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特許7325621金属酸化物を用いたポリオレフィン解重合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】金属酸化物を用いたポリオレフィン解重合
(51)【国際特許分類】
   C07C 4/20 20060101AFI20230804BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
C07C4/20
C08J11/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022515702
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2020075169
(87)【国際公開番号】W WO2021048187
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】62/897,794
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ブリタ、ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス、シェリ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ディール、ユレンティ
(72)【発明者】
【氏名】グイドッティ、シモナ
(72)【発明者】
【氏名】リゴリ、ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ナギー、サンドール
(72)【発明者】
【氏名】スミス、クリストファー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ダニエル エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シュエヨン
(72)【発明者】
【氏名】ミハン、シャハラーム
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-508524(JP,A)
【文献】特表2013-539476(JP,A)
【文献】特開平07-024322(JP,A)
【文献】特表2017-513964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0103012(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 4/
C08J11/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを解重合させる方法であって、
a)ポリオレフィン系供給流および少なくとも1つの金属酸化物を、所定の温度に加熱した反応器に加えることと、
b)該ポリオレフィン系供給流を該少なくとも1つの金属酸化物と反応させて、該ポリオレフィン系供給流を解重合させることと
を含み、
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも5:1であり、
少なくとも1つの金属酸化物が、酸化アルミニウムチタン(Al*TiO)である、方法。
【請求項2】
ポリオレフィン系供給流が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリオレフィン系供給流が、使用済み廃棄物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ポリオレフィン系供給流が、産業廃棄物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリオレフィン系供給流が、産業廃棄物および使用済み廃棄物の両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリオレフィン系供給流の解重合の速度が、金属酸化物を用いないポリオレフィン系供給流の解重合の速度より少なくとも10%高い、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも20:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも50:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ポリオレフィン系供給流を解重合させる方法であって、
a)所定の温度で反応器内に、高密度ポリエチレンおよびポリプロピレンを含むポリオレフィン系供給流、ならびに少なくとも1つの金属酸化物を加えることと、
b)該ポリオレフィン系供給流を該少なくとも1つの金属酸化物と反応させて、該ポリオレフィン系供給流を解重合させ、500℃未満の終点を有する液体生成物を生成することと
を含み、
少なくとも1つの金属酸化物が、酸化アルミニウムチタン(Al*TiO)である、方法。
【請求項10】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも5:1である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも20:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも50:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリオレフィン系供給流が、使用済み廃棄物である、請求項に記載の方法。
