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特許7325849ピーク同定解析プログラム及び蛍光X線分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】ピーク同定解析プログラム及び蛍光X線分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20230807BHJP
   G01N 23/2209 20180101ALI20230807BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/2209
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021176268
(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公開番号】P2023065877
(43)【公開日】2023-05-15
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 渉
(72)【発明者】
【氏名】片岡 由行
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201148(JP,A)
【文献】特開平4-343051(JP,A)
【文献】特開平1-319239(JP,A)
【文献】特開2018-87700(JP,A)
【文献】特開2000-105207(JP,A)
【文献】国際公開第2021/079184(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0019946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 30/00 - G01N 30/96
G01N 33/00 - G01N 33/98
G01N 35/00
H01J 37/00 - H01J 37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、
ユーザが前記蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する指定情報取得ステップと、
指定された角度またはエネルギーに基づいて特定される1または複数の元素及び線種の一覧を、前記蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リストとして表示する第1リスト表示ステップと、
前記第1リストに含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける第1リスト受付ステップと、
前記第1リストが表示された状態で、前記第1リストに対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素及び線種と、該元素の他の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リストとして表示する表示更新ステップと、
を蛍光X線分析装置に用いられるコンピュータに実行させることを特徴とするピーク同定解析プログラム。
【請求項2】
前記表示更新ステップにおいて、さらに、前記第2リストに表示された元素及び線種を前記蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示することを特徴とする請求項1に記載のピーク同定解析プログラム。
【請求項3】
前記第1リストに対して複数の元素及び線種が指定された場合に、指定された元素及び線種が指定された順序に応じた異なる態様で前記蛍光X線スペクトルに表示される、ことを特徴とする請求項1または2に記載のピーク同定解析プログラム。
【請求項4】
前記表示更新ステップにおける元素及び線種の表示は、指定された元素の元素記号、線種名及び縦線の表示である、ことを特徴とする請求項2に記載のピーク同定解析プログラム。
【請求項5】
複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得するスペクトル取得部と、
ユーザが前記蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する指定情報取得部と、
指定された角度またはエネルギーに基づいて特定される1または複数の元素及び線種の一覧を、前記蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リストとして表示する第1リスト表示部と、
前記第1リストに含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける第1リスト受付部と、
前記第1リストが表示された状態で、前記第1リストに対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素及び線種と、該元素の他の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リストとして表示する表示更新部と、
