(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】服飾用係止具
(51)【国際特許分類】
A44B 17/00 20060101AFI20230807BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20230807BHJP
G09F 7/00 20060101ALN20230807BHJP
【FI】
A44B17/00
A44B99/00 611A
G09F7/00 N
(21)【出願番号】P 2019168565
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-09-05
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年12月1日に2018年12月新製品チラシにて発表、2019年7月1日に2019年7月新製品チラシにて発表、2019年6月17日に岩手日報2019年6月17日付朝刊、第15面、https://www.iwate-np.co.jp/にて発表、2019年7月10日に盛岡タイムス2019年7月10日付朝刊、第1面、http://www.morioka-times.com/にて発表、2019年7月23日に情報紙『游悠』2019年7月23日号/Vol.422、第5頁、http://k-yuuyuu.com/にて発表、2019年7月1日に盛岡商工会議所ニュース(会報)『Sansa』2019年7月第719号、第18頁にて発表、2019年5月19日にいわて奥州きらめきマラソン会場にて販売、2019年7月6~7日にきたかみ夏油高原ヒルクライム会場にて販売、2019年7月6~7日にみちのく秋田チャリティーラン&ウォーク会場にて販売、2018年12月1日にhttp://bib-it.jp/にて発表、2018年12月1日にhttp://merrybee.ocnk.net/にて発表、2018年12月1日にhttps://store.shopping.yahoo.co.jp/merry-bee/にて発表、2018年12月1日にhttps://www.instagram.com/bibit.jp/にて発表、2018年11月11日にhttps://www.facebook.com/bibit.jp/にて発表、2019年1月6日にhttps://www.instagram.com/yukari_run/にて発表、2019年1月14日にhttps://www.instagram.com/ta_bo.shimoyama/にて発表、2019年1月27日にhttps://www.instagram.com/ka_run000/にて発表、2019年6月3日にhttps://www.instagram.com/crazypermanent1040/にて発表、2019年6月21日、7月7日、9月1日にhttps://www.instagram.com/guachuanharuna/にて発表、2019年2月1日にhttps://www.instagram.com/yke0228/にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年1月25日、2月22日にhttps://www.instagram.com/kobayan880427/にて発表、2019年7月29日にhttps://www.instagram.com/ezgroove/にて発表、2019年3月24日にhttps://www.instagram.com/mk55tani/にて発表、2019年1月19日にhttps://www.instagram.com/mr.kosuke_/にて発表、2018年12月23日にhttps://www.instagram.com/yu_ikawa/にて発表、2018年12月20日にhttps://www.instagram.com/iwatecharunners/にて発表、2019年6月24日、6月29日、6月30日、7月13日、8月26日にhttps://www.instagram.com/nekota80/にて発表、2018年12月23日にhttps://www.instagram.com/arrty.s.arrty/にて発表、2018年12月23日にhttps://www.instagram.com/yukikurohana/にて発表、2018年12月23日にhttps://www.instagram.com/ps.risa/にて発表、2018年12月23日にhttps://www.instagram.com/mittsurun/にて発表、2019年6月19日にhttps://www.facebook.com/profile.php?id=100008394107843にて発表、2019年2月20日、7月10日、8月5日にhttps://www.facebook.com/hisatomo.yogoにて発表、2019年1月19日に