(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】全方向搬送装置及び全方向搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 13/00 20060101AFI20230807BHJP
B65G 39/02 20060101ALI20230807BHJP
B66B 21/10 20060101ALI20230807BHJP
B66B 23/08 20060101ALI20230807BHJP
【FI】
B65G13/00 B
B65G39/02 B
B66B21/10 Z
B66B23/08
(21)【出願番号】P 2022007495
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2019023964の分割
【原出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】竹中 克昭
(72)【発明者】
【氏名】狩野 大輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 紅音
(72)【発明者】
【氏名】石井 和磨
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 晋也
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002329(JP,A)
【文献】特開平08-091004(JP,A)
【文献】特開平10-006704(JP,A)
【文献】特開2021-050048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 13/00
B65G 39/02
B66B 21/10
B66B 23/08
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向いた搬送面上のものを任意の水平方向に搬送する全方向搬送装置であって、
前記搬送面内で搬送方向に回転駆動する駆動体を備えた搬送部と、前記搬送部の搬送方向を任意の水平方向に変更する方向変換部と、を含み、
前記駆動体は複数の球体を含み、
前記搬送部は、前記複数の球体と、前記球体を駆動する球状の仲介駆動体と、
駆動体の駆動源を備え、
前記球体は、前記搬送面上で任意の水平方向に回転自在であり、
前記仲介駆動体は、前記複数の球体を回転駆動し得るように前記複数の球体を下方より支持し、
前記
駆動体の駆動源は、前記仲介駆動体を回転駆動し得るように前記仲介駆動体に接続され、
前記方向変換部は、
前記駆動体の駆動源とは別箇に設けられた駆動源によって駆動し、ギアを介して
前記駆動体の駆動源が載置された台の向きを変更することにより前記搬送部の向きを変更し、
前記搬送部を任意の水平方向に回転させる、
ことを特徴とする全方向搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ものを任意の水平方向に搬送する全方向搬送装置及び全方向搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、これまでにあまり検討されてこなかった新たな移動手段「ベアリングロード」の開発に関連する発明である。「ベアリングロード」は従来の移動手段の概念とは別切り口の概念の移動手段であり、確かにこれまでにも同様の技術開発は存在するが、自点起発事象予測方式(
図9(b))を採用する分散型移動手段という観点での発明は調査した範囲内では見つけることが出来ず、非常に独創性および新規性の高い発明であると言える。
【0003】
ベアリングロードは、移動対象物を半自動的に目的地に搬送する技術であり、動く歩道と車のオートメーション化が類似研究分野である。既に単なる荷物の搬送手段としての開発は行われており、その研究開発の1つとしてドイツの輸送機関DHLの倉庫でパイロット試験が行われている(非特許文献1)。また本願の前に出願した出願「特開2018-2329号公報」(特許文献1)のベアリングロードの構成に着目すれば、ベアリングロードとしての利用概念とは異なるが、球体駆動式全方向移動機構の開発が九州工業大学などから報告されている(非特許文献2)。
