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特許7325634ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
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  • 特許-ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-03
(45)【発行日】2023-08-14
(54)【発明の名称】ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230804BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230804BHJP
   B32B 38/18 20060101ALI20230804BHJP
【FI】
H01L21/78 N
B32B7/06
B32B38/18 F
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022530951
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2022000964
(87)【国際公開番号】W WO2022201766
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021053427
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】古野 健太
(72)【発明者】
【氏名】福元 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜章
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/207920(WO,A1)
【文献】特開2021-024991(JP,A)
【文献】特開2020-188261(JP,A)
【文献】特表2014-515883(JP,A)
【文献】特開2010-251359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B32B 7/06
B32B 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、光重合開始剤を含有し、且つ、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層であり、
前記ワークハンドリングシートは、波長355nmの光線の吸光度が1.5以上である
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項2】
前記光重合開始剤は、200nm以上、400nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1に記載のワークハンドリングシート。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のワークハンドリングシート。
【請求項4】
前記界面アブレーション層は、ガス発生剤を含有しないことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項5】
前記基材は、樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項6】
前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項7】
前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項8】
前記界面アブレーション層において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項9】
前記ワーク小片は、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで得られたものであることを特徴とする請求項8に記載のワークハンドリングシート。
【請求項10】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項8または9に記載のワークハンドリングシート。
【請求項11】
前記ワーク小片は、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項12】
基材と、前記基材における片面側に積層された、光重合開始剤を含有する界面アブレーション層とを備え、波長355nmの光線の吸光度が1.5以上であるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備え
前記界面アブレーション層は、活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層である
ことを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項13】
前記準備工程においては、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで、前記ワーク小片を得ることを特徴とする請求項12に記載のデバイス製造方法。
【請求項14】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12または13に記載のデバイス製造方法。
【請求項15】
ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを前記ワーク小片として用いて、前記発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項16】
前記発光装置は、ディスプレイであることを特徴とする請求項15に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品や半導体装置等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものであり、特に、マイクロ発光ダイオード、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ発光ダイオードを用いたディスプレイの開発が進められている。当該ディスプレイでは、個々の画素がマイクロ発光ダイオードで構成され、各マイクロ発光ダイオードの発光が独立に制御されている。当該ディスプレイの製造においては、一般的に、サファイア、ガラス等の供給基板上に配置されたマイクロ発光ダイオードを、配線が設けられた配線基板上に実装する必要がある。
【0003】
上記実装の際には、供給基板上に配置された複数のマイクロ発光ダイオードを、配線基板の所定の位置に正確に載置する必要がある。このとき、複数のマイクロ発光ダイオードの中から所定のものを選択的に配線基板に載置させる必要があったり、複数のマイクロ発光ダイオードを同時に載置させる必要もある。
【0004】
