(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】低いTHF含量のポリブチレンテレフタレート
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20230804BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20230804BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230804BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20230804BHJP
C08G 63/127 20060101ALI20230804BHJP
C08G 63/85 20060101ALI20230804BHJP
B29B 7/20 20060101ALI20230804BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
B29C45/17
C08L67/02
C08K3/013
C08K7/14
C08G63/127
C08G63/85
B29B7/20
B29B9/12
(21)【出願番号】P 2022505609
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020071153
(87)【国際公開番号】W WO2021018845
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-27
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ハルムス
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/024531(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/137666(WO,A1)
【文献】特開2006-298993(JP,A)
【文献】特開2014-162820(JP,A)
【文献】特開2012-192678(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123240(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/111055(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
C08L 67/02
C08K 3/013
C08K 7/14
C08G 63/127
C08G 63/85
B29B 7/20
B29B 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレートベースの射出成形部品中のTHF含量の低減方法であって、
ブタンジオールとテレフタル酸又はジメチルテレフタレートとの反応後に、得られたポリブチレンテレフタレートを、1~10t/hの範囲の処理量で、200mbar未満の圧力の真空下の真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の配合機において、配合物へと加工し、その後、射出成形装置に供給することを特徴と
し、
前記真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける溶融ストランドの紡糸終了の前の前記二軸スクリュー押出機の配合セクターの最後の三分の一において適用され、
前記二軸スクリュー押出機は、加工ゾーンの供給手段、取入れゾーン、融解ゾーン、大気脱ガスゾーン、少なくとも1つの充填材供給ゾーン、充填材組み込みゾーン、バックアップゾーン、真空脱ガスゾーン、加圧ゾーン、及び排出ゾーンを含み、
前記配合セクターの最後の三分の一は、前記二軸スクリュー押出機の全長を基準とする
、方法。
【請求項2】
前記処理量が、3~8t/hの範囲であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記射出成形品は自動車内装品であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ペレットの形態で射出成形のために送られることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
30mm~120mmの範囲のスクリュー径を有する二軸スクリュー押出機が使用されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
0~150mbarの範囲の圧力の真空が適用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタンジオールとテレフタル酸とから合成され、真空下の配合機で配合され、その後射出成形によって加工されるポリブチレンテレフタレートをベースとする低いTVOC含量及び低いテトラヒドロフラン含量を有する、射出成形部品、好ましくは自動車内装品の形態での射出成形品であって、TVOCが「全揮発性有機化合物」を表す射出成形部品に関する。
【背景技術】
【0002】
明白な複雑性にもかかわらず、過去に、インテリアに見られる、揮発性有機化合物、略してVOCの多様性を評価する手段を見出そうとする試みは不足していなかった。インテリアにおけるVOC濃度についての指標として個々の化合物の濃度の合計が用いられ、TVOC値(全揮発性有機化合物)を決定するために使用される指標パラメータの形態での構成概念が使用されている;(非特許文献1)を参照されたい。
【0003】
「測定対象物」、この場合には特にn-デカン、トルエン又はホルムアルデヒドが明確に定義されている、屋内空気中の個々の物質を測定する場合とは違って、VOC混合物の分析においては、どの物質がVOCとして記載されるべきであるかを考慮することが必要である。一様なアプローチを達成するために、屋内空気中の有機物質に取り組んでいる世界保健機関(WHO)の作業部会は、初期段階において有機化合物の分類を行った。沸点に基づいているこのWHO分類は表1に示されており、この定義によれば、ホルムアルデヒドもジエチルヘキシルフタレートもVOCに属さないことが指摘されなければならない。
【0004】
【0005】
(非特許文献2)によれば、好ましくはガラス繊維で強化された、配合物の形態でのポリブチレンテレフタレート(PBT)は、電気工学/エレクトロニクス部門及び車両産業、とりわけ自動車産業における必要不可欠なプラスチックである。こうして(非特許文献3)は、自動車内装品におけるデリケートな拡声器グリル及び換気装置グリルのためのPBTブレンドの使用を記載している。(特許文献1)は、とりわけ、PBTをベースとする動力車用の機能化内装トリム部品を記載している。
【0006】
半結晶性プラスチックとして、PBTは、220℃~225℃の範囲の狭い融解範囲を有する。高い結晶割合は、PBTから作られたストレスフリーの成形部品が変形及び損傷なしに溶融温度の下までの短期間加熱にさらされることを可能にする。純PBT溶融物は、280℃まで短期熱安定性を示し、実質的な分子分解を受けず、ガス及び蒸気の実質的な発生も示さない。しかしながら、全ての熱可塑性ポリマーのように、PBTは、過度の熱ストレス下で、特に過熱時に又は焼失方法によるクリーニング中に分解する。これは、ガス状分解生成物を生成する。分解は、約300℃超で加速し、最初に主にテトラヒドロフラン(THF)及び水が形成される。
【0007】
(特許文献2)によれば、THFは、反応原料として用いられるモノマーである1,4-ブタンジオール(BDO)から分子内縮合によってPBTの製造中に既に形成されている。この反応は、用いられるテレフタル酸(PTA)によって及びPBTを製造するために通常使用されるチタン系触媒によっての両方によって触媒され得る。或いは、PTAの代わりにジメチルテレフタレート(DMT)を使用することが可能である。
