(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】保持用装着具
(51)【国際特許分類】
A61B 90/50 20160101AFI20230807BHJP
【FI】
A61B90/50
(21)【出願番号】P 2023521122
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014135
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 円朗
(72)【発明者】
【氏名】安藤 豪宣
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/166185(WO,A1)
【文献】特開2017-056214(JP,A)
【文献】特開2002-191545(JP,A)
【文献】特開2021-083637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0357988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結アームと前記連結アームに支持されたホルダーとを有する手術支援装置に対して用いられると共に
患者の体腔に挿入される挿入部と前記挿入部に連続されるヘッド部
とを有する手術具を前記ホルダーに保持させるための保持用装着具であって、
前記ホルダーに着脱可能にされたセパレーターと、
前記セパレーターに着脱可能にされ前記ヘッド部が装着されるアダプターとを備え、
前記アダプターは前記ヘッド部が装着された状態において操作者に把持される把持部として設けられ
、
前記ホルダーにはロック機構が設けられ、
前記セパレーターには前記ロック機構によって前記ホルダーにロックされる被ロック部と前記アダプターをロックするロック部とが設けられ、
前記アダプターには前記ロック部によって前記セパレーターにロックされるロック用係合部が設けられ、
前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向は前記セパレーターの前記ホルダーに対する取付方向に直交する方向にされ、
前記ロック用係合部は一対の係合突部を有し前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向へ行くに従って一対の前記係合突部間の距離が小さくなる形状に形成され、
前記ロック部には前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向へ行くに従って距離が小さくなる一対の係合溝部が形成され、
一対の前記係合突部がそれぞれ一対の前記係合溝部に挿入されることにより前記アダプターが前記セパレーターにロックされる
保持用装着具。
【請求項2】
前記アダプターが前記セパレーターにロックされた状態において前記ロック用係合部における前記
アダプターの前記セパレーターに対する取付方向側の端部が一対の前記係合溝部から突出された
請求項1に記載の保持用装着具。
【請求項3】
前記ロック用係合部に弾性変形可能な被ロック片が設けられ、
前記被ロック片にロック用突部が設けられ、
前記ロック部に係止孔が形成され、
前記被ロック片の弾性力によって前記ロック用突部が前記係止孔に挿入されることにより前記アダプターが前記セパレーターにロックされる
請求項1又は請求項2に記載の保持用装着具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術支援装置に対して用いられる保持用装着具についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術支援装置を用いた外科手術が普及しつつある。このような手術支援装置は、順に回動可能又は回転可能に連結された複数の連結アームを備え、連結アームがアクチュエーター等の駆動力によって動作され、連結方向における一端に位置された連結アームに手術具を保持するホルダーが連結されているものがある。手術具としては内視鏡や鉗子等が手術の種類や状況に応じて使用される。
【0003】
手術支援装置において、複数の連結アームがそれぞれ所定の方向へ回動又は回転されると、連結アームの動作に伴って手術具の位置や姿勢が変化され、ホルダーに保持された手術具によって外科手術が行われる。
【0004】
上記のような手術支援装置を用いた外科手術は、一般に、手術室に設置された手術支援装置をマスタースレーブ方式により術者(医師)が遠隔から操作することによって行われる。このような外科手術が行われる際には、手術具の位置や姿勢の基準点とされるピボット点が設定される。
【0005】
ピボット点は患者の体腔に形成され手術具が挿入されるポートに略一致する位置であり、トロッカーが使用される場合にはトロッカーの位置に略一致される。従って、手術具が患者の体腔に挿入される状態においては、手術具の一部が常にピボット点を通るように手術具の位置や姿勢が制御され、手術具の一部がピボット点を通ることにより患者の体表付近の組織に対する負荷の発生が防止されて安全性が確保される。
【0006】
また、外科手術においては、術者や補助者が手術具を把持して手動により手術具の操作を行う場合もある。例えば、手術具を患者の体腔に挿入したり、挿入した状態において体腔の状況を撮像したり観察したりする場合等に、手術具の操作を手動により行う場合がある。
【0007】
上記のような手術支援装置には、手術具がホルダーにセパレーターやアダプターを介して取り付けられることにより保持されるものがある(例えば、特許文献1参照)。アダプターは形状や大きさの異なる複数のタイプが用意されている場合もあり、この場合には手術具の大きさや形状等に応じて最適なタイプが選択されて使用される。
【0008】
手術支援装置は手術時に清潔領域と不潔領域を仕切るためのドレープによって覆われ、ドレープの内部の空間が清潔領域として保たれる。手術支援装置がドレープによって覆われた状態において、セパレーターがドレープの外側からホルダーに取り付けられ、手術具が装着されたアダプターがセパレーターに取り付けられ、手術具がセパレーターとアダプターを介してホルダーに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、手術具は機能等に応じて各種のタイプが存在するが、同一の機能を有するタイプでも大きさや形状が異なるものが存在する。例えば、手術具として用いられる内視鏡は患者の体腔に挿入される挿入部と挿入部が連結されるヘッド部とを有し、挿入部は、例えば、径が5mmから10mmの軸状に形成され形状や大きさの差が小さいが、ヘッド部については形状や大きさの差が大きいことが多い。
【0011】
このような手術具においては、挿入部の形状や大きさの差が小さいため、何れの内視鏡を手動により用いる場合においても、挿入部を把持することにより違和感なく操作等を行い易くなり、術者において良好な操作性を確保することが可能である。
【0012】
しかしながら、挿入部を把持して操作を行う場合には、挿入部の径が小さく内部にレンズ等の各部が配置されているため、万が一、挿入部に過度な力が付与されたときに内部の構造に影響を及ぼしレンズ等の損傷を生じるおそれがある。また、挿入部を把持して操作を行う場合に、把持した部分は患者の体腔に挿入することができないため、その分、患者の体腔への挿入部の挿入量が制限され、罹患部の状態を正確に把握することができなくなる等の手術への支障を来すおそれもある。
【0013】