https://www.facebook.com/zero.sp.tottori/?tn-str=k*Fにて発表、2018年12月14日、2019年2月3日、5月12日、5月14日、8月4日、9月16日にhttps://www.facebook.com/risa.shinozaki.54にて発表、2019年5月19日にhttps://www.facebook.com/YukikO.Takahashiにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年6月15日にhttps://www.facebook.com/michinokuakita24/にて発表、2019年8月28日にIAT岩手朝日テレビ、IATわくわく情報館にて発表、2019年6月20日に岩手めんこいテレビ、めんこいテレビmitライブニュースにて発表、2019年9月8日にあっぴリレーマラソン会場にて販売、2019年8月18日に情報紙『kakeashi』2019年8月18日号、第13頁にて発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519319783
【氏名又は名称】株式会社RECOLTZ
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】余湖 明智
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1634508(EP,A2)
【文献】国際公開第2014/199116(WO,A1)
【文献】特開2017-75663(JP,A)
【文献】特開2016-16658(JP,A)
【文献】中国実用新案第204670512(CN,U)
【文献】国際公開第2010/043733(WO,A1)
【文献】特開2002-319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B1/00-99/00
G09F7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地に留める一対の突きボタンと受けボタンとからなる服飾用係止具であって、
前記突きボタンは、第1本体部と、前記第1本体部の裏側から突出した突起部と、前記突起部の先端に設けられ前記生地を挟んで前記受けボタンに係止される係止部と、を備え、
前記受けボタンは、前記突起部が挿通されると共に前記係止部が係止される貫通孔が形成された樹脂製の第2本体部を備え、
前記第1本体部の裏側は、前記第2本体部の裏面に対向して配置され、
前記受けボタンは、前記第2本体部の裏面が平面状に形成され、且つ前記第2本体部の表面が湾曲した円盤であり、
側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成されており、
前記貫通孔は、前記第2本体部の裏面に前記係止部の径よりも小径に形成された小径孔と、前記小径孔に連続すると共に前記第2本体部の表面に前記係止部の径よりも大径に形成された大径孔と、を備え、ザグリ穴状の段部が形成されるように前記小径孔と前記大径孔を形成し、
前記小径孔の内周面は前記第2本体部の平面状に形成された裏面から垂直に延びて形成され、
前記小径孔と前記大径孔の前記段部から前記第2本体部の裏面までの厚みは、前記段部から前記第2本体部の表面までの厚みよりも小さく、
前記係止部が前記生地を挟んで前記受けボタンに係止された状態で、前記突きボタンの裏面から前記係止部の先端に重ねられた前記生地の前記受けボタン側に露出している面までの距離が、前記突きボタンの裏面から前記受けボタンの表面の最高部までの距離よりも小さく、
前記受けボタンは、平面視にて中心から放射状に延びた複数の切り欠き溝が形成され、
前記切り欠き溝は、前記小径孔の内周面から径方向外側に向かって前記大径孔の内周面を越えて形成されるとともに前記小径孔の内周面及び前記大径孔の内周面から径方向外側に向かって連続して形成され、且つ一部が前記第2本体部の表面から裏面まで突き抜けていることを特徴とする服飾用係止具。
【請求項2】
請求項1記載の服飾用係止具であって、
前記切り欠き溝は、平面視にて十字状に4つ形成されていることを特徴とする服飾用係止具。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2記載の服飾用係止具であって、
前記受けボタンの材質は、ポリエチレンであることを特徴とする服飾用係止具。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれか1項記載の服飾用係止具であって、
前記突起部と前記係止部との間にはテーパ状に形成された傾斜部を備えていることを特徴とする服飾用係止具。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項記載の服飾用係止具であって、