【0008】
しかしながら、THFはまた、高温でのPBT溶融物においても連続的に再生される。「バックバイティング」とも言われるこのプロセスは、ポリマーのBDO末端基で起こる。BDOモノマーからのTHF形成と同様に、このバックバイティングは、望ましくない副生成物テトラヒドロフランを与える分子内縮合である。バックバイティングにおけるTHF再生は、また、テレフタル酸の酸末端基によって及び存在する触媒、好ましくはチタン系触媒の残渣によって触媒される。ヒトの健康及び環境へのテトラヒドロフランの影響は、REACHの下での物質評価の一環として2013年にドイツ国によって試験されている。IARC(国際がん研究機関)は、2017年にテトラヒドロフランを可能性がある発がん性物質に分類した。
【0009】
PBTの製造時にTHFを回避するための技術的手段は別として、高まりつつある健康意識及び自動車の嗅覚的品質に関する高まりつつある消費者需要は、特に、太陽の放射の結果としての高温の影響下に、自動車内装品に組み込まれた材料のいかなるガス放出も低減する又はさらに完全に回避するための努力が行われつつあることを意味する。この目的に向けて、ドイツ自動車工業会(Verband der Automobilhersteller)(VDA)は、自動車車両インテリアに組み込まれた構成部品からのガス放出を定量するための、様々なガスクロマトグラフィー法に基づく2つの試験仕様書VDA 277及びVDA 278を発行している。
【0010】
静的ヘッドスペース法及び炎イオン化検出(FID)に基づく、且つ、揮発性炭素化合物の全TVOC含量を示すVDA 277は1995年に公表された。これに、2002年に、動的ヘッドスペース法、いわゆる熱吸着に基づく、且つ、揮発性有機化合物(VOC)及び凝縮できる成分(霧値)の両方を示すVDA 278が続いた。射出成形後に研究される成分に常に適用される対応する閾値は、個々の自動車メーカー(OEM)によって設定されるが、通常、VDAの提案に基づいている。
【0011】
VDA 277の要求を考慮して、PBTのTHF放出を低減するための多くの試みがこれまで以下のように行われてきた:
(特許文献3)スルホン酸成分がそれら自体、健康に有害な乃至発がん性として現在分類されているが、重合中のスルホン酸成分の添加;
(特許文献4)((特許文献5))PBT製造に使用されるSn又はSb触媒を失活させるための、重合中に乳酸をベースとするポリエステルへのポリアクリル酸の添加;
(特許文献6)((特許文献7))PBT製造に使用されたチタン触媒を失活させるためのリン含有成分の添加。(特許文献6)に明記されている放出の値は百分率である、すなわち、それらは、絶対値ではなく、いかなる場合にも改善の必要がある;
(特許文献8)0.01%~2%の濃度でのスチレン-アクリルポリマー(例えばJoncryl(登録商標)ADR-4368)の添加、しかし、これは、鎖延長及びPBTの分子量の増加をもたらした;
(特許文献9)次亜リン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、EDTAの二ナトリウム塩、EDTAの二アンモニウム塩、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及び、特に、1,3-プロピレンジアミン四酢酸の群からのキレート剤の添加;
(特許文献10)は、ブタンジオールをテレフタル酸又はジメチルテレフタレートと反応させることによって合成されるポリブチレンテレフタレートをベースとする射出成形品を開示している;
(特許文献11)は、ブタンジオールとテレフタル酸又はジメチルテレフタレートとの反応後に、得られたポリブチレンテレフタレートが、二軸スクリュー押出機の形態での配合機において処理されるポリエステルベースの射出成形部品からの揮発性化合物のレベルの低減を教示している;
(特許文献12)は、また、ポリブチレンテレフタレートベースの射出成形部品のTHF含量の低減方法を記載している;
(特許文献13)((特許文献14))VDA277に準拠して100μgC/g以下のTVOCを含むPBT成形部品の製造のための次亜リン酸ナトリウム又はエポキシ官能化スチレン-アクリル酸ポリマーの添加。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2013/020627 A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2 029 271 A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 683 201 A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1 070 097 A1号明細書
【文献】国際公開第99/50345 A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1 999 181 A2号明細書
【文献】国際公開第2007/111890A2号パンフレット
【文献】欧州特許第2 427 511 B1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2 816 081 A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 181 639 A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012 235090 A1号明細書
【文献】特開2006 298993号公報
【文献】欧州特許出願公開第3 004 242 A1号明細書
【文献】国際公開第2014/195176 A1号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【文献】B.Seifert,Bundesgesundheitsblatt-Gesundheitsforschung-Gesundheitsschutz,42,pages 270-278,Springer-Verlag 1999
【文献】G.Blinne,Kunststoffe 10/1999
【文献】AutomobilKONSTRUKTION 2/2011,pages 18-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この先行技術から始まって、最適化されたTVOC値及びTHFガス放出挙動を有する自動車内装品を射出成形することによる加工のためのPBTベースの配合物を提供することが本発明の目的であり、ここで、射出成形部品に関して測定されるガス放出挙動は、ドイツ自動車工業会(VDA)によるVDA 277に従って50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に従って5μg/g未満のVOCTHFを意味すると理解されるべきである。この目的は、好ましくは、上記の先行技術において列挙された添加剤の使用なしに達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外にも、充填材組みこみゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了(spinoff)の前の二軸スクリュー押出機の配合(コンパウンディング)区域(セクター)の最後の三分の一において200mbar未満の真空を適用するだけで、VDA 277に準拠する自動車インテリア用の射出成形PBTベース構成部品について測定可能なTVOC値を90μgC/g超から40μgC/g未満に、及びVDA 278に準拠する測定可能なVOCTHFを6μg/gからわずか4.5μg/gまで意外にも低下させることが見出された。ここで、全ての報告値は、本明細書で以下に記載されるような関連試験仕様において定義される条件に関係する。
【0016】