を含むことを特徴とする蛍光X線分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピーク同定解析プログラム及び蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる元素や当該元素の濃度を測定する装置として、1次X線を試料に照射した際に発生する蛍光X線に基づいて試料に含まれる元素等を分析する蛍光X線分析装置が知られている。
【0003】
蛍光X線分析装置には、波長分散型蛍光X線分析装置とエネルギー分散型蛍光X線分析装置が存在する。波長分散型蛍光X線分析装置は、横軸が2θ角度(以下、単に角度とも呼称する)、縦軸が蛍光X線の強度である蛍光X線スペクトルを取得する。なお、θは、蛍光X線の分光素子に対する入射角度である。エネルギー分散型蛍光X線分析装置は、横軸が蛍光X線のエネルギー、縦軸が蛍光X線の強度である蛍光X線スペクトルを取得する。蛍光X線スペクトルに含まれるピークの同定は、該ピークが現われる角度またはエネルギーと、該ピークの強度とに基づいて、行われる。
【0004】
従来から行われている同定方法の一例として、波長分散型蛍光X線分析装置が取得した蛍光X線スペクトルに含まれるピークの同定方法を以下に説明する。
【0005】
まず、蛍光X線スペクトルの重元素領域(元素周期表におけるTi以降の元素)において、X線管ターゲット元素(例えば、Rh)からの特性X線の散乱線であるトムソン(もしくはレイリー)散乱線・コンプトン散乱線のピークを確認する(手順1)。
【0006】
次に、蛍光X線スペクトルに含まれる散乱線以外の強度の高いピークを選択する。選択されたピークの角度を含む所定の角度範囲に出現する蛍光X線のうち、強度が強い線種であるKα線、Lα線とLβ1線の候補を選択する(手順2)。なお、「線種」という文言は、元素記号(例えばPbLβ1線のうちPb)と電子の遷移元と遷移先の殻及び軌道により決められた記号(例えばPbLβ1のうちLβ1)を表す場合もあるが、以下では主に後者の電子の遷移元と遷移先の殻及び軌道により決められた記号のみを表すものとする。
【0007】
手順2で候補として選択された線種のペアとなる線種によるピークが出現しているか確認する。ここで、ペアとなる線種は、候補として選択された線種を発生させる元素に起因して発生する他の線種である。例えば、ペアとなる線種は、候補に含まれる線種がKα線のときはKβ線であり、候補に含まれる線種がLα線のときはLβ1線であり、候補に含まれる線種がLβ1線のときは、Lα線である(手順3)。
【0008】
手順3において、ペアとなる線種のピークが確認されたときは、選択された線種とペアとなる線種の強度比が妥当であるか判断する。強度比が妥当であると判断された場合、蛍光X線スペクトルに含まれるピークが、選択された線種とペアの線種によるピークであるとして同定される。これにより、当該ピークを発生させる元素が特定される(手順4)。
【0009】
手順4でピークが同定されたときは、付随線(手順4で特定された元素から発生する相対強度の低い他の線種)が現れる角度にピークが存在するか確認する。ピークが存在していれば、Kα、Lα線などの強度の高い線種との強度比を確認し、強度比が妥当であるか判断する。妥当であると判断されたときは、蛍光X線スペクトルに含まれるピークが付随線であると同定される。また、高次線についても付随線と同様の手順によりピークの同定がを行われる(手順5)。
【0010】
蛍光X線スペクトルに含まれるピークのうち、手順2から手順5で同定されていないピークについて、手順2から手順5を実施し、他の元素に起因するピークの同定と元素の特定が繰り返し行われる(手順6)。
【0011】
手順2から手順6で同定されていないピークが残存する場合、当該ピークの角度近傍に現われるKα、Lα、Lβ1線の蛍光X線が存在するか確認し、存在する場合には当該ピークが存在するKα、Lα、Lβ1線であると同定する(手順7)。
【0012】
また、軽元素(元素周期表におけるCaまでの元素)のK線が現れる角度領域(またはエネルギー領域)には、重元素のL線やM線のピークが出現することがある。特にX線強度が高い重元素が存在する場合は、当該角度領域に原子番号の大きい重元素のL線、M線や、高次線が現れる可能性を考慮し、当該角度領域以外に現われるピークの同定もあわせて行われる。
【0013】
近年では、上記手順がソフトウェアによって行なわれている。また、ソフトウェアによる同定結果に誤りがないか、ユーザが手動で上記手順に従って確認することも行われている。ユーザが手動でピークの同定を行う際、上記手順を補助する蛍光X線分析装置も存在する(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2005-114658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来、ソフトウェアによりピークに対して蛍光X線の線種を同定した場合に、同定結果が正しいかユーザによる確認が行われていた。当該ソフトウェアには、確認を行う際にユーザを補助する機能として、次の2つの操作機能が実装されていた。
【0016】
一つの機能は、ユーザが角度(エネルギー分散型装置においてはエネルギー)を指定したときに、指定された角度の近傍の蛍光X線の線種、角度及び相対強度をコンピューターの操作画面に表示する機能である。もう一つの機能は、ユーザが元素を指定したときに、指定された元素の蛍光X線の線種、角度及び相対強度を表示する機能である。
【0017】
上記2つの機能を使用してピークの同定結果の確認と修正を行なう場合において、ピークが複数の蛍光X線の線種のいずれかである可能性が存在する場合、同定結果の確認の操作が非常に煩雑であるという問題があった。
