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特許7325748二次電池システム及び二次電池システムの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】二次電池システム及び二次電池システムの使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/30 20060101AFI20230807BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20230807BHJP
   C01B 3/04 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
H01M10/30 Z
H01M10/44 A
C01B3/04 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019058299
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161285
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003890
【氏名又は名称】弁理士法人SIPPs
(72)【発明者】
【氏名】神原 信志
(72)【発明者】
【氏名】早川 幸男
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友規
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】池田 達也
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027847(JP,A)
【文献】特開2014-070012(JP,A)
【文献】特開平05-089904(JP,A)
【文献】特開2003-178738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
H01M10/42-10/48
H01M 4/32
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素源と、一又は複数の二次電池とを備えている二次電池システムであって、
前記水素源が、前記二次電池に必要な水素量を提供するための水素製造装置を備えており、
前記二次電池が、
正極と、
水素を吸蔵及び放出可能な負極と、
電解液を含み、前記正極と前記負極とを隔てているセパレータと、
前記正極と前記負極と前記セパレータとを収容している容器と、を備えており、
さらに、前記二次電池と前記水素源とを接続して前記二次電池に水素を導入し、かつ前記正極及び前記負極で発生した余剰となった水素を前記容器の外に放出する排気ポンプが設けられた水素流路を備えており、
前記水素流路が、前記排気ポンプ及び前記水素源と接続されていることを特徴とする二次電池システム。
【請求項2】
前記負極が水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項1記載の二次電池システム。
【請求項3】
前記正極が水酸化ニッケルであることを特徴とする請求項1記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記水素製造装置が、
アンモニア貯蔵容器と、
アンモニアを分解してプラズマとするための、アンモニア供給口および水素出口を備えたプラズマ反応容器と、
プラズマ発生用電源と、
当該プラズマ反応容器の水素出口側を区画する水素分離膜と、
を備えており、
前記水素分離膜が、前記プラズマ反応容器内でプラズマとなっているアンモニアから水素を分離して、前記水素出口側に通過させることを特徴とする請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項5】
前記容器の水素流路が、前記水素流路から水素を導入し、余剰となった水素を排出する水素量調整弁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項6】
請求項1に記載の二次電池システムの使用方法であって、
水素源から前記容器に水素を供給する工程と、
外部負荷に給電する放電工程と、
外部電源から所定の電流を供給する充電工程と、
前記充電工程の副生成物である水素を前記水素流路に排出する工程と、を備えていることを特徴とする二次電池の使用方法。
【請求項7】
第一の二次電池と第二の二次電池を備えている、請求項1記載の二次電池システムの使用方法であって、
第一の二次電池に、前記水素源から水素を供給する工程と、
前記第一の二次電池の放電工程と、
前記第一の二次電池の充電工程と、
前記第一の二次電池における前記充電工程の副生成物である水素を、前記水素流路を経由して第二の二次電池に供給する工程と、を備えていることを特徴とする、二次電池システムの使用方法。
【請求項8】
第一の二次電池と第二の二次電池を備えている、二次電池システムの使用方法であって、
前記二次電池システムが、水素源と、一又は複数の二次電池とを備えており
前記水素源が、水素製造装置を備えており、
前記二次電池が、
正極と、