前記突きボタンは、平面視にて楕円状に形成され、且つ前記第1本体部の表面は中心が凸状となるように湾曲していることを特徴とする服飾用係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゼッケンをシャツ等の生地に留める服飾用係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばマラソン、トラック競技、自転車競技等に使用されるゼッケンは、長方形に裁断された布(織物や編物)、合成樹脂シート、不織布等の生地により作られており、番号、チーム名、主催者、スポンサー等が印刷されることにより表示されている。
【0003】
ゼッケンの取付は、競技者が着るシャツの胸部又は背部に、安全ピンを用いて係止したり、糸によって縫い付けたり、粘着剤を用いて貼りつけたりすること等で取り付けられていた。
【0004】
しかし、ゼッケンを糸によって縫い付けたり、粘着剤を用いて貼りつけたりする方法では手間がかかる。また、安全ピンを用いる方法では、安全ピンが外れることもあるため安全面から改善の余地があった。そこで、ゼッケンの取付の手間を省き、安全性も向上させた従来技術として特許文献1に開示される技術が知られている。
【0005】
特許文献1の服飾用係止具は、合成樹脂製であり、一対の突きボタンと受けボタンとからなる。突きボタンは、平板状の本体部から係止部を有するピン体部が突出するように形成されている。受けボタンは、平板の円盤状で縦断面が均一な厚さに形成されており、ピン体部が挿入される挿入孔と、挿入孔の周囲に連通された複数の切溝部と、切溝部間に形成された係止爪片と、切溝部間の外周に形成された円弧溝と、外周に段差を付けて形成された薄肉部とを備えている。
【0006】
通常、ゼッケンの四隅には孔が開いており、突きボタンのピン体部をゼッケンに開けられた孔に入れ、シャツの表面に配置し、シャツの裏面から受けボタンを当て、突きボタンのピン体部を受けボタンの挿入孔に挿入して係止爪片に係合することにより、ゼッケンがシャツに留められる。
【0007】
ところで、マラソンの競技者はゴールまでに数万歩走ることがあり、ゼッケンを付けたシャツを着た競技者はシャツが数万回も体と擦れることになる。服飾用係止具のピン体部(ピン体部の先端に重なったシャツ)が体に接触すると突出部分で体を擦ってダメージを与えてしまうため、ピン体部(ピン体部の先端に重なったシャツ)が体に接触しないことが好ましい。しかし、特許文献1の服飾用係止具は、ゼッケンをシャツに取り付けた状態でピン体部が受けボタンから体側に突出するため、ピン体部により体の肌にダメージを与えてしまう。また、下着を着ていたとしてもピン体部が下着に引っ掛かるため好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、生地に取り付けた状態でも突起部が体等に接触することを防止できる服飾用係止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 生地に留める一対の突きボタンと受けボタンとからなる服飾用係止具であって、
前記突きボタンは、第1本体部と、前記第1本体部の裏側から突出した突起部と、前記突起部の先端に設けられ前記生地を挟んで前記受けボタンに係止される係止部と、を備え、
前記受けボタンは、前記突起部が挿通されると共に前記係止部が係止される貫通孔が形成された樹脂製の第2本体部を備え、
前記第1本体部の裏側は、前記第2本体部の裏面に対向して配置され、
前記受けボタンは、前記第2本体部の裏面が平面状に形成され、且つ前記第2本体部の表面が湾曲した円盤であり、
側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成されており、
前記貫通孔は、前記第2本体部の裏面に前記係止部の径よりも小径に形成された小径孔と、前記小径孔に連続すると共に前記第2本体部の表面に前記係止部の径よりも大径に形成された大径孔と、を備え、ザグリ穴状の段部が形成されるように前記小径孔と前記大径孔を形成し、
前記小径孔の内周面は前記第2本体部の平面状に形成された裏面から垂直に延びて形成され、
前記小径孔と前記大径孔の前記段部から前記第2本体部の裏面までの厚みは、前記段部から前記第2本体部の表面までの厚みよりも小さく、
前記係止部が前記生地を挟んで前記受けボタンに係止された状態で、前記突きボタンの裏面から前記係止部の先端に重ねられた前記生地の前記受けボタン側に露出している面までの距離が、前記突きボタンの裏面から前記受けボタンの表面の最高部までの距離よりも小さく、
前記受けボタンは、平面視にて中心から放射状に延びた複数の切り欠き溝が形成され、
