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特許7325628基地局と端末との間でデータの伝送を行う方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】基地局と端末との間でデータの伝送を行う方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/22 20090101AFI20230804BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20230804BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20230804BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20230804BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20230804BHJP
【FI】
H04W40/22
H04W16/28
H04W40/02 130
H04W40/12 110
H04W4/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022527478
(86)(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020038412
(87)【国際公開番号】W WO2021075390
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】19203186.2
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】リ、キャンルイ
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【審査官】本橋 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-543163(JP,A)
【文献】特表2018-519722(JP,A)
【文献】3GPP TR 38.874 V16.0.0 (2018-12),2019年01月10日
【文献】SA WG2,New WID: Architecture enhancement for the support of IAB,3GPP TSG SA Meeting #85 SP-190627,2019年08月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と端末との間でデータの伝送を行う方法であって、前記端末はマルチホップネットワークに含まれ、前記基地局はビームフォーミングを使用して前記マルチホップネットワークのエントリーポイントと通信することができ、前記方法は、
前記マルチホップネットワークの各エントリーポイントについて、前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントと前記端末との間の前記マルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値を前記マルチホップネットワークから取得することと、
前記第1の性能指数の値とは独立に、前記基地局と前記マルチホップネットワークとの間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を計算することであって、前記基地局と前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントとの間の伝送の既定の候補構成の中の各候補構成について前記第2の性能指数の1つの値が計算されることと、
前記第1の性能指数の値と前記第2の性能指数の値とを組み合わせた第3の性能指数の値を計算することであって、前記第3の性能指数は、前記基地局と前記端末との間の伝送性能を表すことと、
前記基地局によって、前記第3の性能指数の最良値を示す候補構成をデータの伝送を行うために選択することと、
前記マルチホップネットワークの選択されたエントリーポイントを介し、選択された候補構成を適用することによって、データの伝送を行うことと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記各候補構成は、
前記マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、ビームフォーミング構成の既定のセットの中の前記基地局のビームフォーミング構成とによって形成される対、又は、
前記マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、前記基地局の既定のビームフォーミング構成を適用することによる信号伝播方向とによって形成される対、又は、
前記マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、前記基地局の既定のビームフォーミング構成を適用することによって対象の前記データの伝送を行うことができる時点とによって形成される対、
である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の性能指数の値は、前記基地局と前記マルチホップネットワークとの間の伝送チャネル容量に依存する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の性能指数の値は、前記基地局と前記マルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシーに依存する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の性能指数の値は、一方において前記基地局及び少なくとも1つの隣接する基地局と、他方において前記マルチホップネットワークとの間の達成可能なスループットに依存する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の性能指数の値は、一方において前記基地局及び少なくとも1つの隣接する基地局と、他方において前記マルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシーに依存する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の性能指数の値は、前記第1の性能指数の値が関連付けられている前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントと、前記端末との間の伝送レイテンシーを表す、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の性能指数の値は、前記第1の性能指数の値が関連付けられている前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントと、前記端末との間の達成可能なスループットを表す、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記マルチホップネットワークは所定の軌道上を移動し、前記第2の性能指数の値は、前記所定の軌道上の位置と前記マルチホップネットワークの速度とに依存する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記マルチホップネットワークは列車に設置され、前記列車の各車両は、前記マルチホップネットワークの1つのノードデバイスを組み込み、前記ノードデバイスは、前記ノードデバイスを組み込んでいる前記車両の前部及び後部にそれぞれ配置された2つのアンテナを装備する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、前記プログラムコード命令は、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体であって、前記プログラムコード命令が前記非一時的情報記憶媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、前記プログラムコード命令は、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行する、非一時的情報記憶媒体。
【請求項13】
基地局と端末との間でデータの伝送を行うシステムであって、前記端末はマルチホップネットワークに含まれ、前記基地局はビームフォーミングを使用して前記マルチホップネットワークのエントリーポイントと通信することができ、前記システムは、
前記マルチホップネットワークの各エントリーポイントについて、前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントと前記端末との間の前記マルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値を前記マルチホップネットワークから取得する手段と、
前記第1の性能指数の値とは独立に、前記基地局と前記マルチホップネットワークとの間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を計算する手段であって、前記基地局と前記マルチホップネットワークの前記エントリーポイントとの間の伝送の既定の候補構成の中の候補構成ごとに前記第2の性能指数の1つの値が計算される、手段と、
前記第1の性能指数の値と前記第2の性能指数の値とを組み合わせた第3の性能指数の値を計算する手段であって、前記第3の性能指数は、前記基地局と前記端末との間の伝送性能を表す、手段と、
前記基地局によって、前記第3の性能指数の最良値を示す候補構成をデータの伝送を行うために選択する手段と、
前記マルチホップネットワークの選択されたエントリーポイントを介し、選択された候補構成を適用することによって、データの伝送を行う手段と、
