(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】皮膚透過性促進剤および皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230807BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230807BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/351 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20230807BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230807BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230807BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230807BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230807BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/35
A61K8/42
A61K8/60
A61K31/351
A61K31/4166
A61K31/704
A61K47/46
A61P17/00
A61P29/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2017128414
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000176110
【氏名又は名称】三省製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】下郡 洋平
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】赤澤 高之
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-017846号公報
【文献】特開2009-249306号公報
【文献】特開2015-3889号公報
【文献】特開2014-97943号公報
【文献】特開2017-193514号公報
【文献】特開2012-001504号公報
【文献】特開2008-195651号公報
【文献】特開平7-017846号公報
【文献】特開2003-192564号公報
【文献】特開平09-143098号公報
【文献】特開平10-218774号公報
【文献】特開2007-119425号公報
【文献】特開2011-184357号公報
【文献】特表平07-506562号公報
【文献】特開2012-246324号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルソール酸を40~50重量%含有するローズマリー抽出物を有効成分とすることを特徴とする
水溶性の美白剤用または水溶性の抗炎症剤用皮膚透過性促進剤。
【請求項2】
水溶性の美白剤が、コウジ酸及びその誘導体またはアスコルビン酸及びその誘導体であることを特徴とする請求項
1に記載の皮膚透過性促進剤。
【請求項3】
水溶性の抗炎症剤が、グリチルリチン酸及びその誘導体またはアラントインであることを特徴とする請求項
1に記載の皮膚透過性促進剤。
【請求項4】
水溶性の美白剤がコウジ酸及びその誘導体であり、水溶性の抗炎症剤がグリチルリチン酸及びその誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚透過性促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローズマリー抽出物を有効成分とする皮膚透過性促進剤に関するものである。特に、水溶性の美白剤や抗炎症剤の皮膚透過性を促進する透過性促進剤に関するものである。また、本発明は、かかるローズマリー抽出物を有効成分とする皮膚透過性促進剤を配合する皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤の有効成分である美白剤や抗炎症剤等は、その作用を発揮するためには、皮膚透過により有効成分が表皮内あるいは真皮内に浸透する必要がある。ところが、水溶性の皮膚外用剤の場合、美白剤や抗炎症剤等は皮膚のバリア機能によって皮膚中への浸透性が悪く、皮膚透過性を向上させるためには化学合成された経皮吸収促進剤を配合したり、有効成分の配合濃度を増加させる必要があった。
【0003】
かかる化学合成された経皮吸収促進剤としては、例えば、イソステアリン酸やポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等の界面活性剤が挙げられる(特許文献1、2)。しかしながら、昨今の自然志向により天然成分、特に植物から抽出されたものが望まれるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-246440号公報