【0018】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、蛍光X線分析の熟練していない者であっても、蛍光X線スペクトルの同定解析と解析結果の検証を、容易に行なえるピーク同定解析プログラム及び蛍光X線分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)本開示の一側面に係るピーク同定解析プログラムは、複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得するスペクトル取得ステップと、ユーザが前記蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する指定情報取得ステップと、指定された角度またはエネルギーに基づいて特定される1または複数の元素及び線種の一覧を、前記蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リストとして表示する第1リスト表示ステップと、前記第1リストに含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける第1リスト受付ステップと、前記第1リストが表示された状態で、前記第1リストに対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素及び線種と、該元素の他の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リストとして表示する表示更新ステップと、を蛍光X線分析装置に用いられるコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
(2)本開示の上記態様において、前記表示更新ステップにおいて、さらに、前記第2リストに表示された元素及び線種を前記蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示することを特徴とする。
【0021】
(3)本開示の上記態様において、前記第1リストに対して複数の元素及び線種が指定された場合に、指定された元素及び線種が指定された順序に応じた異なる態様で前記蛍光X線スペクトルに表示される、ことを特徴とする。
【0022】
(4)本開示の上記態様において、前記表示更新ステップにおける元素及び線種の表示は、指定された元素の元素記号、線種名及び縦線の表示である、ことを特徴とする。
【0023】
(5)本開示の他の一側面に係る蛍光X線分析装置は、複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得するスペクトル取得部と、ユーザが前記蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する指定情報取得部と、指定された角度またはエネルギーに基づいて特定される1または複数の元素及び線種の一覧を、前記蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リストとして表示する第1リスト表示部と、前記第1リストに含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける第1リスト受付部と、前記第1リストが表示された状態で、前記第1リストに対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素及び線種と、該元素の他の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リストとして表示する表示更新部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、蛍光X線分析の熟練していない者であっても、蛍光X線スペクトルの同定解析と解析結果の検証を、容易に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】蛍光X線分析装置の概略の一例を示す図である。
図2】演算デバイスの機能ブロックを示す図である。
図3】蛍光X線スペクトルの一例を示す図である。
図4】線種検索画像の一例を示す図である。
図5】元素及び線種が表示された状態の蛍光X線スペクトルの一例を示す図である。
図6】同定された状態の蛍光X線スペクトルの一例を示す図である。
図7】ピーク同定解析のフローチャートの一例である。
図8】従来例における元素及び線種の候補の一覧を示す図である。
図9】従来例において表示されるPbの線種一覧を示す図である。
図10】従来例において表示されるAsの線種一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を説明する。図1は、蛍光X線分析装置100の概略の一例を示す図である。図1に示すように、蛍光X線分析装置100はスペクトル取得部102と、情報処理部104と、を含む。
【0027】
スペクトル取得部102は、複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得する。具体的には、例えば、スペクトル取得部102は、X線源106と、試料台108と、分光素子110と、検出器112と、計数器114と、を含む。スペクトル取得部102は、1次X線を照射された試料116から出射される2次X線(蛍光X線や散乱線)に基づいて、2次X線の強度とエネルギーの関係を表すスペクトルを取得する。
