IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シヤチハタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図1
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図2
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図3
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図4
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図5
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図6
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図7
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図8
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図9
  • 特許-印判用画像処理装置および印判加工機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】印判用画像処理装置および印判加工機
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/50 20060101AFI20230807BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20230807BHJP
   B41C 1/055 20060101ALI20230807BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B41K1/50 A
G06T5/00 740
B41C1/055
B41J2/52
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019159274
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037661
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【弁護士】
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 慎磨
(72)【発明者】
【氏名】渕上 亜紀子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153191(JP,A)
【文献】特開2001-177723(JP,A)
【文献】特開2005-125549(JP,A)
【文献】特開平07-129762(JP,A)
【文献】特開平08-279033(JP,A)
【文献】特開2004-102819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/50
G06T 5/00
B41C 1/055
B41J 2/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像検出手段と、検出された元画像をグレースケール化する調補正手段と、グレースケール化された画像の調を、印影濃度を基準とする補正テーブルを用いて線形化する調線形化手段と、線形化された画像を記憶する線形化画像記憶手段と、線形化された画像の輪郭を抽出して輪郭画像とする輪郭抽出手段と、線形化された画像をモノクロ画像に変換するモノクロ抽出手段と、これらの輪郭画像とモノクロ画像を合成する画像合成手段と、合成画像記憶手段とを備えたことを特徴とする印判用画像処理装置。
【請求項2】
画像合成手段が、輪郭画像とモノクロ画像と、前記線形化された画像とを合成するものである請求項1に記載の印判用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イラストや建物などの元画像からその印判を作成するために用いられる印判用画像処理装置および印判加工機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザが持ち込んだイラスト画像や、ユーザが撮影した写真を基に印判を自動作成する装置が開発され、既に実用化されている。この装置を用いれば、ユーザはオリジナルな印判を手軽に作成することができる。
【0003】
この印判は、インク吸蔵体となる多孔質材を、例えば特許文献1に示されるようなサーマルヘッドを備えた印判加工機を用いて熱加工処理して製造することができる。サーマルヘッドはライン状に配置された多数の発熱素子を備え、サーマルヘッドを移動させながら多孔質材の表面に接触させ、各発熱素子を選択的に発熱駆動して多孔質材を溶融固化させ、1ラインずつ印面を作成する。多孔質材の溶融固化された部位はインクが通過できないため捺印したときに白色となり、その他の部位にはインクが滲出するためインクの色に着色される。本明細書では説明を簡素化するため、インクを黒色として説明するが、インクの色は任意であることはいうまでもない。
【0004】
このように、印判の印面は2値化された微細な点の集合図形として構成されるが、元画像を単純に2値化して印判としただけでは印面が粗く、見苦しくなる。そこで特許文献2には、元画像を256調のグレースケールに変換し、変換値を補正したうえ、周知のドット分散型ディザマトリックスを利用してハーフトーンを表現した印面とする画像処理法が提案されている。
【0005】
しかし特許文献2の画像処理法は一般的な元画像を対象としているため、イラストや建物写真を基画像として印判を製造した場合には、コントラストが強くなりすぎて細かい風合いを表現できないという問題があった。
