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特許73257942サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構
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  • 特許-2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/04 20060101AFI20230807BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20230807BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20230807BHJP
   F16C 7/02 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
F02B75/04
F02B75/32 Z
F02D15/02 C
F16C7/02
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018215959
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2019094895
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】15/819,084
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518408903
【氏名又は名称】マーク・アルバート・ソカルスキ
【氏名又は名称原語表記】Mark Albert SOKALSKI
【住所又は居所原語表記】204 Meadowgrove Circle, Carnegie, PA 15106, United States
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 潔
(72)【発明者】
【氏名】マーク・アルバート・ソカルスキ
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-305601(JP,A)
【文献】特開2014-234707(JP,A)
【文献】特表2002-517679(JP,A)
【文献】特開平07-139604(JP,A)
【文献】特表平11-506511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 15/02
F02B 75/04
F02B 75/32
F16C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、
前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、リング歯車とを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、
前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されている、
2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項2】
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれは、レシオ調整取付シャフトをさらに備え、
前記レシオ調整取付シャフトは、前記太陽歯車に隣接して、前記歯車-ピン・アセンブリと反対側の位置に配置されており、
前記レシオ調整取付シャフトは、前記太陽歯車にねじれ回転可能に、軸を同一にするように接続されている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項3】
エンジン・ブロックをさらに備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリと歯車アセンブリのそれぞれは、ベアリングをさらに備え、
前記ミラー遊星歯車アセンブリと、前記歯車-ピン・アセンブリと、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリとは、前記エンジン・ブロック内に配置されており、
前記ベアリングは、前記太陽歯車に隣接して、前記エンジン・ブロック内で互いに隣接して接続されており、
前記レシオ調整取付シャフトは、ベアリングを介して前記エンジン・ブロックに回転可能に取り付けられており、
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリのピストンは、前記エンジン・ブロックのシリンダに摺動可能に係合されている、
請求項2に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項4】
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリとのそれぞれは、偏心環状外部カウンターウェイトをさらに備え、
前記偏心環状外部カウンターウェイトは、前記主遊星歯車および前記複数の副遊星歯車に隣接して、前記歯車-ピン・アセンブリの反対側に配置されており、
前記偏心環状外部カウンターウェイトは、前記レシオ調整取付シャフトの周囲に配置されており、
前記偏心環状外部カウンターウェイトは、前記主遊星歯車と前記複数の副遊星歯車のそれぞれに回転可能に取り付けられており、
前記偏心環状外部カウンターウェイトの重心と前記共有回転軸は、前記レシオ調整取付シャフトを挟んで互いに反対側に位置する、
請求項2に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項5】
出力軸と、エンジン・ブロックとをさらに備え、
前記ミラー遊星歯車アセンブリと、前記歯車-ピン・アセンブリと、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリとは、前記エンジン・ブロック内に回転可能に取り付けられており、
前記出力軸は、前記主回転軸に対して平行にオフセットされて配置されており、
前記出力軸は、前記エンジン・ブロック内に回転可能に取り付けられており、
前記第1の遊星歯車アセンブリのリング歯車は、前記出力軸にねじれ回転可能に結合されており、
前記第2の遊星歯車アセンブリのリング歯車は、前記出力軸にねじれ回転可能に結合されており、
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリのピストンは、前記エンジン・ブロックのシリンダに摺動可能に係合されている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項6】