PBT配合物(PBTコンパウンド)を好ましくは粒状形態で得るための二軸スクリュー押出機に真空/200mbar未満の圧力を適用することだけで、射出成形によるPBT配合物の加工後でさえ、最初からVDA 277及びVDA 278の両方の要件を満たす自動車内装品(インテリア)がそれらから製造されることを可能にする十分に少量のTHFが再生されるような程度まで、THF含量がさらに十分に低減される。
【0017】
本発明は、先行技術とは対照的に、PBTベースの自動車内装品について、THFに関してVDA 277及びVDA 278の要件を満たすためにPBTの添加剤添加(Additivierung)が全く必要とされないことを実証している。
【0018】
本発明は、それ故、ブタンジオールとテレフタル酸又はジメチルテレフタレートとの反応によって合成されるポリブチレンテレフタレートをベースとする、射出成形部品、好ましくは自動車内装品の形態での射出成形部品に関し、その射出成形部品は、
- 1~10t/hの範囲の、好ましくは3~8t/hの範囲の処理量で、200mbar未満の圧力での真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の配合機において配合(コンパウンド)され、
- 及びその後、射出成形することにより、好ましくはそれをペレットの形態で射出成形装置に供給することによって射出成形することによって加工されるものである
(但し、真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了の前の二軸スクリュー押出機の配合セクター(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一において適用され、かつ、二軸スクリュー押出機は、加工ゾーンの供給手段、取入れゾーン、融解ゾーン、大気脱ガスゾーン、少なくとも1つの充填材供給ゾーン、充填材組み込みゾーン、バックアップゾーン、真空脱ガスゾーン、加圧ゾーン及び排出ゾーンを含み、かつ、配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一は、二軸スクリュー押出機の全長を基準としている)。
【0019】
本発明は、射出成形品、好ましくは自動車内装部品の形態の射出成形品、特に50μgC/g未満の、VDA 277に従って測定されるTVOC、及び5μgC/g未満の、VDA 278に従って測定されるVOCTHFを有する射出成形部品、好ましくは自動車内装品の形態の射出成形品に関し、その射出成形品は、
- ブタンジオールをテレフタル酸又はジメチルテレフタレートと反応させることによって合成されるポリブチレンテレフタレートに基づくものであり、
- 1~10t/hの範囲の、好ましくは3~8t/hの範囲の処理量で200mbar未満の圧力での真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の配合機において配合(コンパウンド)され、
- 及びその後、射出成形によって、好ましくはそれをペレットの形態で射出成形装置に供給することによる射出成形によって加工されたものである
(但し、真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了の前の二軸スクリュー押出機の配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一において適用され、かつ、二軸スクリュー押出機は、加工ゾーンの供給手段、取入れゾーン、融解ゾーン、大気脱ガスゾーン、少なくとも1つの充填材供給ゾーン、充填材組み込みゾーン、バックアップゾーン、真空脱ガスゾーン、加圧ゾーン及び排出ゾーンを含み、かつ、配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一は、二軸スクリュー押出機の全長を基準としている。
【0020】
本発明は、さらに、50μgC/g未満の、VDA 277に従って測定されるTVOC、及び5μg/g未満の、VDA 278に従って測定されるVOCTHFを有する、射出成形部品へ、好ましくは自動車内装品の形態の射出成形部品へ加工するためのPBTベースの配合物(コンパウンド)を製造するための、1~10t/hの範囲の、好ましくは3~8t/hの範囲の処理量で、200mbar未満の圧力の真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の少なくとも1つの配合機(コンパウンダー)の使用に関する(但し、真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了の前の二軸スクリュー押出機の配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一において適用され、かつPBTはブタンジオールとテレフタル酸又はジメチルテレフタレートとの反応によって合成され、かつ二軸スクリュー押出機は、加工ゾーンの供給手段、取入れゾーン、融解ゾーン、大気脱ガスゾーン、少なくとも1つの充填材供給ゾーン、充填材組み込みゾーン、バックアップゾーン、真空脱ガスゾーン、加圧ゾーン、及び排出ゾーンを含み、かつ配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一は、二軸スクリュー押出機の全長を基準としている)。
【0021】
本発明は、最後に、PBTベースの射出成形部品、好ましくは自動車内装成形部品の形態の射出成形部品中のTHF含量の低減方法に関し、その方法では、ブタンジオールとテレフタル酸又はジメチルテレフタレートとの反応後に、得られたPBTが、1~10t/hの範囲の、好ましくは3~8t/hの範囲の処理量で、200mbar未満の圧力の真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の配合機において処理されて、配合物(コンパウンド)へと加工され、その後、好ましくはペレットの形態で、射出成形装置に供給される(但し、真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了の前の二軸スクリュー押出機の配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一において適用され、かつ、二軸スクリュー押出機は、加工ゾーンの供給手段、取入れゾーン、融解ゾーン、大気脱ガスゾーン、少なくとも1つの充填材供給ゾーン、充填材組み込みゾーン、バックアップゾーン、真空脱ガスゾーン、加圧ゾーン、及び排出ゾーンを含み、配合区域(コンパウンディングセクター)の最後の三分の一は、二軸スクリュー押出機の全長を基準としている)。
【0022】
明確にするため、本発明の範囲は、一般に又は任意の所望の組合せでの好ましい範囲で以下に列挙される定義及びパラメータの全てを含むことに注意されたい。本発明との関連で、全ての報告した圧力は絶対圧として理解されるべきである。別段の記載がない限り、本出願との関連で列挙される規格は、本発明の出願日における最新版に関係する。配合機(コンパウンダー)及び押出機(エクストルーダー)の用語は、本発明との関連では同意語として用いられる。
【0023】
VDA 277に関しては、本発明は、1995年版を参照し、一方、VDA 278に関しては、本発明は、2011年10月版を参照する。
【0024】
本発明との関連においてTVOC、TVOCTHF、及びVOCTHFの試験は、それぞれの規格の仕様に従って実施した。
VDA 277は、サンプリングが商品の受取り直後に又はそれに相当する条件で実施されなければならないことを明記している。新たに射出成形された部品の輸送及び取扱いは、一般に調整(コンディショニング)なしに、アルミニウム被覆PEバッグ中で気密に実施されるべきである。
【0025】
VDA 278は、検査される材料は、普通は、製造から8時間以内にアルミニウム被覆PEバッグ中に気密に包装されるべきであること、及びサンプルは直ちに実験室に送付されるべきであることを明記している。測定前に、サンプルは、標準気候条件(23℃、50%相対湿度)下で7日間調整(コンディショニング)されるべきである。
