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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ポリアミド系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/36 20060101AFI20230807BHJP
   D01F 6/80 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
C08G69/36
D01F6/80 311
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021176612
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2022074096
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2020181536
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度独立行政法人環境再生保全機構環境研究総合推進費「バイオマス廃棄物由来イタコン酸からの海洋分解性バイオナイロンの開発」による委託研究業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522004704
【氏名又は名称】株式会社GRIPs
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 達雄
(72)【発明者】
【氏名】オウ カイギョク
(72)【発明者】
【氏名】マニンダー シン
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-505330(JP,A)
【文献】米国特許第4418189(US,A)
【文献】特開昭51-014025(JP,A)
【文献】特開2012-107122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00- 69/50
D01F 6/80
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸とジアミンとアミノアルキルカルボン酸とのポリアミド系ポリマーであって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数4~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンが用いられ、前記アミノアルキルカルボン酸として式(II):
HOOC-R2-NH2 (II)
(式中、R2は炭素数8~12のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルキルカルボン酸が用いられ、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸〕が15/85~45/55であり、イタコン酸1モルに対する式(I)で表わされるジアミンの量が1モルであることを特徴とするポリアミド系ポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミド系ポリマーを製造する方法であって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸を用い、前記ジアミンとして
2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数4~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンを用い、前記アミノアルキルカルボン酸として式(II):
HOOC-R2-NH2 (II)
(式中、R2は炭素数8~12のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルキルカルボン酸を用い、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物を重合させることを特徴とするポリアミド系ポリマーの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなるポリアミド系繊維。
【請求項4】
請求項1に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなる成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系ポリマーに関する。さらに詳しくは、本発明は、従来のナイロン(商品名、以下同じ)の代替として使用することが期待されるポリアミド系ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンに代表されるポリアミドは、繊維のみならず、耐熱性、耐油性などの性質に優れていることから、インテークマニホールドなどの自動車のエンジン回りの部品に広く使用されている。また、ナイロンは、引張強度などの機械的強度が高いことから、漁業に使用される漁網、釣り糸などの漁具に使用されている。
【0003】
しかし、プラスチックごみによる海洋汚染が国際問題となってきている今日において、ナイロンなどのプラスチックごみは、自然界での分解性に劣り、海洋で分解されずに漂うことから、魚類などがプラスチックごみを誤飲したり、海鳥の羽や足にナイロン製の釣り糸が絡まったりしたりすることなどが問題視されている。
【0004】
近年、ガラス転移温度が高く、エンジニアリングプラスチックとしての性能を有するポリアミドとして、イタコン酸と、2~6個のメチレン基を有する脂肪族ジアルキレンジアミンまたはジアミノジフェニルエーテル、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンとを反応させ、脱水縮合させることによって得られるポリアミドが提案されている(例えば、特許文献1の段落[0016]および実施例参照)。しかし、前記ポリアミドは、伸長性および靭性に劣るという欠点がある。
【0005】
したがって、水中における分解性、伸長性および靭性を併せ持ち、ナイロンの代替となり得るプラスチックの開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5777134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、バイオベースモノマーとして入手することができるイタコン酸が原料として使用され、水中における分解性、伸長性および靭性を併せ持ち、ナイロンの代替となり得るポリアミド系ポリマーおよびその製造方法、前記ポリアミド系ポリマーを含有するポリアミド系繊維、ならびに前記ポリアミド系ポリマーを含有する成形材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1) ジカルボン酸とジアミンとアミノアルキルカルボン酸とのポリアミド系ポリマーであって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数4~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンが用いられ、前記アミノアルキルカルボン酸として式(II):
HOOC-R2-NH2 (II)
(式中、R2は炭素数8~12のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルキルカルボン酸が用いられていることを特徴とするポリアミド系ポリマー、
(2) ジカルボン酸とジアミンとアミノアルキルカルボン酸とのポリアミド系ポリマーを製造する方法であって、前記ジカルボン酸としてイタコン酸を用い、前記ジアミンとして式(I):
2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数4~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンを用い、前記アミノアルキルカルボン酸として式(II):
HOOC-R2-NH2 (II)
(式中、R2は炭素数8~12のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルキルカルボン酸を用い、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物を重合させることを特徴とするポリアミド系ポリマーの製造方法、
(3) 前記(1)に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなるポリアミド系繊維、および
