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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】虫捕獲器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/02 20060101AFI20230807BHJP
   A01M 1/10 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
A01M1/02 T
A01M1/02 A
A01M1/10 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019185434
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021058151
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉丸 勝郎
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-149973(JP,U)
【文献】特開2007-174964(JP,A)
【文献】実開昭58-192581(JP,U)
【文献】実開昭62-149972(JP,U)
【文献】特開2004-073144(JP,A)
【文献】特開2011-142876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に虫の導入孔が形成されるとともに、内部に虫の誘引剤が収容された捕獲容器と、
前記導入孔の上方で上下方向に延びるように設けられた衝突板とを備えた虫捕獲器において、
前記衝突板は、互いに交差する第1衝突板と第2衝突板とを含んでおり、
前記捕獲容器の上部の可視光透過率は前記衝突板の可視光透過率よりも低く設定されていることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項2】
請求項1に記載の虫捕獲器において、
前記捕獲容器は、上部が開放した透光性を有する容器本体と、当該容器本体の上部に取り付けられ、前記衝突板の可視光透過率よりも低い可視光透過率を持った蓋とを備え、
前記蓋に前記導入孔が形成されていることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項3】
請求項2に記載の虫捕獲器において、
前記蓋の色は、黒色、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかであることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の虫捕獲器において、
前記衝突板は自然光を透過する透光性を有していることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項5】
請求項4に記載の虫捕獲器において、
前記捕獲容器の上部の色は黒色であり、
前記衝突板は無色透明であることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1つに記載の虫捕獲器において、
前記衝突板を上方から覆うカバー部材が前記導入孔の上方に位置するように設けられ、
前記カバー部材は、黒色、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかであることを特徴とする虫捕獲器。
【請求項7】
請求項に記載の虫捕獲器において、
前記捕獲容器には、外方へ突出する縁部が設けられ、
前記衝突板の下部には、前記捕獲容器の前記縁部に係合する係合部が設けられ、
前記カバー部材は、前記衝突板の上部に接触していることを特徴とする虫捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスズメバチ等の虫を捕獲する虫捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハチ捕獲器としては、例えばカップ状の容器の内部にハチを誘引するための誘引液を収容しておき、その容器の上部にハチを導入する導入孔が形成された蓋を取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているハチ捕獲器の蓋には、2つの導入孔が互いに間隔をあけて形成されており、その上方には屋根が設けられている。また、特許文献2に開示されているハチ捕獲器の蓋には、1つの導入孔が形成されている。これら特許文献1、2の蓋は着色されている。
【0004】
また、特許文献3には捕虫器が開示されており、この捕虫器の容器の上部には、導入孔が形成された蓋が取り付けられ、さらにその蓋の上方には、上下方向に延びる2枚の矢倉板が互いに直交するように組み合わされた状態で設けられている。矢倉板の上下方向中間部には、誘引剤を収容した誘引剤容器が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4793984号公報
【文献】特許第6184682号公報
【文献】実公昭62-35336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ハチは人間に危害を加えるおそれのある害虫であることから、ハチ捕獲器によるハチの捕獲効果のさらなる向上が望まれている。この点、特許文献1、2では誘引剤が容器に収容されているので、ハチを誘引することができ、しかもハチが導入孔内に一旦侵入すれば再び外に逃げることは困難と考えられる。しかしながら本願発明者らの検討によれば、特許文献1、2の誘引剤に誘引されたハチのなかには、ハチ捕獲器の周囲を飛び回るものの、導入孔を見つけることができず、侵入を諦めて飛び去ってしまうハチもいることが明らかになった。そのような場合には、誘引剤の誘引効果だけでなく、ハチ捕獲器の構造そのものによってもハチの捕獲効果を向上させたいが、特許文献1、2では蓋に形成されている導入孔からハチが侵入することが前提なので、導入孔に侵入を試みないハチは捕獲器の上方をそのまま通過してしまい、捕獲できないことがある。
【0007】
一方、引用文献3の捕虫器は、導入孔の上方に矢倉板が設けられているので、導入孔の上方を水平方向に飛んできたハチを矢倉板に衝突させ、落下させることによって捕獲することが可能になる。ところが、引用文献3では、矢倉板に誘引剤容器を設け、この誘引剤による誘引効果によって虫を矢倉板に導くようにしているため、矢倉板に衝突せずに誘引剤容器に留まったハチは捕獲することができない。このように、せっかく誘引剤に誘引されたにもかかわらず、捕獲できないハチがいるものと考えられる。なお、引用文献3には、捕虫容器内に誘引剤を収容するという着想はなく、仮に捕虫容器内に誘引剤を収容した場合でも矢倉板に効果があるか否かは不明である。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、虫捕獲器の捕獲効果を向上させることにあり、特に誘引剤に誘引されて捕獲器に寄ってきたハチの捕獲効果を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、容器の上方に衝突板を設け、この衝突板の色と、容器の上部の色とに差を設けることにより、誘引剤による誘引効果だけでなく、色の差による高い誘引効果も得られるようにした。
