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特許7325740見え方シミュレーション方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】見え方シミュレーション方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
A61B3/028
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021036821
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137341
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2022-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 令和2年6月25日 日本白内障屈折矯正手術学会雑誌 総説「白内障治療-最良の術後視機能を目指して-」2020/June Vol.34 No.2 254ページ~261ページ
(73)【特許権者】
【識別番号】507189460
【氏名又は名称】学校法人金沢医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521099811
【氏名又は名称】特定非営利活動法人紫外線から眼を守るEyes Arc
(73)【特許権者】
【識別番号】521099822
【氏名又は名称】一般社団法人VIZ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114546
【弁理士】
【氏名又は名称】頭師 教文
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 洋
(72)【発明者】
【氏名】福田 健作
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143553(JP,A)
【文献】特開2011-170642(JP,A)
【文献】特表2015-510325(JP,A)
【文献】国際公開第2013/109941(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、
シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、
を有する見え方シミュレーション方法であり、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記処理では、
前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる
見え方シミュレーション方法。
【請求項2】
被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、
取得された前記解像度に応じ、前記表示デバイスが表現可能な最小視角を設定する処理と、
設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する処理と、
シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、
有す見え方シミュレーション方法。
【請求項3】
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記処理では、
前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる、
請求項2に記載の見え方シミュレーション方法。
【請求項4】
設定された前記最小視角と前記表示デバイスの前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する前記処理では、
設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、仮想空間上のランドルト環を撮像するバーチャルカメラの焦点距離を決定する処理と、
決定された前記焦点距離を有する前記バーチャルカメラで撮像された前記ランドルト環の見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、視力値毎に決定する処理と、
が実行される、請求項2又は3に記載の見え方シミュレーション方法。
【請求項5】
被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、
シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、
を有する見え方シミュレーション方法であり、
前記表示デバイスの解像度は、被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像が表示されるウィンドウの大きさにより定まる
見え方シミュレーション方法。
【請求項6】
被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、
シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、
を有する見え方シミュレーション方法であり、
前記画像は、画素毎に視線方向の距離の情報を有する画像であり、
前記視力値が距離毎に与えられる場合、前記画像として、距離に応じた見え方がシミュレーションされる
見え方シミュレーション方法。
【請求項7】
コンピュータに、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、
シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記機能では、
前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる、プログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、
取得された前記解像度に応じ、前記表示デバイスが表現可能な最小視角を設定する機能と、
設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する機能と、
シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータに、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、
シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記表示デバイスの解像度は、被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像が表示されるウィンドウの大きさにより定まる、プログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、
シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、
前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、
を実現させるためのプログラムであり、
前記画像は、画素毎に視線方向の距離の情報を有する画像であり、
前記視力値が距離毎に与えられる場合、前記画像として、距離に応じた見え方がシミュレーションされる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見え方シミュレーション方法、見え方シミュレーション情報提供方法、シミュレータ、データ構造、プログラム及び仮想空間上におけるランドルト環の見え方をシミュレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを装着した後の見え方をシミュレーションする目的で、実在するカメラの前方にレンズを配置し、レンズを通して観察される現実の風景を撮像する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3814017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、現実のカメラを使用する以上、機械誤差等が避けられず、撮像された画像が理論上の見え方と一致するとは言い切れない。
また今日では、視力値に応じた見え方をシミュレーションした画像(以下「シミュレーション画像」ともいう)の生成が可能になっているが、シミュレーション画像を表示する表示デバイスの解像度の違いが考慮されていない。例えば4Kディスプレイ用に作成したシミュレーション画像をハイビジョンディスプレイ(すなわち1Kディスプレイ)に表示したのでは、解像度の不足により本来の見え方にならない。
【0005】