【請求項14】
ポリオレフィン系供給流の解重合の開始温度が、該金属酸化物を含まないポリオレフィン系供給流の開始温度より5%低い、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行関連出願
本出願は、特許協力条約下で出願され、参照により全体として本明細書に組み入れる2019年9月9日出願の米国特許仮出願第62/897,794号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
該当なし。
【0003】
マイクロフィッシュ付録の参照
該当なし。
【0004】
本開示は、金属酸化物および熱を使用してポリオレフィン系材料を解重合させて、有用な石油化学生成物を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
生活水準の向上および都市化の拡大によって、ポリマー製品、特にポリオレフィンプラスチックに対する需要が増している。ポリオレフィンは、それらの傑出した性能およびコスト特性によって、商業的プラスチックの用途において頻繁に使用されている。例えば、ポリエチレン(PE)は、頑強で、極めて丈夫で、耐久性が高いため、最も広く使用され、認識されているポリオレフィンの1つとなっている。このため、ポリエチレンは様々な用途のために高度に改変することが可能である。同様に、ポリプロピレン(PP)は、機械的に頑丈ではあるが可撓性でもあり、耐熱性であり、塩基および酸のような多くの化学的溶媒に耐性である。このように、ポリプロピレンは、様々な最終用途産業にとって、主に様々な種類の容器包装およびラベリング、織物、プラスチック部品、ならびに再利用可能なコンテナ類に理想的である。
【0006】
ポリオレフィンプラスチックの需要に対するマイナス面は、廃棄物の増加である。使用済みプラスチック廃棄物は、一般的に、最終的に埋立てゴミ処理地に埋められることとなり、約12%は焼却され、約9%はリサイクルに転用される。埋立てゴミ処理地では、ほとんどのプラスチックは、迅速に分解せず、埋立てゴミ処理地に過剰な負荷をかける主な廃棄物源となっている。焼却もまた、焼却によって二酸化炭素およびその他の温室ガス放出物が形成されるため、プラスチック廃棄物の処理に対する理想的な解決法ではない。そのように、埋立てゴミ処理地の負荷を軽減し、同時に環境に優しい、プラスチック廃棄物のリサイクル方法の開発に、多くの関心がよせられている。
【0007】
プラスチック廃棄物のリサイクルの障害となっているのは、商業的に使用可能なまたは望ましい生成物をうまく生成することの難しさである。プラスチック廃棄物リサイクルには、一般に、材料の洗浄および機械的再処理が含まれるが、しかしながら、得られたペレットは、依然、食物残渣、染料、および香料などの不純物で汚染されたままである。これらの不純物によって、ペレットは、性能および外観の両方に基づくと、ほとんどの使用に望ましくないものになっている。
【0008】
近年の進捗は、プラスチック廃棄物を、燃料源または商業的に重要な原料のような使用できる生成物に変換することに焦点を合わせてきたものである。プラスチック廃棄物流を熱分解し、次いで触媒による解重合を実施する方法が開発されて、様々な生成物、すなわち、ガス、ガソリン留分、灯油留分、ディーゼル油留分、およびワックスが生成されている。
【0009】
残念なことに、これらのプロセスは、ポリオレフィン廃棄物を有用なクラスの生成物まで完全に分解するには大量のエネルギーを必要とするため、多大な費用と時間を要する。さらに、熱分解条件下では、分枝状および芳香族生成物の形成を招く二次的な反応が起こることから、反応生成物自体が予測できない。触媒自体も、ポリマー供給原料中の不純物によって容易に作用を阻害される傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリマーのリサイクルにおいて進捗があるにもかかわらず、分枝状および/または芳香族生成物の形成を最少化する、プラスチックを有用な石油化学生成物に転換させる確固としたプロセスの開発が、常に求められている。
【0011】
本開示は、改良された、ポリオレフィン系材料を熱的に解重合させる方法を提供する。該改良された方法は、少なくとも1つの金属酸化物の存在下で、1つまたは複数のポリオレフィンを含む供給流を熱的に解重合させることに依る。具体的には、少量の1つまたは複数の金属酸化物が、解重合ユニット内でポリオレフィン系材料と混合され、酸素の非存在下で加熱される。金属酸化物(複数可)は、金属酸化物を用いない解重合反応に比べて低い温度で起こりうるラジカル解重合反応を開始させる。このラジカル解重合は、より低い運転温度において、分枝または芳香族形成が最少限である液体生成物の形成をもたらす。この液体生成物は、次いで、そのままで使用することができ、または、供給原材料を改良するために、例えばオレフィンクラッカー内で、さらなる処理にかけることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に記載の方法は、産業廃棄物および使用後の用途を含む、あらゆるポリオレフィン系材料の処理に使用することができる。使用済みポリオレフィン廃棄物の処理は、埋立てゴミ処理地の負荷が過剰となっていること、および該廃棄物から原料が生成される可能性があるという理由から、特に重要なものである。本明細書に記載の方法は、埋立てゴミ処理地の処理センターまたはその他のリサイクルセンターによって、使用済み廃棄物を選別してポリオレフィン系材料をガラス、セルロース(紙)、ポリビニルポリマーなどのその他の再利用可能な材料と分離した後の、使用済み廃棄物の処理に関する。
