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特許7325743コーヒー茶葉の製造方法及びコーヒー茶葉
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  • 特許-コーヒー茶葉の製造方法及びコーヒー茶葉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】コーヒー茶葉の製造方法及びコーヒー茶葉
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/34 20060101AFI20230807BHJP
   A23F 3/06 20060101ALI20230807BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230807BHJP
【FI】
A23F3/34
A23F3/06 S
A23L2/38 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022086529
(22)【出願日】2022-05-27
(62)【分割の表示】P 2018164188の分割
【原出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2022105737
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502148244
【氏名又は名称】株式会社澤井珈琲
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 優子
(72)【発明者】
【氏名】澤井 由美子
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104719522(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105192194(CN,A)
【文献】特開2002-191332(JP,A)
【文献】特開2013-106536(JP,A)
【文献】特開平06-078676(JP,A)
【文献】特開平06-030704(JP,A)
【文献】特開平08-173111(JP,A)
【文献】Food Chemistry,2018年,249,143-153
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/AGRICOLA/FSTA/CABA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥茶葉1.0g当たりトリゴネリンを5.0mg以上含有し、
乾燥茶葉1.0g当たりのカフェインの含有量が、2.0mg以下であるコーヒー茶葉。
【請求項2】
乾燥茶葉1.0g当たり、クロロゲン酸の含有量が20mg以上であり、総ポリフェノールの含有量が25mgGAE/g以上である請求項に記載のコーヒー茶葉。
【請求項3】
コーヒー茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性が500μmolesTE/g以上である請求項1又は2に記載のコーヒー茶葉。
【請求項4】
コーヒー茶葉1.0g当たりのマンギフェリンの含有量が、4.0~10.7mgである請求項1ないし3のいずれかに記載のコーヒー茶葉。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のコーヒー茶葉の粉砕物であるコーヒー茶葉の粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー茶葉の製造方法及びコーヒー茶葉に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、飲料として古くから飲まれている。コーヒー飲料は、コーヒー豆を焙煎し、これを任意の粒度に砕いて、湯で抽出することにより、提供される。
【0003】
例えば、特許文献1には、所定温度かつ所定の積算温度となるように、コーヒー豆を焙焼して、焙煎コーヒー豆を製造する方法が記載されている。この方法によれば、トリゴネリンの分解が防がれるとされている。
【0004】