を備えることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、マルチホップネットワークを介して基地局と端末との間で伝送を行うことに関する。ここで、基地局は、マルチホップネットワーク内でデータを中継するマルチホップネットワークのエントリーポイントとの無線伝送を使用することによって、マルチホップネットワークを通じてダウンリンク通信及び/又はアップリンク通信を行う。
【背景技術】
【0002】
マルチホップネットワークは、伝送距離を増加させるためにリレーを使用するネットワークである。そのため、マルチホップ中継は、マルチホップネットワークを形成するために、空間的に分散された相互接続されているノードデバイスを使用するカバレッジ拡張技術である。例えば、ミリ波無線通信では、マルチホップ中継は、高い伝播損失、遮断及び移動感度への対策として有効である。例えば、そのようなマルチホップネットワークは、メッシュトポロジーネットワークであり、相互接続されたノードデバイスのうちの少なくともいくつかの間でマルチパス機能を提供する。別の例では、そのようなマルチホップネットワークは、線形トポロジーネットワークである。
【0003】
マルチホップネットワークの一使用例としては、線形トポロジーを有するものであり、列車に搭載された少なくとも1つの端末とのデータ交換が挙げられる。例えば、そのような端末は、列車をリモートで動作させるように、又は列車の動作を支援するように適合された制御機械である。別の例では、そのような端末は、旅行情報を乗客に提供する車内表示画面である。更に別の例では、そのような端末は、乗客ウェブブラウジングデバイスである。更に別の例では、そのような端末は、列車内のビデオ監視を可能にするビデオカメラである。基地局は、車内端末をリモートサーバと通信させるために線路に沿って存在する。車両には、基地局と通信することが可能であり、その結果、車内端末との通信を確保するために、メッシュトポロジーネットワークのマルチパスを使用する、いくつかのノードデバイスを含むマルチホップネットワークが装備されている。基地局と通信することが可能なノードデバイスは、その場合に、マルチホップネットワークへのエントリーポイントとして機能する。列車の長さを考慮すると、線形トポロジーを有するそのようなマルチホップネットワークを使用することによって、通信距離を増加させることが可能になり、したがって、線路に沿って配備された基地局同士の間の距離を増加させることが可能になる。その上、伝送利得を高めるとともに干渉を緩和するために、静的ビームフォーミング又は動的ビームフォーミングを使用することができる。したがって、基地局と車内端末との間の通信の性能を高めるには、マルチホップネットワークのエントリーポイントを適切に選択し、それに応じて基地局を適切に構成することが望まれる。
【0004】
マルチホップネットワークの別の使用例としては、メッシュトポロジーを有するものであり、ロボットをリモートで制御するサーバ、又は中央ユニットを使用することによる製造現場のロボットを制御することが挙げられる。サーバ、又は中央ユニットは、ロボットが接続されるメッシュトポロジーネットワークの複数のノードデバイスと通信することができる基地局に接続される。サーバ、又は中央ユニットは、したがって、コマンドをロボットに送信し、ロボットに関連付けられたセンサから監視情報を受信するために、基地局及びメッシュトポロジーネットワークを使用する。メッシュトポロジーネットワークは、基地局と通信することが可能であるとともに、ロボット及びセンサとの通信を確保するためにメッシュトポロジーネットワークのマルチパス能力を使用する、いくつかのノードデバイスを含む。基地局は、基地局と通信することが可能であり、したがって、伝送利得を高めるとともに干渉を緩和することが可能である上記ノードデバイスのうちの1つ以上をターゲットとするために、動的ビームフォーミングを使用する。基地局と通信することが可能なノードデバイスは、その場合に、マルチホップネットワークへのエントリーポイントとして機能する。したがって、基地局とロボット及び/又はセンサとの間の通信の性能を高めるには、マルチホップネットワークのエントリーポイントを適切に選択し、それに応じて基地局を適切に構成することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
そのために、本発明は、基地局と端末との間でデータの伝送を行う方法であって、端末はマルチホップネットワークに含まれ、基地局はビームフォーミングを使用してマルチホップネットワークのエントリーポイントと通信することができ、方法は、マルチホップネットワークの各エントリーポイントについて、マルチホップネットワークのエントリーポイントと端末との間のマルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値をマルチホップネットワークから取得することと、第1の性能指数の値とは独立に、基地局とマルチホップネットワークとの間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を計算することであって、基地局とマルチホップネットワークのエントリーポイントとの間の伝送の既定の候補構成の中の候補構成ごとに第2の性能指数の1つの値が計算されることと、第1の性能指数の値と第2の性能指数の値とを組み合わせた第3の性能指数の値を計算することであって、第3の性能指数は、マルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能と、基地局及びマルチホップネットワークの間の伝送性能との間のトレードオフを表すことと、基地局と端末との間の伝送性能に従って第3の性能指数の最良値を示す候補構成をデータの伝送を行うために選択することと、マルチホップネットワークの選択されたエントリーポイントを介し、選択された候補構成を適用することによって、データの伝送を行うこととを含む、方法に関する。
【0006】
したがって、マルチホップネットワークのエントリーポイントの選択及び基地局の適切な構成の選択は、マルチホップネットワークを介した基地局と端末との間の通信の性能を高めるために併せて検討される。マルチホップネットワークを通るルーティングの性能指数と、これとは独立に基地局とマルチホップネットワークのエントリーポイントとの間の伝送の別の性能指数とを使用することによって、マルチホップネットワークのエントリーポイントの選択及び基地局の適切な構成の選択が大幅に容易になる。
【0007】
特定の実施の形態によれば、各候補構成は、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、ビームフォーミング構成の既定のセットの中の基地局のビームフォーミング構成とによって形成される対、又は、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、基地局の既定のビームフォーミング構成を適用することによる信号伝播方向とによって形成される対、又は、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、基地局の既定のビームフォーミング構成を適用することによって対象のデータの伝送を行うことができる時点とによって形成される対である。
【0008】
特定の実施の形態によれば、第2の性能指数の値は、基地局とマルチホップネットワークとの間の伝送チャネル容量に依存する。
【0009】
特定の実施の形態によれば、第2の性能指数の値は、基地局とマルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシーに依存する。
【0010】
特定の実施の形態によれば、第2の性能指数の値は、一方において基地局及び少なくとも1つの隣接する基地局と、他方においてマルチホップネットワークとの間の達成可能なスループットに依存する。
【0011】
特定の実施の形態によれば、第2の性能指数の値は、一方において基地局及び少なくとも1つの隣接する基地局と、他方においてマルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシーに依存する。
【0012】
特定の実施の形態によれば、第1の性能指数の値は、第1の性能指数の値が関連付けられているマルチホップネットワークのエントリーポイントと、端末との間の伝送レイテンシーを表す。
【0013】
特定の実施の形態によれば、第1の性能指数の値は、第1の性能指数の値が関連付けられているマルチホップネットワークのエントリーポイントと、端末との間の達成可能なスループットを表す。
【0014】
特定の実施の形態によれば、マルチホップネットワークは所定の軌道上を移動し、第2の性能指数の値は、所定の軌道上の位置とマルチホップネットワークの速度とに依存する。
【0015】
特定の実施の形態によれば、マルチホップネットワークは列車に設置され、列車の各車両は、マルチホップネットワークの1つのノードデバイスを組み込み、各ノードデバイスは、ノードデバイスを組み込んでいる車両の前部及び後部にそれぞれ配置された2つのアンテナを装備する。
【0016】
本発明は、基地局と端末との間でデータの伝送を行うシステムであって、端末はマルチホップネットワークに含まれ、基地局はビームフォーミングを使用してマルチホップネットワークのエントリーポイントと通信することができ、システムは、マルチホップネットワークの各エントリーポイントについて、マルチホップネットワークのエントリーポイントと端末との間のマルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値をマルチホップネットワークから取得する手段と、第1の性能指数の値とは独立に、基地局とマルチホップネットワークとの間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を計算する手段であって、基地局とマルチホップネットワークのエントリーポイントとの間の伝送の既定の候補構成の中の候補構成ごとに第2の性能指数の1つの値が計算される、手段と、第1の性能指数の値と第2の性能指数の値とを組み合わせた第3の性能指数の値を計算する手段であって、第3の性能指数は、マルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能と、基地局及びマルチホップネットワークの間の伝送性能との間のトレードオフを表す、手段と、基地局と端末との間の伝送性能に従って第3の性能指数の最良値を示す候補構成をデータの伝送を行うために選択する手段と、マルチホップネットワークの選択されたエントリーポイントを介し、選択された候補構成を適用することによって、データの伝送を行う手段とを含む、システムにも関する。
