(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】イオン源移動装置およびイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01J 3/38 20060101AFI20230807BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230807BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20230807BHJP
H01J 27/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
H01J3/38
H01J37/317 Z
H01J37/08
H01J27/02
(21)【出願番号】P 2021160666
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 一平
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 雄一
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-057385(JP,A)
【文献】特開2016-110827(JP,A)
【文献】特開平08-195185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01J 27/02
H01J 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入装置の装置本体に第一の水平方向で対向するように固定されるチャンバーを有するイオン源を、前記イオン源の重心が昇降しつつ前記装置本体に対する傾きが変化するように移動させ得るイオン源移動装置であって、
前記チャンバーの水平方向で対向する一対の側壁にそれぞれ固定された一対の第一の被支持部材をそれぞれ支持し得る一対の支持部材と、
前記一対の支持部材がそれぞれ連結された可動部材と、
前記可動部材が所定の第二の方向と交差する方向へ移動することを規制しつつ、前記可動部材を前記第二の方向に沿って昇降移動させ得る昇降機構と、
を備え、
前記昇降機構が、前記装置本体から離れた位置に配置された支柱と、前記可動部材を支持しつつ前記支柱に沿って前記第二の方向に昇降し得るガイド部材と、を備えており、
前記ガイド部材が前記第二の方向に昇降するのに伴って、前記可動部材が、前記一対の支持部材が各前記第一の被支持部
材をそれぞれ支持した状態で前記第二方向に沿って移動し得るように構成されているイオン源移動装置。
【請求項2】
前記第二の方向は鉛直方向であり、
前記イオン源が前記装置本体に固定された状態の側面視において、前記イオン源の重心と前記第一の被支持部材とが鉛直方向に沿って同一直線上にあるように構成されている請求項1に記載のイオン源移動装置。
【請求項3】
前記可動部材を上面視で前記第一の水平方向に沿って移動させる移送機構をさらに備える請求項1または2に記載のイオン源移動装置。
【請求項4】
イオン注入装置の装置本体に第一の水平方向で対向するように固定されるチャンバーを有するイオン源を、前記イオン源の重心が昇降しつつ前記装置本体に対する傾きが変化するように移動させ得るイオン源移動装置であって、
前記チャンバーの外側に固定された第一の被支持部材を支持し得る支持部材と、
前記支持部材に連結された可動部材と、
前記可動部材が所定の第二の方向と交差する方向へ移動することを規制しつつ、前記可動部材を前記第二の方向に沿って昇降移動させ得る昇降機構と、
前記可動部材を上面視で前記第一の水平方向に沿って移動させる移送機構と、を備え、
前記チャンバーが、内部でプラズマが生成されるプラズマ生成部側チャンバー部材と、
前記プラズマ生成部側チャンバー部材に着脱可能に構成され、前記プラズマからイオンビームを取り出すための電極を収容する電極側チャンバー部材と、を有し、
前記プラズマ生成部側チャンバー部材には、前記支持部材に支持され得る第二の被支持部材が固定されており、
前記電極側チャンバー部材が前記装置本体に固定され、前記第二の被支持部材が前記支持部材に支持された状態で、前記可動部材を前記第一の水平方向および前記第二の方向に移動させることで、前記プラズマ生成部側チャンバー部材を前記電極側チャンバー部材から離脱させ得るよう構成されているイオン源移動装置。
【請求項5】
装置本体と、
前記装置本体に第一の水平方向で対向するように固定されるチャンバーを有するイオン源と、
前記イオン源を、前記イオン源の重心が昇降しつつ前記装置本体に対する傾きが変化するように移動させ得るイオン源移動装置と、
を備えるイオン注入装置であって、
前記イオン源移動装置が、
前記チャンバーの水平方向で対向する一対の側壁にそれぞれ固定された一対の
第一の被支持部材を
それぞれ支持し得る一対の支持部材と、
前記一対の支持部材がそれぞれ連結された可動部材と、
前記可動部材が所定の第二の方向と交差する方向へ移動することを規制しつつ、前記可動部材を前記第二の方向に沿って昇降移動させ得る昇降機構と、
を備え、
前記昇降機構が、前記装置本体から離れた位置に配置された支柱と、前記可動部材を支持しつつ前記支柱に沿って前記第二の方向に昇降し得るガイド部材と、を備えており、
前記ガイド部材が前記第二の方向に昇降するのに伴って、前記可動部材が、前記一対の支持部材が各前記第一の被支持部