【0026】
本発明との関連で測定されるTVOCTHFは、VDA 277に準拠してTVOCと同じ方法によって測定され、ここで、評価は、個別の物質THFに基づくものであった。本発明との関連で、TVOCTHFは、それ故、サンプルのTHF放出挙動を示す。
【0027】
本発明との関連で、VOCTHFは、VDA 278に準拠してVOCと同じ方法によって測定され、ここで、評価は、個別の物質THFに基づくものである。VOCTHFは、それ故、サンプルのTHF放出挙動を示す。
【0028】
配合(コンパウンディング,配合すること=「寄せ集めること」)は、特性の所望のプロファイルを達成するための、添加剤の、好ましくは充填材、添加剤等の混合によるプラスチックの加工を記述するプラスチック業界の用語である。本発明との関連で、コンパウンディングは、真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機において、好ましくは真空脱ガスゾーンを有する共回転二軸スクリュー押出機において実施される。コンパウンディングは、搬送、融解、分散、混合、脱ガス、及び加圧、及び融解ストランドの紡糸終了、並びにその後のペレット化のプロセス操作を含む。コンパウンディングの製品は、配合物(コンパウンド)であり、好ましくはペレットとして市場に出される。
【0029】
コンパウンディングの目的は、プラスチック原材料、本発明の場合には、ブタンジオールとテレフタル酸との反応から生じるPBTを、加工及びその後の使用のために最良の可能な特性を有するプラスチック成形配合物、ここでは、VDA 277及びVDA 278に準拠する自動車内装品の形態のプラスチック成形配合物へ変換することである。コンパウンディングの目的には、粒径を変えること、添加剤を組み込むこと、及び構成成分を除去することが含まれる。多くのプラスチックは、粉末又は大きい粒径の樹脂として生成され、それ故、加工機、とりわけ射出成形機にとって適切ではないので、これらの原材料のさらなる加工は特に重要である。ポリマー、ここではPBTと、添加剤との最終混合物は、成形配合物(モールディングコンパウンド)とよばれる。加工前に、成形配合物の個々の構成成分は、粉状、粒状、又は液体/流動性などの物質の様々な状態にあり得る。配合機を使用する目的は、構成成分をできる限り均質に混合して成形配合物(モールディングコンパウンド)を与えることである。
【0030】
コンパウンディングは、また、構成成分を除去するためにも用いられ得る。それは、好ましくは、2つの構成成分、すなわち水分分画を除去すること(除湿)又は低分子量構成成分を除去すること(脱ガス)である。本発明との関連で、PBTの合成における副生成物として得られるTHFは、真空を適用することによって成形配合物から除去される。
【0031】
コンパウンディングにおける2つの必須のステップは、混合及びペレット化である。混合との関連で、分配混合、すなわち、成形配合物中での全ての粒子の一様な分配と、分散混合、すなわち、組み込まれる構成成分の分配及び粉砕との間で区別がなされる。混合プロセスは、それ自体、粘稠な相において又は固相においてのどちらかで行われ得る。固相における混合の場合、添加剤は既に粉砕された形態にあるので、分配の効果が好ましい。固相における混合は、良好な混合品質を達成するのにまれにしか十分ではないので、それは、多くの場合プレミキシングと言われる。プレミックスは、次いで融解状態で混合される。粘性混合は、一般に、以下の5つの操作:ポリマー及び添加剤を(後者の場合にはできる限り)溶融させる操作、固体の塊(塊は集塊である)を粉砕する操作、添加剤をポリマー溶融物で湿らす操作、構成成分を一様に分配させること、並びに望ましくない構成成分、好ましくは空気、水分、溶媒、及び、本発明にしたがって考慮されるPBTの場合には、THFを分離する操作を含む。粘性混合のために必要とされる熱は、構成成分のせん断及び摩擦によって実質的に生じる。本発明にしたがって考慮されるPBTの場合には、粘性混合を用いることが好ましい。
【0032】
ほとんどの処理装置が、プラスチック、ここでの場合にはPBTに基づくコンパウンドがペレットの形態であることを必要とするので、ペレット化がこれまで以上に重要な役割を果たす。熱間切断と冷間切断との間で基本的な区別がなされる。これは、処理に従って異なる粒子形態をもたらす。熱間切断の場合には、プラスチックは、好ましくは、真珠又はレンズ状ペレット形で得られる。冷間切断の場合には、プラスチックは、コンパウンド後に、好ましくは円筒形又は立方体形で得られる。
【0033】
熱間切断の場合には、押し出されたストランドは、冷媒(クーラント)がその上を流れる回転ナイフによって、配合機のダイの直ぐ下流で細断される。クーラントは、個々のペレットがくっつくのを防ぎ、材料を冷却する。冷却は、好ましくは、水を使用して行われるが、空気を使用することも可能である。適切なクーラントの選択は、それ故、材料に左右される。水での冷却のデメリットは、ペレットがその後の乾燥を必要とすることである。冷間切断の場合には、ストランドは先ず、水浴を通して延伸され、次いで、回転ナイフローラー(造粒機)によって固体状態で所望の長さに切断される。本発明にしたがって用いられるPBTの場合には、冷間切断が好ましくは用いられる。本発明にしたがって用いられるPBTの場合には、配合機(コンパウンダー)から得られたペレットは、上昇させた温度において暖かい空気で乾燥させられる。
【0034】
https://de.wikipedia.org/wiki/Vakuumによれば、1013.25mbarの標準圧力及び0mbarの理想真空以外に、当業者は、300mbar超の、大気圧より低い圧力、1~300mbarの低真空、1~10-3mbarの範囲の中真空、10-3~10-7mbarの範囲の高真空、10-7~10-12mbarの範囲の超高真空、及び10-12mbar未満の極高真空を区別する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<配合機(コンパウンダー)>
本発明によれば、配合押出機として、真空脱ガスゾーンを有する共回転二軸スクリュー押出機を使用して自動車内装品のためにPBTのコンパウンディングを行うことが好ましい。真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機の形態の配合機の目的には、それに供給されるプラスチック組成物の取込み、その圧縮、エネルギーを供給することによる同時可塑化及び均質化、並びにプロファイリング金型への加圧下での供給が含まれる。本発明による真空脱ガスゾーンを有する及び好ましくは使用可能な共回転するスクリューのペア(対)を有する二軸スクリュー押出機は、PBTをコンパウンディングするのに、好ましくは少なくとも1種の充填材をPBT中へ組み込むために好適である。
【0036】
本発明により用いられる真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機は、例えばドイツ国実用新案第203 20 505 U1号明細書により当業者に公知であり、好ましくは、Coperion Werner & Pfleiderer GmbH & Co.KG,Stuttgartによって市場に出されている。本発明により用いられる真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機は、複数の加工ゾーンに分割される。これらのゾーンは、連結しており、互いに独立して考えることはできない。その内容が参照により本発明に本明細書によって完全に援用される、ドイツ国実用新案第203 20 505 U1号明細書は、本発明により好ましくは使用可能な二軸スクリュー押出機の、本発明との関連で配合区域(コンパウンディング・セクター)とも言われる加工ゾーンを、供給手段(14)、取入れゾーン(15)、溶融ゾーン(16)、大気脱ガスゾーン(17)、少なくとも1つの充填材供給ゾーン(18)、充填材組込みゾーン(19)、バックアップゾーン(20)、真空脱ガスゾーン(21)、加圧ゾーン(22)、及び排出ゾーン(23)に分割している。本発明によれば、真空は、(最後の)充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける溶融ストランドの紡糸終了前の配合セクターの最後の三分の一において適用される。