本発明は、観察者が観察に用いる表示デバイスの表現能力が違っても、被対象者の見え方を正確に再現するシミュレーション画像の生成を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、を有する見え方シミュレーション方法であり、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記処理では、前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる見え方シミュレーション方法である。
請求項に記載の発明は、被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、取得された前記解像度に応じ、前記表示デバイスが表現可能な最小視角を設定する処理と、設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する処理と、シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、を有す見え方シミュレーション方法である。
請求項3に記載の発明は、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記処理では、前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる、請求項2に記載の見え方シミュレーション方法である。
請求項4に記載の発明は、設定された前記最小視角と前記表示デバイスの前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する前記処理では、設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、仮想空間上のランドルト環を撮像するバーチャルカメラの焦点距離を決定する処理と、決定された前記焦点距離を有する前記バーチャルカメラで撮像された前記ランドルト環の見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、視力値毎に決定する処理と、が実行される、請求項2又は3に記載の見え方シミュレーション方法である。
請求項5に記載の発明は、被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、を有する見え方シミュレーション方法であり、前記表示デバイスの解像度は、被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像が表示されるウィンドウの大きさにより定まる見え方シミュレーション方法である。
請求項6に記載の発明は、被対象者の見え方をコンピュータがシミュレーションする方法であって、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する処理と、シミュレーションする視力値を受け付ける処理と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する処理と、を有する見え方シミュレーション方法であり、前記画像は、画素毎に視線方向の距離の情報を有する画像であり、前記視力値が距離毎に与えられる場合、前記画像として、距離に応じた見え方がシミュレーションされる見え方シミュレーション方法である。
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する前記機能では、前記視力値と前記解像度とに応じて特定される強度値を有するぼかし処理が、予め用意した画像に加えられる、プログラムである。
請求項8に記載の発明は、コンピュータに、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、取得された前記解像度に応じ、前記表示デバイスが表現可能な最小視角を設定する機能と、設定された前記最小視角と前記解像度とを用い、任意の視力値に応じた見え方をシミュレーションするぼかし処理の強度値を、前記表示デバイス用に決定する機能と、シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、を実現させるためのプログラムである。
請求項9に記載の発明は、コンピュータに、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記表示デバイスの解像度は、被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像が表示されるウィンドウの大きさにより定まる、プログラムである。
請求項10に記載の発明は、コンピュータに、被対象者の見え方をシミュレーションした画像が表示される表示デバイスの解像度を取得する機能と、シミュレーションする視力値を受け付ける機能と、前記視力値に応じた被対象者の見え方をシミュレーションした前記画像を、前記解像度を用いて生成する機能と、を実現させるためのプログラムであり、前記画像は、画素毎に視線方向の距離の情報を有する画像であり、前記視力値が距離毎に与えられる場合、前記画像として、距離に応じた見え方がシミュレーションされる、プログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、観察者が観察に用いる表示デバイスの表現能力が違っても、被対象者の見え方を正確に再現するシミュレーション画像を生成できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1で使用するネットワークシステムの構成例を説明する図である。
図2】サーバのハードウェア構成の一例を説明する図である。
図3】実施の形態1で使用するサーバと端末との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。
図4】眼内レンズの種類に応じた視力値(全距離)の一例を説明する図表である。
図5】実施の形態1における強度値テーブルの生成動作の一例を説明するフローチャートである。
図6】シミュレーション画像の表示に使用するモニタの解像度により定まる最高視力と仮想空間上での視力測定に使用するバーチャルカメラに求められる条件を説明する図である。(A)はヒトの視角とランドルト環との関係を示し、(B)はバーチャルカメラの画角トランドルト環の関係を示す。
図7】任意のモニタの画素数とバーチャルカメラの焦点距離との関係を定める対応表の一例を説明する図である。
図8】仮想空間内に配置するランドルト環の例を示す図である。
図9】仮想空間内におけるランドルト環の撮影の様子を説明する図である。
図10】切れ目の平均明度の計測を説明する図である。
図11】視力値に「ぼかしフィルタ」の強度値を対応付けた強度値テーブルの一例を説明する図である。
図12】実施の形態1において生成されたシミュレーション画像の表示例を説明する図である。
図13】実施の形態1において生成されたシミュレーション画像の他の表示例を説明する図である。
図14】実施の形態2で使用するネットワークシステムの構成例を説明する図である。
図15】実施の形態2で使用するサーバと端末との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。
図16】実施の形態3で使用するネットワークシステムの構成例を説明する図である。
図17】実施の形態3で使用するサーバと端末との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。
図18】実施の形態4で使用するネットワークシステムの構成例を説明する図である。
図19】実施の形態4で使用するサーバと端末との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。
図20】実施の形態5で使用するネットワークシステムの構成例を説明する図である。
図21】実施の形態5で使用するサーバと端末との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
<前提>
白内障の手術では、患者の眼球内から水晶体が取り出され、代わりに眼内レンズが装着される。
眼内レンズには様々な種類があり、近方用、遠方用、多焦点用に分類される。
眼内レンズは、種類やモデル番号等の違いにより、個々の焦点距離における視力値が異なる。このため、眼内レンズの種類やモデル番号等が異なれば、術後の見え方も相違する。
【0010】
なお、患者は、一般的に専門的な知識を有していない。このため、眼内レンズの種類やモデル番号等を知らされても、術後の見え方を想像することが難しい。
一方、眼科医等にとっても、術後の見え方を口頭で説明することは難しい。
そこで、術後の見え方をシミュレーションした画像(すなわちシミュレーション画像)を、患者と眼科医等が同じモニタ上で確認することで、認識のずれを少なくする工夫がなされている。
【0011】
ところが、患者や眼科医等がシミュレーション画像の観察に使用されるディスプレイの解像度は様々であり、例えば1280×720、1920×1080、3840×2160、7680×4320がある。
なお、ここでの各解像度に対応するディスプレイは、ハイビジョンディスプレイ、2Kディスプレイ(又はフルハイビジョンディスプレイ)、4Kディスプレイ、8Kディスプレイと呼ばれる。
【0012】