材をそれぞれ支持した状態で前記第二方向に沿って移動し得るように構成されている、イオン注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン源を装置本体に対して着脱する作業で使用し得るイオン源移動装置、および、当該イオン源移動装置を備えるイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ製造工程や半導体製造工程において使用されるイオン注入装置は、イオンビームを生成するイオン源を装置本体に固定するようにして組み立てられる。また、イオン源の内部に配置された部品の交換作業を行う場合やイオン源内部の清掃作業等を行う場合には、イオン源を装置本体から取り外して当該作業を行った後、再びイオン源を装置本体に取り付ける必要がある。イオン源を装置本体に取り付ける作業時に、または、イオン源を装置本体から取り外す作業時に、イオン源を移動させる移動機構として特許文献1に開示された移動機構が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された移動機構は、チェーンブロックを使用し、チェーンに吊り下げられたイオン源を鉛直方向および水平方向に移動させることができる吊下機構を備えている。この移動機構は、イオン源の一部にチェーンを掛けた後、チェーンブロックを駆動させてイオン源を徐々に吊り上げていくことで、イオン源を倒伏姿勢から起立姿勢に変えることができるよう構成されている。また、チェーンでイオン源を吊り下げた状態でチェーンを徐々に下ろしていくことで、イオン源を起立姿勢から倒伏姿勢に変えられるよう構成されている。
【0004】
この移動機構は、イオン源が安定して姿勢を変えられるようにイオン源を支持するイオン源支持台をさらに備えている。イオン源を装置本体に取り付ける場合には、作業者は、チェーンブロックを使用し、イオン源の一部に掛けられたチェーンを巻き上げていく。このとき、イオン源は、イオン源支持台に支持された状態で倒伏状態から起立状態に姿勢を変えた後、イオン源支持台から離れ、装置本体に近接する位置まで鉛直方向に吊り上げられる。その後、作業者がチェーンブロックを操作する等して、イオン源を水平方向に移動させて装置本体と接触させた状態とし、ボルト等の固定具によってイオン源を装置本体に固定する。また、イオン源を装置本体から取り外す場合には、作業者はまずイオン源の一部にチェーンを掛け、イオン源がチェーンブロックで吊り下げられた状態とする。そして、イオン源を装置本体に固定している固定具を取り外し、チェーンブロックを駆動させてイオン源をイオン源支持台に向けて下ろしていく。その後、イオン源がイオン源支持台に起立姿勢で支持された後、イオン源の下方側をイオン源支持台上で一方向に引き込むことでイオン源は徐々に倒れていき、最終的に倒伏姿勢となった状態でイオン源支持台に載置された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された移動機構においては、イオン源の装置本体に対する着脱作業を行う間、イオン源がイオン源支持台に支持されていない状態で、イオン源を昇降させる期間がある。この間、チェーンブロックの動作に伴ってイオン源に掛けられたチェーンが振動または揺動することから、イオン源を安定して昇降させるために、作業者がイオン源を支えながら作業を行う必要があった。また、イオン注入の対象となる基板が大型化すると、イオン源自体も大型化するとともに重量も増加することから、作業者が支えながらイオン源を昇降させることは困難となる。そこで、イオン源を安定して昇降させることができ、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性を向上させる装置が求められていた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、イオン源を安定して昇降させることができ、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性を向上させることができるイオン源移動装置およびイオン注入装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のイオン源移動装置は、
イオン注入装置の装置本体に第一の水平方向で対向するように固定されるチャンバーを有するイオン源を、前記イオン源の重心が昇降しつつ前記装置本体に対する傾きが変化するように移動させ得るイオン源移動装置であって、
前記チャンバーの外側に固定された第一の被支持部材を支持し得る支持部材と、
前記支持部材に連結された可動部材と、
前記可動部材が所定の第二の方向と交差する方向へ移動することを規制しつつ、前記可動部材を前記第二の方向に沿って昇降移動させ得る昇降機構と、
を備える。
【0009】
この構成によれば、第一の被支持部材が支持部材に支持された状態で可動部材を所定の第二の方向に沿って昇降移動させることで、イオン源を第二の方向へ昇降移動させることができる。このとき、可動部材は第二の方向と交差する方向への移動が規制されていることから、可動部材が揺動することが抑制される。したがって、可動部材に連結された支持部材が揺動することが抑制されるため、支持部材に支持されるイオン源が揺動することも抑制されることになる。その結果、作業者がイオン源を支えながらイオン源を昇降させることが容易となる。または、作業者がイオン源を支えることなくイオン源を昇降させることができる。すなわち、本発明のイオン源移動装置によれば、イオン源を安定して昇降させることができ、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のイオン源移動装置は、一対の前記第一の被支持部材が、前記チャンバーの水平方向で対向する一対の側壁にそれぞれ固定されており、前記可動部材が、前記支持部材が各前記第一の被支持部材をともに支持した状態で前記第二の方向に沿って移動し得るよう構成されていてもよい、