【0013】
本開示は、任意に組み合わせた(複数可)以下の実施形態のうちのいずれかを含む:
【0014】
ポリオレフィンを解重合させる方法であって、ポリオレフィン系供給流および少なくとも1つの金属酸化物を、最初の温度まで加熱された反応器に加えることと、該ポリオレフィン系供給流を該少なくとも1つの金属酸化物と反応させて、該ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含む方法。
【0015】
ポリオレフィンを解重合させる方法であって、ポリオレフィン系供給流および少なくとも1つの金属酸化物を、最初の温度まで加熱された反応器に加えることと、該ポリオレフィン系供給流を該少なくとも1つの金属酸化物と反応させて、該ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含み、該ポリオレフィン系供給流の解重合の開始温度が、該金属酸化物を用いない同じポリオレフィン系供給流の開始温度より5%低く、該ポリオレフィン系供給流の解重合の速度は、該金属酸化物を用いない同じポリオレフィン系供給流の解重合の速度より少なくとも10%高い、方法。
【0016】
少なくとも1つの金属酸化物が、SnO、FeO、CuO、MgO、TeO、NbO、MoO、MnO、TiO、WO、MoO、GeO、WO、AgO、Sb、Ga、Nb、CeO、V、Bi、Al、Er、In、B、PdO、Sb、Y、SnO、Fe、PtO、ZrO、またはそれらの組合せからなる群から選択される、前記方法のいずれか。別法として、少なくとも1つの金属酸化物は、WO、MgO、Al*TiO2、Sb、MoO、MoO、またはBiを含む群から選択される。
【0017】
少なくとも1つの金属酸化物が、酸化アルミニウムチタン(Al*TiO)である、前記方法のいずれか。
【0018】
ポリオレフィン系供給流が、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの組合せである、前記方法のいずれか。
【0019】
ポリオレフィン系供給流が、使用済み廃棄物である、前記方法のいずれか。
【0020】
ポリオレフィン系供給流が、産業廃棄物である、前記方法のいずれか。
【0021】
ポリオレフィン系供給流が、産業廃棄物および使用済み廃棄物の両方を含む、前記方法のいずれか。
【0022】
ポリオレフィン系供給流の解重合の速度が、金属酸化物を用いない同じポリオレフィン系供給流の解重合の速度より少なくとも10%高い、前記方法のいずれか。
【0023】
金属酸化物の存在下での解重合の速度が、前記金属酸化物を用いないポリオレフィン系供給流の解重合の速度より15%低い、前記方法のいずれか。
【0024】
ポリオレフィン系供給流の金属酸化物に対する比が、少なくとも5:1、または少なくとも20:1、または少なくとも50:1である、前記方法のいずれか。
【0025】
ポリオレフィン系供給流の解重合の開始温度が、金属酸化物を用いない同じポリオレフィン系供給流の開始温度より5%低い、前記方法のいずれか。
【0026】
本概要は、詳細な説明において下記でさらに説明する概念の選択の導入として示すものである。本概要は、特許請求される主題の重要なまたは必須の特徴を特定することを意図するものでも、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
該当なし。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義
本明細書で使用される場合、「開始温度」とは、液体生成物が実験室規模の解重合ユニット内で初めて観察される温度を意味する。「開始温度」の低下は、解重合反応の実施に必要なエネルギーの削減に転じるものである。この温度は、工業規模の解重合ユニットの運転温度と相互関連している。
【0029】
本明細書で使用される場合、「初留点」とは、熱的解重合によって生成した液体生成物の0.5wt%を蒸発させるのに必要な沸点を指す。
【0030】
「終点」またはFBPとは、熱的解重合によって生成した液体生成物の99.5wt%を蒸発させるのに必要な沸点を指す。終点によって、解重合流のためのクラッカーについての要件または優先度に加え、解重合流がさらなるプロセシングの実行を必要とするかどうかを予測することができる点で、解重合生成物の特性の観点から、終点は有用となりうる。1つまたは複数の金属酸化物系開始剤の付加に起因する終点の変化を用いて、特定の金属酸化物の組合せについて、解重合生成物中のより高い(またはより低い)分子量の化合物の増加/減少を予測することができる。より高い分子量の化合物はクラッカーのような下流プロセスに影響を与える傾向があるため、終点は低下することが望ましい。このように、FBPは、クラッカーのような、解重合生成物を処理する下流の装置の能力を決定し、特定の解重合生成物組成に対するクラッカー設定を予測するために使用することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「滞留時間」とは、解重合ユニット内でポリマー廃棄物の1つのバッチを解重合するのに必要な時間を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「解重合半減時間(depolymerization half time)」または「解重合の半減時間」という用語は、TGA熱分解反応の間で、特定の温度において試料の質量の50%減が達成されるのに必要な時間を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「熱分解」とは、酸素の非存在下で起こる熱的解重合反応を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「使用済み廃棄物」とは、材料の流れの末端消費者によって生み出された廃棄物の一種を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「産業廃棄物」とは、製品の生成プロセスの間に生み出された廃棄物の一種を指す。
