(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-04
(45)【発行日】2023-08-15
(54)【発明の名称】缶蓋切除器具
(51)【国際特許分類】
B67B 7/82 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
B67B7/82
(21)【出願番号】P 2023522840
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2022040508
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2022012986
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522042854
【氏名又は名称】株式会社346
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】菅野 秀
(72)【発明者】
【氏名】下郡 学
(72)【発明者】
【氏名】三枝 守仁
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-91874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039871(US,A1)
【文献】実公昭46-32874(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 7/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備
え、
前記プルタブ保持部は、
前記プルタブの開口に挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、
前記本体部から前記凹部の内側に向かって延び出し、前記保持突起部と前記本体部とを接続する接続部と、
を有し、
前記本体部が前記缶に装着された状態で前記缶の周方向に回転することで、前記プルタブ保持部によって保持された前記プルタブが、前記プルタブを前記蓋に固定している固定ピンを中心として、前記本体部とともに回転するように構成されており、
前記プルタブ保持部は、
前記接続部が前記本体部に回動可能に支持されることにより、前記保持突起部が前記凹部の内部に位置する向きと、前記保持突起部が前記凹部より下方に離れる向きとに移動可能に構成されている、
缶蓋切除器具。
【請求項2】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備え、
前記プルタブ保持部は、
前記プルタブの開口に挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、
前記本体部から前記凹部の内側に向かって延び出し、前記保持突起部と前記本体部とを接続する接続部と、
を有し、
前記本体部が前記缶に装着された状態で前記缶の周方向に回転することで、前記プルタブ保持部によって保持された前記プルタブが、前記プルタブを前記蓋に固定している固定ピンを中心として、前記本体部とともに回転するように構成されており、
前記プルタブ保持部は、
前記凹部の周方向における前記保持突起部の両側に、前記プルタブを受け入れる一対のプルタブ保持凹部を有する
、
缶蓋切除器具。
【請求項3】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備え、
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する
、
缶蓋切除器具。
【請求項4】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備え、
前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するものであって、
前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されている
、
缶蓋切除器具。
【請求項5】
前記本体部は、
前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記立ち上がり部を間に置いて前記刃体の反対側となる位置に設けられ、前記立ち上がり部の外周面を押さえる摺動部材
を有する、
請求項4に記載の缶蓋切除器具。
【請求項6】
前記摺動部材の断面形状は、
前記刃体が前記立ち上がり部に押し付けられた際に、前記立ち上がり部の巻締め部の下方に当接する突出部を含んでいる、
請求項5に記載の缶蓋切除器具。
【請求項7】
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記缶の前記立ち上がり部の巻き締め部部分に弾性的に当接する突起部を有する、
請求項1又は2に記載の缶蓋切除器具。
【請求項8】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備え、
前記本体部は、前記刃体によって前記立ち上がり部に形成された切断部に当接して前記切断部を清掃する清掃部材
を有する
、
缶蓋切除器具。
【請求項9】
缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、