【0017】
本発明は、前述の方法をその実施の形態のうちのいずれか1つにおいて実行するマイクロプロセッサ等の処理デバイスが読み出して実行することができるプログラムコード命令を含む、通信ネットワークからダウンロードすることができ及び/又は非一時的情報記憶媒体に記憶することができるコンピュータプログラムにも関する。本発明は、そのようなコンピュータプログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体にも関する。
【0018】
本発明の特徴は、実施形態の少なくとも1つの例の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面を参照して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施することができる第1の脈路を模式的に表す図である。
図2図1に描かれた第1の脈路の使用例を模式的に表す図である。
図3】本発明を実施することができる第2の脈路を模式的に表す図である。
図4図3に描かれた第2の脈路の使用例を模式的に表す図である。
図5】第1の脈路又は第2の脈路において、基地局と端末との間でデータの伝送を行うアルゴリズムを模式的に表す図である。
図6】第1の脈路又は第2の脈路において使用される通信デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を模式的に表す図である。
図7】ビームフォーミング構成の複数の信号伝播方向の一例を模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明を実施することができる第1の脈路を模式的に表している。第1の脈路では、通信システムは、基地局BS110と、マルチホップネットワーク120とを含む。マルチホップネットワーク120は、メッシュトポロジーを形成するようにリンク160によって相互接続された複数のノードデバイスN1、N2、N3、N4、N5、N6 150を備える。リンク160は、有線リンク又は無線リンクとすることができる。
【0021】
ノードデバイスN1、N2、N3、N4、N5、N6 150のうちの少なくともいくつかは、適切な電波伝播条件が満たされているときに基地局BS110と通信できるように無線インターフェースを含む。基地局BS110の立場からすると、基地局BS110と通信可能なノードデバイス150は、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントとして機能する。少なくとも1つの端末T1、T2、T3 130はマルチホップネットワーク120に接続される。したがって、マルチホップネットワーク120によって、上記少なくとも1つの端末T1、T2、T3 130は、基地局BS110と通信することが可能になる。
【0022】
マルチホップネットワーク120への適切なエントリーポイントを選択するために、基地局BS110は、動的ビームフォーミング111を使用する。これは、指向性信号送信及び/又は受信用にセンサアレイを動的に構成することに依存する、よく知られた信号処理技法である動的ビームフォーミング111は、基地局BS110と通信することが可能であり、したがって、伝送利得を高めるとともに干渉を緩和することが可能である上記ノードデバイス150のうちの1つを特にターゲットにするために使用される。マルチホップネットワーク120への適切なエントリーポイントを選択することは、以下で詳述するように、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数を考慮するものである。
【0023】
第1の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、伝送チャネル容量に従って求められる。基地局BS110と通信可能なノードデバイス150は、チャネル状態情報CSIを求め、基地局BS110によって使用可能な候補ビーム構成ごとに、例えば専用タイムスロットにおいて、求められたチャネル状態情報CSIを基地局BS110にフィードバックする。これを行うために、基地局BS110は、基地局BS110によって使用可能な各候補ビーム構成を使用することによってパイロット信号を定期的に送信する。専用タイムスロットは、基地局BS110が、基地局BS110と、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150との間の干渉の変化(出現、消滅等)又は電波伝播条件のシャドーイング効果を考慮に入れることを可能にするために、この目的のために使用することができる。5G伝送技術(LTE-B技術とも呼ばれる)に関して、基地局BS110は、ビームフォーミングされた基準信号(RS:reference signal)を定期的に送信することと、その結果として、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150からビーム測定報告を更に受信することとによって、ビーム管理手順を実行する。したがって、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントについて、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数の値を計算することができる。マルチホップネットワーク120のエントリーポイントが、基地局BS110からの異なった信号伝播方向に関連付けられていることを考慮し、また、基地局BS110とマルチホップネットワーク120のエントリーポイントのうちの任意の1つとの間の信号伝播が、異なるビームフォーミング構成とともに変動することも知っていると、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の選択されたエントリーポイントと、選ばれた動的ビームフォーミング構成との組み合わせごとに、基地局BS110と上記マルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数の値を計算することができる。
【0024】
第2の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送レイテンシーの考察に従って求められる。伝送レイテンシーは、伝送チャネル容量、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間で転送される全情報量、及びマルチホップネットワーク120の各エントリーポイントのバッファの充填状態に基づいて計算することができる。伝送チャネル容量Cは、第1の実施形態に関して説明した方法と同じ方法を用いて値を求めることができる。伝送される全情報量Sは、基地局BS110において既知である。バッファの充填状態tは、検討対象のノードデバイス150が、そのバッファ内のパケットの送信を終了し、基地局BS110からの情報の受信を開始するために必要とする余分の遅延である。ノードデバイス150のそれぞれは、そのバッファ状態tを監視し、この情報を、或る特定のアップリンクタイムスロットを使用して周期的に基地局BS110に送信することが可能である。基地局BS110が、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントとしての機能する第i(iはマルチホップネットワーク120のエントリーポイントを識別するインデックスである)のノードデバイス150の伝送チャネル容量Cと、全情報量Sと、バッファ状態tとについての情報を取得すると、基地局BS110は、レイテンシー値T=t+S/C、すなわち、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントとしての機能する第iのノードデバイス150と或る特定のビームフォーミング構成とを使用するときの基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数の値を計算することができる。
【0025】
協調基地局に関連した第3の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、一方において基地局BS110及び少なくとも1つの隣接する基地局(通常、基地局BS110の電波範囲と重複する電波範囲を有する1つ以上の基地局)と、他方においてマルチホップネットワーク120との間の達成可能なスループットに従って求められる。この第3の実施形態において、2つのサブケースを区別することができる。
【0026】
第1のサブケースは、基地局BS110を含む複数の基地局が協調ビームフォーミングを行うケースである。この第1のサブケースでは、達成可能なスループットは、複数の基地局の各基地局とマルチホップネットワーク120との間の個々のスループットの和として計算することができる。個々のスループットの計算は、第1の実施形態において説明した伝送チャネル容量計算と同様である。主な相違は、基地局BS110を含む複数の基地局が同時に送信を行うので、1つの基地局から送信された信号がその他の基地局への干渉信号として見られることである。したがって、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150は、例えば専用アップリンクタイムスロットにおいて干渉情報を基地局BS110にフィードバックすることが更に可能である。これを行うために、基地局BS110は、パイロット信号を定期的に送信する。専用ダウンリンクタイムスロットは、基地局BS110が、基地局BS110と、この基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150との間の電波伝播条件における干渉の変化(出現、消滅等)を考慮に入れることを可能にするために、この目的のために使用することができる。5G伝送技術(LTE-B技術とも呼ばれる)に関して、基地局BS110は、チャネル状態情報-干渉測定(CSI-IM:Channel State Information - Interference Measurement)リソースを使用して定期的に送信を行うことと、さらに基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150から干渉測定報告を結果として受信することとによって干渉測定を行う。逆方向において、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントから信号を受信するときに干渉を測定することができ、したがって、干渉を考慮に入れて、対応する達成可能なスループット、すなわちlog(1+SINR)を推定することができる。ここで、SINRは信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)を表す。基地局BS110は、通常、各隣接する基地局と干渉情報を共有し、その逆も同様である。したがって、基地局BS110は、干渉値、すなわち、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントとしての機能を果たすそのようなノードデバイス150と或る特定のビームフォーミング構成とを使用するときの基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数の値を計算することができる。