【0010】
第1の発明は、上部に虫の導入孔が形成されるとともに、内部に虫の誘引剤が収容された捕獲容器と、前記導入孔の上方で上下方向に延びるように設けられた衝突板とを備えた虫捕獲器において、前記衝突板は、互いに交差する第1衝突板と第2衝突板とを含んでおり、前記捕獲容器の上部の可視光透過率は前記衝突板の可視光透過率よりも低く設定されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、捕獲容器の内部に収容された誘引剤により、捕獲容器の周囲の虫が誘引されて導入孔から捕獲容器に入って捕獲されるとともに、捕獲容器の周囲を飛ぶ虫が衝突板に衝突して落下した時に導入孔から捕獲容器に入って捕獲される。捕獲容器上部の可視光透過率を低くしたことにより、誘引剤に誘引された虫が導入孔を見つけやすくなり、導入孔から容器内に侵入する虫を増やすことができる。また、誘引剤に誘引された虫が導入孔を見つけることができない場合であっても、本発明では、捕獲容器の上部の可視光透過率を衝突板の可視光透過率よりも低くしたので、衝突板の方が捕獲容器の上部に比べて相対的に明るく見え、前記虫が明るい方、即ち衝突板の方へ向けて飛びやすくなる。これにより、虫が衝突板に衝突しやすくなり、衝突板に衝突して落下した虫が導入孔から捕獲容器に入って捕獲される。更には、誘引剤の誘引効果とは無関係に周囲を飛び回っている虫であっても、上記同様に衝突板の方へ向けて飛びやすくなるので、衝突板に衝突して落下し、導入孔から捕獲容器に入って捕獲される。このように、誘引剤による誘引効果と、衝突板と容器の上部との色の差による誘引効果も生じ、捕獲効果が向上する。
【0012】
また、第1衝突板と第2衝突板とが異なる方向を向くことになるので、異なる方向から飛んでくる虫が衝突板に衝突する確率を高めることができる。
【0013】
第2の発明は、前記捕獲容器は、上部が開放した透光性を有する容器本体と、当該容器本体の上部に取り付けられ、前記衝突板の可視光透過率よりも低い可視光透過率を持った蓋とを備え、前記蓋に前記導入孔が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、容器本体が透光性を有しているので、当該容器内に捕獲された虫は明るい方(外向き)に逃げようとするものの、可視光透過率が低い蓋の方には向かわない。これにより、容器内に一旦捕獲された虫が、蓋に形成された導入孔から逃げ出してしまう可能性を減らすことができる。また、容器本体が透光性を有しているので、誘引剤の有無や捕獲された虫を外部から確認することが可能になる。そして、蓋が容器本体とは別体であるので、蓋の色を容器本体の色とは変えて、衝突板の可視光透過率よりも低い可視光透過率を持った色にすることが容易に行える。
【0015】
第3の発明は、前記蓋の色は、黒色、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかであることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、蓋の可視光透過率が低くなり、衝突板との明るさの差がより一層明確になるので、捕獲容器の周囲を飛ぶ虫が衝突板に衝突しやすくなる。
【0017】
第4の発明は、前記衝突板は自然光を透過する透光性を有していることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、衝突板の可視光透過率が高くなるので、捕獲容器の上部との明るさの差がより一層明確になり、捕獲容器の周囲を飛ぶ虫が衝突板に衝突しやすくなる。
【0019】
第5の発明は、前記捕獲容器の上部の色は黒色であり、前記衝突板は無色透明であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、捕獲容器の上部と衝突板との色の差及び明るさの差がより一層明確になり、捕獲容器の周囲を飛ぶ虫が衝突板に衝突しやすくなる
【0021】
の発明は、前記衝突板を上方から覆うカバー部材が前記導入孔の上方に位置するように設けられ、前記カバー部材は、黒色、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかであることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、カバー部材が導入孔の上方に配置されるので、カバー部材が屋根として機能し、例えば雨等が捕獲容器の内部に入りにくくなる。
【0023】
の発明は、前記捕獲容器には、外方へ突出する縁部が設けられ、前記衝突板の下部には、前記捕獲容器の前記縁部に係合する係合部が設けられ、前記カバー部材は、前記衝突板の上部に接触していることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、衝突板の係合部を捕獲容器に係合させることによって衝突板を捕獲容器に取り付けることができる。この状態で、カバー部材が衝突板の上部に接触しているので、衝突板が風等の影響によって倒れにくくなる。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、虫の誘引剤が収容された捕獲容器の導入孔の上方に衝突板を設け、捕獲容器の上部の可視光透過率を衝突板の可視光透過率よりも低くしたので、誘引剤による誘引効果だけでなく、色による高い誘引効果も得ることができ、虫の捕獲効果を向上させることができる。
【0026】
また、互いに交差する第1衝突板および第2衝突板を備えているので、虫の衝突板に衝突する確率を高めることができる。
【0027】
第2の発明によれば、容器本体と蓋とを別体にしたので、容器本体に透光性を持たせながら、蓋の色を自由に設定することができ、蓋の色を衝突板の可視光透過率よりも低い可視光透過率を持った色にすることができる。
【0028】
第3の発明によれば、蓋と衝突板との明るさの差がより一層明確になるので、虫の捕獲効果がより一層向上する。
【0029】
第4の発明によれば、衝突板が透光性を有しているので、蓋と衝突板との明るさの差がより一層明確になり、虫の捕獲効果がより一層向上する。
【0030】
第5の発明によれば、捕獲容器の上部の色を黒色、衝突板を無色透明とすることで、蓋と衝突板との色の差および明るさの差がより一層明確になるので、虫の捕獲効果がより一層向上する
【0031】
の発明は、雨等が捕獲容器の内部に入るのを抑制するカバー部材を設けた場合に、虫の衝突板への衝突を阻害しないようにすることができ、捕獲効果の低下を回避できる。
【0032】