また、以下の特許文献2や特許文献3に示されているように、コーヒーの葉を原料にして茶(以下、コーヒー葉茶という。)とすることも知られている。しかし、コーヒー豆を利用した飲料ほどは普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-124527号公報
【文献】特開2002-191332号公報
【文献】特開平8-173111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2や特許文献3には、コーヒー葉茶が記載されている。特許文献2のコーヒー葉茶では、クロロゲン酸の減少が抑制されるとされている。特許文献3のコーヒー葉茶では、γ-アミノ酪酸を高濃度に含むとされている。このように、γ-アミノ酪酸などの生理活性物質を高濃度に含有するコーヒー葉茶が提案されているものの、トリゴネリンの含有量に配慮したコーヒー葉茶は提案されていない。トリゴネリンは、脳神経細胞を活性化させたり、認知症に対する予防効果があるとされている。
【0007】
コーヒー豆の抽出液に関しては、特許文献1のように、コーヒー豆を焙煎する際の熱特性を調節することによって、トリゴネリンが分解されるとされている。この方法を、コーヒー葉茶に単純に転用するだけでは、コーヒー葉茶に含まれるトリゴネリン量の低下を十分に防ぐことはできない。
【0008】
本発明は、トリゴネリンの含有量の低減を抑えたコーヒー茶葉の製造方法、及びトリゴネリンの含有量の低減を抑えたコーヒー茶葉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
40~90℃でコーヒーの茶葉を加熱する第1加熱工程と、第1加熱工程で加熱した茶葉を58℃以下の温度で乾燥させる乾燥工程と、乾燥工程で乾燥させた茶葉を82℃以上の温度で焙煎する第2加熱工程とを含むコーヒー茶葉の製造方法によって、上記の課題を解決する。
【0010】
乾燥茶葉1.0g当たりトリゴネリンを5.0mg以上含有するコーヒー茶葉によって、上記の課題を解決する。
【0011】
上記の製造方法において、第1加熱工程は、加熱した水とコーヒーの茶葉とを接触させることにより行うことが好ましい。また、上記の製造方法において、第1加熱工程で加熱する茶葉は、冷凍されたものを使用することができる。
【0012】
上記のコーヒー茶葉において、乾燥茶葉1.0g当たりのカフェインの含有量が、2.0mg以下であることが好ましい。また、上記のコーヒー茶葉において、乾燥茶葉1.0g当たり、クロロゲン酸の含有量が20mg以上であり、ポリフェノールの含有量が25mgGAE/g以上であることが好ましい。上記のコーヒー茶葉において、コーヒー茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性が500μmоlesTE/g以上であることが好ましい。上記のコーヒー茶葉において、コーヒー茶葉1.0g当たりのマンギフェリンの含有量が4.0~10.7mgであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トリゴネリンの含有量の低減を抑えたコーヒー茶葉の製造方法、及びトリゴネリンの含有量の低減を抑えたコーヒー茶葉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コーヒー茶葉の製造方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコーヒー茶葉の製造方法及びコーヒー茶葉の好適な実施形態について説明する。
【0016】
図1にコーヒー茶葉の製造方法の一例について、流れ図を示す。図1に示したように、この例の製造方法では、まず、40~90℃でコーヒーの茶葉を加熱する第1加熱工程11を行う。なお、本明細書では、茶葉という場合、コーヒーの葉単体、又は、コーヒーの葉に加えて葉を支えている枝も含めてもよい。その後、第1加熱工程11で加熱した茶葉を58℃以下の温度で乾燥させる。その後、乾燥工程12で乾燥させた茶葉を82℃以上の温度で焙煎する第2加熱工程13を行う。つまり、第1加熱工程11、乾燥工程12、第2加熱工程13の順序で実施することが好ましい。
【0017】