このような実装を良好に行う観点から、レーザー光の照射を利用することが検討されている。例えば、複数のマイクロ発光ダイオードを所定の層を介して支持体に保持した後、当該層に対してレーザー光を照射することで、その照射した位置において当該層のアブレーションを生じさせ、それによって支持体から分離(レーザーリフトオフ)したマイクロ発光ダイオードを配線基板に載置する方法が検討されている(特許文献1)。レーザー光は、指向性および収束性に優れているため、照射する位置を制御しやすく、選択的な載置を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6546278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイクロ発光ダイオードの更なる微細化や、マイクロ発光ダイオードのより高密度な実装も進められており、これらにも対応する上では、特許文献1のような従来の手法よりも効率良く多数のマイクロ発光ダイオードといった微細なワーク小片を取り扱うことができる手段が求められている。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことが可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートであって、前記界面アブレーション層が、光重合開始剤を含有し、前記ワークハンドリングシートは、波長355nmの光線の吸光度が1.5以上であることを特徴とするワークハンドリングシートを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係るワークハンドリングシートは、界面アブレーション層が光重合開始剤を含有し、波長355nmの光線の吸光度が上記範囲となっていることで、レーザー光を照射した場合に効果的に界面アブレーションし、それによりワーク小片を対象物に向けて良好に分離することができる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記光重合開始剤は、200nm以上、400nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有することが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明1,2)において、前記界面アブレーション層は、粘着剤層であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明3)において、前記粘着剤層を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明3,4)において、前記粘着剤層を構成する粘着剤は、アクリル系粘着剤であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)においては、前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1~7)においては、前記界面アブレーション層において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明8)において、前記ワーク小片は、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで得られたものであることが好ましい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明8,9)において、前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることが好ましい(発明10)。
【0019】
上記発明(発明8~10)において、前記ワーク小片は、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることが好ましい(発明11)。
【0020】
第2に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された、光重合開始剤を含有する界面アブレーション層とを備え、波長355nmの光線の吸光度が1.5以上であるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程とを備えることを特徴とするデバイス製造方法を提供する(発明12)。
【0021】
上記発明(発明12)において、前記準備工程においては、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで、前記ワーク小片を得ることが好ましい(発明13)。
【0022】
上記発明(発明12,13)において、前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることが好ましい(発明14)。
【0023】
上記発明(発明12~14)において、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを前記ワーク小片として用いて、前記発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することが好ましい(発明15)。
【0024】
上記発明(発明15)において、前記発光装置は、ディスプレイであることが好ましい(発明16)。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るワークハンドリングシートは、微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことができ、また、本発明に係るデバイス製造方法によれば、優れた性能を有するデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートを使用したデバイス製造方法を説明する断面図である。
図3】レーザー光の照射により生じたブリスターおよび反応領域の状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図が示される。図1に示されるワークハンドリングシート1は、基材12と、基材12における片面側に積層された界面アブレーション層11とを備える。
【0028】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1においては、界面アブレーション層11が、ワーク小片を保持可能である。すなわち、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に積層されたワーク小片を、その状態のまま保持することができる。
【0029】
上記保持の具体的な態様は限定されないものの、好ましい例としては、界面アブレーション層11がワーク小片に対する粘着性を発揮することで保持することが挙げられる。この場合、界面アブレーション層11は、後述する通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むこと、すなわち粘着剤層であることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態における界面アブレーション層11は、レーザー光の照射によって界面アブレーションするものである。すなわち、界面アブレーション層11は、上記レーザー光の照射を受けた領域において、局所的な界面アブレーションするものである。なお、上記レーザー光としては、界面アブレーションを生じさせることが可能であれば特に限定されず、紫外域、可視光域および赤外域のいずれの波長を有するレーザー光であってよく、中でも、紫外域の波長を有するレーザー光が好ましい。
【0031】
本明細書において、界面アブレーションとは、上記レーザー光のエネルギーによって界面アブレーション層11を構成する成分の一部が蒸発または揮発し、それによって生じたガスが界面アブレーション層11と基材12との界面に溜まって空隙(ブリスター)が生じることを指す。この場合、ブリスターによって界面アブレーション層11の形状が変化し、ワーク小片が界面アブレーション層11から剥がれ落ちて、ワーク小片が分離することとなる。
【0032】
そして、本実施形態における界面アブレーション層11は、光重合開始剤を含有し、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、波長355nmの光線の吸光度が1.5以上である。このように、界面アブレーション層11中に光重合開始剤が存在し、且つ、ワークハンドリングシート1が上記吸光度を示すことで、界面アブレーション層11が、レーザー光からエネルギーを受け取る効率が向上する。これにより、効果的に界面アブレーションが生じ、保持したワーク小片を界面アブレーション層11から良好に分離することが可能となる。特に、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量が低減し、レーザー光の照射装置の稼働コストを低減できるとともに、ターゲットとするワーク小片のみを良好に分離し易くなって精度が向上し、さらには、過度なレーザー光照射による装置等の損傷を防ぐこともできる。
【0033】