一方、手術においては、患者の体型や罹患部位や罹患状態等に応じた最適な手術具を用いて適切かつ迅速な施術が行われることが必要にされている。
【0014】
そこで、本発明保持用装着具は、手術に支障を来すことなく適切かつ迅速な施術を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る保持用装着具は、複数の連結アームと前記連結アームに支持されたホルダーとを有する手術支援装置に対して用いられると共に患者の体腔に挿入される挿入部と前記挿入部に連続されるヘッド部とを有する手術具を前記ホルダーに保持させるための保持用装着具であって、前記ホルダーに着脱可能にされたセパレーターと、前記セパレーターに着脱可能にされ前記ヘッド部が装着されるアダプターとを備え、前記アダプターは前記ヘッド部が装着された状態において操作者に把持される把持部として設けられ、前記ホルダーにはロック機構が設けられ、前記セパレーターには前記ロック機構によって前記ホルダーにロックされる被ロック部と前記アダプターをロックするロック部とが設けられ、前記アダプターには前記ロック部によって前記セパレーターにロックされるロック用係合部が設けられ、前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向は前記セパレーターの前記ホルダーに対する取付方向に直交する方向にされ、前記ロック用係合部は一対の係合突部を有し前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向へ行くに従って一対の前記係合突部間の距離が小さくなる形状に形成され、前記ロック部には前記アダプターの前記セパレーターに対する取付方向へ行くに従って距離が小さくなる一対の係合溝部が形成され、一対の前記係合突部がそれぞれ一対の前記係合溝部に挿入されることにより前記アダプターが前記セパレーターにロックされるものである。
【0016】
これにより、ホルダーにセパレーターが取り付けられセパレーターにアダプターが取り付けられアダプターにヘッド部が装着された状態においてアダプターを介してヘッド部を把持することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホルダーにセパレーターが取り付けられセパレーターにアダプターが取り付けられアダプターにヘッド部が装着された状態においてアダプターを介してヘッド部を把持することが可能になると共にアダプターによって異なる形状又は大きさの手術具を使用することが可能になり、手術に支障を来すことなく適切かつ迅速な施術を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図2乃至
図24と共に本発明保持用装着具の実施の形態を示すものであり、本図は、手術支援装置の使用状態を示す概略斜視図である。
【
図5】セパレーターがロック機構によってロックされた状態を示す断面図である。
【
図6】ホルダーと装置本体がドレープによって覆われた状態をセパレーターとともに示す斜視図である。
【
図9】セパレーターがフードを介してホルダーに取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図17】手術具とアダプターを示す分解斜視図である。
【
図18】手術具の被装着部がアダプターに装着された状態を示す断面図である。
【
図19】アダプターがセパレーターに取り付けられセパレーターがホルダーに取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図20】取付方向を示すためのアダプターとセパレーターとホルダーを示す斜視図である。
【
図21】第2の部材がセパレーターに取り付けられた状態でアダプターとセパレーターを示す斜視図である。
【
図22】アダプターがセパレーターにロックされた状態を示す断面図である。
【
図23】アダプターがセパレーターにロックされた状態を
図22とは異なる方向において示す断面図である。
【
図24】アダプターのセパレーターに対するロックが解除された状態を
図23と同じ位置で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明保持用装着具を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
以下に示した実施の形態は、本発明に用いられる手術支援装置を手術台に固定されて使用されるタイプに適用した例を示す。但し、本発明に用いられる手術支援装置は適用範囲が手術台に固定されて使用されるタイプに限られることはなく、手術室の床等に設置されて使用されるタイプや手術室の天井や壁面に取り付けられて使用されるタイプにも適用することができる。
【0021】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0022】
<手術支援装置等の概略構成>
先ず、手術支援装置1等の概略構成について説明する(
図1及び
図2参照)。
【0023】
手術室には手術台100が設置され、手術台100には患者200が、例えば、仰向けの状態で横たえられている。手術台100の側部には固定用レール100aが設けられている。患者200の体腔201、例えば、腹壁201aにはポート202が形成される。ポート202には外科手術が行われるときに後述する手術具の一部が挿入される。ポート202は手術具の一部が挿入される小孔である。
【0024】
手術支援装置1は装置本体2とホルダー3を有している。装置本体2の内部には、例えば、図示しない一つの電動モーターと図示しない複数の空気圧アクチュエーターとが配置されている。
【0025】
装置本体2は手術台100に固定可能にされた固定ベース4と固定ベース4に連結されたアーム体5とを有している。
【0026】
固定ベース4は内部に所定の各機構等が設けられた略直方体状のベース本体6とベース本体6に回転可能に支持された台座7とベース本体6から突出されたクランパー8とを有している。クランパー8は上側クランプ部8aと下側クランプ部8bを有し、上側クランプ部8aと下側クランプ部8bの少なくとも一方が他方に離接する方向へ移動可能にされている。
【0027】
ベース本体6にはクランパー8が設けられた面と反対側の面から図示しないエアー吸入管が突出されている。エアー吸入管は吸入チューブを介してコンプレッサーに接続される。従って、固定ベース4の内部にはコンプレッサーから圧縮空気が供給される。固定ベース4の内部に供給された圧縮空気は固定ベース4の内部を通ってアーム体5の内部へ向かいアーム体5の各部を動作させる駆動力として用いられる。
【0028】
手術支援装置1はクランパー8の上側クランプ部8aと下側クランプ部8bが固定用レール100aを上下から挟持することにより手術台100に固定される。
【0029】
尚、手術支援装置1は、例えば、固定ベース4が図示しない台車(スタンド)に取り付けられることにより台車によって搬送され、滅菌室に搬送されて滅菌処理が行われた状態で手術室に搬送されて手術において使用される。
【0030】
台座7はベース本体6に垂直方向に延びる軸S1を支点として回転可能に支持され、一部が固定ベース4の上面より上方に位置されている。台座7は、例えば、電動モーターの駆動力によって固定ベース4に対して回転される。
【0031】
アーム体5は第1の連結アーム9と第2の連結アーム10と第3の連結アーム11を有している。尚、アーム体5における連結アームの数は三つに限られることはなく、複数であればよく、二つでも四つ以上であってもよい。