【0004】
ドイツの輸送機関DHLの倉庫でパイロット試験されたCellular Conveyor(celluveyor)(非特許文献1)は、3つの無指向性ホイール(オムニホイール)を個別に駆動し、移動対象物をあらゆる方向と向きに自由に運送する事が出来るシステムである。ユニットは六角柱状に構成されており、敷き詰めてアレイ化されている。主に荷物搬送だけを対象としているが、オムニホイールやメカナムホイールなど無指向性ホイールが弱点とする不整地面との動力伝達を向上させるため、本開発では球体やさらに高効率を追求した面速度一定機構を利用している点で異なる。一方球体を利用した全方位移動機構の開発が九州工業大学で行われており、機構の設計から進行方向に進むための駆動式の導出、試験機の試作、走行試験などされている(非特許文献2)。ただし、球体を用いた筐体としてユニット単体を移動手段として利用する技術開発であり、本発明のアレイ化して移動対象物を搬送する技術開発とは異なる。
【0005】
現在多くの開発が進められている自動車のオートメーション化において最も重要な要素は、やはり機械学習やデータマイニングなどの技術開発である。実際多くのデータに基づき事前に危険を察知したり、危険に陥りやすい状況を前もって予想する事が可能になりつつある。しかし既存移動手段の場合、多くが他点起発事象予測方式(
図9(a))であり、別地点でこれから移動する先で起こることを予測せざるを得ず、それらの予想には限界が生じる。一方、「ベアリングロード」は、移動対象物が通過する予定の地点自身が自らの場所で起こることを予測する自点起発事象予測方式(
図9(b))を採用でき、さらには分散型移動手段でもあり、既存移動手段が備えなかった別次元の安全性を確保することが可能である。また過疎地の交通手段確保や地域毎の天候格差への対応も可能であり、従来検討されてこなかった別切り口からの安全確保も可能な技術である。
また本発明では、下述するように単に装置開発だけでなく、移動対象物を安全かつ効率良く目的地に搬送する為の最適なルート選択や制御方法など新しい技術の開発が必要不可欠であり、まさにこれまでにない一分野が構築できるほど高い学術的効果を有している。
【0006】
本発明の3つの利点について説明する。まず分散して輸送すること(分散輸送)が可能となる。次にどこにでも設置(ユビキタスな設置)が可能になるという点である。また最後
に最も重要なこととして、従来移動手段の安全確保として大きな問題となっていた他点起発事象予測方式でなく、自点で起こることの予測による事故防止が出来るため(自点起発事象予測による)より高い安全性の確保が可能になるという点である。
【0007】
<分散輸送の利点>
そもそも移動対象物の重量は人であれば60kg程度であるが、安全を確保するために1.5t、つまり25倍もの重量の筐体を動かしているのが自動車である。これは~60km/hや~100km/hという速度で移動する際の安全を確保することもさながら、それ以上に自身よりも大きな移動体、例えばトラック等から我々の命を守ることがこのように堅牢で巨大なものを動かす要因となっている。もしこの重量を分散させることが叶えば、そのような巨体を動かす必要性が減り、事故時の衝撃が少なくてすみ、安全性が向上する。本研究開発の対象であるベアリングロードは分散型移動手段であり、高い安全性の確保が期待できる。
【0008】
<ユビキタスな設置>
ベアリングロードの個々の筐体は望ましくは10~20cm程度のものを想定している。車のオートメーション化で問題となる、都会の細い路地、山奥の整備されてない道などへも設置が可能である。また構造的に雨や雪など気象現象の問題への対策、つまり治水対策や融雪対策等も可能である。さらに電源の確保として太陽光発電による自立運転も検討しているため電源も必要最小限で済むような仕組みを構築する事も可能である。その為特に設置箇所を選ばず敷設することができる移動手段である。
【0009】
<自点起発事象予測による高い安全性の確保>
現在、あらゆる移動手段が、遠く離れた箇所から進行したいところで何が起こるかを予測、つまり他点起発事象予測(