レーザー光からエネルギーを受け取る効率をより向上させる観点からは、上記吸光度は、2.0以上であることが好ましく、2.2以上であることがより好ましく、特に2.5以上であることが好ましく、さらには3.0以上であることが好ましい。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば6.0以下であってよい。また、上記吸光度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0034】
1.界面アブレーション層
本実施形態における界面アブレーション層11の具体的な構成や組成は、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションするという性質を有する他、光重合開始剤を含有するとともに、ワークハンドリングシート1としての上述した吸光度を可能とするものである限り、特に限定されない。
【0035】
ワーク小片を保持可能であるという性質を良好に発揮しやすいという観点からは、界面アブレーション層11は、前述した通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むことが好ましい。界面アブレーション層11が粘着剤を含む場合、界面アブレーション層11は、光重合開始剤を含有する粘着性組成物からなるものであることが好ましい。
【0036】
(1)光重合開始剤
本実施形態における光重合開始剤の種類は特に限定されない。好ましい光重合開始剤の例としては、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0037】
上記光重合開始剤とともに、その他の光重合開始剤を併用することもできる。併用できる光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0038】
本実施形態における光重合開始剤は、200nm以上、400nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有するものであることが好ましい。これにより、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。このような観点から、上記範囲の下限値は、特に300nm以上であることが好ましく、さらには330nm以上であることが好ましい。また、上記範囲の上限値は、特に380nm以下であることが好ましく、さらには370nm以下であることが好ましい。
【0039】
なお、上記吸収ピークは、以下の方法に基づいて特定することができる。まず、光重合開始剤を、溶媒としてのメタノールまたはアセトニトリルに溶解し、濃度0.01質量%の測定溶液を調製する。続いて、当該測定溶液について、分光光度計(例えば、島津製作所社製,「UV-3600」)により吸光度を測定し、吸収スペクトルを得る。そして、得られた吸収スペクトルから、吸収ピーク(nm)の波長の範囲を特定することができる。
【0040】
また、本実施形態における光重合開始剤は、濃度0.01質量%の溶液中における波長355nmの吸光度が、0.5以上であることが好ましく、特に0.75以上であることが好ましく、さらには1.0以上であることが好ましい。上記吸光度が0.5以上であることにより、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。なお、上記吸光度の上限値は特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。
【0041】
なお、上記吸光度は、光重合開始剤の濃度0.01質量%のメタノール溶液(光重合開始剤がメタノールに不溶である場合は、アセトニトリル溶液)を調製し、その溶液における波長200~500nmの範囲の吸光度を、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」,光路長10mm)を使用して測定したものである。
【0042】
本実施形態における界面アブレーション層11中における光重合開始剤の含有量は、1.8質量%以上であることが好ましく、特に3.0質量%以上であることが好ましく、さらには5.0質量%以上であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が1.8質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、本実施形態における界面アブレーション層11中における光重合開始剤の含有量は、40.0質量%以下であることが好ましく、特に30.0質量%以下であることが好ましく、さらには25.0質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が40.0質量%以下であることで、界面アブレーション層11形成のための材料の粘度が適度なものとなり、良好な造膜性を確保し易くなる。
【0043】
また、本実施形態における界面アブレーション層11が後述する粘着性組成物から形成される場合、光重合開始剤はこの粘着性組成物中に配合されてもよい。特に、光重合開始剤が、後述する活性エネルギー線硬化型重合体(A)とともに粘着性組成物に配合される場合、粘着性組成物中における光重合開始剤の配合量は、後述する活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、1.8質量部以上であることが好ましく、特に3.0質量部以上であることが好ましく、さらには5.0質量部以上であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が1.8質量部以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、上記粘着性組成物中における光重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、40.0質量部以下であることが好ましく、特に30.0質量部以下であることが好ましく、さらには25.0質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が40.0質量部以下であることで、得られる粘着剤が所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0044】
(2)粘着剤
前述した通り、本実施形態における界面アブレーション層11は、光重合開始剤に加えて、粘着剤を含むものであってもよい。この場合、界面アブレーション層11は、光重合開始剤を含有する粘着性組成物から形成されるものであることが好ましい。
【0045】
上記粘着剤としては、ワーク小片等の被着体に対する十分な保持力(粘着力)を発揮することができる限り、特に限定されない。上記粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着力を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0046】
また、上記粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤であってもよいものの、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤(以下、「活性エネルギー線硬化性粘着剤」という場合がある。)であることが好ましい。界面アブレーション層11が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されている場合、活性エネルギー線の照射により界面アブレーション層11を硬化させて、ワークハンドリングシート1の被着体に対する粘着力を容易に低下させることができる。
【0047】
特に、活性エネルギー線の照射による粘着力の低下を、上述した界面アブレーションと組み合わせて行うことにより、ワークハンドリングシート1からのワーク小片の分離が容易となる。すなわち、上述した界面アブレーションを生じさせる前に、または上述した界面アブレーションと同時に、活性エネルギー線の照射によって密着性を低下させることにより、本実施形態に係るワークハンドリングシート1からのワーク小片の分離をより確実に行うことが可能となる。また、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量をさらに低減することが可能となる。