【0037】
本発明によれば、真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機は、1~10t/h(1時間当たりのトン数)の範囲の処理量で、好ましくは3~8t/hの範囲の処理量で運転される。
【0038】
本発明によれば、真空脱ガスゾーンを有し、かつ30mm~120mmの範囲の、好ましくは60~100mmの範囲のスクリュー径を有する二軸スクリュー押出機を用いることが好ましい。
【0039】
本発明によれば、200mbar未満の圧力、好ましくは150mbar未満の圧力、特に好ましくは0.1~130mbarの範囲の圧力が、二軸スクリュー押出機の真空脱ガスゾーンに適用される。本発明との関連で、報告される圧力は、大気圧より低い圧力/真空であり、それぞれの行き渡った大気圧を基準としている(相対圧力)。DIN 28400-1によれば、真空は、「ガスの圧力、従って粒子数密度が外側よりも容器中で低い場合、又はガスの圧力が300mbarよりも低い、すなわち、地球表面上の最低大気圧未満である場合のガスの状態」と定義される。本発明に従って求められる真空は、好ましくは、回転羽根ポンプ、液封ポンプ、スクロールポンプ、Rootsポンプ、及びスクリューポンプの範囲からの真空ポンプを使用して達成される。https://www.pfeiffer-vacuum.com/de/know-how/einfuehrung-in-die-vakuumtechnik/allgemeines/vakuum-definition/を参照されたい。
【0040】
本発明によれば、真空脱ガスゾーンは、配合セクターの最後の三分の一に置かれており、ここで、最後の三分の一は、二軸スクリュー押出機の全長に対してと理解されるべきである。二軸スクリュー押出機の全長は、取入れゾーンの始まりと排出ゾーンの終わりとの間の距離と定義される。最後の三分の一は、明確に排出ゾーンを含む。
【0041】
充填材組込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける溶融ストランドの紡糸終了の前の配合セクターの最後の三分の一において200mbar未満の圧力の真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機におけるPBTのコンパウンディングの結果は、非常に低いTHF含量を有するペレット形態でのTHFが低減されたコンパウンド(配合物)である。このTHF含量は非常に低いので、分解プロセスがTHF再生をもたらす、射出成形における粒状物質の加工後でさえも、50μgC/g未満の、VDA 277に従って測定されるTVOC及び5μg/g未満の、VDA 278に従って測定されるVOCTHFを有する製品、とりわけ自動車内装品を製造することが依然として可能である。
【0042】
<ポリブチレンテレフタレート>
本発明により使用可能なPBT[CAS No.24968-12-5]は、例えば、商品名Pocan(登録商標)でLanxess Deutschland GmbH,Cologneから入手可能である。
【0043】
DIN EN ISO 1628-5に準拠して25℃で1:1の重量比のフェノール/o-ジクロロベンゼン混合物中の0.5重量%溶液で測定される本発明により用いられるPBTの粘度数は、好ましくは50~220cm3/gの範囲に、特に好ましくは80~160cm3/gの範囲にある;Schott Instruments GmbH冊子,O.Hofbeck,2007-07を参照されたい。
【0044】
滴定法、特に電位差滴定法によって測定されるそのカルボキシル末端基含量が、100meq/kg以下、好ましくは50meq/kg以下、特に40meq/kg以下のポリエステルであるPBTがとりわけ好ましい。そのようなポリエステルは、例えばドイツ国特許出願公開第A 44 01 055号明細書の方法によって製造可能である。本発明にしたがって用いられるPBT中のカルボキシル末端基(CEG)の含量は、本発明との関連において、ニトロベンゼンに溶解されたPBTのサンプルが、規定される過剰の酢酸カリウムと反応させられるときに遊離する酢酸の電位差滴定法によって測定された。
【0045】
ポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは、Ti触媒を使って製造される。重合後に、本発明にしたがって用いられるPBTは、好ましくは250ppm以下、特に好ましくは200ppm未満、とりわけ好ましくは150ppm未満の、DIN 51418に準拠してX線蛍光分析(XRF)によって測定されるTi含量を有する。そのようなポリエステルは、好ましくは、その内容が参照により本明細書によって完全に援用される、ドイツ国特許第101 55 419 B4号明細書の方法に従って製造される。
【0046】
<充填材>
好ましい実施形態において、少なくとも1種の充填材が、二軸スクリュー押出機の配合セクター中の少なくとも1つの充填材供給ゾーンからPBT中へ組み込まれる。この場合に、本発明による配合物は、各場合に、PBTの100質量部を基準として、好ましくは0.001~70質量部、特に好ましくは5~50質量部、非常に特に好ましくは9~48質量部の少なくとも1種の充填材を含有する。
【0047】
一実施形態において、本発明は、配合物(コンパウンド)、及び充填材なしにそれから製造可能な射出成形品に関する。
【0048】
配合(コンパウンディング)は、好ましくは、充填材:酸化防止剤、滑剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、繊維、タルク、硫酸バリウム、チョーク、熱安定剤、鉄粉末、光安定剤、剥離剤、離型剤、核形成剤、UV吸収剤、難燃剤、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維、カーボンブラック、ガラス球、シリコーンを用いる。
【0049】
本発明によるPBTのために好ましく使用可能である充填材は、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、カヤナイト、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、及び繊維状充填材、特にガラス繊維又は炭素繊維からなる群から選択される。ガラス繊維を用いることがとりわけ好ましい。
【0050】
「http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund」によれば、0.1~1mmの範囲の長さを有する、短繊維としても知られる細断ファイバー、1~50mmの範囲の長さを有する長繊維、及び50mm超の長さLを有する連続繊維の間で区別される。短繊維は射出成形に使用され、押出機で直接処理可能である。長繊維は、同様に依然として押出機で処理することができる。前記繊維は、繊維噴霧(fiber spraying)において広く使用されている。長繊維は、充填材として熱硬化性樹脂に頻繁に添加される。連続繊維は、繊維強化プラスチックにおいてロービング又は織物の形態で使用される。連続繊維を含む製品は、最高の剛性及び強度値を達成する。細砕ガラス繊維も利用可能であり、細砕後のこれらの長さは、典型的には70~200μmの範囲内である。
【0051】
本発明によれば、1~50mmの範囲の、特に好ましくは1~10mmの範囲の、非常に特に好ましくは2~7mmの範囲の初期長さを有する細断された長ガラス繊維を充填材として用いることが好ましい。初期長さは、本発明による成形配合物を与えるための本発明による配合物の配合前に存在するようなガラス繊維の平均長さを指す。充填材として使用可能な、繊維、好ましくはガラス繊維は、配合(コンパウンディング)の結果として、自動車内装品の形態での製品中に、元々用いられた繊維又はガラス繊維よりも小さいd90及び/又はd50値を有し得る。こうして、加工後の繊維長/ガラス繊維長の算術平均は、しばしば、ISO 13320に準拠してレーザ回折法によって測定して、たったの150μm~300μmの範囲内である。