前記切り欠き溝は、前記小径孔の内周面から径方向外側に向かって前記大径孔の内周面を越えて形成されるとともに前記小径孔の内周面及び前記大径孔の内周面から径方向外側に向かって連続して形成され、且つ一部が前記第2本体部の表面から裏面まで突き抜けていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、突きボタンの突起部を受けボタンの貫通孔に挿通すると、突起部の先端に設けられた係止部が生地を挟んで受けボタンに係止される。詳細には、貫通孔は小径孔と大径孔の間に段部が形成されており、係止部の径よりも小径孔の径が小径であるため、係止部は段部に係止される。このとき係止部が大径孔に収納され、突起部(突起部の先端に重なった生地)が受けボタンの表面から突出せず、受けボタンの表面よりも内側に位置するので、生地に取り付けた状態でも突起部が体等に接触することを防止できる。
【0013】
かかる構成によれば、受けボタンは中心から放射状に延びた複数の切り欠き溝が形成されているので、小径孔と大径孔の間に段部が切り欠き溝によって分断される。このため、切り欠き溝間の段部が撓み易くなるので、小径孔よりも大経の係止部を、段部を撓ませながら容易に挿通させて段部に係止することができる。このとき、第2本体部は樹脂製であるため、切り欠き溝により分断された段部がしなり、係止部が小径孔を通過するといわゆる「パチン」という嵌り音が鳴り、係止された手応えを感じることができる。このように、係止部が大径孔に収納されると共に係止されたことを音と手応えで確認できるので、確実に係止部を大径孔に収納させて突起部(係止部)を受けボタンの表面よりも内側に位置させることができる。
【0014】
[2]好ましくは、前記切り欠き溝は、平面視にて十字状に4つ形成されている。
【0015】
かかる構成によれば、例えば生地であるシャツにゼッケンを留める場合、受けボタンはゼッケンの四隅を留める程度の比較的小さいサイズとなるが、このような小さいサイズであれば切り欠き溝を十字状に4つ形成することで、切り欠き溝間の段部に適度な弾性を付与することができる。このため、係止部を受けボタンに係止する際、適切なクリック感を得ることができ、確実に係止部を大径孔に収納させて突起部(係止部)を受けボタンの表面よりも内側に位置させることができる。
【0017】
かかる構成によれば、第2本体部の最も厚い部分は、係止部を収納する必要があるため従来技術の平板の受けボタンに比較して厚みが大きくなる。通常であれば突起部の挿入時に受けボタンが撓み難くなるところ、本発明では切り欠き溝を第2本体部の表面の一部にまで形成したので、第2本体部の表面の一部まで容易に撓ませることができる。このため、係止部を受けボタンに容易に係止することができ、確実に係止部を大径孔に収納させて突起部(係止部)を受けボタンの表面よりも内側に位置させることができる。
【0019】
かかる構成によれば、段部から第2本体部の表面までの厚みを大きくすることで、係止部の収納空間を大きくすることができる。このため、係止部を大径孔に余裕をもって収納することができ、生地に取り付けた状態でも突起部が体等に接触することを防止できる。さらに、段部から第2本体部の裏面までの厚みは小さくなるので、係止部を受けボタンに係止する際、容易に段部を撓ませることができる。このため、係止部を受けボタンに容易に係止することができ、確実に係止部を大径孔に収納させて突起部(係止部)を受けボタンの表面よりも内側に位置させることができる。
【0021】
かかる構成によれば、第2本体部の最も厚い部分は、係止部を収納する必要があるため従来技術の平板の受けボタンに比較して厚みが大きくなり、係止された状態から受けボタンを外す際、通常であれは指を生地と受けボタンの間に入れて受けボタンを撓ませ難くなる。この点本発明において、受けボタンは第2本体部の裏面が平面状に形成され且つ表面が湾曲した円盤であり、側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成されているので、この先細り部分に厚みがなく容易に撓ませることができる。このため、係止された状態から受けボタンと生地の間に容易に指を入れて受けボタンを外すことができる。
【0022】
また、従来技術では、受けボタンが軟弱な板状であるため、受けボタンの縁が特に女性の下着等に引っ掛かった際に、容易に撓んで直ぐに受けボタンが取れてしまうということがあった。この点、本発明では、受けボタンの裏面が平面状で且つ表面が湾曲したドーム状で引っ掛かりを逃がす形状であり、先細りの肉薄な周囲部分が生地(衣服、シャツ)に密着するため下着に引っ掛かり難い。さらに、仮に受けボタンの縁が下着に引っ掛かった場合、周囲の先細り部分が撓んでも、固定している中心部分は肉厚で撓み難く、しかも固定力が高いため、使用時に外れることを防止できる。
【0023】
[3]好ましくは、前記受けボタンの材質は、ポリエチレンである。
【0024】
かかる構成によれば、ポリエチレンはABS樹脂に比較して柔軟であるため、受けボタンに係止部を係止し易くすることができる。
【0025】
[4]好ましくは、前記突起部と前記係止部との間にはテーパ状に形成された傾斜部を備えている。
【0026】