前記リング歯車は内外リング歯車であり、
前記内外リング歯車は、外リング歯車と内リング歯車とを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリは、出力従動歯車をさらに備え、
前記出力従動歯車は、前記出力軸の周囲に同心に連結されており、
前記出力従動歯車は前記内外リング歯車と同一平面上に配置されており、
前記外リング歯車は前記出力従動歯車に機械的に係合し、
前記主遊星歯車と、前記複数の副遊星歯車のそれぞれは、前記内リング歯車に機械的に係合する、
請求項5に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項7】
前記リング歯車は内外リング歯車であり、
前記内外リング歯車は、外リング歯車と内リング歯車とを備え、
前記第2の遊星歯車アセンブリは、出力従動歯車をさらに備え、
前記出力従動歯車は、前記出力軸の周囲に同心に連結されており、
前記出力従動歯車は前記内外リング歯車と同一平面上に配置されており、
前記外リング歯車は前記出力従動歯車に機械的に係合し、前記主遊星歯車と、前記複数の副遊星歯車のそれぞれは、前記内リング歯車に機械的に係合する、
請求項5に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項8】
前記歯車-ピン・アセンブリは、軸受ジャーナル・シャフトと、第1の取付脚部と、第2の取付脚部とを備え、
前記軸受ジャーナル・シャフトの中心軸は、前記共有回転軸と平行にオフセットされて配置されており、
前記第1の取付脚部と前記第2の取付脚部とは、前記軸受ジャーナル・シャフトを挟んで互いに反対側に位置しており、
前記第1の取付脚部は、前記軸受ジャーナル・シャフトと前記第1の遊星歯車アセンブリの主遊星歯車との間に接続されており、
前記第2の取付脚部は、前記軸受ジャーナル・シャフトと前記第2の遊星歯車アセンブリの主遊星歯車との間に接続されている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項9】
前記歯車-ピン・アセンブリは、第1のカウンターウェイトプレートと第2のカウンターウェイトプレートとを備え、
前記第1のカウンターウェイトプレートは、前記軸受ジャーナル・シャフトに対向して、前記第1の取付脚部の末端に接続されており、
前記第2のカウンターウェイトプレートは、前記軸受ジャーナル・シャフトに対向して、前記第2の取付脚部の末端に接続されている、
請求項8に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項10】
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは、ピストンとピストン・ロッドとを備え、
前記歯車-ピン・アセンブリは、軸受ジャーナル・シャフトを備え、
前記ピストン・ロッドは、前記歯車-ピン・アセンブリの前記軸受ジャーナル・シャフトの末端に回転可能に取付けられており、
前記ピストンは、前記ピストン・ロッドに近接して、前記軸受ジャーナル・シャフトの反対側に位置し、
前記ピストンは、前記ピストン・ロッドに回転可能に取付けられている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項11】
前記第1の遊星歯車アセンブリおよび前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれは、カウンターウェイト連結板をさらに備え、
前記複数の副遊星歯車は、第1遊星歯車と第2遊星歯車とを備え、
前記第1遊星歯車と、前記第2遊星歯車と、前記主遊星歯車とは、前記太陽歯車の周囲の円周上に配置されており、
前記第1遊星歯車と、前記第2遊星歯車と、前記主遊星歯車とは、前記太陽歯車と前記リング歯車との間に機械的に係合し、前記カウンターウェイト連結板は、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリとの間に位置しており、
前記カウンターウェイト連結板は、前記第1遊星歯車と前記第2遊星歯車に回転可能に取付けられている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項12】
エンジン・ブロックと、複数の内燃機構とをさらに備え、
前記複数の内燃機構の各々が、前記ミラー遊星歯車アセンブリと、前記歯車-ピン・アセンブリと、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、
前記複数の内燃機構は前記エンジン・ブロックに沿って直線的に分布しており、
前記複数の内燃機構のそれぞれは、前記エンジン・ブロック内に回転可能に取り付けられ、
前記複数の内燃機構のそれぞれの前記ピストン-連結ロッド・アセンブリのピストンは、前記エンジン・ブロックの対応するシリンダ内に動可能に配置されている、
請求項1に記載の2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項13】
ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、
前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、外リング歯車と内リング歯車とから成るリング歯車とを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、
前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されており、
前記太陽歯車の歯数と、前記複数の副遊星歯車と前記主遊星歯車の歯数と前記内リング歯車の歯数の比が、1:1:3である、
2サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【請求項14】
ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、
前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、外リング歯車と内リング歯車とから成るリング歯車とを備え、
前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、
前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、
前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、
前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されており、
前記太陽歯車の歯数と、前記複数の副遊星歯車と前記主遊星歯車の歯数と前記内リング歯車の歯数の比が、1:2:5である、
