(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】復号装置および符号化装置
(51)【国際特許分類】
H04N 19/70 20140101AFI20230804BHJP
【FI】
H04N19/70
(21)【出願番号】P 2022078017
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2021088315の分割
【原出願日】2011-09-29
【審査請求日】2022-05-11
(32)【優先日】2010-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316002062
【氏名又は名称】サン パテント トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】笹井 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】西 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】柴原 陽司
(72)【発明者】
【氏名】チョンスン リム
(72)【発明者】
【氏名】ビクター ワハダニア
(72)【発明者】
【氏名】シャン ジン
(72)【発明者】
【氏名】スー モン セット ナイ
【審査官】岩井 健二
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-522500(JP,A)
【文献】特開2006-262004(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152518(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/142279(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/140211(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/158113(WO,A2)
【文献】国際公開第2008/132890(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/126135(WO,A1)
【文献】Advanced video coding for generic audiovisual services,ITU-T Recommendation H.264,H.264 (03/2005),ITU-T,2005年03月,pp.50-53,85-95
【文献】Kemal Ugur, Kenneth R. Andersson and Arild Fuldseth,Appendix to Description of video coding technology proposal by Tandberg Nokia Ericsson,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC)of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11,JCTVC-A119_Appendix_Decoder_Description,1st Meeting: Dresden, DE,2010年04月,pp.1-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00 - 19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像をビットストリームから復号する復号装置であって、
処理回路と、前記処理回路に接続される通信回路と、前記処理回路に接続される記録部とを備え、
前記画像は、少なくとも1つの第1の単位を含み、前記少なくとも1つの第1の単位は複数の第2の単位を含んでおり、
前記通信回路は、
外部システムに対して前記ビットストリームを要求し、
前記外部システムから前記ビットストリームを受信し、
前記処理回路は、
受信した前記ビットストリームのヘッダから、処理対象の前記第2の単位を含む1つの前記第1の単位に対して、第1量子化パラメータが提供されているか否かを示す第1の情報を取得し、
処理対象の前記第2の単位を逆量子化して復号し、
処理対象の前記第2の単位の逆量子化において、前記第1の情報に基づき、前記第1量子化パラメータを用いるか否かを切り替え、
前記第1の情報が前記第1の単位に対して前記第1量子化パラメータが提供されていないことを示す場合、処理対象の前記第2の単位の逆量子化において、前記第1量子化パラメータは用いずに、処理対象の前記第2の単位に提供された第2量子化パラメータを用いる、
復号装置。
【請求項2】
前記ビットストリームのヘッダは、複数のブロックを含むピクチャに対するピクチャヘッダである、
請求項1に記載の復号装置。
【請求項3】
画像を符号化してビットストリームを生成する符号化装置であって、
処理回路と、前記処理回路に接続される通信回路と、前記処理回路に接続される記録部とを備え、
前記画像は、少なくとも1つの第1の単位を含み、前記少なくとも1つの第1の単位は量子化を行う複数の第2の単位を含んでおり、
前記処理回路は、
処理対象の前記第2の単位を含む1つの前記第1の単位に対して、第1量子化パラメータが提供されているか否かを示す第1の情報を、前記ビットストリームのヘッダに書き込み、
処理対象の前記第2の単位を量子化して符号化し、
処理対象の前記第2の単位の量子化において、前記第1の情報に基づき、前記第1量子化パラメータを用いるか否かを切り替え、
前記第1の単位に対して前記第1量子化パラメータが提供されていない場合、処理対象の前記第2の単位の量子化において、前記第1量子化パラメータは用いずに、処理対象の前記第2の単位に提供された第2量子化パラメータを用い、
前記通信回路は、
外部システムに対して前記ビットストリームを送信する、
符号化装置。
【請求項4】
前記ビットストリームのヘッダは、複数のブロックを含むピクチャに対するピクチャヘッダである、
請求項3に記載の符号化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチメディアデータに含まれる画像または動画像を符号化する画像符号化方法、および、符号化された画像または動画像を復号する画像復号方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4またはMPEG-4 AVCなどの動画像圧縮規格では、通常、圧縮されたピクチャはマクロブロックと呼ばれる矩形単位に分割される。マクロブロックは、通常、複数の画像サンプルである二次元ブロックとして定義される。この複数の画像サンプルは、輝度サンプルに対して幅16ピクセルおよび高さ16ピクセルからなる。マクロブロックの圧縮率は、マクロブロックのそれぞれにおいて、量子化スケールパラメータによって制御される。この量子化スケールパラメータは、全ての周波数係数に対して適用される量子化のレベルを定めている。この量子化スケールパラメータは、通常、符号化順で直前のマクロブロックの量子化スケールパラメータとの差分値として符号化され、圧縮されたマクロブロックのヘッダに格納される。
【0003】
例えば、MPEG規格団体による高効率動画像符号化(HEVC)規格などの開発中の新しい動画像規格では、大きな単位にピクチャを分割することによって、圧縮動画像の符号化効率を向上することができるということが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。つまり、ピクチャを符号化単位(CU:Coding Unit)に分割することができ、その符号化単位をマクロブロックよりも大きいサイズにすることができる。例えば、符号化単位は、輝度サンプルに対して128×128ピクセルからなり、マクロブロックよりも64倍だけ大きい。
【0004】
また、符号化効率の向上を図るために、大きい符号化単位を、より小さい単位(サブ符号化単位)に分割することができる。符号化単位またはサブ符号化単位は3つの主成分を有する。これらの主成分は、符号化単位ヘッダ、予測単位(PU:Prediction Unit)および変換単位(TU:Transform Unit)である。
【0005】
図1は、符号化単位を有する圧縮されたピクチャの構成を示す図である。
【0006】
この
図1に示すように、ピクチャD100はヘッダ(以下、ピクチャヘッダという)とボディからなる。ピクチャヘッダは、ピクチャに関するパラメータ(ピクチャパラメータ)を含み、ボディは、ピクチャの複数の圧縮サンプルを含む。また、ボディは符号化単位D102,D104などの複数の符号化単位からなり、それらの符号化単位のうちの幾つかはサブ符号化単位に分割される。例えば、符号化単位D102は複数のサブ符号化単位D106に分割され、さらに、サブ符号化単位D106はより小さい複数のサブ符号化単位D108に分割される。符号化単位D104またはサブ符号化単位D108は3つの主成分を有する。具体的には、符号化単位D104は、3つの主成分として、符号化単位ヘッダD116、予測単位D118および変換単位D120を有する。サブ符号化単位D108は、3つの主成分として、サブ符号化単位ヘッダD110、予測単位D112および変換単位D114を有する。
図1に示すように、変換単位D120は複数の小さいサブ変換単位D122に分割され、サブ変換単位D122は複数のより小さいサブ変換単位D124に分割される。最も小さい変換単位(サブ変換単位)D114,D124はブロックの量子化された係数を有し、これらの量子化された係数の逆量子化には、量子化スケールパラメータが必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“Test Model under Consideration”Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11, 2nd Meeting: Geneva, CH, 21-28 July, 2010, Document: JCTVC-B205
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1の画像復号方法および画像符号化方法では、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができないという問題がある。つまり、復号または復号化に必要な量子化スケールパラメータなどのパラメータは、ピクチャD100のボディ全体に対してそのパラメータが適用されるように、ピクチャヘッダに格納される。その結果、サブ符号化単位、予測単位、サブ予測単位、変換単位、またはサブ変換単位などの小さい処理単位ごとに画質を調整することができない。また、常に最小の処理単位ごとにパラメータが適用されるように、各処理単位にパラメータが格納されれば、符号量が多くなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができる復号方法および符号化方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る復号装置は、画像をビットストリームから復号する復号装置であって、処理回路と、前記処理回路に接続される通信回路と、前記処理回路に接続される記録部とを備え、前記画像は、少なくとも1つの第1の単位を含み、前記少なくとも1つの第1の単位は複数の第2の単位を含んでおり、前記通信回路は、外部システムに対して前記ビットストリームを要求し、前記外部システムから前記ビットストリームを受信し、前記処理回路は、受信した前記ビットストリームのヘッダから、処理対象の前記第2の単位を含む1つの前記第1の単位に対して、第1量子化パラメータが提供されているか否かを示す第1の情報を取得し、処理対象の前記第2の単位を逆量子化して復号し、処理対象の前記第2の単位の逆量子化において、前記第1の情報に基づき、前記第1量子化パラメータを用いるか否かを切り替え、前記第1の情報が前記第1の単位に対して前記第1量子化パラメータが提供されていないことを示す場合、処理対象の前記第2の単位の逆量子化において、前記第1量子化パラメータは用いずに、処理対象の前記第2の単位に提供された第2量子化パラメータを用いる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る復号方法は、画像をブロック単位でビットストリームから復号する復号方法であって、前記画像に含まれる対象ブロックは、前記対象ブロックを含む階層と、前記対象ブロックよりも小さいサイズの複数のサブブロックをそれぞれ含む1以上の階層とに階層化され、前記復号方法は、外部システムに対して前記ビットストリームを要求し、前記外部システムから前記ビットストリームを受信し、受信した前記ビットストリームのヘッダから、(1)第1量子化パラメータと、(2)前記第1量子化パラメータよりも下位の階層で伝送される第2量子化パラメータを伝送する単位である第1サブブロックが属する第1階層の深さを特定する深さ情報を復号し、前記深さ情報に基づいて、前記第1サブブロックに符号化されている前記第2量子化パラメータを復号し、前記第1量子化パラメータと前記第2量子化パラメータとを用いて、前記第1階層、または前記第1階層より深い階層に属する第2サブブロックを復号する復号ステップを含む。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る復号方法は、画像をブロック単位でビットストリームから復号する復号方法であって、前記画像を複数の前記ブロックを含む単位に分け、前記画像のピクチャごとの情報と、前記ブロックごとの情報とを用いて、復号対象であるカレントブロックが、前記単位に対応する量子化パラメータを示す第1の情報を用いるか否かを判定し、前記カレントブロックが前記単位に含まれ、前記第1の情報を用いると判定された場合、前記第1の情報を用いて、前記カレントブロックを復号し、前記単位に含まれる全ての前記ブロックは、前記第1の情報を用いて復号される。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る復号方法は、画像をブロック単位でビットストリームから復号する復号方法であって、前記画像は複数の処理単位を含み、前記処理単位は前記処理単位よりも小さい複数のサブブロックを含み、前記復号方法は、前記サブブロックが属する処理単位を示す情報を前記ビットストリームから復号するステップと、量子化パラメータを用いて前記処理単位に含まれる前記サブブロックを復号するステップと、を含み、前記処理単位に含まれる前記サブブロックはそれぞれ前記情報を有し、前記量子化パラメータは前記処理単位に含まれるすべての前記サブブロックごとに決定する。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る送信方法は、画像がブロック単位で符号化処理されて生成されたビットストリームを端末に送信する送信方法であって、前記画像に含まれる対象ブロックは、前記対象ブロックを含む階層と、前記対象ブロックよりも小さいサイズの複数のサブブロックをそれぞれ含む1以上の階層とに階層化され、前記端末から前記画像に対する要求を受信する受信ステップと、前記要求に対応する前記ビットストリームを前記端末へ送信する送信ステップとを含み、前記符号化処理は、量子化パラメータを伝送する単位である第1サブブロックが属する第1階層の深さを特定する深さ情報を、前記ビットストリームのヘッダに符号化し、前記深さ情報に基づいて、前記第1サブブロックに前記量子化パラメータを符号化し、前記量子化パラメータを用いて、前記第1階層、または前記第1階層より深い第2階層に属する第2サブブロックを符号化する符号化ステップを含む。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る復号方法は、画像をブロック単位でビットストリームから復号する復号方法であって、前記画像に含まれる対象ブロックは、前記対象ブロックを含む階層と、前記対象ブロックよりも小さいサイズの複数のサブブロックをそれぞれ含む1以上の階層とに階層化され、前記復号方法は、外部システムに対して前記ビットストリームを要求し、前記外部システムから前記ビットストリームを受信し、受信した前記ビットストリームのヘッダから、量子化パラメータを伝送する単位である第1サブブロックが属する第1階層の深さを特定する深さ情報を復号し、前記深さ情報に基づいて、前記第1サブブロックに符号化されている前記量子化パラメータを復号し、前記量子化パラメータを用いて、前記第1階層、または前記第1階層より深い階層に属する第2サブブロックを復号する復号ステップを含む。