【0011】
この構成によれば、支持部材がチャンバーの水平方向で対向する一対の側壁にそれぞれ固定された一対の被支持部材を支持した状態で可動部材は昇降移動することになる。したがって、支持部材がチャンバーを挟む少なくとも二か所でチャンバーを支持することになることから、イオン源の揺動がさらに抑制され、より安定した状態でイオン源を昇降させることができる。
【0012】
また、本発明のイオン源移動装置は、前記第二の方向は鉛直方向であり、前記イオン源が前記装置本体に固定された状態の側面視において、前記イオン源の重心と前記第一の被支持部材とが鉛直方向に沿って同一直線上にあるように構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、イオン源を傾けることなく鉛直方向に昇降させることができる。したがって、イオン源の揺動がさらに抑制され、より安定した状態でイオン源を昇降させることができる。
【0014】
また、本発明のイオン源移動装置は、前記可動部材を上面視で前記第一の水平方向に沿って移動させる移送機構をさらに備える構成とされていてもよい。
【0015】
また、本発明のイオン源移動装置は、
前記チャンバーが、内部でプラズマが生成されるプラズマ生成部側チャンバー部材と、前記プラズマ生成部側チャンバー部材に着脱可能に構成され、前記プラズマからイオンビームを取り出すための電極を収容する電極側チャンバー部材と、を有し、
前記プラズマ生成部側チャンバー部材には、前記支持部材に支持され得る第二の被支持部材が固定されており、
前記電極側チャンバー部材が前記装置本体に固定され、前記第二の被支持部材が前記支持部材に支持された状態で、前記可動部材を前記第一の水平方向および前記第二の方向に移動させることで、前記プラズマ生成部側チャンバー部材を前記電極側チャンバー部材から離脱させ得るよう構成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、イオン源移動装置を使用して、イオン源を装置本体に固定させた状態で、プラズマ生成部側チャンバー部材を電極側チャンバー部材から離脱させることができる。したがって、装置本体から電極側チャンバー部材を離脱させて、電極側チャンバー部材内に配置された部品を交換する作業や電極側チャンバー部材内の清掃等を行うことができる。つまり、装置本体からイオン源全体を取り外すことなく、電極側チャンバー部材内に対する作業を行うことができる。
【0017】
また、本発明のイオン注入装置は、
装置本体と、
前記装置本体に第一の水平方向で対向するように固定されるチャンバーを有するイオン源と、
前記イオン源を、前記イオン源の重心が昇降しつつ前記装置本体に対する傾きが変化するように移動させ得るイオン源移動装置と、
を備えるイオン注入装置であって、
前記イオン源移動装置が、
前記チャンバーの外側に固定された第一の被支持部材を支持し得る支持部材と、
前記支持部材に連結された可動部材と、
前記可動部材が所定の第二の方向と交差する方向へ移動することを規制しつつ、前記可動部材を前記第二の方向に沿って昇降移動させ得る昇降機構と、
を備える。
【0018】
この構成によれば、第一の被支持部材が支持部材に支持された状態で可動部材を所定の第二の方向に沿って昇降移動させることで、イオン源を昇降移動させることができる。このとき、可動部材は第二の方向と交差する方向への移動が規制されていることから、可動部材が揺動することが抑制される。したがって、可動部材に連結された支持部材が揺動することが抑制されるため、支持部材に支持されるイオン源が揺動することも抑制されることになる。その結果、作業者がイオン源を支えながらイオン源を昇降させることが容易となる。または、作業者がイオン源を支えることなくイオン源を昇降させることができる。すなわち、本発明のイオン源移動装置によれば、イオン源を安定して昇降させることができ、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性を向上させることができる。また、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性が向上することにより、当該作業に要する時間が短縮される。したがって、部品交換や清掃等のメンテナンス作業を行うためにイオン注入装置の運転を停止させる期間を短縮させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、イオン源を安定して昇降させることができ、イオン源を装置本体に対して着脱する作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態におけるイオン源移動装置およびイオン注入装置を示す模式的平面図。
【
図2】同実施形態におけるイオン源移動装置を示す斜視図。
【
図3】同実施形態におけるイオン源が装置本体に固定された状態を示すイオン源の斜視図。
【
図4】同実施形態におけるプラズマ生成部側チャンバー部材が電極側チャンバー部材から離脱された状態を示すイオン源の斜視図。
【
図5A】同実施形態におけるイオン源が第一の位置にある状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【
図5B】同実施形態におけるイオン源が第一の位置から第二の位置の間に位置する状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【
図5C】同実施形態におけるイオン源が第二の位置にある状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【