【文献】特開2012-184220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、このような課題を解決するために、シソ科の植物に着目し、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)の抽出物につき検討し、ローズマリー抽出物が水溶性の化粧材料、特に美白剤や抗炎症剤の皮膚透過性を促進する機能を有することを見出した。
【0006】
本発明は、ローズマリー抽出物を有効成分とする皮膚透過性促進剤を提供するものである。また、本発明は、特に水溶性の美白剤や抗炎症剤用の皮膚透過性促進剤を提供するものである。また、本発明は、かかるローズマリー抽出物を有効成分とする皮膚透過性促進を配合する皮膚外用剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべくローズマリー抽出物につき鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ローズマリー抽出物を有効成分とする皮膚透過性促進剤。
<2> 皮膚透過性促進剤が、水溶性の美白剤用または水溶性の抗炎症剤用である前記<1>に記載の皮膚透過性促進剤。
<3> 水溶性の美白剤が、コウジ酸及びその誘導体またはアスコルビン酸及びその誘導体である前記<2>に記載の皮膚透過性促進剤。
<4> 水溶性の抗炎症剤が、グリチルリチン酸及びその誘導体またはアラントインである前記<2>に記載の皮膚透過性促進剤。
<5> 皮膚透過促進剤として前記<1>から<4>のいずれかに記載のローズマリー抽出物を配合してなる皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のローズマリー抽出物は皮膚透過促進剤として有用であり、特に水溶性皮膚外用剤の有効成分、なかでも水溶性の美白剤や抗炎症剤用の皮膚透過促進剤として有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に関するレセプター液のコウジ酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図2】実施例2に関するレセプター液のコウジ酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図3】実施例3に関するレセプター液のコウジ酸濃度の経時変化を示すグラフである。
【
図4】実施例4に関するレセプター液のグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)濃度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0012】
本発明の皮膚透過促進剤は、ローズマリー抽出物を有効成分とするものである。
本発明のローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis L. Extract)とは、前処理を行ったローズマリーを一定条件下、溶媒で抽出することによって得られる抽出物である。ここでローズマリーとは、独特の芳香を持つシソ科の常緑低木であり、地中海沿岸に自生し、ヨーロッパ中部をはじめ世界各地で一般に栽培されているものである。
【0013】
次に、本発明の有効成分であるローズマリー抽出物の製造方法を具体的に述べる。
【0014】
本発明の皮膚透過促進剤は、ローズマリーを原料とする。出発原料のローズマリーは、熱水で溶出される成分を予め除去したものを使用し、使用部位としては葉が好適に使用される。
原料の処理工程の代表例を次に示す。先ず、ローズマリー100gに対して精製水1kgを加え、121~125℃で60分加熱後、30℃以下に冷却する。次いで、ローズマリーを回収し、精製水で洗浄、水切り後に熱風(約80℃)で15時間以上乾燥させる。更に、十分に乾燥させたローズマリーをパワーミルで粉砕し、後の抽出処理工程用の原料として冷暗所(-20℃)で保管する。
【0015】
前項の条件で前処理したローズマリーに溶媒を1:10~1:1000の重量割合で添加し、約40℃の温度条件で、2~3時間攪拌して抽出する。その抽出液をろ過または遠心分離等の精製工程を経て得たろ液に、その液量の半分から倍量の精製水を添加攪拌し、しばらく静置後に析出した成分を遠心分離して沈渣を回収する。当該残渣を80℃で乾燥させると本発明のローズマリー抽出物を得ることができる。
【0016】
抽出工程において使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノール等の低級アルコールがいずれも使用可能であるが、特にその中でもエタノールが本発明の目的とする有効性との関係上もっとも好ましい。エタノールの場合には少量の水との混液でも使用に供することができる。
【0017】
抽出温度と時間は、有効成分の抽出効率を考えて、少なくとも40℃に維持しつつ、2時間以上攪拌抽出するのが好適である。抽出の際のpH調整は特には要しない。
【0018】
低級アルコールで抽出した液は、後の処理工程で不要な成分を除去し、好ましくは、一旦少なくとも30℃以下に冷却し、当該溶液に容積比で少なくとも半分量の精製水を添加する。
【0019】
析出した沈殿物について遠心と洗浄を繰り返し、沈渣を回収することで本発明のローズマリー抽出物を得る。
【0020】