【0048】
上記活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーと、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよい。
【0049】
上記活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。さらに、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0050】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
【0051】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0052】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0053】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、n-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20であるアルキル(メタ)アクリレートの他、例えば、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)が好ましく用いられる。
【0056】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
脂環式構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の割合で含有する。
【0059】
さらに、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは99質量%以下、特に好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下の割合で含有する。
【0060】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0061】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0062】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0063】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0064】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
【0065】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0066】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であるのが好ましく、特に5万以上であるのが好ましく、さらには10万以上であるのが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、300万以下であるのが好ましく、特に200万以下であるのが好ましく、さらには150万以下であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0067】
活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化型重合体(A)といった活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0068】
活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0069】
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線硬化型重合体(A)に対し、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、活性エネルギー線硬化性粘着剤中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0071】
次に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0072】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0073】
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー1質量部以上であるのが好ましく、特に60質量部以上であるのが好ましい。また、当該配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー200質量部以下であるのが好ましく、特に160質量部以下であるのが好ましい。
【0074】
(3)その他の成分
上述した粘着性組成物には、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0075】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000~250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0質量部超、50質量部以下の範囲で適宜決定される。
【0076】
架橋剤(E)の使用は、界面アブレーション層11の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整し易いという観点から好ましい。架橋剤(E)としては、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0077】
架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.2質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0078】
また、上記粘着性組成物に配合可能なその他の成分としては、粘着付与剤、染料や顔料等の着色材料、難燃剤、フィラー、帯電防止剤等の添加剤も挙げられる。なお、上記粘着性組成物は、ワーク小片の分離を良好に生じさせ易いという観点からは、ガス発生剤を含有しないことが好ましい。ガス発生剤を使用すると、界面アブレーション層11全域でガスが発生することがある。その場合、意図した位置のみで界面アブレーションを生じさせて、そこに位置するワーク小片のみを分離させることが困難となり、ワーク小片の分離を良好に行うことが困難となる場合がある。
【0079】
(4)界面アブレーション層の厚さ
本実施形態における界面アブレーション層11の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上が好ましい。また、界面アブレーション層11の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。界面アブレーション層11の厚さが上記範囲であることで、界面アブレーション層11上におけるワーク小片の保持と、界面アブレーションによるワーク小片の分離とを両立し易いものとなる。
【0080】
2.基材
本実施形態における基材12は、その組成や物性について特に限定されない。ワークハンドリングシート1が所望の機能を発揮し易いという観点からは、基材12は、樹脂から構成されることが好ましい。基材12が樹脂から構成される場合、当該樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリウレタン;ポリイミド;ポリスチレン;ポリカーボネート;フッ素樹脂などが挙げられる。また、基材12を構成する樹脂は、上述した樹脂を架橋したものや、上述した樹脂のアイオノマーといった変性したものであってもよい。また、基材12は、上述した樹脂からなる単層のフィルムであってもよく、あるいは、当該フィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0081】