図5D】同実施形態におけるイオン源が第三の位置にある状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【
図6A】同実施形態におけるイオン源が固定位置にある状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【
図6B】同実施形態におけるプラズマ生成部側チャンバー部材が電極側チャンバー部材から離脱された状態を示すイオン源およびイオン源移動装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態におけるイオン源移動装置10、およびイオン源移動装置10を備えるイオン注入装置100の構成について説明する。
図1~
図6Bは本発明が理解されることを目的として作成されており、各図間における各構成要素の長さ寸法の比や縮尺の比率は必ずしも一致しているものではない。また、本実施形態においては、後述する第一の水平方向D1は各図に示されたX軸と平行であり、第二の方向D2はZ軸に平行である。X軸、Y軸、Z軸は直交しており、X軸は水平方向と一致し、Z軸は鉛直方向と一致している。
【0022】
図1に示すように、イオン注入装置100は、基板SにイオンビームIBを照射することで基板Sにイオン注入処理を施す装置である。イオン注入装置100は、イオンビームIBを生成するイオン源20と、イオン源20で生成されたイオンビームIBを基板Sに到達させるように輸送する装置本体30と、を備えている。また、イオン注入装置100は、イオン源20を装置本体30に着脱する場合に使用されるイオン源移動装置10をさらに備えている。
【0023】
まず、本実施形態におけるイオン源20について説明する。
イオン源20は、内部空間を有するチャンバー21を有する。また、イオン源20は、チャンバー21の内部において外部から供給される原料からプラズマを生成し、当該プラズマからイオンビームIBを引き出し得るように構成されている。
【0024】
装置本体30は、イオン源20から引き出されたイオンビームIBを基板Sに到達させるように輸送する輸送部31と、内部が高真空状態とされており、基板Sが配置される処理室32を備えている。輸送部31は、イオンビームIBに含まれるイオンを質量分離して所望のイオンを処理室32に輸送するための質量分析磁石31aを備えている。処理室32の内部では、基板SにイオンビームIBが照射される。基板SにイオンビームIBが照射されることによって、基板Sにイオン注入処理が施されることになる。本実施のイオン注入装置100はフラットパネルディスプレイ製造工程で使用されるものであり、基板Sは全体矩形状のガラス基板である。尚、基板Sはガラス基板に限定されず、基板Sの形状も特定の形状に限定されるものではない。また、イオン注入装置100はフラットパネルディスプレイ製造工程で使用されることに限らず、例えば、半導体製造固定で使用されるものであってもよい。
【0025】
図2に示すように、装置本体30は、イオン源20が固定される取付面30aを有する。イオン源20は、装置本体30と第一の水平方向D1について対向するように、取付面30aにおいて装置本体30に固定されている。より詳細には、イオン源20と装置本体30は、互いの接触面が第一の水平方向D1と直交するように、換言すれば、互いの接触面が鉛直方向と平行となるように、不図示のボルト等の固定具により固定されている。尚、イオン源20と装置本体30とが第一の水平方向D1について対向することは、イオン源20と装置本体30の互いの接触面が鉛直方向と平行であることに限定されるものではない。例えば、イオン源20と装置本体30の互いの接触面が鉛直方向から水平方向に傾いた状態で、イオン源20が装置本体に30に固定されていてもよい。すなわち、第一の水平方向D1は、イオン源20と装置本体30とが互いに対向する方向の水平成分であると捉えてよい。
【0026】
図3に示すように、イオン源20のチャンバー21は、装置本体30の取付面30aに取り付けられる第一チャンバー部材21aと、第一チャンバー部材21aに着脱可能に固定されている第二チャンバー部材21bとにより構成されている。第一チャンバー部材21aは、装置本体30に固定される第一フランジ部22aを有する。第一チャンバー部材21aは、第一フランジ部22aを取付面30aに接触させた状態でボルト等の固定部材(不図示)を使用して装置本体30に固定される。
【0027】
本実施形態においては、イオン源20と装置本体30とは、第一チャンバー部材21aと取付面30aが第一の水平方向D1で対向した状態で固定されている。より詳細には、イオン源20と装置本体30とは、第一フランジ部22aと取付面30aとが互いに接触する接触面が鉛直方向と平行な状態で互いに固定されている。
【0028】
第二チャンバー部材21bは、第一チャンバー部材21aに固定される第二フランジ部22bを有する。第二チャンバー部材21bは、第二フランジ部22bを第一チャンバー部材21aの表面に接触させた状態で、ボルト等の固定部材(不図示)を使用して第一チャンバー部材21aに固定される。
【0029】
また、
図3および
図4に示すように、イオン源20は、第一チャンバー部材21aと第二チャンバー部材21bとを連結するヒンジ部材23を備えている。ヒンジ部材23は、イオン源20が装置本体30に固定された状態について、第一チャンバー部材21aの下方側端部と第二チャンバー部材21bの下方側端部を連結している。ヒンジ部材23は、第一チャンバー部材21aが装置本体30に固定された状態で、第二チャンバー部材21bを第一チャンバー部材21aに対して回転軸A1を中心に回転動作させる。