【0052】
本発明との関連で、繊維長及び繊維長分布/ガラス繊維長及びガラス繊維長分布は、処理された繊維/ガラス繊維の場合には、サンプルを最初に625℃で灰化することを規定するISO 22314に準拠して測定される。その後、灰は、顕微鏡スライド上へ置かれ、好適な結晶皿中で脱塩水で覆われ、灰は、機械力の作用なしに超音波浴中で分配させられる。次のステップは、130℃においてオーブン中での乾燥、引き続く光学顕微鏡画像の助けを借りた繊維長の測定を含む。この目的のために、少なくとも100個のガラス繊維が3つの画像から測定され、そのようにして合計300個のガラス繊維が、その長さを突き止めるために使用される。ガラス繊維長は、以下の方程式
【数1】
(ここで、I
i=i番目の繊維の長さであり、n=測定された繊維の数である)
に従って算術平均I
nとして計算し、有利にはヒストグラムとして示すことができるか、又は測定ガラス繊維長の仮定正規分布についてIは、方程式
【数2】
に従ってガウス関数を用いて決定され得るかのどちらかである。
【0053】
この方程式において、Ic及びσは、正規分布の特性パラメータであり:Icは平均であり、σは標準偏差である(M.Schossig,Schaedigungsmechanismen in faserverstaerkten Kunststoffen,1,2011,Vieweg und Teubner Verlag,page 35、ISBN 978-3-8348-1483-8を参照されたい)。ポリマーマトリックス中へ組み込まれないガラス繊維は、上記の方法によってその長さに関して分析されるが、灰化による処理及び灰からの分離なしに分析される。
【0054】
本発明にしたがって充填材として好ましく使用可能なガラス繊維[CAS No.65997-17-3]は、J.KASTNERら DGZfP[German Society for Non-Destructive Testing] annual meeting 2007-talk 47と同様に、X線コンピュータ計算マイクロトモグラフィによって測定可能な、好ましくは7~18μmの範囲の、特に好ましくは9~15μmの範囲の繊維径を有する。ガラス繊維は、好ましくは充填材として使用可能であり、好ましくは細断又は細砕ガラス繊維の形態で添加される。
【0055】
好ましい実施形態において、充填材、好ましくはガラス繊維は、好適なサイジングシステム又は接着促進剤/接着促進剤システムで改質される。シラン系サイジングシステム又は接着促進剤を使用することが好ましい。充填材として好ましくは使用可能なガラス繊維の処理のための特に好ましいシラン系の接着促進剤は、一般式(I):
(X-(CH
2)
q)
k-Si-(O-C
rH
2r+1)
4-k (I)
(式中、
Xは、NH
2-、カルボキシル-、HO-、又は
【化1】
であり、
qは、2~10、好ましくは3~4の整数であり、
rは、1~5、好ましくは1~2の整数であり、かつ
kは、1~3の整数、好ましくは1である)
のシラン化合物である。
【0056】
とりわけ好ましい接着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、及び置換基Xとしてグリシジル基又はカルボキシル基を含む相当するシランの群からのシラン化合物であり、ここで、カルボキシル基がとりわけ特に好ましい。
【0057】
充填材として好ましく使用可能なガラス繊維の改質のために、接着促進剤、好ましくは式(I)のシラン化合物は、各場合に充填材の100重量%を基準として、好ましくは0.05重量%から2重量%の量で、特に好ましくは0.25重量%~1.5重量%の量で、非常に特に好ましくは0.5重量%~1重量%の量で用いられる。
【0058】
配合物(コンパウンド)を与えるための/製品又は構成部品を与えるための加工の結果として、充填材として好ましく使用可能なガラス繊維は、元々の用いられたガラス繊維よりも配合物(コンパウンド)において/製品において、より短くなり得る。従って、高解像度X線コンピュータ計算トモグラフィによって測定される、加工後のガラス繊維長の算術平均は、しばしば、わずか150μm~300μmの範囲である。
【0059】
「http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern」によれば、ガラス繊維は、融解紡糸プロセス(ダイ延伸、ロッド延伸、及びダイブローイングプロセス)において製造される。ダイ延伸プロセスにおいては、ガラスの熱塊が白金紡糸口金プレートの数百のダイの穴を通って重力下で流れる。フィラメントは、長さの制限なく3~4km/分の速度で延伸することができる。
【0060】
当業者は、異なるタイプのガラス繊維を区別しており、それらのいくつかを例としてここに列挙する:
・ Eガラス、最適の費用対効果比を有する最も一般的に使用される材料(R&G製のEガラス)
・ Hガラス、低減された質量のための中空ガラス繊維(R&G中空ガラス繊維織物 160g/m2及び216g/m2)
・ R,Sガラス、高い機械的要求のためのもの(R&G製のS2ガラス)
・ Dガラス、高い電気的要求のためのホウケイ酸ガラス
・ Cガラス、増加した耐化学薬品性を有する
・ 石英ガラス、高い熱安定性を有する。
【0061】
さらなる例は、「http://de.wikipedia.org/wiki/Glasfaser」において見ることができる。Eガラス繊維は、プラスチック強化のために最大の重要性を得ている。Eは、それが元々特に電気産業において元々使用されていたので、電気ガラス(electrical glass)を表す。
【0062】
Eガラスの製造のためには、ガラス溶融物は、純石英に石灰石、カオリン、及びホウ酸を添加して製造される。二酸化ケイ素と同じように、それらは、異なる量の様々な金属酸化物を含有する。その組成は、生成物の特性を決定する。Eガラス、Hガラス、R,Sガラス、Dガラス、Cガラス、及び石英ガラスの群からの少なくとも1つのタイプのガラス繊維、特に好ましくはEガラスから作られたガラス繊維が、本発明にしたがって好ましく用いられる。
【0063】
Eガラスから作られたガラス繊維は、最も広く使用されている充填材である。その強度特性は、金属(例えばアルミニウム合金)のそれらに相当し、Eガラス繊維を含有するラミネートの比重は金属の比重よりも低い。Eガラス繊維は不燃性であり、約400℃まで耐熱性であり、且つほとんどの化学薬品及び風化による影響に対して安定である。
【0064】
小板形状(platelet-shaped)の無機充填材もまた、充填材として特に好ましく用いられる。小板形状の無機充填材は、本発明によれば、カオリン、雲母、タルク、クロライト、並びにクロライトタルク及びプラストライト(雲母/クロライト/石英)などの連晶(intergrowth)の群からの、明白な小板形状の特徴を有する少なくとも1つの無機充填材を意味するとして理解されるべきである。タルクが特に好ましい。
【0065】
小板形状の無機充填材は、好ましくは、高解像度X線コンピュータ計算トモグラフィによる測定に対して、2:1~35:1の範囲の、より好ましくは3:1~19:1の範囲の、とりわけ好ましくは4:1~12:1の範囲の長さ:直径比を有する。高解像度X線コンピュータ計算トモグラフィによる測定に対して、小板形状の無機充填材の平均粒径は、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、とりわけ好ましくは10μm未満である。
【0066】