【0032】
第1の連結アーム9は長手方向における一端部が第1の連結部9aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部9bとして設けられている。第1の連結アーム9は第1の連結部9aが台座7に連結され、水平方向に延びる軸S2を支点として台座7に対して回動可能にされている。第1の連結アーム9は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより台座7に対して回動される。
【0033】
第2の連結アーム10は長手方向における一端部が第1の連結部10aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部10bとして設けられている。第2の連結アーム10は第1の連結部10aが第1の連結アーム9の第2の連結部9bに連結され、水平方向に延びる軸S3を支点として第1の連結アーム9に対して回動可能にされる。第2の連結アーム10は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより第1の連結アーム9に対して回動される。
【0034】
第3の連結アーム11は長手方向における一端部が第1の連結部11aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部11bとして設けられている。第2の連結部11bは、例えば、二つの腕部によって構成されている。第3の連結アーム11は第1の連結部11aが第2の連結アーム10の第2の連結部10bに連結され、軸S3に直交する方向に延びる軸S4を支点として第2の連結アーム10に対して回転可能にされる。第3の連結アーム11は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10等の他の動作に応じて回転されるフリーな回転動作を行う部分である。
【0035】
<ホルダーの具体的構成等>
次に、ホルダー3の具体的構成等について説明する(
図2乃至
図5参照)。
【0036】
ホルダー3は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに回動可能に支持(連結)されている(
図2参照)。ホルダー3は外形状が略円柱状に形成され、長手方向(軸方向)における中間部において第2の連結部11bに連結されている。ホルダー3は軸S4に直交する方向に延びる軸S5を支点として第3の連結アーム11に対して回動可能にされている。ホルダー3は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10や第3の連結アーム11等の他の動作に応じて回動されるフリーな回動動作を行う部分である。
【0037】
ホルダー3は一部が回転可能にされ、回転されないベース筒部12とベース筒部12に回転可能に支持された回転部13とベース筒部12に取り付けられた連結筒部14とを有している(
図3参照)。
【0038】
ベース筒部12には軸方向に貫通された図示しない軸支持孔が形成されている。
【0039】
回転部13は一部がベース筒部12の軸支持孔に挿通された軸部15と軸部15の軸方向における一端部に結合された操作部16と軸部15の軸方向における他端部に結合された着脱部17とを有している。回転部13はベース筒部12と連結筒部14に対して軸S5に直交する軸S6の軸回り方向へ回転可能にされている。回転部13は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより回転可能にされると共に手動によっても回転可能にされている。
【0040】
軸部15には軸方向に延びる挿入孔15aが形成されている。軸部15にはそれぞれ外周面に開口された第1の配置凹部15bと第2の配置凹部15cが形成されている(
図4及び
図5参照)。第1の配置凹部15bと第2の配置凹部15cは挿入孔15aを挟んで反対側に形成され、第2の配置凹部15cの一部が挿入孔15aに連通されている。
【0041】
軸部15には挿入孔15aの両側に挿入孔15aとは直交する方向に延びる軸挿通孔18がそれぞれ形成され、軸挿通孔18は一端が第1の配置凹部15bに連通され他端が第2の配置凹部15cに連通されている。軸挿通孔18は第1の配置凹部15bに連通された側の略半部が大径部18aとして形成され第2の配置凹部15cに連通された側の略半部が小径部18bとして形成されている。大径部18aと小径部18bの間には第1の配置凹部15b側を向く円環状のバネ受け面18cが形成されている。
【0042】
軸部15にはロック機構19が支持されている。ロック機構19はベース部材20と一対のバネ支持軸21とロック部材22を有している。
【0043】
ベース部材20は略平板状のボード部20aとボード部20aの両端部を除く部分から突出された被押圧部20bとを有している。ベース部材20は一部が第1の配置凹部15bに挿入されて配置されている。
【0044】
一対のバネ支持軸21はそれぞれボード部20aの両端部に取り付けられている。バネ支持軸21は軸方向における一端寄りの部分がボード部20aに取り付けられ、軸方向における両端部を除く部分が軸挿通孔18に挿入されている。バネ支持軸21には圧縮コイルバネ23が支持され、圧縮コイルバネ23の両端部がそれぞれボード部20aとバネ受け面18cに押し付けられている。
【0045】
ロック部材22は第2の配置凹部15cに位置され、両端部にバネ支持軸21の軸方向における他端部が取り付けられている。ロック部材22は圧縮コイルバネ23の付勢力によってベース部材20側に付勢されている。従って、ロック部材22は圧縮コイルバネ23に付勢力に反する力が付与されていない状態において両端部が軸部15に押し付けられ両端部の間の部分の一部が挿入孔15aに位置されている。
【0046】
操作部16には切替釦16aが配置されている(
図3参照)。切替釦16aは回転部13の回転を行うための駆動力を切り替える機能を有している。
【0047】
着脱部17は外周面が円周面に形成され、軸方向において開口された結合溝17aを有している。結合溝17aは矩形状に形成されている。結合溝17aには軸部15の挿入孔15aが連通され、結合溝17aにおける開口の大きさは挿入孔15aにおける開口の大きさより大きくされている。
【0048】
連結筒部14は略円筒状に形成され、ベース筒部12に軸部15と着脱部17を覆う状態で取り付けられている。連結筒部14は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに支持(連結)されている。
【0049】
連結筒部14にはロック解除釦14aが配置されている。ロック解除釦14aの下面には図示しないバネ部材の上端部が取り付けられている。ロック解除釦14aが操作されることにより、バネ部材を介してロック解除釦14aによってベース部材20の被押圧部20bが圧縮コイルバネ23の付勢力に反して押圧される。但し、ロック機構19が軸部15の回転方向においてロック解除釦14aと同じ位相に位置された状態でのみロック解除釦14aが操作されたときに被押圧部20bが押圧される。被押圧部20bが押圧されると、バネ支持軸21とロック部材22がベース部材20と一体になって移動され、挿入孔15aに位置されていたロック部材22の一部が第2の配置凹部15cに位置されてロック部材22の全体が第2の配置凹部15cに位置された状態にされる。
【0050】