【0028】
試料台108は、分析対象となる試料116が載置される。X線源106は、1次X線を、試料116の表面に照射する。1次X線が照射された試料116から、2次X線が出射される。
【0029】
分光素子110は、2次X線を分光する。具体的には、例えば、分光素子110は、試料116から発生した複数の波長の2次X線のうち、ブラッグの条件式を満たす特定の波長のX線のみを分光する。試料116から発生した2次X線の進む方向と分光素子110表面との成す入射角度をθとする。
【0030】
検出器112は、例えば、シンチレーションカウンタである。検出器112は、2次X線の強度を測定し、測定した2次X線のエネルギーに応じた波高値を有するパルス信号を出力する。
【0031】
分光素子110及び検出器112は、ゴニオメータ(図示なし)によって、一定の角度関係を保ちながら回動する。具体的には、分光素子110は、分光素子110表面に対する2次X線の入射角度θが所定の範囲内で変化するように、ゴニオメータによって回動する。2次X線は分光素子110により回折され、ブラッグの条件式を満たす2次X線(すなわち出射角度θである2次X線)が出射する。検出器112は、ゴニオメータによって、分光素子110から出射角度θで出射された2次X線が入射される位置に移動する。
【0032】
計数器114は、検出器112から出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数する。具体的には、例えば、計数器114は、検出器112の測定強度として出力されるパルス信号を波高値に応じて計数し、X線強度として情報処理部104に出力する。スペクトル取得部102は、計数器114の出力を蛍光X線スペクトル(以下、単にスペクトルとも呼称する)として取得する。
【0033】
情報処理部104は、スペクトル取得部102の動作を制御する。具体的には、情報処理部104は、スペクトル取得部102と接続されるコンピュータであって、演算デバイス118と、記憶デバイス120と、表示デバイス122と、入出力デバイス124と、を含む。
【0034】
演算デバイス118は、プロセッサであるCPU(Central Processing Unit)であって、各種演算を行う。記憶デバイス120は、メモリであるRAM(Random Access Memory)、及び、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の静的に情報を記録できる装置である。記憶デバイス120は、ピーク同定解析プログラム等の定性分析プログラムを記憶する。ピーク同定解析プログラム等の定性分析プログラムは、蛍光X線分析装置100に用いられる情報処理部104で実行されるプログラムである。ピーク同定解析プログラムは、情報処理部104に後述するピーク同定解析に含まれる各ステップを実行させるプログラムである。定性分析プログラムは、ピーク同定解析プログラムによって同定されたピークに基づいて、試料116の元素情報を得る定性分析を行うプログラムである。
【0035】
表示デバイス122は、CRT(Cathode Ray Tube)やいわゆるフラットパネルディスプレイ等であって、画像を表示する。入出力デバイス124は、コンピュータが外部の機器と情報をやり取りするための一又は複数のインタフェースであって、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等の、ユーザが情報を入力するための一又は複数の機器である。また、入出力デバイス124には、有線接続するための各種ポート及び、無線接続のためのコントローラが含まれていてよい。
【0036】
なお、図1に示す蛍光X線分析装置100は波長分散型であるが、蛍光X線分析装置100はエネルギー分散型であってもよい。蛍光X線分析装置100がエネルギー分散型である場合、分光素子110及びゴニオメータは含まれず、検出器には、SDD(Silicon Drift Detector)検出器等の半導体検出器を用いる。
【0037】
ピーク同定解析プログラムは、情報処理部104に後述するピーク同定解析に含まれる各ステップを実行させるプログラムである。具体的には、HDDに記憶されたピーク同定解析プログラムは、必要に応じてRAMに読みだされてCPUにより実行される。すなわち、RAMには、CPUにより実行されることにより、図2に機能ブロックとして示す各種機能を実現させるためのコードが記憶される。当該ピーク同定解析プログラムは、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータが読み込むことができる情報記録媒体に記録されて提供されても、I/Oを介して外部のインターネット等の情報通信回線を介して提供されてもよい。
【0038】
ピーク同定解析プログラムが情報処理部104により実行される際に、図2に示すように、演算デバイス118は、機能的に、指定情報取得部202と、第1リスト表示部204と、第1リスト受付部206と、表示更新部208と、第2リスト受付部210と、を含む。
【0039】