図9(a))により、安全な運航の確保に努めているが、運転者やAI 等代理運転者自身が事故の発生しやすい状況を予測し回避する事を前提とした事故発生防止が基本である。この場合、運転者の過去からの経験や莫大なデータが必要であり、それでも突発的な事象を避けることが難しい場合がある。一方ベアリングロードの場合、筐体自身が周囲の情報を集め次の瞬間に自分自身のところでどのような事が起こるかを推定する手法を執れる、つまり自点起発事象予測が可能な技術である(
図9(b))。そのため、他点起発事象予測を基本とする現行移動手段よりも安全の確保が容易となるのは勿論、運転者自身が未来を予測する負担を現行のオートメーション化よりもさらに減らせるため、より安全な運行が可能となる。
【0010】
本発明の基礎概念は「特開2018-2329号公報」(特許文献1)にて出願した。この時の発明では一連の発明のアイデアの発端である「ドラえもん」(登録商標)の秘密道具に倣い、球体を基準とした技術を発明した。研究室では引き続き本開発を進めているが、今回出願する内容の研究の中で別の搬送手段を思いつき、その開発が極めて合理的であったので発明として届け出るに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】celluveyor,http://donar.messe.de/exhibitor/hannovermesse/2017/L857706/celluveyor-flyer-eng-511765.pdf, http://www.biba.uni-bremen.de/en/news/article/celluveyor-success-story-with-dhl.html
【文献】石田 俊一, 宮本 弘之, 「球体駆動式全方向移動機構の開発」, 日本機械学会論文集,78巻(2012)2162
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、動力源のエネルギー伝達ロスが少ない全方向搬送装置、及び全方向搬送システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、上方に向いた搬送面上のものを任意の水平方向に搬送する全方向搬送装置であって、前記搬送面内で搬送方向に回転駆動する駆動体を備えた搬送部と、前記搬送部の搬送方向を任意の水平方向に変更する方向変換部と、を含み、前記駆動体は複数の球体を含み、前記搬送部は、前記複数の球体と、前記球体を駆動する球状の仲介駆動体と、駆動体の駆動源を備え、前記球体は、前記搬送面上で任意の水平方向に回転自在であり、前記仲介駆動体は、前記複数の球体を回転駆動し得るように前記複数の球体を下方より支持し、前記駆動体の駆動源は、前記仲介駆動体を回転駆動し得るように前記仲介駆動体に接続され、前記方向変換部は、前記駆動体の駆動源とは別箇に設けられた駆動源によって駆動し、ギアを介して前記駆動体の駆動源が載置された台の向きを変更することにより前記搬送部の向きを変更し、前記搬送部を任意の水平方向に回転させる、ことを特徴とする全方向搬送装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明の全方向搬送装置によれば、前記搬送面内で搬送方向に回転駆動する駆動体を備えた搬送部と、前記搬送部の搬送方向を任意の水平方向に変更する方向変換部と、を含み、前記駆動体は複数の球体を含み、前記搬送部は、前記複数の球体と、前記球体を駆動する球状の仲介駆動体と、駆動源を備え、前記球体は、前記搬送面上で任意の水平方向に回転自在であり、前記仲介駆動体は、前記複数の球体を回転駆動し得るように前記複数の球体を下方より支持し、前記駆動体の駆動源は、前記仲介駆動体を回転駆動し得るように前記仲介駆動体に接続されているので、駆動源の駆動によって、仲介駆動体を介して複数の駆動体が回転して対象物を搬送したい方向に移動させることができる。
前記方向変換部は、前記駆動体の駆動源とは別箇に設けられた駆動源によって駆動し、ギアを介して前記駆動体の駆動源が載置された台の向きを変更することにより前記搬送部の向きを変更し、前記搬送部を任意の水平方向に回転させるので、駆動体の駆動源と方向変換部の駆動源とを別箇にすることができ、方位と搬送の制御を別々に分けられ制御の複雑さを避けられ、駆動源のエネルギー効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る全方向搬送装置の概略斜視図である。
【
図4】同全方向搬送装置のベルト及びベルト駆動部の概略斜視図である。