(4) 前記(1)に記載のポリアミド系ポリマーを含有してなる成形材料
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイオベースモノマーとして入手することができるイタコン酸が原料として使用され、水中における分解性、伸長性および靭性を併せ持ち、ナイロンの代替となり得るポリアミド系ポリマーおよびその製造方法、前記ポリアミド系ポリマーを含有するポリアミド系繊維、ならびに前記ポリアミド系ポリマーを含有する成形材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図2】実施例1で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】実施例2で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図4】実施例2で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図5】実施例3で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図6】実施例3で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図7】実施例4で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図8】実施例4で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図9】実施例5で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図10】実施例5で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図11】実施例6で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図12】実施例6で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
図13】実施例7で得られたポリアミド系ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示すグラフである。
図14】実施例7で得られたポリアミド系ポリマーの赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリアミド系ポリマーは、前記したように、ジカルボン酸とジアミンとアミノアルキルカルボン酸とのポリアミド系ポリマーであり、前記ジカルボン酸としてイタコン酸が用いられ、前記ジアミンとして式(I):
2N-R1-NH2 (I)
(式中、R1は炭素数4~12のアルキレン基を示す)
で表わされるジアミンが用いられ、前記アミノアルキルカルボン酸として式(II):
HOOC-R2-NH2 (II)
(式中、R2は炭素数8~12のアルキレン基を示す)
で表わされるアミノアルキルカルボン酸が用いられていることを特徴とする。
【0012】
本発明のポリアミド系ポリマーは、原料モノマーとしてイタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸が用いられていることから、水中における分解性、伸長性および靭性に優れている。
【0013】
本発明のポリアミド系ポリマーは、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物を重合させることによって調製することができる。
【0014】
イタコン酸は、例えば、扶桑化学工業(株)、磐田化学工業(株)、カーギル社などから商業的に容易に入手することができる。イタコン酸は、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)などの菌を用いて生産したものであってもよく、原料として石油を使用して合成されたものであってもよい。これらのなかでは、アスペルギルス・テレウスなどの菌を用いて生産されたイタコン酸は、原料として石油を使用して合成されたイタコン酸と対比して地球環境に優しいという利点を有する。
【0015】
式(I)で表わされるジアミンにおいて、R1は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、炭素数が4~12のアルキレン基である。
【0016】
式(I)で表わされるジアミンのなかでは、水中における分解性、伸長性および靭性に優れているポリアミド系ポリマーを得る観点から、アルキレン基の炭素数4~8であるジアミンが好ましく、アルキレン基の炭素数が6~8であるジアミンがより好ましく、アルキレン基の炭素数が6であるジアミンがさらに好ましい。アルキレン基の炭素数4~8であるジアミンとしては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミンおよび1,8-オクタンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
また、式(I)で表わされるジアミンのなかでは、バイオベースモノマーとして入手することができるとともに、ポリアミド系ポリマーの水中における分解性および伸長性を向上させる観点から、アルキレン基の炭素数が10~12であるジアミンが好ましい。アルキレン基の炭素数が10~12であるジアミンとしては、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミンおよび1,12-ドデカンジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸において、R2は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、炭素数が8~12のアルキレン基であるが、好ましくは炭素数が10~12のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数が10または11のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数が11のアルキレン基である。
【0019】
式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸としては、例えば、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸が挙げられる。これらのアミノアルキルカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸のなかでは、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸が好ましく、11-アミノウンデカン酸がより好ましい。
【0021】
本発明においては、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とが併用されている点に本発明の特徴の1つがある。本発明では、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とが併用されているので、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得ることができる。
【0022】
式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸〕は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは10/90~60/40、より好ましくは15/85~55/45、さらに好ましくは15/85~50/50、さらに一層好ましくは20/80~45/55である。
【0023】
なお、本発明においては、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸以外のアミノ基含有化合物(以下、他のアミノ基含有化合物という)が本発明の目的を阻害しない範囲内で用いられていてもよい。他のアミノ基含有化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0024】
イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンとは化学量論量で反応することから、イタコン酸1モルに対する式(I)で表わされるジアミンの量は、理論的には1モルである。しかし、本発明のポリアミド系ポリマーを調製する際には、イタコン酸の量が式(I)で表わされるジアミンの量に対して過剰であってもよく、式(I)で表わされるジアミンの量がイタコン酸の量に対して過剰であってもよい。
【0025】
イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸の反応は、有機溶媒中で行なうことができる。当該有機溶媒は、イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を20~90℃の温度範囲で溶解させることができ、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸との反応生成物に対して難溶性ないし不溶性を呈する有機溶媒であることが好ましい。
【0026】
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1~3の脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、フェノール、クレゾールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記有機溶媒の量は、イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されないが、通常、イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸の合計量(質量)の3~20倍程度の量であることが好ましく、5~15倍程度の量であることがより好ましい。
【0028】
イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、反応効率を高める観点から20~90℃程度であることが好ましい。また、イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を反応させる際の反応時間は、使用される有機溶媒の量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、2~6時間程度である。イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0029】
以上のようにしてイタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸を反応させることにより、反応混合物が得られる。
【0030】
反応終了後、反応混合物からの晶析により、反応生成物を回収することができる。反応混合物から反応生成物を晶析させる方法としては、例えば、反応混合物を0~25℃程度の温度に冷却する方法、反応混合物にヘキサン、トルエン、キシレンなどの貧溶媒を滴下する方法、反応混合物に含まれている溶媒を蒸発させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法のみに限定されるものではない。
【0031】
晶析した反応生成物は、濾過などの方法によって回収することができる。回収された反応生成物は、必要に応じて0~25℃程度の温度を有する前記有機溶媒で洗浄してもよい。また、前記で得られた反応生成物は、例えば、減圧乾燥などにより、乾燥させてもよい。
【0032】
次に、前記で得られた反応生成物を重合させることにより、本発明のポリアミド系ポリマーが得られる。
【0033】
前記反応生成物の重合法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合法のなかでは、不純物量が少ないポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、塊状重合法が好ましい。塊状重合法によってポリアミド系ポリマーを調製する場合、前記で得られた反応生成物を150~250℃程度の重合温度に加熱し、重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記反応生成物を重合させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、大気に含まれている酸素による影響を回避する観点から、酸素の含有率が低いガスであることが好ましく、不活性ガスであることがより好ましい。前記反応生成物の重合時間は、特に限定されないが、通常、2~24時間程度である。
【0034】
なお、前記反応生成物を重合させる際には、ポリアミド系ポリマーを効率よく調製する観点から、触媒を適量で用いることが好ましい。触媒としては、例えば、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。触媒のなかでは、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムおよびリン酸三ナトリウムが好ましく、リン酸二水素ナトリウムがより好ましい。
【0035】
以上のようにして前記反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマーを得ることができる。前記で得られたポリアミド系ポリマーは、必要により、例えば、N,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解させた後、アセトンなどのケトン化合物で沈殿させることによって精製してもよい。また、前記で得られたポリアミド系ポリマーは、例えば、減圧乾燥などにより、乾燥させてもよい。
【0036】
以上のようにして得られる本発明のポリアミド系ポリマーは、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸との重合体であり、通常、式(IIIa):
【0037】
【化1】
【0038】
(式中、R1は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位と式(IIIb):
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、R2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位とを有する。
【0041】
本発明のポリアミド系ポリマーは、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸との重合体であり、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とを有するので、水中における分解性、伸長性および靭性に優れている。
【0042】
式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕は、式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とのモル比〔式(I)で表わされるジアミン/式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸〕と実質的に同一である。
【0043】
したがって、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは10/90~60/40、より好ましくは15/85~55/45、さらに好ましくは20/80~50/50、さらに一層好ましくは25/75~45/55である。
【0044】
本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIa)で表わされる繰返し単位の含有率は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは10~60モル%、より好ましくは15~55モル%、さらに好ましくは15~50モル%、さらに一層好ましくは25~45モル%である。また、本発明のポリアミド系ポリマーにおける式(IIIb)で表わされる繰返し単位の含有率は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは40~90モル%、より好ましくは45~85モル%、さらに好ましくは50~85モル%、さらに一層好ましくは55~75モル%である。
【0045】
本発明のポリアミド系ポリマーにおいては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位は、通常、ランダムに存在するが、交互に存在していてもよく、あるいはブロック状に存在していてもよい。
【0046】
なお、本発明のポリアミド系ポリマーは、各化合物の種類およびその量、反応条件などによっては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位以外に、式(IIIc):
【0047】
【化3】
【0048】
(式中、R2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位および式(IIId):
【0049】
【化4】
【0050】
(式中、R1およびR2は前記と同じ)
で表わされる繰返し単位を有する場合がある。
【0051】
