(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】芯体、押圧体、および、加工肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20230807BHJP
A22C 17/00 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A23L13/00 E
A22C17/00
(21)【出願番号】P 2019081387
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509335889
【氏名又は名称】株式会社HEARTMAN
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】藤村 慎一
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134756(JP,A)
【文献】特開昭57-170138(JP,A)
【文献】特開平9-248155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00
A22C 17/00
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉を巻くための筒状の芯体であって、
第1の貫通孔が設けられ、
前記芯体に巻かれた肉は、液状の調味料に漬けられるものであ
り、
前記肉が巻かれる側の前記芯体の側面に設けられた第1の凸部を含み、
前記第1の凸部は、前記肉に侵入可能であり、
前記芯体の内側面から前記第1の凸部の表面との間において、第1の通路が設けられており、前記第1の通路を通じて、前記芯体の内側面側から前記第1の凸部の外側へと液体が通過可能である芯体。
【請求項2】
芯体に巻かれた肉を外側から内部へ押圧するための押圧体であり、
前記芯体は、筒状であり、かつ、第1の貫通孔が設けられ、
前記芯体に巻かれた肉は、液状の調味料に漬けられるものであり、
前記肉を押圧する側の前記押圧体の側面に設けられた第2の凸部を含み、
前記第2の凸部は、前記肉に侵入可能であり、
前記押圧体の外側面から前記第2の凸部の表面との間において、第2の通路が設けられており、前記第2の通路を通じて、前記押圧体の外側から前記第2の凸部の外側へと液体が通過可能である押圧体。
【請求項3】
第1の貫通孔が設けられた筒状の芯体に肉を巻く工程と、
前記芯体に巻かれた肉を液状の調味料に漬ける工程とを含む、加工肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉を液状の調味料を漬けて、調味料が浸みた肉を製造するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
漬けダレなどに肉が巻かれた肉塊を浸し、チャーシューなどを製造している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、調味料が肉に含浸しやすい芯体、押圧体および加工肉の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、肉を巻いて製造する加工肉の製造に当たって、肉の内側に熱が伝わり難かったり、調味料が内部に染み渡り難いなどの課題があることを発見した。
【0006】
本発明の芯体は、
肉を巻くための筒状の芯体であって、
第1の貫通孔が設けられ、
前記筒状の芯体に巻かれた肉は、液状の調味料に漬けられるものである。
【0007】
本発明の筒状の芯体に肉が巻かれることで、肉を液状の調味料に漬けたときに、第1の貫通孔を通じて、内面側の肉に液が接触しやすく、熱が伝わりやすい。
【0008】
本発明の芯体において、
前記肉が巻かれる側の前記芯体の側面に設けられた第1の凸部を含み、
前記第1の凸部は、前記肉に侵入可能であり、
前記芯体の内側面から前記第1の凸部の表面との間において、第1の通路が設けられており、前記第1の通路を通じて、前記芯体の内側面側から前記第1の凸部の外側へと液体が通過可能であることができる。
【0009】
これにより、第1の凸部が肉に侵入することで、肉のずれを抑えることができる。また、第1の通路を通じて、肉の内部に調味料を注入または供給しやすくなる。
【0010】
本発明の押圧体は、
本発明の芯体に巻かれた肉を外側から内部へ押圧するためのものである。
【0011】
本発明の押圧体によれば、糸により縛ることなく、肉の形の崩れを抑えることができる。
【0012】
本発明の押圧体において、