4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、一般には、内燃機関の設計に関し、より具体的には、ピストンの上死点位置を変化させ、全体の圧縮比を変化させることができる内燃機関の機構に関する。
【0002】
本願発明により、圧縮率をほとんど瞬時に変化させることができるため、サイクル内の各ストロークをカスタマイズして性能と効率を高めることができる。本願発明は、2サイクルまたは4サイクルの内燃機関で実施することができる。加えて、本願発明は、4サイクルの内燃焼関に、長い爆発と排気のストローク、および、短い吸気と圧縮のストロークを提供することもできる。
【背景技術】
【0003】
本願発明は、ピストン移動の上方停止位置を変化させることを可能にし、あらゆる種類の内燃往復ピストン・エンジンに適用される。さらに、本願発明は、1つの完全な4サイクル動作内で2つの異なるピストン行程移動長さを実現することを可能にする。
【0004】
オットー、ディーゼル、ジュール-ブレイトン、ワンケル、アトキンソン、茂木らによる発明が、多様な内燃機関の装置や方法を作り出してきた。本願発明(SOWDAエンジンとして知られている)は、これらの発明の優位性を、独自の包括的設計として組み合わせたものである。4ストローク(オットー)、定圧圧縮点火(ディーゼル)、無段可変圧縮比(茂木)、長パワーストロークと短圧縮ストローク(アトキンソン)、バランスの取れた遠心回転機構(ワンケル)の利点により、本願発明はきわめて独自性が強く、エネルギー効率が高い。本願発明は、アトキンソンの長ストロークと短ストロークの動作、茂木に類似した可変圧縮比の概念、オットーサイクルの吸気流量絞り制御、および、ディーゼルサイクルの一定点火圧力を有する内燃機関を提供する。
【0005】
本願発明は、固定された短い吸気及び圧縮ストロークと固定された長い爆発及び排気ストロークを提供する。実用上は、爆発と排気行程を吸気と圧縮行程よりも40%から50%長く設定することができる。
【0006】
芝生トラクター、ゴルフカート、チェーンソー、自動車、トラック、バス、飛行機、発電機などのエネルギーと燃料消費は、地球の経済と環境の安定にとってますます重要になっている。現在のところ、オットー4ストロークサイクルの吸気流絞り制御およびディーゼル4ストロークサイクルの定圧着火を同時に提供しながら、アトキンソンの長ストロークサイクルと短ストロークサイクルを適用し、合理的な費用で既存の内燃技術に容易に適用できる小型でバランスの取れた遠心回転機構を提供する装置や方法は存在しない。本願発明を装備した内燃機関は、ほぼすべての燃料で作動することができ、ターボチャージャーやスーパーチャージャーの有無にかかわらず極めて高い効率で作動することができる。結果として、本願発明は、実質的に任意の気体、液体、または固体燃料、またはそれらの任意の組合せまたは混合物を使用するすべての往復動内燃機関に適用することができる。
【0007】
本願の優先権基礎出願である米国出願(米国特許1019463号)の審査過程において関連先行文献として引用された特許文献を先行技術文献として示す。特許文献1には従来型クランク・シャフトを使用しない内燃機関が開示されている。特許文献2にはサイクル中に途中停止することができるピストンが開示されている。特許文献3には、ストローク長が可変である内燃機関機構が開示されている。特許文献4および特許文献5には、従来技術とは異なるクランク・ロッドの構造が開示されている。特許文献6および特許文献9には、圧縮比が可変である内燃機関が開示されている。特許文献7および特許文献8には、従来技術とは異なるピストン機構が開示されている。いずれの文献の組み合わせによっても、当業者は本願発明の構成を容易に想到できないと考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国公開公報 5,040,502A
【文献】米国公開公報 5,465,648A
【文献】米国公開公報 5,927,236A
【文献】米国公開公報 6,349,684A
【文献】米国特許公報 6,349,684B1
【文献】米国公開公報 2012/0125297A1
【文献】米国公開公報 2014/0360292A1
【文献】米国特許公報 9,279,363B2
【文献】米国特許公報 9,726,078B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、段落0002に記載のとおり、サイクル内の各ストロークをカスタマイズして性能と効率を高められる内燃機関を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、リング歯車とを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されている、2サイクルまたは4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構を提供することで上記課題を解決する。
【0011】
また、本願発明は、ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、外リング歯車と内リング歯車とから成るリング歯車とを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されており、前記太陽歯車の歯数と、前記複数の副遊星歯車と前記主遊星歯車の歯数と前記内リング歯車の歯数の比が、1:1:3である、2サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構を提供することで上記課題を解決する。
【0012】
また、本願発明は、ミラー遊星歯車アセンブリと、歯車-ピン・アセンブリと、ピストン-連結ロッド・アセンブリとを備え、前記ミラー遊星歯車アセンブリは、第1の遊星歯車アセンブリと第2の遊星歯車アセンブリとを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリのそれぞれが、太陽歯車と、主遊星歯車と、複数の副遊星歯車と、外リング歯車と内リング歯車とから成るリング歯車とを備え、前記第1の遊星歯車アセンブリと前記第2の遊星歯車アセンブリは互いに所定の距離を取って取り付けられており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記太陽歯車は、主回転軸を中心として同心上に配置されており、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車は、共有回転軸に沿って互いに同心に配置されており、前記歯車-ピン・アセンブリは、前記第1の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車と前記第2の遊星歯車アセンブリの前記主遊星歯車との間で、ねじれ回転可能かつ偏心的に連結されており、前記ピストン-連結ロッド・アセンブリは前記歯車-ピン・アセンブリに機械的に結合されており、前記太陽歯車の歯数と、前記複数の副遊星歯車と前記主遊星歯車の歯数と前記内リング歯車の歯数の比が、1:2:5である、4サイクルの往復動内燃機関向け無段可変圧縮比機構を提供することで上記課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の斜視図である。