【0016】
これにより、処理単位が階層化され、下位の階層にある小さい処理単位にパラメータが格納されている場合には、小さい処理単位ごとに異なるパラメータを適用してそれらの処理単位を復号することができる。その結果、画質を向上することができる。また、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層が、階層深さ情報を解析することによって特定されるため、その階層は最下位の階層に限られることなく、任意の階層に設定されることが可能である。したがって、最下位の階層にある最小の処理単位ごとにパラメータが格納されている場合よりも、符号化ストリームに含まれる全てのパラメータの符号量を抑えることができ、符号化効率を向上することができる。これにより、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができる。また、階層深さ情報を解析することによって、パラメータが格納されている処理単位のある階層が特定されるため、パラメータが格納されている処理単位を検索する処理負担を軽減することができる。
【0017】
また、前記符号化ストリームは直交変換および量子化を伴う符号化によって生成され、前記処理単位は、上位から下位に向かって処理単位がより小さくなるように階層化されており、最上位の階層には最も大きい処理単位として符号化単位があり、前記最上位の階層よりも深い下位の階層には前記符号化単位よりも小さい処理単位として変換単位があり、前記パラメータは前記変換単位に適用される量子化パラメータであり、前記階層深さ情報は、前記最上位の階層よりも深い下位の階層を示し、前記量子化パラメータが格納されている処理単位のある階層を特定する際には、前記階層深さ情報により示される階層、または当該階層よりも上位の階層であって前記最上位の階層以外の階層を特定してもよい。
【0018】
これにより、量子化パラメータによる量子化における画質の向上と、量子化パラメータにおける符号化効率の向上の両立を図ることができる。
【0019】
また、前記ヘッダは、前記複数の処理単位からなるピクチャに対するピクチャヘッダであって、前記階層深さ情報は前記ピクチャヘッダに格納されていてもよい。
【0020】
これにより、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を、ピクチャ全体に対して共通の階層として特定することができる。
【0021】
また、前記処理単位を復号する際には、前記処理単位内において、前記直交変換および量子化によって生成された変換係数の後に配置されている前記量子化パラメータを用いてもよい。
【0022】
これにより、変換係数がある場合にのみ量子化パラメータが格納されているため、変換係数がない場合には量子化パラメータが格納されておらず、符号化効率の向上を図ることができる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る画像符号化方法は、動画像を符号化することにより、複数の処理単位と、前記複数の処理単位に対するヘッダとを含む符号化ストリームを生成する画像符号化方法であって、前記複数の処理単位のうち少なくとも1つの処理単位は、複数のより小さい処理単位に分割されるように、階層化されており、前記画像符号化方法は、前記動画像を符号化し、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を特定するための階層深さ情報を、前記ヘッダに書き込み、前記階層深さ情報により特定される階層にある前記処理単位に前記パラメータを書き込む。
【0024】
これにより、処理単位が階層化されている場合には、下位の階層にある小さい処理単位ごとに異なるパラメータを書き込むことができる。その結果、画像復号装置では、小さい処理単位ごとに異なるパラメータを適用してそれらの処理単位を復号することができ、その結果、画質を向上することができる。また、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を特定するための階層深さ情報がヘッダに書き込まれることによって、その階層を画像復号装置に通知することができる。したがって、その階層を最下位の階層に限定することなく、任意の階層に設定することができる。したがって、最下位の階層にある最小の処理単位ごとにパラメータが格納されている場合よりも、符号化ストリームに含まれる全てのパラメータの符号量を抑えることができ、符号化効率を向上することができる。これにより、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができる。
【0025】
また、前記動画像を符号化する際には、前記動画像に対して直交変換および量子化を行い、前記処理単位は、上位から下位に向かって処理単位がより小さくなるように階層化されており、最上位の階層には最も大きい処理単位として符号化単位があり、前記最上位の階層よりも深い下位の階層には前記符号化単位よりも小さい処理単位として変換単位があり、前記パラメータは前記変換単位に適用される量子化パラメータであり、前記階層深さ情報は、前記最上位の階層よりも下位の階層を示し、前記量子化パラメータを書き込む際には、前記階層深さ情報により示される階層、または当該階層よりも上位の階層であって前記最上位の階層以外の階層にある処理単位に、前記パラメータを書き込んでもよい。
【0026】
これにより、量子化パラメータによる量子化における画質の向上と、量子化パラメータにおける符号化効率の向上の両立を図ることができる。
【0027】
また、前記ヘッダは、前記複数の処理単位からなるピクチャに対するピクチャヘッダであって、前記階層深さ情報を書き込む際には、前記階層深さ情報を前記ピクチャヘッダに書き込んでもよい。
【0028】
これにより、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を、ピクチャ全体に対して共通に設定することができる。
【0029】
また、前記量子化パラメータを書き込む際には、前記処理単位内において、前記直交変換および量子化によって生成された変化係数の後に、前記量子化パラメータを書き込んでもよい。
【0030】
これにより、変換係数がある場合にのみ量子化パラメータを書き込むことができ、符号化効率の向上を図ることができる。
【0031】
なお、本発明は、このような画像復号方法および画像符号化方法として実現することができるだけでなく、それらの方法により画像を復号または符号化する装置、集積回路、それらの方法により画像を復号または符号化するプログラム、そのプログラムを格納する記録媒体としても実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の送信方法およびシステムは、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、従来の符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態1における画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態1における画像復号装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、多階層ブロック構造を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、TMuCのソフトウェアによって生成される符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施の形態1における符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施の形態1における符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の実施の形態1における符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態1における他の符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施の形態1におけるさらに他の符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施の形態1におけるさらに他の符号化ストリームの構成を示す図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施の形態1におけるMax_quantization_unit_hierarchy_depthの格納位置を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の実施の形態1におけるMax_quantization_unit_hierarchy_depthの格納位置を示す図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の実施の形態1におけるデルタ量子化スケールパラメータを示す図である。
【
図10B】
図10Bは、本発明の実施の形態1における量子化デッドゾーンオフセットパラメータを示す図である。
【
図10C】
図10Cは、本発明の実施の形態1におけるインデックスを示す図である。
【
図10D】
図10Dは、本発明の実施の形態1における量子化オフセットパラメータを示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施の形態1における画像復号装置によるデルタQPの復号を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の実施の形態1における画像復号装置によるQPの算出を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態1における第1の変形例に係る画像復号装置による復号を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態1における第1の変形例に係る画像符号化装置による符号化を示すフローチャートである。
【
図15A】
図15Aは、本発明の実施の形態1における第2の変形例に係る画像復号装置による復号を示すフローチャートである。
【
図15B】
図15Bは、本発明の実施の形態1における第2の変形例に係る画像復号装置による復号を示すフローチャートである。
【
図16A】
図16Aは、本発明の実施の形態1における第2の変形例に係る画像符号化装置による符号化を示すフローチャートである。
【
図16B】
図16Bは、本発明の実施の形態1における第2の変形例に係る画像符号化装置による符号化を示すフローチャートである。
【
図18A】
図18Aは、本発明の実施の形態1におけるシーケンスヘッダのシンタックスを示す図である。
【
図18B】
図18Bは、本発明の実施の形態1におけるピクチャヘッダのシンタックスを示す図である。
【
図18C】
図18Cは、本発明の実施の形態1におけるスライスヘッダのシンタックスを示す図である。
【
図19A】
図19Aは、本発明の実施の形態1における符号化単位(CU)のシンタックスを示す図である。
【
図19B】
図19Bは、本発明の実施の形態1における予測単位(PU)のシンタックスを示す図である。
【
図19C】
図19Cは、本発明の実施の形態1における変換単位(TU)のシンタックスを示す図である。
【
図20】
図20は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムの全体構成図である。
【
図21】
図21は、デジタル放送用システムの全体構成図である。
【
図23】
図23は、光ディスクである記録メディアに情報の読み書きを行う情報再生/記録部の構成例を示すブロック図である。
【
図24】
図24は、光ディスクである記録メディアの構造例を示す図である。
【
図27】
図27は、各ストリームが多重化データにおいてどのように多重化されているかを模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかを更に詳しく示した図である。
【
図29】
図29は、多重化データにおけるTSパケットとソースパケットの構造を示す図である。
【
図31】
図31は、多重化データ情報の内部構成を示す図である。
【
図32】
図32は、ストリーム属性情報の内部構成を示す図である。
【
図33】
図33は、映像データを識別するステップを示す図である。
【
図34】
図34は、各実施の形態の動画像符号化方法および動画像復号方法を実現する集積回路の構成例を示すブロック図である。
【
図35】
図35は、駆動周波数を切り替える構成を示す図である。
【
図36】
図36は、映像データを識別し、駆動周波数を切り替えるステップを示す図である。
【
図37】
図37は、映像データの規格と駆動周波数を対応づけたルックアップテーブルの一例を示す図である。
【
図38A】
図38Aは、信号処理部のモジュールを共有化する構成の一例を示す図である。
【
図38B】
図38Bは、信号処理部のモジュールを共有化する構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0035】
(実施の形態1)
図2は、本実施の形態における画像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【0036】
画像符号化装置1000は、符号化処理部1100と符号化制御部1200とを備える。
【0037】
符号化処理部1100は、動画像をブロックごとに符号化することによって符号化ストリームを生成する。このような符号化処理部1100は、減算器1101、直交変換部1102、量子化部1103、エントロピー符号化部1104、逆量子化部1105、逆直交変換部1106、加算器1107、デブロッキングフィルタ1108、メモリ1109、面内予測部1110、動き補償部1111、動き検出部1112、およびスイッチ1113を備える。
【0038】
減算器1101は、動画像を取得するとともに、スイッチ1113から予測画像を取得する。そして、減算器1101は、その動画像に含まれる符号化対象ブロックから予測画像を減算することによって差分画像を生成する。
【0039】
直交変換部1102は、減算器1101によって生成された差分画像に対して例えば離散コサイン変換などの直交変換を行うことによって、その差分画像を複数の周波数係数からなる係数ブロックに変換する。量子化部1103は、その係数ブロックに含まれる各周波数係数を量子化することによって、量子化された係数ブロックを生成する。