【
図5】同全方向搬送装置のベルト及びベルト駆動部の概略側面図である。
【
図6】同全方向搬送装置の外枠部の概略斜視図である。
【
図7】(a)(b)のそれぞれは全方向搬送システムの概略平面図の一例である。
【
図8】全方向搬送システムに人が乗ったときの概略平面図である。
【
図9】(a)は他点起発事象予測の概念図であり、(b)は自点起発事象予測の概念図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る全方向搬送装置の概略斜視図である。
【
図11】同全方向搬送装置の一部の概略斜視図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る全方向搬送装置の搬送面の概略平面図である。
【
図13】(a)は、ベルトの周長が同一の場合の全方向搬送装置の概略斜視図であり、(b)は、ドライブ歯車を径方向からみた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る全方向搬送装置について、図面を参照しながら説明する。実施形態に係る全方向搬送装置1の概略斜視図を
図1に示し、概略平面図を
図2に示し、概略側面図を
図3に示す。
全方向搬送装置1は、上方に向いた搬送面21上のものを任意の水平方向に搬送する。本明細書でいう「もの」には物品である「物」と、「人(者)」とを含んでおり、「物品」だけを指す場合には「物」と記す。
全方向搬送装置1は、搬送面21に沿って駆動するベルト22を備えた搬送部2と、搬送面21の外周を囲む外枠部3とを備えている。
搬送部2はベルト22を駆動するベルト駆動部23を有し、外枠部3の内周と搬送面21の外周とは円形であり、外枠部3の内周面と搬送面21の外周面は摺動可能に密接している。
搬送部2は、外枠部3の内で任意の平面方向に回転可能であり、全方向搬送装置1は搬送部2を任意の方向に回転させる方向変換部(図示せず)を備える。
また、複数の全方向搬送装置1を平面状に備えた全方向搬送システムは、ものを任意の水平方向に搬送する。全方向搬送システムは、搬送部2及び方向変換部の動作を指示する制御部(図示せず)を備える。
【0018】
搬送部2は、互いに駆動方向が平行な複数のベルト22を搬送面21に備える。複数本のベルト22が搬送面21に露出している長さは、搬送面21の大きさに合わせて中央付近のベルト22の露出長さを長くし、端側のベルト22の露出長さを短くしている。このことによって、ベルト22と搬送物との接触面積を広くできるので、1本にかかる圧力を分散でき、接触摩擦力を向上させ重いものを搬送し易くすること、搬送物の揺れが少なくなり安定して搬送することなどができる。
【0019】
ベルト駆動部23は、モータ等の駆動源(図示せず)によって駆動されるドライブ歯車23aと、ベルト22の搬送部分の両端を支持するコーナー歯車23bと、ベルト22の張力を調整するスナップローラ23cとを備えている(
図4、5参照)。ドライブ歯車23aは、コーナー歯車23bより下に配置されている。ベルト22の周長は、中央付近のベルト22が長く、端側のベルト22が短い。
スナップローラ23cは一対のローラであって、1本のローラで複数本のベルト22を支持している。スナップローラ23cの位置によってベルト22の張力を調整する。ベルト22の張力調整を一対のスナップローラ23cで行うので、ベルト駆動部23の構造を簡単にすることができる。
なお、スナップローラ23cを一対のローラでなく、複数対のローラとし、ベルト22枚に設けてもよい。張力を一定にし易くすることができる。
【0020】
方向変換部は、駆動源(例えばモータ)によって駆動し、ギア等を介して搬送部2の搬送方向を変更する。ベルト駆動部23と方向変換部の駆動源を別箇にすることによって制御の複雑さを回避でき、駆動源のエネルギー効率を高めることができる。
【0021】
搬送面は最密充填と方位選択を同時に検討すると筐体は六角形形状で動力伝達部が円形であるのが最も効率が良い。
外枠部3の外周は六角形状をしており、複数の全方向搬送装置1がハニカム状に配置される。
図6に外枠部3の概略斜視図を示す。この図では、外枠部3を脚31で支持している。搬送面21の外周が円形なので、全方向搬送装置1をハニカム状に配置することにより、単位面積当たりの全方向搬送装置1の個数を増やすことができる。