前記押圧体は、第1の押圧体の要素と、第2の押圧体の要素を含んで構成され、前記第1の押圧体の要素と前記第2の押圧体の要素とは、蝶番により相対的に回動可能であり、前記第1の押圧体の要素と前記第2の押圧体の要素とを閉じた際に、筒状とするようにすることができる。
【0013】
これにより、簡易に押圧体を肉の周りに固定することができる。
【0014】
本発明の押圧体において、
前記肉を押圧する側の前記押圧体の側面に設けられた第2の凸部を含み、
前記第2の凸部は、前記肉に侵入可能であり、
前記押圧体の外側面から前記第2の凸部の表面との間において、第2の通路が設けられており、前記第2の通路を通じて、前記押圧体の外側から前記第2の凸部の外側へと液体が通過可能であることができる。
【0015】
これにより、第2の凸部が肉に侵入することで、肉のずれを抑えることができる。また、第2の通路を通じて、肉の内部に調味料を注入または供給しやすくなる。
【0016】
本発明の加工肉の製造方法は、
本発明の芯体に肉を巻く工程と、
前記芯体に巻かれた肉を液状の調味料に漬ける工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る芯体に肉が巻かれた態様を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の肉が巻かれた芯体を輪切りにした断面を模式的に示す図である。
【
図3】肉が巻かれた芯体を液状の調味料に漬けた状態を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る芯体を模式的に示す図である。
【
図6】芯体に巻かれた肉を押圧している状態を示す断面図である。
【
図7】芯体に設けられた第1の凸部および押圧体に設けられた第2の凸部を模式的に示す断面図である。
【
図9】第1の凸部の変形例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
1.芯体
本実施の形態に係る芯体10は、
図1および
図2に示すように、筒状であり、肉30を巻くためのものである。筒状の芯体10に巻かれた肉30は、
図3に示すように、液状の調味料32に漬けられる。肉30は、ブロック状または平板状などのものが好適である。肉30の種類は特に限定されず、たとえば、豚の肉30や牛の肉30などを挙げることができる。液状の調味料32は、液体、液体と固体との混合物を含む概念である。
【0020】
芯体10には、
図4に示すように、第1の貫通孔12が設けられている。第1の貫通孔12が設けられていることで、液状の調味料32が芯体10の内側面側から、巻かれた肉30に接触することが可能となる。
【0021】
芯体10の材質は、熱の伝導性が高いものが好ましく、たとえば、ステンレスなどの金属などを挙げることができる。
【0022】
芯体10は網目状のものでもよい。芯体10は、円形や楕円形の筒状、多角形の筒状であってもよい。
【0023】
芯体10に肉30を巻くことで、芯体10を通じて熱が肉30に伝わりやすくなる。また、第1の貫通孔12があることで、液状の調味料32が肉30に接触することになり、肉30の内部に液状の調味料32が行き渡りやすくなる。熱をもった調味料32が肉30の内部に染み渡りやすくなることで、熱も肉30の内部に伝わりやすくなるという効果がある。
【0024】
芯体10には、
図7~
図9に示すように、肉30が巻かれる側の前記芯体10の側面に設けられた第1の凸部14を含むことができる。第1の凸部14は、肉30に侵入可能であるものであり、突起状のものが好ましい。第1の凸部14が巻かれた肉30がずれるのを抑えることができる。
【0025】
芯体10の内側面から第1の凸部14の表面との間において、第1の通路16を設け、液状の調味料32が第1の通路16を通じて芯体10の内側から芯体10の外側に液状の調味料32が通過可能にすることができる。具体的には、第1の凸部14に第1の供給口18を設け、かつ、芯体10および第1の凸部14の内部に第1の供給口18に接続されるように第1の通路16を設け、芯体10の内側面側から第1の通路16に侵入した液状の調味料32が、第1の供給口18から供給されるようにすることができる。これにより、第1の凸部14が肉30に侵入し、第1の供給口18が肉30の内部に入っている場合に、液状の調味料32が肉30の内部に供給されることになる。したがって、肉30の内部まで調味料32が行き渡りやすくなる。
【0026】
第1の凸部14の材質は、熱の伝導性が高いものが好ましく、たとえば、ステンレスなどの金属などを挙げることができる。芯体10と第1の凸部14とは一体的に設けてもよい。第1の凸部14の供給口は、
図9に示すように、先端のみならず、側面に設けてもよい。
【0027】
2.押圧体
押圧体20は、