【0040】
エントロピー符号化部1104は、量子化部1103によって量子化された係数ブロックと、動き検出部1112によって検出された動きベクトルとをエントロピー符号化(可変長符号化)することによって符号化ストリームを生成する。
【0041】
逆量子化部1105は、量子化部1103によって量子化された係数ブロックを逆量子化する。逆直交変換部1106は、その逆量子化された係数ブロックに含まれる各周波数係数に対して逆離散コサイン変換などの逆直交変換を行うことによって、復号差分画像を生成する。
【0042】
加算器1107は、スイッチ1113から予測画像を取得し、その予測画像と、逆直交変換部1106によって生成された復号差分画像とを加算することによって局所復号画像を生成する。
【0043】
デブロッキングフィルタ1108は、加算器1107によって生成された局所復号画像のブロック歪みを除去し、その局所復号画像をメモリ1109に格納する。
【0044】
面内予測部1110は、加算器1107によって生成された局所復号画像を用いて符号化対象ブロックに対して面内予測を行うことによって予測画像を生成する。
【0045】
動き検出部1112は、動画像に含まれる符号化対象ブロックに対して動きベクトルを検出し、その検出された動きベクトルを動き補償部1111とエントロピー符号化部1104に出力する。
【0046】
動き補償部1111は、メモリ1109に格納されている画像を参照画像として参照するとともに、動き検出部1112によって検出された動きベクトルを用いることによって、符号化対象ブロックに対して動き補償を行う。動き補償部1111は、このような動き補償によって符号化対象ブロックに対する予測画像を生成する。
【0047】
スイッチ1113は、符号化対象ブロックが面内予測符号化される場合には、面内予測部1110によって生成された予測画像を減算器1101および加算器1107に出力する。一方、スイッチ1113は、符号化対象ブロックが画面間予測符号化される場合には、動き補償部1111によって生成された予測画像を減算器1101および加算器1107に出力する。
【0048】
符号化制御部1200は、符号化処理部1100を制御する。具体的には、符号化制御部1200は、量子化パラメータが格納される処理単位と、その処理単位がある場所を特定するための階層深さ情報とを決定する。量子化パラメータは、量子化部1103による量子化および逆量子化部1105による逆量子化に用いられるパラメータである。本実施の形態における処理単位は階層化され、何れかの階層の処理単位が上述のブロックに相当する。階層深さ情報は、例えば、量子化パラメータが格納されている処理単位がある階層を特定するためのパラメータである。符号化制御部1200は、エントロピー符号化部1104に対して、量子化パラメータを上述の決定された処理単位に格納するように指示するとともに、階層深さ情報を符号化ストリームのヘッダ(例えばシーケンスヘッダまたはピクチャヘッダ)に格納するように指示する。
【0049】
図3は、本実施の形態における画像復号装置の構成を示すブロック図である。
【0050】
画像復号装置2000は、復号処理部2100と復号制御部2200とを備える。
【0051】
復号処理部2100は、符号化ストリームをブロックごとに復号することによって復号画像を生成する。このような復号処理部2100は、エントロピー復号部2101、逆量子化部2102、逆直交変換部2103、加算器2104、デブロッキングフィルタ2105、メモリ2106、面内予測部2107、動き補償部2108、およびスイッチ2109を備える。
【0052】
エントロピー復号部2101は、符号化ストリームを取得し、その符号化ストリームをエントロピー復号(可変長復号)する。
【0053】
逆量子化部2102は、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号によって生成された、量子化された係数ブロックを逆量子化する。逆直交変換部2103は、その逆量子化された係数ブロックに含まれる各周波数係数に対して逆離散コサイン変換などの逆直交変換を行うことによって、復号差分画像を生成する。
【0054】
加算器2104は、スイッチ2109から予測画像を取得し、その予測画像と、逆直交変換部2103によって生成された復号差分画像とを加算することによって復号画像を生成する。
【0055】
デブロッキングフィルタ2105は、加算器2104によって生成された復号画像のブロック歪みを除去し、その復号画像をメモリ2106に格納するとともに、その復号画像を出力する。
【0056】
面内予測部1110は、加算器2104によって生成された復号画像を用いて復号対象ブロックに対して面内予測を行うことによって予測画像を生成する。
【0057】
動き補償部2108は、メモリ2106に格納されている画像を参照画像として参照するとともに、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号によって生成された動きベクトルを用いることによって、復号対象ブロックに対して動き補償を行う。動き補償部2108は、このような動き補償によって復号対象ブロックに対する予測画像を生成する。
【0058】
スイッチ2109は、復号対象ブロックが面内予測符号化されている場合には、面内予測部2107によって生成された予測画像を加算器2104に出力する。一方、スイッチ2109は、復号対象ブロックが画面間予測符号化されている場合には、動き補償部2108によって生成された予測画像を加算器2104に出力する。
【0059】
復号制御部2200は、復号処理部2100を制御する。具体的には、復号制御部2200は、エントロピー復号部2101によるエントロピー復号の結果に基づいて、符号化ストリームのヘッダ(例えばシーケンスヘッダまたはピクチャヘッダ)に格納されている階層深さ情報を解析する。そして、復号制御部2200は、その階層深さ情報に基づいて、量子化パラメータが格納されている処理単位の階層を特定し、その階層にある処理単位に含まれる量子化パラメータを解析する。復号制御部2200は、その解析された量子化パラメータを用いた逆量子化を逆量子化部2102に指示する。
【0060】
図4は、階層化された処理単位(多階層ブロック構造)を説明するための説明図である。
【0061】
符号化処理部1100は、動画像を処理単位ごとに符号化し、復号処理部2100は、符号化ストリームを処理単位ごとに復号する。この処理単位は、複数の小さな処理単位に分割され、その小さな処理単位がさらに複数のより小さな処理単位に分割されるように、階層化されている。なお、処理単位が小さいほど、その処理単位がある階層は深く、下位にあり、その階層を示す値は大きい。逆に、処理単位が大きいほど、その処理単位がある階層は浅く、上位にあり、その階層を示す値は小さい。
【0062】
処理単位には、符号化単位(CU)と予測単位(PU)と変換単位(TU)とがある。CUは、最大128×128画素からなるブロックであり、従来のマクロブロックに相当する単位である。PUは、画面間予測の基本単位である。TUは、直交変換の基本単位であり、そのTUのサイズはPUと同じか、PUよりも一階層小さいサイズである。CUは、例えば4つのサブCUに分割され、そのうちの1つのサブCUは、そのサブCUと同じサイズのPUおよびTUを含む(この場合、PUとTUは互いに重なった状態にある)。例えば、そのPUはさらに4つのサブPUに分割され、TUもさらに4つのサブTUに分割される。なお、処理単位が複数の小さい処理単位に分割される場合、その小さい処理単位をサブ処理単位という。例えば、処理単位がCUの場合では、サブ処理単位はサブCUであり、処理単位がPUの場合では、サブ処理単位はサブPUであり、処理単位がTUの場合では、サブ処理単位はサブTUである。
【0063】
具体的には、以下のとおりである。
【0064】
ピクチャはスライスに分割される。スライスは最大符号化単位のシーケンスである。最大符号化単位の位置は、最大符号化単位アドレスlcuAddrによって示される。
【0065】
最大符号化単位を含むそれぞれの符号化単位は、4つの符号化単位に分割される。その結果、符号化単位の大きさの四分木分割が構成される。符号化単位の位置は、最大符号化単位の左上端のサンプル(画素または係数)を起点とした符号化単位インデックスcuIdxによって示される。
【0066】
符号化単位の分割が許可されていない場合、その符号化単位は予測単位として扱われる。符号化単位と同様に、予測単位の位置は、最大符号化単位の左上端のサンプルを起点とした予測単位インデックスpuIdxによって示される。
【0067】
予測単位は複数のパーティション(予測単位パーティションまたはサブPU)を含んでいてもよい。予測単位パーティションは、予測単位の左上端のサンプルを起点とした予測単位パーティションインデックスpuPartIdxによって示される。
【0068】
予測単位は複数の変換単位を含んでいてもよい。符号化単位と同様に、変換単位は4つの小さいサイズの変換単位(サブ変換単位)に分割されてもよい。このことは、残差信号の四分木分割を許可する。変換単位の位置は、予測単位の左上端のサンプルを起点とした変換単位インデックスtuIdxによって示される。
【0069】
ここで、各処理単位の定義は以下のとおりである。
【0070】
CTB(coding tree block):正方形領域の四分木分割を特定するための基本単位。
CTBは正方形の多様なサイズを有する。
【0071】
LCTB(largest coding tree block):スライスにおいて許可される最も大きいサイズのCTB。スライスは重複しない複数のLCTBからなる。
【0072】
SCTB(smallest coding tree block):スライスにおいて許可される最も小さいサイズのCTB。SCTBをより小さいCTBに分割することは許可されていない。
【0073】
PU(prediction unit):予測処理を特定するための基本単位。PUのサイズは、分割が許可されていないCUのサイズと同じである。CUでは、CUを4つの正方形領域に分割することが許可されているのに対して、PUでは、PUを任意の形状の複数のパーティションに分割することができる。
【0074】
TU(transform unit):変換および量子化を特定するための基本単位。
【0075】
CU(coding unit):CTBと同一。
【0076】
LCU(largest coding unit):最も大きいCTBと同一。
【0077】
SCU(smallest coding unit):最も小さいCTBと同一。
【0078】
また、量子化パラメータは、デルタ量子化スケールパラメータ(delta QPまたはQP delta)、量子化オフセットパラメータ、インデックス(Qmatrix select idc)および量子化デッドゾーンオフセットパラメータのうちの少なくとも1つを含む。なお、インデックスは、複数の量子化スケールマトリクスから1つを選択するためのものである。
【0079】
デルタ量子化スケールパラメータ(delta QP or QP delta)は、変換係数に適用されるべき量子化スケールパラメータと、シーケンスヘッダまたはスライスヘッダで指定される量子化スケールパラメータ(または、Z走査順で直前の量子化スケールパラメータ)との差分である。
【0080】
量子化オフセットパラメータは、量子化オフセットとも呼ばれ、量子化を行う際の信号の丸め方の調整値(オフセット値)である。したがって、画像符号化装置1000は、量子化を行うときには、その量子化オフセットを符号化し、画像復号装置2000は、その符号化された量子化オフセットを復号する。そして、画像復号装置2000は、変換係数を逆量子化する際には、その量子化オフセットを用いた補正を行う。
【0081】
インデックス(Qmatrix select idc)は、適応量子化マトリクスとも呼ばれ、複数の量子化スケーリングマトリクスから何れの量子化スケーリングマトリクスを用いるかを示すインデックスである。また、Qmatrix select idcは、1つの量子化スケーリングマトリクスしかない場合には、その量子化スケーリングマトリクスを使うか否かを示す。なお、適応用量子化マトリクスはブロック単位(処理単位)で制御可能である。
【0082】
量子化デッドゾーンオフセットパラメータは、適応デッドゾーンとも呼ばれ、デッドゾーンをブロック毎に適応的に変更するための制御情報である。デッドゾーンは、周波数係数が量子化によって0となる幅(量子化後に+1または-1となる直前の幅)である。
【0083】
図5は、TMuCのソフトウェアによって生成される符号化ストリームの構成を示す図である。
【0084】
Test Model Under Consideration(TMuC)のソフトウェアによって生成される符号化ストリームでは、デルタQPはLCUに格納される。つまり、この符号化ストリームでは、大きな処理単位であるLCUに含まれる全ての係数に対して、デルタQPなどの同一の量子化パラメータが適用される。その結果、画像の細部に対して量子化パラメータを調整することができず、画質が低下してしまう。
【0085】
そこで、本実施の形態の画像符号化装置1000によって生成され、画像復号装置2000によって復号される符号化ストリームでは、LCUよりも深い下位の階層にある処理単位に量子化パラメータが格納される。
【0086】
【0087】
図6Aに示すように、本実施の形態における符号化ストリームでは、LCUが4つのサブCUに分割され、サブCUごとに、そのサブCUに適用されるデルタQPがそのサブCUに格納される。つまり、LCUが1階層目であれば、LCUから2階層目の下位のCUにデルタQPが格納される。また、サブCU内において、デルタQPはそのサブCUに含まれる全ての変換係数の後に配置される。
【0088】
さらに、本実施の形態における符号化ストリームでは、デルタQPが格納されている最下位の処理単位の階層を示す階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)
が、シーケンスヘッダに格納される。例えば、Max_quantization_unit_hierarchy_depth=2である。
【0089】
画像符号化装置1000は、このような符号化ストリームを生成して出力する。一方、画像復号装置2000は、符号化ストリームのシーケンスヘッダに格納されている階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)を解析することによって、デルタQPが格納されている処理単位(2階層目にあるサブCU)を特定し、その処理単位に格納されているデルタQPを解析する。そして、画像復号装置2000は、そのデルタQPを、そのデルタQPを格納しているサブCUの各変換係数に適用することによって、逆量子化を行う。
【0090】
また、
図6Bに示すように、デルタQPの代わりにQmatrix select idcが格納されていてもよい。さらに、
図6Cに示すように、デルタQPおよびQmatrix select idcなどを含む量子化パラメータが格納されていてもよい。
【0091】
図7は、本実施の形態における他の符号化ストリームの構成を示す図である。
【0092】
図6A~
図6Cに示す符号化ストリームでは、量子化パラメータは2階層目にあるサブCUに格納されているが、
図7に示すように、より深い3階層目(Max_quantization_unit_hierarchy_depth=3)にあるサブCUまたはサブTUに量子化パラメータが格納されていてもよい。
【0093】
図8Aおよび
図8Bは、本実施の形態におけるさらに他の符号化ストリームの構成を示す図である。