第1加熱工程の前、第1加熱工程と乾燥工程の間、乾燥工程と第2加熱工程の間、又は第2加熱工程の後には、その他の工程を行ってもよい。例えば、第1加熱工程を行う前に茶葉を洗浄したり、洗浄した茶葉を冷凍したりする工程を行ってもよい。また、例えば、第1加熱工程の後に加熱した茶葉を放熱する工程を実施してもよいし、第1加熱工程で茶葉が多量の液分を含むようになった場合は、脱液工程を行ってもよい。また、例えば、乾燥工程と第2加熱工程との間に、枝から葉を切り離す作業を行ってもよい。また、例えば、第2加熱工程の後に、茶葉の熱を下げる工程を実施してもよいし、茶葉を粉砕して粉状にしたり、茶葉を計量したり、茶葉を包装したりする工程を実施してもよい。第1加熱工程における加熱温度は、52℃以上であることがより好ましく、63℃以上であることがより好ましい。第1加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、1~20分、1~15分、又は1~10分程度実施すればよい。
【0018】
第1加熱工程では、茶葉を所定の温度に加熱することができればよく、その加熱方法は特に制限されない。例えば、低温の蒸気を茶葉に接触させて加熱してもよいし、所定温度に加熱した水などの液体に茶葉を接触させることにより加熱してもよい。所定温度に加熱した液体に茶葉を接触させる方法としては、茶葉を茹でる方法が挙げられる。茶葉を茹でることによって、茶葉に含まれるカフェインの含量を低減させることができる。カフェインが忌避される用途に茶葉を使用する場合は、茶葉を茹でることにより、第1加熱工程を実施することが好ましい。
【0019】
乾燥工程は、所定の温度以下で茶葉を乾燥することができればよく、その方法は特に限定されない。例えば、陰干し、天日干し、又は陰干しと天日干しの組み合わせにより、常温で茶葉を乾燥させてもよいし、温度及び/又は湿度の調節が可能な恒温槽を使用して茶葉を乾燥させてもよいし、所定温度に加熱することができる加熱装置を使用して茶葉を乾燥させてもよいし、送風機などを使用して乾燥させてもよい。乾燥温度は58℃以下であればよい。乾燥温度の下限値は、特に限定されないが、例えば、0℃より高い温度(0℃を含まない)で乾燥させてもよい。乾燥工程における加熱時間は、特に限定されず、生葉からの重量減が75~80%程度になるまで実施すればよい。
【0020】
第2加熱工程は、茶葉を湿潤させずに所定温度で加熱することができればよく、その方法は特に限定されない。例えば、加熱したフライパンなどの鉄板で茶葉を焙煎してもよいし、市販の焙炒装置で茶葉を加熱することにより実施してもよいし、乾熱装置により加熱してもよい。第2加熱工程は、82℃以上で実施すればよく、その上限値は特に限定されないが、例えば、180℃以下、又は150℃以下で実施することが好ましい。第2加熱工程における加熱時間は、特に限定されないが、例えば、1~20分、1~15分、又は1~10分程度実施すればよい。
【0021】
第1加熱工程で加熱に供される茶葉は、生の茶葉であってもよいし、冷凍されたものであってもよい。長期にわたって冷凍された茶葉を使用する場合は、抽出したコーヒー葉茶の風味に影響を及ぼす場合がある。そのような場合は、第2加熱工程の加熱温度を100℃以上にすることが好ましい。
【0022】
上記の製造法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりトリゴネリンを5.0mg以上含有するコーヒー茶葉を製造することができる。トリゴネリンの含量の上限値は、特に限定されないが、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのトリゴネリン含量が10.0mg以下のものを製造することができる。
【0023】
また、上記の製造方法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのカフェインの含有量が、2.0mg以下のコーヒー茶葉を製造することができる。カフェインの下限値は、特に限定されないが、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのカフェインの含量が0mgよりも大きいものを製造することができる。
【0024】
また、上記の製造方法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのクロロゲン酸の含有量が、20mg以上のコーヒー茶葉を製造することができる。クロロゲン酸の上限値は、特に限定荒れないが、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのクロロゲン酸の含量が40mg以下ものを製造することができる。クロロゲン酸には、抗酸化作用が認められると共に、血糖値の上昇を抑制する作用が認められる。