【0027】
第2のサブケースは、基地局BS110を含む複数の基地局が多入力多出力(MIMO)伝送システムを形成し、多地点協調(CoMP)伝送を行うケースである。この第2のサブケースでは、達成可能なスループットは、MIMO CoMP伝送システムのスループットである。第1の実施形態における説明と同様に、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150がチャネル状態情報CSIを求め、この求められたチャネル状態情報CSIを基地局BS110にフィードバックする。第1の実施形態との相違は、関係している各基地局BS110が伝送性能の性能指数の値を独立して計算するのではなく、基地局BS110を含む基地局が、求められたチャネル状態情報CSIを中央ユニットに送信し、中央ユニットがCoMP伝送システムの達成可能なスループット、すなわち、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントとしての機能を果たすそのようなノードデバイス150と或る特定のビームフォーミング構成とを使用するときの、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数の値を計算することである。
【0028】
協調基地局に関連した第4の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能が、一方において基地局BS110及び少なくとも1つの隣接する基地局(通常、基地局BS110の電波範囲と重複する電波範囲を有する基地局)と他方においてマルチホップネットワーク120との間の伝送のレイテンシーに従って求められる。この伝送のレイテンシーは、伝送スループットと、基地局BS110からマルチホップネットワーク120への全情報量と、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントのバッファの充填状態とに基づいて計算することができる。第3の実施形態の場合と同様に、この第4の実施形態でも、2つのサブケースを区別することができる。
【0029】
第1のサブケースは、基地局BS110を含む複数の基地局が協調ビームフォーミングを行うケースである。このサブケースでは、伝送のレイテンシーは、複数の基地局とマルチホップネットワーク120との間の伝送のレイテンシーの中の最大レイテンシーである。基地局BS110を含む複数の基地局とマルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシー計算の詳細な内容は、第2の実施形態と、第3の実施形態の第1のサブケースとを参照することができる。
【0030】
第2のサブケースは、関係している基地局BS110が多地点協調(CoMP)伝送を行うケースである。CoMP伝送システムとマルチホップネットワークとの間の伝送のレイテンシー計算の詳細な内容は、第2の実施形態と、第3の実施形態のサブケース2とを参照することができる。
【0031】
特定の実施形態において、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、図1に関連して上記で開示した第1の実施形態~第4の実施形態に関して上記で定義した基準の組み合わせを使用して評価することができる。
【0032】
その上、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150のうちの少なくとも1つは、端末T1、T2、T3 130の中のいずれかの端末と通信するために、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントについて、マルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能を表す別の性能指数の値を基地局BS110に送信する。マルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能を表す性能指数は、本明細書において第1の性能指数と呼ばれる。この第1の性能指数の値は、上記計算された値を基地局BS110に送信するノードデバイスとは別のノードデバイス150が計算することができる。第1の性能指数の値は、第1の性能指数の値が、基地局BS110と対象の端末T1、T2、T3 130との間で伝送されるデータが関連付けられているサービスタイプ(ベストエフォート、ビデオストリーミング、オーディオストリーミング等)に依存し得ることを意味する、サービスに関連したものとすることができる。マルチホップネットワーク120が、(例えば、パケットヘッダーのサービスクラス(CoS:class-of-service)フィールドに依存することによって)サービスベースのルーティングを提供するとき、マルチホップネットワーク120は、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントについて、マルチホップネットワーク120が取り扱うことができるサービスタイプの量と同数の第1の性能指数の値を提供する。
【0033】
基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す性能指数は、本明細書において第2の性能指数と呼ばれる。
【0034】
次に、第1の性能指数の値と第2の性能指数の値との組み合わせの値は、端末T1、T2、T3 130の中のいずれかの端末と基地局BS110との間のデータの伝送を行うために、どのビームフォーミング構成と、マルチホップネットワーク120へのどのエントリーポイントとを適用するのが最良であるのかを判断するために、本明細書において第3の性能指数と呼ばれる組み合わせ性能指数によって、基地局BS110で評価される。第3の性能指数は、したがって、マルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能と、基地局BS110及びマルチホップネットワーク120の間の伝送性能との間のトレードオフを表す。このように、マルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能及び基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、上述したように基地局BS110によって非同期に取得することができるとともに独立して管理することができる第1の性能指数及び第2の性能指数によってそれぞれ個別に扱われるので、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120における有効なルーティングの細部を認識する必要はなく、マルチホップネットワーク120へのどのエントリーポイントを、動的ビームフォーミング111のどの構成とともにターゲットにしなければならないのかを判断することができる。
【0035】
図2は、図1に描写される第1の脈路の使用例を模式的に表している。端末T1、T2、T3 130は製造プラントのロボットである。マルチホップネットワーク120のノードデバイス150は、ロボット及び場合によってはロボットに関連付けられたセンサを相互接続し、基地局BS110からマルチホップネットワーク120へのアクセスを更に提供する。基地局BS110を使用することによって、中央ユニットCU170は、センサによって提供される情報によってロボットを制御することができるとともに、場合によってはロボットの動作を監視することができる。
【0036】
マルチホップネットワーク120は、コンピュータ131等の他のデバイスによって共有されてもよく、このようなマルチホップネットワーク120の共有による帯域幅消費変動の観点からマルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティングに大きな影響を与える可能性がある。
【0037】
マルチホップネットワーク120への各エントリーポイントについて、1つのロボットが接続された各ノードデバイス150は、対象のロボットに到達するためのマルチホップネットワーク120の全体にわたる可能なルーティングオプションを分類するために、第1の性能指数の値を計算する。マルチホップネットワーク120のマルチパス容量によってマルチホップネットワーク120の1つのエントリーポイントから対象のロボットに到達するためのいくつかのオプションが存在するとき、関係しているノードデバイス150は、最良のルーティング性能を示す第1の性能指数の値を保持する。その後、ノードデバイス150は、第1の性能指数の計算された値を(マルチホップネットワーク120のエントリーポイントでないノードデバイスのマルチホップネットワーク120を介して)基地局BS110に向けて送信する。
【0038】
マルチホップネットワーク120のノードデバイス150間の少なくとも1つのリンクの容量に大きな変化(ノードデバイス消滅、ノードデバイス出現、既定の閾値を上回る帯域幅消費の変更等)があるとき、ノードデバイス150は、第1の性能指数の値を再計算し、このように計算された更新値を基地局BS110に提供する。