かかる構成によれば、傾斜部により係止部の剛性が高くなるので、受けボタンに係止された状態を維持し、使用中に受けボタンから突きボタンが簡単に外れることを防止することができる。
【0027】
[5]好ましくは、前記突きボタンは、平面視にて楕円状に形成され、且つ前記第1本体部の表面は中心が凸状となるように湾曲している。
【0028】
かかる構成によれば、突きボタンは楕円形状で外側に膨らむように凸状となっているので、表面の面積を大きくすることができる。このため、表面に目視できるサイズの文字を多く記載することができたり、絵柄を描いたり、表面の記載の自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0029】
生地に取り付けた状態でも突起部が体等に接触することを防止できる服飾用係止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る服飾用係止具の分解斜視図である。
【
図8】
図1の服飾用係止具の使用態様の一例を説明する図である。
【
図9】
図9(a)は係止前の服飾用係止具の作用図である。
図9(b)は係止途中の服飾用係止具の作用図である。
図9(c)は係止後の服飾用係止具の作用図である。
【
図10】
図10(a)は
図7の向きにおける係止後の服飾用係止具の断面図である。
図10(b)は服飾用係止具の取り外しの作用図である。
【
図11】本発明に係る服飾用係止具の別態様及び使用態様の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、作用図は、服飾用係止具を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例】
【0032】
図1に示すように、服飾用係止具10は、例えばシャツ等の生地50(
図8参照)にゼッケン51を留めるためのものであり、一対の突きボタン20と受けボタン30とからなる。突きボタン20及び受けボタン30は樹脂製である。
【0033】
突きボタン20は、第1本体部21と、第1本体部21の裏側(裏面22)から突出した突起部23と、突起部23の先端に設けられ生地50を挟んで受けボタン30に係止される係止部24と、を備えている。受けボタン30は、突起部23が挿通されると共に係止部24が係止される貫通孔41が形成された樹脂製の第2本体部31を備えている。
【0034】
次に突きボタン20について説明する。
図2に示すように、突きボタン20は、突起部23の径D1よりも係止部の径D2の方が大きい。突起部23と係止部24との間にはテーパ状に形成された傾斜部25を備えている。突起部23の先端側の外周は面取り26が形成されている。
【0035】
図3に示すように、突きボタン20の第1本体部21の表面27には、文字28が印字されている。突きボタン20の材質は、ABS樹脂である。ABS樹脂であれば、UVインクに紫外線を照射して固めることで文字等をプリントするいわゆるUVプリントの定着を向上させることができる。
【0036】
図2及び
図3に示すように、突きボタン20は、平面視にて楕円状に形成され、且つ第1本体部21の表面27は中心が凸状となるように湾曲している。突きボタン20は楕円形状で外側に膨らむように凸状となっているので、表面27の面積を大きくすることができる。このため、表面27に目視できるサイズの文字28を多く記載することができたり、絵柄を描いたり、表面27の記載の自由度を向上させることができる。
【0037】
次に受けボタン30について説明する。
図1及び
図4~
図7に示すように、受けボタン30は、第2本体部31の裏面32が平面状に形成され、且つ第2本体部31の表面33が湾曲して形成された、円盤形状である。受けボタン30は、側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成され、この先細り部分が指で曲げやすい柔軟部となっている。また、受けボタン30の材質は、ポリエチレンである。
【0038】
受けボタン30の貫通孔41は、第2本体部31の裏面32に係止部24の径D2よりも小径に形成された小径孔42と、小径孔42に連続すると共に第2本体部31の表面33に係止部24の径D2よりも大径に形成された大径孔43と、を備えたいわゆるザグリ穴形状である。小径孔42の径はD3であり、大径孔43の径はD4である。すなわち、径の大小関係は、D1<D3<D2<D4となっている。
【0039】
このため、突きボタン20の突起部23を受けボタン30の貫通孔41に挿通することで、係止部24が大径孔43に収納される。小径孔42と大径孔43とは同心円状であり、小径孔42と大径孔43との間には、段部44が形成されている。突きボタン20を受けボタン30に係合した状態では、係止部24が段部44に係止されている。
【0040】
また、受けボタン30は、平面視にて中心から放射状に延びた複数の切り欠き溝45が形成されている。切り欠き溝45は、平面視にて十字状に4つ形成されている。さらに切り欠き溝45は、小径孔42の内周面及び大径孔43の内周面から第2本体部31の表面33の一部にまで形成されている。