したがって、本発明のポリアミド系ポリマーは、一分子中に式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIb)で表わされる繰返し単位のみならず、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位を有していてもよい。
【0052】
式(IIIa)で表わされる繰返し単位および式(IIIc)で表わされる繰返し単位(以下、両者の繰返し単位を「オキソピロリジン骨格含有繰返し単位」という)の合計量と式(IIIb)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位(以下、両者の繰返し単位を「カルボニルアルキルアミン骨格含有繰返し単位」という)の合計量とのモル比〔オキソピロリジン骨格含有繰返し単位/カルボニルアルキルアミン骨格含有繰返し単位〕は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは10/90~60/40、より好ましくは15/85~55/45、さらに好ましくは20/80~50/50、さらに一層好ましくは25/75~45/55である。
【0053】
本発明のポリアミド系ポリマーにおけるオキソピロリジン骨格含有繰返し単位の含有率は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは10~60モル%、より好ましくは15~55モル%、さらに好ましくは15~50モル%、さらに一層好ましくは25~45モル%である。また、本発明のポリアミド系ポリマーにおけるカルボニルアルキルアミン骨格含有繰返し単位の含有率は、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、好ましくは40~90モル%、より好ましくは45~85モル%、さらに好ましくは50~85モル%、さらに一層好ましくは55~75モル%である。
【0054】
本発明のポリアミド系ポリマーにおいては、式(IIIa)で表わされる繰返し単位、式(IIIb)で表わされる繰返し単位、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位は、通常、ランダムに存在するが、交互に存在していてもよく、あるいはブロック状に存在していてもよい。
【0055】
なお、本発明のポリアミド系ポリマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で、式(IIIa)で表わされる繰返し単位、式(IIIb)で表わされる繰返し単位、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位以外の繰返し単位(以下、「他の繰り返し単位」という)が含まれていてもよい。前記他の繰り返し単位には、イタコン酸と式(I)で表わされるジアミンと式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸とを重合させたときに不可避的に副生する、式(IIIa)で表わされる繰返し単位、式(IIIb)で表わされる繰返し単位、式(IIIc)で表わされる繰返し単位および式(IIId)で表わされる繰返し単位以外の繰返し単位をはじめ、イタコン酸、式(I)で表わされるジアミンおよび式(II)で表わされるアミノアルキルカルボン酸以外の第三のモノマーの使用による当該第三のモノマーに基づく繰返し単位が含まれる。前記第三のモノマーは、本発明の目的が阻害されない範囲内で使用することができる。
【0056】
本発明のポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、特に限定されないが、水中における分解性、伸長性および靭性を有するポリアミド系ポリマーを得る観点から、15000~800000であることが好ましく、20000~500000であることがより好ましく、50000~300000であることがさらに好ましい。なお、ポリアミド系ポリマーの数平均分子量は、以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
【0057】
本発明のポリアミド系ポリマーは、加熱することによって融解することから、当該ポリアミド系ポリマーを加熱溶融させた溶液を紡糸原液として用いることができる。また、本発明のポリアミド系ポリマーを有機溶媒に溶解させた溶液を紡糸原液として用いることができる。
【0058】
前記紡糸原液を溶融紡糸装置の紡糸口金の細孔から押し出した後、紡糸原液としてポリアミド系ポリマーの加熱溶融物を用いた場合には当該加熱溶融物を冷却し、ポリアミド系ポリマーの有機溶媒溶液を用いた場合には有機溶媒を揮散除去することにより、ポリアミド系繊維を製造することができる。
【0059】
紡糸口金は、一般に、金と白金との合金、白金とイリジウムとの合金、白金とパラジウムとの合金などの合金で製造されている。紡糸口金の孔径は、目的とするポリアミド系繊維の繊度に応じて適宜決定されるが、通常、0.05~0.1mm程度である。紡糸口金に設けられる孔の数は、特に限定されないが、通常、1個~2万個程度である。
【0060】
ポリアミド系繊維は、単繊維(フィラメント)であってもよく、複数の孔から押し出された複数の単繊維を収束させて1つの束となった繊維(ストランド)であってもよい。
【0061】
以上のようにして得られるポリアミド系繊維には、必要に応じて水洗、乾燥、捲縮などの処理を施してもよい。
【0062】
前記で得られたポリアミド系繊維の繊度は、当該ポリアミド系繊維の用途などによって異なるので一概には決定することができないことから、当該ポリアミド系繊維の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。ポリアミド系繊維の繊度の一例を挙げれば、例えば、1~30デシテックスが挙げられるが、本発明は、当該繊度によって限定されるものではない。ポリアミド系繊維の繊度は、紡糸口金の孔径を調節したり、ポリアミド系繊維を延伸させるときの延伸倍率を調節したりすることにより、容易に調整することができる。
【0063】
前記で得られたポリアミド系繊維は、機械的強度を高めるために必要に応じて延伸させてもよい。ポリアミド系繊維の延伸は、通常、一段階延伸であるが、異なる温度条件などの条件下でさらに延伸する多段階延伸であってもよい。
【0064】
ポリアミド系繊維は、長繊維の状態で用いてもよく、所望の繊維長となるように切断して短繊維として用いてもよい。ポリアミド系繊維の繊維長は、当該ポリアミド系繊維の用途などによって異なることから、当該ポリアミド系繊維の用途などに応じて適宜決定することが好ましい。ポリアミド系繊維は、例えば、織布、不織布、編物などに用いることができる。
【0065】
編物は、前記ポリアミド系繊維を用い、メリヤス編機などを用いて製造することができる。編物を製造する際には、前記ポリアミド系繊維をそのままの状態で用いてもよく、例えば、前記ポリアミド系繊維とポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維、綿糸、毛糸、生糸などの繊維との混紡糸を用いてもよい。編物としては、例えば、平編み、ゴム編み、パール編みなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0066】
織布は、前記ポリアミド系繊維を経糸、緯糸、または経糸と緯糸の双方に用い、織機などを用いて製造することができる。織布は、経緯糸の一部または全部にポリアミド系繊維を含有する混紡糸が用いられた混紡織物であってもよく、経糸と緯糸との組成が相違し、経糸および/または緯糸にポリアミド系繊維が使用されている交織織物であってもよく、さらに本発明のポリアミド系繊維を含有し、繊維径が異なる経糸と緯糸とが用いられている高配織物であってもよい。織布が有する組織としては、例えば、平織り組織、斜文織り組織、綾織り組織、朱子織り組織、変化組織などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0067】
不織布は、前記ポリアミド系繊維を含有する繊維を用い、乾式法または湿式法によって製造することができる。不織布に用いられる繊維は、前記ポリアミド系繊維のみであってもよく、前記ポリアミド系繊維とポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維、綿糸、毛糸、生糸などの繊維との混紡糸であってもよい。乾式法としては、例えば、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法などに代表される機械結合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。湿式法としては、例えば、水流交絡法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0068】
