(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】低いTHF含量のポリブチレンテレフタレート
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20230804BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230804BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230804BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08L23/08
C08K7/02
(21)【出願番号】P 2022505611
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020071155
(87)【国際公開番号】W WO2021018847
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-27
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ビーンミュラー
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・ハルムス
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/046244(WO,A1)
【文献】特開昭64-22939(JP,A)
【文献】独国実用新案第202008015392(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート
を含む組成物からなる自動車内装品からのテトラヒドロフランのガス放出
を低減
するための、エテンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー
の使用方法であって、
前記エテンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーを前記組成物に添加する工程を含み、
ここで、190℃において及び2.16kgのテスト重量でDIN EN ISO 1133[2]に準拠して測定される前記コポリマーのメルトフローインデックスが100g/10分以上であり、ポリブチレンテレフタレート100質量部当た
り0.1~20質量部の
前記コポリマー
が用い
られ、かつ
前記自動車内装品が、ポリブチレンテレフタレート及び前記コポリマーを含む組成物を射出成形することによって製造される、使用方法。
【請求項2】
前記脂肪族アルコールが、1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコール
であることを特徴とする、請求項
1に記載の
使用方法。
【請求項3】
前記コポリマーは、エテン及び(2-エチル)ヘキシルアクリレートのみからなることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の
使用方法。
【請求項4】
ポリブチレンテレフタレート100質量部当たり0.001~70質量部の充填材が用いられることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の
使用方法。
【請求項5】
前記充填材は、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、カヤナイト、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、ガラス繊維、及び炭素繊維を含む群から選択されることを特徴とする、請求項
4に記載の
使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはアルファ-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーであって、コポリマーのMFI(メルトフローインデックス)が100g/10分以上であるコポリマーの、低いテトラヒドロフラン含量を有するポリブチレンテレフタレートベースの自動車内装品の射出成形による製造のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
明白な複雑性にもかかわらず、過去に、インテリアに見られる、揮発性有機化合物、略してVOCの多様性を評価する手段を見出そうとする試みは不足していなかった。この目的のために、インテリアにおけるVOC濃度についての指標として個々の化合物の濃度の合計が用いられ、TVOC値(全揮発性有機化合物)を決定するために使用される指標パラメータの形態での構成概念が使用されている;(非特許文献1)を参照されたい。
【0003】
「測定対象物」、例えば特にn-デカン、トルエン又はホルムアルデヒドが明確に規定されている、屋内空気中の個々の物質を測定する場合とは違って、VOC混合物の分析においては、どの物質がVOCとして記載されるべきであるかを考慮することが必要である。これに関連して一様なアプローチを達成するために、屋内空気中の有機物質に取り組んでいる世界保健機関(WHO)の作業部会は、初期段階において有機化合物の分類を実施した。沸点に基づいているこのWHO分類は表1に示され、この定義に従い、ホルムアルデヒドもジエチルヘキシルフタレートもVOCに属することが指摘されなければならない。
【0004】
【0005】
(非特許文献2)によれば、好ましくはガラス繊維で強化された、配合物の形態でのポリブチレンテレフタレート(PBT)は、電気工学/エレクトロニクス部門及び車両産業、とりわけ自動車産業において絶対必要なプラスチックである。こうして(非特許文献3)は、自動車内装品におけるデリケートな拡声器グリル及び換気装置グリルのためのPBTブレンドの使用を記載している。(特許文献1)は、その製造がPBTをマトリックスプラスチックとしてとりわけ用い得る、自動車用の機能化内装トリム部品を記載している。
【0006】
半結晶性プラスチックとして、PBTは、220℃~225℃の範囲の狭い融解範囲を有する。高い結晶割合は、PBTでできたストレスフリーの成形部品が変形及び損傷なしに溶融温度の下まで加熱にさらされることが可能にする。純PBT溶融物は、280℃まで短期熱安定性を示し、分子分解を受けず、ガス及び蒸気の発生も示さない。しかしながら、全ての熱可塑性ポリマーのように、PBTは、過度の熱ストレス下に、特に過熱時に又は燃焼法によるクリーニング中に分解する。これは、ガス状分解生成物を形成する。分解は、約300℃超で加速し、最初に主にテトラヒドロフラン(THF)及び水が形成される。
【0007】
(特許文献2)によれば、THFは、モノマー1,4-ブタンジオール(BDO)から分子内縮合によってPBTの製造中に既に形成されている。この反応は、用いられるテレフタル酸(PTA)によって及びPBTを製造するために通常使用されるチタン系触媒によっての両方で触媒され得る。更に、THFは、高温での溶融物中のポリマーから連続的に再生される。「バックバイティング」とも言われるこのプロセスは、ポリマーのBDO末端基で起こる。BDOモノマーからのTHF形成と同様に、この反応は、望ましくない副生成物テトラヒドロフランを与える分子内縮合である。ポリマーからのTHF再生は、また、酸末端基(PTA)によって及び存在する任意の(チタン系)触媒によっての両方で触媒される。