【0036】
単語「a」または「an」の使用は、特許請求の範囲または本明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、文脈で特段の指示がない限り、1つまたは複数を意味する。
【0037】
「約」という用語は、記載された値プラスもしくはマイナス測定誤差限界、または、測定方法が示されていない場合は、プラスもしくはマイナス10%を意味する。
【0038】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示されていない限り、または代替物が相互に排他的である場合、「および/または」を意味するために使用される。
【0039】
「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(include)」、および「含有する(contain)」という用語(ならびにそれらの変形)は、非制限連結動詞であり、請求項において使用される場合、その他の要素の追加を許すものである。
【0040】
「からなる」という句は、限定的であり、すべての追加の要素を排除するものである。
【0041】
「から本質的になる」という句は、追加の材料要素を排除するものであるが、本発明の性質を実質的に変えることのない非材料要素の包含は認めるものである。
【0042】
以下の略語を、本明細書において使用する。
【表1】
【0043】
詳細な説明
本開示は、改良された、金属酸化物を使用してポリオレフィン系材料を商業的に重要な原料にリサイクルする方法を提供する。具体的には、解重合ユニット内で、少なくとも1つの金属酸化物が、少なくとも1つのポリオレフィン系材料を含むポリオレフィン系供給流と混合される。解重合ユニット内で熱分解反応が実施され、ここで、金属酸化物によってポリオレフィン系材料の解重合が開始されて、最少限の分枝または芳香族形成を有する使用可能な液体生成物が生成される。
【0044】
ポリオレフィンの熱的解重合を改良するために金属酸化物を使用することには、多くの利点がある。上述のように、金属酸化物は、リサイクルプロセスのための触媒ではない。むしろ、金属酸化物は、供給流中でのポリマーのラジカル解重合を促す開始剤として作用する。これによって、解重合の間の異性化反応が制限され、その結果、金属酸化物を用いず解重合させた同じ供給流から得られる生成物と同様の反応生成物の、より単純な混合物が得られる。よって、所与のポリマー供給流組成に対する反応生成物が容易に予測できる。
【0045】
金属酸化物の存在はまた、金属酸化物を用いない解重合と比べて、解重合ユニット内で液体生成物が初めて形成される開始温度(onset temperature)を低下させる。この結果、解重合ユニットの運転温度および解重合ユニット内でのポリオレフィン供給流の滞留時間の両方が低減され、これは、エネルギーコストの削減につながる。
【0046】
別の利点は、ポリオレフィン供給流の組成に対して、金属酸化物選択をカスタマイズしやすい点である。本明細書に記載の方法の金属酸化物はすべて、熱的解重合プロセスの改善を促進する一方で、改善の程度は、選択された金属酸化物とポリオレフィン供給原料の組成との間で様々でありうる。そのように、供給流中の様々な組合せのポリオレフィンを処理するために、金属酸化物の組合せを利用してもよい。このことは、使用済みポリオレフィン廃棄物を処理する場合、この種の廃棄物の組成は地域的にも季節的にも異なるため、特に重要である。しかしながら、使用される金属酸化物(複数可)にかかわらず、得られる解重合生成物は、金属酸化物を用いず解重合させたポリオレフィン廃水流と同様ものもとなる。
【0047】
結論としては、金属酸化物は、他の伝統的な解重合触媒と比べて、ポリマー供給流中の「触媒作用阻害物」による影響が少ないと思われる点で、確固たるものである。
【0048】
2~8族および11~16族からの金属ならびにランタノイドならびにアクチノイドを含有する酸化物を含む、任意の既知の金属酸化物が使用されうる。本方法において使用される金属酸化物の例としては、SnO、FeO、CuO、MgO、TeO、NbO、MoO、MnO、TiO、WO、MoO、GeO、WO、AgO、Sb、Ga、Nb、CeO、V、Bi、Al、Er、In、B、PdO、Sb、Y、SnO、Fe、PtO、ZrO、La、BaTiO、CaWO、またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、金属酸化物(複数可)は、WO、MgO、Al*TiO2、Sb、MoO、MoO、またはBiを含む群から選択されうる。本方法の一部の実施形態では、TiO、MoO、またはBiなどの非毒性金属酸化物を利用してもよい。他の実施形態では、熱分解後の還元型酸化物の金属性残渣が鋼鉄産業において使用できるため、選択される金属酸化物には、モリブデンが含まれていてもよい。
【0049】