指定情報取得部202は、ユーザが蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する。具体的には、例えば、スペクトル取得部102が図3に示すスペクトルを取得し、当該スペクトルが表示デバイス122に表示されている場合について説明する。ユーザは、マウスを操作することにより、図3に示すスペクトルの同定したいピーク近傍(例えば、34度近傍)をクリックする。指定情報取得部202は、図3に示すスペクトルのクリックされた位置が表す角度を、指定角度として取得する。
【0040】
なお、図3に示す蛍光X線スペクトルは、波長分散型の蛍光X線分析装置100が取得した蛍光X線スペクトルであるため、横軸は角度(deg)である。蛍光X線分析装置100がエネルギー分散型である場合、蛍光X線スペクトルの横軸はエネルギー(keV)である。この場合、指定情報取得部202は、ユーザがマウスを操作することにより、ユーザが指定するエネルギーを取得する。
【0041】
なお、指定情報取得部202は、ユーザがキーボードを操作することで入力した角度を、指定角度として取得してもよい。例えば、図4は、ピーク同定解析プログラムが情報処理部104により実行される際に、表示デバイス122に表示される画像(以下、線種検索画像402と呼称する)の一例である。ユーザが線種検索画像402の指定角度欄に対して、キーボードを操作することにより「34.00」という数値データを入力する。そして、ユーザが数値データを入力したとき、または、検索ボタン404をクリックしたときに、指定情報取得部202は、入力された数値データを指定角度として取得してもよい。
【0042】
第1リスト表示部204は、指定された角度またはエネルギーに基づいて特定される1または複数の元素及び線種の一覧を、蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リスト406として表示する。具体的には、第1リスト表示部204は、指定角度の前後の所定範囲内に存在する蛍光X線を理論エネルギー表に基づいて検索し、候補となる蛍光X線の情報を表示する。表示される蛍光X線の情報は、元素及び線種と、2θ角度(deg)と、相対強度である。図4の検索結果に示す表は、第1リスト406の一例である。第1リスト406は、1列目にユーザの指定情報、2列目に元素及び線種、3列目に2θ角度(deg)、4列目に相対強度、の各情報を含む。
【0043】
ユーザの指定情報は、ユーザが対応する各行に示される蛍光X線を指定するか否かを表す情報である。例えば、指定情報は、チェックボックスやラジオボタンにチェックが入れられているか否かによって表される。図4の例では、第1リスト406の1列目にチェックボックスが表示され、PbLα線及びAsKα線を表す行に設けられたチェックボックスがチェックされた状態である。
【0044】
なお、ユーザの指定情報は、複数の蛍光X線の候補を同時に指定する情報であってもよいし、同時に一つのみを指定する情報であってもよい。例えば、図4のように第1リスト406の1列目にチェックボックスが表示され、複数の行のチェックボックスがオン状態である場合、複数の蛍光X線の候補が同時に指定されている。また、第1リスト406の1列目にラジオボタンが表示され、ある行を指定した時に、他の行の指定が取り消されるようにしてもよい。また、ユーザの指定情報は、チェックボックスのオンオフではなく、行全体の表示形式(例えば色、フォント等)の相違で表されてもよい。
【0045】
第1リスト406の元素及び線種は、当該蛍光X線の元素及び線種を特定する情報である。例えば、上記のように「34.00」という指定角度が取得された場合、第1リスト表示部204は、34.00度の前後0.1度以内に理論的に現われる蛍光X線を検索し、該当する蛍光X線を特定する元素及び線種として、「PbLα」、「ReLβ5」及び「AsKα」という元素及び線種を表示する。表示された元素及び線種は、いずれもピークを表す蛍光X線の候補である。
【0046】
第1リスト406の2θ角度(deg)は、候補である蛍光X線が現れる2θ角度の理論値である。例えば、上記の場合、「PbLα」の2θ角度として「33.915」、「ReLβ5」の2θ角度として「33.980」、及び「AsKα」の2θ角度として「33.980」という数値が表示される。
【0047】
第1リスト406の相対強度は、候補として表示された蛍光X線同士の強度比を表す値である。例えば、上記の場合、「PbLα」の相対強度を基準である「100.0」として、「ReLβ5」の相対強度として「0.1」、及び「AsKα」の相対強度として「150.0」という数値が表示される。
【0048】
また、第1リスト406に表示される線種は、同一系列(例えば、同じ元素で同じL系列の線種)で強度の最も強い線種である必要はなく、Lβ2線やLγ1などの付随線、あるいは、高次線であってもよい。
【0049】
第1リスト受付部206は、第1リスト406に含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける。具体的には、例えば、ユーザは、マウスを操作することにより、第1リスト406の1列目に示されたチェックボックスのオンとオフを操作する。第1リスト受付部206は、チェックされた状態のチェックボックスが表示された行の元素及び線種を、ユーザに指定された元素及び線種として受け付ける。
【0050】
表示更新部208は、第1リスト406が表示された状態で、第1リスト406に対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素及び線種と、該元素の他の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リスト408として表示する。具体的には、ユーザが第1リスト406の元素及び線種のチェックボックスの選択をすると、表示更新部208は指定された元素の線種の一覧を第2リスト408として表示する。