【0008】
ヒトの健康及び環境へのテトラヒドロフランの影響は、REACHの下での物質評価の一環として2013年にドイツ国によって試験されている。IARC(国際がん研究機関)は、2017年に、テトラヒドロフランを発がん性物質であり得るものとして分類した。
【0009】
PBTの製造中にTHFを回避するための技術的手段は別として、増加しつつある健康意識及び自動車の嗅覚的品質に関する増加しつつある消費者需要は、特に、日射の結果としての高温の影響下に、自動車内装に使用された材料からのいかなるガス放出も低減するか、又は更に完全に回避するための努力が行われつつあることを意味する。この目的に向けて、ドイツ自動車工業会(Verband der Automobilhersteller)(VDA)は、車両インテリアに使用される構成部品からのガス放出を定量するための、異なるガスクロマトグラフ法に基づく2つの試験仕様書VDA 277及びVDA 278を発行している。
【0010】
静的ヘッドスペース法及び炎イオン化検出(FID)に基づく、且つ、揮発性炭素化合物の全TVOC含量を示す(TVOC=Total Volatile Organic Compounds(総揮発性有機化合物))VDA 277は、1995年に公表された。これに、2002年に、動的ヘッドスペース法、いわゆる熱吸着に基づく、且つ、揮発性有機化合物(VOC)及び凝縮できる成分(霧値)の両方を示すVDA 278が続いた。射出成形後の成分に常に適用される、相当する閾値は、自動車メーカー(OEM)によって設定されるが、通常、VDAの提案に基づいている。
【0011】
VDA 277の要求を考慮して、それ故、PBTのTHF放出を低減するための多くの試みがこれまで行われてきた:
(特許文献3)スルホン酸成分は健康に有害な~発がん性として分類されているが、重合中のスルホン酸成分の添加;
(特許文献4)((特許文献5))PBT製造に使用されるSn又はSb触媒を失活させるための、重合時に乳酸をベースとするポリエステルへのポリアクリル酸の添加;
(特許文献6)((特許文献7))PBT製造に使用されたチタン触媒を失活させるためのリン含有成分の添加。(特許文献6)に明記されている放出の値は、百分率である、すなわち、それらは、絶対値ではなく、いかなる場合にも改善の必要がある;
(特許文献8)0.01%~2%の濃度でのスチレン-アクリルポリマー(例えばJoncryl(登録商標)ADR-4368)の添加、しかし、これは、鎖延長及びPBTの分子量の増加をもたらした;
(特許文献9)次亜リン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、EDTAの二ナトリウム塩、EDTAの二アンモニウム塩、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン二コハク酸及び、特に、1,3-プロピレンジアミン四酢酸の群からのキレート剤の添加;
(特許文献10)は、99.9~10重量部の熱可塑性ポリエステル及び少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとの0.1~20重量部の少なくとも1種のコポリマーを含む組成物をベースとするペダル構造を教示している;
(特許文献11)((特許文献12))VDA 277に準拠して100μgC/g以下のTVOCを含むPBT成形部品の製造のための次亜リン酸ナトリウム又はエポキシ官能化スチレン-アクリル酸ポリマーの添加。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2013/020627 A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第2 029 271 A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0 683 201 A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1 070 097 A1号明細書
【文献】国際公開第99/50345 A1号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1 999 181 A2号明細書
【文献】国際公開第2007/111890A2号パンフレット
【文献】欧州特許第2 427 511 B1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2 816 081 A1号明細書
【文献】独国実用新案第20 2008 015392 U1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3 004 242 A1号明細書
【文献】国際公開第2014/195176 A1号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【文献】B.Seifert,Bundesgesundheitsblatt-Gesundheitsforschung-Gesundheitsschutz,42,pages 270-278,Springer-Verlag 1999
【文献】G.Blinne,Kunststoffe 10/1999
【文献】AutomobilKONSTRUKTION 2/2011,pages 18-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この先行技術から始まって、最適化されたTHFガス放出挙動を有する自動車内装品又は自動車インテリアを射出成形するためのPBTベースの配合物を提供することが本発明の目的であり、ここで、最適化されたガス放出挙動は、ドイツ自動車工業会(VDA)によるVDA 277に準拠して50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に準拠して8μg/g未満VOCTHFを意味するものとして理解されるべきである。この目的は、好ましくは、上記の先行技術において列挙された添加剤の使用なしに達成されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
意外にも、少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとのコポリマーが単独で、THFのガス放出の低減をもたらし、したがって、自動車インテリアにおけるPBTベースの構成部品に対するVDA 277の要件のみならず、加えてVDA278の要件の遵守を達成することを可能にすることが今や見出された。
【0016】