前記ポリアミド系繊維には、本発明のポリアミド系ポリマーが用いられていることから、水中における分解性、伸長性および靭性に優れているので、漁業における漁網、釣り糸などの漁具、農業用具などに使用することができるのみならず、手袋、肌着、靴下、シャツ、洋服などの衣類をはじめ、フェースマスク、紙おむつ用素材、拭き取り化粧水シートなどの化粧用シートなどの種々の用途に好適に使用することができる。
【0069】
また、本発明のポリアミド系ポリマーは、有機溶媒に溶解することから有機溶媒溶液として用いることができ、熱可塑性を有することから加熱によって溶融させた溶融物として用いることができる。したがって、本発明のポリアミド系ポリマーは、フィルム、板状体などの成形体用の射出成形材料などの成形材料に好適に用いることができる。また、本発明のポリアミド系ポリマーと繊維とを混合した成形材料を用い、三次元(3D)プリンターで成形体を作製することもできる。
【0070】
本発明のポリアミド系ポリマーには、必要により、その用途に応じて添加剤を適量で含有させてもよい。添加剤としては、例えば、顔料、染料などの着色剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、防錆剤、抗菌剤、可塑剤、防藻剤、防カビ剤、難燃剤、発泡剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。添加剤の量は、当該添加剤の種類によって異なるので一概には決定することができないことから、当該添加剤の種類に応じて適宜決定することが好ましい。
【実施例
【0071】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
なお、以下の各実施例および各比較例で得られたポリマーの物性は、以下の方法に基づいて調べた。
【0073】
〔ポリマーの構造〕
(1)核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトル
ポリマーの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルは、核磁気共鳴分光装置〔ブルカー(Bruker)社製、商品名:AVANCE III 400, 400MHz〕を用い、サンプル(ポリマー)5mgをジメチルスルホキシド-d60.5mLに溶解させ、得られた溶液をガラス製サンプルチューブに移し、25℃の温度で積算回数16回にて測定した。
【0074】
(2)赤外吸収スペクトル
ポリマーの赤外吸収スペクトルは、赤外分光分析装置〔パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製、商品名:Spectrum 100 (ATR法)〕を用い、400~4000cm-1の測定波数で積算回数8回にて測定した。
【0075】
〔ポリマーの数平均分子量〕
ポリマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ-(GPC)によって測定した。より具体的には、溶媒として臭化リチウム0.01mol/Lを含むN,N-ジメチルホルムアミドを用い、装置として屈折率検出器〔日本分光(株)製、品番:RI-2031 Plus〕および紫外線検出器〔日本分光(株)製、品番:UV-2075 Plus〕を備えたGPC測定装置〔カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex KD-802.5と商品名:Shodex KD-804とを連結〕で測定した。なお、外部標準としてポリメチルメタクリレート(分子量:1450、2000、8000、20000、80000、200000、800000または1000000g/mol)を使用した。
【0076】
〔ポリマーの性質〕
(1)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量測定は、示差走査熱量測定装置〔セイコーインスツル(株)製、商品名:EXSTAR DSC6100〕を用い、窒素ガス雰囲気中にて25~300℃の温度で10℃/minの昇温速度で行なった。その結果に基づいてポリマーのガラス転移温度を求めた。
【0077】
(2)熱重量分析(TGA)および10%重量損失温度
熱重量分析は、熱重量分析装置〔セイコーインスツル(株)製、品番:SSC/5200SII〕を用い、窒素ガス雰囲気中で10℃/minの昇温速度で25~800℃の温度で行なった。また、熱重量分析の結果に基づき、10%重量損失温度を決定した。なお、10%重量損失温度は、試料(ポリマー)の質量が10%減少したときの温度を意味する。
【0078】
(3)フィラメントの引張強度、破断時の伸びおよびヤング率
フィラメントの引張強度は、繊維径が約200μmであり、長さ40mmのフィラメントを用い、引張試験機〔インストロン(INSTRON)社製、品番:3365-L5)にて室温で1mm/secのクロスヘッド速度で引っ張ることにより、フィラメントが破断するまでの最大強度を測定した。フィラメントの破断時の伸びは、フィラメントの引張強度を測定し、フィラメントが破断するときのフィラメントが伸びた長さを求め、当該伸びた長さをフィラメントの元の長さで除し、100倍したときの値である。ヤング率は、応力-ひずみ曲線の初期傾きによって求めた。
【0079】
(4)靭性
靭性は、前記で得られた応力-ひずみ曲線においてフィラメントが破断したときに描かれる領域の面積に等しいことから、当該領域を積分することによって面積を求めた。
【0080】
実施例1
イタコン酸1モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0081】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0082】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーAという)を得た。ポリマーAの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図1に、赤外吸収スペクトルを図2に示す。
【0083】
以上の結果から、ポリマーAは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が270000であるポリマーであることがわかった。
【0084】
前記で得られたポリマーAを80℃に加熱し、溶融させた溶融物を溶融紡糸液として用いた。前記で得られた溶融紡糸液をガラス板に付着させ、その表面にガラス棒を接触させた後、当該ガラス棒をガラス板から引き離し、延伸させることにより、繊維径が200~600μmであるフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーAを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0085】
実施例2
イタコン酸0.90モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.90モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0086】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0087】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーBという)を得た。ポリマーBの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図3に、赤外吸収スペクトルを図4に示す。
【0088】
以上の結果から、ポリマーBは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が47/53であり、数平均分子量が271000であるポリマーであることがわかった。
【0089】
前記で得られたポリマーBを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーBを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0090】
実施例3
イタコン酸0.80モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.80モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0091】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0092】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーCという)を得た。ポリマーCの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図5に、赤外吸収スペクトルを図6に示す。