本実施形態における基材12の表面には、界面アブレーション層11に対する密着性を向上させる目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0082】
本実施形態における基材12は、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。また、界面アブレーション層11が、活性エネルギー線により硬化する材料を含む場合、基材12は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
【0083】
本実施形態における基材12の製造方法は、樹脂から基材12を製造するものである限り特に限定されない。例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法等によって、樹脂をシート状に成形することで製造することができる。
【0084】
本実施形態における基材12の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、基材12厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。基材12の厚さが上記範囲であることで、ワークハンドリングシート1が剛性と柔軟性とを所定のバランスで備えるものとなり、ワーク小片の良好なハンドリングを行い易いものとなる。
【0085】
3.剥離シート
本実施形態に界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面をワーク小片に貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。
【0086】
上記剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0087】
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、20μm以上、250μm以下であってよい。
【0088】
4.その他の構成
本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。当該シートでは、接着剤層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該ワーク小片が搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0089】
また、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に保護膜形成層が積層されていてもよい。このようなシートでは、保護膜形成層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をワーク小片に形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0090】
5.ワークハンドリングシートの物性
本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力が、10mN/25mm以上であることが好ましく、特に100mN/25mm以上であることが好ましく、さらには200mN/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力が10mN/25mm以上であることにより、ワークハンドリングシート1にワーク小片等の被着体を良好に固定し易くなり、ハンドリング性により優れたものとなる。また、上記粘着力は、30000mN/25mm以下であることが好ましく、特に15000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには10000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が30000mN/25mm以下であることにより、レーザー光照射によるワーク小片の分離をより良好に行い易くなる。
【0091】
また、本実施形態における界面アブレーション層11が、前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層である場合、紫外線照射後における粘着力について、以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、界面アブレーション層11に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して界面アブレーション層11を硬化させた後における、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力が、2000mN/25mm以下であることが好ましく、特に1000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が2000mN/25mm以下であることにより、その後の界面アブレーションによって、ワーク小片を良好に分離させ易くなる。なお、上記粘着力の下限値としては特に限定されず、例えば、5mN/25mm以上であってよく、特に10mN/25mm以上であってよく、さらには20mN/25mm以上であってよい。
【0092】
なお、これらの粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0093】
6.ワークハンドリングシートの製造方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の製造方法は特に限定されない。例えば、基材12上に界面アブレーション層11を直接形成してもよく、あるいは、工程シート上で界面アブレーション層11を形成した後、当該界面アブレーション層11を基材12上に転写してもよい。
【0094】
界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合、当該界面アブレーション層11の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を調製する。そして、基材の片面または剥離シートの剥離性を有する面(以下、「剥離面」という場合がある。)に上記塗布液を塗布する。続いて、得られた塗膜を乾燥させることで、界面アブレーション層11を形成することができる。
【0095】
上述した塗布液の塗布は公知の方法により行うことができ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行うことができる。なお、塗布液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、界面アブレーション層11を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。また、剥離シート上に界面アブレーション層11を形成した場合、当該剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、被着体に貼付するまでの間、界面アブレーション層11を保護していてもよい。
【0096】
界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物が前述した架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマー成分と架橋剤との架橋反応を進行させ、界面アブレーション層11内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。さらに、上述した架橋反応を十分に進行させるために、ワークハンドリングシート1の完成後、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0097】