本発明との関連における試験は、意外にも、本発明によって用いられるコポリマーの添加が、THF応答、すなわち成形配合物のPBT含量に対するVDA 277又はVDA 278に準拠するTHFの比の著しい低減をもたらし、これはコポリマーの希釈効果を越えていることを示している。単に、本発明によるコポリマーの使用によって、VDA 277に準拠して、射出成形によって製造された構成部品についての測定可能なTVOC値は、平均60~70μgC/gから45μgC/gまで及びVDA 278に準拠して平均6~7μg/gからわずか3~3.5μg/gにまで低減し、ここで、全ての情報は、本明細書で以下に記載する対応するテスト仕様において定義された条件に関係する。
【0017】
本発明は、PBT、及び、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはアルファ-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールの、好ましくは1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーをベースとする組成物を含有する自動車内装品又は自動車インテリアであって、190℃において及び2.16kgのテスト重量でDIN EN ISO 1133[2]に準拠して測定されるコポリマーのMFIが、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上であり、PBTの100質量部当たり組成物が0.1~20質量部のコポリマー、好ましくは0.25~15質量部のコポリマー、特に好ましくは1.0~10質量部のコポリマーを用い、好ましくは、VDA 277に準拠して測定して50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に準拠して測定して8μg/g未満のVOCTHFを有する、自動車内装品又は自動車インテリアに関する。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはアルファ-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールの、好ましくは1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーであって、190℃において及び2.16kgのテスト重量でDIN EN ISO 1133[2]に準拠して測定されるコポリマーのメルトフローインデックス(MFI)が、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上であるコポリマーの、VDA 277に準拠して測定して50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に準拠して測定して8μg/g未満のVOCTHFを有する自動車インテリア中の構成部品へ又は自動車インテリアへ射出成形することによって加工するためのPBTベースの配合物の製造のための使用に関し、ここで、PBTの100質量部当たり0.1~20質量部のコポリマー、好ましくは0.25~15質量部のコポリマー、特に好ましくは1.0~10質量部のコポリマーが用いられる。
【0019】
本発明は最後に、PBTベースの自動車内装品又は自動車インテリアからのTHFのガス放出の低減方法であって、射出成形によるそれらの製造のために、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはアルファ-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールの、好ましくは1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマーを含むPBTベースの配合物が用いられ、ここで、190℃において及び2.16kgのテスト重量でDIN EN ISO 1133[2]に従って測定されるコポリマーのMFIが100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上であり、PBT100質量部当たり配合物が0.1~20質量部のコポリマー、好ましくは0.25~15質量部のコポリマー、特に好ましくは1.0~10質量部のコポリマーを用いることを特徴とする方法に関する。
【0020】
未強化成形配合物の場合には、PBT100質量部当たり好ましくは1.0~10質量部のコポリマー、特に好ましくは2.0~9.5質量部のコポリマーが用いられる。
【0021】
<定義>
明確にするために、本発明の範囲は、一般に又は任意の所望の組合せにおける好ましい範囲で以下に列挙される定義及びパラメータの全てを含むことに注意されたい。自動車内装品及び自動車インテリアという用語は、本発明との関連では同意語として用いられる。特に別段の規定のない限り、本出願との関連で列挙される規格は、本発明の出願日における最新版に関係している。メルトインデックス、MFR=メルトマスフローレート又はMFI=メルトフローインデックスは、熱可塑性材料の流動挙動を特徴付けるために用いられる。メルトインデックスの測定は、キャピラリレオメータの特別な実施形態であるメルトインデックス測定機器を用いて行われる。メルトインデックス測定は、DIN EN ISO 1133[2]に標準化されている。これは、特定の圧力及び特定の温度で10分間に規定の寸法を有するキャピラリを通って流れるグラム単位の材料の量を規定するMFR値をメルトインデックスとして定義している。メルトインデックスは、g・(10分)-1の単位で報告される;https://wiki.polymerservice-merseburg.de/index.php?title=Schmelze-Masseflie%C3%9Frate&printable=yesを参照されたい。
【0022】
VDA 277に関しては、本発明は、1995年版を指し、一方、VDA 278に関しては、本発明は、2011年10月版を指す。
【0023】
本発明との関連で、TVOCの及びVOCTHFの試験は、それぞれの標準の仕様に準拠して実施した:
VDA 277は、サンプリングが物品の受取り直後に又はそれに相当する条件で実施されなければならないことを明記している。新たに射出成形された部品の輸送及び保管は、一般に調整(コンディショニング)なしに、アルミニウム被覆PE(ポリレチレン)バッグ中で気密に実施されるべきである。
【0024】
VDA 278は、検査される材料は、普通は、製造の8時間以内にアルミニウム被覆PEバッグ中に気密に包装されるべきであること、及びサンプルは直ちに実験室に送付されるべきであることを明記している。測定前に、サンプルは、標準気候条件(23℃、50%相対湿度)下で7日間調整(コンディショニング)されるべきである。
【0025】
組成物、及び配合物(コンパウンド)という用語は、本発明との関連では同意語として用いられる。配合(コンパウンディング)は、特性の所望のプロファイルを達成するために、充填材、添加剤等などの補助剤を混ぜ合わせることによるプラスチックの処理を記載するプラスチック業界からの用語である。本発明との関連で、配合は、二軸スクリュー押出機、好ましくは共回転二軸スクリュー押出機において実施される。用いることができる代わりの押出機は、遊星ローラー押出機又は共混練機である。配合は、搬送、融解、分散、混合、脱ガス及び加圧のプロセス操作を含む。配合の製品は配合物(コンパウンド)である。
【0026】