本明細書に記載の方法は、任意の量の単一ポリオレフィン成分またはポリオレフィン成分の混合物を有する材料を含む供給流に適用することができる。これらに限定されないが、ポリエチレン(高密度および低密度の両方)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン-1、ポリイソブテン、およびそれらの共重合体を含む、あらゆるポリオレフィンが、供給流中に存在していてもよい。さらに、廃棄物は、何らかの特定の形態に限定されず、したがって、フィルム、発泡体、織物、またはその他の形状の材料が、該記載の方法によって処理されうる。
【0050】
選択された金属酸化物(複数可)と混合されたポリオレフィン系材料は、約200℃から約600℃の間の温度の解重合ユニット内で処理されることとなる。別法として、解重合ユニットの温度は、約225℃から約500℃の間となる。さらなる別法では、解重合ユニットの温度は、約250℃から約450℃の間となる。ポリオレフィン供給流を完全に解重合させるためには滞留時間が必要であることから、ポリオレフィン供給流は、解重合ユニット内でバッチで処理されることとなる。各バッチでの推定滞留時間は、解重合ユニットの伝熱性に応じて、約30分から約180分の間となる。別法として、推定滞留時間は、約60分である。
【0051】
金属酸化物は、解重合反応に対する開始剤として作用している間、バッチポリオレフィン供給流の20重量%未満の量が必要となる。別法としては、金属酸化物の量は、バッチポリオレフィン供給流の0超から5重量%の間、または2%から2.5%の間である。さらなる別法では、金属酸化物は、バッチポリオレフィン供給流の2%または2.5重量%の量で存在する。
【0052】
本開示の方法を、下記の実施例に関して例証する。ただし、これらは例示的であるに過ぎず、本発明は、いかなるポリオレフィン供給原料および金属酸化物の組合せにも広範囲に適用されうる。以下の実施例は、単に例示的であることが意図され、添付の特許請求の範囲を過度に限定するものではない。
【実施例
【0053】
以下の実施例には、添付の特許請求の範囲の実施形態を実証することが含まれる。当業者は、本明細書における本開示の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変更が可能であり、類似のまたは同様の結果を従前通り得ることが可能であることを理解するべきである。決して、以下の実施例を添付の特許請求の範囲を限定または規定するものと解釈するべきではない。
【0054】
ガラス反応器解重合
二つの口に熱電対および窒素注入口を備えた500mLの3つ口丸型ガラス反応器を使用して、単一ポリオレフィンを含む供給原料を用いた一連の実施例を解重合させた。ガラス反応器は、3つ目の口を介して、2つの油浴(Cryostat Julabo)を使用してそれぞれ110℃および-8℃に保った2つのガラス凝縮器と(直列に)接続した。ガラス反応器を、電気的に加熱するシステム(マントル槽)に配置し、所望の出力を設定し、550℃まで昇温した。解重合効率は、液体生成物の凝縮が凝縮器内で初めて観察された時点での反応混合物の温度(Tonset);(装入されたポリマーに対する)アイストラップ内で凝縮できる液体の収率(L%);および、金属酸化物を除く(かつ装入されたポリマーに対する)、反応器内の固体残渣の収率(S%)によって特性決定を行った。
【0055】
供給原料中の単一ポリオレフィンは、ポリプロピレン(グレードMoplen HP522H、LyondellBasell製品)とした。実施例では、30gのこのポリプロピレンを、0.8g(2.5重量%)の市販の金属酸化物、またはIbrahim 2017の手順に従って調製した酸化タングステン(WO)と混合した。熱分解反応からの液体生成物を、アイストラップ内で回収し、後述のように解析して、金属酸化物を用いない同じポリオレフィン供給原料の解重合によって形成された液体生成物と比較した。
【0056】
液体生成物の特性決定:アイストラップからの液体生成物を、ガスクロマトグラフィー(GC)、プロトンNMR(1H NMR)、およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データによって特性決定した。
【0057】
各解重合PP/金属酸化物混合物の液体生成物のGC分析は、標準的な無極性カラムおよび水素炎イオン化検出器を備えたAgilent 7890 GC(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して実施した。GCデータでは、x<nC7、nC7<x<nC11、nC12<x<nC28、x>C28の重量パーセントを使用して、液体生成物の特性決定を行った。
【0058】
NMRデータは、液体生成物中の芳香族系プロトン、パラフィン系プロトン、およびオレフィン系プロトンのパーセントの特性決定のために使用した。実施例は、CDClを付加して解析した(0.6gの解重合ポリマー/金属酸化物混合物および0.4gのCDCl)。データは、25℃で、5mm Prodigyプローブを用いて、Bruker AV500 MHz NMR分光計(Bruker Corporation、Billerica、MA)で収集した。一次元1H NMRデータは、指数関数的な線幅広幅化ウィンドウ関数を用いる、TOPSPIN(登録商標)ソフトウエア(Bruker)を使用して処理した。定量的測定は、正確な積分を容易にするために、15秒待ち時間、30°フリップ角パルス、および32スキャンを用いて実施した。芳香族系オレフィン系、およびパラフィン系プロトンのスペクトルの積分を得、これを使用してこれらのプロトンの相対比を定量化した。
【0059】