ホルダー3において、切替釦16aが操作されている状態においては回転部13が手動により回転可能にされる。一方、切替釦16aが操作されていない状態においては回転部13が空気圧アクチュエーターの駆動力により回転可能にされる。
【0051】
手術支援装置1の使用者、例えば、医師や補助者等の術者(操作者)により操作部16が手動により回転されることによって軸部15と着脱部17が一体になって回転され、回転部13がベース筒部12と連結筒部14に対して回転される。
【0052】
上記のように、手術支援装置1においては、軸S1から軸S6までの6軸で各部が回転可能又は回動可能な構成にされているため、ホルダー3に保持される手術具の向き及び位置(姿勢)の自由度が高く、手術を高い精度で迅速に行うことができる。特に、軸S4と軸S5においてフリーな回転動作又は回動動作が行われ軸S4と軸S5が直交するため、ポート202に挿入された手術具の向きや位置が変化されたときや患者200の呼吸状態等によりポート202の向きや位置が変化されたときに患者200の体表付近の組織に対する負荷を低減することができる。
【0053】
また、手術支援装置1においては、アーム体5の手術具から最も遠距離の位置における軸S1での回転が電動モーターの駆動力によって行われ軸S1より手術具に近い位置における軸S2と軸S3と軸S6での回転又は回動が空気圧アクチュエーターの駆動力によって行われる。
【0054】
従って、電動モーターの駆動力より患者200に対する負荷が小さい空気圧アクチュエーターの駆動力によって手術具に近い位置においてアーム体5の動作が行われるため、患者200の体表付近の組織に対する負荷を一層低減することができる。
【0055】
さらに、空気圧アクチュエーターの駆動力によるアーム体5の回転又は回動の箇所が電動モーターの駆動力によるアーム体5の回転の箇所より多くされていることによっても、患者200の体表付近の組織に対する負荷の低減を図ることができる。
【0056】
尚、手術支援装置1においては、電動モーター又は空気圧アクチュエーターに代えて高精度の位置決めが可能な圧電モーター等の超音波モーターが用いられていてもよい。超音波モーターが用いられることにより、手術支援装置1における省電力化や小型化を図ることが可能である。
【0057】
<ドレープの構成等>
次いで、装置本体2とホルダー3を覆うドレープ24の構成等について説明する(
図6参照)。
【0058】
手術時には、装置本体2とホルダー3が滅菌された状態において滅菌されたドレープ24によって覆われる。
【0059】
ドレープ24はフィルム状のカバー25とカバー25に取り付けられたフード26と一部がカバー25に接着等により接合された複数の巻き付けテープ27とを有している。
【0060】
カバー25は透明な樹脂材料によって形成されている。フード26はホルダー3の長手方向における一端部(先端部)に装着される装着ベース26aと装着ベース26aに保持された閉塞シート26bとによって構成されている。巻き付けテープ27は一端部がカバー25に接合されている。
【0061】
ドレープ24は装置本体2とホルダー3に被せられる。従って、装置本体2とホルダー3はカバー25の内部に位置された状態でドレープ24によって覆われる。装置本体2とホルダー3がドレープ24によって覆われた状態においては、ホルダー3における連結筒部14の先端部にフード26が取り付けられる。
【0062】
装置本体2とホルダー3がドレープ24によって覆われた状態において、複数の巻き付けテープ27がそれぞれの位置においてカバー25の外面に巻き付けられ図示しない固定用金具等によって締め付けられる。従って、巻き付けテープ27によってカバー25の捲れ上がり等が防止され、ドレープ24によって装置本体2とホルダー3の覆われた状態が保持される。
【0063】
尚、装置本体2の固定ベース4がクランパー8によって手術台100の固定用レール100aに固定された状態においては、固定ベース4が固定用レール100aに固定された状態で、例えば、クランパー8を含む固定ベース4の全体がドレープ24によって覆われる。但し、固定ベース4におけるクランパー8以外の部分がドレープ24によって覆われてもよい。
【0064】
<セパレーターの構成等>
続いて、ホルダー3に取り付けられるセパレーター28の構成等について説明する(
図5、
図7、
図8及び
図9参照)。尚、セパレーター28はセパレーター28に取り付けられる後述するアダプターとともにホルダー3における回転部13の回転に伴って回転されるが、以下のセパレーター28とアダプターの説明においては、セパレーター28がホルダー3に取り付けられる方向を後方として前後上下左右の方向を示す。
【0065】
セパレーター28はホルダー3に前後方向において着脱可能にされている(
図5及び
図9参照)。セパレーター28は樹脂材料によって形成され、ホルダー3に外形が円形状の第1のロック部29と第1のロック部29から後方に突出された挿通部30と第1のロック部29から前方に突出された一対の第2のロック部31とを有している(
図7及び
図8参照)。
【0066】
第1のロック部29は外径がホルダー3における連結筒部14の外径と略同じ大きさに形成されている。第1のロック部29は円板状の閉塞板部32と閉塞板部32からそれぞれ前方に突出された一対の溝形成用突部33とから成る。閉塞板部32には上端寄りの部分に、例えば、横長の係止孔32aが形成されている。一対の溝形成用突部33は係止孔32aの長手方向における両側において閉塞板部32から突出され、下方へ行くに従って互いに近付く形状に形成されている。
【0067】
挿通部30は第1のロック部29に連続され矩形のブロック状に形成された結合部34と結合部34から後方に突出された軸状の挿入突部35とによって構成されている。挿入突部35の後端部は先細りの形状に形成された破断用突部35aとして設けられている。挿入突部35には前後方向における中間の部分に下方に開口された凹状の被ロック部35bが形成されている。
【0068】
第2のロック部31は溝形成用突部33の上端部を除いた部分から前方に突出されている。一対の第2のロック部31は左右方向における内側の端部が一対の溝形成用突部33より内側に位置されている。第2のロック部31には前方及び上方に開口された突部挿入溝31aが形成されている。第2のロック部31には突部挿入溝31aに位置された挿入用突部31bが設けられている。挿入用突部31bは突部挿入溝31aを形成する左右の一方の壁面に連続して設けられている。一対の第2のロック部31は向き合う側の面が下方へ行くに従って互いに近付くように傾斜された対面31cとして形成されている。一対の対面31c間の空間は挿脱可能空間31dとして形成され、下辺が上辺より長さの短い等脚台形状の空間にされている。
【0069】
セパレーター28には閉塞板部32と溝形成用突部33と第2のロック部31の後端部とによって囲まれた係合溝部36が形成されている。係合溝部36は左右に一対形成され、下方へ行くに従って互いに近付く状態で傾斜され、傾斜角度が対面31cの傾斜角度と同じにされている。
【0070】
上記のように構成されたセパレーター28は、装置本体2とホルダー3がドレープ24によって覆われた状態において、フード26を介してホルダー3に取り付けられる(
図9参照)。セパレーター28がフード26を介してホルダー3に取り付けられるときには、挿通部30の破断用突部35aによってフード26の閉塞シート26bが突き破られ、挿通部30がフード26を貫通される。
【0071】
フード26を貫通された挿通部30は、結合部34がホルダー3における着脱部17の結合溝17aに挿入され挿入突部35がホルダー3における軸部15の挿入孔15aに挿入される。