配合の目的は、プラスチック原材料、本発明の場合には、ブタンジオールとテレフタル酸との反応から生じるPBTを、ここでは、VDA 277及びVDA 278に準拠する自動車内装品の形態での、加工及びその後の使用にとって最良の可能な特性を有するプラスチック成形配合物へ変換することである。配合の目的には、粒径を変えること、添加剤を組み込むこと、及び構成成分を除去することが含まれる。多くのプラスチックは、粉末又は大きい粒径の樹脂として生成され、それ故、加工機、とりわけ射出成形機にとって適切ではないので、これらの原材料のさらなる処理は特に重要である。ポリマー、ここではPBTと、添加剤との完成された混合物は、成形配合物(モールディングコンパウンド)といわれる。加工前に、成形配合物の個々の構成要素は、粉状、粒状、又は液体/流動性などの物質の様々な状態であり得る。配合機を使用する目的は、構成要素をできる限り均質に混合して成形配合物を与えることである。配合は、好ましくは、以下の添加剤:酸化防止剤、滑剤、耐衝撃性改質剤、帯電防止剤、繊維、タルク、硫酸バリウム、チョーク、熱安定剤、鉄粉、光安定剤、剥離剤、離型剤、核形成剤、UV吸収剤、難燃剤、PTFE、ガラス繊維、カーボンブラック、ガラス球、シリコーンを用いる。
【0027】
配合は、また、構成成分を除去するためにも用いられ得る。それは、好ましくは、2つの構成成分、すなわち水分分画を除去すること(除湿)又は低分子量構成要素を除去すること(脱ガス)である。本発明との関連において、PBTの合成における副生成物として得られるTHFは、真空を適用することによって成形配合物から除去される。
【0028】
配合における2つの必要不可欠なステップは、混合及びペレット化である。混合との関連で、分配混合、すなわち、成形配合物中の全ての粒子の一様な分配と、分散混合、すなわち、組み込まれる構成要素の分配及び粉砕とは区別される。混合プロセスは、それ自体、粘稠相において又は固相においてかのどちらかで行われ得る。固相における混合の場合、添加剤は既に粉砕された形態にあるので分配効果は好ましい。固相における混合は、良好な混合品質を達成するのにめったに十分ではないので、それは、多くの場合プレミキシングと言われる。プレミックスは、次いで溶融状態で混合される。粘性混合は、一般に、5つの操作:ポリマー及び添加された物質を(後者の場合にはできる限り)融解させること、固体塊(塊は集塊である)を粉砕すること、添加剤をポリマー溶融物で湿らすこと、構成要素を一様に分配させること、並びに望ましくない構成成分、好ましくは空気、水分、溶媒及び、本発明により考慮されるPBTの場合には、THFを分離することを含む。粘性混合のために必要とされる熱は、せん断及び構成要素の摩擦によって実質的に生じる。本発明により考慮されるPBTの場合には、粘性混合を用いることが好ましい。
【0029】
添加された物質のペレットへの吸収及び拡散を向上させるために、比較的高い温度での混合を行うことが必要であり得る。加熱/冷却ミキサー系がここでは用いられる。混合される材料は、加熱ミキサーで混合され、次いで冷却ミキサーへと流れ、そこでそれは一時的に保管される。これは、乾燥ブレンドの製造方法である。
【0030】
PBTを配合するために共回転二軸スクリュー押出機/配合押出機を用いることが好ましい。配合機/押出機の目的には、それに供給されるプラスチック組成物の取入れ、それの圧縮、エネルギーを供給することにより同時におこる可塑化及び均質化、並びに圧力下でのプロファイリング金型への供給が含まれる。共回転スクリューペアを有する二軸スクリュー押出機は、それらの良好な混合のために、プラスチックの、とりわけPBTの加工(配合)に好適である。共回転二軸スクリュー押出機は、幾つかの処理ゾーン(processing zone)に分割される。これらのゾーンは、連結されており、互いに独立して考えることはできない。したがって、例えば、溶融物への繊維の組込みは、所定の分散ゾーンにおいてのみならず、排出ゾーンにおいても及び他のスクリューチャンネルにおいても実施される。
【0031】
ほとんどの処理装置が、プラスチック、本発明の場合はPBTが、ペレットの形態であることを必要とするので、ペレット化がこれまで以上に重要な役割を果たす。熱間切断と冷間切断との間で基本的な区別が行われる。これは、処理に従って、異なる粒子形態をもたらす。熱間切断の場合には、プラスチックは、好ましくは、真珠又はレンズ状ペレット形で得られる。冷間切断の場合には、プラスチックは好ましくは円筒形又は立方体形で得られる。
【0032】
熱間切断の場合には、押し出されたストランドは、水がその上を流れる回転ナイフによってダイの直下流で細断される。水は、個々のペレットがくっつくのを防ぎ、かつ材料を冷却する。冷却は、好ましくは水を使用して行われるが、空気を使用することも可能である。適切な冷媒の選択は、それ故、材料に左右される。水冷却のデメリットは、ペレットがその後の乾燥を必要とすることである。冷間切断の場合には、ストランドは先ず、水浴を通して延伸され、次いで、回転ナイフローラー(造粒機)によって固体状態で所望の長さに切断される。本発明により用いられるPBTの場合には、冷間切断が用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<ポリブチレンテレフタレート>
本発明にしたがって使用可能なPBT[CAS No.24968-12-5]は、例えば、商品名Pocan(登録商標)でLanxess Deutschland GmbH,Cologneから入手可能である。
【0034】
DIN EN ISO 1628-5に準拠して、フェノール/o-ジクロロベンゼン混合物(25℃で1:1の重量比)中の0.5重量%溶液で測定される、本発明にしたがって用いられるPBTの粘度数は、好ましくは50~220cm3/gの範囲に、特に好ましくは80~160cm3/gの範囲にある;Schott Instruments GmbH冊子,O.Hofbeck,2007-07を参照されたい。
【0035】
特に好ましいのは、滴定法、特に電位差滴定法によって測定されるそのカルボキシル末端基含量が100meq/kg以下、好ましくは50meq/kg以下、特に40meq/kg以下のポリエステルであるPBTである。そのようなポリエステルは、例えばドイツ国特許出願公開第A 44 01 055号明細書の方法によって製造可能である。
【0036】
ポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは、Ti触媒を使って製造される。重合後に、本発明にしたがって用いられるPBTは、特に、DIN 51418に準拠するX線蛍光分析(XRF)によって測定して250ppm以下、特に200ppm未満、特に好ましくは150ppm未満のTi含量を有する。
【0037】
<コポリマー>
本発明によれば、少なくとも1種のオレフィン、好ましくはα-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの、コポリマー、好ましくはランダムコポリマーであって、コポリマーのMFIが、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上、特に好ましくは300g/10分以上であるコポリマーを用いることが好ましい。
【0038】