図5に示すように、芯体10に巻かれた肉30を外側から内部へ押圧するためのものである。複数の構成要素を合わせて筒状に構成した態様であってもよい。具体的には、
図6に示すように、半円のものを2つに合わせて押圧体20を構成してもよい。2つの半分の押圧体20を蝶番などにより連結し、回動可能に設けてもよい。2つの半分の押圧体20を合わせ際に、開かないようにするための固定手段(図示せず)を設けてもよい。
【0028】
押圧体20は、第1の押圧体20の要素と、第2の押圧体20の要素とから構成され、第1の押圧体20の要素と第2の押圧体20の要素とは、蝶番により相対的に回動可能であり、第1の押圧体20の要素と第2の押圧体20の要素とを閉じた際に、筒状となるようにすることができる。これにより簡易に押圧体20を芯体10に巻かれた肉30を囲むようにセッティングすることができる。
【0029】
なお、押圧体20は、複数の分離した要素から構成され、各要素を隣り合う端同士が対応するように凹凸状にし、要素同士を嵌め合わせるような構成としてもよい。
【0030】
押圧体20を芯体10に巻かれた肉30の外側にその肉30を押圧するようにセッティングすることで、肉30の形が崩れるのを抑えることができる。また、糸などで肉30を縛るなどの面倒な工程を実施を省くことができる。
【0031】
押圧体20には、
図6に示すように、第2の貫通孔22が設けられている。第2の貫通孔22が設けられていることで、液状の調味料32が押圧体20の外側面側から、巻かれた肉30に接触することが可能となる。
【0032】
押圧体20の材質は、熱の伝導性が高いものが好ましく、たとえば、ステンレスなどの金属などを挙げることができる。押圧体20は網目状のものでもよい。押圧体20は、円形や楕円形の筒状、多角形の筒状であってもよい。
【0033】
押圧体20は、肉30を押圧する側の前記押圧体20の側面に設けられた第2の凸部24を含むことができる。第2の凸部24は、肉30に侵入可能であるものであり、突起状のものが好ましい。第2の凸部24が巻かれた肉30がずれるのを抑えることができる。
【0034】
押圧体20の外側面から第2の凸部24の表面との間において、第2の通路26を設け、液状の調味料32が第2の通路26を通じて押圧体20の内側から押圧体20の外側に液状の調味料32が通過可能にすることができる。具体的には、第2の凸部24に第2の供給口28を設け、かつ、押圧体20および第2の凸部24の内部に第2の供給口28に接続されるように第2の通路26を設け、押圧体20の外側面側から第2の通路26に侵入した液状の調味料32が、第2の供給口28から供給されるようにすることができる。これにより、第2の凸部24が肉30に侵入し、第2の供給口28が肉30の内部に入っている場合に、液状の調味料32が肉30の内部に供給されることになる。したがって、肉30の内部まで調味料32が行き渡りやすくなる。
【0035】
第2の凸部24の材質は、熱の伝導性が高いものが好ましく、たとえば、ステンレスなどの金属などを挙げることができる。押圧体20と第2の凸部24とは一体的に設けてもよい。
【0036】
第2の凸部24は、第2の凸部24の供給口は、
図9に示すように、先端のみならず、側面に設けてもよい。
【0037】
第2の凸部24は、第1の凸部14と同様の構成例を採用することができる。
【0038】
3.加工肉の製造方法
実施の形態に係る加工肉30の製造方法は、芯体10に肉30を巻く工程と、芯体10に巻かれた肉30を液状の調味料32が貯められた容器に入れ、調味料32を熱しながら、肉30に調味料32を含浸させ、かつ、熱を加える工程を含む。
【0039】
4.作用効果
従来、チャーシューを作る場合には、芯を使わずに単に肉30を巻き、かたちが崩れないように糸で縛ることが行われている。本願発明者は、従来のチャーシューの製造方法の場合に、肉30の内側に熱が伝わり難かったり、調味料32が内部に染み渡り難いなどの課題があることを発見した。
【0040】
本実施の形態によれば、このような課題を解決することができる。また、今までは、肉30の形が崩れることを防ぐために、タコ糸などで肉30を固めていたところ、その糸を巻く作業や、その糸を取る工程が不要となる。また、糸自体も不要となり、資源消費を抑え、コストを下げることができる。
【0041】
5.応用例
本実施の形態に係る芯体10および押圧体20は、焼き豚(チャーシュー)を製造するに際して、好適である。
【0042】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 芯体
12 第1の貫通孔
14 第1の凸部
16 第1の通路
18 第1の供給口
20 押圧体
22 第2の貫通孔
24 第2の凸部
26 第2の通路
28 第2の供給口
30 肉
32 液状の調味料