の発明は、カバー部材によって衝突板の倒れを抑制することができるので、所期の捕獲効果を長期間に亘って得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係るハチ捕獲器を上方から見た斜視図である。
図2】ハチ捕獲器の正面図である。
図3】ハチ捕獲器の左側面図である。
図4】ハチ捕獲器の平面図である。
図5図2におけるV-V線断面図である。
図6】ハチ捕獲器の分解斜視図である。
図7】第1衝突板の側面図である。
図8】第2衝突板の側面図である。
図9】カバー部材の展開図である。
図10】組み立て途中の状態にあるハチ捕獲器の斜視図である。
図11】各部材を箱に収容する方法を説明する斜視図である。
図12】各部材を箱に収容した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0035】
図1は、本発明の虫捕獲器の一実施形態に係る、ハチ捕獲器1を示す斜視図である。ハチ捕獲器1は、捕獲容器10と、第1衝突板20と、第2衝突板30と、カバー部材40とを備えている。このハチ捕獲器1は、ハチを捕獲容器10内に捕獲して駆除するためのものであり、例えば木や竿等に吊り下げて使用することや、台等に置いて使用することができるように構成されている。第1衝突板20および第2衝突板30は、後述するようにハチの捕獲率を向上させるための部材であり、本実施形態では衝突板が第1衝突板20および第2衝突板30を含んでいるが、これに限らず、一方の衝突板のみ含んでいてもよい。カバー部材40は捕獲容器10を覆う部材であり、必須なものではなく、省略することもできる。ハチ捕獲器1が対象とするハチは、特に限定されるものではないが、例えばスズメバチ(オオスズメバチ)等を挙げることができる。
【0036】
この実施形態の説明では、各図に示すように、ハチ捕獲器1の左および右を定義するとともに、手前側および奥側を定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用状態や製造、組み立て、梱包、保管時の向きを限定するものではない。ハチ捕獲器1のどちら側が右であってもよいし、左であってもよい。また、ハチ捕獲器1の手前側を前側と呼び、奥側を後側と呼ぶこともできる。
【0037】
(捕獲容器10の構成)
図5図6に示すように、捕獲容器10は、上方に開放したカップ状の容器本体11と、容器本体11の上部に取り付けられる蓋12とを備えており、捕獲容器10の上部は蓋12で構成されている。容器本体11および蓋12は、例えば弾性変形可能な樹脂材で構成されている。この樹脂材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート等を挙げることができる。容器本体11および蓋12は、樹脂製シート材を真空成形することによって得られる。樹脂製シート材の厚みは、例えば、0.2mm以上1.2mm以下の範囲のものが好ましいが、より好ましくは、0.3mm以上0.8mm以下である。樹脂製シートを熱プレス成形することによって容器本体11および蓋12を得てもよいし、樹脂材を射出成形することによって容器本体11および蓋12を得てもよい。なお、容器本体11および蓋12は、耐候性や経済性を考慮した場合には樹脂製とするのが好ましいが、これに限れられるものではなく、樹脂以外を使用して形成してもよい。
【0038】
容器本体11を構成する樹脂材の可視光透過率は、蓋12を構成する樹脂材の可視光透過率よりも高く設定されている。可視光透過率は、従来から周知の手法で測定することができ、例えばJIS K7375等に準拠した方法で測定することができる。また、可視光透過率は、屋外散乱光下において約400nm~約700nmの波長の光が透過する割合とすることができ、例えば分光光度計を用いて測定することができる。なお、波長が約500nmの光で測定した値を用いると、平均的な可視光透過率とすることができる。上記いずれの測定方法で測定しても、容器本体11を構成する樹脂材の可視光透過率は、例えば30%以上に設定することができ、また、蓋12を構成する樹脂材の可視光透過率は、20%以下に設定することができる。蓋12を構成する樹脂材の可視光透過率は、10%以下がより好ましい。
【0039】
この実施形態では、容器本体11を構成する樹脂材は、例えば薄く着色された半透明であり、太陽光の下では内部の誘引液13の液面高さやハチの有無を見分けることが可能になっている。つまり、容器本体11を構成する樹脂材は、自然光を透過する性質をもっている。また、容器本体11を構成する樹脂材は、薄く着色された透明であってもよいし、無色透明であってもよい。なお、容器本体11を構成する樹脂材と、蓋12を構成する樹脂材とは同じ色であってもよい。
【0040】
蓋12を構成する樹脂材は、例えば黒色に着色されており、蓋12を通して容器本体11の内部を視認することができないようになっている。蓋12を黒色にすることにより、捕獲容器10の上部の色が黒色になる。蓋12を構成する樹脂材は、黒色以外にも、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかに着色されていてもよい。蓋12は単色であってもよいし、複数の色に塗り分けられたものであってもよい。
【0041】
容器本体11の底壁部11bは略円形状とされている。容器本体11の周壁部11cは、底壁部11bの周縁部から上方へ延びている。周壁部11bの上端部の全体が略円形に開口している。周壁部11cの水平方向の断面は略円形状とされており、その内径は上部へ行くほど大きく、即ち下部へ行くほど小さくなるように設定されている。捕獲容器10の容積は特に限定されるものではないが、例えばオオスズメバチが10匹以上収容可能な容積が好ましく、例えば300ml以上、500ml以上の容積とすることができる。
【0042】
また、捕獲容器10は、設置のしやすさや運びやすさを考慮した大きさとされており、例えば外径は100mm以内、高さは200mm以下に設定することができる。容器本体11の周壁部11cの上端部には、径方向外方へ突出して周方向に連続して延びる突条部11aが形成されている。突条部11aは、容器本体11の径方向外方へ突出する縁部である。捕獲容器10の内部には、ハチの誘引剤13が収容されている。誘引剤13は後述するが液体である。誘引剤13の液面は、容器本体11の上下方向中央部または中央部よりも上に設定することができる。もっとも、本発明の虫捕獲器はハチ以外の虫を捕獲するために用いることもでき、対象の虫に合わせて導入孔12aの直径を適宜設定できる。捕獲容器10の容積や径も同様に対象の虫に合わせて設定できる。
【0043】
蓋12は、容器本体11の上端部の開口を閉塞するための部材であり、平面視で略円形とされている。蓋12の中央部には、ハチを捕獲容器10の内部に導入するための導入孔12aが形成されている。蓋12が捕獲容器10の上部に位置していることから、導入孔12aも捕獲容器10の上部に位置することになる。導入孔12aの形状は、例えば円形にすることができるが、これに限らず、例えば楕円形や多角形状であってもよい。導入孔12aの数は、本実施形態では1つであるが、2つ以上であってもよい。導入孔12aを2つ以上設ける場合には、導入孔12a同士を離して設けることができ、捕獲容器10の中央部以外の部分に形成することもできる。