【0030】
イオン源20においては、第二チャンバー部材21bの内部で外部から供給された原料からプラズマが生成される。
図4に示すように、第二チャンバー部材21bの内部には、原料からプラズマを生成させるための熱電子を供給するフィラメントやフィラメントを支持する部品等の部品24bが配置されている。つまり、本実施形態における第二チャンバー部材21bは、本発明のプラズマ生成部側チャンバー部材に相当する。尚、
図4に示された第二チャンバー部材21b内に配置される部品24bを模式的に表したものであり、部品24bは特定の部品に限定されるものではない。
【0031】
図1に示すように、第一チャンバー部材21aは、第一チャンバー部材21a内で生成したプラズマからイオンビームIBを取り出すための引出電極等の電極24aを収容している。すなわち、本実施形態における第一チャンバー部材21aは、本発明の電極側チャンバー部材に相当する。
【0032】
第一チャンバー部材21aが装置本体30に固定された状態で、第一チャンバー部材21aと第二チャンバー部材21bの固定が解除されると、第二チャンバー部材21bがヒンジ部材23を介して回転軸A1を中心に回転移動できるようになる。これにより、
図4に示すように、第二チャンバー部材21bの内部空間を露出させることができ、作業者が第二チャンバー部材21b内に配置された部品24bの交換作業や、第二チャンバー部材21b内の清掃作業等を行うことが可能となる。つまり、イオン源20は、イオン源20全体を装置本体30から取り外すことなく、第二チャンバー部材21bを第一チャンバー部材21aから離脱させて各種作業を行えるように構成されている。
【0033】
本実施形態におけるイオン源20においては、電極24aの交換作業や第一チャンバー部材21a内の清掃作業などを行う場合には、第一チャンバー部材21aを装置本体30から離脱させ、イオン源20全体を装置本体30から取り外す必要がある。
しかしながら、一般に、フィラメント等の消耗部品が配置される第二チャンバー部材21b内部のメンテナンス作業を行う頻度は、第一チャンバー部材21aの内部のメンテナンス作業を行う頻度よりも高い。したがって、イオン源20においては、より頻度の高い第二チャンバー部材21b内のメンテナンス作業を、イオン源20全体を装置本体30から離脱させることなく行うことができる。イオン源20全体を装置本体30から離脱させるのに比較して、第二チャンバー部材21bのみを離脱させることは作業が容易である。したがって、イオン源20全体を装置本体30から離脱させる場合と比較して、第二チャンバー部材21b内に配置された部品24b等の交換を行う作業や、第二チャンバー部材21b内の清掃作業を短時間で行うことができる。
【0034】
図3に示すように、第一チャンバー部材21aの水平方向で対向する一対の側壁25a、25aの外側には、後述するイオン源移動装置10の備える可動部材12に支持される一対の第一シャフト部材26a、26aが固定されている。第一シャフト部材26aは、本発明の第一の被支持部材に相当する。尚、本発明の第一被支持部材の構成は、本実施形態における第一シャフト部材26aに限定されるものでない。本発明の第一被支持部材の構成は、特定の構成に限定されるものではない。
【0035】
また、一対の側壁25a、25aには、後述するイオン源移動装置10の備えるガイドレール部材18、18上を転動し得る一対の上側ローラー27a、27a、および、一対の下側ローラー27b、27bが配置されている。上側ローラー27aおよび下側ローラー27bの「上側」および「下側」は、イオン源20が装置本体30に取り付けた状態での相対的な位置関係を単に表したものである。
【0036】
また、第二チャンバー部材21bの水平方向で対向する一対の側壁25b、25bの外側には、可動部材12に支持される一対の第二シャフト部材26b、26bが固定されている。第二シャフト部材26bは、本発明の第二の被支持部材に相当する。尚、本実施形態においては、一対の第二シャフト部材26b、26bは第二フランジ部22b上に配置されているが、この構成に限定されるものではない。また、本発明の第二被支持部材の構成は、本実施形態における第二シャフト部材26bに限定されるものでない。本発明の第二被支持部材の構成は、特定の構成に限定されるものではない。
【0037】
図6Aに示すように、イオン源20は、イオン源20の側面視において、第一シャフト部材26aとイオン源20の重心G1は直線L1上に位置するように配置されている。イオン源20が装置本体30に固定された状態では、直線L1は鉛直方向に平行である。すなわち、イオン源20が装置本体30に固定された状態におけるイオン源20の側面視で、第一シャフト部材26aとイオン源20の重心G1は鉛直方向に沿って同一直線上にある。
【0038】
次に、本実施形態におけるイオン源移動装置10について説明する。
図2に示すように、イオン源移動装置10は、一対の第一シャフト部材26a、26aをそれぞれ支持し得る一対の支持部材11、11を備えている。また、イオン源移動装置10は、支持部材11、11に連結された可動部材12を備えている。支持部材11は、イオン源20の第一シャフト部材26aに引っ掛けられて第一シャフト部材26aを支持するフック11aと、フック11aと可動部材12とを連結するチェーン11bとにより構成される。尚、支持部材11の構成はこれに限定されるものではない。例えば、チェーン11bの代わりにワイヤーが用いられていても良い。また、支持部材11と可動部材12とが剛体により連結されていてもよく、支持部材11と可動部材12とが予め一体に成形されていてもよい。
【0039】