図2】本願発明の分解斜視図である。
図3】本願発明の分解正面図である。
図4】本願発明の部分的な内部図の側面図である。
図5】インライン4シリンダ内燃機関に統合された本願発明の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面の全ての図は、本願発明の特定のバージョンを説明するためのものであり、本願発明の範囲を限定するものではない。
【0015】
本願発明は、一般には、内燃機関の代替設計に関し、より具体的には、従来の往復動式内燃機関に適合される、平衡の取れた、回転する小型機構である。本願発明は、無段可変の圧縮比、そして、長い動力及び排気ストロークと短い吸気及び圧縮ストローク(Atkinson)とを組み合わせ、可変吸気流量(Otto)を有しつつ、一定圧力の着火(Diesel)を維持する内燃機関を提供する。
【0016】
本願発明は、内燃機関に組み込まれた内燃(IC)機構である。簡略化のために、本願発明は、単一のシリンダを有する内燃機関に組み込まれているものとして開示されている。図1および図2に示すように、本願発明の中核部は、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)と、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)とを含む。従来の設計と同様に、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、直線的に往復運動する構成要素であって、気体の膨張力をミラー遊星歯車アセンブリ(1)に伝える。ミラー遊星歯車アセンブリ(1)は、歯車-ピン・アセンブリ(20)と連動してクランク機構として作用し、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)の往復運動を内燃機関の出力として使用できるよう変換する。さらに、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)と歯車-ピン・アセンブリ(20)とは、内燃機関の圧縮比を制御する。
【0017】
ミラー遊星歯車アセンブリ(1)は、本願発明の本体部分を構成し、さらに、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)とを含む。第1の遊星歯車アセンブリ(2 )と第2の遊星歯車組アセンブリ(3)は、それぞれ、太陽歯車(4)と、主遊星歯車(5)と、複数の副遊星歯車(6)と、リング歯車(7)とを備える遊星歯車システムである。図1に示すように、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)は、歯車-ピン・アセンブリ(20)を反対側の対称の位置で支持するようオフセットして配置されている。より具体的には、第1の遊星歯車アセンブリ(2)の太陽歯車(4)と第2の遊星歯車アセンブリ(3) の太陽歯車(4)は、主回転軸(18)の周りに同心円状に配置されている。したがって、第1の遊星歯車アセンブリ(2)および第2の遊星歯車アセンブリ(3)は、主回転軸(18)と同心に配置される。従来型設計と同様に、太陽歯車(4)は比較的小さい平歯車であり、主遊星歯車(5)、複数の副遊星歯車(6)、および、リング歯車(7)の中心支持部材として機能する。太陽歯車(4)は、主遊星歯車(5)、複数の副遊星歯車(6)、リング歯車(7)を支持する構造部材として機能する。また、一般に、太陽歯車(4)が回転すると、太陽歯車(4)は、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)の上死点(TDC)の高さを上昇または下降させ、それにより圧縮比を変更する。
【0018】
主遊星歯車(5)、および、複数の副遊星歯車(6)の各々は、太陽歯車(4)の周りに半径方向に分散する位置に配置され、機械的に太陽歯車(4)と係合する平歯車である。従来型設計と同様に、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)の各々は、太陽歯車(4)を中心に公転し、ゆえに、主回転軸(18)を中心に公転する。第一の遊星歯車アセンブリ(2)の主遊星歯車(5)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の主遊星歯車(5)は、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)の直線運動を主回転軸(18)周りの回転運動に変換するために、歯車-ピン・アセンブリ(20)を支持する。複数の副遊星歯車(6)はねじり力の伝達を補助し、主遊星歯車(5)のカウンターバランスとして機能し、リング歯車(7)が主回転軸(18)を中心に対称に回転するようリング歯車(7)を支持する。リング歯車(7)は、太陽歯車(4)と同軸に取り付けられており、複数の副遊星歯車(6)の主遊星歯車(5)および複数の副遊星歯車(6)と機械的に係合する。したがって、リング歯車(7)は、太陽歯車(4)、主遊星歯車(5)、複数の副遊星歯車(6)を取り囲む。主遊星歯車(5)が太陽歯車(4)を中心に回転すると、太陽歯車(4)が固定されているため、リング歯車(7)は、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)によって主回転軸(18)を中心に回転させられる。太陽歯車(4)は、圧縮率を変更する際にわずかに回転する。
【0019】
歯車-ピン・アセンブリ(20)は、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)とミラー遊星歯車アセンブリ(1)を機械的に結合するためのクランクピンとして作用する偏心ジャーナルである。図3に示すように、第1の遊星歯車アセンブリ(2)の主遊星歯車(5)と第1の遊星歯車アセンブリ(2)の主遊星歯車(5)は、共有回転軸(19)上に同心に配置されており、歯車-ピン・アセンブリ(20)を支持する。具体的には、歯車-ピン・アセンブリ(20)は、第1の遊星歯車(5)と第2の遊星歯車(5)との間にねじれを維持し、偏心して連結されている。
【0020】