【0072】
挿入突部35が挿入孔15aに挿入されるときには挿入突部35の下面がロック機構19におけるロック部材22の上面に摺動され、ロック部材22がベース部材20とバネ支持軸21とともに圧縮コイルバネ23の付勢力に反して下方へ移動される。挿入突部35が挿入孔15aに奥側まで挿入されて被ロック部35bがロック部材22の真上に位置されると、ロック部材22がベース部材20とバネ支持軸21とともに圧縮コイルバネ23の付勢力によって上方へ移動され、被ロック部35bにロック部材22が挿入される(
図5及び
図9参照)。従って、セパレーター28がホルダー3に取り付けられロック機構19によってホルダー3にロックされる。
【0073】
セパレーター28がホルダー3にロックされた状態においては、第1のロック部29がフード26に前方から押し付けられ、ドレープ24の内部の空間がセパレーター28によって前側から閉塞される。
【0074】
このようにセパレーター28はホルダー3に取り付けられた状態においてロック機構19によってホルダー3にロックされるため、セパレーター28のホルダー3に対する意図しない変位が規制され、セパレーター28によってドレープ24の内部の空間がセパレーター28によって閉塞された状態を確実に保持することができる。
【0075】
上記のようにセパレーター28がホルダー3にロックされた状態において、ホルダー3のロック解除釦14aが操作されることによりロック部材22が下方へ移動されて被ロック部35bから引き出され、セパレーター28のロックが解除される。従って、セパレーター28をホルダー3から取り外すことが可能にされる。
【0076】
<アダプターの構成等>
次に、セパレーター28に取り付けられるアダプター37の構成等について説明する(
図10乃至
図16参照)。
【0077】
アダプター37はセパレーター28に着脱可能にされ、第1の部材38と第2の部材39が上下方向において結合されて構成されている(
図10及び
図11参照)。
【0078】
第1の部材38は樹脂材料によって形成され、前方及び下方に開口された第1のケース部40と第1のケース部40から後方に突出された連結突部41と連結突部41の後面に連続された第1のロック用係合部42とを有している(
図10、
図12及び
図13参照)。
【0079】
第1のケース部40は上下方向を向く天面部43と左右方向を向く一対の側面部44と前後方向を向く後面部45とを有している。天面部43には操作部配置孔43aが形成されている。後面部45には左右に離隔して二つの挿入用切欠45aが形成され、挿入用切欠45aは下方に開口され前後に貫通されている。後面部45における二つの挿入用切欠45a間の部分は閉塞部45bとして設けられている。
【0080】
側面部44と後面部45が連続された角部は下方に突出された形状に形成され、この部分が規制突部46として設けられている。
【0081】
一対の側面部44からはそれぞれ結合用突部47が下方に突出されている。結合用突部47は左右方向を向く略板状に形成され、下端部に左右方向における外方に突出された係合爪47aが設けられている。
【0082】
第1の部材38には天面部43の前端部から一対の側面部44の前端部に亘る位置の内面から第1の受け部48が突出されている。第1の受け部48の突出方向における端面は、例えば、平面48aと複数の曲面48bとによって構成されている。
【0083】
第1の部材38には天面部43の内面から下方に突出された二つの第1の押さえ突部49が左右に離隔して設けられている。尚、第1の押さえ突部49は少なくとも先端部が柔軟性や大きな弾性力を有する材料によって形成されていてもよい。
【0084】
第1のロック用係合部42は前後方向を向く略板状に形成され、下側の端部42aが連結突部41より下側に位置されている。第1のロック用係合部42の下端は上下方向における位置が後面部45の下端に略一致されている。第1のロック用係合部42は略扇状にされ、下方へ行くに従って左右の幅が小さくなる形状に形成されている。第1のロック用係合部42の左右両側縁は係合突部42bとして設けられている。
【0085】
第1のロック用係合部42には上側の略半分の部分に上方に開口された一対のスリット42cが左右に離隔して形成され、スリット42c間の部分が板状の被ロック片50として設けられている。被ロック片50は下端部を基準に前後方向へ弾性変形可能にされ、上下方向における中間部分に後方に突出されたロック用突部50aを有している。被ロック片50は上端部が第1のロック用係合部42における他の部分より上方に位置されている。被ロック片50と連結突部41の後面との間には被ロック片50の前方への変形を許容する空間50bが形成されている。
【0086】
第2の部材39は樹脂材料によって形成され、前後方向及び上方に開口された第2のケース部51と第2のケース部51から後方に突出され突状部として設けられた一対の第2のロック用係合部52とを有している(
図10、
図14及び
図15参照)。
【0087】
第2のケース部51は一部が上下方向を向く平板状に形成された底面部53と左右方向を向く一対の横面部54と横面部54の後端部から互いに近付く方向に張り出された一対の張出面部55とを有している。
【0088】
底面部53は前端部が上下方向を向く平板部56として設けられ平板部56以外の部分が上方に開口された凹状部57として設けられている。凹状部57は前後左右の中央部として設けられた底部57aを有し、底部57aの周囲に連続する部分が傾斜部57bとして設けられている。底部57aは上下方向を向く平板状に形成され凹状部57において最も下方に位置されている。傾斜部57bは底部57aから離隔するに従って上方に変位するように傾斜されている。
【0089】
横面部54には結合用凹部58が形成されている。結合用凹部58は上方及び左右方向における内方に開口された被挿入部58aと被挿入部58aの下端部に連通された係合孔58bとによって構成されている。係合孔58bは前後に延び左右に貫通されている。
【0090】
第2の部材39には底面部53の平板部56から一対の横面部54の前端部における下端部に亘る位置の内面から第2の受け部59が突出されている。第2の受け部59の突出方向における端面は、例えば、左右方向に並ぶ複数の平面59aを有している。
【0091】
第2の部材39には底面部53の内面から上方に突出された二つの第2の押さえ突部60が左右に離隔して設けられている。尚、第2の押さえ突部60は少なくとも先端部が柔軟性や大きな弾性力を有する材料によって形成されていてもよい。
【0092】
第2のロック用係合部52は一対の張出面部55の上端寄りの位置からそれぞれ後方に突出されている。第2のロック用係合部52の先端寄りの位置には被挿入溝52aが形成されている。被挿入溝52aは上下及び左右方向における外方に開口されている。
【0093】
第2の部材39には一対の張出面部55間の部分から凹状部57の傾斜部57bに亘る開口部61が形成されている。開口部61は張出面部55間の部分が第1の部分61aとされ傾斜部57bに形成された部分が第2の部分61bとされている。
【0094】
上記のように構成された第1の部材38と第2の部材39は、一対の結合用突部47がそれぞれ一対の結合用凹部58に挿入されることにより上下で結合される(
図11及び