【0006】
このほか特許文献3には、写真画像をスケッチ画やデッサン画のような素描画風に変換する技術が提案されている。ここでは写真画像から輪郭線と印影情報とを抽出し、これらを合成している。しかしイラストや建物写真を基画像として印判を製造した場合には、やはり細かい風合いを表現できないという問題があった。
【0007】
さらに特許文献4には、カラー写真画像をイラスト風の画像に変換する画像処理法が提案されている。ここでも輪郭と明度情報とを抽出し、これらを合成している。しかし特許文献3と同様、イラストや建物写真を基画像として印判を製造した場合には、やはり細かい風合いを表現できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6399308号公報
【文献】特許第4122669号公報
【文献】特開平7-129762号公報
【文献】特許第4186558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、イラストや建物写真を元画像とした場合にも、風合いに優れた印判を作成することができる印判用画像処理装置および印判加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するためになされた本発明の印判用画像処理装置は、画像検出手段と、検出された元画像をグレースケール化する調補正手段と、グレースケール化された画像の調を、印影濃度を基準とする補正テーブルを用いて線形化する調線形化手段と、線形化された画像を記憶する線形化画像記憶手段と、線形化された画像の輪郭を抽出して輪郭画像とする輪郭抽出手段と、線形化された画像をモノクロ画像に変換するモノクロ抽出手段と、これらの輪郭画像とモノクロ画像を合成する画像合成手段と、合成画像記憶手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、元画像がイラスト画像である場合には、画像合成手段が、輪郭画像とモノクロ画像と、前記線形化された画像とを合成することが好ましい。
【0012】
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、建物写真を元画像とした場合にも、風合いに優れた印判を作成することができる。また請求項2の発明によれば、イラストを元画像とした場合にも、風合いに優れた印判を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】請求項1の発明の全体構成を示すブロック図である。
図2】請求項1の発明のフローを示すブロック図である。
図3】建物写真の元画像である。
図4】人の目で見た調と濃度との関係を示すグラフである。
図5調の線形化処理を示すグラフである。
図6】建物写真の輪郭画像、モノクロ画像、合成画像である。
図7】請求項2の発明の全体構成を示すブロック図である。
図8】請求項2の発明のフローを示すブロック図である。
図9】イラスト画像の輪郭画像、モノクロ画像、グレースケール画像、合成画像である。
図10】ティザマトリクスの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1:建物写真を元画像とした場合)
以下に建物写真を元画像とした場合の実施形態を説明する。これは請求項1に対応するものである。
【0016】
図1に示すように、本発明の印判用画像処理装置は、演算部10と記憶部20とを備えている。演算部10には各種の演算手段が含まれており、記憶部20には各種の記憶手段やデータベースが含まれている。以下に図2のフローを参照しつつ、各手段の機能を説明する。
【0017】
先ずスキャナその他の適宜の読込手段によって、図3に示すような建物の元写真50が印判用画像処理装置に入力される(ST1)。元写真50はカラー写真であるのが一般的である。演算部10には画像検知手段11があり、入力された画像を検知する(ST2)。
【0018】
この画像は演算部10の調補正手段12によりグレースケール化される(ST3)。グレースケール化は元写真50の画素をその明度に応じて、調0(純黒)から調255(純白)までの256段階に変換することを意味する。その画像は補正画像記憶手段21に記憶される。
【0019】
次にこの画像は、捺印用補正テーブル22を用いて調線形化手段13により線形化される(ST4)。図4は横軸を調とし、縦軸を濃度としたグラフであり、理論的には調と濃度は比例するのでプロットは直線となるはずである。しかし人の目で見ると調と濃度は正比例するのではなく、調が255に近い領域ではほぼ白色に見え、濃度が0に近い領域ではすべて黒色に見える。図4の矢印はこの変化を示している。このため調の両端部に付いては画像の調をそのまま用いると、白黒のコントラストが強くなりすぎる。そこで図5に矢印で示すように、捺印用補正テーブル22を用いて調の両端部の値をシフトさせる。この補正によって、人の目で見た場合の調を線形化することができる。線形化された画像は線形化画像記憶手段23に記憶される。
【0020】
次に、線形化画像記憶手段23に記憶された線形化画像から、輪郭抽出手段14が輪郭を抽出する(ST5)。輪郭の抽出方法としては、例えば、注目画素を中心とした例えば3×3の領域で、図6に示すようなゾーベルフィルタを適用する。フィルタAは縦方向、フィルタBは横方向のエッジを検出するためのもので、これらのゾーベルフィルタを注目画素に対して適用して求められた値の2乗和の平方根が、予め定められた閾値(例えば128)をこえた画素エリアを輪郭と判定する。なお、輪郭の抽出方法は、前記のソーベルフィルタに限られないことは言うまでもない。抽出された輪郭画像は輪郭画像記憶手段24に記憶され、後段で合成されるが、このような抽出と合成を行うことによって、輪郭がくっきりした印判を得ることができる。図6(A)に輪郭画像の一例を示す。