イオン源移動装置10は、可動部材12を所定の第二の方向D2に沿って昇降移動させる昇降機構13をさらに備えている。また、可動部材12が昇降機構13によって昇降移動される間、可動部材12は第二の方向D2と交差する方向へ移動すること、つまり、第二の方向D2とは異なる方向へ移動することが規制されている。本実施形態における第二の方向D2は鉛直方向である。尚、昇降機構13は可動部材12を上下に昇降させられるものであればよく、第二の方向D2は鉛直方向であることに限定されない。
【0040】
本実施形態における昇降機構13は、第一の水平方向D1に所定間隔離間して配置された一対の一側支柱13a、13aを備えている。また、昇降機構13は、第一の水平方向D1に所定間隔離間して配置された一対の他側支柱13b、13bを備えている。各一側支柱13aと各他側支柱13bとは互いにY方向について対向するように配置されている。イオン源移動装置10は、一側支柱13a、13aと他側支柱13b、13bの間の領域でイオン源20を移動させる。
【0041】
図2に示すように、昇降機構13は、一対の一側支柱13a、13aに沿って第二の方向D2に昇降する一側ガイド部材14aと、他側支柱13b、13bに沿って第二の方向D2に昇降する他側ガイド部材14bを備えている。
【0042】
図2に破線で示すように、一方の他側支柱13bの内部には、第二の方向D2に平行に配置されているレール15aと、レール15a上を移動するブロック15bと、ブロック15bを駆動させるモーター15cを備える。そして、ブロック15bは他側ガイド部材14bに連結されている。図示はされていないが、他方の他側支柱13bの内部においても同様にレール15a、ブロック15b、モーター15cが収容されている。一対の他側支柱13b、13b内に配置された各モーター15cが動作すると、各ブロック15bが各レール15a上を移動し、他側ガイド部材14bが第二の方向D2に沿って移動することになる。
【0043】
また、
図5Aにおいて破線で示すように、一側支柱13a、13aの内部にも、他側支柱13b、13bと同様にレール15a、ブロック15b、モーター15cが収容されている。つまり、一対の一側支柱13a、13a内に配置された各モーター15cが動作すると、各ブロック15bが各レール15a上を移動し、一側ガイド部材14aが第二の方向D2に沿って移動することになる。
【0044】
一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bは、一側支柱13a、13a、および他側支柱13b、13bの内部に配置された四つのモーター15cが駆動することで、第二の方向D2に沿って昇降移動する。四つのモーター15cは、不図示のセンサーによって一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14の位置を検出した結果に基づいて制御されており、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bが常に高さ方向で同位置にあるように昇降移動する。
【0045】
可動部材12は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bに支持されている。したがって、可動部材12は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bが第二の方向D2に沿って昇降移動するのに伴って、第二の方向D2に沿って昇降移動する。また、
図6Aに示すように、可動部材12は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bの内部にそれぞれ配置されたブロック16bに固定されている。
【0046】
後述するように、ブロック16bは、モーター16cによって駆動され、レール16a上を移動する。ブロック16bは、モーター16cによって駆動されない間は、レール16a上で停止した状態を維持するように構成されており、レール16a上で移動することがない。これによって、可動部材12は、第二の方向D2と交差する方向、すなわち第二の方向D2に沿う方向と異なる方向への移動が規制され得る構成とされている。尚、後述するように、ブロック16bは、モーター16cの駆動によって第一の水平方向D1に沿って移動できるように構成されていることから、可動部材12も第一の水平方向D1に沿って移動可能である。
【0047】
可動部材12は、第二の方向D2と交差する方向、すなわち第二の方向D2に沿う方向と異なる方向への移動が規制され得る構成となっているが、可動部材12は常に第二の方向D2に沿う方向と異なる方向への移動が規制されているものではない。つまり、可動部材12は、イオン源20を装置本体30に対して着脱させる作業に伴って第二の方向D2に沿って昇降移動する間に、第二の方向D2に沿う方向と異なる方向への移動が規制され得るものであればよい。また、昇降機構13は、可動部材12を、第二の方向D2と交差する方向への移動を規制しつつ、第二の方向D2に沿って昇降させられるものであればどのような構成であってもよく、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0048】
図5Aに示すように、本実施形態におけるイオン源移動装置10は、可動部材12を第一の水平方向D1に沿って移動させる移送機構16を備えている。移送機構16は、可動部材12を上面視で第一の水平方向D1に沿って移動させられるものであればよく、チェーンブロック等を使用するものであってもよい。本実施形態においては、移送機構16は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bの内部に収容されるように配置されている。