【0094】
図8Aに示す符号化ストリームでは、TUまたはサブTUに、そのTUまたはサブTUに適用されるデルタQPが格納される。また、TUまたはサブTU内において、デルタQPはそのTUまたはサブTUに含まれる全ての変換係数の後に配置される。
【0095】
また、
図8Bに示すように、デルタQP以外の量子化パラメータや、デルタQPおよびQmatrix select idcなどを含む量子化パラメータが量子化ユニットとして格納されていてもよい。
【0096】
図9Aおよび
図9Bは、Max_quantization_unit_hierarchy_depthの格納位置を示す図である。
【0097】
Max_quantization_unit_hierarchy_depth D300は、
図9Aに示すように、シーケンスヘッダに格納されている。または、Max_quantization_unit_hierarchy_depthD302は、
図9Bに示すように、ピクチャヘッダに格納されている。つまり、画像符号化装置1000は、複数の処理単位からなるピクチャに対するピクチャヘッダに階層深さ情報を書き込む。その結果、そのピクチャヘッダに階層深さ情報が格納される。
【0098】
【0099】
量子化パラメータまたは量子化ユニットD600には、
図10A~
図10Dに示すように、デルタ量子化スケールパラメータD602、量子化デッドゾーンオフセットパラメータD604、インデックスD606、および量子化オフセットパラメータD608のうちの少なくとも1つが含まれる。なお、デルタ量子化スケールパラメータD602はデルタQPであり、インデックスD606はQmatrix select idc(適応量子化マトリクス)である。
【0100】
図11は、画像復号装置2000によるデルタQPの復号を示すフローチャートである。
【0101】
まず、画像復号装置2000は、ヘッダに格納されている階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)を復号し(ステップS1)、最小の量子化の処理単位(minimum quantization unit)のサイズを決定する(ステップS2)。次に、画像復号装置2000は、復号対象のCUがそのサイズであるか否かを判別する(ステップS3)。ここで、復号対象のCUがminimum quantization unitのサイズであると判別すると(ステップS3のYes)、画像復号装置2000は、そのCUに格納されているデルタQPを復号する(ステップS4)。一方、復号対象のCUがminimum quantization unitのサイズでないと判別すると(ステップS3のNo)、画像復号装置2000は、さらに、復号対象のCUのフラグ(split_coding_unitflag)が0であり、且つ、復号対象のCUのサイズがminimum quantization unitのサイズよりも大きいか否かを判別する(ステップS5)。なお、上述のsplit_coding_unitflagが0であれば、そのフラグはCUをさらに分割することができないことを示し、split_coding_unit flagが1であれば、そのフラグはCUをさらに分割することができることを示す。つまり、画像復号装置2000は、ステップS5において、その復号対象のCUをさらに分割することができず、且つ、復号対象のCUが階層深さ情報によって示される階層よりも上位にあるか否かを判別する。ここで、フラグが0であって復号対象のCUのサイズが大きいと判別すると(ステップS5のYes)、画像復号装置2000は、その復号対象のCUに格納されているデルタQPを復号する(ステップS6)。
【0102】
図12は、画像復号装置2000によるQP(量子化スケールパラメータ)の算出を示すフローチャートである。
【0103】
まず、画像復号装置2000は、4分割された処理単位における各TUのcoded_block_flag(CBF)を足し合わせることにより、復号対象のCUに含まれる輝度と色差に対するTUが符号化されているか否かを決定する(ステップS11およびS12)。なお、各TUには、変換係数があるか否かを示すフラグである上述のcoded_block_flagが格納されている。ここで、符号化されていると判別すると(ステップS12のYes)、画像復号装置2000はTUに含まれるデルタQPを復号する(ステップS14)。一方、符号化されていないと判別すると(ステップS12のNo)、画像復号装置2000は、デルタQPを0に設定する(ステップS13)。さらに、画像復号装置2000は、Z走査順で直前のCUのQPを決定し(ステップS15)、復号対象のCUのQPを算出する(ステップS16)。
【0104】
このように本実施の形態における画像符号化装置1000では、処理単位が階層化されている場合には、下位の階層にある小さい処理単位ごとに異なるパラメータ(例えば、量子化パラメータ)を書き込むことができる。その結果、画像復号装置2000では、小さい処理単位ごとに異なるパラメータを適用してそれらの処理単位を復号することができ、その結果、画質を向上することができる。また、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を特定するための階層深さ情報がヘッダに書き込まれることによって、その階層を画像復号装置2000に通知することができる。したがって、その階層を最下位の階層に限定することなく、任意の階層に設定することができる。したがって、最下位の階層にある最小の処理単位ごとにパラメータが格納されている場合よりも、符号化ストリームに含まれる全てのパラメータの符号量を抑えることができ、符号化効率を向上することができる。これにより、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができる。また、画像復号装置2000は、階層深さ情報を解析することによって、パラメータが格納されている処理単位のある階層を特定するため、パラメータが格納されている処理単位を検索する処理負担を軽減することができ、かつ、画像符号化装置1000によって生成された符号化ストリームを適切に復号することができる。なお、本実施の形態では、パラメータの一例として量子化パラメータをあげたが、パラメータはどのようなものであってもよい。
【0105】
(変形例1)
図13は、本実施の形態における第1の変形例に係る画像復号装置2000による復号を示すフローチャートである。
【0106】
画像復号装置2000は、まず、ピクチャヘッダに格納されている階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)を解析し(ステップS700)、CUのフラグを解析する(ステップS702)。次に、画像復号装置2000は、その解析されたフラグに基づいてCUをより小さい複数のサブCUに分割する(ステップS704)。そして、画像復号装置2000は、そのサブCUの階層を決定し(ステップS706)、その決定された階層が、Max_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS708)。
【0107】
ここで、一致すると判別すると(ステップS708のYes)、画像復号装置2000は、そのサブCUに格納されている量子化パラメータを解析し(ステップS710)、その解析された量子化パラメータによる逆量子化を行うことによって、そのサブCUを復号する(ステップS712)。
【0108】
一方、ステップS708で一致しないと判別すると(ステップS708のNo)、画像復号装置2000は、そのサブCUを4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述の解析されたフラグに基づいて判別する(ステップS714)。ここで、できないと判別すると(ステップS714のYes)、画像復号装置2000は、そのサブCUに対して上述のステップS710およびS712の処理を実行する。一方、できると判別すると(ステップS714のNo)、画像復号装置2000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS716)、その選択されたサブCUに対してステップS706からの処理を実行する。
【0109】
図14は、本実施の形態における第1の変形例に係る画像符号化装置1000による符号化を示すフローチャートである。
【0110】
画像符号化装置1000は、まず、階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)をピクチャヘッダに書き込み(ステップS800)、CUを分割するための最適なサイズを決定する(ステップS802)。次に、画像符号化装置1000は、その決定されたサイズの処理単位にCUを分割するためのフラグをそのCUに書き込む(ステップS804)。そして、画像符号化装置1000は、符号化対象の処理単位(CUまたはサブCU)の階層を決定し(ステップS806)、その決定された階層が、先に書き込まれたMax_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS808)。
【0111】
ここで、一致すると判別すると(ステップS808のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位(CUまたはサブCU)に量子化パラメータを書き込み(ステップS810)、その書き込まれた量子化パラメータによる量子化を行うことによって、その処理単位を符号化する(ステップS812)。さらに、画像符号化装置1000は、その書き込まれた量子化パラメータによる逆量子化を行うことによって、その符号化された処理単位を復号する(ステップS814)。
【0112】
一方、ステップS808で一致しないと判別すると(ステップS808のNo)、画像符号化装置1000は、その処理単位を4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述のフラグに基づいて判別する(ステップS816)。ここで、できないと判別すると(ステップS816のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位に対して上述のステップS810からの処理を実行する。一方、できると判別すると(ステップS816のNo)、画像符号化装置1000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS818)、その選択されたサブCUに対してステップS806からの処理を実行する。
【0113】
(変形例2)
図15Aおよび
図15Bは、本実施の形態における第2の変形例に係る画像復号装置2000による復号を示すフローチャートである。
【0114】
画像復号装置2000は、まず、ピクチャヘッダに格納されている階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)を解析し(ステップS900)、CUのフラグを解析する(ステップS902)。次に、画像復号装置2000は、その解析されたフラグに基づいてCUをより小さい複数のサブCUに分割する(ステップS904)。そして、画像復号装置2000は、そのサブCUの階層を決定し(ステップS906)、その決定された階層が、Max_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS908)。
【0115】
ここで、一致すると判別すると(ステップS908のYes)、画像復号装置2000は、そのサブCU(処理単位)に格納されている量子化パラメータを解析し(ステップS910)、その解析された量子化パラメータによる逆量子化を行うことによって、そのサブCU(処理単位)を復号する(ステップS912)。
【0116】
一方、ステップS908で一致しないと判別すると(ステップS908のNo)、画像復号装置2000は、そのサブCUを4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述の解析されたフラグに基づいて判別する(ステップS914)。ここで、できると判別すると(ステップS914のNo)、画像復号装置2000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS928)、その選択されたサブCUに対してステップS906からの処理を実行する。
【0117】
一方、ステップS914で、できないと判別すると(ステップS914のYes)、画像復号装置2000は、サブCU内のTUにある変換分割フラグを解析し(ステップS916)、その解析された変換分割フラグに基づいて、TUをより小さい処理単位である複数のサブTUに分割する(ステップS918)。さらに、画像復号装置2000は、そのサブTUに対してLCUからの階層を決定し(ステップS920)、その決定された階層が、Max_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS922)。
【0118】
ここで、一致すると判別すると(ステップS922のYes)、画像復号装置2000は、そのサブTUに対してステップS910からの処理を実行する。一方、ステップS922で一致しないと判別すると(ステップS922のNo)、画像復号装置2000は、そのサブTUを4つのより小さいサブTUにさらに分割することができないかを、上述の解析された変換分割フラグに基づいて判別する(ステップS926)。ここで、できると判別すると(ステップS926のNo)、画像復号装置2000は、それらの4つのより小さいサブTUの中から何れか1つのサブTUを選択し(ステップS924)、その選択されたサブTUに対してステップS920からの処理を実行する。一方、できないと判別すると(ステップS926のYes)、画像復号装置2000は、ステップS910からの処理を実行する。
【0119】
図16Aおよび
図16Bは、本実施の形態における第2の変形例に係る画像符号化装置1000による符号化を示すフローチャートである。
【0120】
画像符号化装置1000は、まず、階層深さ情報(Max_quantization_unit_hierarchy_depth)をピクチャヘッダに書き込み(ステップS1000)、CUを分割するための最適なサイズを決定する(ステップS1002)。次に、画像符号化装置1000は、その決定されたサイズの処理単位にCUを分割するためのフラグをそのCUに書き込む(ステップS1004)。そして、画像符号化装置1000は、符号化対象の処理単位(CUまたはサブCU)の階層を決定し(ステップS1006)、その決定された階層が、先に書き込まれたMax_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS1008)。
【0121】
ここで、一致すると判別すると(ステップS1008のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位(CUまたはサブCU)に量子化パラメータを書き込み(ステップS1010)、その書き込まれた量子化パラメータによる量子化を行うことによって、その処理単位を符号化する(ステップS1030)。さらに、画像符号化装置1000は、その書き込まれた量子化パラメータによる逆量子化を行うことによって、その符号化された処理単位を復号する(ステップS1012)。
【0122】
一方、ステップS1008で一致しないと判別すると(ステップS1008のNo)、画像符号化装置1000は、その処理単位を4つのより小さいサブCUにさらに分割することができないかを、上述のフラグに基づいて判別する(ステップS1014)。ここで、できると判別すると(ステップS1014のNo)、画像符号化装置1000は、それらの4つのより小さいサブCUの中から何れか1つのサブCUを選択し(ステップS1028)、その選択されたサブCUに対してステップS1006からの処理を実行する。