5~250μmの範囲の、好ましくは10~150μmの範囲の、特に好ましくは15~80μmの範囲の、非常に特に好ましくは16~25μmの範囲のd90値を有する、ISO 13320に準拠してレーザ回折法によって測定される粒度分布を有する非繊維状及び非発泡粉砕ガラスもまた充填材として好ましく用いられる。d90値、それらの測定、及びそれらの意義と関連して、Chemie Ingenieur Technik(72)pages 273-276,3/2000,Wiley-VCH Verlags GmbH,Weinheim,2000が参照され、それによれば、d90値は、粒子の量の90%がそれよりも下にある粒径である(中央値)。
【0067】
本発明によれば、非繊維状及び非発泡粉砕ガラスは、微粒子状で、非円筒形状を有し、かつ、5未満、好ましくは3未満、特に好ましくは2未満の、ISO 13320に準拠したレーザ回折法によって測定される長さ対厚さの比を有する。ゼロの価は不可能であることが認められるだろう。
【0068】
充填材として特に好ましく使用可能な非発泡及び非繊維状粉砕ガラスは、さらに、それが、5より大きな、ISO 13320に準拠したレーザ回折法によって測定される直径に対する長さの比(L/D)比)を有する円筒形又は卵形横断面をもつ、ガラス繊維に典型的なガラス形状を持たないことを特徴とする。
【0069】
本発明にしたがって充填材として特に好ましく使用可能な非発泡及び非繊維状粉砕ガラスは、ミル、好ましくはボールミルでガラスを粉砕することによって、特に好ましくはその後の篩い分け(siftingあるいはsieving)をして、好ましくは得られる。一実施形態において充填材として使用するための非繊維状及び非発泡粉砕ガラスの粉砕用の好ましい出発原料には、特にガラス製造品の生産において望ましくない副生成物として及び/又は規格外一次産品(いわゆる規格外商品)として発生するなどのガラス廃棄物も含まれる。これには、特に窓ガラス又は瓶ガラスの生産において及びガラス含有充填材の生産において、特にいわゆるメルトケーキの形態で、発生し得るものなどの廃ガラス、リサイクルガラス、及び割れたガラスが特に含まれる。ガラスは、着色されていてもよいが、充填材として使用するための出発原料としては非着色ガラスが好ましい。
【0070】
本発明によれば、例えば、CS 7967として、LANXESS Deutschland GmbH,Cologneから入手可能であるものなどの、4.5mmの平均長さd50を好ましくは有する、Eガラスに基づく長ガラス繊維(DIN 1259)が特に好ましい。
【0071】
<他の添加剤>
さらなる添加剤もまた、PBT中へ配合(コンパウンディング)され得る。少なくとも1種の充填材に加えて、本発明により好ましくは組み込むことができる添加剤は、安定剤、特にUV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤、さらには帯電防止剤、エラストマー改質剤、流動促進剤、離型剤、難燃剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、滑剤、染料、顔料、及び導電性を高めるための添加剤である。これらの及びさらなる好適な添加剤は、例えば、Gaechter,Mueller,Kunststoff-Additive,3rd Edition,Hanser-Verlag,Munich,Vienna,1989に、及びPlastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser-Verlag,Munich,2001に記載されている。添加剤は、単独で、又は混合して/マスターバッチの形態で、用いることができる。
【0072】
<射出成形品>
本発明による射出成形品は、好ましくは、自動車内装部品として用いられる。本発明との関連において、自動車内装部品の語は、自動車の外面の構成要素ではない、又は自動車の外面の上にいかなる割合の領域も持たない、全ての射出成形部品に関する。
【0073】
本発明にしたがって製造される自動車内装品用の射出成形部品には、上記の先行技術において記載された構成部品のみならず、好ましくはトリムピース、プラグ、電気部品、又は電子部品も含まれる。これらは、近代的自動車の内装にますます増える数で取り付けられて、多くの構成要素、特に車両シート又はインフォテインメントモジュールのますます増えている電化を可能にする。PBTに基づく構成部品はまた、しばしば、機械的応力を受ける機能性部品のために、自動車において使用される。
【0074】
<自動車インテリアの射出成形品の製造方法>
本発明にしたがって用いられるPBTに基づく配合物(コンパウンド)の加工は、以下の4つのステップで実施される:
1)BDO及びPTA、又はBDO及びDMTからPBTを重合するステップ;
2)PBTを、好ましくは少なくとも1種の充填材、特にタルク又はガラス繊維、及び任意選択により場合により少なくとも1種のさらなる添加剤、特に熱安定剤、離型剤、又は顔料とコンパウンディングする(配合する)ステップであって、添加剤を、200mbar未満の圧力の真空下で2~10t/hの範囲の処理量で、真空脱ガスゾーンを有する二軸スクリュー押出機において、PBTの溶融物に添加して、それへ組み込み、その中で混ぜ合わせ、但し、真空は、充填材組み込みゾーンの後かつ排出ゾーンにおける融解ストランドの紡糸終了の前の二軸スクリュー押出機のコンパウンディングセクター(配合セクター)の最後の三分の一において適用されるステップ;
3)溶融物を排出し及び固化させ、並びにペレット化し、及び、好ましくは、高められた温度において、暖かい空気を用いてペレットを乾燥させるステップ;
4)射出成形によって、乾燥されたペレットから、射出成形品/自動車内装品の形態の射出成形品を製造するステップ。
【0075】
<射出成形>
射出成形によって自動車内装部品を製造するための本発明による方法は、好ましくは、160℃~330℃の範囲の、特に好ましくは190℃~300℃の範囲の溶融温度において行われる。加えて、射出成形のあいだ、2500bar以下の、好ましくは2000bar以下の、非常に特に好ましくは1500bar以下の、とりわけ好ましくは750bar以下の圧力を採用する場合が好ましい。本発明によるPBTに基づくコンパウンド(配合物)は、格別の溶融安定性を特徴とし、本発明との関連では、溶融安定性とは、260℃より高い成形材料の融点よりも著しく高い温度で5分より長い滞留時間後でさえ、ISO 1133(1997)に準拠して測定可能である溶融粘度の増加が全く観察されないことを意味することが、当業者によって理解されるであろう。
【0076】
射出成形の方法は、加熱された円筒形空洞(シリンダー状キャビティ)中で、原材料を、好ましくはペレットの形態の原材料を溶融させること(可塑化すること)、及びそれを射出成形材料として、プロファイリング金型の温度制御された空洞(キャビティ)中へ圧力下で注入することを含む。配合(コンパウンディング)によって成形配合物(成形コンパウンド)に加工されており、その成形コンパウンドは次に好ましくはペレットに加工されている本発明によるコンパウンドを原材料として用いる。しかしながら、一実施形態において、ペレット化が避けられて、成形コンパウンドが圧力下で、プロファイリング金型に直接供給されることができる。温度制御されたキャビティへ注入された成形コンパウンドの冷却(固化)後に、射出成形された部品は、脱型され、任意選択により場合によっては付着するスプルーを取り除かれる。
【0077】
本発明による方法において、ポリブチレンテレフタレートは、好ましくは、ペレットの形態で射出成形のために送られる。
【0078】
本発明による方法は、好ましくは、共回転二軸スクリュー押出機を使用する。本発明による方法は、好ましくは、30mm~120mmの範囲のスクリュー径を有する二軸スクリュー押出機を使用する。本発明による方法において、200mbar未満の範囲の圧力の、特に好ましくは50~150mbarの範囲の圧力の、非常に好ましくは0.1~130mbarの範囲の圧力の真空を適用することが好ましい。
【0079】