本発明によれば、オレフィン、好ましくはα-オレフィン、及び脂肪族アルコールのアクリル酸エステルのみからなるコポリマーであって、コポリマーのMFIが、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上、特に好ましくは300g/10分以上であるコポリマーを用いることが好ましい。
【0039】
好ましい実施形態において、コポリマーは、4重量%未満の程度まで、特に好ましくは少なくとも1.5重量%の程度まで、特に好ましくは0重量%の程度までのさらなる反応性官能基、好ましくは、エポキシド類、オキセタン類、酸無水物類、イミド類、アジリジン類、フラン類、酸、アミン、オキサゾリン類の群から選択されるさらなる反応性官能基を含むモノマービルディングブロックから構成される。
【0040】
コポリマーの構成成分としての、好ましいオレフィン、好ましくはα-オレフィンは、2~10個の炭素原子を含み、置換されていなくても、あるいは1つ以上の脂肪族、脂環式、又は芳香族基で置換されていてもよい。
【0041】
好ましいオレフィンは、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテンの群から選択可能である。特に好ましいオレフィンは、エチレン及びプロペンであり、エテンが非常に特に好ましい。
【0042】
記載されたオレフィン類の混合物が同様に好適である。
【0043】
さらなる好ましい実施形態においては、コポリマーの2つのさらなる反応性官能基、特に、エポキシド類、オキセタン類、酸無水物類、イミド類、アジリジン類、フラン類、酸類、アミン類、オキサゾリン類を含む群から選択可能な反応性官能基を、専らオレフィン構成成分によってコポリマー中へ導入される。
【0044】
コポリマー中のオレフィンの含量は、コポリマーの100重量%を基準として、好ましくは50重量%~90重量%の範囲に、特に好ましくは55重量%~75重量%の範囲である。
【0045】
本発明にしたがって用いられるコポリマーは、オレフィンに加えて第2の構成成分によって更に規定される。第2構成成分として用いられるのは、そのアルキル又はアリールアルキル基が5~30個の炭素原子から形成された、アクリル酸のアルキル又はアリールアルキルエステルである。アルキル又はアリールアルキル基は、線状であっても分岐していてもよく、脂環式又は芳香族基を含有してもよく、また1つ以上のエーテル若しくはチオエーテル官能基で置換されていてもよい。
【0046】
アクリル酸エステルの好ましいアルキル又はアリールアルキル基は、1-ペンチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、1-ヘプチル、3-ヘプチル、1-オクチル、1-(2-エチル)ヘキシル、1-ノニル、1-デシル、1-ドデシル、1-ラウリル、又は1-オクタデシルを含む群から選択可能である。6~20個の炭素原子を有するアルキル又はアリールアルキル基が特に好ましい。さらに、同じ数の炭素原子を有する線状アルキル基に比べてより低いガラス転移温度TGをもたらす分岐アルキル基が特に好ましい。アクリル酸エステルのアルキル基として殊に特に好ましく用いられるのは(2-エチル)ヘキシル基であり、本発明にしたがってコポリマー中に存在する好ましいエステルは、したがって、(2-エチル)ヘキシルアクリレートである。
【0047】
記載したアクリル酸エステルの混合物が同様に好適である。
【0048】
用いられるコポリマーのMFIは、好ましくは、80~900g/10分の範囲、特に好ましくは150~750g/10分の範囲である。
【0049】
エテンと(2-エチル)ヘキシルアクリレートとからなるコポリマー、とりわけ特に好ましくは550g/10分のMFIを有するコポリマーを用いることがとりわけ好ましい。
【0050】
<充填材(フィラー)>
好ましい実施態様において、上記コポリマーは、少なくとも1種の充填材(フィラー)と組み合わせて用いられる。この場合、本発明による組成物は、好ましくは、0.001~70質量部、特に好ましくは5~50質量部、非常に特に好ましくは9~48質量部の、少なくとも1種の充填材を含有する。
【0051】
本発明にしたがって用いられる充填材は、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、カヤナイト、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、及び繊維状充填材、特にガラス繊維又は炭素繊維からなる群から好ましくは選択される。ガラス繊維を用いることがとりわけ好ましい。
【0052】
「http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund」によれば、0.1~1mmの範囲の長さを有する、短繊維としても知られる細断ファイバー(chopped fiber)、1~50mmの範囲の長さを有する長繊維、及び50mm超の長さを有する連続繊維の間で区別がされる。短繊維は射出成形において使用され、押出機で直接処理可能である。長繊維は同様に押出機中で加工することができる。前記の繊維は、繊維噴霧(繊維スプレー)において広く使用されている。長繊維は、充填材として熱硬化性樹脂にしばしば添加される。連続繊維は、繊維強化プラスチックにおいてロービング又は織物の形態で使用される。連続繊維を含む製品は、最高の剛性及び強度値を達成する。細砕ガラス繊維も利用可能であり、細砕後のこれらの長さは、典型的には70~200μmの範囲である。
【0053】
本発明によれば、1~50mmの範囲の、特に好ましくは1~10mmの範囲の、非常に特に好ましくは2~7mmの範囲の初めの長さを有する細断された長ガラス繊維を充填材として用いることが好ましい。初期長さは、本発明による成形配合物(モールディングコンパウンド)をもたらすための本発明による成分の配合(コンパウンディング)の前に存在するガラス繊維の平均長を指す。成形配合物又は自動車内装品(自動車内装部品)をもたらすための、加工、とりわけ配合(コンパウンディング)の結果として、充填材として使用可能な繊維、好ましくは、ガラス繊維は、その成形配合物中で又は自動車内装品中で元々用いられた繊維又はガラス繊維よりも小さいd90及び/又はd50値を有する。したがって、加工後の繊維長/ガラス繊維長の算術平均は、しばしば、わずか150μm~300μmの範囲である。
【0054】
本発明との関連で、繊維長及び繊維長分布/ガラス繊維長及びガラス繊維長分布は、加工がされた繊維/ガラス繊維の場合にはISO 22314に準拠して測定され、それはサンプルを最初に625℃で灰化することを規定している。その後、その灰を、顕微鏡スライド上へ置き、好適な結晶皿中で脱塩水で覆い、そしてその灰を、機械的な力の作用なしで超音波浴中で分配させる。次のステップは、130℃においてオーブン中で乾燥させ、それに続いて光学顕微鏡画像の助けを借りてガラス繊維長を測定することを含む。この目的のために、3つの画像から、少なくとも100個のガラス繊維を測定し、そのようにして合計300個のガラス繊維を使ってその長さを突き止める。ガラス繊維長は、本明細書では、次の式
【数1】
(ここで、I
i=i番目の繊維の長さであり、n=測定した繊維の数である)
に従って算術平均I