【0049】
図1に示すように、移送機構16は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bの内部にそれぞれ配置されたレール16a、レール16a上を移動するブロック16b、およびブロック16bを駆動させるモーター16cを備えている。可動部材12は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bの内部に配置された一対のブロック16bに連結されている。したがって、モーター14cがブロック16bを駆動させると、ブロック16bがレール16aに沿って移動するのに伴い、可動部材12が移動する。つまり、移送機構16が駆動すると可動部材12は、一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14b上を第一の水平方向D1に沿って移動することになる。尚、移送機構16は本実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、移送機構16はボールねじによって構成されていてもよい。この場合、レール16aとブロック16bを、それぞれ、ねじ軸とねじ軸上を移動するボールナットに置き換え、可動部材12が当該ボールナットに固定される構成とすればよい。
【0050】
図2に示すように、イオン源移動装置10は、イオン源20を支持しつつ、イオン源20が第一の水平方向D1に沿って移動するようにチャンバー21をガイドする一対のガイドレール部材18、18をさらに備えている。各ガイドレール部材18は、第一の水平方向D1に平行なガイド溝18aを備えている。イオン源20は、イオン源20の有する上側ローラー27aおよび下側ローラー27bがガイド溝18aに嵌められるようにしてガイドレール部材18、18に支持される。そして、作業者が人力または不図示のウィンチなどの機械等を使用してイオン源20に外力を加えると、イオン源20は上側ローラー27aおよび下側ローラー27bがガイド溝18a上を転がり、イオン源20は第一の水平方向D1に沿ってガイドレール部材18、18上を移動する。つまり、イオン源20は、ガイドレール部材18、18によって支持されつつ第一の水平方向D1に沿って移動するようにガイドされる。
【0051】
また、イオン源移動装置10は、イオン源20を搬送するための台車19を備えている。台車19は、イオン源20の上側ローラー27aおよび下側ローラー27bを受け入れる一対の台車側ガイド溝19a、19aと、台車19を移動させるための四つの車輪19bを備えている。イオン源20は、台車側ガイド溝19a、19aに、上側ローラー27aおよび下側ローラー27bが嵌められた状態で台車19に支持される。そして、イオン注入装置100の組立時やイオン源20の交換時等においては、イオン源20は、台車19に載置された状態で、外部とイオン注入装置100との間を搬送される。
【0052】
また、台車19は、台車側ガイド溝19a、19aの底面とガイド溝18a、18aとそれぞれ底面の高さが一致するように構成されている。したがって、作業者が、イオン源20が載置された台車19をガイドレール部材18,18に接触させ、人力または不図示の機械等でイオン源20を装置本体30に近づけるように移動させることによって、イオン源20は台車19上からガイドレール部材18、18上に移動させることができる。
【0053】
次に、イオン源移動装置10の動作について説明する。
図5A~
図5D、および
図6A、
図6Bは、イオン源移動装置10のY方向から見た側面図であり、理解を容易にするために他側ガイド部材14bより内側の一部の構成のみを示している。
図5Aおよび
図5Bにおいては、一点鎖線によってガイド溝18aの底面が示されている。
【0054】
図5Aに破線で示すように、イオン源20を装置本体30に取り付ける場合には、まず、イオン源20が、第一フランジ部22aを下方に向けた倒伏姿勢で台車19に載置された状態で外部から搬送されてくる。そして、台車19が、台車側ガイド溝19aとガイド溝18aとが第一の水平方向D1に沿って同一直線上にあるように位置付けられる。その後、イオン源20が、第一の水平方向D1に移動させられることで、ガイドレール部材18に載置され、位置P1に位置付けられる。続いて、イオン源20の第一シャフト部材26aにフック11aが掛けられる。
【0055】
その後、昇降機構13が駆動し、一側ガイド部材14aと他側ガイド部材14bが第二の方向D2に沿って上方に移動することで、可動部材12が第二の方向D2に沿って上方に移動する。すると、
図5Bに示すように、下側ローラー27bがガイド溝18a上を転動しつつ、イオン源20が第一シャフト部材26aを介して持ち上げられる。これに伴い、イオン源20は、重心G1が曲線軌道を描きながら上方に移動するように起き上がり、イオン源20の姿勢が変化する。
【0056】
その後、
図5Cに示すように、イオン源20がガイド溝18aから離れた後は、第一シャフト部材26aと重心G1が鉛直方向に沿って同一直線上にあることから、イオン源20は、姿勢を変えずに装置本体30と対向する第二の位置P2まで移動する。そして、移送機構16を駆動させて可動部材12を第一の水平方向D1に沿って移動させることで、イオン源20を装置本体30に近づける。このとき、
図5Dに示すように、移送機構16は、イオン源20を、装置本体30に対する取り付け作業が行われる位置である第三の位置P3まで移動させる。その後、作用者によって、イオン源20が装置本体30に固定される。