歯車-ピン・アセンブリ(20)は、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)を同じ速度で半径方向に並進するよう強制する。歯車-ピン・アセンブリ(20)が共有回転軸(19)に対して偏心していることに留意されたい。この構成は、上死点の高さを変え、それにより圧縮率を変える上で重要である。ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、従来通りの燃焼ベースの方法、または他の類似の方法により、歯車-ピン・アセンブリ(20)に対して直線的力を加える。一般に、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)を動かすために、歯車-ピン・アセンブリ(20)に機械的に係合している。
【0021】
図5に示すように、内燃機関に対して、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)、歯車-ピン・アセンブリ(20)と、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、内燃機関のエンジン・ブロック(30)内に回転可能に取り付けられている。さらに、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、エンジン・ブロック(30)のシリンダ(31)内に動可能に配置され、燃焼室を形成する。燃焼室の大きさは、内部の圧縮比に直接的に影響する。
【0022】
本願発明に係る全体的な方法は、燃焼室での燃焼によって生成された高圧で高温のガスの膨張から始まる。本願発明の全体的な方法を、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)との関係、特に、第1の遊星歯車アセンブリ(2)の副構成要素が、第2の遊星歯車アセンブリ(3)の副構成要素と同等に動くことにより説明する。この膨張ガスは、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)に力を及ぼし、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)を主回転軸(18)に向かって移動させる。以降、この方向をシリンダ(31)内で下方として参照する。次に、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は歯車-ピン・アセンブリ(20)に力を加える。歯車-ピン・アセンブリ(20)が主遊星歯車(5)に係合しているため、主遊星歯車(5)は共有回転軸(19)および主回転軸(18)を中心に回転し始める。主遊星歯車(5)が主回転軸(18)を中心にして移動すると、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、方向を反復的に反転し、結果として、従来の設計と同様に、シリンダ(31)内での往復運動をもたらす。シリンダ(31)内の所定の増分による反復的な燃焼により、上記プロセスにしたがって、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)にエネルギーが伝えられる。このプロセスは、従来型の内燃機関シリンダのクランクシャフト機構に類似している。
【0023】
エピサイクリック(遊星)歯車機構の特性により、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6) は主回転軸(18)を中心に同じ速度で回転する。太陽歯車(4)は固定されているため、この回転により、リング歯車(7)は主回転軸(18)を中心に回転させられる。サイズと歯数の違いにより、リング歯車(7)の回転速度は主遊星歯車(5)の回転数とは異なる。リング歯車(7)の回転運動・エネルギーが出力軸(33)に伝達される。出力軸(33)は、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)からの回転エネルギーを受け、内燃機関からの回転エネルギーを外部に取り出す。出力動力を伝達するために、出力軸(33)は主回転軸(18)に対して平行に、かつ、オフセットされて配置されている。さらに、出力軸(33)は、リング歯車(7)にねじり力を維持して連結されている。上述のとおり、このプロセスは、第1の遊星歯車アセンブリ(2) と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の両方に対して起こる。特に、出力軸(33)は、第1の遊星歯車アセンブリ(2)のリング歯車(7)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)のリング歯車(7)とからねじれ結合されている。
【0024】
圧縮チャンバの容積を変化させるために、ピストン-連結ロッド・アセンブリの(27)の上死点の高さが上昇または下降する。この高さの変化は、第一の遊星歯車アセンブリ(2)の太陽歯車(4)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の太陽歯車(4)の両方を均一に回転させることで達成される。以下の動作の説明は、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の両方に関して開示されている。上死点の高さを上下させるために、太陽歯車(4)は部分的に回転される。本願発明の好ましい実施形態では、異なるサイクル数、異なる上死点の高さ、異なるチェンバー・サイズ等を達成するために、主遊星歯車(5)、複数の副遊星歯車(6)、太陽歯車(4)、および、リング歯車(7)の設計とサイズを変更してよい。
【0025】
歯車-ピン・アセンブリ(20)は、共有回転軸(19)に対して偏心して配置され、上死点の高さを主遊星歯車(5)の回転、すなわち太陽歯車(4)の部分的な回転を通して変更することができる。言い換えれば、主遊星歯車(5)は太陽歯車(4)の周りの円形経路に沿って移動し、歯車-ピン・アセンブリ(20)は、太陽歯車(4)の周囲の円軌道に沿って走行する。その結果、歯車-ピン・アセンブリ(20)は、太陽歯車が移動しない限り、上死点で常に同じ向きに戻る。ここで、上死点は、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)が上方への移動を停止して、下方ストロークを開始する移動点として定義される。また、単一サイクルは、主回転軸(18)を中心とした主遊星歯車(5)の360度の一回転として定義される。
【0026】
エピサイクリックな歯車機構の特性により、太陽歯車(4)を部分的に回転させると主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(5)との相対位置が回転する。太陽歯車(4)の部分的回転は、主遊星歯車(5)の向きと上死点での歯車-ピン・アセンブリ(20)の向きとを変える。こうして、太陽歯車(4)の部分的な回転はサイクルの上死点の高さを上昇または下降させ、それにより圧縮比を上げたり下げたりする。