nとして計算し、好適にはヒストグラムとして示すことができるか、又は測定したガラス繊維長Iに対して正規分布を仮定した場合は、ガラス繊維長は、次の式
【数2】
に従ってガウス関数を用いて決定されうる。この式において、I
c及びσは、正規分布の特性パラメータであり:I
cは平均であり、σは標準偏差である(M.Schossig,Schaedigungsmechanismen in faserverstaerkten Kunststoffen,1,2011,Vieweg und Teubner Verlag,page 35、ISBN 978-3-8348-1483-8を参照されたい)。ポリマーマトリックス中へ組み込まれていないガラス繊維は、上記の方法によって、しかし灰化による処理及びその灰からの分離なしにそれらの長さに関して分析がなされる。
【0055】
本発明にしたがって繊維として好ましく使用可能なガラス繊維[CAS No.65997-17-3]は、当業者に利用可能な少なくとも1つの手段によって測定可能な、特に、「Quantitative Messung von Faserlaengen und-verteilung in faserverstaerkten Kunststoffteilen mittels μ-Roentgen-Computertomographie」,J.KASTNERら,DGZfP-Jahrestagung 2007-Vortrag 47と同様のX線コンピュータ支援トモグラフィによって測定可能な、好ましくは7~18μmの範囲の、特に好ましくは9~15μm範囲の繊維径を有する。充填材として好ましく使用可能なガラス繊維は、好ましくは、細断又は細砕ガラス繊維の形態で添加される。
【0056】
好ましい実施形態において、充填材、好ましくはガラス繊維は、好適なサイジングシステム又は接着促進剤/接着促進剤システムで処理される。シラン系サイジングシステム又は接着促進剤を使用することが好ましい。充填材として好ましく使用することができるガラス繊維の処理のための特に好ましいシラン系の接着促進剤は、下記一般式(I)のシラン化合物である。
(X-(CH
2)
q)
k-Si-(O-CrH
2r+1)
4-k (I)
(式中、
Xは、NH
2-、カルボキシル-、HO-又は
【化1】
であり、
qは、2~10、好ましくは3~4の整数であり、
rは、1~5、好ましくは1~2の整数であり、かつ
kは、1~3の整数、好ましくは1である)。
【0057】
とりわけ好ましい接着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、及び置換基Xとしてグリシジル基又はカルボキシル基を含む対応するシラン類の群からのシラン化合物であり、ここで、カルボキシル基がとりわけ特に好ましい。
【0058】
充填材として好ましく使用可能なガラス繊維の処理のために、接着促進剤、好ましくは式(I)のシラン化合物は、各場合に、充填材の100重量%を基準として、好ましくは0.05重量%~2重量%の量で、特に好ましくは0.25重量%~1.5重量%の量で、非常に特に好ましくは0.5重量%~1重量%の量で用いられる。
【0059】
組成物を与えるための/製品を与えるための加工の結果として、充填材として好ましく使用可能なガラス繊維は、最初に用いられたガラス繊維よりも組成物中で/製品中でより短くなりえる。したがって、高解像度X線コンピュータ支援トモグラフィによって測定される加工後のガラス繊維長の算術平均は、しばしば、わずか150μm~300μmの範囲である。
【0060】
「http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern」によれば、ガラス繊維は、溶融紡糸プロセス(ダイ引き抜き、ロッド引き抜き、及びダイブローイングプロセス)で製造される。ダイ引き抜きプロセスでは、ガラスの熱塊が白金紡糸口金プレートの数百のダイ穴を通って重力下で流れる。そのフィラメントは、長さの制限なしに3~4km/分の速度で引き抜かれることができる。
【0061】
当業者は様々なタイプのガラス繊維を区別し、それらのいくつかを例としてここに列挙する:
・ Eガラス、最適の費用対効果比を有する最も一般的に使用される材料(R&G製のEガラス)
・ Hガラス、減量のための中空ガラス繊維(R&G中空ガラス繊維布 160g/m2及び216g/m2)
・ R,Sガラス、高い機械的要求特性のためのもの(R&G製のS2ガラス)
・ Dガラス、高い電気的要求特性のためのホウケイ酸ガラス
・ Cガラス、増大した耐化学薬品性を有する
・ 石英ガラス、高い熱安定性を有する。
【0062】
さらなる例は、「http://de.wikipedia.org/wiki/Glasfaser」において見出すことができる。Eガラス繊維は、プラスチックの補強のために最大の重要性を得ている。Eは電気ガラスを表し、なぜならそれが元々特に電気産業において元々使用されていたからである。Eガラスの製造のためには、ガラス溶融物が、石灰石、カオリン、及びホウ酸を添加した純石英から製造される。二酸化ケイ素と同じように、それらは、異なる量の様々な金属酸化物を含有する。その組成は生成物の特性を決定する。Eガラス、Hガラス、R,Sガラス、Dガラス、Cガラス、及び石英ガラスの群からの少なくとも1つのタイプのガラス繊維を使用することが本発明に従って好ましく、Eガラスからできているガラス繊維を使用することが特に好ましい。
【0063】
Eガラスからできているガラス繊維は、最も一般的に使用される充填材である。その強度特性は、金属(例えばアルミニウム合金)の強度特性に相当し、Eガラス繊維を含有するラミネートの比重は、金属のそれよりも低い。Eガラス繊維は不燃性であり、最高で約400℃まで耐熱性であり、ほとんどの化学薬品及び気候影響に対して安定である。
【0064】
小板形状の無機充填材もまた、充填材として特に好ましく用いられる。小板形状の無機充填材は、本発明によれば、カオリン、雲母、タルク、クロライト、並びにクロライトタルク及びプラストライト(雲母/クロライト/石英)などの連晶の群からの、非常に目立つ小板形状特性を有する少なくとも1つの無機充填材を意味するものとして理解されるべきである。タルクが特に好ましい。
【0065】
小板形状の無機充填材は、好ましくは、高解像度X線コンピュータ支援トモグラフィによる測定に対し、2:1~35:1の範囲の、より好ましくは3:1~19:1の範囲の、とりわけ好ましくは4:1~12:1の範囲の長さ:直径比を有する。高解像度X線コンピュータ支援トモグラフィによる測定に対し、小板形状の無機充填材の平均粒径は、好ましくは20μm未満、特に好ましくは15μm未満、とりわけ好ましくは10μm未満である。
【0066】
5~250μmの範囲の、好ましくは10~150μmの範囲の、特に好ましくは15~80μmの範囲の、非常に特に好ましくは16~25μmの範囲のd90値を有する、ISO 13320に準拠してレーザ回折法によって測定される粒度分布を有する非繊維状及び非発泡粉砕ガラスもまた、充填材として好ましく用いられる。d90値、それらの測定及びそれらの重要性に関連して、Chemie Ingenieur Technik(72)S.273-276,3/2000,Wiley-VCH Verlags GmbH,Weinheim,2000が参照され、それによれば、d90値は、粒子の量の90%がそれよりも下にある粒径である(中央値)。