【0021】
次に、線形化画像記憶手段23に記憶された線形化画像をモノクロ抽出手段15が単純に2値化してモノクロ画像とする(ST6)。具体的には、線形化された画像中に分布する階調範囲0~255である画素において、閾値を設け、閾値以上の画素を白、閾値以下の画素を黒で表示させる。これにより建物の明るい部分と暗い部分とが白黒に色分けされる。モノクロ画像はモノクロ画像記憶手段25に記憶される。図6(B)にモノクロ画像を示す。
【0022】
次に、画像合成手段16が輪郭画像とモノクロ画像を合成する(ST7)。この合成画像は建物の輪郭に印影を付けた状態となり、印判加工用の画像として優れている。合成画像は合成画像記憶手段26に記憶される。図6(C)に合成画像を示す。
【0023】
図1に示されるように、本発明の印判用画像処理装置には印判加工機30が接続されている。印判加工機30は、ライン状に配置された多数の発熱素子31を備えたサーマルヘッド32と、その昇降制御手段33、発熱駆動制御手段34、これら全体の制御手段35、タッチパネル36、テンキー37等を備えている。
【0024】
本発明の印判用画像処理装置により得られた合成画像は印判加工機30に入力され、昇降制御手段33、発熱駆動制御手段34がサーマルヘッド32を多孔質材の表面に接触させた状態で移動させながら、各発熱素子31を選択的に発熱駆動して多孔質材を溶融固化させ、1ラインずつ印面を作成する(ST9)。これによって鮮明な建物写真画像の多孔質印判40を作成することができる。この多孔質印判40にインクを含侵させれば、鮮明で印影のある建物写真のスタンプとして用いることができる。
【0025】
なお、上記した請求項1の画像処理は元画像が建物写真のほか、風景写真にも適したものである。しかし元画像がイラスト画像の場合には次に示す請求項2の画像処理がより好適である。
【0026】
(実施形態2:イラストを元画像とした場合)
次にイラストを元画像とした場合の実施形態を説明する。これは請求項2に対応するものである。
図7はイラストを元画像とする場合の印判用画像処理装置を示すものであり、図8はそのフロー図である。
【0027】
図8中の、画像検知手段11、調補正手段12、調線形化手段13、輪郭抽出手段14、モノクロ抽出手段15は図1と同じであり、補正画像記憶手段21、捺印用補正テーブル22、線形化画像記憶手段23、輪郭画像記憶手段24、モノクロ画像記憶手段25も図1と同じである。
【0028】
しかし画像合成手段16は図1では輪郭画像とモノクロ画像とを合成したのに対し、図8では輪郭画像とモノクロ画像に他に、線形化された画像(線形化されたグレースケール画像)をも同時に合成する。これは図8のフローのST7に相当する。このように元画像が建物写真の場合とは異なり線形化されたグレースケール画像をも合成することによってより繊細なハーフトーンの表現が可能になる。合成画像は剛性画像記憶手段26に記憶される。
【0029】
図9に、イラスト画像の元画像、輪郭画像、モノクロ画像、グレースケール画像、合成画像の例を示す。
【0030】
図1の場合には合成画像は輪郭画像とモノクロ画像を合成したものであり、グレースケール画像を含んでいなかったのであるが、図8図9の場合には合成画像はグレースケール画像を含んでいる。そこでこの合成画像を2値化演算手段17が、2値化テーブル27を用いてハーフトーンを表現した2値化画像とする(ST8)。これは微小なドットを分散させると人の目にはグレーに見える網点印刷の原理を利用したもので、ドット分散型ディザマトリックスと呼ばれる周知の技術である。その原理を図10に示した。この例では4×4のマトリクスに0から15の整数をランダムに配置し、これを16倍してディザマトリックスを作成する。そして画像も4×4の画素からなる微小なマトリクスに分割し、マトリクス中の各マスの調をディザマトリックス中の対応する位置の数値と比較して、画像の調が小さい場合にはそのマスを黒とし、画像の調が大きい場合にはそのマスを白とする。この演算を繰り返すことにより画像は微小なドットを分散させたハーフトーンの画像に変換される。このようにして得られた2値化された全体画像は2値化画像記憶手段28に記憶される。なお、画像をハーフトーンを表現した2値化画像とする方法はドット分散型ディザマトリックスを用いる方法に限定されるものではなく、周知の誤差拡散法などその他の方法を利用してもよい。
【0031】
このようにして2値化された全体画像は図1と同様に印判加工機30に入力され、昇降制御手段33、発熱駆動制御手段34がサーマルヘッド32を多孔質材の表面に接触させた状態で移動させながら、各発熱素子31を選択的に発熱駆動して多孔質材を溶融固化させ、1ラインずつ印面を作成する(ST9)。これによって鮮明な多孔質印判40を作成することができる。この多孔質印判40にインクを含侵させれば、鮮明で印影のある建物写真のスタンプとして用いることができる。
【0032】
以上に説明したように、本発明によれば、風合いに優れた建物写真やイラスト画像の印判を作成することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 演算部
11 画像検知手段
12 調補正手段
13 調線形化手段
14 輪郭抽出手段
15 モノクロ抽出手段
16 画像合成手段
17 2値化演算手段
20 記憶部
21 補正画像記憶手段
22 捺印用補正テーブル
23 線形化画像記憶手段
24 輪郭画像記憶手段
25 モノクロ画像記憶手段
26 合成画像記憶手段
30 印判加工機
31 発熱素子
32 サーマルヘッド
33 昇降制御手段
34 発熱駆動制御手段
35 制御手段
36 タッチパネル
37 テンキー
40 多孔質印判
50 元写真
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10