解像度が異なれば、ディスプレイのサイズが同じでも、ディスプレイを構成する画素の物理的なサイズが異なる。例えば4Kディスプレイは、2Kディスプレイよりも画素のサイズが小さい。このため、4Kディスプレイは、2Kディスプレイよりも、高精細な表現が可能である。
ところが、現在提供されている技術では、シミュレーション画像を表示するディスプレイ(以下「モニタ」ともいう)の解像度の違いが考慮されていない。
【0013】
<システム構成>
図1は、実施の形態1で使用するネットワークシステム1の構成例を説明する図である。
図1に示すネットワークシステム1は、眼内レンズを挿入した後の見え方を、眼科医等が患者に説明する場面で使用される。
ここでの患者は、白内障の治療や老視の矯正のために眼内レンズを装着する人をいう。患者は、特許請求の範囲における「被対象者」の一例である。なお、特許請求の範囲における「観察者」には、眼科医等と患者が含まれる。もっとも、特許請求の範囲における「観察者」には、シミュレーション画像を観察する全ての人が含まれる。
【0014】
図1に示すネットワークシステム1は、サーバ10と、眼科Aで使用されるモニタ20A及び端末21Aと、眼科Bで使用されるモニタ20Bと端末21Bと、眼科Cで使用されるモニタ20C及び端末21Cと、ネットワーク30とで構成されている。
ここでの眼科は、総合病院内に設けられた眼の診療科、眼の診療を専門とする病院やクリニックを含む医療機関の意味で使用する。
本実施の形態の場合、シミュレーション画像の観察者は2名である必要はなく、1名でもよいし、3名以上でもよい。
【0015】
図1では、3つの眼科を例示しているが、ネットワークシステム1を構成する眼科の数は1つでも、2つでも、4つ以上でもよい。
図1では、1つの眼科に1台のモニタが配置されているが、1つの眼科に複数台のモニタが配置されてもよい。
また、1つの眼科で使用するモニタの解像度は同じである必要はなく、全てが異なる解像度でもよい。
【0016】
サーバ10は、端末21A、21B、21Cとネットワーク30経由で接続されている。ここでのネットワーク30は、例えばインターネットや移動通信システムの4Gや5Gを想定する。
もっとも、ネットワーク30がLAN(=Local Area Network)でもよい。この場合、ネットワークシステム1は、医療機関内に構築される。
図1の場合、端末21Aにはモニタ20Aが接続され、端末21Bにはモニタ20Bが接続され、端末21Cにはモニタ20Cが接続されている。
【0017】
図1の場合、端末21Aとモニタ20A、端末21Bとモニタ20B、端末21Cとモニタ20Cを別筐体として表現しているが、同一筐体でもよい。例えばノート型のコンピュータやタブレット型のコンピュータでもよい。
以下では、端末21A、21B、21Cを区別しない場合、「端末21」という。また、モニタ20A、20B、20Cを区別しない場合、「モニタ20」という。モニタ20は、表示デバイスの一例である。
端末21とモニタ20の接続は、ケーブルによる接続でもよいし、無線による接続でもよい。
【0018】
図1の場合、眼科Aで用いられるモニタ20Aの解像度は1920×1200であり、眼科Bで用いられるモニタ20Bの解像度は1920×1080であり、眼科Cで用いられるモニタ20Cの解像度は1600×1200である。
各端末21は、シミュレーション画像の出力先となるモニタ20の解像度と、術後の視力値の情報をサーバ10にアップロードする。ここでの視力値は、全ての距離に1つの場合もあれば、距離毎に与えられる場合もある。
【0019】
出力先となるモニタ20には、サーバ10からストリーミング配信されたシミュレーション画像がリアルタイムで表示される場合と、事前にダウンロードされたシミュレーション画像がオフラインで表示される場合がある。なお、ダウンロードされたシミュレーション画像は、端末21のハードディスク装置や半導体メモリ等の記録媒体に保存される。
前者の場合、出力先となるモニタ20の解像度の情報が、ストリーミング配信の度にアップロードされる。ストリーミング配信の度に解像度をアップロードすることにより、ストリーミング配信されるシミュレーション画像とモニタ20の解像度との不整合を回避される。
【0020】
後者の場合、出力先として用いる予定のモニタ20の解像度の情報が、ダウンロードの開始までにアップロードされる。
なお、シミュレーション画像をオフラインで表示するモニタ20の解像度が複数存在する場合、シミュレーション画像を表示する前に、表示するシミュレーション画像が想定する解像度とモニタ20の解像度とが一致するか否かを、表示の前に確認する。
本実施の形態の場合、シミュレーション画像として静止画像を想定するが、動画像でもよい。
【0021】
本実施の形態の場合、視力値の情報は、眼内レンズを装着した後の(すなわち術後の)患者の全距離視力の推定値である。
術前には、患者の全距離視力の測定値が存在しないためである。全距離視力は、距離毎の視力値の集合として与えられる。もっとも、全距離視力を1つの視力値で与えてもよい。
視力値の情報は、全距離視力として与えることも可能であるが、装着する眼内レンズの種類やモデル番号等を特定する情報でもよい。以下では、「全距離視力」を「視力値(全距離)」とも表記する。
【0022】
本実施の形態におけるサーバ10は、眼内レンズの種類やモデル番号等に応じた見え方を、モニタ20の解像度に応じてシミュレーションした画像を生成して提供する。
すなわち、サーバ10は、端末21からアップロードされたモニタ20の解像度と全距離視力の情報の組み合わせについて専用のシミュレーション画像を生成し、生成されたシミュレーション画像を対応する端末21に送信する。
例えば眼科Aのモニタ20Aに表示されるシミュレーション画像は、モニタ20Aの解像度に最適化されている。
【0023】
これにより、眼科医等が使用するモニタ20の解像度の違いによらず、術後の見え方を正確にシミュレーションした画像(すなわちシミュレーション画像)を、各モニタ20に表示させることができる。
本実施の形態におけるサーバ10は、シミュレーション画像の生成と提供をクラウドサービスとして提供する。その意味で、図1に示すサーバ10は、クラウドサーバである。
【0024】
前述したように、サーバ10は、シミュレーション画像をクラウドサービスとして提供する度に、シミュレーション画像の表示に用いるモニタ20の解像度と全距離視力の情報を取得する仕組みを採用する。
もっとも、シミュレーション画像の表示に使用するモニタ20の解像度が事前に登録されている場合には、サーバ10への解像度のアップロードを省略してもよい。
【0025】
また、本実施の形態におけるサーバ10は、シミュレーション画像をクラウドサービスとして提供する度に、モニタ20の解像度と与えられた視力値(全距離)の組み合わせに応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を決定し、決定された強度値を距離画像に適用してシミュレーション画像を生成する。なお、強度値は、距離毎に与えられる。
【0026】
ここでの「ぼかしフィルタ」の強度値は、ぼかし処理の強度を意味する。「ぼかしフィルタ」の強度値を大きくすると、シミュレーション画像のボケの度合いが大きくなり、「ぼかしフィルタ」の強度値を小さくすると、シミュレーション画像のボケの度合いが小さくなる。
本実施の形態では、モニタ20の解像度と視力値の組み合わせに応じた強度値を、仮想空間上に設置したランドルト環の切れ目の平均明度値を実空間での見え方に近づける値として定義する。
【0027】
なお、ランドルト環とは、視力値の測定に使用される、円弧の一部に切れ目を有する黒色の円環をいい、円環の直径と、円弧の幅と、切れ目の幅との比が5:1:1と定義される。因みに、約1.45mmの切れ目が設けられている位置を5m先から判別できる場合、被験者の視力値は「1.0」である。
もっとも、任意の解像度と任意の視力値の組み合わせに応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を用意しておき、端末21からアップロードされた解像度と視力値の組み合わせに合致する強度値を読み出してシミュレーション画像を生成してもよい。
なお、「ぼかしフィルタ」の強度値と視力値との関係は、全ての距離で共通である。
【0028】
従って、カメラの撮像方向への距離の情報を有する画像(以下「距離画像」ともいう)に、視力値に応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を適用することにより、モニタ20の解像度と視力値の組み合わせに最適化されたシミュレーション画像を生成することができる。なお、カメラの撮像方向は、患者の視線方向と同じである。
本実施の形態では、距離画像としてコンピュータで予め生成した3次元画像(すなわち「コンピュータ画像」)を使用する。
【0029】
なお、眼内レンズによる矯正後の視力値が距離により異なる場合でも、各距離に応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を対応する距離の画素値に適用することにより、距離毎に視力値が変化するシミュレーション画像を生成することができる。
すなわち、本実施の形態では、表示に用いるモニタ20の解像度と矯正後の視力値に応じた強度値を決定して距離画像をぼかし処理することにより、モニタ20の解像度に最適化したシミュレーション画像の生成を可能にする。