【0093】
以上の結果から、ポリマーCは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が44/56で数平均分子量が2720000であるポリマーであることがわかった。
【0094】
前記で得られたポリマーCを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーCを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0095】
実施例4
イタコン酸0.60モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.60モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0096】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0097】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーDという)を得た。ポリマーDの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図7に、赤外吸収スペクトルを図8に示す。
【0098】
以上の結果から、ポリマーDは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が38/62で数平均分子量が273000であるポリマーであることがわかった。
【0099】
前記で得られたポリマーDを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーDを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0100】
実施例5
イタコン酸0.50モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.50モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0101】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0102】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーEという)を得た。ポリマーEの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図9に、赤外吸収スペクトルを図10に示す。
【0103】
以上の結果から、ポリマーEは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が33/67で数平均分子量が2740000であるポリマーであることがわかった。
【0104】
前記で得られたポリマーEを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーEを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0105】
また、前記で得られたポリマーE5gをテトラヒドロフラン30mLに溶解させた溶液を25℃の温度でガラス板に流延させた後、テトラヒドロフランを揮散除去したところ、透明なフィルムが得られた。このことから、前記で得られたポリマーEは、有機溶媒に溶解させることにより、成形材料に用いることができることがわかる。
【0106】
実施例6
イタコン酸0.30モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.30モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0107】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0108】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーFという)を得た。ポリマーFの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図11に、赤外吸収スペクトルを図12に示す。
【0109】
以上の結果から、ポリマーFは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が23/77で数平均分子量が2751000であるポリマーであることがわかった。
【0110】
前記で得られたポリマーFを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーFを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0111】
実施例7
イタコン酸0.20モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.20モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0112】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0113】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーGという)を得た。ポリマーGの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを図13に、赤外吸収スペクトルを図14に示す。
【0114】
以上の結果から、ポリマーGは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が17/83で数平均分子量が276000であるポリマーであることがわかった。
【0115】
前記で得られたポリマーGを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーGを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0116】
比較例1
11-アミノウンデカン酸を使用しないでイタコン酸1モルを含有するエタノール溶液200mLに当該エタノール溶液の液温を45℃に維持しながら攪拌下で1,6-ヘキサメチレンジアミン1モルを2時間かけてゆっくりと添加することにより、混合溶液を得た。
【0117】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で45℃にて12時間乾燥させた。
【0118】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを混合し、得られた混合物を減圧下で190℃に加熱し、当該反応生成物を6時間重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーHという)を得た。
【0119】
前記で得られたポリマーHをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液をアセトンに添加することにより、ポリマーHを精製し、引き続いてアセトンで洗浄し、減圧乾燥機中で120℃の温度で約24時間乾燥させることにより、精製されたポリマーHを得た。
【0120】
次に、前記で得られたポリマーA~Hの物性として、10%重量損失温度、ガラス転移温度、引張強度、破断時の伸び〔元の長さに対する伸び率(%)〕、ヤング率および靭性を調べた。その結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示された結果から、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、いずれも10%重量損失温度が400℃以上であることから耐熱性に優れていることがわかる。
【0123】
また、ゴムのヤング率は10~100MPa程度であり、フッ素樹脂のヤング率は500MPa程度であり、ポリエチレンのヤング率は400~1300MPa程度であり、ガラスのヤング率は80000MPa程度であるところ、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、ヤング率が50~350MPaの範囲内にあり、破断時の伸びが40%以上であることから伸張性に優れていることがわかる。
【0124】
また、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、靭性が10MJ/m3であることから剛性にも優れていることがわかる。
【0125】