水素を吸蔵及び放出可能な負極と、
電解液を含み、前記正極と前記負極とを隔てているセパレータと、
前記正極と前記負極と前記セパレータとを収容している容器と、を備えており、
さらに、前記二次電池と前記水素源とを接続して前記二次電池に水素を導入し、かつ余剰となった水素を排出する水素流路を備えており、
前記水素流路が、排気ポンプ及び前記水素源と接続されており、かつ
第一の二次電池に、前記水素源から水素を供給する工程と、
前記第一の二次電池の放電工程と、
前記第一の二次電池の充電工程と、
前記第一の二次電池における前記充電工程の副生成物である水素を、前記水素流路を経由して第二の二次電池に供給する工程と、を備えていることを特徴とする、二次電池システムの使用方法。
【請求項9】
水素源と、一又は複数の二次電池とを備えている二次電池システムであって、
前記水素源が、前記二次電池に必要な水素量を提供するための水素製造装置を備えており、
前記二次電池が、
正極と、
負極と、
前記負極が水素吸蔵合金であり、
電解液を含み、前記正極と前記負極とを隔てているセパレータと、
前記正極と前記負極と前記セパレータとを収容している容器と、を備えており、
さらに、前記二次電池と前記水素源とを接続して前記二次電池に水素を導入し、かつ前記正極及び前記負極で発生した余剰となった水素を前記容器の外に放出する排気ポンプが設けられた水素流路を備えており、
前記水素流路が、前記排気ポンプ及び前記水素源と接続されていることを特徴とする二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池システム及び二次電池システムの使用方法に関する。特に、水素製造装置を備えた水素源から水素を供給することで、急速に充電することのできる二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、これまで一次電池の代替品または自動車用バッテリーとして利用されていた。しかし近年、二次電池は、自然エネルギーの貯蔵と出力のための蓄電池として、または車両の動力源としても用いられている。特に、二次電池の中のニッケル水素電池やリチウムイオン電池は、ハイブリッド車、電気自動車、または電動アシスト自転車等の車両の動力源として、その用途が拡大している。
【0003】
ニッケル水素電池として、負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル金属水素化物電池が普及している。ニッケル水素電池は、小型で大容量の二次電池を提供することができるため、ハイブリッド車の動力源として好適に用いられる。一方で、ニッケル水素電池は、充電の条件によっては水素や酸素が放出されるため、適切な充放電管理を行う必要がある。また他の二次電池と同様に、車両の動力源として大容量の電池を構成している場合、充電時間が非常に長くなっている。
【0004】
たとえば、Cレートが1Cであるニッケル水素電池を0.1Cで充電する場合、一般には、10時間以上の充電時間が必要と言われている。そのため、0.2C~0.3Cの急速充電を行うことで充電時間を短縮する試みがなされている。しかしこのような急速充電でも、数時間の充電時間が必要である。
【0005】
特許文献1は、人工衛星等に搭載するニッケル水素電池を開示している。特許文献1のニッケル水素電池は、圧力容器である電池容器内に水素ガスを収容して、正極であるニッケル極と負極である水素極のそれぞれの極での化学反応により発電している。このニッケル水素電池は、充放電中に電池容器内で発生した水素を水に変換する物質を供給して、容器の圧力を下げ、電池の長寿命化を行っている。水素を水に変換する具体的な方法は、酸素ガスの容器への供給である。
【0006】
特許文献2は、ニッケル水素電池において、充電時における酸素ガスの発生を抑制するために、正極にマンガンを含むニッケルの複合水酸化物を適用する技術を開示している。特許文献3は、ニッケル水素電池の急速充電に対応可能な正極の構成を開示している。特許文献3における正極は、水酸化ニッケルを主成分とし、これにコバルト系成分や、酸化イットリウム成分等を含ませ、さらに、酸化スズ系導電性物質またはニッケルメッキからなる物質にゴム成分を加えたものを被覆している。特許文献3の正極を用いた時の高速充電の方法は、3Cまたは4C条件である。
【0007】
特許文献4は、ニッケル水素電池の充電速度を向上させるために、負極の水素吸蔵合金を繊維状形成する技術を開示している。特許文献4は、具体的な充電速度の向上効果を示していない。特許文献5は、ニッケル水素電池の充電を、水素及び酸素の供給によって行う技術を開示している。特許文献5に開示されたニッケル水素電池は、酸素及び水素の供給による充電を可能とするために、正極に水酸化マンガンを含む物質を適用している。
【0008】
特許文献6は、ニッケル水素電池を急速充電する技術を開示している。特許文献6のニッケル水素電池は、水素ガス貯蔵タンクを、ニッケル水素電池と給排気管及び制御バルブを介して接続し、ニッケル水素電池の充電時に発生した水素ガスを水素貯蔵タンクに回収する。また、放電によって電槽内の圧力が規定値以下に下がった場合は、水素貯蔵タンクから水素ガスを電池内に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-288137号公報