本発明のローズマリー抽出物(「ローズマリーエキス」ということがある。)は、水溶性の皮膚外用剤の有効成分の皮膚透過性促進剤として有用である。ローズマリー抽出物の皮膚透過性促進効果が発揮される有効成分としては、老化防止剤、美白剤、抹消血管拡張剤等が挙げられる。
また、本発明の皮膚外用剤としては、これらの老化防止剤、美白剤、抹消血管拡張剤等に皮膚透過性促進剤としてローズマリー抽出物を配合してなる化粧料や医薬品であり、剤型としては、ローション類、乳液類、クリーム類、パック類が挙げられる。
【0021】
例えば、老化防止剤として公知のレチノール、レチノイン酸、美白剤として公知のコウジ酸、グリチルリチン酸、アスコルビン酸、クエルセチン、グルタチオン、ハイドロキノン及びこれらの誘導体、縮合型タンニン類、カフェー酸、エラグ酸等のフェノール性化合物、また、末梢血管拡張剤としてはビタミンE、ビタミンEニコチネート、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等の各種ビタミン類、ショウキョウチンキ、トウガラシチンキ等が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、水溶性の美白剤であるコウジ酸およびその誘導体、または水溶性抗炎症剤であるグリチルリチン酸及びその誘導体やアラントインが特に好適に使用できる。
コウジ酸の誘導体としては、コウジ酸グルコシド、コウジ酸マンノシド、コウジ酸グルコサミドやエチル化コウジ酸が挙げられ、また、グリチルリチン酸誘導体としては、グリチルリチン酸ジカリウムやグリチルリチン酸ジナトリウム等のグリチルリチン酸塩が挙げられる。
特に、美白剤としてのコウジ酸、抗炎症剤としてのグリチルリチン酸ジカリウムの皮膚透過性促進効果が顕著である。
【0023】
本発明のローズマリー抽出物が、コウジ酸等の皮膚外用剤の有効成分の皮膚透過性促進効果を有する理由は定かではないが、ローズマリーエキス中に含まれるウルソール酸等の構造が影響していると考えられる。即ち、ウルソール酸は、大部分が疎水性であるが、末端に水酸基(-OH)とカルボニル基(-COOH)を持つため、若干の親水性も有している。
ここで、ヒトの皮膚(以下の実験においては、親水性と疎水性の膜を組み合わせメンブランフィルターの構造によりヒトの皮膚を再現している。)を透過する際に、親水性であるコウジ酸は、疎水性の細胞間脂質にはじかれるため、コウジ酸の透過量は低くなる。このとき、ウルソール酸が共存すると、疎水性の細胞間脂質にウルソール酸が入り込むため、ウルソール酸の親水性部分がコウジ酸の通り道を作ることでコウジ酸が疎水性の細胞間脂質を透過しやすくなり、コウジ酸の皮膚透過量が上昇するものと考えられる。
【0024】
本発明のローズマリー抽出物の使用量は、皮膚外用剤の有効成分により適宜決定されるが、一般には、クリーム剤型試料では、0.2~0.4重量%、ローション剤型試料では、0.2重量%程度である。
【0025】
本発明の皮膚透過促進剤は、ローズマリー抽出物を有効成分とするものであり、適用する皮膚外用剤の有効成分である、水溶性の美白剤や抗炎症剤用として効力を発揮するが、他の皮膚透過性促進剤(経皮吸収促進剤)を併せて使用することを妨げるものではない。
【0026】
また、本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて公知の保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、着色剤等種々の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【実施例】
【0027】
次に実施例により本発明を説明するが、これらの開示は本発明の好適な態様を示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0028】
1.ローズマリー抽出物の製造
乾燥したローズマリーの葉100gに水1,000gを加え、121℃で60分間加熱した。ろ過してローズマリーを回収し、80℃で15時間以上乾燥させ、あらかじめ水で抽出される成分を除いたローズマリー約60gを得た。この前処理したローズマリー60gに95%エタノール600gを加え、40℃で2時間抽出した。これをろ過したろ液に1重量%の活性炭を加え脱色し、活性炭をろ過して除き、ろ液に水をろ液/水(2:1)の割合で加えて撹拌し、析出した成分を遠心分離して分け、沈渣を80℃で乾燥させ、約3gのローズマリー抽出物を得た。本抽出物におけるウルソール酸含有量は、40~50重量%であった。
【0029】
2.メンブランフイルターを用いた皮膚透過性試験
(1)メンブランフイルターとして、メンブランStrat-M(商品名:メルクミリポア社製;47mm)を使用した。
(2)使用器具
器具としては、フランツ型セル、スターラー、クリップおよび上記メンブランフィルターを使用した。
(3)セル内レセプター液の調製
レセプター液は、生理食塩水として、リン酸緩衝液でpHを4.5に調製した。その後、レセプター液をセルの中に18mL入れて充満させ、恒温槽を用いてレセプター液を32℃に保ち、スターラーで常時攪拌した。
【0030】
<実施例1>
(1)ローズマリーエキス濃度の違いによるコウジ酸の皮膚透過性を下記試料(1)~(3)のクリーム剤型試料により比較した。
試料(1):ローズマリーエキス無配合
試料(2):ローズマリーエキスを0.2重量%配合
試料(3):ローズマリーエキスを0.4重量%配合