【0067】
本発明によれば、非繊維状及び非発泡粉砕ガラスは、微粒子の、非円筒形状を有し、かつ、5未満、好ましくは3未満、特に好ましくは2未満のISO 13320に準拠してレーザ回折法によって測定される厚さに対する長さの比を有する。ゼロの価は不可能であることは十分理解されるであろう。
【0068】
充填材として特に好ましく使用可能な非発泡及び非繊維状粉砕ガラスは、それが、ISO 13320に準拠したレーザ回折法によって測定して5より大きな長さ対直径比(L/D)比)を有する円筒形又は卵形横断面をもつガラス繊維に典型的なガラス幾何形状をもたないことをさらに特徴とする。
【0069】
本発明にしたがって充填材として特に好ましく使用可能な非発泡及び非繊維状粉砕ガラスは、ミル、好ましくはボールミルでガラスを粉砕することによって、特に好ましくはその後の篩い分け(siftingあるいはsieving)ありで好ましくは得られる。一実施態様において充填材として使用するための非繊維状及び非発泡粉砕ガラスの粉砕用の好ましい出発原料には、特にガラス製造品の生産において望ましくない副生成物として及び/又は規格外一次産品(いわゆる規格外商品)として発生するなどのガラス廃棄物も含まれる。これには、廃ガラス、リサイクルガラス、及び割れたガラスが、例えば、特に窓ガラス又は瓶ガラスの生産において及びガラス含有充填材の生産において生じうる、特にいわゆるメルトケーキの形態で生じうるものが含まれる。ガラスは着色されていてもよいが、充填材として使用するための出発原料としては非着色ガラスが好ましい。
【0070】
本発明にしたがって特に好ましいものは、Eガラスをベースとする長ガラス繊維(DIN 1259)であり、好ましくは4.5mmの平均長さd50を好ましくは有するものであって、例えば、CS 7967として、LANXESS Deutschland GmbH,Cologneから入手可能である。
【0071】
<他の添加剤>
好ましい実施態様において、PBTは、本発明によれば、コポリマー及び任意選択成分である充填材に加えて、それに添加されたさらなる添加剤を有していてもよい。本発明にしたがって好ましく使用可能な添加剤は、安定剤、特にUV安定剤、熱安定剤、ガンマ線安定剤、さらには、帯電防止剤、エラストマー改質剤、流動促進剤、離型剤、難燃剤、乳化剤、核形成剤、可塑剤、滑剤、染料、顔料、及び導電性を高めるための添加剤である。これらの及びさらなる好適な添加剤は、例えば、Gaechter,Mueller,Kunststoff-Additive,3rd Edition,Hanser-Verlag,Munich,Vienna,1989に及びPlastics Additives Handbook,5th Edition,Hanser-Verlag,Munich,2001に記載されている。これらの添加剤は、単独で又は混合して/マスターバッチの形態で用いることができる。
【0072】
<自動車内装品又は自動車内装(インテリア)>
本発明は、好ましくは、PBT及び少なくとも1種のオレフィン、好ましくはアルファ-オレフィンと、少なくとも1種の脂肪アルコールの、好ましくは1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールのアクリル酸エステルとの少なくとも1種のコポリマー(ここで、190℃において及び2.16kgのテスト重量でDIN EN ISO 1133[2]に準拠して測定されるコポリマーのMFIは、100g/10分以上、好ましくは150g/10分以上である)、並びに少なくとも1種の充填材、好ましくはガラス繊維をベースとする組成物を含有する自動車内装品であって、PBT100質量部当たり、組成物が、0.1~20質量部のコポリマー、好ましくは0.25~15質量部のコポリマー、特に好ましくは1.0~10質量部のコポリマー、及び0.001~70質量部、特に好ましくは5~50質量部、非常に特に好ましくは9~48質量部の充填材を用い、好ましくは、VDA 277に準拠して測定して50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に準拠して測定して8μg/g未満のVOCTHFを有する自動車内装品に関する。
【0073】
本発明により製造される自動車内装品用の射出成形部品には、上記の先行技術において記載された構成部品のみならず、好ましくはトリムピース、プラグ、電気部品、又は電子部品も含まれる。これらは、現代的な自動車の車内(インテリア)に、ますます多くなっている数で配置されて、多くの構成要素、特に車両シート又はインフォテインメントモジュールのますます増大する電化を可能にする。PBTベースの構成要素はまた、しばしば、機械的ストレスを受ける機能性部品用に自動車において使用されている。
【0074】
<自動車内装品の構成部品の製造プロセス>
本発明にしたがって用いられるPBTベースの組成物の加工は、以下の4つのステップで実施される:
1)BDO及びPTAからのPBTの重合;
2)本発明にしたがって用いられるコポリマー、任意選択により場合によって少なくとも1種の充填材、特にタルク又はガラス繊維、及び任意選択により場合によって少なくとも1種のさらなる添加剤、特に、熱安定剤、離型剤、又は顔料のPBT溶融物への添加、組み込み、及び混合によって配合(コンパウンディング)するステップ;
3)溶融物の排出及び固化、及びペレット化、並びに昇温した温度における暖かい空気でペレットを乾燥させるステップ;
4)射出成形によって、乾燥したペレットから自動車内装品(automotive interior part)を製造するステップ。
【0075】
<射出成形>
射出成形により自動車の内装(インテリア)を製造するための本発明によるプロセスは、160℃~330℃の範囲の、好ましくは190℃~300℃の範囲の溶融温度において、また任意選択により、2500bar以下の圧力で、好ましくは2000bar以下の圧力で、特に好ましくは1500bar以下の圧力で、非常に特に好ましくは750bar以下の圧力で行われる。本発明にしたがうPBTベースの配合物は、並外れた溶融安定性を特徴とし、ここで、本発明との関連において、溶融安定性とは、260℃超という成形配合物の融点よりも著しく上で5分超の滞留時間後でさえも、ISO 1133(1997)に準拠して測定可能な溶融粘度の増大が全く観察されないことを意味することが、当業者によって理解されるであろう。
【0076】
射出成形のプロセスは、加熱された円筒形空洞(キャビティ)中で、原材料、好ましくはペレットの形態の原材料を融解(可塑化)し、射出成形配合物(射出成形コンパウンド)として、それを加圧下で成形用金型の温度制御された空洞(キャビティ)中に供給することを特徴とする。原材料として、本発明による組成物を用い、これは配合(コンパウンディング)によって成形用配合物(成形用コンパウンド)へと既に加工されていることが好ましく、前記の成形用配合物は次に好ましくはペレットに加工されている。しかしながら、一つの実施態様では、ペレット化は避けられて、成形用配合物が圧力下に成形用金型に直接供給されてもよい。温度制御された空洞へ注入された成形用配合物の冷却(固化)後に、射出成形された部品が離型される。