以下では、サーバ10の具体的な構成を説明する。
【0030】
<サーバ10の構成>
図2は、サーバ10のハードウェア構成の一例を説明する図である。
本実施の形態におけるサーバ10は、いわゆるシミュレータとして動作する。また、本実施の形態におけるサーバ10は、シミュレーション画像をクラウドサービスとして提供するクラウドサーバとして動作する。
【0031】
サーバ10は、プロセッサ11と、ROM(=Read Only Memory)12と、RAM(=Random Access Memory)13と、ハードディスク装置14と、通信モジュール15とで構成されている。
プロセッサ11は、例えばCPU(=Central Processing Unit)やGPU(=Graphics Processing Unit)で構成される。プロセッサ11は、プログラムの実行を通じて各種の機能を実現する。
【0032】
ROM12には、BIOS(=Basic Input Output System)等が記憶される。RAM13は、プログラムの作業領域として使用される。RAM13は、主記憶装置の一例である。
ハードディスク装置14は、シミュレーション画像の生成に用いられるプログラムの他、生成したシミュレーション画像14Aと、モニタ20の解像度と視力値の組み合わせに、対応する「ぼかしフィルタ」の強度値とを対応付けた強度値テーブル14Bと、距離画像14Cとを記憶する。
【0033】
強度値テーブル14Bは、モニタ20の解像度を登録する度に生成してもよいが、任意の解像度について事前に用意された強度値テーブル14Bでもよい。
なお、ハードディスク装置14の代わりに、半導体メモリを使用してもよい。ハードディスク装置14は、補助記憶装置の一例である。
通信モジュール15は、端末21との通信に用いられるデバイスである。
【0034】
<サーバ10によるシミュレーション画像の生成>
以下では、図3図13を使用して、シミュレーション画像の生成処理を説明する。
<処理動作の概要>
ここでは、図3図4を使用して、処理動作の概要を説明する。
図3は、実施の形態1で使用するサーバ10と端末21との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。図中に示す記号のSは、ステップの意味で使用する。
図3に示す処理動作は、見え方シミュレーション情報提供方法の一例である。なお、シミュレーション画像の生成までの処理動作は、見え方シミュレーション方法の一例である。
【0035】
本実施の形態の場合、一連の処理動作は、端末21からサーバ10へのアクセスにより開始される。図3に示す端末21は、第1の端末であると共に第2の端末である。
まず、端末21は、サーバ10に対し、モニタ20の解像度を送信する(ステップ1)。
ここでの解像度は、シミュレーション画像の表示に使用されるモニタ20の解像度である。
【0036】
本実施の形態では、モニタ20の解像度は基本的に1つである。もっとも、解像度が異なる2つのモニタ20に同時に表示する場合には、複数の解像度が送信される。
ただし、解像度が同じ複数のモニタ20にシミュレーション画像を表示する場合、送信される解像度は1つでよい。
【0037】
サーバ10は、端末21から、モニタ20の解像度を取得する(ステップ2)。このステップ2の処理を実行するプログラムの機能が「取得部」に相当する。
サーバ10は、端末21に対応付けてモニタ20の解像度を登録する。因みに、解像度の登録は、施設名や眼科医等に紐づけてもよく、クラウドサービスの管理IDに紐づけてもよい。
取得した解像度と端末21の関係は、ハードディスク装置14(図2参照)に記憶される。
【0038】
次に、サーバ10は、取得した解像度と任意の視力値の組み合わせに対応する「ぼかしフィルタ」の強度値を計算し、各値を紐付けた強度値テーブル14Bを生成する(ステップ3)。
本実施の形態の場合、ステップ3までの処理動作は、モニタ20の登録時に実行される。以上で、サービスの準備が完了する。
【0039】
続いて、サービスの利用時に実行される処理動作を説明する。
眼科医等がシミュレーション画像の表示を求めると、端末21は、サーバ10に対し、視力値(全距離)を送信する(ステップ4)。ここでの視力値(全距離)は、例えば検討中の眼内レンズによる矯正後の視力値である。なお、視力値(全距離)のデータをアップロードする必要はなく、シミュレーションしたい視力値(全距離)を特定する情報(例えば眼内レンズの種類)をサーバ10にアップロードしてもよい。
【0040】
図4は、眼内レンズの種類に応じた視力値(全距離)の一例を説明する図表である。
図4には、5種類の眼内レンズについての距離別の視力値が例示されている。具体的には、「単焦点」レンズと、「多焦点+4.0」レンズと、「多焦点+3.25」レンズと、「多焦点+2.75」レンズと、「焦点深度拡張型」レンズが例示されている。
また、距離の代表例として、「500cm」、「300cm」、「100cm」、「70cm」、「50cm」、「40cm」、「30cm」が例示されている。
各眼内レンズと距離との交点に示す数値は、術後の視力値を表している。
【0041】
例えば「単焦点」レンズの場合、視力値の最高値は「500cm」の「1.08」であり、視力値の最低値は「30cm」の「0.29」である。「単焦点」レンズの場合、最大の視力値と最小の視力値との差分は「0.79」と大きい。
因みに、「多焦点+4.0」レンズの場合、視力値の最大値は「500cm」の「1.03」であり、視力値の最小値は「70cm」の「0.72」である。「多焦点+4.0」レンズの場合、最大の視力値と最小の視力値との差分は「0.31」であり、視力値のバラツキが「単焦点」レンズよりも小さい。
【0042】
なお、「多焦点+3.25」レンズにおける最大の視力値と最小の視力値との差分は「0.22」であり、「多焦点+2.75」レンズにおける最大の視力値と最小の視力値との差分は「0.31」であり、「焦点深度拡張型」レンズにおける最大の視力値と最小の視力値との差分は「0.6」である。
いずれの眼内レンズも最大の視力値は「500cm」付近であったが、最小の視力値は必ずしも近距離とは限らない。このように、眼内レンズの種類により、全距離視力の内容は異なる。
【0043】
ステップ4では、選択した眼内レンズに応じた視力値(全距離)がサーバ10に与えられる。
一方のサーバ10は、端末21から視力値(全距離)を受け付ける(ステップ5)。このステップ5の処理を実行するプログラムの機能が「受付部」に相当する。
次に、端末21は、サーバ10に対し、モニタ20に表示する距離画像の選択を送信する(ステップ6)。距離画像は、シミュレーション画像の元画像を与える画像であり、日常生活における術後の見え方を確認するために用意されている。本実施の形態の場合、端末21は、距離画像を特定する情報をサーバ10に送信する。
サーバ10は、端末21から距離画像の選択を受け付ける(ステップ7)。
【0044】
次に、サーバ10は、受け付けた視力値(全距離)に応じた強度値を強度値テーブル14Bから読み出す(ステップ8)。このステップ8の処理を実行するプログラムの機能が「決定部」に相当する。
なお、視力値が距離毎に異なる場合、複数の強度値が読み出される。
因みに、視力値と強度値の関係は、全ての距離で共通である。換言すると、視力値が同じであれば、距離が違っても同じ強度値が適用される。
続いて、サーバ10は、読み出した強度値を、選択された距離画像に対するぼかし処理に適用してシミュレーション画像を生成する(ステップ9)。このステップ9の処理を実行するプログラムの機能が「生成部」に相当する。各距離に対応する各画素に適用する強度値は、各距離における視力値により定まる。
【0045】
その後、サーバ10は、生成されたシミュレーション画像をストリーミング配信する(ステップ10)。このステップ10の処理を実行するプログラムの機能が「提供部」に相当する。
一方の端末21は、シミュレーション画像を受信すると(ステップ11)、モニタ20にシミュレーション画像を表示する(ステップ12)。
なお、図3では、生成したシミュレーション画像をストリーミング配信しているが、データファイルとして送信してもよい。
【0046】
<強度値テーブルの生成処理>
ここでの説明には、図5図11を使用する。
図5は、実施の形態1における強度値テーブル14Bの生成動作の一例を説明するフローチャートである。この処理動作は、図3のステップ2及び3に対応する。
なお、図中に示す記号のSは、図3と同じくステップの意味で使用する。
まず、サーバ10は、シミュレーション画像14A(図2参照)を出力するモニタ20の解像度を取得する(ステップ111)。この処理は、図3のステップ2に相当する。
【0047】
次に、サーバ10は、モニタ20で表現する最高視力(すなわち最小視角)を設定する(ステップ112)。
ここでの最高視力は、モニタ20による表現が可能な切れ目の最小値、すなわち1画素の切れ目を判別可能な視力値に相当する。
本実施の形態では、最高視力を1.2とする。換言すると、サーバ10により生成する各視力値の見え方を再現するシミュレーション画像の最高視力が1.2に定められる。なお、最高視力は、1.2に限らない。
【0048】