【0027】
図2に示すように、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)は、それぞれ、レシオ調整取付シャフト(10)とベアリング(11)とを含む。レシオ調整取付シャフト(10)は、半径方向の変位と太陽歯車(4)の回転を制御し、それにより、主遊星歯車(5)の相対位置を変え、圧縮率を変更する。レシオ調整シャフトは、太陽歯車(4)に隣接して、歯車-ピン・アセンブリ(20)に対向する位置に設けられている。さらに、レシオ調整取付シャフト(10)は、レシオ調整取付シャフト(10)のいかなる回転運動も太陽歯車(4)の等価な回転運動に変換されるよう太陽歯車(4)にねじれを維持して、軸方向に連結されている。ベアリング(11)は、エンジン・ブロック(30)内のレシオ調整取付シャフト(10)に回転可能に取り付けられている。より具体的には、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)、歯車-ピン・アセンブリ(20)、および、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、エンジン・ブロック(30) 内に配置される。ベアリング(11)は、太陽歯車(4)に隣接してエンジン・ブロック(30)内で隣接して接続されている。レシオ調整取付シャフト(10)はベアリング(11)内で、エンジン・ブロック(30)にベアリング(11)によって回転可能に取り付けられている。この構成は、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)で共通である。代替の実施形態では、エンジン・ブロック(30)内にミラー遊星歯車アセンブリ(1)を取付けるために異なる手段や機構を使用してもよい。
【0028】
レシオ調整取付シャフト(10)は、種々の手段により制御してよい。本願発明の好ましい実施形態では、レシオ調整取付シャフト(10)は、レシオ制御シャフト(32)によって制御される。より具体的には、レシオ制御シャフト(32)は、第1の遊星歯車アセンブリ(2)のレシオ調整取付シャフト(10)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)のレシオ調整取付シャフト(10) に機械的に連結されている。この連結のために、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)は、制御アーム(12)と、円弧歯車(13)と、レシオ制御シャフト(32)を機械的に結合する駆動調整歯車(14)とを備えている。
【0029】
レシオ制御シャフト(32)は、エンジン・ブロック(30)内で回転可能に取付けられ、特に、レシオ制御シャフト(32)と平行に、かつ、オフセットされて取り付けられている。制御アーム(12)は、細長いプレートまたはロッドであり、レシオ調整取付シャフト(10)の端に、それと垂直に取付けられている。円弧歯車(13)は半環形状の歯車であり、レシオ調整取付シャフト(10)と反対の位置で、制御アーム(12)の末端に取付けられている。駆動調整歯車 (14)は、レシオ制御シャフト(32)と同心に連結され、機械的に駆動調整歯車(14)と噛み合う。その結果、レシオ制御シャフト(32)の回転運動は、円弧歯車(13)と駆動調整歯車(14) との機械的係合を通じて制御アーム(12)の一端を上昇または下降させる。この係合により、レシオ調整取付シャフト(10)と太陽歯車(4)が回転し、その結果圧縮率が変化する。システム全体に関して言えば、レシオ制御シャフト(32)は、第1の遊星歯車機構(2)のレシオ調整取付シャフト(10)と第2の遊星歯車機構(3)のレシオ調整取付シャフト(10)とに機械的に結合される。
【0030】
レシオ制御シャフト(32)は、可変圧縮比駆動ユニットによって管理される。可変圧縮比駆動ユニットは、従来型の空気圧/回転アクチュエータであることが好ましい。可変圧縮比駆動ユニットは、吸気圧力や他のエンジン関連のパラメータを感知し、予め定義された/ 指定された設定にしたがってレシオ制御シャフト(32)を並進させる。特に、可変圧縮比駆動ユニットは、レシオ制御シャフト(32)にねじれ結合され、レシオ制御シャフト(32)の角度変位を直接的に制御する。レシオ制御シャフト(32)を回転するために、多様な代替方法を使用してよい。本願発明の別の実施形態では、電気サーボモータまたは油圧アクチュエータをレシオ制御シャフト(32)にねじれ結合されている。
【0031】
図3に示すように、歯車-ピン・アセンブリ(20)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)と、第1の取付脚部(23)と、第2の取付脚部(24)とを備えている。第1の取付脚部(23)と第2の取付脚部(24)は軸受ジャーナル・シャフト(21)を第1の第一の遊星歯車アセンブリ(2)の主遊星歯車(5)、および、第2の遊星歯車アセンブリ(3)の主遊星歯車(5)をオフセットした、すなわち、偏心した位置に配置する。より具体的には、軸受ジャーナル・シャフト(2 1)の中心軸(22)は、共有回転軸(19)に対してオフセットされている。第1の取付脚部(23) と第2の取付脚部(24)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)を支持するように設計された構造要素である。そのため、第1の取付脚部(23)と第2の取付脚部(24)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)を横切って互いに反対の位置にある。より具体的には、第1の取付脚部(2 3)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)と第1の遊星歯車アセンブリ(2)との主遊星歯車(5) の間に位置する。同様に、第2の取付脚部(24)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)との主遊星歯車(5)の間に第2の遊星歯車(5)との間に位置する。これにより、軸受ジャーナル・シャフトに対する対称的支持が得られる。
【0032】
ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)の周り、および、中心軸(22)の周りで回転する。ここで、軸受ジャーナル・シャフト(21)は、共有回転軸(19)に対して偏心して取り付けられている。主遊星歯車(5)の相対的回転位置、すなわち太陽歯車(4)の部分的回転を変えることにより上死点の高さを変更できる。この態様を、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)との観点から説明する。主遊星歯車(5)は太陽歯車(4)の周りの円形経路に沿って移動し、歯車-ピン・アセンブリ(20)の軸受ジャーナル・シャフト(21)は太陽歯車(4)の周りを異なる経路に沿って移動する。結果として、太陽歯車(4)が移動しない限り、歯車-ピン・アセンブリ(20)は上死点で常に同じ向きに戻る。しかし、軸受ジャーナル・シャフト(21)の相対的なオフセットは、太陽歯車(4)を一定量だけ回転させることにより昇降できるため、これにより、主遊星歯車( 5)の相対位置と軸受ジャーナル・シャフト(21)の軌道を変更し、上死点位置を上昇または下降させることができる。
【0033】
本願発明では、多数の方法を利用して、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)が動作中に適切にバランスされるので、振動を減少させ、エネルギー損失を減少させ、内燃機関の効率性を向上できる。より具体的には、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の各々は、さらに、偏心環状外部カウンターウェイト(15)とカウンターウェイト連結板(17)とを含む。偏心環状外部カウンターウェイト(15)は、中心を外れた位置にある穴を有する円形の板であるので、円形プレートの半分の重量の大部分を維持する。偏心輪外部カウンターウェイト(15)は、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)に隣接して配置され、歯車-ピン・アセンブリ(20)に対向する位置にある。さらに、偏心環状外部カウンターウェイト(15)は、取付軸を囲むように取り付けられ、偏心環状外部カウンターウェイト(15) がレシオ調整取付シャフト(10)と係合することなく回転する。偏心輪外部カウンターウェイト(15)は、歯車-ピン・アセンブリ(20)、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)、および前述の構成要素に関連する任意の力のバランスを取るために、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)と共に主回転軸(18)を中心に回転するよう設計されている。そのため、偏心環状外部カウンターウェイト(15)は、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)の各々と回転可能に取り付けられている。また、偏心環状外部カウンターウェイト(15)の重心(16)と共有回転軸(19)は、レシオ調整取付シャフト(10)に対して互いに反対側に位置する。
【0034】
図2に示すように、カウンターウェイト連結板(17)を、偏心環状外部カウンターウェイト (15)に付加してよい。カウンターウェイト連結板(17)は、好ましくは矩形のプレートであって、複数の副遊星歯車(6)と連結される。より具体的には、カウンターウェイトプレートは、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)との間に配置される。カウンターウェイトプレートは、複数の副遊星歯車(6)の各々に回転可能に取り付けられている。偏心環状外部カウンターウェイト(15)とカウンターウェイト連結板(17)の設計、形状、重量および材料構成は様々であってよい。
【0035】
さらに、本願発明の好ましい実施形態では、歯車-ピン・アセンブリ(20)は、さらに、第1のカウンターウェイトプレート(25)と第2のカウンターウェイトプレート(26)を含む。第1のカウンターウェイトプレート(25)および第2のカウンターウェイトプレート(26)は、偏心して配置された軸受ジャーナル・シャフト(21)によって重さの釣り合いが取れない共有回転軸(19)に対するカウンターバランスを提供する第1のカウンターウェイトプレート (25)と第2のカウンターウェイトプレート(26)はそれぞれ半円形のプレートである。第1のカウンターウェイトプレート(25)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)と反対側に、第1の取付脚部(23)に末端接続されている。同様に、第2のカウンターウェイトプレート(26) は、軸受ジャーナル・シャフト(21)に対向して、第2の取付脚部(24)に末端接続されている。この配置により、軸受ジャーナル・シャフト(21)は、共有回転軸(19)に対敷いて第1のカウンターウェイトプレート(25)と第2のカウンターウェイトプレート(26)との反対側に位置する。
【0036】
図3に示すように、従来型の設計と同様に、ピストン-連結ロッドアセンブリ(27)は、ピストン・ロッド(28)とピストン(29)とを備える。ピストン・ロッド(28)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)に運動を与えるために、軸受ジャーナル・シャフト(21)をピストン (29)に連結させる。ピストン(29)は、シリンダ(31)内の内部容積を制御し、かつ、シールして、燃焼室を画定する。ピストン・ロッド(28)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)の末端に回転可能に接続されている。ピストン(29)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)の反対側で、ピストン・ロッド(28)の末端に回転可能に連結されている。その結果、ピストン(2 9)は、シリンダ(31)内部で動可能であり、ピストンロッド(28)は、軸受ジャーナル・シャフト(21)と共に回転し、ピストン(29)の直線運動をミラー遊星歯車アセンブリ(1)への回転運動に変換し、伝達する。
【0037】
図4に示すように、リング歯車(7)は、さまざまな方法で出力軸(33)に接続されてよい。一実施形態では、リング歯車(7)は、チェーンを介して出力軸(33)に伝達される。好ましい実施形態では、リング歯車(7)は、歯車メッシュを介して出力軸(33)に伝達される。具体的には、リング歯車(7)は、外リング歯車(8)と内リング歯車(9)とを含む。内リング歯車(9)は、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)の各々と噛み合い、それらと相補的に設計されている。より具体的には、主遊星歯車(5)および複数の副遊星歯車(6)の各々は、内リング歯車(9)と機械的に係合する。第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)はそれぞれ出力従動歯車(34)をさらに含む。出力従動歯車(34)は、出力軸(33)と同心で連結され、内外リング歯車と同一平面上に配置されている。回転運動を転送するために、外リング歯車(8)は、出力従動歯車(34)と機械的に係合する。
