITOの層を形成した。
【0301】
60nmのビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)を、上記陰極層の表面に直接堆積した。
【0302】
ガラススライドを有する装置への収容(encapsulation)によって、周囲環境から上記OLEDの堆積を保護した。それゆえ、さらなる保護のためのゲッター材料を含むキャビティを形成した。
【0303】
〔少なくとも二つの発光層を含むOLEDのモデルのpn接合装置〕
少なくとも二つの発光層を含むOLEDの製造は、時間が掛かり、かつ高い。従って、pn接合における本発明の上記有機半導体層の有効性を、発光層無しで試験した。この構成において、上記有機半導体層は、n型電荷発生層(CGL)として機能し、上記陽極と上記陰極との間に構成され、上記p型CGLに直接接触される。
【0304】
実施例4,5および比較例6のpn接合装置のために、90nmのITOを有する15Ω/cmのガラス基板(Corning Co.から入手)を50mm×50mm×0.7mmの大きさに切断し、イソプロピルアルコールで5分間超音波洗浄し、それから純水で5分間超音波洗浄し、UVオゾンで30分間再度洗浄し、第一電極を作製した。
【0305】
それから、10nmの厚さを有するHILを形成するために、97重量%のビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(CAS 1242056-42-3)、および3重量%の2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)を、上記ITO電極上に真空堆積した。それから130nmの厚さを有する電子遮断層(EBL)を形成するために、2,4-ジフェニル-6-(3’-(トリフェニレン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン(CAS 1638271-85-8)を、上記HIL上に真空堆積した。
【0306】
それから、実施例4,5並びに比較例6に従って、基質化合物および金属ドーパントを堆積することによって、上記有機半導体層を形成した。即ち、第一堆積源から上記基質化合物を、第二堆積源から希土類金属ドーパントを、上記EBL上に直接堆積することによって、上記有機半導体層を形成した。上記有機半導体層の構成を、表2に示す。実施例4,5において、上記基質化合物は、式1の化合物である。上記有機半導体層の厚さは10nmであった。
【0307】
それから、上記ホストおよびp型ドーパントを上記有機半導体層上に直接堆積することによって、上記p型CGLを形成した。上記p型CGLの構成を、表2に示す。比較例6においては、10nmの式(17)の層を堆積した。実施例4,5においては、10nmの厚さを有するp型CGLを形成するために、97重量%のビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミン(「HT-1」と称する)、および3重量%の2,2’,2''-(シクロプロパン-1,2,3-トリイリデン)トリス(2-(p-シアノテトラフルオロフェニル)アセトニトリル)(「ドーパント1」と称する)を真空堆積した。
【0308】
それから、正孔遮断層(HBL)を形成するために、30nmのビフェニル-4-イル(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-アミンの層を、上記p型CGL上に直接堆積した。
【0309】
それから、10-7バールの超高真空でアルミニウムを蒸発させて、上記HBL上に上記アルミニウム層を直接堆積することによって、上記陰極層を形成した。5~1000nmの厚さを有する均一な陰極を作製するために、一つまたはいくつかの金属の熱単一共蒸発(thermal single co-evaporation)は、0.1~10nm/s(0.01~1Å/s)の速度で行った。上記陰極層の厚さは100nmであった。
【0310】
ガラススライドを有する装置への収容(encapsulation)によって、周囲環境から上記pn接合装置を保護した。それゆえ、さらなる保護のためのゲッター材料を含むキャビティを形成した。
【0311】
先行技術と比較して本発明の実施例の性能を評価するために、周囲環境(20℃)下で電流効率を測定した。ケースレー(Keithley)の2400ソースメータを用いて電流電圧測定を行い、V(ボルト)で記録した。下部発光装置に対して10mA/cm、および上部発光装置に対して10mA/cmで、較正された(calibrated)Instrument Systemsの測定分光計CAS140を、カンデラでのCIE座標および光度の測定に用いた。下部発光装置の寿命LTを、ケースレーの2400ソースメータを用いて周囲環境(20℃)および10mA/cmで測定し、時間で記録した。上部発光装置の寿命LTを、周囲環境(20℃)および8mA/cmで測定した。上記装置の光度を、較正された(calibrated)フォトダイオードを用いて測定した。上記寿命LTを、上記装置の光度が初期値の97%に減少するまでの時間と定義した。
【0312】
下部発光装置において、上記発光は優位にランバーシアンであり、上記発光を外部量子効率(EQE)の百分率(%)で定量した。上記効率EQEを%で決定するために、10mA/cmで較正されたフォトダイオードを用いて、上記装置の光出力を測定した。
【0313】
上部発光装置において、上記発光は前方を向き、ランバーシアンでなく、また微小空洞(mirco-cavity)に大きく依存する。それゆえ、上記効率EQEは、下部発光装置と比較してより高くなり得る。上記効率EQEを%で決定するために、10mA/cmで較正されたフォトダイオードを用いて、上記装置の光出力を測定した。