【0123】
一方、ステップS1014で、できないと判別すると(ステップS1014のYes)、画像符号化装置1000は、処理単位(CUまたはサブCU)内のTUを分割するための最適なサイズを決定し(ステップS1016)、その決定されたサイズの処理単位にTUを分割するためのフラグ(変換分割フラグ)をそのTUに書き込む(ステップS1018)。次に、画像符号化装置1000は、符号化対象の処理単位(TUまたはサブTU)に対してLCUからの階層を決定し(ステップS1020)、その決定された階層が、先に書き込まれたMax_quantization_unit_hierarchy_depthによって示される階層に一致するか否かを判別する(ステップS10022)。
【0124】
ここで、一致すると判別すると(ステップS1022のYes)、画像符号化装置1000は、その処理単位(TUまたはサブTU)に対してステップS1010からの処理を実行する(ステップS1010)。一方、ステップS1022で一致しないと判別すると(ステップS1022のNo)、画像符号化装置1000は、その処理単位(TUまたはサブTU)を4つのより小さいサブTUにさらに分割することができないかを、上述の変換分割フラグに基づいて判別する(ステップS1026)。ここで、できると判別すると(ステップS1026のNo)、画像符号化装置1000は、それらの4つのより小さいサブTUの中から何れか1つのサブTUを選択し(ステップS1024)、その選択されたサブTUに対してステップS1020からの処理を実行する。一方、ステップS1026で、できないと判別すると(ステップS1026のYes)、画像符号化装置1000は、ステップS1010からの処理を実行する。つまり、画像符号化装置1000は、その処理単位(TUまたはサブTU)に量子化パラメータを書き込み(ステップS1010)、その書き込まれた量子化パラメータによる量子化を行うことによって、その処理単位を符号化する(ステップS1030)。さらに、画像符号化装置1000は、その書き込まれた量子化パラメータによる逆量子化を行うことによって、その符号化された処理単位を復号する(ステップS1012)。
【0125】
ここで、本発明における課題および解決手段は、以下のとおりであるともいえる。
【0126】
つまり、ピクチャを大きな符号化単位に分割することによって、符号化効率を向上することができる。しかし、量子化パラメータが、大きな符号化単位に対して設定されると、その符号化単位が大きいサイズであるために、画像符号化装置において、ピクチャのサイズを調整する柔軟性が失われる。量子化パラメータは、量子化スケールパラメータ、量子化オフセットパラメータ、およびインデックスのうちの少なくとも1つを含む。なお、インデックスは、複数の量子化スケールマトリクスの中から1つの量子化スケールマトリクスを選択するためのものである。
【0127】
例えば、テレビ会議や防犯カメラなどの低遅延が要求されるビデオ機器では、1つのピクチャの最大サイズを調整可能であることが、動画像の符号化および復号化に要求される重要な特徴である。これにより、ピクチャの最も小さい単位で量子化パラメータを調整することが必要である。一方、その他のビデオ機器では、上述のような特徴は要求されず、それらの量子化パラメータを送信するためのオーバーヘッドを低減することによって符号化効率の向上を図ることができる。
【0128】
ここで、符号化単位、予測単位および変換単位はHEVC規格の基本単位である。量子化スケールパラメータであるQPは、差分値(デルタ値)の逆スケーリング処理のために使われるパラメータであり、符号化単位のレベルで送信される。HEVCのTMuC(Test Model Under Consideration)仕様では、そのデルタ量子化スケールパラメータは送信されない。しかし、ソフトウェアでは、デルタ量子化スケールパラメータは最も大きな符号化単位の量子化の最後に送信される。しかしながら、予測単位であるPUがスキップされると、符号化単位であるCUの深さが0であり、Yブロック、UブロックおよびVブロックは符号化されない。
【0129】
つまり、以下のような2つの課題(課題1および2)がある。
【0130】
課題1:符号化デルタ量子化スケールパラメータが、最大符号化単位のレベルだけに制限されている。低遅延または定ビットレートのビデオ機器には、符号化単位ごとにビットを調整することは難しいかもしれない。言い換えれば、TMuC仕様およびソフトウェアにおいては、情報の格納位置に対する制限が厳しく、量子化パラメータを最大CU単位でしか伝送することができない。その結果、より小さい単位(処理単位)で量子化パラメータをコントロールすることができない。
【0131】
課題2:変換単位であるTUが符号化されないときには、量子化パラメータは必要とされない。しかし、現在の技術では、TUとPUがスキップされる場合だけをチェックしている。TUとPUは分離されているため、QPデルタの送信はTUのみに依存する。また、変換係数(空間領域の画像が直交変換および量子化されて生成された係数)がないような場合でも、その変換係数に対して不要な量子化パラメータを伝送する必要がある。その結果、符号化された画像を示す符号化ストリームが冗長になってしまう。
【0132】
上記課題を解決するために、最大符号化単位ごとに量子化パラメータを送信する新しい方法を提供する。この送信方法では、画像符号化装置において、ブロックの細かいレート制御の機能性と、高い符号化効率とを両立するために、符号化単位に量子化パラメータが含まれて送信されるレベルを選択することができる。
【0133】
この発明の新しい点は、データレートのより良い制御のために、ピクチャの最大符号化単位における量子化パラメータの位置を決定するという、画像符号化装置におけるより高い柔軟性または機能性である。この機能性は、従来にはなく、最大符号化単位および量子化パラメータを用いることと組み合せることによって、符号化動画像の画質向上を図ることができる。この発明の新しい点は、符号化単位における量子化パラメータの位置である。特に、従来では、例えばマクロブロックなどの符号化単位のヘッダに量子化パラメータが含まれる。しかしながら、本発明では、量子化パラメータは、ブロックに関する予測および差分情報が符号化された後に、符号化単位の最後に符号化される。
【0134】
つまり、上述の課題1および課題2に対しては、以下のような解決手段(解決手段1および解決手段2)が考えられる。
【0135】
解決手段1:小さいCUレベルでデルタQPを送信するために、ヘッダ(シーケンスパラメータセット/ピクチャパラメータセット/スライスヘッダ)に階層深さ情報を挿入する。つまり、画像符号化装置は、最大CUよりも深い階層にある小さい単位(処理単位)に量子化パラメータを格納し、その処理単位がある階層(階層の深さ)を特定するための階層深さ情報をシーケンスヘッダまたはピクチャヘッダなどのヘッダに格納する。画像復号装置は、そのヘッダにある階層深さ情報を解析して階層(階層の深さ)を特定し、その特定された階層にある処理単位に格納されている量子化パラメータを解析する。ここで、階層深さ情報は、量子化パラメータを格納している処理単位が存在し得る最も深い(最も下位にある)階層を示していてもよい。この場合、画像復号装置は、その階層深さ情報によって示される最下位の階層、またはその階層よりも上位の階層であって最上位の階層以外の階層を特定する。また、階層深さ情報は、予め定められた階層のCU(例えば、最下位の階層にあるCU)に量子化パラメータが格納されているか否かを示すフラグであってもよい。
【0136】
解決手段2:デルタQPの送信をスキップするために、TU符号化ブロックフラグまたはパターンをチェックする新しい条件を導入する。また、画像符号化装置は、量子化パラメータを伝送する際には、TU内の最後に量子化パラメータを配置する。これにより、画像復号装置は、量子化パラメータが不要の場合(例えば変換係数がない場合)を判断することができる。その結果、画像符号化装置は不要な量子化パラメータを伝送する必要が無く、符号量を削減することができる。
【0137】
以上、本発明の画像復号方法および画像符号化方法について、上記実施の形態およびその変形例を用いて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0138】
例えば、上記実施の形態1およびその変形例における画像復号方法では、
図11のステップS3およびS5などの処理を含んでいるが、本発明はそれらの処理がなくても、上述の効果を奏することができる。
【0139】
図17Aは、本発明の画像復号方法を示すフローチャートである。
【0140】
本発明の画像復号方法は、動画像を符号化することによって生成された、複数の処理単位と、その複数の処理単位に対するヘッダとを含む符号化ストリームを復号する画像復号方法である。ここで、その複数の処理単位のうち少なくとも1つの処理単位は、複数のより小さい処理単位に分割されるように、階層化されている。この画像復号方法では、まず、ヘッダに格納されている階層深さ情報を解析することによって、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を特定する(ステップS101)。次に、特定された階層にある処理単位に格納されているパラメータを用いて、その処理単位を復号する(ステップS102)。
【0141】
このような、ステップS101およびS102の処理を行うことによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の処理は本発明において必須の処理ではない。また、本発明の画像復号装置は、ステップS101およびS102のそれぞれの処理を実行する構成要素を備えることによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の構成要素は本発明において必須の構成要素ではない。なお、実施の形態1の画像復号装置2000では、復号制御部2200がステップS101の処理を実行し、復号処理部2100がステップS102の処理を実行する。
【0142】
また、上記実施の形態1およびその変形例における画像符号化方法では、
図14のステップS804などの処理を含んでいるが、本発明はそのような処理がなくても、上述の効果を奏することができる。
【0143】
図17Bは、本発明の画像符号化方法を示すフローチャートである。
【0144】
本発明の画像符号化方法は、動画像を符号化することにより、複数の処理単位と、その複数の処理単位に対するヘッダとを含む符号化ストリームを生成する画像符号化方法である。ここで、その複数の処理単位のうち少なくとも1つの処理単位は、複数のより小さい処理単位に分割されるように、階層化されている。この画像符号化方法では、まず、動画像を符号化する(ステップS111)。次に、復号に必要なパラメータが格納されている処理単位のある階層を特定するための階層深さ情報を、そのヘッダに書き込む(ステップS112)。さらに、階層深さ情報により特定される階層にある処理単位に、そのパラメータを書き込む(ステップS113)。
【0145】
このような、ステップS111~S113の処理を行うことによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の処理は本発明において必須の処理ではない。また、本発明の画像符号化装置は、ステップS111~S113のそれぞれの処理を実行する構成要素を備えることによって、実施の形態1と同様の効果を奏することができ、その他の構成要素は本発明において必須の構成要素ではない。なお、実施の形態1の画像符号化装置1000では、符号化制御部1200による制御に基づいてエントロピー符号化部1104がステップS111~S113の処理を実行する。
【0146】
なお、本発明に関連するヘッダのシンタックスは、
図18A~
図18Cに示すとおりであり、本発明に関連する処理単位(CU、PUおよびTU)のシンタックスは、
図19A~
図19Cに示すとおりである。
【0147】
図18Aは、シーケンスヘッダのシンタックスを示す図である。このシーケンスヘッダでは、例えば、参照し得る最大の参照フレーム数(max_num_ref_frames)、およびピクチャのサイズ(pic_widht_in_luma_samples, pic_height_in_luma_samples)などが規定されている。
【0148】
図18Bは、ピクチャヘッダのシンタックスを示す図である。このピクチャヘッダでは、シンタックスの一部d1に示すように、参照方向(前方向および後方向)ごとに参照インデックスを保持し得る数が規定されているとともに、初期QP(初期QPから26を引いた数)が規定されている。
【0149】
図18Cは、スライスヘッダのシンタックスを示す図である。このスライスヘッダは、シンタックスの一部d2に示すように、上述の参照インデックスの保持し得る数をスライスごとに書き換え可能に構成されている。また、このスライスヘッダには、シンタックスの他の部分d3に示すように、上述のピクチャヘッダに規定された初期QPからのQPの差分値が規定されている。
【0150】
図19Aは、CUのシンタックスを示す図である。このCUでは、シンタックスの一部d4およびd5に示すように、そのCUに対するPUおよびTUが規定されている。
【0151】
図19Bは、PUのシンタックスを示す図である。このPUは、シンタックスの一部d6およびd8に示すように、参照方向ごとに参照インデックスを有し、さらに、シンタックスの他の部分d7およびd9に示すように、参照方向ごとに適応動きベクトル解像度切換フラグ(mvres)を有している。
【0152】
図19Cは、TUのシンタックスを示す図である。このTUは、シンタックスの一部d10に示すように、差分画像が直交変換されて量子化された係数(変換係数)を有する。
【0153】
(実施の形態2)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または画像復号方法の構成を実現するためのプログラムを記憶メディアに記録することにより、上記各実施の形態で示した処理を独立したコンピュータシステムにおいて簡単に実施することが可能となる。記憶メディアは、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、半導体メモリ等、プログラムを記録できるものであればよい。
【0154】
さらにここで、上記各実施の形態で示した画像符号化方法や画像復号方法の応用例とそれを用いたシステムを説明する。
【0155】
図20は、コンテンツ配信サービスを実現するコンテンツ供給システムex100の全体構成を示す図である。通信サービスの提供エリアを所望の大きさに分割し、各セル内にそれぞれ固定無線局である基地局ex106、ex107、ex108、ex109、ex110が設置されている。
【0156】
このコンテンツ供給システムex100は、インターネットex101にインターネットサービスプロバイダex102および電話網ex104、および基地局ex106からex110を介して、コンピュータex111、PDA(Personal Digital Assistant)ex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115などの各機器が接続される。
【0157】
しかし、コンテンツ供給システムex100は