【0041】
また、小径孔42と大径孔43の間の段部44から第2本体部31の裏面32までの厚みT1は、段部44から第2本体部31の表面33までの厚みT2よりも小さい。このように、段部44から第2本体部31の裏面32までの厚みT1が小さいので、係止部24が小径孔42を通過する際、小径孔42の厚み部分(係止部24を係止する部分)が柔軟に曲がり、容易に係止部24を段部44に係止することができる。
【0042】
次に服飾用係止具10の作用について説明する。
図8に示すように、服飾用係止具10は、競技者60がマラソン大会等の競技に参加した際、ゼッケン51を競技用ユニフォーム等の生地(シャツ)50に取り付けるための道具である。生地50であるシャツにはゼッケン51を取り付ける孔を設ける必要がなく、その場で一般的な生地50に取り付けることが可能なため、服飾用係止具10は便利である。また、安全ピンでゼッケン51を生地50に留めるときのように、生地50に小さな孔を開けることで生地50を傷めることもなく、仮に安全ピンが外れて競技者60の体61に怪我をさせるようなこともないので安全性も高い。
【0043】
次に服飾用係止具10を用いてゼッケン51を生地(シャツ)50に取り付けるときの作用を説明する。
図9(a)に示すように、ゼッケン51の四隅部分には、取付用の孔が開けられている。ゼッケン51は、布、紙、合成樹脂など様々な材質で構成されており、柔軟で一定の厚みを有している。生地50は、織物、編物、不織布のように、綿、絹などの布、化学繊維、合成樹脂など様々な材質で構成されており、柔軟であり一定の厚みを有している。
【0044】
服飾用係止具10の突きボタン20と受けボタン30との間にゼッケン51と生地(以下、シャツという)50を配置する。突きボタン20の突起部23をゼッケン51に開けられた孔52に入れ係止部24を挿通させ、シャツ50の表面に配置する。
【0045】
図9(b)に示すように、突きボタン20の突起部23(係止部24)の先端をシャツ50の表面に当て、その状態で矢印(1)のように受けボタン30の貫通孔41に押し込む。受けボタン30の小径孔42及び段部44が撓み、係止部24が小径孔42を通過して、「パチン」という嵌り音及び嵌ったクリック感が得られる。
【0046】
このとき、受けボタン30は中心から表面33の一部にまで放射状に延びた4つの切り欠き溝45が形成され、切り欠き溝45間の段部44が撓み易くなるので、小径孔42よりも大経の係止部24を、段部を撓ませながら容易に挿通させて段部に係止することができる。このように、本発明では、受けボタン30の最も厚い部分にザグリ穴状の段部44が形成されるように小径孔42と大径孔43を形成し、且つ複数の切り欠き溝45を形成したことで、柔軟に曲がり係止部24を段部に容易に係止すると共に係止部24を受けボタン30の表面33から飛び出ないように大径孔43に収納する複合的な効果を有する。
【0047】
図9(c)に示すように、係止部24がシャツ50を挟んで段部44に係止される。突きボタン20の裏面22と受けボタン30の裏面32との間には、ゼッケン51及びシャツ50が重なった状態で挟まれる。これにより、ゼッケン51がシャツ50に留められる。
【0048】
また、係止部24が大径孔43に収納される。突きボタン20の裏面22から突起部23(係止部23)の先端に重ねられたシャツ50の裏面までの距離が、突きボタン20の裏面22から受けボタン30の表面33の最高部までの距離よりも小さい。換言すると、突起部23(係止部23)の先端に重なったシャツ50が、受けボタン30の表面33から突出せず、受けボタン30の表面33よりも内側に位置する。このため、シャツ50に取り付けた状態でも突起部23(係止部24)が競技者60の体61に接触することを防止できる。
【0049】
また、従来技術では、受けボタンが軟弱な板状であるため、受けボタンの縁が特に女性の下着等に引っ掛かった際に、容易に撓んで直ぐに受けボタンが取れてしまうということがあった。この点、本発明では、受けボタン30の裏面32が平面状で且つ表面33が湾曲したドーム状で引っ掛かりを逃がす形状であり、先細りの肉薄な周囲部分が生地(衣服、シャツ)50に密着するため下着に引っ掛かり難い。さらに、仮に受けボタン30の縁が下着に引っ掛かった場合、周囲の先細り部分が撓んでも、固定している中心部分は肉厚で撓み難く、しかも固定力が高いため、使用時に外れることを防止できる。
【0050】
次に服飾用係止具10を用いてゼッケン51を生地(シャツ)50に取り外すときの作用を説明する。
図10(a)に示すように、服飾用係止具10によってゼッケン51がシャツ50に留められている。シャツ50及びゼッケン51は、突きボタン20と受けボタン30とによって挟まれており、受けボタン30の裏面32はシャツ50に接触している。
【0051】