【0038】
図5に示すように、本願発明は多様なサイズの、多様な構成の内燃機関に統合可能である。たとえば、4気筒インラインエンジン設計、6気筒インラインエンジンまたはV型エンジン設計、ディーゼルベースのエンジン、ガソリンベースのエンジン、および他の従来型エンジン/設計である。複数のシリンダを有する実施形態では、本願発明は、複数の内燃機関(IC)機構(35)を含む。ここで、IC機構(35)の各々は、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)と、歯車-ピン・アセンブリ(20)、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)とを含む。このような場合、複数のIC機構(35)がエンジン・ブロック(30)の周りに直線的に配置され、複数のIC機構(35)が上述のようにエンジン・ブロック(30)内に回転自在に取り付けられている。複数のIC機構(35)の各々のピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)のピストン(29)は、エンジン・ブロック(30)の対応するシリンダー(31)に動可能に配置される。また、レシオ制御シャフト(32)が、複数のIC機構(35)の各々に機械的に結合されている。さらに、出力軸(33)が、複数のIC機構(35)によって生成される回転運動をエンジン・ブロック(30)から外部へ、好ましくは連結された変速機に伝達するためにIC機構(35)の各々に機械的に結合されている。
【0039】
一実施形態では、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)は、2つの長ストロークと2つの短ストロークのから成る4サイクルを実現するために1:2:5の歯車構成を利用する。より具体的に言えば、太陽歯車(4)、複数の副遊星歯車(6)と主遊星歯車(5)、リング歯車(8)の歯数の比は1:2:5である。この実施形態では、1つの太陽歯車(4)と、1つの主遊星歯車(5)と、2つの副遊星歯車(6)と、1つのリング歯車(7)とが存在する。具体的には、複数の副遊星歯車(6)は、第1の遊星歯車(36)と第2の遊星歯車(37)を含む。ここで、第1の遊星歯車(36)、第2の遊星歯車(37)、および、遊星歯車(5)は、太陽歯車(4)の周囲に半径方向に分散配置される。さらに、第1の遊星歯車(36)、第2の遊星歯車(37)、および、主遊星歯車(5)は太陽歯車(4)とリング歯車(7)との間に機械的に係合する。カウンターウェイト連結プレート(17)は第1の遊星歯車と第2の遊星歯車に回転可能に取り付けられている。上死点位置では、太陽歯車(4)の部分的回転が圧縮比を変化させる。典型的には太陽歯車(4)の回転角度を0度から約50度まで変化させることによって、圧縮比を8対1から37対1 にまで変化できる。上述したように、回転の度合いは吸気マニホールド圧力および使用される燃料に直接依存する。
【0040】
可変圧縮比駆動部が、レシオ制御シャフト(32)を部分的に回転させ、駆動調整歯車(14)を回転させ、円弧歯車(13)を噛合させ、制御アーム(12)を移動させ、レシオ調整取付シャフト(10)を回転させ、最終的には太陽歯車(4)を回転させて、任意の上死点位置で所定の制御された圧力を点火時に維持できるようにする。このプロセスは、第1の遊星歯車アセンブリ(2)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の両方に適用される。
【0041】
図4に示すように、この構成は、吸気および圧縮ストロークよりも長い爆発および排気ストロークを提供する。すなわち、主遊星歯車(5)が太陽歯車(4)および主回転軸(18)を中心に1回転するごとに、主遊星歯車(5)が共有回転軸(19)を中心に半回転する。半分の回転は4つのストロークのうちの2つを行い、太陽歯車(4)を中心とする主遊星歯車(5)の第2の回転が残りの2つのストロークを実行する。内リング歯車(9)は、太陽歯車(4)の5倍の歯数を有し、外リング歯車(8)は、所定数の歯を含む必要はない。しかし、数学的には、1:2:5の主歯数比に対してリング歯車(7)が主遊星歯車(5)の公転速度より1.2倍速く回転するので、外リング歯車(8)の歯数は任意に96に設定することができる。したがって、出力軸(33)の回転速度を主遊星歯車(5)の公転速度の3.2倍に任意に設定すると、出力従動歯車(34)の速度は、主遊星歯車(5)と複数の副遊星歯車(6)同数の歯を含む。出力軸(33)の速度は任意の回転速度比に設定することができるが、この比を3.2倍速に設定するという目的は、内燃機関の前部でオルタネータに直接的な結合を提供し、内燃機関の後部ではるかに小さいサイズの動力伝達を提供することである。
【0042】
ある特定の実施例では、太陽歯車(4)の歯数を18歯、主遊星歯車(5)と各副遊星歯車の歯数を36歯、内リング歯車(9)の歯数を90歯、外リング歯車(8)の歯数を96歯、出力従動歯車(34)の歯数を36歯とし、出力軸(33)の回転速度を主遊星歯車(5)の公転速度の3.2倍にする。主歯比率の他の設定を使用してもよい。
【0043】
別の実施形態では、ミラー遊星歯車アセンブリ(1)は、1ストローク長の2ストロークサイクル動作で可変圧縮比調整を達成するために1:1:3の歯構成を利用する。具体的には、太陽歯車(4)、複数の副遊星歯車(6)と主遊星歯車(5)、内リング歯車(9)との主歯比は1:1:3である。
【0044】
一実施形態では、本願発明は、少なくとも1つの油圧クラッチパックをさらに備えてもよい。油圧クラッチパックにより、本願発明は、複数のIC機構(35)のうちの1つ以上と係合または係合解除することができる。油圧クラッチパックは、複数のIC機構(35)のうちの特定のIC機構の第1の遊星歯車アセンブリ(2)の外リング歯車(8)と第2の遊星歯車アセンブリ(3)の外リング歯車(8)とに追加することができる。また、複数のIC機構(35)中の特定のIC機構に係脱できるよう、出力従動歯車(34)の出力軸(33)に油圧クラッチパックを付加してもよい。油圧クラッチパックは、ピストン-連結ロッド・アセンブリ(27)の動きを止めることができ、それによって特定のIC機構(35)を作動または非作動にする。
【0045】
本願発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、以下に請求される本願発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの他の可能な改変および変形が可能であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5