図20のような構成に限定されず、いずれかの要素を組合せて接続するようにしてもよい。また、固定無線局である基地局ex106からex110を介さずに、各機器が電話網ex104に直接接続されてもよい。また、各機器が近距離無線等を介して直接相互に接続されていてもよい。
【0158】
カメラex113はデジタルビデオカメラ等の動画撮影が可能な機器であり、カメラex116はデジタルカメラ等の静止画撮影、動画撮影が可能な機器である。また、携帯電話ex114は、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、W-CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式、若しくはLTE(Long Term Evolution)方式、HSPA(High Speed Packet Access)の携帯電話機、またはPHS(Personal Handyphone System)等であり、いずれでも構わない。
【0159】
コンテンツ供給システムex100では、カメラex113等が基地局ex109、電話網ex104を通じてストリーミングサーバex103に接続されることで、ライブ配信等が可能になる。ライブ配信では、ユーザがカメラex113を用いて撮影するコンテンツ(例えば、音楽ライブの映像等)に対して上記各実施の形態で説明したように符号化処理を行い、ストリーミングサーバex103に送信する。一方、ストリーミングサーバex103は要求のあったクライアントに対して送信されたコンテンツデータをストリーム配信する。クライアントとしては、上記符号化処理されたデータを復号することが可能な、コンピュータex111、PDAex112、カメラex113、携帯電話ex114、ゲーム機ex115等がある。配信されたデータを受信した各機器では、受信したデータを復号処理して再生する。
【0160】
なお、撮影したデータの符号化処理はカメラex113で行っても、データの送信処理をするストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。同様に配信されたデータの復号処理はクライアントで行っても、ストリーミングサーバex103で行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。また、カメラex113に限らず、カメラex116で撮影した静止画像および/または動画像データを、コンピュータex111を介してストリーミングサーバex103に送信してもよい。この場合の符号化処理はカメラex116、コンピュータex111、ストリーミングサーバex103のいずれで行ってもよいし、互いに分担して行ってもよい。
【0161】
また、これら符号化・復号処理は、一般的にコンピュータex111や各機器が有するLSIex500において処理する。LSIex500は、ワンチップであっても複数チップからなる構成であってもよい。なお、動画像符号化・復号用のソフトウェアをコンピュータex111等で読み取り可能な何らかの記録メディア(CD-ROM、フレキシブルディスク、ハードディスクなど)に組み込み、そのソフトウェアを用いて符号化・復号処理を行ってもよい。さらに、携帯電話ex114がカメラ付きである場合には、そのカメラで取得した動画データを送信してもよい。このときの動画データは携帯電話ex114が有するLSIex500で符号化処理されたデータである。
【0162】
また、ストリーミングサーバex103は複数のサーバや複数のコンピュータであって、データを分散して処理したり記録したり配信するものであってもよい。
【0163】
以上のようにして、コンテンツ供給システムex100では、符号化されたデータをクライアントが受信して再生することができる。このようにコンテンツ供給システムex100では、ユーザが送信した情報をリアルタイムでクライアントが受信して復号し、再生することができ、特別な権利や設備を有さないユーザでも個人放送を実現できる。
【0164】
なお、コンテンツ供給システムex100の例に限らず、
図21に示すように、デジタル放送用システムex200にも、上記各実施の形態の少なくとも画像符号化装置または画像復号装置のいずれかを組み込むことができる。具体的には、放送局ex201では映像データに音楽データなどが多重化された多重化データが電波を介して通信または衛星ex202に伝送される。この映像データは上記各実施の形態で説明した画像符号化方法により符号化されたデータである。これを受けた放送衛星ex202は、放送用の電波を発信し、この電波を衛星放送の受信が可能な家庭のアンテナex204が受信する。受信した多重化データを、テレビ(受信機)ex300またはセットトップボックス(STB)ex217等の装置が復号して再生する。
【0165】
また、DVD、BD等の記録メディアex215に記録した多重化データを読み取り復号する、または記録メディアex215に映像信号を符号化し、さらに場合によっては音楽信号と多重化して書き込むリーダ/レコーダex218にも上記各実施の形態で示した画像復号装置または画像符号化装置を実装することが可能である。この場合、再生された映像信号はモニタex219に表示され、多重化データが記録された記録メディアex215により他の装置やシステムにおいて映像信号を再生することができる。また、ケーブルテレビ用のケーブルex203または衛星/地上波放送のアンテナex204に接続されたセットトップボックスex217内に画像復号装置を実装し、これをテレビのモニタex219で表示してもよい。このときセットトップボックスではなく、テレビ内に画像復号装置を組み込んでもよい。
【0166】
図22は、上記各実施の形態で説明した画像復号方法および画像符号化方法を用いたテレビ(受信機)ex300を示す図である。テレビex300は、上記放送を受信するアンテナex204またはケーブルex203等を介して映像データに音声データが多重化された多重化データを取得、または出力するチューナex301と、受信した多重化データを復調する、または外部に送信する多重化データに変調する変調/復調部ex302と、復調した多重化データを映像データと、音声データとに分離する、または信号処理部ex306で符号化された映像データ、音声データを多重化する多重/分離部ex303を備える。
【0167】
また、テレビex300は、音声データ、映像データそれぞれを復号する、またはそれぞれの情報を符号化する音声信号処理部ex304、映像信号処理部ex305を有する信号処理部ex306と、復号した音声信号を出力するスピーカex307、復号した映像信号を表示するディスプレイ等の表示部ex308を有する出力部ex309とを有する。さらに、テレビex300は、ユーザ操作の入力を受け付ける操作入力部ex312等を有するインタフェース部ex317を有する。さらに、テレビex300は、各部を統括的に制御する制御部ex310、各部に電力を供給する電源回路部ex311を有する。インタフェース部ex317は、操作入力部ex312以外に、リーダ/レコーダex218等の外部機器と接続されるブリッジex313、SDカード等の記録メディアex216を装着可能とするためのスロット部ex314、ハードディスク等の外部記録メディアと接続するためのドライバex315、電話網と接続するモデムex316等を有していてもよい。なお記録メディアex216は、格納する不揮発性/揮発性の半導体メモリ素子により電気的に情報の記録を可能としたものである。テレビex300の各部は同期バスを介して互いに接続されている。
【0168】
まず、テレビex300がアンテナex204等により外部から取得した多重化データを復号し、再生する構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、CPU等を有する制御部ex310の制御に基づいて、変調/復調部ex302で復調した多重化データを多重/分離部ex303で分離する。さらにテレビex300は、分離した音声データを音声信号処理部ex304で復号し、分離した映像データを映像信号処理部ex305で上記各実施の形態で説明した復号方法を用いて復号する。復号した音声信号、映像信号は、それぞれ出力部ex309から外部に向けて出力される。出力する際には、音声信号と映像信号が同期して再生するよう、バッファex318、ex319等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。また、テレビex300は、放送等からではなく、磁気/光ディスク、SDカード等の記録メディアex215、ex216から多重化データを読み出してもよい。次に、テレビex300が音声信号や映像信号を符号化し、外部に送信または記録メディア等に書き込む構成について説明する。テレビex300は、リモートコントローラex220等からのユーザ操作を受け、制御部ex310の制御に基づいて、音声信号処理部ex304で音声信号を符号化し、映像信号処理部ex305で映像信号を上記各実施の形態で説明した符号化方法を用いて符号化する。符号化した音声信号、映像信号は多重/分離部ex303で多重化され外部に出力される。多重化する際には、音声信号と映像信号が同期するように、バッファex320、ex321等に一旦これらの信号を蓄積するとよい。なお、バッファex318、ex319、ex320、ex321は図示しているように複数備えていてもよいし、1つ以上のバッファを共有する構成であってもよい。さらに、図示している以外に、例えば変調/復調部ex302や多重/分離部ex303の間等でもシステムのオーバフロー、アンダーフローを避ける緩衝材としてバッファにデータを蓄積することとしてもよい。
【0169】
また、テレビex300は、放送等や記録メディア等から音声データ、映像データを取得する以外に、マイクやカメラのAV入力を受け付ける構成を備え、それらから取得したデータに対して符号化処理を行ってもよい。なお、ここではテレビex300は上記の符号化処理、多重化、および外部出力ができる構成として説明したが、これらの処理を行うことはできず、上記受信、復号処理、外部出力のみが可能な構成であってもよい。
【0170】
また、リーダ/レコーダex218で記録メディアから多重化データを読み出す、または書き込む場合には、上記復号処理または符号化処理はテレビex300、リーダ/レコーダex218のいずれで行ってもよいし、テレビex300とリーダ/レコーダex218が互いに分担して行ってもよい。
【0171】
一例として、光ディスクからデータの読み込みまたは書き込みをする場合の情報再生/記録部ex400の構成を
図23に示す。情報再生/記録部ex400は、以下に説明する要素ex401、ex402、ex403、ex404、ex405、ex406、ex407を備える。光ヘッドex401は、光ディスクである記録メディアex215の記録面にレーザスポットを照射して情報を書き込み、記録メディアex215の記録面からの反射光を検出して情報を読み込む。変調記録部ex402は、光ヘッドex401に内蔵された半導体レーザを電気的に駆動し記録データに応じてレーザ光の変調を行う。再生復調部ex403は、光ヘッドex401に内蔵されたフォトディテクタにより記録面からの反射光を電気的に検出した再生信号を増幅し、記録メディアex215に記録された信号成分を分離して復調し、必要な情報を再生する。バッファex404は、記録メディアex215に記録するための情報および記録メディアex215から再生した情報を一時的に保持する。ディスクモータex405は記録メディアex215を回転させる。サーボ制御部ex406は、ディスクモータex405の回転駆動を制御しながら光ヘッドex401を所定の情報トラックに移動させ、レーザスポットの追従処理を行う。システム制御部ex407は、情報再生/記録部ex400全体の制御を行う。上記の読み出しや書き込みの処理はシステム制御部ex407が、バッファex404に保持された各種情報を利用し、また必要に応じて新たな情報の生成・追加を行うと共に、変調記録部ex402、再生復調部ex403、サーボ制御部ex406を協調動作させながら、光ヘッドex401を通して、情報の記録再生を行うことにより実現される。システム制御部ex407は例えばマイクロプロセッサで構成され、読み出し書き込みのプログラムを実行することでそれらの処理を実行する。
【0172】
以上では、光ヘッドex401はレーザスポットを照射するとして説明したが、近接場光を用いてより高密度な記録を行う構成であってもよい。
【0173】
図24に光ディスクである記録メディアex215の模式図を示す。記録メディアex215の記録面には案内溝(グルーブ)がスパイラル状に形成され、情報トラックex230には、予めグルーブの形状の変化によってディスク上の絶対位置を示す番地情報が記録されている。この番地情報はデータを記録する単位である記録ブロックex231の位置を特定するための情報を含み、記録や再生を行う装置において情報トラックex230を再生し番地情報を読み取ることで記録ブロックを特定することができる。また、記録メディアex215は、データ記録領域ex233、内周領域ex232、外周領域ex234を含んでいる。ユーザデータを記録するために用いる領域がデータ記録領域ex233であり、データ記録領域ex233より内周または外周に配置されている内周領域ex232と外周領域ex234は、ユーザデータの記録以外の特定用途に用いられる。情報再生/記録部ex400は、このような記録メディアex215のデータ記録領域ex233に対して、符号化された音声データ、映像データまたはそれらのデータを多重化した多重化データの読み書きを行う。
【0174】
以上では、1層のDVD、BD等の光ディスクを例に挙げ説明したが、これらに限ったものではなく、多層構造であって表面以外にも記録可能な光ディスクであってもよい。また、ディスクの同じ場所にさまざまな異なる波長の色の光を用いて情報を記録したり、さまざまな角度から異なる情報の層を記録したりなど、多次元的な記録/再生を行う構造の光ディスクであってもよい。
【0175】
また、デジタル放送用システムex200において、アンテナex205を有する車ex210で衛星ex202等からデータを受信し、車ex210が有するカーナビゲーションex211等の表示装置に動画を再生することも可能である。なお、カーナビゲーションex211の構成は例えば
図22に示す構成のうち、GPS受信部を加えた構成が考えられ、同様なことがコンピュータex111や携帯電話ex114等でも考えられる。
【0176】
図25Aは、上記実施の形態で説明した画像復号方法および画像符号化方法を用いた携帯電話ex114を示す図である。携帯電話ex114は、基地局ex110との間で電波を送受信するためのアンテナex350、映像、静止画を撮ることが可能なカメラ部ex365、カメラ部ex365で撮像した映像、アンテナex350で受信した映像等が復号されたデータを表示する液晶ディスプレイ等の表示部ex358を備える。携帯電話ex114は、さらに、操作キー部ex366を有する本体部、音声を出力するためのスピーカ等である音声出力部ex357、音声を入力するためのマイク等である音声入力部ex356、撮影した映像、静止画、録音した音声、または受信した映像、静止画、メール等の符号化されたデータもしくは復号されたデータを保存するメモリ部ex367、又は同様にデータを保存する記録メディアとのインタフェース部であるスロット部ex364を備える。
【0177】
さらに、携帯電話ex114の構成例について、
図25Bを用いて説明する。携帯電話ex114は、表示部ex358及び操作キー部ex366を備えた本体部の各部を統括的に制御する主制御部ex360に対して、電源回路部ex361、操作入力制御部ex362、映像信号処理部ex355、カメラインタフェース部ex363、LCD(Liquid Crystal Display)制御部ex359、変調/復調部ex352、多重/分離部ex353、音声信号処理部ex354、スロット部ex364、メモリ部ex367がバスex370を介して互いに接続されている。