【0044】
導入孔12aの直径は20mm以上35mm以下に設定することができる。導入孔12aの直径が20mm未満であると、オオスズメバチ等の大型のハチが導入孔12aに入り難くなり、捕獲率が低下する。一方、導入孔12aの直径が35mmよりも大きくなると、ハチ以外のチョウ、蛾、甲虫類が侵入してしまう可能性が高まるので、導入孔12aの直径は35mm以下が好ましい。したがって、導入孔12aの直径を20mm以上35mm以下に設定することで、大型のハチの捕獲率を高めることができる。導入孔12aの直径は30mm以下に設定するのがより好ましい。
【0045】
導入孔12aの周縁部には、下方へ突出する環状部12dが形成されている。この環状部12dの上下方向の寸法は、蓋12を構成する板材の厚み寸法よりも長く設定されている。環状部12dの上下方向の寸法は、例えば1mm以上に設定することができ、上限は20mmに設定することができる。環状部12dは省略してもよい。
【0046】
導入孔12aの周縁部と誘引剤13の液面とは所定寸法以上離れている。この所定寸法は、例えばオオスズメバチが捕獲されて誘引剤13の液面に浮かんでいるときにオオスズメバチの手や脚が導入孔12aの周縁部に届き難くなるように設定されており、例えば30mm以上である。上記所定寸法は、40mm以上に設定することもできる。
【0047】
蓋12における導入孔12aの周囲には、傾斜面12bが形成されている。傾斜面12bは導入孔12aの周縁部が最も低く、導入孔12aから径方向外方へ離れるに従って上に位置するように傾斜しており、導入孔12aの周方向に連続している。傾斜面12bは、当該傾斜面12b上のハチを導入孔12aに導くための面である。傾斜面12bの傾斜角度は、傾斜面12b上のハチが導入孔12bに向かって滑り落ちやすくなるように設定されており、例えば20度以上に設定することができ、より好ましいのは30度以上である。なお、傾斜面12bを設けることなく、水平面を設けてもよい。
【0048】
蓋12の周縁部は水平方向へ張り出すように形成されており、その周縁部には容器本体11の突条部11aを囲むように延びる環状板部12cが形成されている。この環状板部12cは容器本体11の突条部11aの外側に嵌合するように形成されている。環状板部12cを容器本体11の突条部11aに嵌合させることにより、蓋12が容器本体11に対して着脱可能に取り付けられる。
【0049】
(第1衝突板20および第2衝突板30の構成)
図10等に示すように、第1衝突板20および第2衝突板30は、捕獲容器10の導入孔12aの上方で上下方向に延びるように設けられており、主に水平方向に飛ぶハチを衝突させるための部材である。第1衝突板20の両面、第2衝突板30の両面がハチ衝突面となっている。第1衝突板20および第2衝突板30は、ともに樹脂材で構成されており、材質は捕獲容器10の材質と同じにすることができる。第1衝突板20および第2衝突板30の厚みは、容器本体11や蓋12を構成する樹脂製シートの厚みよりも厚く設定されており、これにより、第1衝突板20および第2衝突板30は、上記樹脂製シートに比べて高剛性で、変形しにくくなっているが、後述する箱100への収容時には湾曲させることが可能な柔軟性を有している。第1衝突板20および第2衝突板30は、箱100への収容時に湾曲させた後、箱100から取り出して外力を除くと略平坦に復元する弾性を有している。第1衝突板20および第2衝突板30の材質は、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0050】
捕獲容器10の上部(蓋12)の可視光透過率は、第1衝突板20および第2衝突板30の可視光透過率よりも低く設定されている。具体的には、蓋12を構成する樹脂材の色は可視光をほとんど透過させない色である一方、第1衝突板20および第2衝突板30を構成する樹脂材は自然光を透過する透光性を有している。第1衝突板20および第2衝突板30は、無色透明とされているが、例えば黄色等によって薄く着色されていてもよい。第1衝突板20および第2衝突板30は、向こう側を視認可能な視認性を有している。第1衝突板20および第2衝突板30は、薄く着色された半透明であってもよいし、乳白色であってもよい。
【0051】
第1衝突板20は、捕獲容器10の手前側から奥側へ向けて延びており、第1衝突板20の中央部が最も高く、手前側へ行くほどおよび奥側へ行くほど低くなるように山型に形成されている。第1衝突板20の長手方向は、手前側から奥側へ向かう方向である。図7に示すように、第1衝突板20の長手方向中央部には、第1スリット21が形成されている。第1スリット21の上部は第1衝突板20の上縁部で開放されており、第1スリット21は、第1衝突板20の上縁部から下方へ向けて延びている。第1スリット21は波型をなしているが、直線状に延びる形状であってもよい。第1スリット21の下部は、第1衝突板20の上下方向中央部近傍に位置している。
【0052】
第1衝突板20の下部の手前側および奥側には、それぞれ、下方へ突出する第1フック部(係合部)22、22が形成されている。第1フック部22、22は上方に開放するように形成されており、捕獲容器10の縁部である容器本体11の突条部11aに対して下方から引っかかるようにして係合する部分である。
【0053】
例えば図10に示すように、第2衝突板30は、捕獲容器10の右側から左側へ向けて延びている。したがって、第1衝突板20と第2衝突板30とは互いに交差するように配置されることになる。この実施形態では、第1衝突板20と第2衝突板30とが互いに直交しているが、これに限らず、平面視で第1衝突板20と第2衝突板30とのなす角度が70~80度程度であってもよい。
【0054】
第2衝突板30は、左右方向中央部が最も高く、右側へ行くほどおよび左側へ行くほど低くなるように山型に形成されている。第2衝突板30の長手方向は左右方向である。図8に示すように、第2衝突板30の左右方向中央部には、第2スリット31が形成されている。第3スリット31の下部は第2衝突板30の下縁部で開放されており、第2スリット31は、第2衝突板30の下縁部から上方へ向けて延びている。第2スリット31は波型をなしているが、直線状に延びる形状であってもよい。第2スリット31の上部は、第2衝突板30の上下方向中央部近傍に位置している。
【0055】
第2衝突板30の下部の右側および左側には、それぞれ、下方へ突出する第2フック部(係合部)32、32が形成されている。第2フック部32、32は上方に開放するように形成されており、捕獲容器10の縁部である容器本体11の突条部11aに対して下方から引っかかるようにして係合する部分である。
【0056】