【文献】特開平11-273716号公報
【文献】特開2003-297351号公報
【文献】特開2004-22332号公報
【文献】特開2010-15729号公報
【文献】特開2003-178738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ニッケル水素電池において、充電時間を短縮する試みが種々なされている。しかし、正極と負極の材料変更や電池構造の改善を行っても、充電時間の短縮効果は、未だ十分ではない。特許文献6に開示されているような、充電時に排出される水素を貯蔵タンクに回収して、放電時に回収した水素を戻すシステムでは、圧力容器である水素の貯蔵タンクが必要となる。また、充電を繰り返して電池内の水素が減少した場合、回収した水素ガスを戻すだけでは、水素の必要量を確保できない可能性がある。その場合には、別途、電池内に水素を供給する手段が必要となる。
【0011】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであって、急速充電が可能な二次電池システムと、その使用方法の提供を解決すべき課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水素源と、一又は複数の二次電池とを備えている二次電池システムに関する。本発明の二次電池システムは、水素源が、水素製造装置を備えていることを特徴とする。また、本発明の二次電池システムの二次電池は、正極と、負極と、電解液を含み正極と負極とを隔てているセパレータと、正極と負極とセパレータとを収容している容器と、を備えている。さらに、本発明の二次電池システムは、二次電池と水素源とを接続して二次電池に水素を導入し、且つ余剰となった水素を排出するための水素流路を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の二次電池システムは、水素製造装置を備えることで、放電時に必要となる水素を十分に提供し、高速充電の繰り返しを可能とする。
【0014】
本発明の二次電池システムは、負極が水素吸蔵合金であることが好ましい。また本発明の二次電池システムは、正極が水酸化ニッケルであることが好ましい。
【0015】
本発明の二次電池システムの水素製造装置は、アンモニア貯蔵容器と、アンモニアを分解してプラズマとするための、アンモニア供給口および水素出口を備えたプラズマ反応容器と、プラズマ発生用電源と、プラズマ反応容器の水素出口側を区画する水素分離膜と、を備えており、水素分離膜が、プラズマ反応容器内でプラズマとなっているアンモニアから水素を分離して、水素出口側に通過させる装置であることが好ましい。
【0016】
本発明の二次電池システムの容器の水素流路は、水素流路から水素を導入し、余剰となった水素を排出する水素量調整弁を備えていることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、二次電池システムの使用方法を提供する。本発明の二次電池の使用方法は、水素源から容器に水素を供給する工程と、外部負荷に給電する放電工程と、外部電源から所定の電流を供給する充電工程と、充電工程の副生成物である水素を水素流路に排出する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0018】
第一の二次電池と第二の二次電池を備えている二次電池システムにおいては、第一の二次電池に、水素源から水素を供給する工程と、第一の二次電池の放電工程と、第一の二次電池の充電工程と、第一の二次電池における充電工程の副生成物である水素を、水素流路を経由して第二の二次電池に供給する工程と、を備えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二次電池システムにおいては、大電流で充電を行い、発生した余剰の水素と酸素を放出した後に、水素製造装置から水素を供給することで、極めて迅速に充電を完了させることができる。
【0020】
本発明の二次電池システムは、水素製造装置を備えているので、水素を貯蔵する圧力容器が不要であり、システム全体を小型化することができる。また、水素製造装置によって、いつでも水素を供給することができるので、必要な水素量を常時提供し、二次電池の充放電特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に従った二次電池システムの構成を模式的に示す図である。
図2図2は、第一の二次電池と第二の二次電池を備えた二次電池システムの構成を模式的に示す図である。
図3図3は、実施例の二次電池の放電特性を示す図である。
図4図4は、実施例の二次電池の充電特性を示す図である。
図5図5は、実施例の二次電池の急速充電後の放電特性を示す図である。
図6図6は、比較例の二次電池の放電特性を示す図である。
図7図7は、二次電池システムに好適に適用される水素製造装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下においては、本発明の二次電池システム1を、ニッケル水素電池の一種であるニッケル金属水素化物電池を用いて構成した実施形態について、説明する。図1に、本発明の実施形態に従った二次電池システム1の構成を模式的に示す。二次電池システム1は、水素源10と、二次電池11とを備えている。