【0178】
電源回路部ex361は、ユーザの操作により終話及び電源キーがオン状態にされると、バッテリパックから各部に対して電力を供給することにより携帯電話ex114を動作可能な状態に起動する。
【0179】
携帯電話ex114は、CPU、ROM、RAM等を有する主制御部ex360の制御に基づいて、音声通話モード時に音声入力部ex356で収音した音声信号を音声信号処理部ex354でデジタル音声信号に変換し、これを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理し、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。また携帯電話ex114は、音声通話モード時にアンテナex350を介して受信した受信データを増幅して周波数変換処理およびアナログデジタル変換処理を施し、変調/復調部ex352でスペクトラム逆拡散処理し、音声信号処理部ex354でアナログ音声信号に変換した後、これを音声出力部ex357から出力する。
【0180】
さらにデータ通信モード時に電子メールを送信する場合、本体部の操作キー部ex366等の操作によって入力された電子メールのテキストデータは操作入力制御部ex362を介して主制御部ex360に送出される。主制御部ex360は、テキストデータを変調/復調部ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理および周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して基地局ex110へ送信する。電子メールを受信する場合は、受信したデータに対してこのほぼ逆の処理が行われ、表示部ex358に出力される。
【0181】
データ通信モード時に映像、静止画、または映像と音声を送信する場合、映像信号処理部ex355は、カメラ部ex365から供給された映像信号を上記各実施の形態で示した画像符号化方法によって圧縮符号化し、符号化された映像データを多重/分離部ex353に送出する。また、音声信号処理部ex354は、映像、静止画等をカメラ部ex365で撮像中に音声入力部ex356で収音した音声信号を符号化し、符号化された音声データを多重/分離部ex353に送出する。
【0182】
多重/分離部ex353は、映像信号処理部ex355から供給された符号化された映像データと音声信号処理部ex354から供給された符号化された音声データを所定の方式で多重化し、その結果得られる多重化データを変調/復調部(変調/復調回路部)ex352でスペクトラム拡散処理をし、送信/受信部ex351でデジタルアナログ変換処理及び周波数変換処理を施した後にアンテナex350を介して送信する。
【0183】
データ通信モード時にホームページ等にリンクされた動画像ファイルのデータを受信する場合、または映像およびもしくは音声が添付された電子メールを受信する場合、アンテナex350を介して受信された多重化データを復号するために、多重/分離部ex353は、多重化データを分離することにより映像データのビットストリームと音声データのビットストリームとに分け、同期バスex370を介して符号化された映像データを映像信号処理部ex355に供給するとともに、符号化された音声データを音声信号処理部ex354に供給する。映像信号処理部ex355は、上記各実施の形態で示した画像符号化方法に対応した画像復号方法によって復号することにより映像信号を復号し、LCD制御部ex359を介して表示部ex358から、例えばホームページにリンクされた動画像ファイルに含まれる映像、静止画が表示される。また音声信号処理部ex354は、音声信号を復号し、音声出力部ex357から音声が出力される。
【0184】
また、上記携帯電話ex114等の端末は、テレビex300と同様に、符号化器・復号器を両方持つ送受信型端末の他に、符号化器のみの送信端末、復号器のみの受信端末という3通りの実装形式が考えられる。さらに、デジタル放送用システムex200において、映像データに音楽データなどが多重化された多重化データを受信、送信するとして説明したが、音声データ以外に映像に関連する文字データなどが多重化されたデータであってもよいし、多重化データではなく映像データ自体であってもよい。
【0185】
このように、上記各実施の形態で示した画像符号化方法あるいは画像復号方法を上述したいずれの機器・システムに用いることは可能であり、そうすることで、上記各実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【0186】
また、本発明はかかる上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0187】
(実施の形態3)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置と、MPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1など異なる規格に準拠した動画像符号化方法または装置とを、必要に応じて適宜切替えることにより、映像データを生成することも可能である。
【0188】
ここで、それぞれ異なる規格に準拠する複数の映像データを生成した場合、復号する際に、それぞれの規格に対応した復号方法を選択する必要がある。しかしながら、復号する映像データが、どの規格に準拠するものであるか識別できないため、適切な復号方法を選択することができないという課題を生じる。
【0189】
この課題を解決するために、映像データに音声データなどを多重化した多重化データは、映像データがどの規格に準拠するものであるかを示す識別情報を含む構成とする。上記各実施の形態で示す画像符号化方法または装置によって生成された映像データを含む多重化データの具体的な構成を以下説明する。多重化データは、MPEG-2トランスポートストリーム形式のデジタルストリームである。
【0190】
図26は、多重化データの構成を示す図である。
図26に示すように多重化データは、ビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム(PG)、インタラクティブグラフィックスストリームのうち、1つ以上を多重化することで得られる。ビデオストリームは映画の主映像および副映像を、オーディオストリーム(IG)は映画の主音声部分とその主音声とミキシングする副音声を、プレゼンテーショングラフィックスストリームは、映画の字幕をそれぞれ示している。ここで主映像とは画面に表示される通常の映像を示し、副映像とは主映像の中に小さな画面で表示する映像のことである。また、インタラクティブグラフィックスストリームは、画面上にGUI部品を配置することにより作成される対話画面を示している。ビデオストリームは、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠した動画像符号化方法または装置によって符号化されている。オーディオストリームは、ドルビーAC-3、Dolby Digital Plus、MLP、DTS、DTS-HD、または、リニアPCMのなどの方式で符号化されている。
【0191】
多重化データに含まれる各ストリームはPIDによって識別される。例えば、映画の映像に利用するビデオストリームには0x1011が、オーディオストリームには0x1100から0x111Fまでが、プレゼンテーショングラフィックスには0x1200から0x121Fまでが、インタラクティブグラフィックスストリームには0x1400から0x141Fまでが、映画の副映像に利用するビデオストリームには0x1B00から0x1B1Fまで、主音声とミキシングする副音声に利用するオーディオストリームには0x1A00から0x1A1Fが、それぞれ割り当てられている。
【0192】
図27は、多重化データがどのように多重化されるかを模式的に示す図である。まず、複数のビデオフレームからなるビデオストリームex235、複数のオーディオフレームからなるオーディオストリームex238を、それぞれPESパケット列ex236およびex239に変換し、TSパケットex237およびex240に変換する。同じくプレゼンテーショングラフィックスストリームex241およびインタラクティブグラフィックスex244のデータをそれぞれPESパケット列ex242およびex245に変換し、さらにTSパケットex243およびex246に変換する。多重化データex247はこれらのTSパケットを1本のストリームに多重化することで構成される。
【0193】
図28は、PESパケット列に、ビデオストリームがどのように格納されるかをさらに詳しく示している。
図28における第1段目はビデオストリームのビデオフレーム列を示す。第2段目は、PESパケット列を示す。
図28の矢印yy1,yy2, yy3, yy4に示すように、ビデオストリームにおける複数のVideo Presentation UnitであるIピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャは、ピクチャ毎に分割され、PESパケットのペイロードに格納される。各PESパケットはPESヘッダを持ち、PESヘッダには、ピクチャの表示時刻であるPTS(Presentation Time-Stamp)やピクチャの復号時刻であるDTS(Decoding Time-Stamp)が格納される。
【0194】
図29は、多重化データに最終的に書き込まれるTSパケットの形式を示している。TSパケットは、ストリームを識別するPIDなどの情報を持つ4ByteのTSヘッダとデータを格納する184ByteのTSペイロードから構成される188Byte固定長のパケットであり、上記PESパケットは分割されTSペイロードに格納される。BD-ROMの場合、TSパケットには、4ByteのTP_Extra_Headerが付与され、192Byteのソースパケットを構成し、多重化データに書き込まれる。TP_Extra_HeaderにはATS(Arrival_Time_Stamp)などの情報が記載される。ATSは当該TSパケットのデコーダのPIDフィルタへの転送開始時刻を示す。多重化データには
図29下段に示すようにソースパケットが並ぶこととなり、多重化データの先頭からインクリメントする番号はSPN(ソースパケットナンバー)と呼ばれる。
【0195】
また、多重化データに含まれるTSパケットには、映像・音声・字幕などの各ストリーム以外にもPAT(Program Association Table)、PMT(Program Map Table)、PCR(Program Clock Reference)などがある。PATは多重化データ中に利用されるPMTのPIDが何であるかを示し、PAT自身のPIDは0で登録される。PMTは、多重化データ中に含まれる映像・音声・字幕などの各ストリームのPIDと各PIDに対応するストリームの属性情報を持ち、また多重化データに関する各種ディスクリプタを持つ。ディスクリプタには多重化データのコピーを許可・不許可を指示するコピーコントロール情報などがある。PCRは、ATSの時間軸であるATC(Arrival Time Clock)とPTS・DTSの時間軸であるSTC(System Time Clock)の同期を取るために、そのPCRパケットがデコーダに転送されるATSに対応するSTC時間の情報を持つ。
【0196】
図30はPMTのデータ構造を詳しく説明する図である。PMTの先頭には、そのPMTに含まれるデータの長さなどを記したPMTヘッダが配置される。その後ろには、多重化データに関するディスクリプタが複数配置される。上記コピーコントロール情報などが、ディスクリプタとして記載される。ディスクリプタの後には、多重化データに含まれる各ストリームに関するストリーム情報が複数配置される。ストリーム情報は、ストリームの圧縮コーデックなどを識別するためストリームタイプ、ストリームのPID、ストリームの属性情報(フレームレート、アスペクト比など)が記載されたストリームディスクリプタから構成される。ストリームディスクリプタは多重化データに存在するストリームの数だけ存在する。
【0197】
記録媒体などに記録する場合には、上記多重化データは、多重化データ情報ファイルと共に記録される。
【0198】
多重化データ情報ファイルは、
図31に示すように多重化データの管理情報であり、多重化データと1対1に対応し、多重化データ情報、ストリーム属性情報とエントリマップから構成される。
【0199】
多重化データ情報は
図31に示すようにシステムレート、再生開始時刻、再生終了時刻から構成されている。システムレートは多重化データの、後述するシステムターゲットデコーダのPIDフィルタへの最大転送レートを示す。多重化データ中に含まれるATSの間隔はシステムレート以下になるように設定されている。再生開始時刻は多重化データの先頭のビデオフレームのPTSであり、再生終了時刻は多重化データの終端のビデオフレームのPTSに1フレーム分の再生間隔を足したものが設定される。
【0200】
ストリーム属性情報は
図32に示すように、多重化データに含まれる各ストリームについての属性情報が、PID毎に登録される。属性情報はビデオストリーム、オーディオストリーム、プレゼンテーショングラフィックスストリーム、インタラクティブグラフィックスストリーム毎に異なる情報を持つ。ビデオストリーム属性情報は、そのビデオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、ビデオストリームを構成する個々のピクチャデータの解像度がどれだけであるか、アスペクト比はどれだけであるか、フレームレートはどれだけであるかなどの情報を持つ。オーディオストリーム属性情報は、そのオーディオストリームがどのような圧縮コーデックで圧縮されたか、そのオーディオストリームに含まれるチャンネル数は何であるか、何の言語に対応するか、サンプリング周波数がどれだけであるかなどの情報を持つ。これらの情報は、プレーヤが再生する前のデコーダの初期化などに利用される。
【0201】
本実施の形態においては、上記多重化データのうち、PMTに含まれるストリームタイプを利用する。また、記録媒体に多重化データが記録されている場合には、多重化データ情報に含まれる、ビデオストリーム属性情報を利用する。具体的には、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置において、PMTに含まれるストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に対し、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示す固有の情報を設定するステップまたは手段を設ける。この構成により、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成した映像データと、他の規格に準拠する映像データとを識別することが可能になる。
【0202】
また、本実施の形態における画像復号方法のステップを