GPCは、ポリオレフィン分析専用の高温GPCであるGPC-IR(Polymer Char、Valencia、Spain)を使用して、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中での液体生成物の分子量および分子量分布(MWD)を測定するために使用した。このGPC-IRは、4個のPLgel Olexis混合床のカラムセット(Polymer Laboratories、Church Stretto、英国)およびIR5赤外線検出器(Polymer Char)を備えていた。カラムの寸法は300×7.5mmであり、その粒径13μmであった。移動相流量は、1.0ml/分で維持した。測定は、150℃で行った。溶液濃度は2.0mg/mL(150℃で)とし、分解を防ぐために、0.3g/Lの2,6-ジテルブチル-p-クレゾールを加えた。また、バイアルをN2雰囲気中で可溶化した。
【0060】
GPC計算のために、Polymer Char供給の12種類のポリスチレン(PS)標準規格品(266から1220000までの範囲のピーク分子量)を使用して、汎用較正曲線を得た。データの補間および関連較正曲線の取得には、三次多項式あてはめを使用した。データの取得および処理は、Empower 3(Waters、Milford、MA)を使用して行った。
【0061】
マーク-フウィンク関係式(固有粘度=K*(分子量))を使用して、分子量分布および関連平均分子量を決定した。PS(軟正)およびPPのK値は、それぞれ、KPS=1.21×10-4dL/g、およびKPP=1.90×10-4dL/gであり、一方、マーク-フウィンク指数は、PSではa=0.706、PPではa=0.725を使用した。
【0062】
結果:表1に、ガラス反応器内でのPP単独供給流の解重合による結果を示す。金属酸化物によって、この特定のポリマー供給原料の解重合における改善が促進された。
【表2】
【0063】
比較試料では、金属酸化物を何も用いずに熱分解を行った。解重合時間は、38分であった。対照的に、金属酸化物を用いた実施例はすべて、解重合時間を11%を超えて短縮させることができた。酸化アルミニウムチタン(Al*TiO)および酸化タングステン(WO)はどちらも、解重合時間を28分まで短縮させ、酸化マグネシウム(MgO)は、解重合時間を34分まで短縮させた。
【0064】
実施例2でのAl*TiOの組合せでは、比較試料と比較して、さらに大きな差異が生じた。この組合せは、開始温度を30℃低下させた。このことは、大規模解重合ユニットの場合、開始温度の低下は運転温度を低下に転じるものであり、滞留時間の短縮と組み合わせると、熱分解のためのエネルギーコストの削減を意味するため、有益である。液体生成物の組成については、生成物の分子量の減少が最大であったこと、C12~C28に対してC7~C11範囲の炭化水素の方が多く生成されたこと、ならびに>C28留分の減少など、さらなる差異がみられた。
【0065】
実施例3および4の金属酸化物は、液体凝縮の開始温度および生成物の平均分子量を低下させた。これらの金属酸化物は、開始温度を実施例2ほど低下させなかったものの、結果は供給原料依存的であった。すなわち、供給原料の組成の変更が、ラジカル解重合を助ける金属酸化物の能力に影響を与えることとなる。よって、WOおよびMgOは、違うポリオレフィンまたはそれらの組合せでは、同様に、開始温度を大幅に低下させうることが予想される。
【0066】
TGA解重合
ポリオレフィン供給原料組成の影響をさらに検討するために、解重合ユニットとして熱重量分析(TGA)を使用して、一連の混合ポリオレフィン供給流を処理した。供給原料は、HDPE(グレードACP9255、LyondellBasell製品)とポリプロピレン(グレードHP522、LyondellBasell製品)との1:1混合物からなった。4gのポリマー混合物を、2.5重量%(約0.1g)の量の市販のMoO、Bi、またはSbと、HAAK MiniCTW配合機中で、200Cおよび200RPMで5分間、溶融混合させて、均一な試料を調製した。
【0067】
TGA熱分解反応のために、この均一なHDPE/PPと金属酸化物との混合物を、Mettler Toledo TGA/DSC 3+(Mettler Toledo、Columbus、OH)内で、窒素下で、10K/分で所望の解重合温度まで加熱し、1時間維持した。この実施例では、400℃の解重合温度を使用した。特定の温度での解重合半減時間(質量の50%減に必要な時間と定義)は、値が60分未満であった場合は直に記録し、または一次分解反応速度論の仮定に基づき、t1/2=0.693/kとして決定した(式中、kは、Ln(C/C)対時間プロットを使用してグラフによって決定した一次速度定数である)。
【0068】
解重合半減時間は、大規模解重合ユニット内で必要とされる滞留時間と比例する。半減時間が短いほど、解重合ユニット内でのポリマー供給原料のバッチの滞留時間は短くなり、解重合速度は高くなる。この解重合プロセスの結果を、表2に示す。
【0069】
比較例2(Comp.Ex.2)は、金属酸化物を用いず解重合させた。Comp.Ex.2の解重合半減時間は、400℃で96分であった。金属酸化物の付加によって、このHDPE/PP供給原料の半減時間は短縮した。Biでは10%の短縮が得られ、半減時間は86分であった。MoOは、半減時間を約50%短縮させ(48分)、Sbは、半減時間を約37.5%短縮させた(60分)。このように、各金属酸化物は、解重合速度に対する改善を示すことができ、これは、より規模の大きな反応器内での解重合に必要な時間を、短縮に転じるものである。
【表3】
【0070】