【0025】
また、上記の製造方法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりの総ポリフェノールの含有量が、25mg以上のコーヒー茶葉を製造することができる。総ポリフェノールの上限値は、特に限定荒れないが、例えば、乾燥茶葉1g当たりの総ポリフェノールの含量が60mg以下ものを製造することができる。
【0026】
また、上記の製造方法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性が500μmоlesTE/g以上であるものを製造することができる。DPPHラジカル消去活性の上限値は、特に限定されないが、例えば、乾燥茶葉1g当たりのDPPHラジカル消去活性が1200μmоlesTE/g以下のものを製造することができる。
【0027】
また、上記の製造方法によれば、例えば、乾燥茶葉1.0g当たりのマンギフェリンの含有量が4.0~10.7mgのコーヒー茶葉を製造することができる。マンギフェリンの含有量は、製造条件により、乾燥茶葉1.0g当たり6.0mg以上の含有量にすることもできる。マンギフェリンには、糖尿病の合併症の抑制作用、抗肥満作用、又は肝臓の保護作用がある。
【0028】
上記のコーヒー茶葉は、加熱した水や常温の水で抽出してコーヒー葉茶として飲用することができる。また、コーヒー茶葉を粉砕して得た粉末を、トリゴネリン増強剤として使用することができる。この粉末は、例えば、食品や飲料に添加して使用することができる。また、この粉末は、例えば、食品や飲料の風味の改質剤としても使用することができる。
【実施例
【0029】
以下、コーヒー葉茶及びその製造方法の製造例を挙げる。
【0030】
〔製造例1〕
原料として、樹齢半年から3年程度のコーヒーノキ属アラビカ種の生葉と枝を使用した。生葉と枝は、新芽を含む枝を幹から枝ごと切断し、その枝葉を冷凍保存したものを使用した。
【0031】
上記の冷凍保存した葉を、第1加熱工程として、80℃に加熱した水に投入して、5分間にわたって茹でた。その後、乾燥工程として、40℃に加熱した加熱板の上に水切りした茶葉を広げて一晩乾燥させた。乾燥させた茶葉を粉砕せずに、第2加熱工程として、80℃にした焙炒装置で3~5分程度焙煎した。焙煎した茶葉を、粉砕して製造例1に係るコーヒー茶葉を得た。
【0032】
〔製造例2〕
第2加熱工程における加熱の温度を100℃に変更した点以外は、製造例1と同様にして、製造例2に係るコーヒー茶葉を製造した。
【0033】
〔製造例3〕
第2加熱工程における加熱の温度を120℃に変更した点以外は、製造例1と同様にして、製造例3に係るコーヒー茶葉を製造した。
【0034】
〔製造例4〕
第1加熱工程における茹で温度を50℃に変更した点以外は、製造例1と同様にして、製造例4に係るコーヒー茶葉を製造した。
【0035】
〔製造例5〕
第1加熱工程における茹で温度を100℃に変更した点以外は、製造例1と同様にして、製造例5に係るコーヒー茶葉を製造した。
【0036】
〔製造例6〕乾燥工程における温度を70℃に変更した点以外は、製造例1と同様にして、製造例6に係るコーヒー茶葉を製造した。
【0037】
製造例1ないし6のコーヒー茶葉について、以下の方法によって、第2加熱工程を終えた後における乾燥茶葉1.0g当たりに含まれるトリゴネリンの含量(mg/g)、乾燥茶葉1.0g当たりに含まれるクロロゲン酸の量(mg/g)、及び乾燥茶葉1.0g当たりに含まれるカフェインの量(mg/g)を求めた。結果を、以下の表2に示す。トリゴネリンの含量、クロロゲン酸の含量、及びカフェインの含量は、2回測定して、平均をとった値である。
【0038】
トリゴネリンの含量は、乾燥茶葉0.5gを計量し、これを約100mLの沸騰した熱水超純水中(100℃)で撹拌子を用いて30分間抽出した。抽出液を室温に戻してから100mLに定容した。定容した抽出液と、アセトニトリルとを1:1(容積基準)で混和し、混和したものを0.45μm穴径のRC膜でろ過した。そして、ろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定試料として使用した。測定条件は、下記の通りである。
測定装置:LC-10A(島津製作所)
カラム:Asahipak NH2P-50 4E 4.6mm i.d.×250mm