図7(a)に全方向搬送装置1を縦横方向に配置した状態を示し、
図7(b)にハニカム状に配置した状態を示す。縦横方向に配置した場合、1つの全方向搬送装置1aの周囲には4つの全方向搬送装置1bが隣接するだけだが、ハニカム状に配置した場合には、6つの全方向搬送装置1cが隣接するので全方向搬送装置1の密度が高くなり、6つ全てと等間隔になる。このように搬送面21の外周を円形とし全方向搬送装置1をハニカム状に配置することにより、ベルト22と搬送物との接触面積を広くできるので、搬送するものの揺れが少なくなり安定して搬送することができる。また、単位面積当たりの全方向搬送装置1の個数を増やすことによって、全方向搬送装置1間の距離が短くなり方向転換の頻度を増やせるので、搬送経路を細かくすることができ、なめらかに搬送可能となる。また、ハニカム状なので、同一形状・形態のものを複製して製造設置することができる。
なお、外枠部3の外周が四角形のユニットとし、縦横方向に配置することも当然に可能である。
【0022】
全方向搬送装置1の大きさは本実施形態において10~30cm程度を想定しているが、実際には大きさに制限は無く、搬送するものの単位面積当たりの質量や、搬送するものにもよるが、搬送面21の外径の最小値として100cmが好ましく、30cmがより好ましく、20cmがより好ましく、10cmがより好ましく、5cmがより好ましく、1cmが更に好ましい。外径の最大値としては、20cmが好ましく、50cmがより好ましく、70cmがより好ましく、100cmがより好ましく、200cmがより好ましく、300cmが更に好ましい。
搬送面21の外径を小さくすることによって、全方向搬送装置1間の距離が短くなり、方向転換の頻度を増やせるので、搬送経路を細かくすることができる。(
図8参照)
搬送するものを高速移動させることや重要物の搬送などを考慮すると全方向搬送装置1、1個当たりの大きさを大きくした方が安定性は増大すると考えられるので、1000cmや3000cm等の大きさとしてもよい。
【0023】
(運転制御)
物と人の違いは意志の有無であり、人の場合は移動時に移動先・目的地が変更する可能性が存在することである。しかしながら、運搬するものが物でも人でも基本的には同一に扱うことができる。
【0024】
全方向搬送システムは、搬送する物や人の位置を検知する検知部と、移動目的地を認識する目的地認識部と、物や人の位置と移動目的地とから搬送部と方向変換部の運転を制御する制御部とを備える。
1.検知部としては次のようなものがある。
(1)GPS機能を備えた携帯電話やスマートフォン等の機器や、GPS機能を備えた専用のリモートコントローラ等であって、全方向搬送装置1に乗った人が携帯し、又は全方向搬送装置1の上の物に取り付け、GPS機能によって得た位置情報を制御部に送信する。
(2)全方向搬送装置1に乗った物や人を撮影する、全方向搬送装置1の周囲に設けたカメラであり、画像データを制御部に送信する。制御部は画像データから位置を認識する。
(3)全方向搬送装置1に設けられ、物や人を検知する圧力センサー、加速度センサー、感温センサー、音波音圧式センサー、光センサー、カメラ等であり、検知した位置データを制御部に送信する。
2.目的地認識部としては次のようなものがある。
(1)移動前から移動先が決定している場合
携帯電話やスマートフォン等の機器や、専用のリモートコントローラ等であり、目的地をキー操作等によって入力し、制御部に送信する。
(2)移動先が随時変更する場合
(2-1)圧力センサー、加速度センサー、感温センサー、音波音圧式センサー、光センサー等で、体重移動や光を遮る動作を感知し、人が移動したい希望方向を類推する。
(2-2)人の場合等の移動の意思や目的地を、人工知能が下記の事項等によって判断し、全方向搬送システムを操作する。人工知能は、携帯電話やスマートフォン等の機器や、専用のリモートコントローラ等に設ける。また、制御部に設けてもよい。
・「言語の理解」、「論理的な推論」、「経験からの学習」、「群知能アルゴリズム」、「ベイズ推定理論」
【0025】
搬送するものの重量を規制する場合には、面積当たりの重量で規制するのが好ましいと思われる。また、搬送速度として本研究段階では人が歩く速度程度(2~8km/hr)を考慮しており徒歩程度の速度でもよいが、全方向搬送装置の大きさや搬送するものによっては例えば60km/hrのような速度としてもよい。