図16参照)。結合用突部47が結合用凹部58に挿入されるときには、係合爪47aが被挿入部58aを形成する面に摺動されて結合用突部47が弾性変形され、係合爪47aが係合孔58bに達したときに結合用突部47が弾性復帰されることにより、係合爪47aが係合孔58bに挿入されて係合される。係合爪47aが係合孔58bに挿入されて係合されることにより、第1の部材38と第2の部材39が結合される。
【0095】
尚、第1の部材38に一対の結合用凹部が形成され第2の部材39に一対の結合用突部が設けられていてもよい。
【0096】
第1の部材38と第2の部材39が結合された状態においては、後面部45の閉塞部45bによって開口部61の第1の部分61aが閉塞される。このとき第2の部材39の一対の第2のロック用係合部52は基端部がそれぞれ第1の部材38の挿入用切欠45aに挿入され、基端部以外の部分が後面部45の後方に位置される。
【0097】
また、第1の部材38と第2の部材39が結合された状態においては、一対の規制突部46がそれぞれ第2のロック用係合部52の左右方向における外側に位置され、規制突部46が第2のロック用係合部52に接した状態又は近接した状態にされる。
【0098】
このように第2の部材39には一対の結合用凹部58が並ぶ方向に離隔する一対の第2のロック用係合部52が突状部として設けられ、第1の部材38には一対の第2のロック用係合部52にそれぞれ外側から接触され又は近接される一対の規制突部46が設けられている。
【0099】
従って、結合用凹部58が形成された一対の横面部54の互いに離隔する方向への変位が規制突部46によって規制されるため、係合爪47aの係合孔58bに対する係合が意図せず解除されることがなく、第1の部材38と第2の部材39の安定した結合状態を確保することができる。
【0100】
一方、第1の部材38の一対の側面部44に外面側から力を付与し側面部44を互いに近付く方向へ弾性変形させることにより、係合爪47aの係合孔58bに対する係合を解除することが可能である。このように係合爪47aの係合孔58bに対する係合を解除した状態で第1の部材38と第2の部材39を上下方向に離隔させることにより、第1の部材38と第2の部材39の結合を解除することができる。
【0101】
<手術具の構成>
次いで、アダプター37に装着される手術具80の構成の一例について説明する(
図17参照)。
【0102】
手術具80は、例えば、内視鏡を有するスコープユニットとして設けられ、内部に複数の図示しないレンズが配置された挿入部81と挿入部81の一端部に結合されたヘッド部82と挿入部81の一端寄りの部分に結合されたライトガイド83とを有している。
【0103】
ヘッド部82には図示しない信号線や電源線であるケーブル84が接続され、ライトガイド83には光を導くための図示しないライト用接続線が接続されている。
【0104】
ヘッド部82は外形の大きさが挿入部81の径より大きくされ、前端部を除く部分が術具本体85として設けられている。術具本体85の内部には図示しない撮像素子が配置されている。術具本体85はアダプター37に装着される被装着部85aと被装着部85aの下面における後端部から突出されたケーブル接続部85bとを有している。ケーブル接続部85bは被装着部85aから後斜め下方に突出され、ケーブル接続部85bにはケーブル84が接続される。
【0105】
ヘッド部82には術具本体85の上面側に操作部86が配置されている。術者等が操作部86を操作することにより、例えば、撮像の開始、撮像の終了、撮像条件の変更や調整、照明強度の調整等を行うことが可能にされている。
【0106】
ヘッド部82には術具本体85の前側にフォーカスリング87が設けられている。術者等がフォーカスリング87を回転操作することにより、映像や画像のフォーカス調整を行うことができる。ヘッド部82にはフォーカスリング87の前側に固定用リング88が設けられている。ヘッド部82に挿入部81の一端部を挿入した状態において固定用リング88を一方向へ回転させることにより、ヘッド部82に挿入部81を連結した状態で固定することができる。逆に、固定用リング88を反対方向へ回転させることにより、挿入部81をヘッド部82から取り外すことができる。
【0107】
手術具80は挿入部81の少なくとも先端部が患者200に形成されたポート202から体腔201の内部に挿入される。挿入部81が体腔201の内部に挿入された状態において、挿入部81の先端部から照明光が照射され、撮像素子によって体腔201の内部の状態が撮像される。
【0108】
尚、上記には、手術具80が内視鏡を有するスコープユニットである例を示したが、アダプター37には手術具80以外の鉗子やシザース等の他の手術具が装着されてもよい。
【0109】
<手術具のアダプターへの装着>
次に、手術具80のアダプター37への装着について説明する(
図17乃至
図19参照)。
【0110】
手術具80は術具本体85の被装着部85aとケーブル接続部85bの先端部を除く部分とが第1の部材38と第2の部材39によって上下から覆われた状態で挟持されることによりアダプター37に装着される(
図18及び
図19参照)。
【0111】
術具本体85がアダプター37に装着された状態においては、被装着部85aの前端部における外周面に第1の部材38における第1の受け部48の平面48aと第2の部材39における第2の受け部59の三つの平面59aとが点接触又は線接触された状態にされる。また、このとき術具本体85の後端寄りの部分に第2の部材39の一対の第1の押さえ突部49と第2の部材39の一対の第2の押さえ突部60とが点接触又は線接触された状態にされる。
【0112】
従って、術具本体85は前側における4箇所と後側における4箇所で周囲から第1の部材38と第2の部材39によって押さえられた状態でアダプター37に装着され、安定した状態でアダプター37に装着される。
【0113】
特に、第1の部材38に術具本体85を押さえる複数の第1の押さえ突部49が設けられ、第2の部材39に術具本体85を押さえる複数の第2の押さえ突部60が設けられているため、術具本体85が複数の第1の押さえ突部49と複数の第2の押さえ突部60とによって押さえられた状態でアダプター37に装着され、手術具80をアダプター37に安定した状態で装着することができる。
【0114】
また、第1の押さえ突部49と第2の押さえ突部60の先端部にはそれぞれクッションが取り付けられていてもよく、クッションが取り付けられることにより術具本体85が複数のクッションに押さえられた状態でアダプター37に装着されるため、アダプター37や手術具80の加工公差に拘わらず手術具80をアダプター37に安定した状態で装着することができる。尚、クッションとしては、例えば、布やゴムやスポンジ等の各種の材料を用いることが可能である。
【0115】
術具本体85がアダプター37に装着された状態においては、開口部61の第2の部分61bからケーブル接続部85bの先端部が突出される(
図19参照)。
【0116】
また、術具本体85がアダプター37に装着された状態においては、操作部86が第1の部材38の操作部配置孔43aに位置され、操作部86に対する操作を行うことができる。このときアダプター37には術具本体85が装着されているため、術具本体85の前側に位置されているフォーカスリング87と固定用リング88はアダプター37の外側に位置されている。従って、術者等は術具本体85がアダプター37に装着された状態において、フォーカスリング87と固定用リング88に対する操作を行うことができる。
【0117】
一方、術具本体85のアダプター37からの取り外しは、係合爪47aの係合孔58bに対する係合を解除して第1の部材38と第2の部材39を上下に分離することにより行うことができる。