【0023】
ここで、図1は、二次電池11の充電時の状態を示しており、二次電池11は外部電源30に接続されている。二次電池11をモーター等の外部負荷に接続したとき、二次電池11は放電して負荷に電力を供給する。
【0024】
二次電池11は、正極12と、水素吸蔵合金を含む負極13と、正極12と負極13とを隔てているセパレータ14とを備えている。正極12と負極13とセパレータ14は、容器15の中に収容されている。正極12の出力端には集電板17が配置されており、集電板17は図示されない正極端子に接続される。負極13の出力端には集電板18が配置されており、集電板18は図示されない負極端子に接続される。なお、図1においては、構成をより明確に示すために、正極12と負極13とセパレータ14とからなるセルを一組のみ記載しているが、容器15内に複数の組のセルを直列に配置することができる。
【0025】
正極12は、ニッケル酸化化合物を含んで構成されており、好適には、水酸化ニッケルで構成される。負極13は、水素吸蔵合金を含んでおり、AB型の希土類・Ni系合金が好適に使用される。セパレータ14としては、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維等を用いた不織布が好適に用いられる。
【0026】
容器15内に、電解液16が収容されている。好適な電解液として、水酸化カリウム水溶液が用いられる。
【0027】
二次電池11と水素源10との間には水素流路21が設けられており、水素源10から二次電池11に水素ガスを供給することができる。水素流路21はまた、排気ポンプ22とも接続されており、二次電池11の充電時に発生した副生成物の水素または水素を含む気体を排出することができる。水素流路21上の水素源10と排気ポンプ22との分岐箇所には、水素量調整弁23が設けられている。水素量調整弁23は、水素源10から二次電池11に供給する水素の量と、二次電池11から排出する水素を含む気体の量とを調整することができる。
【0028】
本発明の水素源10に好適に適用される水素製造装置50を図7に示す。水素製造装置50は、水素の原料となるアンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵容器51と、アンモニアを分解してプラズマとするためのプラズマ反応容器52と、バッテリーに接続されたプラズマ発生用電源53と、プラズマ反応容器52の水素出口54側を区画する水素分離膜55と、を備えた装置である。水素製造装置50の水素分離膜55は、プラズマ反応容器52内でプラズマとなっているアンモニアから水素のみを分離して、水素出口54側に通過させる。
【0029】
本実施形態の水素製造装置50は、アンモニアの供給量と、プラズマ発生用電源53に供給する電力との両方を制御することによって、水素の製造量を容易に変更することができる。このため、水素の一時貯蔵容器がなくとも、二次電池11に必要充分な水素量を迅速に提供することができる。
【0030】
本発明の二次電池システム10の充電方法と放電方法について説明する。以下に、正極12が水酸化ニッケルを含んでいる場合の、充電と放電の反応式を示す。式1は、二次電池11全体の充放電の反応式である。式2は、正極12の充放電の反応式である。式3は、負極13の充放電の反応式である。
【数1】
【0031】
負極13の水素吸蔵合金が水素原子を吸収した状態で、二次電池11の正極端子と負極端子とを外部負荷に接続すると、放電が発生する。放電時、負極13では、水素吸蔵合金に吸収されていた水素原子が電極の触媒作用によって水酸イオンと反応して水となり、このとき負極13は水素原子から電子を受け取る。正極12では、水とオキシ水酸化ニッケルが、負極から移動してきた電子を受け取って水酸化ニッケルと水酸化イオンとなる。負極13の水素吸蔵合金から水素が放出されなくなったとき、放電が終了する。
【0032】
放電が完了した時点で、二次電池11に外部電源30を接続して電流を流すと、正極12で水酸化ニッケルが還元されてオキシ水酸化ニッケルと水が生成し、正極12に電子が供給される。負極13では、水が水素イオンと水酸イオンに分解し、電子を受け取った水素イオンが水素原子となる。
【0033】
従来から行われている低速充電では、負極で発生した水素原子は、水素吸蔵合金に吸収される。しかし、急速充電では、負極13で生成した水素原子は、一部が負極の水素吸蔵合金に吸着するものの、大部分は水素ガス(H)として容器15内に滞留する。また、正極12では、大電流によって生成した水の一部が電気分解され、水素(H)と酸素(O)が発生する。これら発生した気体をそのまま滞留させると容器15の圧力が上昇する。圧力上昇を防ぐため、二次電池11の急速充電時には、排気ポンプ22を稼働させて、負極13で発生した水素、および正極12で発生した水素と酸素を容器15の外に排出する。急速充電によって発生した水素と酸素は、排気ポンプ22の吸引によって、水素流路21から水素量調整弁23を経由して容器15の外に放出される。
【0034】
急速充電による水素の発生が終了した直後に、水素源10の水素製造装置50を稼働させて、二次電池11の容器15内の負極13側に水素を供給することで、水素吸蔵合金が水素を吸収し、充電が完了する。