図10(b)に示すように、手62を服飾用係止具10に添えて、指63を受けボタン30の裏面とシャツ50との間に入れる。このとき、受けボタン30は、側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成されており、この先細り部分が指で曲げやすい柔軟部となっているので、この先細り部分(柔軟部)に厚みがなく容易に撓ませることができる。このため、係止された状態から受けボタン30とシャツ50の間に容易に指63を入れて受けボタン30を外すことができる。
【0052】
また、係止部24と突起部23との間に形成された傾斜部25によって、小径孔42と段部44を案内して容易に係止部23を小径孔42から抜くことができる。
【0053】
次に服飾用係止具10の異なる使用方法による作用を説明する。
図11に示すように、服飾用係止具10は、表側が真円形状のものと、楕円形状のものがある。楕円形状のものであれば、多数の文字、又は大きな絵柄を記載することができ、広告やPRとしても使用することができる。また、真円形状のものであれば、文字、絵柄も入り、小型にすることができる。
【0054】
また、服飾用係止具10は、ゼッケン留めとしてだけはなく、ホルダー70に複数の孔71を設けてこの孔71に留めることで飾りとして使用することもできる。ホルダー70にフック72を設けることで、鞄やズボンのベルトループに引っ掛けて持ちあることもでき、バラバラになるのを防止することもできる。さらには、服飾用係止具10をキャップやシューズ袋、鞄などに直接取り付けることで、記念の飾りとすることもできる。
【0055】
次に以上に述べた服飾用係止具10の作用、効果を説明する。
受けボタン30の貫通孔41には小径孔42と大径孔43の間に段部44が形成されており、係止部24の径D2よりも小径孔42の径D3が小径であるため、係止部24は段部44に係止される。このとき係止部24が大径孔43に収納され、突起部23(突起部23の先端に重なった生地50)が受けボタン30の表面33から突出せず、受けボタン30の表面33よりも内側に位置するので、生地50に取り付けた状態でも突起部23が体61等に接触することを防止できる。
【0056】
さらに、受けボタン30は、切り欠き溝45により切り欠き溝45間の段部44が撓み易くなるので、係止部25を、段部44を撓ませながら容易に挿通させて段部44に係止することができる。このとき、受けボタン30の第2本体部31は樹脂製であるため、切り欠き溝45により分断された段部44がしなり、係止部24が小径孔42を通過するといわゆる「パチン」という嵌り音が鳴り、係止された手応えを感じることができる。このように、係止部24が大経孔43に収納されると共に係止されたことを音と手応えで確認できるので、確実に係止部24を大経孔43に収納させて突起部23(係止部24)を受けボタン30の表面33よりも内側に位置させることができる。
【0057】
さらに、例えば生地50であるシャツにゼッケン51を留める場合、受けボタン30はゼッケン51の四隅を留める程度の比較的小さいサイズとなるが、このような小さいサイズであれば切り欠き溝45を十字状に4つ形成することで、切り欠き溝45間の段部に適度な弾性を付与することができる。このため、係止部24を受けボタン30に係止する際、適切なクリック感を得ることができ、確実に係止部24を大経孔43に収納させて突起部23(係止部24)を受けボタン30の表面33よりも内側に位置させることができる。
【0058】
さらに、受けボタン30の第2本体部31の最も厚い部分は、係止部25を収納する必要があるため従来技術の平板の受けボタンに比較して厚みが大きくなる。通常であれば突起部23の挿入時に受けボタン30が撓み難くなるところ、本発明では切り欠き溝45を第2本体部31の表面33の一部にまで形成したので、第2本体部31の表面33の一部まで容易に撓ませることができる。このため、係止部25を受けボタン30に容易に係止することができ、確実に係止部24を大経孔43に収納させて突起部23(係止部24)を受けボタン30の表面33よりも内側に位置させることができる。
【0059】
さらに、受けボタン30の段部44から第2本体部31の表面33までの厚みを大きくすることで、係止部24の収納空間を大きくすることができる。このため、係止部24を大径孔43に余裕をもって収納することができ、生地50に取り付けた状態でも突起部23が体61等に接触することを防止できる。さらに、段部44から第2本体部31の裏面32までの厚みは小さくなるので、係止部24を受けボタン30に係止する際、容易に段部44を撓ませることができる。このため、係止部24を受けボタン30に容易に係止することができ、確実に係止部24を大経孔43に収納させて突起部23(係止部24)を受けボタン30の表面33よりも内側に位置させることができる。
【0060】