【0118】
<アダプターのセパレーターに対する着脱>
次に、アダプター37のセパレーター28に対する着脱について説明する(
図19乃至
図24参照)。
【0119】
アダプター37はセパレーター28のホルダー3に対する着脱方向に直交する方向においてセパレーター28に着脱される(
図20参照)。具体的には、上記したように、セパレーター28はホルダー3に前後方向において着脱されるのに対し、アダプター37はセパレーター28に上下方向において着脱される。また、アダプター37は第1の部材38と第2の部材39がセパレーター28に、以下のように各別に取り付けられてロックされる。
【0120】
尚、アダプター37のセパレーター28への取付は、アダプター37に手術具80が装着された状態で行うことが可能である。但し、セパレーター28に先に第2の部材39が取り付けられてロックされ、次に、手術具80の術具本体85が第2の部材39に装着され第1の部材38が第2の部材39に結合されると共にセパレーター28に取り付けられてロックされてもよい。
【0121】
第2の部材39はセパレーター28に対して下方へ移動され、一対の第2のロック用係合部52がそれぞれセパレーター28の一対の突部挿入溝31aに上側から挿入される(
図21参照)。このとき第2のロック用係合部52の被挿入溝52aに第2のロック部31の挿入用突部31bが挿入され、第2の部材39がセパレーター28にロックされる。第2の部材39はセパレーター28にロックされた状態において、第2のロック用係合部52が突部挿入溝31aに挿入されることにより左右方向への変位が規制され被挿入溝52aに挿入用突部31bが挿入されることにより前後方向への移動が規制される。
【0122】
尚、第2のロック用係合部52に突部挿入溝と挿入用突部が形成され第2のロック部31に被挿入溝が形成されていてもよい。
【0123】
第1の部材38は第2の部材39と同様にセパレーター28に対して下方へ移動され、第1のロック用係合部42の一対の係合突部42bがそれぞれセパレーター28の一対の係合溝部36に上側から挿入される。このとき被ロック片50のロック用突部50aがセパレーター28における閉塞板部32の前面に摺動され、被ロック片50が空間50b側へ弾性変形される。第1の部材38の第2の部材39に対する下方への移動により、ロック用突部50aが閉塞板部32の係止孔32aに達すると、ロック用突部50aが係止孔32aに挿入されて係止されることにより、第1の部材38がセパレーター28にロックされる(
図19、
図22及び
図23参照)。
【0124】
尚、被ロック片50に係止孔が形成され、第1のロック部29にロック用突部が設けられていてもよい。
【0125】
第1の部材38はセパレーター28にロックされた状態において上下前後左右への変位が規制される。このとき第1の部材38と第2の部材39が結合されており、第2の部材39はセパレーター28に対する上下方向への変位も規制される。
【0126】
アダプター37がセパレーター28に取り付けられてロックされた状態においては、第1のロック用係合部42の端部42aが係合溝部36から下方に突出される。
【0127】
尚、アダプター37は第1のロック用係合部42が一対の第2のロック部31間に形成された挿脱可能空間31dに前側から挿入されると共に第2のロック用係合部52が第2のロック部31の真上に位置された状態において、セパレーター28に対して下方へ移動されてもよい。このようにされることにより第2のロック用係合部52が突部挿入溝31aに上側から挿入されると共に係合突部42bが係合溝部36に上側から挿入されロック用突部50aが係止孔32aに挿入されて係止され、アダプター37がセパレーター28にロックされる。
【0128】
アダプター37がセパレーター28にロックされると、アダプター37に装着されている手術具80がアダプター37とセパレーター28を介してホルダー3に保持される。このようにセパレーター28とアダプター37はホルダー3を有する手術支援装置1に対して用いられ、挿入部81が連結されるヘッド部82を有する手術具80が装着されホルダー3に手術具80を保持させる保持用装着具70として設けられている。
【0129】
一方、アダプター37は被ロック片50が後方から押圧されて空間50b側へ弾性変形されることにより、ロック用突部50aが係止孔32aから引き出されてセパレーター28に対するロックが解除される。被ロック片50が押圧されてアダプター37のセパレーター28に対するロックが解除された状態において、アダプター37がセパレーター28に対して上方へ移動され第2のロック用係合部52が突部挿入溝31aから引き出されると共に係合突部42bが係合溝部36から引き出されることによりアダプター37のセパレーター28に対する取り外しが行われる。
【0130】
このとき、上記したように、アダプター37がセパレーター28に取り付けられた状態においては、第1のロック用係合部42の端部42aが係合溝部36から下方に突出されているため、端部42aを下方から押圧することが可能である。従って、例えば、第1のロック用係合部42の後面がセパレーター28の第1のロック部29の前面に密着され両者の間の摩擦力が高くなっている場合においても、端部42aを下方から押圧することにより第1のロック用係合部42と第1のロック部29の密着状態を解消してアダプター37をセパレーター28から容易かつ確実に取り外すことができる。
【0131】
また、第1のロック用係合部42は一対の係合突部42bを有しアダプター37のセパレーター28に対する取付方向へ行くに従って係合突部42b間の距離が小さくなる形状に形成され、第1のロック部29にはアダプター37のセパレーター28に対する取付方向へ行くに従って距離が小さくなる一対の係合溝部36が形成され、一対の係合突部42bがそれぞれ一対の係合溝部36に挿入されることによりアダプター37の第1の部材38がセパレーターに28ロックされる。
【0132】
従って、アダプター37のセパレーター28からの取り外しを、第1のロック用係合部42における係合突部42bの外縁が挿脱可能空間31dの後側に位置されるまでアダプター37をセパレーター28に対して上方へ移動させることより行うことが可能にされている(
図24参照)。アダプター37をこのような位置まで上方へ移動させた状態において、第1のロック用係合部42を挿脱可能空間31dから前側に引き出し、アダプター37をセパレーター28から取り外すことができる。
【0133】
このようにしてアダプター37をセパレーター28から取り外すことにより、アダプター37のセパレーター28に対する上方への移動量が必要最小限になり、開口部61の第2の部分61bから後斜め下方に突出されているケーブル接続部85bやケーブル接続部85bに接続されているケーブル84がセパレーター28の下面やホルダー3の下面に接触し難い。
【0134】
従って、ケーブル接続部85bやケーブル84に損傷が生じ難いと共にアダプター37をセパレーター28から適正に取り外すことができる。
【0135】
また、アダプター37のセパレーター28からの取り外し時にアダプター37を係合突部42bの長さより短い距離移動させることにより係合突部42bの係合溝部36に対する係合を解除することが可能になり、アダプター37のセパレーター28に対する取り外しを容易かつ迅速に行うことができる。
【0136】
<手術支援装置の使用等>