【0026】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る全方向搬送装置について、図面を参照しながら説明する。第2実施形態に係る全方向搬送装置101の概略斜視図を
図10に示し、構造を見易くするために駆動体と搬送面を取り除いた概略斜視図を
図11に示す。
全方向搬送装置101は、搬送面121上で回転駆動する3個の球状の駆動体122を有する搬送部102を備えている。
搬送部102は、モータ等の駆動源123と、駆動源123によって回転駆動される球状の仲介駆動体124を有しており、仲介駆動体124は駆動体122を下方より支持している。この構成によって、駆動源123の駆動によって、仲介駆動体124を介して3個の駆動体122が回転して対象物を搬送したい方向に移動させる。なお、駆動体122の数に制限はない。
駆動源123と仲介駆動体124は任意の水平方向に回転可能であり、駆動源123と仲介駆動体124の水平方向の向きによって、駆動体122の回転方向を制御できる。
全方向搬送装置101は、駆動源123と仲介駆動体124を任意の水平方向に回転させる方向変換部104を備えており、方向変換部104はモータ等の駆動源141によって駆動源123と仲介駆動体124の向きを制御する。
駆動体122の駆動源123と方向変換部104の駆動源141とを別箇にすることによって方位と搬送の制御を別々に分けられ制御の複雑さを避けられ、駆動源のエネルギー効率を高めることができる。
なお、本実施形態の場合、駆動体122が球状なので、搬送するものをカゴ等の容器に入れたり、運搬する人が専用の靴を履くようにしてもよい。
【0027】
<他の実施形態>
本発明の実施形態は上述したものに限られない。他の実施形態の例を下記に示す。
1.ベルト22は1本でも良い。構造が簡単になる。
2.ベルト22が複数の場合、ベルト22毎にスナップローラを設けてもよい。ベルト22毎の張力の調整が容易になる。
3.ベルト22の露出長さは、同一でもよい。ベルト22の周長を同一にできるので、ベルト22を1種類に限定できる。
4.外枠部3の外周は六角形状に限定されず、例えば四角形でもよい。
5.全方向搬送装置1の配列をハニカム状に限定しなくてもよい。
6.ベルト22は
図12に示すように、多数のベルトを搬送面21内の全体に敷き詰めてもよい。もちろん、ベルトの本数は偶数でなく、奇数でもよい。
7.ベルト22が複数の場合、ベルトの周長を同一にしてもよい。この場合、ベルト22の張力を一定にするために、ドライブ歯車23a、コーナー歯車23b、スナップローラ23cのそれぞれを一体物とし、ベルトと接触する場所(円筒)毎にサイズを変更してもよいし、ドライブ歯車23a、コーナー歯車23b、スナップローラ23cのそれぞれをベルト23毎に設けてサイズや配置位置等を変化させてもよい。例えば、ドライブ歯車23aの外径は、ドライブ歯車23aの長さ方向で同一でなく、両端側ほど、外径が長くなるように、複数の歯車からなっている。この場合の全方向搬送装置1の概略斜視図を
図13(a)に示す。
図13(a)では、ベルト22、外枠部3だけを示している。
図13(b)は、ドライブ歯車23aを径方向からみた正面図を示す。なお、この図では歯車の歯を描いていない。
このように、ベルトの周長を同一にする場合には、ドライブ歯車23aの長さ方向に亘ってドライブ歯車23a外径を変えることにより、ベルト22の張力が一定になる。なお、両端側の歯車程、回転数を少なくするようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、方位と搬送の制御が別々に分けられているために制御の複雑さを避けることができ、駆動体の駆動源の駆動によって仲介駆動体を介して複数の駆動体が回転して対象物を搬送したい方向に移動させることができ、例えば物品の搬送や人の移動に好適に使用される。
【符号の説明】
【0029】
1、1a、1b、1c、101 全方向搬送装置
2、102 搬送部
21、121 搬送面
22 ベルト
23 ベルト駆動部
23a ドライブ歯車
23b コーナー歯車
23c スナップローラ
3 外枠部
31 脚
104 方向変換部
122 駆動体
123、141 駆動源
124 仲介駆動体