7.ワークハンドリングシートの使用方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、ワーク小片の取り扱いのために好適に使用することができる。前述した通り、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11が、レーザー光の照射によって効率的に界面アブレーションするものであるため、界面アブレーション層11上に保持されたワーク小片を高い精度で所定の位置に向けて分離することができる。
【0098】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の使用方法の一例としては、界面アブレーション層11において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、界面アブレーション層11から選択的に分離するという使用方法が挙げられる。
【0099】
上記使用方法において、界面アブレーション層11上に保持された複数のワーク小片は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持されたワーク(ワーク小片の材料となるもの)を当該面上において個片化することで得られたものであってもよい。すなわち、ワーク小片は、界面アブレーション層11上にてワークをダイシングすることで得られたものであってもよい。あるいは、ワーク小片は、本実施形態に係るワークハンドリングシート1とは独立して形成されたものを、界面アブレーション層11上に載置されたものであってもよい。
【0100】
なお、本実施形態に係るワークハンドリングシート1が前述した接着剤層や保護膜形成層を備える場合には、これらの層とワークとを界面アブレーション層11上にてダイシングすることが好ましい。これにより、これらの層が個片化されてなるものが積層されたワーク小片を得ることができる。
【0101】
本実施形態におけるワーク小片の形状やサイズについては特に限定されないものの、サイズに関し、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が10μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましい。また、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が1mm以下であることが好ましく、特に0.25mm以下であることが好ましい。また、ワーク小片の寸法としては、ワーク小片が矩形である場合、ワーク小片の最小の一辺が、2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、上記最小の一辺は、1mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以下であることが好ましい。矩形のワーク小片の寸法の具体例としては、2μm×5μm、10μm×10μm、0.5mm×0.5mm、1mm×1mm等が挙げられる。本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、このような微細なワーク小片、特に、ニードルの突き上げによるシートからの分離が困難な微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことができる。その一方で、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、面積が1mmを超えるもの(例えば1mm~2000mm)や、厚さが1~10000μmのもの(例えば10~1000μm)といった比較的大きなサイズのワーク小片についても良好に取り扱うことができる。
【0102】
ワーク小片としては、半導体部品や半導体装置等が挙げられ、より具体的には、マイクロ発光ダイオード、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等が挙げられる。これらの中でも、ワーク小片は発光ダイオードであることが好適であり、特にミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることが好ましい。近年、ミニ発光ダイオードやマイクロ発光ダイオードが高密度に配置された装置の開発が検討されており、そのような装置の製造においては、これらの発光ダイオードを高い精度で取り扱うことが可能な本実施形態に係るワークハンドリングシート1が非常に適している。
【0103】
以下に、ワークハンドリングシート1の具体的な使用例として、デバイス製造方法を図2に基づいて説明する。当該デバイス製造方法は、準備工程(図2(a))、配置工程(図2(b))および分離工程(図2(c)および(d))という3つの工程を少なくとも備える。
【0104】
準備工程においては、図2(a)に示すように、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における、界面アブレーション層11側の面上に複数のワーク小片2が保持されてなる積層体を準備する。当該積層体は、別途作製したワーク小片2をワークハンドリングシート1上に載置することで準備してもよく、あるいは、界面アブレーション層11側の面上に保持されたワークを当該面上において個片化すること(すなわちダイシングすること)で準備してもよい。当該ダイシングは、公知の方法で行うことができる。
【0105】
ワーク小片2の形状やサイズは、前述した通り、特に限定はなく、好ましいサイズも前述した通りである。ワーク小片2の具体例についても、前述した通り、半導体部品や半導体装置等が挙げられ、特に、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードといった発光ダイオードが挙げられる。
【0106】
続く配置工程においては、図2(b)に示すように、ワーク小片2を受容可能な対象物3に対して、上記積層体におけるワーク小片2側の面が向かい合うように上記積層体を配置する。対象物3の例は、製造するデバイスに応じて適宜決定されるものの、ワーク小片2が発光ダイオードである場合には、対象物3の具体例としては、基板、シート、リール等が挙げられ、特に配線が設けられた配線基板が好適に使用される。
【0107】
その後、分離工程において、まず図2(c)に示すように、上記積層体における界面アブレーション層11における、少なくとも1つのワーク小片2が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射する。当該照射は、ワーク小片2が貼付されている複数の位置に対して同時に行ってもよく、あるいはそれらの位置に対して順次行ってもよい。レーザー光の照射条件としては、界面アブレーションを生じさせることが可能である限り限定されない。照射のための装置としては、公知のものを使用することができる。
【0108】
上記照射により、図2(d)に示されるように、界面アブレーション層11における照射された位置において界面アブレーションを生じさせることができる。具体的には、レーザー光の照射によって、界面アブレーション層11における基材12に近位な領域において、当該領域を構成していた成分が蒸発または揮発し、反応領域13となる。そして、上記蒸発または揮発によって生じたガスが基材11と反応領域13との間に溜まり、ブリスター5が形成される。当該ブリスター5の形成によって、ワーク小片2’の位置において局所的に界面アブレーション層11が変形し、界面アブレーション層11から剥がされるようにワーク小片2’が分離する。以上により、当該界面アブレーションが生じた位置に存在するワーク小片2’を、対象物3上に載置することができる。
【0109】
なお、レーザー光の照射によって生じた反応領域13およびブリスター5は、通常、ワーク小片2’の分離した後も残ったままとなる。図3には、順次レーザー光を照射してワーク小片2の分離を行っていく様子が示されており、特に、分離後の状態(左2つ)、分離中の状態(中央)、および分離前の状態(右2つ)が示されている。図示されるように、通常、分離後のブリスター5は、分離中のブリスター5に比べて、多少しぼんだ状態となる。
【0110】