さらに、受けボタン30の第2本体部31の最も厚い部分は、係止部24を収納する必要があるため従来技術の平板の受けボタンに比較して厚みが大きくなり、係止された状態から受けボタン30を外す際、通常であれは指63を生地50と受けボタン30の間に入れて受けボタン30を撓ませ難くなる。この点本発明において、受けボタン30は、側面視にて、中心から外周に近づくにつれて先細りに形成されて柔軟部が形成されているので、この先細りの柔軟部に厚みがなく容易に撓ませることができる。このため、係止された状態から受けボタン30と生地50の間に容易に指を入れて受けボタン30を外すことができる。
【0061】
さらに、受けボタン30の裏面32が平面状で且つ表面33が湾曲したドーム状で引っ掛かりを逃がす形状であり、先細りの肉薄な周囲部分が生地(衣服、シャツ)50に密着するため下着に引っ掛かり難い。さらに、仮に受けボタン30の縁が下着に引っ掛かった場合、周囲の先細り部分が撓んでも、固定している中心部分は肉厚で撓み難く、しかも固定力が高いため、使用時に外れることを防止できる。
【0062】
さらに、受けボタン30の材質は、ポリエチレンである。ポリエチレンはABS樹脂に比較して柔軟であるため、受けボタン30に係止部24を係止し易くすることができる。
【0063】
さらに、突起部23と係止部24との間にはテーパ状に形成された傾斜部25により係止部24の剛性が高くなるので、受けボタン30に係止された状態を維持し、使用中に受けボタン30から突きボタン20が簡単に外れることを防止することができる。
【0064】
さらに、突きボタン20は楕円形状で外側に膨らむように凸状となっているので、表面27の面積を大きくすることができる。このため、表面27に目視できるサイズの文字28を多く記載することができたり、絵柄を描いたり、表面の記載の自由度を向上させることができる。
【0065】
尚、実施例では、切り欠き溝45を平面視にて十字状に4つ形成したが、これに限定されず、切り欠き溝45は、1つ、2つ、3つ、5つ以上であってもよい。さらには、係止部24を段部44に係止できれば、切り欠き溝45はなくてもよい。
【0066】
また、実施例では、切り欠き溝45を小径孔42の内周面及び大径孔43の内周面から外径方向に向けて第2本体部31の表面33の一部にまで形成したが、これに限定されず、小径孔42の内周面から段部44の全部又は一部に形成してもよい。
【0067】
また、実施例では、段部44から第2本体部31の裏面32までの厚みT1は、段部44から第2本体部31の表面33までの厚みT2よりも小さいものとしたが、これに限定されず、厚みT1を厚みT2よりも大きくしてもよい。
【0068】
また、実施例では、ゼッケン51と生地50を重ねて服飾用係止具10で止めた状態で、突きボタン20の係止部24の先端に重なった生地50が、受けボタン30の表面33から突出しないように突起部23及び係止部24の長さを設定したが、これに限定されず、突きボタン20の裏面から係止部24の先端までの長さを、受けボタン30の裏面32から表面33の最高部までの長さよりも短く設定してもよい。また、突きボタン20を生地50を介して受けボタン30に係合した状態で、係止部24の端部に重なった生地50が受けボタン30の表面33から突出せずに係止部24が大径孔43に収納されれば、突起部23及び係止部24の長さはいずれであってもよい。
【0069】
また、受けボタン30は、側面視にて中心から外周に近づくにつれて先細りに形成したが、これに限定されず、側面視にて中心から外周まで平行に形成した平板であってもよい。また、受けボタン30は、平面視にて真円形状に形成したが、これに限定されず、平面視にて楕円、三角形、四角形など、多角形にしてもよい。
【0070】
また、実施例では、受けボタン30をポリエチレンとしたが、これに限定されず、ポリプロピレン、ABS、合成ゴム等の合成樹脂にしてもよく、柔軟性を有すれば他の一般的な材料でもよい。また、実施例では、突きボタン20をABSとしたが、これに限定されず、ポリプロピレン、ABS、合成ゴム等の合成樹脂にしてもよく、さらには、金属や木製にしてもよい。
【0071】
また、実施例では、傾斜部25をテーパ状としたが、これに限定されず、傾斜部25を無くしてもよく、さらには係止部23に爪を設けて係止部23がより抜け難くしてもよい。
【0072】
また、実施例では、突きボタン20を、平面視にて真円形状、楕円形状としたが、これに限定されず、平面視にて三角形、四角形、多角形、されには球状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の服飾用係止具は、シャツにゼッケンを留めるゼッケン留めに好適である。
【符号の説明】
【0074】
10…服飾用係止具(ゼッケン留め)、20…突きボタン、21…第1本体部、22…第1本体部の裏面(裏側)、23…突起部、24…係止部、25…傾斜部、27…第1本体部の表面、30…受けボタン、31…第2本体部、32…第2本体部の裏面、33…第2本体部、41…貫通孔、42…小径孔、43…大径孔、44…段部、45…切り欠き溝、50…生地(シャツ)、51…ゼッケン。