【0077】
本発明は、好ましくは、コポリマーのメルトフローインデックスが150g/10分以上である方法に関する。
【0078】
本発明は、好ましくは、用いられるオレフィンがアルファ-オレフィンである方法に関する。その用いられるオレフィンは、好ましくは、エテン、プロペン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、3-メチル-1-ペンテンの群から選択される少なくとも1つ、好ましくはエテンである。
【0079】
本発明による方法は、好ましくは、その脂肪族アルコール成分が、1~30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールをベースとしているコポリマーを用いる。
【0080】
本発明による方法において、少なくとも1種のオレフィン及び少なくとも1種の脂肪族アルコールのアクリル酸エステルのみからなるコポリマーが好ましくは用いられ、ここで、そのコポリマーのメルトフローインデックスは100g/10分以上である。コポリマーは、特に好ましくは、エテン及び(2-エチル)ヘキシルアクリレートのみからなる。
【0081】
本発明による方法は、好ましくは、VDA 277に準拠して測定して50μgC/g未満のTVOC及びVDA 278に準拠して測定して8μg/g未満のVOCTHFを有する自動車内装品をもたらすことができる。コポリマーは、特に好ましくは、少なくとも1種の充填材と組み合わせて用いられる。この場合に、ポリブチレンテレフタレート100質量部当たり0.001~70質量部の充填材が用いられる。本発明による方法における好ましい充填材は、タルク、雲母、シリケート、石英、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、カヤナイト、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、チョーク、長石、硫酸バリウム、ガラス球、ガラス繊維、及び炭素繊維を含む群から選択されるべきである。
【0082】
明確さのために、本発明による方法はまた、一般的な又は任意の所望の組合せでの好ましい範囲において、自動車内装品に関連して記載した定義及びパラメータの全てを含むことに留意されたい。以下の実施例は、本発明を明らかにするのに役立つが、限定する効果を全く有しない。
【実施例】
【0083】
<TVOC>
本発明との関連でサンプルのTVOC値を測定するために、各場合に約2gの粉砕したサンプル(約20mgの断片)を、VDA 277の仕様に準拠して、ねじ蓋及びセプタムを有する20mLサンプルバイアルへ量り入れた。これらを120℃において、5時間、ヘッドスペースオーブン中で加熱した。そのガス空間の少量サンプルを次にガスクロマトグラフ(Agilent 7890B GC)へ注入して、分析した。Agilent 5977B MSD検出器を使用した。分析を三重測定で行い、アセトン較正を用いて半定量的に評価した。結果をμgC/g単位で求めた。本発明との関連で超えるべきではない閾値は50μgC/gであった。分析は、VDA 277試験仕様に基づくものであった。
【0084】
<VOC>
VOC値は、VDA 278の仕様に準拠する場合、20mgのサンプルを、Gerstel製のフリット(020801-005-00)付きのGERSTEL-TD 3.5機器用の熱脱着管へ量り入れた。前記のサンプルをヘリウム流中で90℃に30分間加熱し、そうして脱着した物質を、下流のコールドトラップにおいて-150℃で凍結させた。脱着時間が経過したらすぐに、コールドトラップを280℃に急速加熱し、集められた物質をクロマトグラフィ(Agilent 7890B GC)によって分離した。検出は、Agilent 5977B MSDを使用して行った。評価は、トルエン較正を用いて半定量的に行った。結果をμg/g単位で求めた。本発明との関連で超えるべきではない閾値は100μg/gの総VOC及び8μg/gのTHFであった。分析は、VDA 278試験仕様に基づくものであった。
【0085】
<出発原料>
ポリブチレンテレフタレート(PBT):LANXESS Pocan(登録商標)B 1300
コポリマー(XF):Arkema Lotryl(登録商標)37EH550
ガラス繊維(GF):LANXESS CS7967D、4.5mmの範囲の平均長さ及び10マイクロメートルの平均フィラメント径を有する、0.9重量%のシランで表面コーティングされた、Eガラスから作られたガラス繊維。
【0086】
<サンプルの調製>
[実施例1]
使用した配合機は、Coperion製のZSK 92であった。この機械を、約270℃の溶融温度及び1時間当たり4トンの処理量で運転した。ストランドを、水浴中で冷却し、空気流中の傾斜台上で乾燥させ、次いで乾式ペレット化に供した。
【0087】
本実施例では、PBT100質量部当たり47.3質量部の細断ガラス繊維、及びPBT100質量部当たり9.5質量部のコポリマーを含有するPBT成形配合物(コンパウンド)を用いた。このように用いられたPBTは、VDA 277に準拠して測定して170μgC/gのTVOC値を有していた。
【0088】
配合された材料を、次いで、乾燥空気による乾燥機中で120℃において4h乾燥させ、標準条件(260℃の溶融温度、80℃の金型温度)下での射出成形によって加工した。
【0089】
[比較例]
使用した配合機は、Coperion製のZSK 92であった。この機械を、約270℃の溶融温度及び1時間当たり4トンの処理量で運転した。ストランドを、水浴中で冷却し、空気流中の傾斜台上で乾燥させ、次いで乾式ペレット化に供した。
【0090】
本比較例は、PBT100質量部当たり43.3質量部の細断ガラス繊維を含有するPBT成形用配合物を用いた。このように用いられたPBTは、VDA 277に準拠して測定して170μgC/gのTVOC値を有していた。
【0091】
配合された材料を、乾燥空気による乾燥機中で120℃において4h乾燥させ、標準条件(260℃の溶融温度、80℃の金型温度)下での射出成形によって加工した。
【0092】
【0093】
表2は、乾燥ペレットに関して及び射出成形した部品に関してVDA 277の仕様に準拠して測定されたTVOC値、並びにまた、成形配合物中のPBTの百分率で割ったμgC/g単位でのTVOCに関するTHF含量に由来するTHF応答(RTHF)を示す。この値が低ければ低いほど、PBT鎖当たり生成するTHFはより少ない。また、VDA 278の仕様に準拠した状態にある乾燥されたペレット及び射出成形された部品について、VDA 278の規定に準拠して測定されたTHFの値、並びにそれに関連するRTHF値も示されている。
【0094】
表2に報告されている試験結果は、本発明の実施例における100質量部のPBTへの9.5質量部のコポリマーの添加が、THFの量の、したがって全放出の際立った低下をもたらすことを示している。ここで特に意外であるのは、PBT物質の量を基準とするTHF当量の著しい低下である。加工時におけるPBTからのTHFの形成に対するこの効果は、当業者にとって予測できないことであり、なぜなら、当業者が、このコポリマーが何らかの、反応についての効果を有することは予測しえないことだからである。