移動相:アセトニトリル/水=75/25(容積比)の混合液
流速:1.0ml/min
検出:UV265
試料注入量:10μL
カラム温度:40℃
なお、トリゴネリンの含量は、絶対検量線法により定量化した。すなわち、茶の試料とは別に用意した標準物質についてHPLCによる測定を行い、ピーク面積と濃度の関係をプロットして、検量線を作成した。この検量線を用いて、茶の試料のピーク面積からトリゴネリンの濃度を求めた。以下に記述するHPLCによる測定は、すべて絶対検量線法により、定量化を行った。
【0039】
クロロゲン酸とカフェインの含量は、以下の方法により、高速液体クロマトグラフィーにより同時に測定した。すなわち、茶葉0.5gを計量し、これを約100mLの沸騰した熱水超純水中(100℃)で撹拌子を用いて30分間抽出した。抽出液を室温に戻してから100mLに定容した。定容した抽出液とメタノールとを容積基準で1:1で混和したものを、0.45μm穴径のRC膜でろ過した。そして、ろ液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定試料として使用した。測定条件は、下記の通りである。なお、リン酸緩衝液は、KHPOとHPOとを混合したものである。
測定装置:LC-10A(島津製作所)
カラム:CAPCELL PAK C18 AG120 4.6mm i.d.×250mm(資生堂)
移動相:5mMリン酸緩衝液緩衝液(pH2.5)/CHOH=7/3(容積比)の混合液
流速:0.8ml/min
検出:UV280nm
試料注入量:10μL
カラム温度:40℃
【0040】
次に、製造例1のコーヒー茶葉1.0g当たりに含まれる総ポリフェノールの量(mgGAE/g)と、製造例1の乾燥茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性(μmоlTE/g)と、製造例1の乾燥茶葉1.0g当たりのマンギフェリンの含有量(mg/g)を求めた。ポリフェノールは、没食子酸を標準品として使用して求めた。GAEとは、没食子酸の相当量のことである(gallic acid equivalent)。TEとは、トロロックス相当量のことである(trolox equivalent)トロロックスは水溶性のビタミンEであり抗酸化性の基準として使用される。
【0041】
総ポリフェノール濃度の測定のために以下の試料を準備した。すなわち、乾燥茶葉0.5gを計量し、これを約100mLの沸騰した熱水超純水中(100℃)で撹拌子を用いて30分間抽出し、これを室温に戻した。抽出液を100mLに定容したものを試料として使用した。測定法は、フォーリン・チオカルト法を用いた。すなわち、96穴マイクロプレートの各ウェルに、蒸留水で7倍に希釈した試料70μLと、蒸留水で2倍希釈したフォーリン・チオカルト試薬(シグマ)15μLとを投入して混和した。5分後、混和物に対して2%炭酸ナトリウム水溶液75μLを加えて、撹拌した後、15分間反応させた。反応物について波長660nmにおける吸光度を測定した。濃度が既知の没食子酸水溶液で作成した検量線から総ポリフェノール含量を没食子酸相当量(mgGAE/g)として算出した。
【0042】
DPPHラジカル消去活性の測定のために以下の試料を準備した。すなわち、乾燥茶葉0.5gを計量し、これを約100mLの沸騰した熱水超純水中(100℃)で撹拌子を用いて30分間抽出し、これを室温に戻した。抽出液を100mLに定容したものを試料として測定した。測定法は、食品機能性評価マニュアル集(日本食品科学工学会発行)にしたがって測定した。すなわち、96穴マイクロプレートの各ウェルに、50容量%エタノールで20倍に希釈した試料:100μLと、0.2mM MES(2-morpholino ethane-sulphonic acid)緩衝液(pH6.0):50μLと、400μM DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl):50μlとを投入して混合し、室温(25℃程度)で20分間反応させた。その後、プレートリーダーで520nmの吸光度を測定した。このときの標準物質として、ビタミンEの水溶性類縁体であるTroloxを50容量%エタノールで0~1000μMに調整して用いた。DPPHラジカル消去活性は、試料の測定値から導き出された一次回帰直線の傾きを、標準での回帰直線の傾きで除して算出した。
【0043】