第1衝突板20および第2衝突板30は前述のように柔軟性を有しているので、フック部22またはフック部32を容器本体11の突条部11aに係合させる際には、当該衝突板を適宜弾性変形させてフック部を突条部11aに引っかけることにより、係合させることができる。
【0057】
なお本実施形態では、衝突板20、30は容器本体11に下方から引っかかるように係合させる構成としたが、衝突板20、30は容器本体11に対して相対移動しないように固定されていれば良く、必ずしも容器本体11自体に係合していなくても良い。たとえば、衝突板20、30を、蓋12の上部に係合させる構成とすることができる。
【0058】
第2衝突板30の上部には、左右方向中央部に吊り下げ板部33が上方へ突出するように設けられている。吊り下げ板部33には、貫通孔33aが形成されている。貫通孔33aには、図示しないが紐や糸等を通すことができるようになっており、紐や糸により、ハチ捕獲器1を木の枝や竿のような部材に吊り下げて使用することができる。このように第2衝突板30に吊り下げ板部33を設けて捕獲容器10の重さを支えるので、後述のカバー部材40には捕獲容器10の重さがかからない構造となっている。なお、これに代えて、カバー部材40の頂部に吊り下げ板部を設け、カバー部材40によって捕獲容器10の重さを支える構成としても良い。ただし本実施形態のカバー部材40は柔軟なシートで構成されているため、仮にこのカバー部材40に捕獲容器10の重さがかかると、当該カバー部材40が上下に引き伸ばされるように歪んでしまうおそれがある。この点、上記のように本実施形態ではカバー部材40に捕獲容器10の重さがかからない構造なので、当該カバー部材40が捕獲容器10の重さで歪むことが無い。
【0059】
第1衝突板20と第2衝突板30とは組み合わされて一体化されている。すなわち、第1衝突板20の第1スリット21にその上方から第2衝突板30の第2スリット31が形成された部分を差し込むとともに、第2衝突板30の第2スリット31にその下方から第1衝突板20の第1スリット21が形成された部分を差し込む。すると、第1スリット21に、第2衝突板30における第2スリット31よりも上側の部分が差し込まれるとともに、第2スリット21に、第1衝突板20における第1スリット21よりも下側の部分が差し込まれる。これにより、図10に示すように、第1衝突板20と第2衝突板30とが互いに交差した状態で一体化される。
【0060】
第1衝突板20の下部および第2衝突板30の下部は、蓋12の上面に当接するようになっている。これにより、第1衝突板20および第2衝突板30の捕獲容器10に対する上下方向の位置決めが行われる。第1衝突板20および第2衝突板30の上部は、捕獲容器10の蓋12から80mm以上離れている。第1衝突板20および第2衝突板30の上部と、蓋12との上下方向の離間距離を80mm以上確保することで、第1衝突板20および第2衝突板30の上下方向の寸法を十分に確保することができ、ハチの衝突率を高めることができる。第1衝突板20および第2衝突板30の上部と、蓋12との上下方向の離間距離は、例えば100mm以上とするのがより好ましい。この実施形態では、第1衝突板20の上部および第2衝突板30の上部を同じ高さにしているが、これに限らす、異なる高さであってもよい。
【0061】
また、第1衝突板20の幅方向の最大寸法(手前側の端部から奥側の端部までの最大寸法)は、捕獲容器10の外径よりも長く設定されている。同様に、第2衝突板30の幅方向の最大寸法(右端部から左端部までの最大寸法)は、捕獲容器10の外径よりも長く設定されている。この実施形態では、第1衝突板20の幅方向の最大寸法と、第2衝突板30の幅方向の最大寸法とを同じにしているが、これに限らず、異なっていてもよい。第1衝突板20および第2衝突板30を捕獲容器10に取り付ける際には、第1フック部22および第2フック部32を捕獲容器10に係合させているだけなので、第1衝突板20および第2衝突板30は捕獲容器10に対して着脱可能となっている。
【0062】
(カバー部材40の構成)
カバー部材40は、第1衝突板20および第2衝突板30を上方から覆う部材である。このカバー部材40は、蓋12に形成されている導入孔12aの上方に位置するように設けられており、導入孔12aも上方から覆っている。これにより、雨等が導入孔12aから捕獲容器10に侵入するのが抑制される。カバー部材40は、樹脂材で構成されており、材質は第1衝突板20や第2衝突板30の材質と同じにすることができる。カバー部材40を構成する樹脂材の色は、蓋12と同じにすることができ、例えば、黒色、茶色、青色、紺色、緑色のいずれかとすることができる。カバー部材40を無色透明にしてもよい。
【0063】
カバー部材40は、図1等に示すように環状に湾曲した状態で捕獲容器10に取り付けられる。一方、図9の展開図に示すように、平坦なシート状に展開することができる。カバー部材40の長手方向中央部には、容器本体11がその下方から挿入される容器挿入孔41が形成されている。容器挿入孔41の形状は、容器本体11の上下方向中間部の外形状と略一致するように形成されており、この実施形態では円形である。例えば図5図10に示すように、容器本体11を容器挿入孔41に挿入した状態で、容器本体11の上部が容器挿入孔41よりも上に位置するように、容器挿入孔41の形状および内径が設定されている。
【0064】
図9に示すように、カバー部材40における容器挿入孔41の両側には、それぞれ、開口部42が形成されている。また、カバー部材40における長手方向一端部近傍には、差し込み片43、43が形成され、一方、カバー部材40における長手方向他端部近傍には、差し込み片43、43が差し込まれる係合孔44、44が形成されている。さらに、カバー部材40における長手方向一端部近傍には、差し込み片43、43の間に、第2衝突板30の吊り下げ板部33が挿通される挿通孔45が形成されている。
【0065】
カバー部材40は、図1等に示すようにして捕獲容器10に取り付けられる。すなわち、カバー部材40の容器挿入孔41に容器本体11を挿入した後(図10に示す)、カバー部材40の長手方向両側を上方へ湾曲させて、第2衝突板30の吊り下げ板部33を挿通孔45に挿通させる。そして、差し込み片43、43を係合孔44、44に差し込むと、差し込み片43、43が係合孔44、44の周縁部に係合してカバー部材40が環状になる。この状態で、カバー部材40の開口部42、42がそれぞれハチ捕獲器1の手前側および奥側に位置することになる。開口部42、42を通して第2衝突板30を視認することが可能になっている。開口部42、42の大きさは、第2衝突板30の大部分を視認することができるように大型の開口部となっている。
【0066】
また、捕獲容器10に取り付けられたカバー部材40の左側および右側には、それぞれ当該カバー部材40の縁部によって側方開口部4、4が形成される。側方開口部4、4を通して第1衝突板20を視認することが可能になっている。側方開口部4、4の大きさは、第1衝突板20の大部分を視認することができるように大型の開口部となっている。
【0067】