図33に示す。ステップexS100において、多重化データからPMTに含まれるストリームタイプ、または、多重化データ情報に含まれるビデオストリーム属性情報を取得する。次に、ステップexS101において、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された多重化データであることを示しているか否かを判断する。そして、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものであると判断された場合には、ステップexS102において、上記各実施の形態で示した画像復号方法により復号を行う。また、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報が、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠するものであることを示している場合には、ステップexS103において、従来の規格に準拠した動画像復号方法により復号を行う。
【0203】
このように、ストリームタイプ、または、ビデオストリーム属性情報に新たな固有値を設定することにより、復号する際に、上記各実施の形態で示した画像復号方法または装置で復号可能であるかを判断することができる。従って、異なる規格に準拠する多重化データが入力された場合であっても、適切な復号方法または装置を選択することができるため、エラーを生じることなく復号することが可能となる。また、本実施の形態で示した画像符号化方法または装置、または、画像復号方法または装置を、上述したいずれの機器・システムに用いることも可能である。
【0204】
(実施の形態4)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法および装置、画像復号方法および装置は、典型的には集積回路であるLSIで実現される。一例として、
図34に1チップ化されたLSIex500の構成を示す。LSIex500は、以下に説明する要素ex501、ex502、ex503、ex504、ex505、ex506、ex507、ex508、ex509を備え、各要素はバスex510を介して接続している。電源回路部ex505は電源がオン状態の場合に各部に対して電力を供給することで動作可能な状態に起動する。
【0205】
例えば符号化処理を行う場合には、LSIex500は、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有する制御部ex501の制御に基づいて、AV I/Oex509によりマイクex117やカメラex113等からAV信号を入力する。入力されたAV信号は、一旦SDRAM等の外部のメモリex511に蓄積される。制御部ex501の制御に基づいて、蓄積したデータは処理量や処理速度に応じて適宜複数回に分けるなどされ信号処理部ex507に送られ、信号処理部ex507において音声信号の符号化および/または映像信号の符号化が行われる。ここで映像信号の符号化処理は上記各実施の形態で説明した符号化処理である。信号処理部ex507ではさらに、場合により符号化された音声データと符号化された映像データを多重化するなどの処理を行い、ストリームI/Oex506から外部に出力する。この出力された多重化データは、基地局ex107に向けて送信されたり、または記録メディアex215に書き込まれたりする。なお、多重化する際には同期するよう、一旦バッファex508にデータを蓄積するとよい。
【0206】
なお、上記では、メモリex511がLSIex500の外部の構成として説明したが、LSIex500の内部に含まれる構成であってもよい。バッファex508も1つに限ったものではなく、複数のバッファを備えていてもよい。また、LSIex500は1チップ化されてもよいし、複数チップ化されてもよい。
【0207】
また、上記では、制御部ex501が、CPUex502、メモリコントローラex503、ストリームコントローラex504、駆動周波数制御部ex512等を有するとしているが、制御部ex501の構成は、この構成に限らない。例えば、信号処理部ex507がさらにCPUを備える構成であってもよい。信号処理部ex507の内部にもCPUを設けることにより、処理速度をより向上させることが可能になる。また、他の例として、CPUex502が信号処理部ex507、または信号処理部ex507の一部である例えば音声信号処理部を備える構成であってもよい。このような場合には、制御部ex501は、信号処理部ex507、またはその一部を有するCPUex502を備える構成となる。
【0208】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0209】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0210】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0211】
(実施の形態5)
上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データを復号する場合、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データを復号する場合に比べ、処理量が増加することが考えられる。そのため、LSIex500において、従来の規格に準拠する映像データを復号する際のCPUex502の駆動周波数よりも高い駆動周波数に設定する必要がある。しかし、駆動周波数を高くすると、消費電力が高くなるという課題が生じる。
【0212】
この課題を解決するために、テレビex300、LSIex500などの動画像復号装置は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別し、規格に応じて駆動周波数を切替える構成とする。
図35は、本実施の形態における構成ex800を示している。駆動周波数切替え部ex803は、映像データが、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、駆動周波数を高く設定する。そして、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行する復号処理部ex801に対し、映像データを復号するよう指示する。一方、映像データが、従来の規格に準拠する映像データである場合には、映像データが、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、駆動周波数を低く設定する。そして、従来の規格に準拠する復号処理部ex802に対し、映像データを復号するよう指示する。
【0213】
より具体的には、駆動周波数切替え部ex803は、
図34のCPUex502と駆動周波数制御部ex512から構成される。また、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行する復号処理部ex801、および、従来の規格に準拠する復号処理部ex802は、
図34の信号処理部ex507に該当する。CPUex502は、映像データがどの規格に準拠するものであるかを識別する。そして、CPUex502からの信号に基づいて、駆動周波数制御部ex512は、駆動周波数を設定する。また、CPUex502からの信号に基づいて、信号処理部ex507は、映像データの復号を行う。ここで、映像データの識別には、例えば、実施の形態3で記載した識別情報を利用することが考えられる。識別情報に関しては、実施の形態3で記載したものに限られず、映像データがどの規格に準拠するか識別できる情報であればよい。例えば、映像データがテレビに利用されるものであるか、ディスクに利用されるものであるかなどを識別する外部信号に基づいて、映像データがどの規格に準拠するものであるか識別可能である場合には、このような外部信号に基づいて識別してもよい。また、CPUex502における駆動周波数の選択は、例えば、
図37のような映像データの規格と、駆動周波数とを対応付けたルックアップテーブルに基づいて行うことが考えられる。ルックアップテーブルを、バッファex508や、LSIの内部メモリに格納しておき、CPUex502がこのルックアップテーブルを参照することにより、駆動周波数を選択することが可能である。
【0214】
図36は、本実施の形態の方法を実施するステップを示している。まず、ステップexS200では、信号処理部ex507において、多重化データから識別情報を取得する。次に、ステップexS201では、CPUex502において、識別情報に基づいて映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものであるか否かを識別する。映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合には、ステップexS202において、駆動周波数を高く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、高い駆動周波数に設定される。一方、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、ステップexS203において、駆動周波数を低く設定する信号を、CPUex502が駆動周波数制御部ex512に送る。そして、駆動周波数制御部ex512において、映像データが上記各実施の形態で示した符号化方法または装置によって生成されたものである場合に比べ、低い駆動周波数に設定される。
【0215】
さらに、駆動周波数の切替えに連動して、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を変更することにより、省電力効果をより高めることが可能である。例えば、駆動周波数を低く設定する場合には、これに伴い、駆動周波数を高く設定している場合に比べ、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することが考えられる。
【0216】
また、駆動周波数の設定方法は、復号する際の処理量が大きい場合に、駆動周波数を高く設定し、復号する際の処理量が小さい場合に、駆動周波数を低く設定すればよく、上述した設定方法に限らない。例えば、MPEG4-AVC規格に準拠する映像データを復号する処理量の方が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置により生成された映像データを復号する処理量よりも大きい場合には、駆動周波数の設定を上述した場合の逆にすることが考えられる。
【0217】
さらに、駆動周波数の設定方法は、駆動周波数を低くする構成に限らない。例えば、識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を高く設定し、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、LSIex500またはLSIex500を含む装置に与える電圧を低く設定することも考えられる。また、他の例としては、識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合には、CPUex502の駆動を停止させることなく、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合には、処理に余裕があるため、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。識別情報が、上記各実施の形態で示した画像符号化方法または装置によって生成された映像データであることを示している場合であっても、処理に余裕があれば、CPUex502の駆動を一時停止させることも考えられる。この場合は、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する映像データであることを示している場合に比べて、停止時間を短く設定することが考えられる。
【0218】
このように、映像データが準拠する規格に応じて、駆動周波数を切替えることにより、省電力化を図ることが可能になる。また、電池を用いてLSIex500またはLSIex500を含む装置を駆動している場合には、省電力化に伴い、電池の寿命を長くすることが可能である。
【0219】
(実施の形態6)
テレビや、携帯電話など、上述した機器・システムには、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力される場合がある。このように、異なる規格に準拠する複数の映像データが入力された場合にも復号できるようにするために、LSIex500の信号処理部ex507が複数の規格に対応している必要がある。しかし、それぞれの規格に対応する信号処理部ex507を個別に用いると、LSIex500の回路規模が大きくなり、また、コストが増加するという課題が生じる。
【0220】
この課題を解決するために、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行するための復号処理部と、従来のMPEG-2、MPEG4-AVC、VC-1などの規格に準拠する復号処理部とを一部共有化する構成とする。この構成例を
図38Aのex900に示す。例えば、上記各実施の形態で示した画像復号方法と、MPEG4-AVC規格に準拠する動画像復号方法とは、エントロピー符号化、逆量子化、デブロッキングフィルタ、動き補償などの処理において処理内容が一部共通する。共通する処理内容については、MPEG4-AVC規格に対応する復号処理部ex902を共有し、MPEG4-AVC規格に対応しない、本発明特有の他の処理内容については、専用の復号処理部ex901を用いるという構成が考えられる。復号処理部の共有化に関しては、共通する処理内容については、上記各実施の形態で示した画像復号方法を実行するための復号処理部を共有し、MPEG4-AVC規格に特有の処理内容については、専用の復号処理部を用いる構成であってもよい。
【0221】
また、処理を一部共有化する他の例を
図38Bのex1000に示す。この例では、本発明に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1001と、他の従来規格に特有の処理内容に対応した専用の復号処理部ex1002と、本発明の画像復号方法と他の従来規格の動画像復号方法とに共通する処理内容に対応した共用の復号処理部ex1003とを用いる構成としている。ここで、専用の復号処理部ex1001、ex1002は、必ずしも本発明、または、他の従来規格に特有の処理内容に特化したものではなく、他の汎用処理を実行できるものであってもよい。また、本実施の形態の構成を、LSIex500で実装することも可能である。
【0222】
このように、本発明の画像復号方法と、従来の規格の動画像復号方法とで共通する処理内容について、復号処理部を共有することにより、LSIの回路規模を小さくし、かつ、コストを低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明に係る送信方法およびシステムは、画質の向上および符号化効率の向上の両立を図ることができるという効果を奏し、例えば、ビデオカメラ、動画の撮影および再生機能を有する携帯電話、パーソナルコンピュータ、または録画再生装置などに適用することができる。
【符号の説明】
【0224】
1000 画像符号化装置
1100 符号化処理部
1101 減算器
1102 直交変換部
1103 量子化部
1104 エントロピー符号化部
1105 逆量子化部
1106 逆直交変換部
1107 加算器
1108 デブロッキングフィルタ
1109 メモリ
1110 面内予測部
1111 動き補償部
1112 動き検出部
1113 スイッチ
1200 符号化制御部
2000 画像復号装置
2100 復号処理部
2101 エントロピー復号部
2102 逆量子化部
2103 逆直交変換部
2104 加算器
2105 デブロッキングフィルタ
2106 メモリ
2107 面内予測部
2108 動き補償部
2109 スイッチ
2200 復号制御部