遷移金属、ポスト遷移金属、ランタニド、および非金属を含むその他の金属酸化物は、HDPEとポリプロピレンとの1:1混合物の解重合の半減時間を、約10%~約60%短縮させると考えられる。
【0071】
Parr反応器解重合
HDPEとポリプロピレン供給原料との1:1混合物からなる一連の実施例もまた、Hastelloy Parr反応器を使用して解重合させた。4~8族および11~16族からの金属を含有する市販の金属酸化物を、これらの実施例が遷移金属、ポスト遷移金属、ランタニド、および非金属を含むように選択した。
【0072】
Parr反応器を使用する解重合のために、20gのポリマー供給原料を2.5重量%の金属酸化物と共に、11psig圧および100sccmの一定窒素流量の、閉じた125ml Parr反応器内に配置した。次いで、Parr反応器を、650℃に予熱した窯炉のホットゾーンに配置した。
【0073】
Parr反応器から出る蒸気をアイストラップ内で凝縮させて、分析用の液体生成物を作出した。解重合効率は、液体生成物の凝縮が初めて観察された時点の反応混合物の温度(Tonset);アイストラップ内で凝縮できる液体の収率(L%)、および触媒を除く、反応器内の固体残渣の収率(S%)によって特性決定を行った。
【0074】
液体生成物の特性決定:アイストラップからの液体生成物は、ガスクロマトグラフィー(GC)、Simulated Distillation(SimDist)、およびプロトンNMR(1H NMR)によって特性決定を行った。
【0075】
各解重合ポリマー/金属酸化物混合物の液体生成物のGC分析は、標準的な無極性カラムおよび水素炎イオン化検出器を備えた、Agilent 7890 GC(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して実施した。C2~C4、C5、C6、C7、C8、C9以上、直鎖状α-オレフィン、n-パラフィン、ならびにC6~C8芳香族(共溶出による)の重量パーセントを使用して、液体生成物の特性決定を行った。
【0076】
ASTM D7213(「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Distillates in the Boiling Range from 100℃ to 615℃ by Gas Chromatography(ガスクロマトグラフィーによる、100℃から615℃までの沸騰範囲における石油蒸留物の沸騰範囲分布の標準試験方法)」)に従ったSimDistを使用して、解重合した液体生成物の実際の沸点分布を迅速かつ正確に決定した。Agilent 6980 GC(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して、0.5wt%気化時の初留点から99.5wt%気化時の終点までの間の、一連の沸騰範囲について、気化した解重合ポリマー/金属酸化物混合物の重量パーセントに基づきSimDistデータを収集した。
【0077】
NMRデータを使用して、液体生成物中の芳香族系プロトン、パラフィン系プロトン、およびオレフィン系プロトンのパーセントの特性決定を行った。実施例は、CDClを付加して解析した(0.6gの解重合ポリマー/金属酸化物混合物および0.4gのCDCl)。データは、25℃で、5mm Prodigyプローブを用いて、Bruker AV500 MHz NMR分光計(Bruker Corporation、Billerica、MA)で収集した。一次元1H NMRデータは、指数関数的な線幅広幅化ウィンドウ関数を用いる、TOPSPIN(登録商標)ソフトウエア(Bruker)を使用して処理した。定量的測定は、正確な積分を容易にするために、15秒待ち時間(NMR)、30°フリップ角パルス、および32スキャンを用いて実施した。芳香族系オレフィン系、パラフィン系プロトンのスペクトルの積分を得、これを使用してこれらのプロトンの相対比を定量化した。
【0078】
すべての金属酸化物がこの特定のポリマー供給原料の解重合を改善した一方で、一部の金属酸化物が、開始温度を他の金属酸化物より大きな程度で低下させることができたことが見出された。これらの実施例について、開始温度を約5%以上低下させた金属酸化物を、この特定のポリマー試料に対して「活性」と判断した。違うポリマー供給原料混合物の使用によって、一部のまたはすべての代替金属酸化物が開始温度の5%以上の低下をもたらす可能性がある。
【0079】
表3に、「代替」金属酸化物(Alt.)と混合したHDPE/PPポリマー供給原料の1:1混合物の結果を示し、表4に、「活性」金属酸化物(Act.)の結果を示す。
【0080】
比較例3は、金属酸化物を用いず解重合させており、その結果、、蝋質液体となり、430℃の開始温度および503℃のFBP(99.5%気化)であった。この液体生成物は、金属酸化物を付加すると、触媒活性にかかわらず、透明な黄色の液体に変化した。しかしながら、表3および表4に示したように、金属酸化物のすべてが、開始温度もしくはFBPまたは両方を低下させてはいなかった。
【0081】
上記の説明のように、代替例4~11では、比較例3と比して5%以上の開始温度の低下はなかった。しかしながら、Alt.例4および10などのこれらの金属酸化物の一部は、終点を約20℃低下させた。終点の低下は、その先でさらに処理されることとなる液体生成物がより良好な生成物特性をもつという指標である。具体的には、終点がより低いことは、解重合流中に、クラッカーとなる窯炉を汚染する傾向があるより重い化合物がより少ないことを指す。従ってそのように、金属酸化物開始剤を用いていない実施例と比較した場合、クラッカーは、汚染物が最少限であるこれらの解重合流を容易に処理することができることとなる。