前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、
前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、
前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、
を備え、
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する環状の形状を有し、
環状の前記本体部は、
前記立ち上がり部の外周の一部に沿うように円弧状に形成されたガイド部領域と、
前記ガイド部領域に連なるように形成され、前記立ち上がり部から離れる方向に延びるように形成された延出部領域と、
を含む形状を有する
、
缶蓋切除器具。
【請求項10】
前記本体部は、
前記ガイド部領域によってガイドされていない前記立ち上がり部の外周面に対して進出し、前記外周面を押さえるアダプタ部材と、
前記アダプタ部材を前記外周面に押し付ける向きに力を付与する弾性部材と、
を有する、
請求項
9に記載の缶蓋切除器具。
【請求項11】
前記アダプタ部材は、
前記延出部領域の内側に配置されたレバー部分であって、前記アダプタ部材を前記立ち上がり部から離すためにユーザによって操作されるレバー部分を含む、
請求項
10に記載の缶蓋切除器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶蓋切除器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、缶から蓋を切除する缶蓋切除器具が知られている。特許文献1には、缶の上端の立上縁壁部の内側面を切除する回転刃と、切り離された蓋のプルトップを保持する棒状のフック部とを有する器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の缶蓋切除器具は、使用時に複雑な操作が必要であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な操作で缶の蓋を切除でき、かつ、切除された蓋が缶の中に落下することを防止できる缶蓋切除器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の缶蓋切除器具は、缶の上端外周の円筒状の立ち上がり部を切断することで前記缶から蓋を切除する缶蓋切除器具であって、前記立ち上がり部を受け入れる凹部を有する本体部と、前記本体部に設けられた、前記立ち上がり部を切断するための刃体と、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記刃体を前記立ち上がり部に向けて押し付けるための操作部と、前記凹部の内部に設けられ、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記蓋のプルタブを保持するプルタブ保持部と、を備える。
【0007】
前記プルタブ保持部は、前記プルタブの開口に挿入され前記プルタブを保持する保持突起部と、前記本体部から前記凹部の内側に向かって延び出し、前記保持突起部と前記本体部とを接続する接続部と、を有し、前記本体部が前記缶に装着された状態で前記缶の周方向に回転することで、前記プルタブ保持部によって保持された前記プルタブが、前記プルタブを前記蓋に固定している固定ピンを中心として、前記本体部とともに回転するように構成されていてもよい。
【0008】
前記プルタブ保持部は、前記接続部が前記本体部に回動可能に支持されることにより、前記保持突起部が前記凹部の内部に位置する向きと、前記保持突起部が前記凹部より下方に離れる向きとに移動可能に構成されていてもよい。
【0009】
前記プルタブ保持部は、前記凹部の周方向における前記保持突起部の両側に、前記プルタブを受け入れる一対のプルタブ保持凹部を有していてもよい。
【0010】
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する環状の形状を有していてもよい。
【0011】
前記刃体は、前記立ち上がり部の内周を切除するものであって、前記操作部は、前記本体部に対して前記凹部に近づく向きと前記凹部から離れる向きとに移動するように設けられ、前記操作部が前記本体部に向けて移動すると、前記刃体が前記凹部の外側に向かって進出するように構成されていてもよい。
【0012】
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記立ち上がり部を間に置いて前記刃体の反対側となる位置に設けられ、前記立ち上がり部の外周面を押さえる摺動部材をさらに有していてもよい。
【0013】
前記摺動部材の断面形状は、前記刃体が前記立ち上がり部に押し付けられた際に、前記立ち上がり部の巻締め部の下方に当接する突出部を含んでいてもよい。
【0014】
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態で、前記缶の前記立ち上がり部の巻き締め部部分に弾性的に当接する突起部を有していてもよい。
【0015】
前記本体部は、前記刃体によって前記立ち上がり部に形成された切断部に当接して前記切断部を清掃する清掃部材をさらに有していてもよい。