【0051】
例えば、第2リスト408には、ユーザの指定情報と、各元素及び線種、その2θ角度及び相対強度が含まれる。具体的には、第2リスト408は、第1リスト406と同様、1列目にユーザの指定情報、2列目に元素及び線種、3列目に2θ角度(deg)、4列目に相対強度、の各情報を含む。図4の第2リスト408では、「Pb」の線種として、「PbLα」及び「PbLβ1」、「As」の線種として、「AsKα」及び「AsKβ1」という元素及び線種が表示される。
【0052】
また、第2リスト408の「PbLβ1」の行には、2θ角度として「28.2400」、相対強度として「50.0」が表示される。第2リスト408の「PbLα」の行には、第1リスト406と同じ情報が表示される。第2リスト408の「AsKβ1」の行には、2θ角度として「30.4300」、相対強度として「30.0」が表示される。第2リスト408の「AsKα」の行には、第1リスト406と同じ情報が表示される。各2θ角度及び各相対強度は、いずれも理論値である。相対強度については、分光結晶にエネルギー依存性があるなど理論値では誤差がある場合もあるので、実験値、あるいは、理論値を実測値により補正をしても良い。
【0053】
さらに、表示更新部208は、元素と線種名を蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示する。例えば、第1リスト406の「PbLα」及び「AsKα」を表す行に設けられたチェックボックスがチェックされた場合、表示更新部208は、指定された元素であるPb及びAsの各元素及び線種と、それが現れる角度またはエネルギーと、相対強度の一覧を第2リスト408として表示しつつ、図3に示すスペクトルに対して、PbLα線、PbLβ1線、AsKα線及びAsKβ1線を、各蛍光X線の理論角度の位置に表示する。例えば、元素及び線種の表示は、指定された元素の元素記号、線種名及び縦線の表示である。ここで、図4の線種検索画像の選択元素の線種に示すように、第2リスト408は、複数の元素が続けて表示された一覧であってもよいし、元素ごとに個別に表示された一覧であっても良い。
【0054】
ここで、第1リスト406に対して複数の元素及び線種が指定された場合に、指定された元素及び線種が指定された順序に応じた異なる態様で蛍光X線スペクトルに表示されてもよい。例えば、最初に「PbLα」が指定され、続いて「AsKα」が指定された場合、Pbの線種である「PbLα」及び「PbLβ1」を表す縦線は実線で表示され、Asの線種である「AsKα」及び「AsKβ1」を表す縦線は破線で表示するなど元素ごとに異なる線の態様で表示されてもよい。図5は、取得された蛍光X線スペクトルに対して当該4種の蛍光X線の元素及び線種が表示された状態を示す図である。また、異なる態様は、実線や破線ではなく、色の相違で表現されてもよい。
【0055】
なお、表示更新部208は、第1リスト406の各元素及び線種に対するユーザの指定の切り替えに応じて、指定された元素及び線種を蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示するか否かを切り替える。例えば、「AsKα」に対する指定が解除された場合、第2リスト408に含まれるAsKα及びAsKβ1の行と、蛍光X線スペクトルの対応するAsKα線とAsKβ1の元素記号、線種名及び縦線と、は非表示となる。
【0056】
第2リスト受付部210は、第1リスト406が表示され、かつ、第1リスト406に対して指定された元素及び線種が指定された状態で、第2リスト408に含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける。これは、第2リスト408に含まれる各元素及び線種の蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示された元素記号及び線種名と、相対強度と、に基づいて、実際の試料に含まれる元素を特定し、同定する元素及び線種を選択するためである。
【0057】
具体的には、図4に示すように、第1リスト406が表示された状態であり、かつ、第1リスト406に対して指定された「PbLα」及び「AsKα」と同じ行のチェックボックスがオン状態であることが示されている。この状態で、ユーザは、マウスを操作することにより、第2リスト408の1列目に示されたチェックボックスのオンとオフを操作する。第2リスト受付部210は、チェックされた状態のチェックボックスが表示された行で示される蛍光X線を、ユーザに指定された元素及び線種として受け付ける。
【0058】
図4では、第2リスト408に対して指定された「PbLα」、及び「PbLβ1」と同じ行のチェックボックスがオン状態であることが示されている。これは、第2リスト408に含まれる各元素及び線種の蛍光X線スペクトルの位置に表示された元素記号及び線種名と相対強度に基づいて、ユーザが試料にPbが含まれると判断し、蛍光X線スペクトルに含まれるピークが「PbLα」、及び「PbLβ1」線であると同定するためである。この状態で、図4の線種検索の画像のOKボタン410をクリックすると、図6に示すように、表示更新部208は、取得された蛍光X線スペクトルに対して、選択された「PbLα」、及び「PbLβ1」の元素記号及び線種名を表示する。これにより、ピーク同定解析プログラムによる同定が行われる。