イオン源20を装置本体30から離脱させる動作は先ほどの工程と単に反対の工程を経て行われるのみであるから、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態におけるイオン源移動装置10においては、第一の被支持部材である第一シャフト部材26aが支持部材11に支持された状態で可動部材12を所定の第二の方向D2に沿って昇降移動させることで、イオン源20を昇降移動させることができる。このとき、可動部材12は第二の方向D2と交差する方向への移動が規制されていることから、可動部材12が揺動することが抑制される。したがって、可動部材12に連結された支持部材11が揺動することが抑制されるため、支持部材11に支持されるイオン源20が揺動することも抑制されることになる。その結果、作業者がイオン源20を支えながらイオン源20を昇降させることが容易となる。または、作業者がイオン源20を支えることなくイオン源20を昇降させることができる。すなわち、イオン源20を安定して昇降移動させることができ、イオン源20を装置本体30に対して着脱する作業の作業性に加え、作業の安全性も向上させることができる。
【0058】
また、イオン源移動装置10においては、一対の第一の被支持部材である第一シャフト部材26a、26aが、チャンバー21の水平方向で対向する一対の側壁25a、25aにそれぞれ固定されており、可動部材12が、支持部材11が各第一シャフト部材26a、26aをともに支持した状態で第二の方向D2に沿って移動する。したがって、支持部材11がチャンバー21を挟む二か所でチャンバーを支持することになることから、イオン源20の揺動がさらに抑制され、より安定した状態でイオン源20を昇降させることができるようになっている。
【0059】
さらに、イオン源20の重心G1と第一の被支持部材である第一シャフト部材26aとが鉛直方向に沿って同一直線上にある。したがって、イオン源20を傾けることなく鉛直方向に昇降させることができ、イオン源の揺動がさらに抑制され、より安定した状態でイオン源20を昇降させることができるようになっている。
【0060】
また、イオン源移動装置10は、昇降機構13に加え、可動部材12を第一の水平方向D1に沿って移動させる移送機構16をさらに備えている。したがって、昇降機構13を使用して、イオン源20を起立姿勢で装置本体30に対向する第二の位置P2に位置づけた後、移送機構15を使用して、イオン源20を取付作業位置となる第三の位置P3まで移動させることができる。
【0061】
次に、第二チャンバー部材21bを第一チャンバー部材21aから離脱される動作について説明する。
図6Aに示すように、まず、昇降機構13および移送機構16を駆動させて可動部材12を第二シャフト部材26bの上方に移動させ、フック11aを第二シャフト部材26bに掛ける。その後、昇降機構13を駆動させて一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bを下降させつつ、移送機構16を駆動させて可動部材12を一側ガイド部材14aおよび他側ガイド部材14bに対して第一の水平方向D1に沿って装置本体30から離れる方向に移動させる。すると、
図6Bにおいて破線で示すように、第二チャンバー部材21bが、ヒンジ部材23を介して回転移動するようにして第一チャンバー部材21aから離脱する。
【0062】
本実施形態においては、第二チャンバー部材21bは、第二チャンバー部材21bの重心G2が、第一の水平方向D1について第二シャフト部材26bより第一チャンバー部材21aとは反対側に位置するよう構成されている。したがって、第二シャフト部材26bは自重によりヒンジ部材23を介して回転軸A1まわりに回転動作する。つまり、このとき、作業者は、支持部材11が、第二シャフト部材26bを支えながら第二シャフト部材26bが徐々に回転動作するよう昇降機構13および移送機構16を動作させている。
【0063】
このように、第一チャンバー部材21aが第二チャンバー部材21bに対して回転軸Aを中心に回転移動することで、第一チャンバー部材21aが第二チャンバー部材21bから離脱する。その後、最終的に、
図6Bにおいて一点鎖線で示された支持台17に第一チャンバー部材21aが支持された状態となる。すると、第一チャンバー部材21aの内部空間が露出し、作業者は第二チャンバー部材21b内の部品交換や清掃作業等のメンテナンス作業を行えるようになる。尚、支持台17は、第二チャンバー部材21aを支持できるものであればどのような構成であってもよい。支持台17は、ガイドレール部材18の一部として構成されていてもよく、作業時に外部から持ち運ばれてくるものであってもよい。
【0064】
第二チャンバー部材21b内のメンテナンス作業が完了した後は、第二チャンバー部材21bを第一チャンバー部材21aに固定する必要があるが、この工程は単に先ほどとは反対の工程となるのみであるため、説明は省略する。
【0065】
また、本発明は前記実施形態および前記変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
100 イオン注入装置
10 イオン源移動装置
11 支持部材
12 可動部材
13 昇降機構
14a 一側ガイド部材
14b 他側ガイド部材
16 移送機構
19 台車
20 イオン源
21 チャンバー
21a 第一チャンバー部材(電極側チャンバー部材)
21b 第二チャンバー部材(プラズマ生成部側チャンバー部材)
23 ヒンジ部材
26a 第一シャフト部材(第一の被支持部材)
26b 第二シャフト部材(第一の被支持部材)
30 装置本体
S 基板
IB イオンビーム
D1 第一の水平方向
D2 第二の方向
G1 イオン源の重心
G2 第二チャンバー部材(プラズマ生成部側チャンバー部材)の重心