【0039】
基地局BS110は、第1の性能指数の値の計算とは独立に、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントごとに第2の性能指数の1つの値を計算する。次に、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントごとに、マルチホップネットワーク120への当該エントリーポイントの第1の性能指数及び第2の性能指数の値から第3の性能指数の値を計算する。次に、基地局BS110は、基地局BS110と検討対象のロボット(又は場合によってはこのロボットに関連付けられているセンサ)との間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示すマルチホップネットワーク120へのエントリーポイントをターゲットにするようにビームフォーミング構成を選択する。
【0040】
端末T1、T2又はT3 130から基地局BS110へのデータのアップリンク伝送(反対方向はダウンリンク伝送とみなされる)を考えた場合に、少なくともマルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントを介して上記データを基地局BS110に送信しなければならないのかを対象の端末T1、T2又はT3に示すために、基地局BS110から対象の端末T1、T2又はT3に、シグナリング情報を送信しなければならない。
【0041】
マルチホップネットワーク120の少なくとも1つのエントリーポイントの第1の性能指数の値及び/又は第2の性能指数の値に変化があるとき、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の上記少なくとも1つのエントリーポイントの第3の性能指数の値を再計算する。次に、基地局BS110は、必要に応じて、基地局BS110と検討対象のロボット(又は場合によってはこのロボットに関連付けられているセンサ)との間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示すマルチホップネットワーク120へのエントリーポイントをターゲットにするようにビームフォーミング構成を適合させる。
【0042】
図3は、本発明を実施することができる第2の脈路を模式的に表している。第2の脈路では、通信システムが、基地局BS110と、マルチホップネットワーク120とを含む。マルチホップネットワーク120は、線形トポロジーを形成するようにリンク160によって相互接続された複数のノードデバイスN1、N2、N3、N4 150を備える。リンク160は、有線リンクとすることができるが、好ましくは無線リンクである。図3において、マルチホップネットワーク120のノードデバイス150の相対位置は固定され、既知である。これは、ノードデバイス150間の相対的移動がないことを意味する。その上、マルチホップネットワーク120は、線路等の既定のパスに沿って移動する。
【0043】
ノードデバイスN1、N2、N3、N4 150のうちの少なくともいくつかは、適切な電波伝播条件が満たされているときに基地局BS110と通信することが可能なように無線インターフェースを含む。基地局BS110の立場からすると、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150は、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントとして機能する。少なくとも1つの端末T130はマルチホップネットワーク120に接続され、マルチホップネットワーク120は、したがって、上記少なくとも1つの端末T130が基地局BS110と通信することが可能になる。
【0044】
第1の脈路と比較すると、第2の脈路は、マルチホップネットワーク120が時間とともに変化し得る速度Vで所定の軌道上を移動する点が異なっている。換言すれば、第2の脈路では、ノードデバイスは時間とともに一緒に移動し、これによって、基地局BS110に対する相対的移動が生み出される。
【0045】
マルチホップネットワーク120への適切なエントリーポイントを選択するために、基地局BS110は、基地局BS110に対するマルチホップネットワーク120の相対的移動を考慮した適切な時点において、基地局BS110と通信することが可能であり、したがって、伝送利得を高めるとともに干渉を緩和することが可能である上記ノードデバイス150のうちの1つをターゲットにするために、ビームフォーミング111を使用する。基地局BS110に対するマルチホップネットワーク120の相対的移動があるので、静的ビームフォーミング又は動的ビームフォーミングを使用することができる。
【0046】
動的ビームフォーミングの場合には、伝送チャネル容量を、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能メトリックとして引き続き使用することができる。このとき、図1の第1の実施形態において説明したものと同じ手法を適用することができる。相違点は、マルチホップネットワーク120がここでは高い移動性を有するので、高いドップラー効果に対抗するために、特定の基準信号パターンが使用されるという点である。
【0047】
静的ビームフォーミングの場合には、図1に示す第1の脈路に反して、基地局BS110は、第2の性能指数の値を求めるためにCSIに依存することができない。したがって、第1の実施形態によれば、図3に示す第2の脈路において、パス損失推定が、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を求めるのに使用される。一例を図7に示す。ビームフォーミング構成を考慮して、図7では、アンテナダイアグラムの1次ローブと、ビームフォーミング構成に従って基地局BS110によって送信される信号が伝播される、基地局BS110から既定のパス180に向かう複数の方向D1、D2、D3、D4、D5、D6とを例示している。アンテナダイアグラムの指向性に起因して、1次ローブの形状の観点から、信号強度は、通常、上記複数の方向D1、D2、D3、D4、D5、D6の方向ごとに異なる。したがって、パス損失は、対象のビームフォーミング構成に対応するアンテナダイアグラムと、基地局BS110及び既定のパス180の間の地理的トポロジーとの事前知識から基地局BS110によって推定することができる。地理的トポロジーの情報は、各方向D1、D2、D3、D4、D5、D6について、障害物(例えば木)が基地局BS110と既定のパス180との間に存在するか否かを事前に示すとともに、既定のパス180の軌道を考慮に入れることによる基地局BS110と既定のパス180との間の距離の情報を更に提供するデータベースから知ることができる。パス損失推定値は、したがって、アンテナダイアグラムと、検討対象の方向における基地局BS110及び既定のパス180からの距離と、さらに、検討対象の方向における基地局BS110と既定のパス180との間の何らかの障害物の事前に知られている存在に起因した潜在的なシャドーイング効果又は緩和効果(例えばモデル化されたもの)とを考慮して、検討対象の方向における信号強度から取得することができる。
【0048】
アンテナダイアグラムの1次ローブを使用することによって、パス損失推定手法を上記に提示した。そのようなパス損失推定は、上記アンテナダイアグラムが複数のローブを有するとき、アンテナダイアグラムの各ローブについて重複して行われる。
【0049】
複数のビームフォーミング構成が可能であるとき、CSIフィードバック及びチャネル容量計算ではなくパス損失推定を使用して、ビーム構成と、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントとしてのデバイス150とを選ぶことも可能であることに留意すべきである。上記に提示したパス損失推定手法は、その場合に、各可能なビームフォーミング構成について実行される。伝送性能メトリックとして伝送チャネル容量を使用する場合に対する利点は、ビームフォーミング管理及びCSIフィードバック手順の複雑度が低くなることである。
【0050】
第2の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送のレイテンシーの検討に従って求められる。伝送のレイテンシーは、伝送チャネル容量と、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間で伝送される全情報量と、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントのバッファの充填状態とに基づいて計算することができる。伝送のレイテンシーの更に詳細な内容は、図1の第2の実施形態を参照することができる。伝送チャネル容量Cは、C=log(1+SNR)を使用して、パス損失条件によって推定することができる。ここで、SNRは信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio)を表し、信号部分は、パス損失推定を使用してサービングパス上の信号伝送によって推定される。パス損失推定の詳細な内容は、図3の第1の実施形態に見ることができる。
【0051】
協調基地局に関連した第3の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、一方において基地局BS110及び少なくとも1つの隣接する基地局(通常、基地局BS110の電波範囲と重複する電波範囲を有する基地局)と他方においてマルチホップネットワーク120との間のパス損失に従って求められる。更に詳細な内容は、図1の第3の実施形態を参照することができる。伝送チャネル容量Cは、C=log(1+SINR)を使用して、パス損失条件によって推定することができる。ここで、SINRは信号対干渉雑音比を表すことを想起されたい。SINRを計算するとき、信号部分は、パス損失推定を使用してサービングパス上の信号伝送によって推定され、干渉部分は、パス損失推定を使用して干渉パス上の信号(少なくとも1つの他の基地局によって生成される信号)伝送によって推定される。
【0052】