なお、本実施形態における界面アブレーション層11が、前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される粘着剤層である場合、上述したデバイス製造方法は、次の硬化工程をさらに備えていてもよい。すなわち、界面アブレーション層11側の面上に複数のワーク小片2が保持されてなる積層体における界面アブレーション層11の全体に対し、または、上記積層体における界面アブレーション層11における、少なくとも1つのワーク小片2が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、界面アブレーション層11を全体的または局所的に硬化させる硬化工程を備えていてもよい。この硬化工程は、上述した分離工程の前に行ってもよく、または、上述した分離工程と同時に行ってもよい。
【0111】
上述の通り、活性エネルギー線の照射により、界面アブレーション層11を全体的または局所的に硬化させることにより、ワークハンドリングシート1におけるワーク小片2に対する粘着力を低下させることができ、界面アブレーションを生じさせたときに、良好にワーク小片2を分離し易くなる。硬化工程における活性エネルギー線の照射は、公知の手法を用いて行ってよく、例えば、光源として高圧水銀ランプや紫外線LEDを備える紫外線照射装置や、分離工程でも使用されるレーザー光照射装置を使用してもよい。硬化工程と分離工程とを同時に行う場合には、レーザー光照射装置を用いたレーザー光4の照射を、活性エネルギー線の照射を兼ねたものとして行うことが好ましい。
【0112】
上述したデバイス製造方法は、準備工程、配置工程、硬化工程および分離工程以外の工程を備えていてもよい。例えば、準備工程と分離工程との間の任意のタイミングにおいて、グラインド、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、モールディング、検査、転写工程等を行っても良い。
【0113】
以上説明したデバイス製造方法によれば、使用するワーク小片2や対象物3を適宜選択することで様々なデバイスを製造することができる。例えば、ワーク小片2として、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを用いた場合には、そのような発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することができ、より具体的にはディスプレイを製造することができる。特に、マイクロ発光ダイオードを画素として備えるディスプレイや、複数のミニ発光ダイオードをバックライトとして備えるディスプレイを製造することができる。
【0114】
また、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、当該シート上に設けられた複数のワーク小片2のうち、所定のワーク小片2を選択的に除去する方法にも使用することができる。
【0115】
例えば、本実施形態に係るワークハンドリングシート1上にて複数の発光ダイオード等を製造した後、当該シート上にて発光ダイオードの検査を行う。そこで不良品と確認された発光ダイオードのみについて、界面アブレーションを生じさせてワークハンドリングシート1から脱離させ、除去することができる。
【0116】
さらに、それら良品の集合を、ワークハンドリングシート1から出荷用シートに転写することもできる。このとき、界面アブレーション層11が前述した活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合には、当該界面アブレーション層11に対して活性エネルギー線を照射することで、ワークハンドリングシート1の発光ダイオードに対する粘着力を低下させて、良品の集合を出荷用シートに良好に転写することができる。その後、不良品が除去された位置には、別途作製した良品を再配置することで、良品のみが設けられたワークハンドリングシート1を得ることもできる。
【0117】
上記のような、界面アブレーションによって不良品を除去する方法では、シートのエキスパンドおよび不良品のピックアップを行う必要がないため、発光ダイオードの間隔の変更や、位置のズレが生じ難くい。そのため、出荷用シートに対して良好に転写し易いものとなる。
【0118】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0119】
例えば、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における界面アブレーション層11と基材12との間、または基材12における界面アブレーション層11とは反対側の面には、他の層が積層されていてもよい。当該他の層の具体例としては、粘着剤層が挙げられる。この場合、当該粘着剤層側の面を支持台(ガラス板等の透明基板)に貼付した状態で、上述した分離工程等を行うことができる。
【0120】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないものの、活性エネルギー線を吸収し難く且つ活性エネルギー線を遮断し難いものが好ましい。この場合、当該粘着剤層を介してレーザー光を照射する場合に、当該レーザー光が界面アブレーション層11に到達し易くなり、良好な界面アブレーションを生じさせ易くなる。具体的には、上記粘着剤層を構成する粘着剤として、活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤を使用することが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性成分を含有しない粘着剤を使用することが好ましい。活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤を使用することにより、上記レーザー光を照射した場合であっても上記粘着剤層が硬化することがなく、それにより透明基板からのワークハンドリングシート1の意図しない剥離を防ぐことも可能となる。上記粘着剤層の厚さとしては、特に限定されないものの、例えば、5~50μmであることが好ましい。
【実施例
【0121】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0122】
〔実施例1〕
(1)粘着性組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル70質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル30質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体に対し、そのアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して90モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル共重合体(活性エネルギー線硬化型重合体(A))を得た。この活性エネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量(Mw)を前述の方法によって測定したところ、80万であった。
【0123】
上記で得られた、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,商品名「コロネートL」)2.5質量部と、光重合開始剤としてのエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製,製品名「Irugacure OXE02」)4質量部とを溶媒中で混合し、固形分濃度が30質量%の粘着性組成物の塗布液を得た。
【0124】
(2)ワークハンドリングシートの作製
基材としての、片面が易接着処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製,製品名「コスモシャイン A4100」,厚さ:50μm)における易接着処理面に対して、上記工程(1)で得られた粘着性組成物の塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱により乾燥させた。これにより、基材上に厚さ30μmの界面アブレーション層(粘着剤層)を形成した。