マンギフェリンの含有量の測定のために以下の試料を準備した。すなわち、乾燥茶葉0.5gを計量し、これを約100mLの沸騰した熱水超純水中(100℃)で撹拌子を用いて30分間抽出し、これを室温に戻した。抽出液を100mLに定容したものを0.45μm穴径のRC膜でろ過し、そのろ液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の測定試料として使用した。測定条件は、下記の通りである。なお、測定は、移動相A及びBの混合比を経時的に変化させて測定するジラジエント測定により行った。
測定装置:L-2490(日立ハイテクノロジーズ)
カラム:Inertsil ODS-3 4.6mm i.d.×150mm(ジーエルサイエンス)
流速:0.4ml/min
検出:UV270nm
試料注入量:10μL
カラム温度:40℃
移動相A:2容量%酢酸
移動相B:100%メタノール
これらの移動相を下記の濃度勾配を作成し、測定を実施した。
【0044】
【表1】
【0045】
製造例1の茶葉1.0g当たりの総ポリフェノール含量は、38.7mgGAE/gであった。製造例1の茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性は、848.5μmоlTE/gであった。また、製造例1の茶葉1.0g当たりのマンギフェリンの含有量は、7.1mgであった。
【0046】
次に、12名のパネラーに参加してもらい、製造例1ないし6のコーヒー茶葉から抽出したコーヒー葉茶の嗜好性について官能評価を行った。各コーヒー茶葉1.0gを約100℃の湯200mlで3分にわたって抽出を行ってコーヒー葉茶を作製し、各パネルが各コーヒー葉茶を実際に飲んで味覚及び嗅覚で評価を行った。結果を表2に示す。表2においては、嗜好性が「良い」と回答した該当者と、「青臭い」と回答した該当者とをそれぞれ分子に示し、パネラー全員(全回答者数)を分母に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2から明らかなように、第1加熱工程及び乾燥工程の加熱温度を低めに設定した製造例1ないし3に係るコーヒー茶葉から抽出した茶(コーヒー葉茶)では、コーヒー茶葉1.0g当たり含まれるトリゴネリンの量が5.0~7.0mgの範囲であり、嗜好性が良いと回答したパネルが概ね55~75%もいた。製造例1ないし3のコーヒー茶葉は、トリゴネリンの含量と嗜好性のバランスがとれていることがわかる。また、製造例1ないし3に係るコーヒー茶葉は、クロロゲン酸の含量も多いことがわかる。また、上述の通り、製造例1に係るコーヒー茶葉は、上述の通り、茶葉1.0g当たりの総ポリフェノール含量が38.7mgGAE/gであり、乾燥茶葉1.0g当たりのDPPHラジカル消去活性は、848.5μmоlTE/gであった。このことから製造例1に係るコーヒー茶葉は、多量のポリフェノールを含有し、高い抗酸化作用を有することがわかる。さらに、製造例1ないし製造例3に係る茶葉の比較から、第2加熱工程における温度の高低はトリゴネリンの含有量には大きく影響しない傾向があり、第2加熱工程における温度の高低は嗜好性には影響を与える傾向があった。
【0049】
製造例4に係るコーヒー茶葉で抽出したコーヒー葉茶は、トリゴネリンの含量がさらに多くなるが、青臭いと感じたパネルが増加した。さらに第1加熱工程の温度を低くした場合は、青臭さがより顕著になる。
【0050】
第1加熱工程の温度を高めに設定した製造例5に係るコーヒー茶葉、又は乾燥工程の温度を高めに設定した製造例6に係るコーヒー茶葉では、トリゴネリンの含量が低下してしまうことがわかる。
【0051】
また、表2から、第1加熱工程の温度を55℃以上として、コーヒー茶葉を茹でることによって、コーヒー茶葉に含まれるカフェインの含量を低減することができることがわかった。比較のために、第1加熱工程において、80℃の蒸気でコーヒー茶葉を5分程度蒸したところ、乾燥茶葉1.0g当たりに含まれるカフェインの含量は4.3mg程度であった。
【0052】
また、生のコーヒー茶葉と、冷凍保存したコーヒー茶葉とを使用して、上記と同様の試験を行ったところ、両者ともに同程度のトリゴネリン含量であった。嗜好性に関しては、冷凍保存したコーヒー茶葉を使用した場合、青臭いと回答するパネルがやや増加する傾向があった。これに関しては、第2加熱工程の温度を100℃以上にすることによって、青臭さを低減することができる。

図1