本発明による方法は、好ましくは、DIN EN ISO 1628-5に準拠して25℃において1:1の重量比のフェノール/o-ジクロロベンゼン中の0.5重量%溶液中で測定して50~220cm3/gの範囲の粘度数を有するポリブチレンテレフタレートを用いる。本発明による方法において、Ti触媒を使って製造されたポリブチレンテレフタレートを用いることが好ましい。本発明による方法は、好ましくは、重合後に250ppm以下のDIN 51418に準拠したX線蛍光分析によって測定されるTi含量を有するポリブチレンテレフタレートを用いる。
【0080】
本発明による方法は、少なくとも1種の充填材が、好ましくはポリブチレンテレフタレートの100質量部を基準として0.001~70質量部の量で組み込まれているポリブチレンテレフタレートを好ましくは用いる。本発明による方法は、好ましくは、長ガラス繊維を充填材として用いる。
【0081】
本発明による方法は、好ましくは、自動車内装品用の射出成形部品を製造する。これらは、好ましくは、トリムピース、プラグ、電気部品又は電子部品である。
【0082】
明確にするために、本発明による方法の範囲は、一般的な範囲又は好ましい範囲において、所望の組合せで、射出成形部品に関連して列挙される定義及びパラメータの全てを含むことに注意されたい。以下の実施例は、本発明を明らかにするのに役立つが、限定する効果を全く有しない。
【実施例】
【0083】
<TVOC>
本発明との関連でサンプルのTVOC値を測定するために、各場合に約2gの粉砕したサンプル(約20mgの断片)を、VDA 277の仕様に従ってねじ蓋及びセプタムを有する20mLサンプルバイアルへ量り入れた。これらを120℃で、5時間、ヘッドスペースオーブン中で加熱した。ガス空間の小サンプルを次いでガスクロマトグラフ(Agilent 7890B GC)へ注入し、分析した。Agilent 5977B MSD検出器を使用した。分析を3通り行い(三重測定)、アセトン較正を用いて評価した。結果をμgC/g単位で求めた。本発明との関連で超えるべきではない閾値は50μgC/gであった。分析は、VDA 277試験仕様に基づくものであった。
【0084】
<VOC>
VOC値は、VDA 278の仕様に準拠する場合、20mgのサンプルを、Gerstel製のフリット(020801-005-00)付きのGERSTEL-TD 3.5機器用の熱脱着管へ量り入れた。前記のサンプルをヘリウムの流れ中で90℃に30分間加熱し、こうして脱着した物質を、下流のコールドトラップ中で-150℃で凍結させた。脱着時間が経過したらすぐに、コールドトラップを280℃に急速に加熱し、集められた物質をクロマトグラフィ(Agilent 7890B GC)によって分離した。検出は、Agilent 5977B MSDを用いて行った。THFについての評価は、トルエン較正を用いて行った。結果をμg/g単位で求めた。本発明との関連で超えるべきではない閾値は5μg/gのTHFであった。分析は、VDA 278試験仕様に基づくものであった。
【0085】
<出発原料>
ポリブチレンテレフタレート(PBT):LANXESS Pocan(登録商標)B1300
ガラス繊維(GF):LANXESS CS7967D
【0086】
[実施例1(本発明)]
用いた配合機は、92mmのスクリュー径を有するCoperion製の共回転ZSK 92 MC18二軸スクリュー押出機であった。その二軸スクリュー押出機を、270±5℃の溶融温度及び1時間当たり4トンの処理量で運転した。100mbarの真空を、最後の混合ゾーンの後かつ融解ストランドの紡糸終了の前の配合セクターの最後の三分の一における二軸スクリュー押出機の真空脱ガスゾーンにおいて適用した。二軸スクリュー押出機の排出ゾーン後にストランドとして排出される配合物を、水浴中で冷却し、空気流中の傾斜台上で乾燥させ、次いで乾式ペレット化に供した。
【0087】
この実施例は、PBT100質量部当たり43.3質量部の細断ガラス繊維を含有するPBT成形材料を用いた。この配合(コンパウンディング)操作のために用いたPBT Pocan(登録商標)B1300は、VDA 277に準拠して測定して170μgC/gのTVOC値を有していた。
【0088】
ペレットの形態の配合(コンパウンディング)された材料を、次いで、乾燥空気による乾燥機中で、120℃において4時間乾燥させ、DIN EN ISO 527-2に準拠して、260℃の溶融温度及び80℃の金型温度において標準条件下における射出成形によって、多目的試験検体1Aへと加工した。
【0089】
<比較例>
使用した配合機は、92mmのスクリュー径を有するCoperion製の共回転ZSK 92 MC18二軸スクリュー押出機であった。その二軸スクリュー押出機を、270±5℃の溶融温度及び1時間当たり4トンの処理量で運転した。300mbarの真空を、最後の混合ゾーンの後かつ融解ストランドの紡糸終了の前の配合区域の最後の三分の一における二軸スクリュー押出機の真空脱ガスゾーンにおいて適用した。二軸スクリュー押出機の排出ゾーン後にストランドとして排出される配合物(コンパウンド)を、水浴中で冷却し、空気流中の傾斜台上で乾燥させ、次いで乾式ペレット化に供した。
【0090】
この比較例は、同様に、PBT100質量部当たり43.3質量部の細断ガラス繊維を含有するPBT成形材料を用いた。この配合操作のために用いられたPBT Pocan(登録商標)B1300は、VDA 277に準拠して測定して170μgC/gのTVOC値を有していた。
【0091】
ペレットの形態のコンパウンドされた材料を、次いで、同様に乾燥空気による乾燥機中で、120℃において4時間乾燥させ、DIN EN ISO 527-2に準拠して、260℃の溶融温度及び80℃の金型温度において標準条件下における射出成形によって多目的試験検体1Aへと加工した。
【0092】
【0093】
本発明による実施例において、本発明の例において及び比較例においての両方で、DIN EN ISO 527-2に準拠して5つの多目的試験検体1Aを製造し、それらのTHF含量をVDA 277及びVDA 278に準拠して測定した[部品(射出成形された)]。表2は、2通りの測定(二重測定)の各々のセットからの平均値を報告している。検討したペレットの場合、2×2g(VDA 277)又は2×20mg(VDA 278)を秤量し、そのTHF含量を、VDA 277及びVDA 278に準拠して二重測定で測定した。
【0094】
表2は、射出成形前の乾燥ペレットについて及びDIN EN ISO 527-2に準拠して射出成形された多目的試験検体1Aについて、VDA 277の仕様に準拠して測定されたTVOC及びTVOCTHF値を示す。射出成形において用いる前の乾燥した粒状物について及びDIN EN ISO 527-2に準拠して射出成形された多目的試験検体1Aについて、VDA 278に準拠して測定されたTHF値も示してある。
【0095】
表2に報告されている試験結果は、100mbarの真空を用いて最適化された配合条件が、配合(コンパウンディング)されたペレットだけでなく、それから製造された射出成形された部品についても、VDA 277及びVDA 278に準拠して測定して顕著により低いTHF放出値をもたらすことを示している。
【0096】
使用した二軸スクリュー押出機の真空脱ガスゾーンにおける脱ガス真空を300mbarから100mbarに向上させることは、射出成形された部品についての測定において、全体(TVOC)及びTHF放出(TVOCTHF、VOCTHF)の著しい低減をもたらした。
【0097】
4t/hという非常に高い処理量及び92mmのスクリュー径を考えると、低いポリマー溶融物表面積及び、二軸スクリュー押出機の真空脱ガスゾーンにおける短い滞留時間は、よくても非常に小さい効果をもたらすと予期されていたであろうから、この結果は、当業者にとって極めて意外であり、効果の大きさは完全に予想外である。また、コンパウンディング後のペレットに比べて射出成形プロセスにおけるTVOC値の増加が、58%(60.3μgC/gから95.2μgC/g)の比較例についてよりも22%(29.3μgC/gから35.8μgC/g)の本発明の実施例について著しく低いこともまた、当業者にとって完全に意外なことである。