協調基地局に関連した第4の実施形態によれば、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、一方において基地局BS110及び少なくとも1つの隣接する基地局(通常、基地局BS110の電波範囲と重複する電波範囲を有する基地局)と他方においてマルチホップネットワーク120との間の伝送のレイテンシーに従って求められる。伝送のレイテンシーは、伝送チャネル容量と、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間で伝送される全情報量と、マルチホップネットワーク120のエントリーポイントのバッファの充填状態とに基づいて計算することができる。伝送チャネル容量Cは、C=log(1+SINR)を使用して、パス損失条件によって推定することができる。SINRを計算するとき、信号部分は、パス損失推定を使用してサービングパス上の信号伝送によって推定され、干渉部分は、パス損失推定を使用して干渉パス上の信号(少なくとも1つの他の基地局によって生成される信号)伝送によって推定される。パス損失推定の詳細な内容は、図3の第1の実施形態に見ることができる。更に詳細な内容は、図1の第4の実施形態を参照することもできる。
【0053】
上記から、基地局BS110は、複数の信号伝播方向の各方向について、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を計算することができる。
【0054】
特定の実施形態において、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能は、図3について上記で開示した第1の実施形態~第4の実施形態に関して上記で定義した基準の組み合わせを使用して値を求めることができる。
【0055】
その上、基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150のうちの少なくとも1つは、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントについて、端末T130と通信するマルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値を基地局BS110に送信する。この第1の性能指数の値は、上記計算された値を基地局BS110に送信するノードデバイスとは別のノードデバイス150が計算することができる。第1の性能指数の値は、第1の性能指数の値が、基地局BS110と端末Tとの間で伝送されるデータが関連付けられているサービスタイプ(ベストエフォート、ビデオストリーミング、オーディオストリーミング等)に依存し得ることを意味する、サービスに関連したものとすることができる。マルチホップネットワーク120が、(例えば、パケットヘッダーのサービスクラス(CoS)フィールドに依存することによって)サービスベースのルーティングを提供するとき、マルチホップネットワーク120は、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントについて、マルチホップネットワーク120が取り扱うことができるサービスタイプの量と同数の第1の性能指数の値を提供する。
【0056】
移動性を考慮することに起因して、別の基地局をマルチホップネットワーク120と基地局BS110との間のリレーとして使用することができることに留意することができる。基地局BS110と通信することが可能なノードデバイス150は、したがって、基地局BS110と通信することが可能なそのようなリレーに依存するとともに、適切な電波伝播条件が満たされているときは基地局BS110と直接通信するノードデバイス150である。通常、第1の性能指数の値は、マルチホップネットワーク120が上記別の基地局の電波範囲内にあるときに送信サイクルにおいて上記別の基地局に送信され、第1の性能指数の上記値は、マルチホップネットワーク120が基地局BS110の電波範囲に入ったときに、将来の伝送サイクルにおけるマルチホップネットワーク120とのその後の通信用に基地局BS110を構成するのに使用される。場合によっては、中央ユニット又は協調ユニット等の1つ以上の中間バックボーンインフラストラクチャデバイスがこれらの2つの基地局の間に存在する場合がある。
【0057】
マルチホップネットワーク120のノードデバイス150間の少なくとも1つのリンクの容量に大きな変化(ノードデバイス消滅、ノードデバイス出現、既定の閾値を上回る帯域幅消費の変更等)があるとき、ノードデバイス150は、第1の性能指数の値を再計算し、上述したプロセスと同じプロセスに従うことによって、このように計算された更新値を基地局BS110に提供する。
【0058】
基地局BS110は、第1の性能指数の値の計算とは独立に、図7に関して既に説明したように、可能な信号伝播方向ごとに第2の性能指数の1つの値を計算する。
【0059】
次に、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントごとに、マルチホップネットワーク120への当該エントリーポイントの第1の性能指数の値と、各可能なビームフォーミング構成における各可能な信号伝播方向の第2の性能指数の値とから第3の性能指数の値を計算する。
【0060】
次に、動的ビームフォーミングが使用されるとき、基地局BS110は、基地局BS110と端末Tとの間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示すマルチホップネットワーク120へのエントリーポイントをターゲットにするようにビームフォーミング構成を選択し、マルチホップネットワーク120への適切なエントリーポイントをターゲットにするためにどの時点で基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送を行うべきかを更に決定する。そして、静的ビームフォーミングが使用されるとき、基地局BS110は、移動中のマルチホップネットワーク120の速度とビームフォーミング構成によって指し示される方向とを考慮して、マルチホップネットワーク120への適切なエントリーポイントをターゲットにするためにどの時点で基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送を行うべきかのみを決定する。
【0061】
端末Tから基地局BS110へのデータのアップリンク伝送を考えた場合、少なくともマルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントを介して上記データを基地局BS110に送信しなければならないのかを端末Tに示すために、シグナリング情報を基地局BS110から端末Tに送信しなければならない。
【0062】
図4は、図3に描かれた第2の脈路の使用例を模式的に表している。端末T130は、4つの車両C1、C2、C3、C4 141を有する列車140に搭載されている。一つ例では、端末T130は、列車140をリモートで動作させるように又は列車140の動作を支援するように適合された制御機械である。別の例では、端末T130は、旅行情報を乗客に提供する車内表示画面である。更に別の例では、端末T130は、乗客ウェブブラウジングデバイスである。更に別の例では、端末T130は、列車内のビデオ監視が可能になるビデオカメラである。
【0063】
列車140は、線路180上を時間とともに変化し得る速度Vで移動する。列車140の各車両C1、C2、C3、C4 141は、図4においてアンテナシンボルによって簡略化されている1つのノードデバイス150を組み込んでいる。ノードデバイス150は、線形トポロジーを有するマルチホップネットワーク120を形成する。したがって、マルチホップネットワーク120を通じて端末Tと通信することができるように、基地局はビームフォーミングを用いて列車の異なる部分をターゲットとすることができる。
【0064】
マルチホップネットワーク120は、コンピュータ(図2と同様)等の他のデバイスによって共有することができる。これは、マルチホップネットワーク120のこのような共有による帯域幅消費変動の観点からマルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティングに大きな影響を与える可能性がある。
【0065】
特定の実施形態において、列車140の各車両C1、C2、C3、C4 141は、1つのノードデバイス150を組み込み、各ノードデバイス150は、対象の車両C1、C2、C3、C4 141の前部及び後部にそれぞれ配置された2つのアンテナを装備し、これによって、2つの連続する車両間における範囲制限通信(limiting range communication)の要求が可能になる。
【0066】
基地局BS、BS 110は、線路180に沿って配置される。中央ユニットCU170は、基地局BS、BS 110を相互接続して協調させる。基地局BS、BS 110は、ビームフォーミングを使用して、伝送利得を高めるとともに干渉を緩和する。ビームフォーミングは、動的又は静的なものとすることができる。
【0067】
ビームフォーミングが静的であるとき、図7に関して既に説明したように、使用することができる唯一のビームフォーミング構成に対して複数の信号伝播方向が存在する。第2の性能指数によって、検討対象の基地局110とマルチホップネットワーク120との間において可能な信号伝播方向の中でどの方向を好ましいとすべきかを判断することが可能になる。
【0068】
ビームフォーミングが動的であるとき、各可能なビームフォーミング構成に対して複数の信号伝播方向が存在する。第2の性能指数によって、どのビームフォーミング構成が適用されるのかを判断することが可能になり、さらに、対象のビームフォーミング構成を使用する検討対象の基地局110とマルチホップネットワーク120との間において可能な信号伝播方向の中でどの方向を好ましいとすべきかを判断することが可能になる。
【0069】