実施例8
イタコン酸1モル、テトラメチレンジアミン(1,4-ブタンジアミン)1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0126】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0127】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーIという)を得た。ポリマーIの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーIは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はテトラメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が260000であるポリマーであることがわかった。
【0128】
前記で得られたポリマーIを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーIを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0129】
実施例9
イタコン酸0.20モル、テトラメチレンジアミン(1,4-ブタンジアミン)0.20モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0130】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0131】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーJという)を得た。ポリマーJの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーJは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はテトラメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が17/83で数平均分子量が278000であるポリマーであることがわかった。
【0132】
前記で得られたポリマーJを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーJを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0133】
実施例10
イタコン酸1モル、オクタメチレンジアミン(1,8-オクタンジアミン)1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0134】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0135】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーKという)を得た。ポリマーKの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーKは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はオクタメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が270000であるポリマーであることがわかった。
【0136】
前記で得られたポリマーKを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーKを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0137】
実施例11
イタコン酸0.20モル、オクタメチレンジアミン(1,8-オクタンジアミン)0.20モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0138】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0139】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーLという)を得た。ポリマーLの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーLは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はオクタメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が17/83で数平均分子量が280000であるポリマーであることがわかった。
【0140】
前記で得られたポリマーLを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーLを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0141】
実施例12
イタコン酸1モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)1モルおよび10-アミノデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0142】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0143】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーMという)を得た。ポリマーMの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーMは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はノニル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が268000であるポリマーであることがわかった。
【0144】
前記で得られたポリマーMを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーMを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0145】
実施例13
イタコン酸0.20モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.20モルおよび10-アミノデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0146】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0147】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーNという)を得た。ポリマーNの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーNは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はノニル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が17/83で数平均分子量が274000であるポリマーであることがわかった。
【0148】
前記で得られたポリマーNを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーNを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0149】
実施例14
イタコン酸1モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)1モルおよび12-アミノドデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0150】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0151】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーOという)を得た。ポリマーOの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーOは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はウンデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が270000であるポリマーであることがわかった。