本実施の形態では、モニタ20の解像度の登録のたび、ステップ112において最高視力を設定するが、最高視力を固定値として事前に設定してもよい。
最高視力が固定値として事前に指定される場合、ステップ112の処理は省略が可能である。
続いて、サーバ10は、設定された最高視力(すなわち最小画角)の下、バーチャルカメラのレンズの画角とモニタ20の画素数との関係式1を設定する(ステップ113)。
【0049】
ここでのバーチャルカメラは、仮想空間上で定義するカメラであり、実空間におけるヒトの眼の代用として使用される。
ステップ113で設定する関係式1は、ステップ112で設定された最高視力の測定が可能なバーチャルカメラ40のレンズの画角と任意のモニタ20の画素数との間に成立する一般的な関係を規定する。
【0050】
図6は、シミュレーション画像の表示に使用するモニタ20の解像度により定まる最高視力と仮想空間上での視力測定に使用するバーチャルカメラ40に求められる条件を説明する図である。(A)はヒトの視角とランドルト環との関係を示し、(B)はバーチャルカメラ40の画角とランドルト環の関係を示す。
図6(A)には、ヒトの視力測定の様子が表されている。図6(A)では、ランドルト環のサイズを誇張して表しているが、視力1.2に対応するランドルト環を5m先のヒトが観察する。
【0051】
図6(A)に示すように、視角は、ランドルト環の切れ目の上下限を結ぶ直線の角度として定義される。
因みに、視力値と視角(分)の間には、次式が成立することが知られている。
視力=1/視角(分) …式1
従って、視力1.2が与えられると、視角が0.83333(分)と計算される。反対に、視角0.83333(分)が与えられると、視力1.2が計算される。
【0052】
図6(B)では、ヒトの眼が、バーチャルカメラ40で置き換えられている。
現実空間のランドルト環とは異なり、モニタ20に表示するランドルト環の切れ目は、モニタ20の1画素よりも小さくすることはできない。すなわち、モニタ20の1画素のサイズが、ランドルト環の切れ目を表現し得る最小サイズとなる。
そこで、仮想空間内に配置したモニタ20の1画素を5m離れた位置から観察する場合の画角を、バーチャルカメラ40のレンズの最小画角と定義する。
なお、バーチャルカメラ40の画角は、モニタ20による表示範囲に規制される。
【0053】
以下では、「バーチャルカメラ40のレンズの画角」を「バーチャルカメラ40の画角」という。従って、バーチャルカメラ40の最小画角は、バーチャルカメラ40のレンズの最小画角を意味する。
本実施の形態では、図6(B)における最小画角と画角の関係を、1画素とモニタ20の画素数の関係により定義する。
具体的には、次式のように定義する。
最小画角(分):バーチャルカメラ40の画角(度)*60
=1画素:モニタ20の画素数 …式2
【0054】
ステップ113では、この式2を変形した次式を設定する。
モニタ20の画素数
=バーチャルカメラ40の画角(度)×60/最小画角(分) …式3
最高視力が1.2の場合、最小画角は0.83333(分)であるので、式3の最小画角に0.83333(分)を代入すると、モニタ20に表示可能な最小視力を実現可能な、仮想空間上の視力測定に使用するバーチャルカメラ40の画角(度)とモニタ20の画素数の関係式1が得られる。
モニタ20の画素数
=バーチャルカメラ40の画角(度)×60/0.83333(分)
…関係式1
【0055】
次に、サーバ10は、バーチャルカメラ40の画角とレンズの焦点距離との間に成立する関係式2を読み出す(ステップ114)。
この関係式2は、次式により表現される。
画角=180/π×2×atan(撮像素子の長さ÷(2×焦点距離)))
…関係式2
ここでの「atan」は、逆三角関数を意味する。なお、撮像素子の長さには、一般的な36mm×24mmを想定する。
【0056】
次に、サーバ10は、関係式1と関係式2とから、任意のモニタ20の画素数とバーチャルカメラ40の焦点距離との対応表を作成する(ステップ115)。
図7は、任意のモニタ20の画素数とバーチャルカメラ40の焦点距離との関係を定める対応表の一例を説明する図である。
図7に示す対応表は、「レンズの焦点距離」、「水平画角」、「垂直画角」、「相当画素数」の関係を表している。
【0057】
図7に示す対応表は、焦点距離について、関係式2を用いて画角を求め、更に求めた画角を関係式1に与えることで、最高視力を得ることが可能なモニタ20の画素数を計算することで生成している。
図7に示す対応表は、指定された最高視力に対応するシミュレーション画像をモニタ20上に表示するために要求される各パラメータの一般式を表しており、ステップ116において使用される。
【0058】
ステップ115で対応表が作成されると、サーバ10は、シミュレーション画像の出力に使用するモニタ20の画素数に応じたレンズの焦点距離を決定する(ステップ116)。
ここでの画素数は、ステップ111で取得した解像度から算出が可能である。例えば解像度が2048×1150で与えられる場合、画素数は、「2355200」で与えられる。
【0059】
サーバ10は、この画素数を図7に示す対応表に適用し、バーチャルカメラ40に求められるレンズの焦点距離を特定する。
図7に示す対応表の場合、画素数の「2355200」は「2356728」に最も近い。
そこで、サーバ10は、バーチャルカメラ40の焦点距離として、画素数の「2356728」に対応する78mmを決定する。
この時点で、ステップ111で指定された解像度を有するモニタ20にステップ112で指定された最高視力の見え方を反映したシミュレーション画像の観察に使用するバーチャルカメラ40が定義されたことになる。
【0060】
ステップ116において焦点距離が決定されると、サーバ10は、決定された焦点距離を有するバーチャルカメラ40を仮想空間内に配置し、距離とサイズの関係を満たすランドルト環の集合(視力表)を撮影する(ステップ117)。
図8は、仮想空間内に配置するランドルト環の例を示す図である。縦軸は、視力値である。図8の場合、縦軸には、最高視力の1.2から最低視力の0.2まで、0.1刻みの視力値を配置している。横軸は、ランドルト環を配置する焦点距離であり、500cmから30cmまでの7つの距離が示されている。
【0061】
なお、縦軸と横軸の交点には、各視力値と焦点距離の組み合わせにおいて切れ目を観察可能なランドルト環の直径がマッピングされている。
例えば500cm先に設置されるランドルト環の直径は、視力値が1.2の場合であれば6.25mmでよいが、視力値が0.2の場合には37.50mmでないと切れ目を確認できない。この直径の差は概略6倍である。
図8の下段には、特定の視力値に応じた10個のランドルト環の例を描画している。
ステップ117では、これら10個のランドルト環が、ステップ116で決定されたバーチャルカメラ40で撮影される。
【0062】
図9は、仮想空間内におけるランドルト環の撮影の様子を説明する図である。
バーチャルカメラ40の前方には、図8で説明した各距離とサイズのランドルト環の集合が配列されている。
吹き出し中のランドルト環の集合は、バーチャルカメラ40で撮影されたランドルト環を表している。図8で説明したように、ランドルト環の直径は遠ざかるほど大きくなるが、バーチャルカメラ40から撮影されるランドルト環の直径は同じ大きさに見える。
また、ここでのバーチャルカメラ40は、最高視力の1.2に対応しているので、全て距離の全てのランドルト環の切れ目を判別することができる。
【0063】
次に、サーバ10は、バーチャルカメラ40で撮影される画像に、「ぼかしフィルタ」を適用し、その強度値を上げながら、ランドルト環の切れ目部分の明度の平均値を計測する(ステップ118)。以下では、明度の平均値を「平均明度」ともいう。
図10は、切れ目の平均明度の計測を説明する図である。(A)は計測の対象であるランドルト環を示し、(B)はランドルト環の切れ目部分を拡大した図を示す。
図10(B)では、ランドルト環の切れ目のエッジがボケている。このボケが「ぼかしフィルタ」の効果である。
因みに、最高視力の場合、撮影されるランドルト環はボケないため、ランドルト環の切れ目のエッジが線として明確に観察される。
【0064】
ステップ118では、バーチャルカメラ40で撮影される切れ目部分の明度の平均値が計測される。
図10(B)であれば、内側の破線で囲んだ部分の明度の平均値が計測される。なお、明度の平均値に代えて輝度の平均値を計測してもよい。
計測された平均値は、視力値と対応付けて記録される。
【0065】
次に、サーバ10は、明度の平均値と閾値(50%)を比較し、「明度の平均値が50%以上なら切れ目が見える」とみなす一方、「明度の平均値が50%未満なら切れ目が見えない」とみなし、任意の視力値に応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を決定する(ステップ119)。
ステップ119の処理は、視力値に応じた切れ目の見え方が再現される「ぼかしフィルタ」の強度値を決定する処理に当たる。
例えば視力値が1.0であれば、1.0に対応するランドルト環の切れ目が再現される強度値を決定する。
【0066】