【0016】
前記本体部は、前記本体部が前記缶に装着された状態において前記蓋の中央部付近を少なくとも露出させる開口部を有する環状の形状を有し、環状の前記本体部は、前記立ち上がり部の外周の一部に沿うように円弧状に形成されたガイド部領域と、前記ガイド部領域に連なるように形成され、前記立ち上がり部から離れる方向に延びるように形成された延出部領域と、を含む形状を有していてもよい。
【0017】
前記本体部は、前記ガイド部領域によってガイドされていない前記立ち上がり部の外周面に対して進出し、前記外周面を押さえるアダプタ部材と、前記アダプタ部材を前記外周面に押し付ける向きに力を付与する弾性部材と、を有していてもよい。
【0018】
前記アダプタ部材は、前記延出部領域の内側に配置されたレバー部分であって、前記アダプタ部材を前記立ち上がり部から離すためにユーザによって操作されるレバー部分を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な操作で缶の蓋を切除でき、かつ、切除された蓋が缶の中に落下することも防止できる缶蓋切除器具を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態の缶蓋切除器具を上面側から見た斜視図である。
【
図2】缶蓋切除器具を下面側から見た斜視図である。
【
図3】缶蓋切除器具を上面側から見た平面図である。
【
図4】缶蓋切除器具の下面側から見た底面図である。
【
図5】本体部の上カバーを外した状態の缶蓋切除器具の斜視図である。
【
図6】本体部の上カバーを外した状態の缶蓋切除器具の平面図である。
【
図9】缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す斜視図である。
【
図11】プルタブ保持部の斜視図及び正面図である。
【
図12】プルタブ保持部及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
【
図13】プルタブ保持部の動きを説明するための模式図である。
【
図14】缶蓋切除器具が缶に装着される様子を示す図である。
【
図15】缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す図である。
【
図16】本発明の缶蓋切除器具の変形例を示す図である。
【
図17】缶蓋切除器具の他の実施態様の一例を示す斜視図である。
【
図18】
図17の缶蓋切除器具を下面側から見た斜視図である。
【
図20】本発明の一形態の缶蓋切除器具が缶に装着された状態を示す斜視図である。
【
図21】缶蓋切除器具を上面側から見た斜視図である。
【
図23】缶蓋切除器具を下面側から見た斜視図である。
【
図24】摺動部材について説明するための図である。
【
図25】摺動部材及びその周辺構造を示す斜視図である。
【
図27】缶の立ち上がり部を押さえるアダプタ部材を示す斜視図である。
【
図28】本体部に設けられたアダプタ部材を示す図である。
【
図29】缶蓋切除器具のさらなる変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の缶蓋切除器具100を上面側から見た斜視図である。
図2は、缶蓋切除器具100を下面側から見た斜視図である。
図3は、缶蓋切除器具100を上面側から見た平面図である。
図4は、缶蓋切除器具100の下面側から見た底面図である。
図5は、本体部10の上カバー10-1を外した状態の缶蓋切除器具100の斜視図である。
図6は、本体部10の上カバー10-1を外した状態の缶蓋切除器具100の平面図である。
図7は、缶蓋切除器具100の側面図である。
図8は、操作部30のみを示す斜視図である。
図9は、缶蓋切除器具100が缶200に装着された状態を示す斜視図である。
図10は、缶200の構成を示す図である。
【0022】
以下では、図面に描かれた対象物の向きに合わせて「上」、「下」、「右」、「左」のような方向を示す用語が使用されるが、これらの用語は本発明を限定する意図で使用されるものではない。上下方向は、缶蓋切除器具の厚み方向、及び、缶の蓋に垂直な方向に対応する。
【0023】
[缶蓋切除器具100の概要]
缶蓋切除器具100は、缶から蓋を切除するための器具であり、
図1に示すように本体部10と、刃体20と、操作部30と、プルタブ保持部40とを備える。各部の詳細な構造は後述する。
【0024】
缶200は、例えば清涼飲料やアルコール飲料を収容する缶であり、
図10に示すように、缶本体201と蓋202とを備える。缶本体201は、円筒形状であり、その上部に蓋202が設けられている。蓋202は円板状であり、缶本体201の上部に形成された円筒状の立ち上がり部205を介して缶本体201に固定されている。立ち上がり部205の上端部には、巻締め部205sが形成されている。巻締め部205sは、缶200の半径方向の外側に向かって缶本体201の外周面からやや突出した環状の部分である。
【0025】
缶蓋切除器具100が蓋202を切除できる缶200の材質は特に限定されるものではなく、缶200は、アルミニウム製の缶であってもよいし、スチール製の缶であってもよい。また、缶200のサイズ(特には、蓋202の直径)等も任意である。
【0026】
蓋202の上面には、プルタブ210が設けられている(