【0314】
電流密度30mA/cmおよび85℃で、100時間まで、上記時間経過電圧上昇を測定した。上記電圧上昇はボルト(V)で記録した。
【0315】
pn接合装置において、10mA/cmで、上述したOLEDを示す上記操作電圧を決定した。
【0316】
〔本発明の技術的効果〕
<1.陰極に直接接触する有機半導体層>
表1に、蛍光性青色発光層、第一基質化合物および金属ドーパントを含む有機半導体層、並びに種々の陰極を含むOLEDの、操作電圧、外部量子効率、および時間経過電圧上昇を示す。
【0317】
比較例1~3においては、第一基質化合物としてETM-1を用いた。
【0318】
【化21】
【0319】
ETM-1は、一つのフェナントロリニル基を含む。種々の金属ドーパントを試験し、上記操作電圧は4.4~6.7Vであり、上記外部量子効率は1.9~3.6%EQEであった。
【0320】
比較例4,5においては、第一基質化合物としてMX1を用いた。MX1は、二つのフェナントロリニル基を含む。比較例4においては、金属ドーパントとしてLiを用いた。上記操作電圧は3.3Vであり、上記外部量子効率は5.2%EQEであった。85℃での上記時間経過電圧上昇は0.18Vであった。比較例5においては、金属ドーパントとしてMgを用いた。上記操作電圧は6Vであり、上記外部量子効率は4.3%EQEであった。金属ドーピング濃度の再生可能性を調べるために、いくつかの生産工程(fabrication runs)にわたって、上記有機半導体層における金属ドーパントの実際の濃度の標準偏差、および、上記操作電圧上での再生可能性の影響を、決定した。比較例4においては、上記ドーピング濃度は0.06モル%まで変化し、上記操作電圧は0.09Vまで変化した。これは、製品仕様書を満たしていない装置が多数生じ得る、操作電圧における実質的な変化である。
【0321】
実施例1においては、第一基質化合物としてMX1を用い、金属ドーパントとしてYbを用いた。上記操作電圧は3.8Vと非常に低く、上記効率は5.6%EQEにさらに改善された。Ybは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属よりも、用いるのに危険性がより顕著に低い。さらに、上記時間経過電圧上昇は0.04Vであり、比較例4の0.18Vと比較してより顕著に低い。希土類金属ドーパントのさらなる利点は、Liと比較して、より高いドーピング濃度で用いることができることである。比較例4においては、操作電圧において最も近い、0.6重量%のLiを用いた。実施例1においては、11.1重量%のYbを用いた。上記有機半導体層における実際のYb濃度の標準偏差は0.04であり、操作電圧の標準偏差は0.02であった。即ち、外部量子効率、時間経過電圧上昇、および操作電圧における標準偏差は顕著に改善した。
【0322】
実施例2においては、第一基質化合物としてMX1を用い、金属ドーパントとしてYbを用いた。100nmのAgから上記正極を形成し、13nmの銀から陰極を形成した。上記陰極は非常に薄いので、可視発光を通す透明である。上記効率は7%EQEにさらに高まった。
【0323】
実施例3においては、実施例2の上記有機半導体層と同一の構成を用いた。可視発光を通す透明である、100nmのITOから上記陰極を形成した。上記効率は、6.6%EQEとまだ非常に高く、上記操作電圧は3.9Vと低い。
【0324】
即ち、外部量子効率における顕著な改善、金属ドーパント濃度の再生可能性、および高温での時間経過電圧安定性を達成した。さらに、上記VTE源を仕込むときの、上記希土類金属ドーパントの安全なハンドリングが許される間、上記操作電圧はさらに低く、蒸発ツールのメンテナンスを通じて安全性の関心を減少させる。
【0325】
<2.p型CGLに直接接触する有機半導体層>
表2に、p型CGL、第一基質化合物および金属ドーパントを含む有機半導体層、並びに種々の陰極を含むpn接合装置の操作電圧を示す。
【0326】
比較例6においては、p型CGLとして式(17)を用いた。上記有機半導体層は、ETM-1およびYb金属ドーパントを含む。ETM-1は、一つのフェナントロリニル基を含む。上記操作電圧は7.2Vであった。
【0327】
実施例4においては、p型CGLとして上記式(17)を再び用いた。上記有機半導体層は、MX1およびYb金属ドーパントを含む。MX1は、二つのフェナントロリニル基を含む。上記操作電圧は、4.9Vと顕著に改善された。
【0328】
実施例5においては、上記p型CGLを形成するために、HT-1およびドーパント1を共堆積した。上記有機半導体層は、MX1およびYb金属ドーパントを含む。上記操作電圧は4.8Vにさらに改善された。
【0329】
より低い操作電圧によって、パワー消費はより低くなり、携帯装置のバッテリー寿命はより長くなるという利点を示す。
【0330】
上述の記載に、特許請求の範囲および添付した図面に開示された特徴は、個別のまたは任意の組み合わせの、様々な形態において本発明を実施するための材料であり得る。
【0331】
【表1】
【0332】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0333】
図1】本発明の典型的な実施形態に係る有機発光ダイオード(OLED)の概略の断面図である。
図2】本発明の他の典型的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
図3】本発明の他の典型的な実施形態に係るOLEDの概略の断面図である。
図4】本発明の典型的な実施形態に係る電荷発生層を含むタンデムOLEDの概略の断面図である。
図5】本発明の典型的な実施形態に係る上記陰極に直接接触する電荷発生層を含むOLEDの概略の断面図である。
図1
図2
図3
図4
図5