その結果として、サーバ10は、視力値毎に決定された「ぼかしフィルタ」の強度値を視力値に対応付けた強度値テーブルを生成する(ステップ120)。
図11は、視力値に「ぼかしフィルタ」の強度値を対応付けた強度値テーブルの一例を説明する図である。
図11では、視力値に対応するランドルト環の下に、対応する強度値を列記している。ここでの視力値と強度値との対応関係が強度値テーブルであり、シミュレーションの場合に参照されるデータ構造の一例である。
【0067】
例えば最高視力である視力値の1.2に対応する強度値は「0.00」であり、視力値の1.0に対応する強度値は「0.22」である。
更に、視力値の0.9に対応する強度値は「0.36」であり、視力値の0.8に対応する強度値は「0.52」であり、視力値の0.7に対応する強度値は「0.68」である。
なお、強度値は「0.68」が最大値であり、視力値が「0.6」より悪くなっても強度値は「0.68」である。
このステップ20で生成された強度値テーブルが、図3におけるステップ3の強度値テーブルである。
【0068】
以上の処理動作により、眼科で使用されるモニタ20に眼科医等が指定する視力値に応じたシミュレーション画像を表示させるための準備が完了する。
なお、ステップ20において生成された「ぼかしフィルタ」の強度値テーブルが、モニタ20の解像度の下で、患者の見え方を反映したシミュレーション画像を表示するために使用される。
また、視力値に応じた「ぼかしフィルタ」の強度値を決定する処理動作が、仮想空間上におけるランドルト環の見え方をシミュレーションする方法に対応する。
【0069】
<シミュレーション画像の表示例>
図12は、実施の形態1において生成されたシミュレーション画像の表示例を説明する図である。
図12では、モニタ20の表示領域の全面に、モニタ20の解像度を制約条件として、指定された視力値による風景の見え方をシミュレーションした画像(すなわちシミュレーション画像)が表示されている。
【0070】
図12に示すシミュレーション画像の元画像は距離画像であり、各画素について距離の情報が含まれている。このため、元画像の各画素には、各距離の矯正視力に応じた強度値が強度値テーブルから読み出され、対応する画素値に適用されている。
しかも、本実施の形態の場合には、「ぼかしフィルタ」の強度値は、シミュレーション画像が表示されるモニタ20の解像度に応じて決定されている。
【0071】
このため、観察に使用するモニタ20の解像度の違いにより、表示されるシミュレーション画像の見え方が本来の見え方と異なるという心配をせずに済む。
また、眼科医等が視力値を変更すると、指定された視力値に応じたシミュレーション画像の見え方が変更後の視力値に応じて変化する。
【0072】
図13は、実施の形態1において生成されたシミュレーション画像の他の表示例を説明する図である。
図13では、シミュレーション画像が、モニタ20のウィンドウ内に表示されている。このウィンドウは、モニタ20の表示領域の一部分である。
この場合、シミュレーション画像の表示に使用可能な画素数は、図12の場合に比して少なくなる。このような場合、本実施の形態では、ウィンドウのサイズに応じたシミュレーション画像をサーバ10で生成し、モニタ20に表示させる。
【0073】
具体的には、ウィンドウに割り当てられた縦方向の画素数と横方向の画素数を解像度とみなし、端末21からサーバ10にアップロードする。
すると、ウィンドウのサイズで最高視力を表現する「ぼかしフィルタ」の強度値テーブルが決定され、決定された強度値テーブルを用いて、シミュレーション画像が生成される。
本実施の形態では、眼科医等がウィンドウのサイズを変更しても、即座に、任意のサイズのウィンドウに応じたシミュレーション画像を生成し、表示させることが可能になる。
【0074】
<実施の形態2>
本実施の形態では、シミュレーション画像の生成が端末21側で実行される場合について説明する。
図14は、実施の形態2で使用するネットワークシステム1Aの構成例を説明する図である。図14には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図14に示すネットワークシステム1Aの場合も、端末21からサーバ10Aには、モニタ20の解像度と術後の視力値(全距離)とが通知されている。
違いは、サーバ10Aから端末21に送信されるのが、「ぼかしフィルタ」の強度値である点である。
【0075】
図15は、実施の形態2で使用するサーバ10Aと端末21との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。図15には、図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
なお、図15に示すサーバ10Aの処理動作は、見え方シミュレーション情報提供方法の一例である。
本実施の形態の場合も、モニタ20の登録時の処理動作は、実施の形態1と同じである。従って、以下では、眼科医等によるサービスの利用時に実行される処理動作を説明する。
【0076】
図15の場合も、術後のシミュレーション画像の表示を求める眼科医等は、端末21を操作し、サーバ10Aに対し、患者の視力値(全距離)を送信する(ステップ4)。
図15の場合、サーバ10Aは、端末21から視力値(全距離)を受け付ける(ステップ5)と、受け付けた視力値(全距離)に応じた強度値を強度値テーブル14B(図2参照)から読み出す(ステップ8)。
この後、サーバ10Aは、端末21に対し、読み出した強度値を送信する(ステップ21)。
【0077】
以後は、端末21の処理動作となる。
まず、端末21は、ぼかし処理で使用する強度値を受信すると(ステップ22)、モニタ20に表示する距離画像の選択を受け付ける(ステップ23)。
次に、端末21は、ステップ22で受信した強度値を、選択された距離画像に対するぼかし処理に適用してシミュレーション画像を生成する(ステップ24)。すなわち、本実施の形態では、シミュレーション画像が端末21の内部で生成される。その後、端末21は、モニタ20にシミュレーション画像を表示する(ステップ12)。すなわち、本実施の形態における端末21は、シミュレータの一例として動作する。
【0078】
本実施の形態の場合、ネットワーク30を通じて送受されるデータは、解像度、視力値(全距離)、「ぼかしフィルタ」の強度値だけであり、サーバ10Aに対する計算上の負荷が小さく済む。
また、シミュレーション画像が配信又はダウンロードされる場合に比して、ネットワーク30に対する負荷も少なく済む。
また、本実施の形態の場合、モニタ20が存在する眼科内の端末21でシミュレーション画像が生成されるので、ネットワーク30の不調の影響を受けずに、患者と術後の見え方を確認することが可能になる。
【0079】
<実施の形態3>
本実施の形態では、オンラインで接続された複数の地点に、モニタ20の解像度の違いによる見え方を反映したシミュレーション画像を提供するサービスを想定する。
図16は、実施の形態3で使用するネットワークシステム1Bの構成例を説明する図である。図16には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0080】
図16に示すネットワークシステム1Bは、サーバ10Bと、ユーザAで使用されるモニタ20A及び端末21Aと、販売店(以下「店舗」という)で使用されるモニタ20Bと端末21Bと、ユーザBで使用されるモニタ20C及び端末21Cと、ネットワーク30とで構成されている。
本実施の形態の場合、表示に使用されるモニタ20の解像度に応じて生成されたシミュレーション画像が、複数の地点に配信される。
【0081】
図16に示すネットワークシステム1Bは、角膜に対して着脱自在に装着されるコンタクトレンズによる矯正後の見え方を、店舗側の担当者と客であるユーザとが別々の場所で確認する場合を想定している。もっとも、図16に示すネットワークシステム1Bは、オンライン診療にも利用が可能である。オンライン診療に利用する場合、店舗は眼科に読み替える。
ここでのコンタクトレンズは、光学レンズの一例である。
図16の場合も、店舗やユーザは、据え置き型のモニタ20を用いる場合を想定しているが、ユーザ側のモニタ20は、例えばスマートフォンやタブレットでもよい。もっとも、店舗側のモニタ20もスマートフォンやタブレットでよい。
【0082】
図16の場合、コンタクトレンズの装着後の見え方を説明する店舗の担当者が、コンタクトレンズによる矯正後の視力値(全距離)をサーバ10Bにアップロードする。この意味で、店舗側の端末21Bは、第2の端末の一例である。
なお、店舗側のモニタ20Bの解像度は端末21Bからサーバ10Bにアップロードされ、ユーザA側のモニタ20Aの解像度は端末21Aからサーバ10Bにアップロードされる。この意味で、店舗側の端末21BとユーザA側の端末21Aは、第1の端末の一例である。
【0083】
なお、図16においては、店舗側の担当者とユーザAとが2地点でシミュレーション画像を観察しているが、ユーザAとユーザBが同じ距離画像について生成されたシミュレーション画像を観察してもよい。その場合に、ユーザB側のモニタ20Cの解像度に応じたシミュレーション画像がサーバ10Bで生成され、ユーザB側の端末21Cに提供される。