【0059】
また、第1リスト406に対して複数の元素及び線種が指定された場合に、表示更新部208は、指定された元素ごとに個別の第2リスト408を表示してもよい。具体的には、例えば、図4には、「PbLα」、「AsKα」、「PbLβ1」及び「AsKβ1」の4種の元素及び線種を含む1個の第2リスト408を表示しているが、「PbLα」及び「PbLβ1」を含む第2リスト408と、「AsKα」及び「AsKβ1」を含む第2リスト408が個別に表示されてもよい。
【0060】
また、第2リスト408に表示される線種は、指定された元素に起因する強度の強い線種である必要はなく、Lβ2線やLγ1などの付随線、あるいは、高次線であってもよい。
【0061】
次に、ピーク同定解析プログラムが、情報処理部104に実行させるピーク同定解析に含まれる各ステップについて図7を参照しながら説明する。
【0062】
まず、スペクトル取得部102は、複数のピークを含む蛍光X線スペクトルを取得する(S702)。取得された蛍光X線スペクトルは、表示デバイス122に表示される(図3参照)。また、図4に示す線種検索画像402が表示デバイス122に表示される。なお、この時点では、線種検索画像402には第1リスト406及び第2リスト408は表示されていない。
【0063】
次に、指定情報取得部202は、ユーザが蛍光X線スペクトルに対して指定する角度またはエネルギーを取得する(S704)。例えば、ユーザがマウスを操作することにより、図3に示すスペクトルの同定したいピーク近傍をクリックすることで、指定情報取得部202は、34度という指定角度を取得する。取得された指定角度は、図4に示す線種検索画像402の指定角度欄に表示される。
【0064】
次に、第1リスト表示部204は、指定された角度またはエネルギーに基づいて指定角度の前後の所定範囲内に存在する1または複数の元素及び線種の一覧を、蛍光X線スペクトルに含まれるピークを表す蛍光X線の候補である第1リスト406として表示する(S706)。例えば、ユーザが検索ボタン404をクリックすると、第1リスト表示部204は、図4に示す「PbLα」、「ReLβ5」及び「AsKα」を含む第1リスト406を表示する。なお、この時点では、線種検索画像402には第2リスト408は表示されていない。
【0065】
次に、第1リスト受付部206は、第1リスト406に含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける。また、表示更新部208は、第1リスト受付部206で指定された元素及び線種の元素について、その元素及び線種の一覧を第2リスト408に表示する。具体的には、表示更新部208は、第1リスト406が表示された状態で、第1リスト406に対して指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、指定された元素と、該元素の線種が現れる角度またはエネルギーと、の一覧を第2リスト408として表示する。さらに、表示更新部208は、第2リスト408に対して指定された元素及び線種を蛍光X線スペクトルの対応する位置に表示する(S708)。
【0066】
具体的には、例えば、ユーザがマウスを操作することにより、第1リスト406の「PbLα」と「AsKα」のチェックボックスをオンにする。第1リスト受付部206は、「PbLα」と「AsKα」を指定された元素及び線種として受け付ける。第1リスト受付部206で指定された元素及び線種のうちの元素はPbとAsであるため、表示更新部208は、元素及び線種として「PbLβ1」、「PbLα」、「AsKα」、「AsKβ1」を第2リスト408に表示する。さらに、表示更新部208は、第2リスト408に表示されたPbとAsの元素記号及び該元素の各線種名を、蛍光X線スペクトルの各蛍光X線の理論角度の位置に表示する。
【0067】
次に、ユーザは、蛍光X線スペクトルとそれに表示された各蛍光X線の線種の位置、相対強度を確認して元素及び線種を特定し、特定した元素及び線種のチェックボックスをオンにする。これにより、第2リスト受付部210は、第2リスト408に含まれる1または複数の元素及び線種のうち少なくとも一部の指定をユーザから受け付ける。この状態で、たとえば、ユーザは、線種検索画像402のOKボタン410をクリックする。この操作により、蛍光X線スペクトルに第2リスト408で指定された元素及び線種の元素記号及び線種名が対応する位置に表示される。具体的には、ユーザが、蛍光X線スペクトルにPbLβ1線とPbLα線のピークが存在すると特定し、特定したPbLβ1及びPbLαのチェックボックスをオンにしたとする。この場合、第2リスト受付部210は、「PbLβ1」と「PbLα」への指定を受け付ける。そして、ユーザが図4の線種検索の画像のOKボタン410をクリックすると、図6が示すように、表示更新部208は、蛍光X線スペクトルに「PbLβ1」と「PbLα」を対応する位置に表示し、当該位置のピークがPbによるものであると同定される(S710)。
【0068】
次に、S704及至S710が繰り返し実行される(S712)。具体的には、ユーザは、同定を行う蛍光X線スペクトルのピークごとにスペクトルに含まれるピークの位置と、指定された元素及び線種の表示の位置を見比べることで、ピークの元素及び線種を判断して、適切に同定を行う。
【0069】