上記のように、ホルダー3にセパレーター28が取り付けられセパレーター28にアダプター37が取り付けられ手術具80がアダプター37に装着された状態において、手術支援装置1は、例えば、マスタースレーブ方式により術者(医師)が遠隔から操作されて使用される。このとき手術具80は挿入部81の少なくとも先端部が患者200に形成されたポート202から体腔201の内部に挿入され、外科的な施術や患部の撮像等が行われる。
【0137】
このような手術支援装置1が用いられる外科的な手術においては、術者や補助者が手動により手術具80の操作を行う場合もあるが、手術支援装置1においては、ヘッド部82の術具本体85が装着されたアダプター37を把持して手術具80の操作を行うことが可能である。従って、アダプター37は術者等によって把持される把持部として機能する。
【0138】
また、術具本体85がアダプター37に装着された状態においては、第1の部材38の操作部配置孔43aに位置された操作部86に対する操作をアダプター37の外側から行うことができると共にアダプター37の前側に位置されているフォーカスリング87の操作を行うこともでき、手術具80の良好な使用状態を確保することができる。
【0139】
尚、手術においては、手術の内容や方法等の相違に応じて使用される手術具の種類や形状や大きさが異なる手術具が使用されるが、このような場合には使用される手術具に対応して形状や大きさの異なるアダプターが選択されて使用される。但し、このような形状や大きさの異なるアダプターであっても、セパレーター28に対するロック構造や二つの部材が結合されて構成される点等の基本的な構造はアダプター37と同様の構造にされている。
【0140】
<まとめ>
以上に記載した通り、手術支援装置1においては、ホルダー3に着脱可能にされたセパレーター28と、セパレーター28に着脱可能にされヘッド部82が装着されるアダプター37とが設けられ、アダプター37はヘッド部82が装着された状態において操作者に把持される把持部として設けられている。
【0141】
従って、ホルダー3にセパレーター28が取り付けられセパレーター28にアダプター37が取り付けられアダプター37にヘッド部82が装着された状態において、アダプター37を介してヘッド部82を把持することが可能になると共にアダプター37によって異なる形状又は大きさの手術具80を使用することが可能になり、手術に支障を来すことなく適切かつ迅速な施術を行うことができる。
【0142】
また、ホルダー3にはロック機構19が設けられ、セパレーター28にはロック機構19によってホルダー3にロックされる被ロック部35bとアダプター37をロックする第1のロック部29及び第2のロック部31とが設けられ、アダプター37には第1のロック部29と第2のロック部31によってそれぞれセパレーター28にロックされる第1のロック用係合部42と第2のロック用係合部52が設けられている。
【0143】
従って、セパレーター28がロック機構19によってホルダー3にロックされると共にアダプター37が第1のロック部29と第2のロック部31によってセパレーター28にロックされるため、セパレーター28がホルダー3に安定した状態で取り付けられると共にアダプター37がセパレーター28に安定した状態で取り付けられ、アダプター37とセパレーター28を介して手術具80をホルダー3に安定した状態で保持させることができる。
【0144】
さらに、被ロック片50の弾性力によってロック用突部50aが係止孔32aに挿入されることによりアダプター37がセパレーター28にロックされる。
【0145】
従って、弾性変形された被ロック片50が弾性復帰されることによりロック用突部50aが係止孔32aに挿入されてアダプター37がセパレーター28にロックされるため、アダプター37のセパレーター28に対するロック作業及びアダプター37のセパレーター28に対するロック解除作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0146】
さらにまた、保持用装着具70においては、ホルダー3に対するセパレーター28の取付方向とセパレーター28に対するアダプター37の取付方向とが異なる方向にされている。
【0147】
従って、セパレーター28とアダプター37が異なる方向においてそれぞれホルダー3とセパレーター28に取り付けられるため、セパレーター28又はアダプター37の一方を取り外したときに他方の意図しない外れを防止することができる。特に、セパレーター28とアダプター37が直交する方向においてそれぞれホルダー3とセパレーター28に取り付けられることにより、アダプター37のセパレーター28に対する取付方向とセパレーター28のホルダー3に対する取付方向とが明確になり、双方の取付方向を誤って認識し難くなり、アダプター37のセパレーター28に対する取付作業とセパレーター28のホルダー3に対する取付作業とを適正かつ確実に行うことができる。
【0148】
また、保持用装着具70においては、アダプター37が第1の部材38と第2の部材39が結合されることにより構成され、第1の部材38と第2の部材39がそれぞれセパレーター28にロックされる構成にされている。
【0149】
従って、第1の部材38がセパレーター28から取り外され第1の部材38と第2の部材39の結合が解除された状態において、第2の部材39がセパレーター28にロックされているため、セパレーター28にロックされている第2の部材39によって手術具80を保持することが可能になり、第1の部材38と第2の部材39の結合が解除された状態において手術具80の脱落を防止することができる。
【0150】
加えて、ホルダー3にはロック機構19が設けられ、セパレーター28にはロック機構19によってホルダー3にロックされる被ロック部35bと第1の部材38をロックする第1のロック部29と第2の部材39をロックする第2のロック部31とが設けられている。
【0151】
従って、セパレーター28がロック機構19によってホルダー3にロックされると共にアダプター37が第1のロック部29と第2のロック部31によってセパレーター28にロックされるため、セパレーター28がホルダー3に安定した状態で取り付けられると共にアダプター37がセパレーター28に安定した状態で取り付けられ、アダプター37に手術具80を安定した状態で装着することができる。
【符号の説明】
【0152】
200 患者
201 体腔
1 手術支援装置
3 ホルダー
9 第1の連結アーム
10 第2の連結アーム
11 第3の連結アーム
28 セパレーター
29 第1のロック部
31 第2のロック部
32a 係止孔
35b 被ロック部
36 係合溝部
37 アダプター
38 第1の部材
39 第2の部材
42 第1のロック用係合部
42a 端部
42b 係合突部
46 規制突部
47 結合用突部
49 第1の押さえ突部
50 被ロック片
50a ロック用突部
52 第2のロック用係合部(突状部)
58 結合用凹部
60 第2の押さえ突部
70 保持用装着具
80 手術具
81 挿入部
82 ヘッド部
【要約】
患者の体型や罹患部位や罹患状態等に応じた最適な手術具を用いて適切かつ迅速な施術を行うべく、行複数の連結アーム(9,10,11)と前記連結アームに支持されたホルダー(3)とを有する手術支援装置(1)に対して用いられると共にヘッド部(82)を有する手術具(80)をホルダー(3)に保持させるための保持用装着具において、ホルダーに着脱可
能にされたセパレーター(28)と、該セパレーターに着脱可能にされ前記ヘッド部が装着されるアダプター(37)とを備え、該アダプターは前記ヘッド部が装着された状態において操作者に把持される把持部として設けた。