この他、シミュレーション画像の複数地点への配信の例には、例えば店舗側の端末21Bと、コンタクトレンズの購入者の端末21Aと、購入者の保護者の端末21Cとの場合がある。
【0084】
また、シミュレーション画像の複数地点への配信の例には、例えば店舗側の端末21Bと、コンタクトレンズの購入者の端末21Aと、眼科医の端末21Cとの場合がある。
また、シミュレーション画像の複数地点への配信の例には、例えば眼科医の端末21Bと、患者の端末21Aと、別の眼科医の端末21Cとの場合がある。
【0085】
本実施の形態におけるサーバ10Bは、ユーザA側のモニタ20A専用の「ぼかしフィルタ」の強度値テーブルをモニタ20Aの解像度から生成し、店舗側のモニタ20B専用の「ぼかしフィルタ」の強度値テーブルをモニタ20Bの解像度から生成する。
なお、シミュレーション画像として再現する最高視力は、店舗側の端末21Bからサーバ10Bに指示されるものとする。
【0086】
図17は、実施の形態3で使用するサーバ10Bと端末21との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。図17には、図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
図17に示すサーバ10の処理動作も、見え方シミュレーション情報の提供方法の一例である。
【0087】
本実施の形態の場合、一連の処理動作は、店舗側の端末21Bとユーザ側の端末21Aによるサーバ10Bへのアクセスにより開始される。
まず、店舗側の端末21Bが、サーバ10Bに対し、モニタ20Bの解像度を送信する(ステップ1)。同様に、ユーザ側の端末21Aが、サーバ10Bに対し、モニタ20Aの解像度を送信する(ステップ1)。
サーバ10Bは、端末21Aと端末21Bのそれぞれから、モニタの解像度を取得する(ステップ2)。図中の「x2」は、端末21A用の処理と端末21B用の処理が別々に実行されることを意味する。他のステップについても同様である。
【0088】
次に、サーバ10Bは、取得した解像度と任意の視力値の組み合わせに対応する「ぼかしフィルタ」の強度値を計算し、各値を紐付けた強度値テーブル14B(図2参照)を生成する(ステップ3)。ここでの強度値テーブル14Bは、店舗用とユーザ用とが別々に生成される。もっとも、店舗側で使用するモニタ20Bとユーザ側で使用するモニタ20Aの解像度が同じ場合には、実施の形態1の場合と同様、強度値テーブル14Bは1つでよい。図17では、店舗側とユーザ側とでモニタ20の解像度が異なるものとする。
【0089】
次に、店舗側の端末21Bが、サーバ10に対し、視力値(全距離)を送信する(ステップ4)。ここでの視力値(全距離)は、例えば検討中のコンタクトレンズによる矯正後の視力値である。
図17では、店舗側が推奨するコンタクトレンズによる矯正後の視力値(全距離)を有することを前提とするが、実施の形態1で説明したように、シミュレーションしたい視力値(全距離)を特定する情報(例えば型番)をサーバ10にアップロードしてもよい。この手法による視力値(全距離)であれば、ユーザAが購入を希望しているコンタクトレンズの型番をサーバ10Bにアップロードしてもよい。
一方のサーバ10Bは、端末21Bから視力値(全距離)を受け付ける(ステップ5)。
【0090】
続いて、店舗側の端末21Bは、サーバ10Bに対し、モニタ20に表示する距離画像の選択を送信する(ステップ6)。本実施の形態の場合、選択された距離画像は、店舗側のモニタ20Bだけでなく、ユーザA側のモニタ20Aにも共通する。なお、距離画像の選択についても、視力値(全距離)と同じく、ユーザA側の端末21Aが送信してもよい。
一方のサーバ10Bは、端末21から距離画像の選択を受け付ける(ステップ7)。
【0091】
次に、サーバ10Bは、受け付けた視力値(全距離)に応じた強度値を強度値テーブル14Bから読み出す(ステップ8)。本実施の形態の場合、強度値は、店舗用の強度値テーブル14BとユーザA用の強度値テーブル14Bのそれぞれから読み出される。
続いて、サーバ10Bは、読み出した強度値を、選択された距離画像に対するぼかし処理に適用してシミュレーション画像を生成する(ステップ9)。ここでのシミュレーション画像の生成も、店舗用とユーザA用とで別々に実行される。すなわち、与えられた視力値(全距離)と距離画像について、モニタ20の解像度の違いを反映した2つのシミュレーション画像が生成される。
【0092】
その後、サーバ10Bは、店舗側の端末21Bとユーザ側の端末21Aのそれぞれに、生成されたシミュレーション画像をストリーミング配信する(ステップ10)。
一方の端末21は、シミュレーション画像を受信し(ステップ11)、モニタ20にシミュレーション画像を表示する(ステップ12)。このシミュレーション画像の受信と表示も、店舗側とユーザA側とで同時に実行される。
なお、図17では、生成したシミュレーション画像をストリーミング配信しているが、データファイルとして送信してもよい。
【0093】
コンタクトレンズは種類が多い。このため、購入の候補となるコンタクトレンズが複数あったとしても、それらの全てを購入前に試着することは現実的でない。しかし、本実施の形態の場合には、コンタクトレンズの違いによる見え方を反映したシミュレーション画像をモニタ上で容易に観察できる。このため、店舗側もユーザ側も無駄な出費を抑制できる。
また、オンラインによる接客のために異なるモニタ20にシミュレーション画像を表示せざるを得ない場合でも、本実施の形態におけるネットワークシステム1Bであれば、モニタ20の解像度の違いを反映したシミュレーション画像を店舗側とユーザ側に提供できる。
【0094】
その結果、オンラインによる接客の場合でも、矯正後の見え方について、店舗側の担当者と客であるユーザAとの認識に齟齬が生じない。このため、質の高いサポートが可能になる。
なお、本実施の形態の場合も、前述した実施の形態2のように、シミュレーション画像に代えて、「ぼかしフィルタ」の強度値を端末21に送信してもよい。勿論、その場合には、シミュレーション画像の表示に使用されるモニタ20に応じた強度値が個別に送信され、端末21によりシミュレーション画像が生成される。
【0095】
<実施の形態4>
本実施の形態では、オンラインで接続された複数の地点に、モニタ20の解像度の違いによる見え方を反映したシミュレーション画像を提供するサービスの他の例を想定する。
図18は、実施の形態4で使用するネットワークシステム1Cの構成例を説明する図である。図18には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0096】
図18に示すネットワークシステム1Cは、サーバ10Cと、患者の眼球を計測する計測機器を操作する医師Aが使用するモニタ20A及び端末21Aと、患者を診療する医師Bが使用するモニタ20Bと端末21Bと、患者が使用するモニタ20C及び端末21Cと、ネットワーク30とで構成されている。
ここでの計測機器は、患者の視力値(全距離)を計測する。患者の視力値(全距離)は、裸眼で測定された視力値(全距離)でもよいし、コンタクトレンズ等により矯正した状態で測定された視力値(全距離)でもよい。
なお、計測機器は、例えば患者の瞳孔経、波面収差、球面度数、乱視度数、乱視軸角度を計測又は計算し、視力値を導出してもよい。
【0097】
図18の場合、医師Aは、患者の視力値を測定した結果をサーバ10Cにアップロードするのみであり、シミュレーション画像は観察しない。このため、図18では、端末21Aからサーバ10Cには、上り方向の矢印だけを描いている。また、シミュレーション画像を観察しないので、モニタ20Aの解像度もアップロードされていない。
すなわち、図18に示すネットワークシステム1Cは、視力値のアップロード元と解像度のアップロード元を分離した点で、実施の形態3と相違する。
【0098】
従って、本実施の形態の場合、医師Aが操作する端末21Aが第2の端末の一例であり、医師Bが操作する端末21Bと患者が操作する端末21Cが第1の端末の一例である。
図18に示すネットワークシステム1は、医師Bと患者との間で、患者の見え方の共有や術前や術後における診療での活用を想定する。
【0099】
図19は、実施の形態4で使用するサーバ10Cと端末21との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。図19には、図17との対応部分に対応する符号を付して示している。
図19に示すサーバ10の処理動作も、見え方シミュレーション情報の提供方法の一例である。
図19に示す処理動作では、端末21Aを医師Aが操作し、端末21Bを医師Bが操作し、端末21Cを患者が操作する。
また、図19では、端末21Aとして、医師Aが操作するコンピュータ等を想定しているが、視力の測定に用いた測定器でもよい。
【0100】
図19に示す処理動作が、図17に示す処理動作と異なる点は、ステップ4に示す視力値(全距離)の送信元である。図19の場合、患者の視力を測定した医師Aが操作する端末21Aがサーバ10Cに与えている。
なお、図19では、サービスの利用時に視力値(全距離)をサーバ10Cに送信しているが、患者の視力の測定は、事前に行われている。このため、端末21Aによるサーバ10Cへの視力値(全距離)の送信は、サービスの利用が開始するまでに完了していてもよい。