また、カバー部材40は、捕獲容器10に取り付けられて環状になった状態で、第1衝突板20の上部および第2衝突板30の上部にそれぞれ接触している。
【0068】
このように、大型の開口部42および側方開口部4を設けたので、カバー部材40で導入孔12aを覆っているにもかかわらず誘引剤13の匂いの拡散性は良好であり、ハチを効率よく誘引することができる。そして、カバー部材40および蓋12の可視光透過率を低くし、第1衝突板20および第2衝突板30の可視光透過率を高くすることで、開口部42または側方開口部4を介してカバー部材40内部を覗き込んだハチには、当該カバー部材40と蓋12との間の空間が、通り抜け可能なトンネルのように感じられ、かつ当該空間の向こう側が明るく見える。このため、ハチは衝突板20、30に向かって飛翔し易く、結果的に衝突板20または30に衝突しやすくなるものと考えられる。衝突板20または30に衝突したハチは落下し、傾斜面12bを滑り落ちて導入孔12bを介して捕獲容器10内の誘引剤13の水面に落下し捕獲される。
【0069】
(ハチ捕獲器1の収容方法)
ハチ捕獲器1は、図11および図12に示すような箱100に収容された状態で小売店まで搬送されて店頭に陳列される。箱100は、例えばボール紙のような紙製の箱である。箱100の幅Wは捕獲容器10の蓋12の外径よりも若干広めに設定されている。箱100は、上方から見たときの4辺すべてが同じ寸法となるように形成することができるが、異なる長さの辺を有していてもよく、上方から見たときに長方形であってもよい。
【0070】
図11に示すように、ハチ捕獲器1は、箱100に収容する前、捕獲容器10と、第1衝突板20と、第2衝突板30と、カバー部材40とに分解されている。箱100に捕獲容器10を収容する際に、第1衝突板20および第2衝突板30を捕獲容器10と箱100との間で湾曲させて当該箱100に収容するとともに、カバー部材40も捕獲容器10と箱100との間で湾曲させて当該箱100に収容する。
【0071】
具体的には、カバー部材40を、捕獲容器10を囲むように円筒に近い形状となるまで湾曲させるとともに、湾曲させた際の外径を箱100の幅Wと略等しいか、幅Wよりも若干小さくする。湾曲させたカバー部材40の内方に、第1衝突板20および第2衝突板30を配置する。このとき、第1衝突板20および第2衝突板30を、捕獲容器10を囲むように円弧状に湾曲させる。第1衝突板20または第2衝突板30の一方が省略されている場合には、他方の衝突板のみ箱100に収容すればよい。また、カバー部材40が省略されている場合には、第1衝突板20および第2衝突板30を箱100に収容すればよい。
【0072】
カバー部材40を箱100に収容すると、カバー部材40は復元力によって箱100の内面に接触するまで拡径する。また、第1衝突板20および第2衝突板30も復元力によって平坦になろうとするので、カバー部材40に接触したり、捕獲容器10の外面に接触することになる。したがって、カバー部材40、第1衝突板20および第2衝突板30は、箱100の内部においてがたつくことなく、収容される。
【0073】
この実施形態では、第1衝突板20の長手方向寸法は、カバー部材40の長手方向の寸法の半分未満とされており、また、第2衝突板30の長手方向寸法も、カバー部材40の長手方向の寸法の半分未満とされている。これにより、湾曲させた第1衝突板20と第2衝突板30とを捕獲容器10の周方向に間隔をあけた状態で箱100に収容することができるので、第1衝突板20および第2衝突板30を厚み方向に重ねずに済む。なお、図示しないが、第1衝突板20と第2衝突板30とを厚み方向に重ねかつ湾曲させて箱100に収容してもよい。
【0074】
また、第1衝突板20および第2衝突板30は、蓋12よりも下に収容する。これにより、容器本体11の外面と箱100との間に形成されるスペースを、第1衝突板20および第2衝突板30の収容スペースとして有効に活用することができる。また、第1衝突板20および第2衝突板30と、カバー部材40とは厚み方向に重ねかつ湾曲させて箱100に収容する。なお、第1衝突板20および第2衝突板30は、カバー部材40と箱100の内面との間に収容してもよい。
【0075】
捕獲容器10と、第1衝突板20と、第2衝突板30と、カバー部材40とを箱100に収容する順番は特に限定されるものではなく、例えば、カバー部材40を湾曲させて箱100に収容した後、第1衝突板20および第2衝突板30を湾曲させて箱100に収容し、その後、捕獲容器10を収容してもよい。また、捕獲容器10を箱100に収容した後、カバー部材40を湾曲させて箱100に収容し、その後、第1衝突板20および第2衝突板30を湾曲させて箱100に収容してもよい。また、捕獲容器10を箱100に収容した後、第1衝突板20および第2衝突板30を湾曲させて箱100に収容し、その後、カバー部材40を湾曲させて箱100に収容してもよい。また、第1衝突板20および第2衝突板30を湾曲させて箱100に収容した後、カバー部材40を湾曲させて箱100に収容し、その後、捕獲容器10を箱100に収容してもよい。また、第1衝突板20および第2衝突板30を湾曲させて箱100に収容した後、捕獲容器10を箱100に収容し、その後、カバー部材40を箱100に収容してもよい。
【0076】
また、捕獲容器10と、第1衝突板20と、第2衝突板30と、カバー部材40とを箱100の外で一体化した後、まとめて箱100に収容するようにしてもよい。なお、誘引剤13は、密封された袋等に収容された状態で容器本体11の内部に入れておくことができ、ハチ捕獲器1の使用開始前に袋から容器本体11に入れるようにすればよい。
【0077】
なお、第1衝突板20、第2衝突板30、およびカバー部材40の全部または一部を、捕獲容器10の内部に収容させても良い。
【0078】
(誘引剤13の構成)
誘引剤13は、ハチを誘引する作用を持った液剤であり、ハチを捕獲するための液剤であることから、ハチ捕獲液と呼ぶこともできる。特に本実施形態の誘引剤13は、自然界でハチを誘引する樹液の発酵臭を人工的に再現したものであり、人工樹液とも呼べるものである。誘引剤13は、人工樹液の成分として、糖と、酵母と、アルコールと、水とを含んでいる。更に本実施形態の誘引剤13は、脱出防止成分として食品添加系界面活性剤(非イオン系界面活性剤)を含んでいる。
【0079】
糖は、例えば果糖ブドウ糖液糖を挙げることができる。果糖ブドウ糖液糖の含有量は、例えば1w/v%以上75w/v%以下とすることができる。酵母は、例えばドライイーストを挙げることができる。酵母の含有量は、例えば0.001質量%以上5質量%以下とすることができる。酵母を加えていることにより、糖が酵母によってアルコール発酵されてアルコールと二酸化炭素を発生する。
【0080】
アルコールは、エタノール、ブタン-2,3-ジオールおよびグリセリンのうち、少なくとも1つを使用することができ、これらのうち、任意の複数種を混合して用いることもできる。アルコールの含有量は、例えば0.01w/v%以上15w/v%以下とすることができる。なお、アルコールは酵母の発酵により生成するので省略することができるが、アルコールを添加しておけば発酵の初期段階でも誘引性を良好に発揮できる。