以上のステップによれば、ユーザは、第1リスト406及び第2リスト408が表示された状態で、第1リスト406に指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、スペクトルに含まれるピークの現れる角度と指定された元素の理論角度(またはエネルギー)を比較できる。さらに、第1リスト406及び第2リスト408が表示された状態で、当該比較を元素ごとに切り替えて行うことができる。従って、蛍光X線分析の熟練していない者であっても、蛍光X線スペクトルの同定解析と解析結果の検証を、容易に行なえる。
【0070】
以下、比較例として、従来の方法による操作手順の一例を本開示と対比しながら説明する。従来の方法においても、本開示のS702からS706のステップは行われている。すなわち、図3に示すような蛍光X線スペクトルが取得され、34度近傍のピークを同定しようとした場合に、図8に示すような元素及び線種の候補が、理論角度及び相対強度とともに表示される。
【0071】
図8に示す候補が表示された時点では、34度近傍のピークがどの元素及び線種であるか不明であるため、ユーザは、候補として挙げられた元素ごとに、当該元素が試料116に含まれるか否かを蛍光X線スペクトルを参照しながら判断している。具体的には、ユーザが図8の線種候補の画像を閉じて、指定元素の元素及び線種のリストを表す画像を表示させ、図8に示していた候補のうちPbを指定すると、図9に示すPbの線種一覧が表示される。図9には、線種としてPbLβ1及びPBLα、2θ角度として33.915度及び28.240度、相対強度として50.0及び100.0が表示される。そして、ユーザは、図3に示す蛍光X線スペクトルにおいて、図9に表示された2θ角度である33.915度及び28.240度の双方の位置に、ピークが存在するか判断する。図3に示す例では、33.915度及び28.240度の双方の位置にピークが存在しており、当該ピークの強度比は図9に示す強度比と一致している。従って、ユーザは、試料116にPbが含まれ、33.915度及び28.240度の位置に現れるピークがPbに起因するものであると判断できる。しかしながら、34度近傍のピークは、PbLα線とAsKα線のピークが重なったピークである可能性がある。従って、ユーザは、この時点でAs及びReが試料116に含まれているか否か判断することができない。
【0072】
そこで、ユーザは、図9に示すPbの線種の一覧表示を消去する。そして、再度図8に示す候補を表示させた上で、図8の画像を消去して、再度、指定元素の元素及び線種のリストを表す画像を表示させてAsを指定すると、図10に示すAsの線種一覧が表示される。Asの線種一覧には、AsKβ1及びAsLα、2θ角度として30.430度及び33.980度、相対強度として30.0及び150.0が含まれる。そして、ユーザは、図3に示す蛍光X線スペクトルに、図10に表示された2θ角度である30.430度及び33.980度の双方の位置に、ピークが存在するか判断する。図3に示す例では、30.430度の近傍にピークは存在しない。従って、ユーザは、試料116にAsが含まれないと判断する。ユーザは、Reについても同様の操作を行い、Reが試料116に含まれないと判断する。その結果、ユーザは、33.915度及び28.240度の位置に現れるピークがPbLβ1とPbLα線であると同定する。
【0073】
以上のように従来は、元素ごとに線種の一覧の表示と非表示を繰り返し行う必要があった。上記の従来例は、As及びPbの線種の一覧として2種のみが表示される場合について説明したが、さらに多くの線種の存非を確認する場合や、複数の元素のピークが重なっている場合には、角度と元素の指定を多数繰り返し実行する必要があり、操作が非常に煩雑であった。本開示によれば、上記のように、第1リスト406及び第2リスト408が表示された状態で、第1リスト406で指定された元素及び線種が指定された状態であることを示しつつ、スペクトルに含まれるピークの現れる角度と指定された元素の理論角度(またはエネルギー)及び、線種間の強度比を比較できるため、ユーザは同定解析と解析結果の検証を容易に行なうことができる。
【0074】
本開示は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記蛍光X線分析装置100の構成は一例であって、これに限定されるものではない。上記の実施例で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成する構成で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 蛍光X線分析装置、102 スペクトル取得部、104 情報処理部、106 X線源、108 試料台、110 分光素子、112 検出器、114 計数器、116 試料、118 演算デバイス、120 記憶デバイス、122 表示デバイス、124 入出力デバイス、202 指定情報取得部、204 第1リスト表示部、206 第1リスト受付部、208 表示更新部、210 第2リスト受付部、402 線種検索画像、404 検索ボタン、406 第1リスト、408 第2リスト、410 OKボタン。
図1
図2
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図7
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図10