マルチホップネットワーク120への各エントリーポイントについて、端末T130が接続されるノードデバイス150は、端末T130に到達するためのマルチホップネットワーク120の全体にわたる可能なルーティングオプションを分類するために、第1の性能指数の値を計算する。マルチホップネットワーク120のマルチパス容量によってマルチホップネットワーク120の1つのエントリーポイントから端末T130に到達するためのいくつかのオプションが存在するとき、対象のノードデバイス150は、最良のルーティング性能を示す第1の性能指数の値を保持する。マルチパス状況におけるパス選択についての詳細な内容は、Key P.、Massoulie L.及びTowsley D著の「Path selection and multipath congestion control」IEEE INFOCOM 2007-26th IEEE International Conference on Computer Communications, pp. 143-151, May 2007に見ることができる。次に、対象のノードデバイス150は、計算された第1の性能指数の値を、場合によってはマルチホップネットワーク120の少なくとも1つの他のノードデバイスと、場合によっては別の基地局及び中央ユニットCU170等の1つ以上の中間バックボーンインフラストラクチャデバイスとを介して、基地局BS110に送信する。
【0070】
マルチホップネットワーク120のノードデバイス150間の少なくとも1つのリンクの容量に大きな変化(例えば列車からの車両の分離に起因したノードデバイス消滅、列車への車両の取り付けに起因したノードデバイス出現、既定の閾値を上回る帯域幅消費の変更等)があるとき、ノードデバイス150は、第1の性能指数の値を再計算し、上記で既に提示したように、このように計算された更新値を基地局BS110に向けて提供する。
【0071】
基地局BS110は、第1の性能指数の値の計算とは独立に、図7に関して上記で既に説明したように、各可能なビームフォーミング構成における可能な信号伝播方向ごとに第2の性能指数の1つの値を計算する。
【0072】
次に、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120へのエントリーポイントごとに、マルチホップネットワーク120への当該エントリーポイントの第1の性能指数の値と、各可能なビームフォーミング構成における各可能な信号伝播方向の第2の性能指数の値とから第3の性能指数の値を計算する。
【0073】
ビームフォーミングが静的であるとき、基地局BS110は、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示す信号伝播構成の方向を選択する。次に、基地局BS110は、伝送を行うべき時点を決定する。これは、ノードデバイス150が上記信号伝播方向の見通し線内にあると予想される時点である。基地局BS110は、列車140のタイムスタンプ付き位置と、列車140上の上記ノードデバイス150の相対位置と、列車140の速度と、列車140のタイムスタンプ付き位置と上記見通し線が線路180を横切る線路180上の位置とを隔てる線路180の距離とを考慮に入れることによってこの時点を推定する。列車のタイムスタンプ付き位置は、例えば、列車内に設置されたGPS(全地球測位システム(Global Positioning System))デバイスから取得することもできるし、位置情報が、上記位置が検知された時点を表す時間情報に関連付けられている車内信号から取得することもできる。
【0074】
ビームフォーミングが動的であるとき、基地局BS110は、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示すビームフォーミング構成を選択する。第3の性能指数の上記最良値は、選択されたビームフォーミング構成を使用して達成可能な信号伝播の特定の方向に関連付けられている。次に、基地局BS110は、伝送を行うべき時点を決定する。これは、ノードデバイス150が上記信号伝播方向の見通し線内にあると予想される時点である。基地局BS110は、列車140の実際の位置と、列車140上の上記ノードデバイス150の相対位置と、列車140の実際の速度と、列車140の実際の位置と上記見通し線が線路180を横切る線路180上の位置とを隔てる線路180の距離とを考慮に入れることによってこの時点を推定する。
【0075】
端末Tから対象の基地局BS110へのデータのアップリンク伝送を考えた場合に、少なくともマルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントを介して上記データを基地局BS110に送信しなければならないのかを端末Tに示すために、シグナリング情報を基地局BS110又はリレーとして機能する別の基地局から端末Tに送信しなければならない。
【0076】
マルチホップネットワーク120の少なくとも1つのエントリーポイントの第1の性能指数の値及び/又は少なくとも1つの信号伝播方向の第2の性能指数の値に変化があるとき、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の上記少なくとも1つのエントリーポイント及び/又は上記信号伝播方向をそれぞれ含む第3の性能指数の値を再計算する。次に、基地局BS110は、必要に応じて、基地局BS110と端末Tとの間の伝送性能に関する第3の性能指数の最良値を示すマルチホップネットワーク120へのエントリーポイントをターゲットにするようにビームフォーミング構成を適合させる。
【0077】
図5は、上記に提示した第1の脈路又は第2の脈路において基地局BS110と1つの端末との間でデータの伝送を行うアルゴリズムを模式的に表している。
【0078】
ステップS501において、基地局BS110は、基地局BS110と対象の端末との間でデータの伝送を行わなければならないと判断する。この伝送は、ダウンリンク伝送、すなわち基地局BS110から対象の端末への伝送とすることができる。この伝送は、アップリンク伝送、すなわち対象の端末から基地局BS110への伝送であってもよい。
【0079】
ステップS502において、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントの第1の性能指数の値を取得する。第1の性能指数の値は、基地局BS110のリレーとして機能する別の基地局から受信することができる。第1の性能指数の値は、電気通信ネットワークの基地局を協調させる中央ユニットCUから受信することもできる。既に説明したように、第1の性能指数の値は、マルチホップネットワーク120によって計算及び提供される。特定の実施形態において、第1の性能指数の各値は、第1の性能指数の当該値が関連付けられているマルチホップネットワークのエントリーポイントと対象の端末との間の伝送レイテンシー及び/又は達成可能なスループットに依存する。
【0080】
第1の実施形態によれば、第1の性能指数は、総スループットを表し、例えば、第1の性能指数の検討対象の値が関連付けられているマルチホップネットワーク120のエントリーポイントと対象の端末との間の特定のサービスsに専用の総スループットを表す。サービスsは、ここでは、基地局BS110と対象の端末との間で伝送されるデータが関連付けられているサービスタイプである。マルチホップネットワーク120がサービスベースのルーティングリソース割り当てを提供しない場合には、スループットは、ここでは、サービスに基づく制限なしに検討される。マルチホップネットワーク120の上記エントリーポイント及び端末からの可能なパスが集合Pを形成すると仮定すると、ルーティングパスr∈Pを使用することによるマルチホップネットワーク120の上記エントリーポイントと対象の端末との間のサービスsのスループットは、R (s)として表記され、その場合に、第1の性能指数fは、以下の式として記述することができる。
【数1】
【0081】
TCP(規範的文書RFC793に定めされている伝送制御プロトコル(Transmission Control Protocol))等のベストエフォートサービスタイプに関連した第2の実施形態によれば、第1の性能指数fは、以下の式として記述することができる重み付きアルファ公平メトリック(weighted alpha fair metric)を表す。
【数2】
ここで、x=R (s)であり、r∈Pは、ルーティングパスr∈Pを使用することによるマルチホップネットワーク120の上記エントリーポイントと対象の端末との間のサービスsのスループットを表し、αは公平性因子(fairness factor)を表し、wは重み係数を表す。そのような重み付きアルファ公平メトリックについての詳細な内容は、J. Mo及びJ. Walrand著の「Fair end-to-end window based congestion control」International Symposium on Voice, Video and Data Communications, 1998における第3.1節「Fairness」に見ることができる。
【0082】
ビデオストリーミングサービスタイプに関連した第3の実施形態によれば、第1の性能指数fは、以下の式として記述することができるs曲線メトリックを表す。
【数3】
ここで、R (s)は、ルーティングパスr∈Pを使用することによるマルチホップネットワーク120の上記エントリーポイントと対象の端末との間のサービスsのスループットを表し、r(s)は、サービスsのデータ(例えば、ビデオ)が符号化されるデータレートを表し、Cは第1の定数を表し、Cは第2の定数を表す。第1の定数C及び第2の定数Cは、基地局BS110とマルチホップネットワーク120との間で伝送されるデータを符号化するエンコーダー及び符号化系列の特性に関係している。そのようなs曲線メトリック並びに第1の定数C及び第2の定数Cの設定についての詳細な内容は、V. Vukadinovic及びG. Karlsson著の「Multicast scheduling with resource fairness constraints」ACM/Springer Wireless Netw., vol. 15, no. 5, pp. 571-583, Jul. 2009における「System Model / Traffic Model」、特に第II.B節に見ることができる。
【0083】