【表4】
【0082】
代替例とは対照的に、表4の活性例は、開始温度を30~100℃低下させることができ、これは、5%低下カットオフ値を超えるものであった。開始温度の低下にもかかわらず、終点は、比較例3と比べて有意に変わっていなかった。
【0083】
よって、表3および表4の両方で、すべての金属酸化物について、解重合の改善を例証し、様々な酸化物が、ポリマー供給原料の解重合にどのように影響を与えうるのかを示す。活性例に関連したより低い開始温度は、解重合プロセスを実施するためのエネルギー要件がより低いことを裏付けている。活性および代替の両例によって生じたより低い終点は、より重い化合物の量がより少ないことを意味し、これは、下流の処理のためにより望ましい生成物に転じることである。このより重い化合物の減少は、すべての金属酸化物が、金属酸化物の非存在下で生成される蝋質生成物ではなく、液体生成物の生成をもたらしたことで、視覚的に確認された。
【表5】
【0084】
本実施例に基づくと、金属酸化物を用いる混合ポリオレフィン供給原料の解重合の開始温度は、金属酸化物を用いない解重合と比べて、少なくとも5%低下されうる。これは、解重合ユニット内での温度および滞留時間の低減に転じることである。さらに、金属酸化物は、SimDistデータにより決定された終点データの低下によって確認されたように、液体生成物中のより重い化合物の量を減少させることができた。この結果、ポリオレフィンの処理はより費用効果が高く迅速なものとなり、下流処理のために改善された生成物が得られる。
【0085】
さらに、金属酸化物の選択をポリオレフィン供給原料の組成に対してカスタマイズして、改善された解重合の結果を得ることができる。例えば、Al*TiOは、PP流を処理するのに必要な開始温度を、MgOまたはWOより大幅に低下させる。しかしながら、PE単独流またはPE/PP混合流では、実際はこの反対である可能性もある。
【0086】
金属酸化物の影響がポリオレフィン供給原料の組成に伴いどのように変化しうるのかをさらに例証するために、一連のTGA熱分解反応を、3つの異なるポリオレフィン流および2つの異なる金属酸化物について実施した。各実施例のTGA解重合半減時間を、表5に示す。
【表6】
【0087】
金属酸化物はどちらも、金属酸化物を使用しなかった実施例と比べて、解重合半減時間を短縮させることができており、これは、反応器内での解重合速度をより高く転じるものである。しかしながら、解重合半減時間のこの短縮は、各ポリオレフィンについて同じではなかった。Sbは、HDPE流の解重合半減時間を、165まで(約40%低下)短縮させた。しかしながら、HDPE/PP流の解重合半減時間は、約35%の短縮であった。同様に、Biは、はHDPE流の解重合半減時間を約35%短縮させたが、HDPE/PP流およびPP流では約10%以下の短縮が観察された。
【0088】
ポリプロピレン供給原料の一連の実施例もまた、Hastelloy Parr反応器を使用して解重合させた。Parr反応器を使用する解重合では、20gのポリマー供給原料を2.5重量%の金属酸化物と共に、11psigの圧力および100sccmの一定窒素流量の、閉じた125ml Parr反応器内に配置した。次いで、Parr反応器を、650℃に予熱した窯炉のホットゾーン内に配置した。Parr反応器から出る蒸気をアイストラップ内で凝縮させて、分析用の液体生成物を作出した。解重合効率を、液体生成物の凝縮が初めて観察された時点での反応混合物の温度(Tonset);アイストラップ内で凝縮できる液体の収率(L%)、および、触媒を除く、反応器内での固体残渣の収率(S%)によって特性決定を行った。
【0089】
表6に、モル比1:1の2つの金属酸化物と混合したPPポリマー供給原料の結果を示す。比較例4は、金属酸化物を用いず解重合させており、その結果は、345℃の開始温度および180分の解重合時間であった。
【表7】
【0090】
比較例4とは対照的に、表6の実施例12は、開始温度を60℃低下させ、液体収率を改善し、オレフィン系および芳香族と同様の分布を有するパイロライトオイル中の高分子量成分を低減させることができた。
【0091】
本明細書に記載の、ポリオレフィン流の解重合のための開始剤として1つまたは複数の金属酸化物を使用する方法は、金属酸化物を使用しない方法と比べて、より低いエネルギー効率(すなわち、より費用効果の高い)を実現することができる。さらに、金属酸化物開始剤は、予測可能な、かつより単純な反応生成物の混合物の生成を可能にするものであり、このことは、反応生成物流のさらなる処理がもしあれば、その決定において一助となるものである。
【0092】
以下の参考文献は、全体として参照により組み込まれる。
【0093】
ASTM D7213(「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Distillates in the Boiling Range from 100℃ to 615℃ by Gas Chromatography」)、ASTM International、West Conshohocken、PA、2015、
【0094】
Ibrahim,Akram AMら「Facile synthesis of tungsten oxide-bismuth vanadate nanoflakes as photoanode material for solar water splitting.」International Journal of Hydrogen Energy 42.5(2017):3423~3430。