【0035】
以上説明したとおり、本発明の二次電池11は、水素源10から水素を供給して負極13に供給する工程と、外部負荷に給電する放電工程と、正極12と負極13とに外部電源30から所定の電流を供給する充電工程と、充電工程の副生成物である水素を水素流路に排出する工程と、を行うことで、放電と急速充電を繰り返すことができる。
【0036】
図2に、本発明の二次電池システムの更なる実施形態を示す。二次電池システム40は、同一仕様の2個の二次電池11a,11bを備えている。二次電池11a,11bは、充電時に、それぞれが外部電源30a,30bに接続される。
【0037】
二次電池11a,11bは、それぞれが水素流路の分岐路21a,21bを経由して水素流路21に接続されている。本実施形態の水素流路21上には、複数の排気ポンプ22a,22bと水素量調整弁23a,23b,23cが配置されており、二次電池11a,11bへの水素の供給と排気をそれぞれ独立して行うことができる。
【0038】
二次電池システム40は、制御手段31を備えている。制御手段31は、二次電池11a,11bと、水素製造装置と10と、排気ポンプ22と、水素量調整弁23a,23bとに接続されている。制御手段31は、二次電池11a,11bの充電状態を監視し、二次電池11aと二次電池11bの充電と放電のタイミングをずらすことによって、一方の二次電池で充電時に発生した水素を他方の二次電池に供給する。これにより、充電時の水素の排出量と、水素製造装置50による水素の製造量を共に減らすことができる。
【0039】
制御手段31が行う制御の内容を、以下に列記する。
- 二次電池11a,11bの電圧と容器内の圧力の監視。
- 二次電池11a,11bの充電のタイミング制御。
- 排気ポンプ22a,22bと水素量調整弁23a,23b,23cの動作のタイミング制御。
- 水素源10の水素製造装置50の運転制御
- 外部電源30a,30bの電流と電圧の制御。
これらの制御により、電池の充電特性を劣化させることなく、急速充電を繰り返すことができる。
【実施例
【0040】
以下、本発明にかかる二次電池システム1に対して、好適な条件で急速充電を行った例を説明する。図3に、二次電池システム1の放電特性を示す。図3は、二次電池システム1を組み立てて最初に満充電した後、1Cの定電流で放電試験を行った結果である。約50分の放電が可能であった。
【0041】
本実施例の二次電池システムは、正極12と負極13とが劣化しない範囲で電流を流して、急速充電が可能である。また、充電時間は、電流値によって制御が可能である。本実施例では、Cレート12Cで充電を行った。このとき、排気ポンプ22を稼働させて、正極12と負極13から発生する水素と酸素を、容器15の外に排出した。
【0042】
排気を行いながら12Cで行った充電は、約5分で完了した。充電特性を図4に示す。
【0043】
充電完了後に、水素源10の水素製造装置50から、水素を供給した。そして、再度、1Cの定電流で放電試験を行った。結果を図5に示す。急速充電後も、最初の充電時と同様の約50分の放電が可能であり、同等の放電特性が得られていることが確認された。
【0044】
以上、説明したとおり、本発明の二次電池システム1は、極めて大電流で急速充電を行った場合であっても、副生成物の気体を排出してその後の水素供給を行うことにより、電池の放電特性を維持することができる。従って、これまでにない急速充電が可能である。
【0045】
(比較例)
放電が完了した二次電池11に,12Cの電流を流して急速充電を行った後、水素を供給しない状態で、1Cの定電流による放電試験を行った。その結果を、図6に示す。この比較例の方法を適用した二次電池11は、ほとんど放電を行うことができない。その理由は、水素製造装置50からの水素の供給がなかったことにより、負極13の水素吸蔵合金に水素が十分吸収されなかったためと考えられる。わずかに放電するのは、充電工程のとき負極13側で短時間発生した水素の一部が、水素吸蔵合金に吸収されていたことによると考えられる。
【0046】
比較例の結果から、本発明の二次電池11を急速充電して好適な放電特性を得るためには、水素の供給が必要であることが確認された。
【0047】
以上、実施例に基づいて、本発明の二次電池システムと二次電池システムを使用する方法について説明したが,特許請求の範囲に記載の発明は、実施例に限定されるものではなく、二次電池システムの構成は、適宜変更が可能である。たとえば、二次電池システムには、3個以上の二次電池を配置することが可能である。また、水素製造装置は、アンモニアから水素を製造する装置に限定されず、任意の水素製造装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,40 二次電池システム
10 水素源
11,11a,11b 二次電池
12 正極
13 負極
14 セパレータ
15 容器
16 電解液
17,18 集電板
21 水素流路
21a,21b 分岐路
22,22a,22b 排気ポンプ
23,23a,23b,23c 水素量調整弁
30,30a,30b 外部電源
31 制御手段
50 水素製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7