第4の実施形態によれば、第1の性能指数は、第1の性能指数の検討対象の値が関連付けられているマルチホップネットワーク120のエントリーポイントと対象の端末との間のサービスsのレイテンシーを表す。マルチホップネットワーク120の上記エントリーポイント及び検討対象の端末からの可能なパスが集合Pを形成すると仮定し、l∈Pが、ルーティングパスr∈Pに属するポイントツーポイントリンクを表すものとし、サービスsのポイントツーポイントリンクlのレイテンシーがQ (s)(場合によってはノード内処理及びノード間伝送を含む)と表記されるものとすると、その場合に、第1の性能指数fは、以下の式として記述することができる。
【数4】
【0084】
サービスsは、ここでは、基地局BS110と対象の端末との間で伝送されるデータが関連付けられているサービスタイプである。マルチホップネットワーク120がサービスベースのルーティングリソース割り当て及びトラフィック優先度管理を提供しない場合には、レイテンシーは、ここでは、サービスに基づく制限なしに検討される。サービスsのポイントツーポイントリンクlのレイテンシーQ (s)は、ポイントツーポイントリンクlの発出ノードのバッファの現在の状態と、ルーティングパスrを使用する各サービスsのスループットと、種々のサービスタイプの優先順位とに基づいて計算することができる。
【0085】
ステップS503において、基地局BS110は、第1の性能指数の値とは独立に、基地局とマルチホップネットワーク120のエントリーポイントとの間の伝送の各候補構成について、基地局とマルチホップネットワーク120との間の伝送性能を表す第2の性能指数の値を取得する。各候補構成は、特定の実施形態によれば、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、ビームフォーミング構成の既定のセットの中の或るビームフォーミング構成とによって形成される対である。各候補構成は、特定の実施形態によれば、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、既定のビームフォーミングを基地局BS110に適用することによる信号伝播方向とによって形成される対である。各候補構成は、特定の実施形態によれば、マルチホップネットワークの1つのターゲットとされたエントリーポイントと、対象のデータの伝送を行うことができる時点(タイムスロット等を基準とする)とによって形成される対である。既に説明したように、マルチホップネットワーク120を組み込んだ列車等の輸送機関の速度及びタイムスタンプ付き位置の情報をその目的に使用することができる。
【0086】
既に説明したように、第2の性能指数は、パス損失の推定値、達成可能なスループット若しくはチャネル容量の推定値、又は被るレイテンシーの推定値とすることができる。第2の性能指数は、少なくとも1つの他のメトリックを更に考慮に入れることができる。特定の実施形態において、そのような少なくとも1つの他のメトリックは、基地局BS110が各候補構成を使用するときに基地局BS110に隣接する少なくとも1つの他の基地局によって達成可能な性能に関係している。
【0087】
ステップS504において、基地局BS110は、マルチホップネットワーク120の各エントリーポイントの第1の性能指数の値と、それぞれの各候補構成の第2の性能指数の値とを組み合わせた第3の性能指数の値を計算する。第3の性能指数は、したがって、マルチホップネットワーク120の全体にわたるルーティング性能と、基地局BS110及びマルチホップネットワーク120の間の伝送性能との間のトレードオフを表す。第3の性能指数は、したがって、例えば、第1の性能指数及び第2の性能指数の結果の加算、又は第1の性能指数及び第2の性能指数の結果の最小値による第1の性能指数及び第2の性能指数の組み合わせである。第3の性能指数は、好ましくは、第1の性能指数及び第2の性能指数の正規化された結果を使用する。
【0088】
ステップS505において、基地局BS110は、基地局BS110と対象の端末との間の伝送性能の観点からの第3の性能指数の最良値を示すマルチホップネットワークのエントリーポイントを含む候補構成を選択する。この候補構成は、対象のエントリーポイントを介して対象の端末とデータの伝送を行うことを可能にする。これは、基地局BS110が、このように、データの伝送を行わなければならないときに経由するマルチホップネットワーク120のエントリーポイントを知っていることを意味する。
【0089】
ステップS506において、基地局BS110及び対象の端末はデータの伝送を行う。データの伝送は、ステップS505において選択された候補構成に従って行われる。データの伝送は、ステップS505において選択されたマルチホップネットワーク120のエントリーポイントを介して行われる。
【0090】
データの伝送がダウンリンク伝送であるとき、基地局BS110は、通常は専用ヘッダーフィールド内である送信データの内部に、データの伝送がマルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントを介して行われると予想されるのかを示すことができる。
【0091】
データの伝送がアップリンク伝送であるとき、基地局BS110は、この伝送の前に、データの伝送がマルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントを介して行われると予想されるのかを示すシグナリング情報を端末に提供する。このシグナリング情報は、例えば伝送が行われることになっている時点(タイムスロット等)等の、ステップS505において選択された候補構成についての情報を更に含むことができる。対象の端末は、対象のエントリーポイントに到達するようにするとともに対象のエントリーポイントがこのデータを基地局BS110に送信するように、このデータをマルチホップネットワーク120の全体にわたってルーティングする。
【0092】
図5のアルゴリズムは、上記では、基地局BS110による実施を考慮して詳述されている。図5のアルゴリズムは、基地局BS110の代わりに、マルチホップネットワーク120と通信する可能性が高い複数の協調基地局を相互接続する中央ユニット等の、基地局BS110に接続されたデバイスによって代わりに実施することができる。この場合に、中央ユニットは、どの候補構成が適用されるのかを基地局BS110に提供する。中央ユニットは、したがって、適用される候補構成についての情報(より詳細には、マルチホップネットワーク120のどのエントリーポイントをアップリンク伝送に使用しなければならないのかを示す情報)をマルチホップネットワークに提供するために、シグナリング情報をマルチホップネットワーク120に送信するように基地局BS110又は別の基地局に命令することができる。
【0093】
上記に開示された実施形態は、マルチホップネットワーク120からのアップリンクフィードバックに依存している。そのようなフィードバックの目標は、マルチホップネットワークの全体にわたるルーティング性能を表す第1の性能指数の値、及びCSI又はバッファステータス等の情報を基地局BS110に(場合によっては別の基地局を介して)提供することである。基本的な考えは、目標がスループット又はレイテンシーの最適化を試みることであるダウンリンク伝送構成の場合と同じでないことが理解されなければならない。実際は、アップリンクフィードバック情報を或る特定の制限時間内に正しく受信することができる限り、アップリンク伝送チャネルの品質又は容量は留意されない。したがって、アップリンクフィードバックは、特定のビームフォーミングを用いず、例えば、或る特定の制限時間内の情報送達を確実にするために最大送信電力を用いたそのような情報の単純な周期的ブロードキャストであると想像することができる。
【0094】
図6は、第1の脈路又は第2の脈路において使用される通信デバイス800のハードウェアアーキテクチャの一例を模式的に表している。通信デバイス800は、全ての基地局BS、BS、BSとすることができる。通信デバイス800は、全てのノードデバイス150であってもよい。通信デバイス800は、全ての端末130又はそれらのハードウェア制御ユニットであってもよい。通信デバイス800は、制御ユニットCU170であってもよい。
【0095】
ハードウェアアーキテクチャを示す例によれば、通信デバイス800は、通信バス810によって相互接続された少なくとも以下の構成要素、すなわち、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はCPU(中央処理ユニット)801と、RAM(ランダムアクセスメモリ)802と、ROM(読み取り専用メモリ)又はフラッシュメモリ803と、HDD(ハードディスクドライブ)、若しくはSD(セキュアデジタル)カードリーダ804、又は非一時的情報記憶媒体上に記憶された情報を読み取るように構成される任意の他のデバイスと、本明細書において説明されるような通信を可能にするための少なくとも1つの通信インターフェースCOM805とを備える。
【0096】
CPU801は、ROM803から、又はSDカードリーダ804を介してSDカード等の外部メモリから、RAM802にロードされた命令を実行することができる。通信デバイス800の電源がオンになった後に、CPU801は、RAM802から命令を読み取って、これらの命令を実行することができる。それらの命令は、対象の通信デバイス800に関して本明細書において説明されるアルゴリズムのステップの一部又は全てをCPU801に実行させる1つのコンピュータプログラムを構成する。
【0097】
結果として、本明細書において説明されるアルゴリズムの全てのステップは、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)若しくはマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンにより一組の命令若しくはプログラムを実行することによってソフトウェア形式において実施するか、又はそうでなければ、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の機械若しくは専用チップ若しくはチップセットによってハードウェア形式において実施することができることは理解されたい。一般に、対象の通信デバイス800は、対象の通信デバイス800に関して本明細書において説明されるような関連ステップを実施するように適合及び構成される処理電子回路部を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7