これら試料の含有成分名および組成割合(重量%)を表1に示した。なお、表中の精製水は、バランスとして全体が100重量%となるように残部を調製したことを表す(以下の表も同じ。)。
【0031】
【0032】
(2)レセプター液を充満させた各セルの上部に、気泡が入らないようにメンブランフィルターを設置した。その後、セル上部に設置したメンブランフィルターに下記試料(1)~(3)のクリーム剤型処方試料サンプルを各1gを塗布し、セル上部およびサンプリング口をアルミホイルで覆った。試験開始から24時間後に各セルからレセプター液を100μLずつサンプリングした。
24時間後にサンプリングしたレセプター液について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC:株式会社島津製作所製;CBM-20A、カラム:関東化学株式会社製;RP-18 150-4.6(5μm))によりメンブランを透過したコウジ酸(KA)含有量(重量%)を測定した。
【0033】
(3)結果を、
図1に示した。試料(1)、試料(2)および試料(3)のセルにおける、レセプター液のコウジ酸濃度の経時変化をグラフに示す。グラフは、試料(1)、試料(2)および試料(3)のレセプター液のコウジ酸濃度の平均である(n=3)。
メンブランフィルターに試料を塗布してから24時間経過後のレセプター液中のコウジ酸濃度の平均は、試料(1)が2.75μg/mL、試料(2)が4.48μg/mL、また、試料(3)が6.01μg/mLであった。
図1から分かるように、ローズマリーエキスを配合した製剤の方が、コウジ酸の皮膚透過性が高かった。また、ローズマリーエキスの配合量を増やすと、コウジ酸の皮膚透過性も高くなる傾向にあった。
【0034】
<実施例2>
(1)実施例1と同様に実施し、ローズマリーエキス濃度の違いによるコウジ酸の皮膚透過性を下記試料(4)~(5)のローション剤型試料により比較した。
試料(4):ローズマリーエキスを0.2%配合
試料(5):ローズマリーエキス無配合
これら試料の含有成分名および組成割合(重量%)を表2に示した。
【0035】
【0036】
(2)結果を、
図2に示した。試料(4)と試料(5)のセルにおける、レセプター液のコウジ酸濃度の経時変化をグラフに示す。グラフは、試料(4)、試料(5)のレセプター液のコウジ酸濃度の平均である(n=3)。
メンブランフィルターに試料を塗布してから24時間経過後のレセプター液中のコウジ酸濃度の平均は、試料(4)が3.65μg/mL、また、試料(5)が2.91μg/mLであった。
図2から分かるように、ローズマリーエキスを配合したほうが、コウジ酸の皮膚透過性が高くなる結果となった。
【0037】
<実施例3>
(1)実施例1と同様に実施し、コウジ酸のクリーム剤型試料サンプルについてローズマリーエキスとイソステアリン酸の透過度を比較検討した。
試料(3’):ローズマリーエキスを0.4重量%配合
試料(6):イソステアリン酸を0.4重量%配合
これら試料の含有成分名および組成割合(重量%)を表3に示した。
【0038】
【0039】
(2)結果を、
図3に示した。試料(3’)と試料(6)のセルにおける、レセプター液のコウジ酸濃度の経時変化をグラフに示す。グラフは、試料(3’)、試料(6)のレセプター液のコウジ酸濃度の平均である(n=3)。メンブランフィルターに試料を塗布してから24時間経過後のレセプター液中のコウジ酸濃度の平均は、試料(3’)が6.78μg/mL、試料(6)が4.81μg/mLであった。
【0040】
上記のように、メンブランフィルターを用いたコウジ酸の皮膚透過性試験の結果は、イソステアリン酸よりもローズマリーエキスを添加したほうがコウジ酸の皮膚透過性が高いことを示している。このことから、ローズマリーエキスによる経皮吸収促進作用は、現在市販されているイソステアリン酸の経皮吸収促進剤と同等以上の効果があることが分かる。
【0041】
<実施例4>
(1)実施例2と同様に実施し、ローション剤型試料サンプルについてコウジ酸の代わりにグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)を使用し、透過度を下記試料(7)、(8)により比較した。
試料(7):ローズマリーエキスを0.2重量%配合
試料(8):ローズマリーエキス無配合
これら試料の含有成分名および組成割合(重量%)を表4に示した。
【0042】
【0043】
(2)結果を、
図4に示した。試料(7)と試料(8)のセルにおける、レセプター液のグリチルリチン酸ジカリウム(GK2)濃度の経時変化をグラフに示す。グラフは、試料(7)、試料(8)のレセプター液のGK2濃度の平均である(n=2)。メンブランフィルターに試料を塗布してから24時間経過後のレセプター液中のGK2濃度の平均は、試料(7)が6.93μg/mL、試料(8)が4.71μg/mLであった。
グリチルリチン酸ジカリウムを用いた試験でもコウジ酸と同様にローズマリーエキスを配合することにより皮膚透過性が高くなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、皮膚外用剤の有効成分、特に水溶性の美白剤や抗炎症剤用の皮膚透過性促進剤が提供される。本発明の皮膚透過性促進剤は、ローズマリー抽出物を素材とし、従来の合成皮膚透過性促進剤と同等以上の効果が期待できる。