【0125】
続いて、界面アブレーション層における基材とは反対の面側と、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面と貼り合わせた。これにより、剥離シート、界面アブレーション層および基材が順に積層されてなるワークハンドリングシートを得た。
【0126】
(3)重量平均分子量の測定方法
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0127】
〔実施例2~3および比較例1~3〕
光重合開始剤の種類および含有量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを製造した。なお、比較例1は、光重合開始剤を使用しなかった例である。
【0128】
〔試験例1〕(紫外線吸光度の測定)
実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、界面アブレーション層を露出させた。このワークハンドリングシートについて、紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)および付属の大形試料室(島津製作所社製,製品名「MPC-3100」)を用いて、紫外線吸光度を測定した。当該測定は、上記大形試料室に内蔵の積分球を使用して、スリット幅20nmにて、波長355nmの光線を、界面アブレーション層側の面に向けて照射させることで行った。結果を表1に示す。
【0129】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワークハンドリングシートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、露出した界面アブレーション層の露出面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面(ミラー面)に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼付し、20分静置し、粘着力測定用サンプルとした。
【0130】
その後、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワークハンドリングシートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、紫外線照射前の粘着力として表1に示す。
【0131】
また、上記と同様に得た粘着力測定用サンプルにおける界面アブレーション層に対し、基材を介して、光源として高圧水銀ランプを備えた紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線を照射し(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)、界面アブレーション層を硬化させた。この紫外線照射後の粘着力測定用サンプルについても、上記と同様にシリコンウエハのミラー面に対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、紫外線照射後の粘着力として表1に示す。
【0132】
〔試験例3〕(レーザーリフトオフ適性の評価)
(1)ワークハンドリングシート上におけるチップの準備(準備工程)
シリコンウエハ(#2000,厚さ:350μm)の片面に、ダイシングシート(リンテック社製,製品名「D-485H」)の粘着面を貼付した。続いて、当該ダイシングシートにおける上記粘着面の周縁部(シリコンウエハとは重ならない位置)に、ダイシング用リングフレームを付着させた。さらに、リングフレームの外径に合わせてダイシングシートを裁断した。その後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、シリコンウエハを、300μm×300μmのサイズを有するチップにダイシングした。その後、ダイシングシートに対して、紫外線(照度230mW/cm,光量190mJ/cm)を照射した。これにより、ダイシングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。
【0133】
続いて、実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、それにより露出した露出面と、上記の通り得られた積層体における複数のチップが存在する面とを貼り合わせた。その後、複数のチップからダイシングシートを剥離した。これにより、複数のチップをダイシングシートからワークハンドリングシートに転写し、ワークハンドリングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。
【0134】
(2)レーザー光照射によるチップの分離(分離工程)
上記工程(1)にて得られた、ワークハンドリングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体について、レーザー光照射装置を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。
【0135】
具体的には、レーザー光照射装置(キーエンス社製,製品名「MD-U1000C」)を用いてワークハンドリングシート越しにチップに対して、波長355nmのレーザー光を照射した。当該照射は、チップ中央に対し、レーザー光スポットを、円を描くように順次照射することで行った。このとき、レーザー光スポットの直径は25μmとし、照射の軌跡として生じるリングの内径が65μmとなるように行った。その他の照射条件としては周波数:40kHz、スキャン速度:500mm/s、照射量:50μJ/shotとした。また、照射は、複数のチップの中から100個のチップ(縦10個x横10個のチップのまとまり)を選択し、それらに対して行った。
【0136】
(3)ブリスターおよびチップ分離の確認
以上の照射を行ったワークハンドリングシートおよびチップについて、ワークハンドリングシートにおける基材と界面アブレーション層との界面におけるブリスターの発生の有無、およびワークハンドリングシートからのチップの脱離の有無を確認し、以下の基準に基づいて、レーザーリフトオフ適性を評価した。結果を表1に示す。
◎…100個全てのチップの位置においてブリスターが発生し、且つ、100個全てのチップが脱離した。
○…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、80個以上、100個未満であった。
×…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、80個未満であった。
【0137】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
IrugacureOXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製,製品名「IrugacureOXE02」)
Omnirad379:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)
Omnirad651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad651」)
【0138】
【表1】
【0139】
表1から明らかなように、実施例で製造したワークハンドリングシートは、レーザーリフトオフ適性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のワークハンドリングシートは、マイクロ発光ダイオードを画素として備えるディスプレイ等の製造に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0141】
1…ワークハンドリングシート
11…界面アブレーション層
12…基材
13…反応領域
2,2’…ワーク小片
3…対象物
4…レーザー光
5…ブリスター
6…レーザー光照射点
図1
図2
図3