【0152】
前記で得られたポリマーOを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーOを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0153】
実施例15
イタコン酸0.20モル、ヘキサメチレンジアミン(1,6-ヘキサンジアミン)0.20モルおよび12-アミノドデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0154】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機で40℃にて12時間乾燥させた。
【0155】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーPという)を得た。ポリマーPの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーPは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はヘキサメチレン基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はウンデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が17/83で数平均分子量が274000であるポリマーであることがわかった。
【0156】
前記で得られたポリマーPを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーPを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0157】
実施例16
イタコン酸1モル、1,10-デカンジアミン1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0158】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0159】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーQという)を得た。ポリマーQの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーQは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はデシル基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が272000であるポリマーであることがわかった。
【0160】
前記で得られたポリマーQを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーQを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0161】
実施例17
イタコン酸1モル、1,11-ウンデカンジアミン1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0162】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0163】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーRという)を得た。ポリマーRの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーRは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はウンデシル基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が274000であるポリマーであることがわかった。
【0164】
前記で得られたポリマーRを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーRを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0165】
実施例18
イタコン酸1モル、1,12-ドデカンジアミン1モルおよび11-アミノウンデカン酸1モルを混合し、得られた混合物をエタノール200mLに溶解させ、得られた溶液を攪拌下で60℃の液温にて4時間反応させることにより、混合溶液を得た。
【0166】
前記で得られた混合溶液を25℃に冷却することにより、白色固体の反応生成物を析出させた。前記混合溶液を濾過することにより、反応生成物を回収し、約10℃のエタノールで洗浄した後、減圧乾燥機では40℃にて12時間乾燥させた。
【0167】
次に、前記で得られた反応生成物20gと触媒としてリン酸二水素ナトリウム0.2gとを窒素ガス雰囲気中で1時間混合し、反応雰囲気を減圧させながら得られた混合物を攪拌下で5時間250℃に加熱し、当該反応生成物を重合させることにより、ポリアミド系ポリマー(以下、ポリマーSという)を得た。ポリマーSの核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果から、ポリマーSは、式(IIIa)で表わされる繰返し単位(式中、R1はドデシル基)および式(IIIb)で表わされる繰返し単位(式中、R2はデシル基)を有しており、式(IIIa)で表わされる繰返し単位と式(IIIb)で表わされる繰返し単位とのモル比〔式(IIIa)で表わされる繰返し単位/式(IIIb)で表わされる繰返し単位〕が50/50であり、数平均分子量が276000であるポリマーであることがわかった。
【0168】
前記で得られたポリマーSを用いて実施例1と同様にしてフィラメントを得ることができた。このことから、ポリマーSを溶融紡糸液に用いることにより、繊維を容易に製造することができることがわかる。
【0169】
次に、各実施例で得られたポリアミド系ポリマー1mgの50℃の有機溶媒1mLに対する溶解性について調べた。その結果、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、いずれもジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、トリフルオロ酢酸などの有機溶媒に可溶であり、得られた溶液を紡糸液として用いることができることが確認された。
【0170】
また、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーの有機溶媒溶液をガラス板上に流延させたところ、フィルムを形成させることができた。このことから、前記で得られたポリアミド系ポリマーは、例えば、フィルムなどの成形体を得るための成形材料として使用することができることがわかる。
【0171】
次に、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーをそれぞれ0.5gずつ秤量し、10%塩酸、ペプシン0.5質量%を含有する10%塩酸溶液、ペプシン0.5質量%を含有する10%塩酸溶液、ペプシン0.5質量%を含有する10%塩酸溶液、ペプシン0.7質量%を含有する10%塩酸溶液、ペプシン0.9質量%を含有する10%塩酸溶液、ペプシン1.0質量%を含有する10%塩酸溶液またはペプシン0.5質量%を含有する水溶液の各溶液100mL(水温:25℃)に添加し、3分間撹拌した後、各溶液の外観を目視にて観察した。その結果、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、塩酸中では粘稠な液体となり、ペプシンを含有する塩酸溶液に完全に溶解して分解し、ペプシンを含有する水中では白濁することが確認された。
【0172】
以上の結果から、各実施例で得られたポリアミド系ポリマーは、いずれもペプシンなどの酵素によって容易に短時間で分解させることができることから、水中における分解性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明のポリアミド系ポリマーは、水中における分解性、伸長性および靭性を有するので、従来のナイロンの代替として漁業における漁網、釣り糸などの漁具、農業用具などに使用することができるのみならず、高性能を有するポリアミド系ポリマーとして用いることができるので、自動車用部品に適用した場合には自動車の軽量化、ひいては燃費の向上に貢献することが期待される。
【0174】
また、本発明のポリアミド系ポリマーは、水による分解性、伸長性および靭性を有することから、ヒトをはじめとする動物を手術する際に使用される縫合糸などの繊維への用途展開が期待される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14