【0081】
誘引剤13には、酢酸が含まれていてもよい。酢酸の含有量は、例えば0.005w/v%以上0.5w/v%以下とすることができる。また、誘引剤13には、乳酸が含まれていてもよい。乳酸の含有量は、例えば0.005w/v%以上5w/v%以下とすることができる。なお、酢酸および乳酸は、アルコールとエステルを形成するため、これらが同時に配合されていると長期保存により組成が変動する可能性がある。このため、長期の保存性の観点からは、酢酸および乳酸、またはアルコールの少なくともどちらかを省略した方が好ましい。
【0082】
また、誘引剤13には、プロピオン酸ナトリウムが含まれていてもよい。プロピオン酸ナトリウムの含有量は、例えば0.005w/v%以上0.5w/v%以下とすることができる。
【0083】
脱出防止成分として人工樹液に添加する界面活性剤は、酵母へ悪影響を与えないという点で非イオン界面活性剤が好ましく、わけても本実施形態のように食品添加系界面活性剤が好ましい。食品添加系界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラートおよびポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートのうち、少なくとも1つを使用することができ、これらのうち、任意の複数種を混合して用いることもできる。食品添加系界面活性剤の含有量は、例えば0.001w/v%以上1.0w/v%以下とすることができる。界面活性剤は食品添加系のものであるため、酵母の発酵に悪影響を与えにくく、使用開始時点で酵母による発酵を素早く立ち上げることが可能になるとともに、長期間に亘って高い誘引効果が得られる。食品添加系界面活性剤としては、例えば、東京化成工業株式会社製のTween20、Tween80等を使用することができる。
【0084】
(誘引液13の発酵性)
誘引剤13は酵母としてドライイーストを含んでいるので、酵母の作用によって発酵する。発酵によって生じた臭気等によってハチの誘引効果を高めることができる。誘引剤処方1、2を表1、表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
誘引剤13は、先に果糖およびブドウ糖を水に溶かし、その後、エタノール、酢酸、乳酸、食品添加系界面活性剤、ドライイーストを加えることによって得られる。表1に示す誘引剤処方1と、表2に示す誘引剤処方2とは、ドライイーストが異なっている。誘引剤処方1のドライイーストは、共立食品 徳用ドライイースト3g入り(共立ドライイーストという)であり、また、誘引剤処方2のドライイーストは、日清食品 日清スーパーカメリヤ真空パウチ3g入り(日清ドライイーストという)である。
【0088】
誘引液13の発酵確認試験方法について説明する。供試剤20gにドライイースト100mgを加えて誘引液13を得た後、すぐに10.2Lの容器に入れる。誘引液13を容器に入れた直後から時間の測定を開始する。容器は、内径20cm×30cmのガラスシリンダーの上下をガラス板で覆って密閉状態にしたものである。試験時の雰囲気温度は24.5℃、湿度は47%であった。一定時間経過後に、容器内の二酸化酸素濃度を測定した。測定機器は、GM70 VAISALA社製であり、起動後、15分以上経過してから使用した。なお、ブランク空気中の二酸化炭素濃度は220~300ppm程度であった。
【0089】
【表3】
【0090】
表3に、誘引剤処方1の二酸化炭素濃度、誘引剤処方1におけるTween20を含有しない場合の二酸化炭素濃度、誘引剤処方2の二酸化炭素濃度、誘引剤処方2におけるTween20を含有しない処方の二酸化炭素濃度を、それぞれ1時間経過後、24時間経過後、48時間経過後で測定した結果を示す。表3から明らかなように、共立ドライイーストを含有する誘引剤処方1および日清ドライイーストを含有する誘引剤処方2の両方で発酵が進んでいることが確認された。また、Tween20の有無にかかわらず、発酵が進んでおり、Tween20がドライイーストによる発酵を阻害しないことが分かる。Tween80の場合も同様な結果が得られる。
【0091】
誘引剤処方3、4を表4に示す。誘引剤処方3、4を得る方法は誘引剤処方1を得る方法と同じである。以下、同様である。
【0092】
【表4】
【0093】
誘引剤処方3はブドウ糖を含まない処方であり、また、誘引剤処方4はアルコールを含まない処方である。誘引剤処方3、4の二酸化炭素濃度の測定結果を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
誘引剤処方3、4ともに1時間経過後の二酸化炭素濃度が高く、発酵が初期から促進されている。また、誘引剤処方3、4ともに48時間経過後の二酸化炭素濃度も高く、発酵が長時間持続することが分かる。
【0096】
誘引剤処方5を表6に示す。誘引剤処方5は、アルコール、乳酸、酢酸を含有しない処方である。
【0097】
【表6】
【0098】
誘引剤処方6を表7に示す。誘引剤処方6は、アルコールおよび乳酸を含有せず、酢酸の濃度が0.01%の処方である。
【0099】
【表7】
【0100】
誘引剤処方7を表8に示す。誘引剤処方7は、アルコールおよび乳酸を含有せず、酢酸の濃度が0.05%の処方である。
【0101】
【表8】
【0102】
誘引剤処方5~7の二酸化炭素濃度の測定結果を表9に示す。
【0103】
【表9】
【0104】
誘引剤処方5~7の全てで55時間経過後の二酸化炭素濃度が高く、発酵が長時間持続することが分かる。
【0105】
【表10】
【0106】
誘引剤処方8を表10に示す。誘引剤処方8は、アルコールおよび酢酸を含有せず、乳酸の濃度が0.05%の処方である。
【0107】
【表11】
【0108】
誘引剤処方9を表11に示す。誘引剤処方9は、アルコールおよび酢酸を含有せず、乳酸の濃度が0.1%の処方である。
【0109】
【表12】
【0110】
誘引剤処方10を表12に示す。誘引剤処方10は、アルコールおよび乳酸を含有せず、酢酸の濃度が0.1%の処方である。
【0111】
【表13】
【0112】
誘引剤処方11を表13に示す。誘引剤処方11は、アルコールおよび乳酸を含有せず、酢酸の濃度が0.3%の処方である。
【0113】
誘引剤処方8~11の二酸化炭素濃度の測定結果を表14に示す。
【0114】
【表14】
【0115】
誘引剤処方8~11の全てで66時間経過後の二酸化炭素濃度が高く、発酵が長時間持続することが分かる。したがって、乳酸と酢酸の両方を含有していなくても、一方を含有していることで発酵を長時間継続することができる。
【0116】
(誘引剤13の表面張力)
表面張力は、デュヌイ表面張力試験器(株式会社 伊藤製作所)を用いて測定した。測定時の雰囲気温度は25.8℃、湿度は32%であった。以下の表面張力の測定値は、3回測定した平均値である。
【0117】