【0101】
本実施の形態の場合、シミュレーション画像の観察者は、医師Bと患者の2名であるが、オンラインで接続された複数人の医師でもよい。この場合、チームでの診療やセカンドオピニオンを別の医師から受ける用途での利用も可能である。
なお、本実施の形態の場合も、前述した実施の形態2のように、シミュレーション画像に代えて、「ぼかしフィルタ」の強度値を送信してもよい。勿論、その場合には、シミュレーション画像の表示に使用されるモニタ20に応じた強度値が個別に送信され、端末21によりシミュレーション画像が生成される。
【0102】
<実施の形態5>
本実施の形態では、視覚に障害を有する人の見え方を都市設計や建築の改修等に反映する場面を想定する
図20は、実施の形態5で使用するネットワークシステム1Dの構成例を説明する図である。図20には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図20に示すネットワークシステム1Dは、サーバ10Dと、調査地Aで使用するモニタ20Aと端末21Aとカメラ22Aと、調査地Bで使用するモニタ20Bと端末21Bとカメラ22Bと、調査地Cで使用するモニタ20Cと端末21Cとカメラ22Cと、ネットワーク30とで構成されている。
【0103】
本実施の形態の場合、サーバ10Dには、症例別の視力値(全距離)のデータを記憶するデータベース10D1が接続されている。このデータベース10D1は、症例データベースの一例である。
もっとも、症例データベース10D1は、サーバ10Dのハードディスク装置14(図2参照)に記憶されていてもよいし、ネットワーク30に接続されていてもよい。
本実施の形態における症例は、近視、遠視、乱視等の屈折異常や老視等の調整障害等の視力値に関するものを想定する。
【0104】
本実施の形態の場合、他の実施の形態とは異なり、カメラ22A~22Cが設けられている。本実施の形態におけるカメラ22A~22Cは、距離画像の撮像が可能なカメラを想定する。
カメラ22A~22Cが撮像する距離画像は、静止画像でも動画像でもよい。
距離画像を取得する方法には、例えば視差から距離を測定するステレオ法、測定光が対象物で反射して戻ってくるまでの時間により距離を計測するTOF(=Time Of Flight)法を使用する。
【0105】
すなわち、本実施の形態では、予め用意した距離画像に代えて、調査地A~Cの各地で実際に撮像された距離画像を使用する。
このため、図20では、カメラ22Aからサーバ10Dに現地で撮像された距離画像のアップロードを示す矢印が描かれている。
【0106】
図21は、実施の形態5で使用するサーバ10Dと端末21との間で実行される処理動作の概要を説明する図である。図21には、図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
図21に示すサーバ10Dの処理動作も、見え方シミュレーション情報の提供方法の一例である。
図21に示す処理動作では、調査地Aを訪問した調査員が端末21Aからモニタ20Aの解像度を送信する(ステップ1)。調査員は1名とは限らず、また、各調査員が使用するモニタ20Aの解像度が共通とは限らないため、本実施の形態では、調査の度に解像度をサーバ10Dにアップロードする。
【0107】
一方のサーバ10Dは、端末21から、モニタ20の解像度を取得する(ステップ2)。
その後、サーバ10Dは、取得した解像度と任意の視力値の組み合わせに対応する「ぼかしフィルタ」の強度値を計算し、各値を紐付けた強度値テーブル14B(図2参照)を生成する(ステップ3)。
以上で、調査地Aで使用するモニタ20の登録が終了する。他の調査地についても、モニタ20が同様に登録される。
【0108】
モニタ20の登録後、現地の調査員による調査が開始される。
図21の場合、調査員は、シミュレーションする症例を選択する(ステップ31)。なお、症例に対応する視力値(全距離)を、端末21からサーバ10Dにアップロードしてもよい。視力値(全距離)がアップロードされる場合、サーバ10Dによるステップ32及び33の実行が省略される。
図21の場合、サーバ10Dは、症例の選択を受け付けると(ステップ32)、症例に対応する視力値(全距離)を読み出す(ステップ33)。具体的には、サーバ10Dは、受け付けた症例に対応する視力値(全距離)をデータベース10D1から読み出す。
【0109】
次に、端末21は、調査員が調査地で撮像した距離画像をアップロードする(ステップ34)。
一方のサーバ10Dは、アップロードされた距離画像を取得する(ステップ35)。距離画像が端末21から取得される点が、前述した実施の形態との違いである。
次に、サーバ10Dは、読み出した視力値(全距離)に応じた強度値を強度値テーブル14Bから読み出す(ステップ8A)。なお、視力値が距離に応じて異なる場合、複数の強度値が読み出される。
【0110】
続いて、サーバ10は、読み出した強度値を、端末21から取得した距離画像に対するぼかし処理に適用してシミュレーション画像を生成する(ステップ9A)。
その後、サーバ10は、生成されたシミュレーション画像をストリーミング配信する(ステップ10)。
一方の端末21は、シミュレーション画像を受信すると(ステップ11)、モニタ20にシミュレーション画像を表示する(ステップ12)。
なお、図21では、生成したシミュレーション画像をストリーミング配信しているが、データファイルとして送信してもよい。
【0111】
図21の場合、現地の調査員がモニタ20に表示されたシミュレーション画像を確認し、ステップ31で選択した症例を有する人による現地の見え方に安全上の問題があるかを評価する。
図21の場合、端末21は、サーバ10Dに対し、安全性が確認された視力値を送信する(ステップ36)。
一方、サーバ10Dは、安全性が確認された視力値を記録する(ステップ37)。
この処理動作が、複数の調査員により、複数の調査地について逐次又は同時に実行される。
【0112】
結果的に、サーバ10Dには、安全性が確認された調査地の情報が蓄積される。なお、同じ調査地について、同じ調査員が時間や季節を代えて複数回の調査の結果をアップしてもよい。また、同じ調査地について異なる調査員が調査を行ってもよい。
蓄積された情報は、調査地の改良や都市計画の際に基礎資料としての活用が可能である。
なお、本実施の形態では、調査地を撮像した調査員による評価だけを蓄積しているが、オンラインで接続された他の地点にいる調査員等による評価も調査地に紐付けて蓄積してもよい。
【0113】
本実施の形態の場合、シミュレーション画像が表示されるモニタ20の解像度が異なっても、視力値に応じた見え方を正確に反映できるため、1回の撮像に対して複数の評価の蓄積が可能になる。
また、本実施の形態の場合には、安全性が確かめられた視力値又は症例だけがサーバ10Dに蓄積されているが、同じシミュレーション画像に対する評価の全てを蓄積してもよい。
【0114】
なお、本実施の形態の場合も、前述した実施の形態2のように、シミュレーション画像に代えて、「ぼかしフィルタ」の強度値を端末21に送信してもよい。勿論、その場合には、シミュレーション画像の表示に使用されるモニタ20に応じた強度値が個別に送信され、端末21によりシミュレーション画像が生成される。
【0115】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0116】
(2)前述の実施の形態では、ネットワーク30経由でシミュレーション画像や「ぼかしフィルタ」の強度値を提供する手法を説明したが、これらの情報を半導体メモリやDVD等の可搬型の記憶媒体に格納して提供してもよい。
(3)前述の実施の形態では、主に眼内レンズやコンタクトレンズを装着する場合における視力値の矯正後の見え方をモニタで観察する場合を想定しているが、眼鏡による視力値の矯正後の見え方をモニタで観察する場合にも適用できる。眼鏡は光学レンズの一例である。
【0117】
(4)前述の実施の形態では、主に眼内レンズやコンタクトレンズを装着する場合における視力値の矯正後の見え方をモニタで観察する場合を想定しているが、視力に関連する疾病の研究や教育で使用するモニタへのシミュレーション画像の表示にも応用が可能である。
(5)前述の実施の形態では、強度値テーブル14Bをサービスの利用の度に生成する場合について説明したが、任意の解像度と任意の視力値の組み合わせについて強度値を対応付けた強度値テーブル14Bを事前に用意してもよい。その場合には、シミュレーション画像を観察する端末21から通知された視力値に対応する強度値を強度値テーブル14Bから読み出せばよい。
【符号の説明】
【0118】
1、1A、1B、1C、1D…ネットワークシステム、10、10A、10B、10C、10D…サーバ、10D1…データベース、14A…シミュレーション画像、14B…強度値テーブル、14C…距離画像、21、21A、21B、21C…端末、22A、22B、22C…カメラ、30…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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