表15に比較例1の処方を示す。比較例1の処方は、表1に示す誘引剤処方1から食品添加系界面活性剤を除いた処方となっている。
【0118】
【表15】
【0119】
比較例1の処方の表面張力は、61.0mN/mであった。なお、イオン交換水の表面張力は、72.5mN/mである。
【0120】
下の表16に示す誘引剤処方12は、誘引剤処方1に対してTween20を0.5質量%とした処方である。誘引剤処方13は、誘引剤処方1に対してTween20を0.25質量%とした処方である。誘引剤処方14は、誘引剤処方1に対してTween20を0.10質量%とした処方である。誘引剤処方15は、誘引剤処方1に対してTween20を0.05質量%とした処方である。誘引剤処方16は、誘引剤処方1に対してTween20を0.01質量%とした処方である。誘引剤処方17は、誘引剤処方1に対してTween80を0.5質量%とした処方である。表16に誘引剤処方12~17の表面張力を示す。
【0121】
【表16】
【0122】
表16に示すように、界面活性剤を添加することで誘引剤13の表面張力を比較例の処方に比べて大幅に低下させることができる。そして比較例1(食品添加系界面活性剤を除いたもの)に供試虫(ハチおよびゴキブリ)を入れたところ、5分以上に渡って暴れ脱出しようとし続けることが観察されたが、食品添加系界面活性剤を配合した誘引剤処方12~17に供試虫を入れたところ、3分以内に行動を停止し水面に浮いた状態となった。このように界面活性剤を添加して表面張力を低下させることにより、虫の行動を停止させることができるので、捕獲容器10からの脱出を防止し捕獲効果を向上させることができる。なお、表面張力の低下が行動停止につながるメカニズムは十分に明らかになってはいないが、以下のように考えられる。即ち、誘引剤13の表面張力を低下させることにより、当該誘引剤13が虫体や羽に付着しやすくなるため、羽および体が重くなって液面から飛び立つ事ができなくなる。そして、当該虫が液面で暴れているうちに、虫体に付着した誘引剤13が気門を塞ぎ、窒息する。このように、誘引剤13によって誘引されたハチが誘引剤13の液面に落下すると、液面の表面張力が界面活性剤によって低下しているので、液面のハチは脱出することができない。従って、誘引剤13に添加した界面活性剤は、脱出防止成分であると言うこともできる。
【0123】
(捕獲試験)
次に、ハチ捕獲器1の捕獲試験について説明する。試験方法は、中国地方の山林にハチ捕獲器1を設置して3週間放置する。時期は夏である。ハチ捕獲器1を回収して捕獲されたハチの数を数えた。n数は2である。
【0124】
【表17】
【0125】
比較例2は、衝突板およびカバー部材の無いハチ捕獲器であり、他の部分は上記実施形態と同じである。比較例3は、第1衝突板および第2衝突板の色が黒色のハチ捕獲器であり、他の部分は上記実施形態と同じである。実施例は、第1衝突板および第2衝突板が無色透明であり、蓋が黒色である。比較例2、3および実施例の誘引剤は同じである。
【0126】
表17に示すように、黒色の衝突板を設けた比較例3は、衝突板の無い比較例2と捕獲数の有意な差は見られなかった。これに対し、無色透明な衝突板を設けた実施例では、比較例3に比べて3倍の捕獲数となり、衝突板が顕著な捕獲効果の向上をもたらすことが分かる。なお、第1衝突板および第2衝突板の色は、蓋の色との差が大きければよく、例えば半透明であっても同様な効果が得られる。また、蓋の色は、茶色、青色、紺色、緑色のいずれであっても同様な効果が得られる。
【0127】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、捕獲容器10の内部に収容された誘引剤13により、捕獲容器10の周囲のハチが誘引されて導入孔12aから捕獲容器10に入って捕獲されるとともに、捕獲容器10の周囲を飛ぶハチが第1衝突板20や第2衝突板30に衝突して落下した時に導入孔12aから捕獲容器10に入って捕獲される。第1衝突板20のハチ衝突面と第2衝突板30のハチ衝突面とが互いに異なる方向に向いているので、どの方向から飛んできたハチも第1衝突板20か第2衝突板30に衝突することになる。
【0128】
これらのことのみならず、捕獲容器10の上部の可視光透過率が第1衝突板20および第2衝突板30の可視光透過率よりも低いので、衝突板20、30の方が捕獲容器10の上部に比べて相対的に明るく見え、捕獲容器10の周囲のハチが明るい方、即ち衝突板20、30の方へ向けて飛びやすくなる。これにより、ハチが第1衝突板20または第2衝突板30に衝突しやすくなり、第1衝突板20または第2衝突板30に衝突して落下したハチが導入孔12aから捕獲容器10に入って捕獲される。第1衝突板20または第2衝突板30に衝突するハチには、誘引剤13によって誘引されたハチも含まれるので、誘引剤による誘引効果に加えて、衝突板20、30と捕獲容器10の上部との色の差による誘引効果も生じ、捕獲効果が向上する。
【0129】
また、誘引剤13に含有される糖が酵母の作用によって発酵することにより、ハチの誘引効果を高めることができる。誘引されたハチが誘引剤13の液面に落下すると、液面の表面張力が界面活性剤によって低下しているので、液面のハチは早期に液中に沈み、捕獲容器10から脱出しにくくなる。界面活性剤は食品添加系のものであるため、酵母の発酵に悪影響を与えにくく、使用開始時点で酵母による発酵を素早く立ち上げることが可能になるとともに、長期間に亘って高い誘引効果が得られる。
【0130】
また、ハチ捕獲器1を店頭に陳列して販売する場合、第1衝突板20および第2衝突板30とカバー部材40を捕獲容器10から取り外し、捕獲容器10と箱100との間に湾曲させた状態で収容することで、捕獲容器10と箱100との間を衝突板20、30およびカバー部材40の収容スペースとすることができる。これにより、捕獲容器10、衝突板20、30およびカバー部材40を箱100にコンパクトに収容することができ、箱100の小型化を図ることができる。
【0131】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。本実施形態に係るハチ捕獲器で捕獲可能なハチは、オオスズメバチに限られるものではなく、他のハチも捕獲することができる。
【0132】
なお本実施形態の虫捕獲器は、ハチに限らず、飛翔性の甲虫等の捕獲にも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上説明したように、本発明は、例えばスズメバチ等のハチを捕獲する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 ハチ捕獲器(虫捕獲器)
10 捕獲容器
11 容器本体
12 蓋
12a 導入孔
13 誘引剤(虫捕獲液)
20 第1衝突板
22 第1フック部(係合部)
30 第2衝突板
32 第2フック部(係合部)
40 カバー部材
100 箱
図1
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