図9も参照)。プルタブ210は、蓋202の一部を開口させるための部材であり、固定ピン220によって蓋202に取り付けられている。固定ピン220は蓋202の中心に位置しており、プルタブ210は固定ピン220を中心として回転可能である。
【0027】
缶蓋切除器具100は、
図9に示すように、本体部10が缶200に装着された状態で、缶200の周方向に回転することで、刃体20が缶200の立ち上がり部205の内周を切断し、蓋202を缶本体201から切り離す。本実施形態の構成によれば、ユーザは缶蓋切除器具100を例えば片手で握りながら缶蓋切除器具100を缶200に対して回転させるという簡単な操作で蓋202を切除できる。また、プルタブ保持部40によってプルタブ210が保持されるため、蓋202が切り離された後も、蓋202が缶200の中に落下しない。
【0028】
[各部の構成]
(本体部10について)
本体部10は、
図1及び
図2に示すように、上カバー10-1と下カバー10-2とを有し、中央に開口部10hが形成された環状の部材である。本体部10は、
図3に示すように、長方形の各角部が円弧状に形成された、楕円型に近い輪郭形状を有している。開口部10hは、例えば円形であり、具体的には、本体部10が缶200に装着された状態において蓋202の中央部付近を少なくとも露出させる大きさに形成されている。
【0029】
開口部10hの直径は、より具体的には、缶200の蓋202の直径の50%以上90%以下である。開口部10hがこのような大きさに形成されている場合、缶蓋切除器具100の使用時に、ユーザが、開口部10hを通じて蓋202の切除状況及びプルタブ210の保持状況などを確認しやすいという利点がある。なお、開口部10hの形状は、円形に限定されず、四角形、楕円、多角形であってもよい。
【0030】
本体部10の下面には、
図2及び
図4に示すように、缶200の立ち上がり部205を受け入れる円形に形成された円形凹部11が設けられている。円形凹部11の直径は、立ち上がり部205の直径よりもやや大きく形成されている。円形凹部11は、
図4に示すように、中心点Pを中心として、本体部10の開口部10hと同心円状に形成されている。
【0031】
円形凹部11は、
図2に示すように、内周壁11wと上面11uとによって形成されている。内周壁11wは、本体部10の厚み方向に延在する円筒状の壁である。内周壁11wは、缶200の立ち上がり部205をガイドする機能を有する。
【0032】
上面11uは、本体部10の厚み方向に直交する方向に延在する円環状の面である。上面11uには、上面11uから所定の高さだけ突出した複数のリブ11u’が形成されている。リブ11u’は、缶蓋切除器具100が缶200に装着されたときに、缶200の立ち上がり部205の上端に当接する構造部である。
【0033】
円形凹部11には、
図4に示すように、円形凹部11の半径方向内側に向かって内周壁11wから突出した一対の突起部13が形成されている。突起部13は、中心線Lx上であって、かつ、中心線Lyを基準として互いに対称となる位置に設けられている。突起部13は、本体部10が缶200に装着された状態で、缶200の立ち上がり部205の巻締め部205s部分に弾性的に当接する部分である。突起部13は、例えば略半径方向半球状の形状を有している。突起部13の機能については、他の図面も参照して後述する。なお、本実施形態では、一対の突起部13が設けられているが、突起部13の数は任意であり、例えば円形凹部11内に3つ又は4つ以上の突起部13が設けられてもよい。
【0034】
(刃体20及び操作部30について)
刃体20は、
図2及び
図4に示すように、本体部10に設けられた円形の回転刃である。刃体20は、具体的には、操作部30の一部に固定ネジ21によって取り付けられている。刃体20は、本体部10の厚み方向に延びる固定ネジ21の中心軸周りに回転する。刃体20の外周には、缶200の立ち上がり部205の内周に水平方向から当接する円形の刃先が形成されている。刃体20は、後述するように、交換可能の部品である。
【0035】
操作部30は、刃体20を移動させるための部材であり、具体的には、本体部10が缶200に装着された状態において刃体20を立ち上がり部205に向けて移動させるための部材である。操作部30は、
図5及び
図6に示すように、ハンドル部31と本体部材32とを有している。
【0036】
ハンドル部31は、缶蓋切除器具100の使用時に、ユーザによって本体部10の側に向けて押し込まれる部分である。ハンドル部31は、具体的には、
図6に示すように、本体部10の長辺よりもやや短い長さに形成されている。ハンドル部31がこのような長さに形成されていることで、ユーザは、例えば、片手で缶蓋切除器具100を握った際に人差し指から小指までの四本の指で、操作部30を本体部10の側に向けてしっかりと押し込むことができる。
【0037】
なお、ハンドル部31は後述するように、てこの原理を利用し刃体20を立ち上がり部205に向けて押し付けるための部材であり、ハンドル部31が長く形成されていることは、ユーザが小さい力で立ち上がり部205を切除できる点で有利である。ハンドル部31は、本体部10よりも短く形成されていることは必須ではなく、ハンドル部31が本体部10よりも長く形成されていてもよい。
【0038】
ハンドル部31は、
図7に示すように、本体部10の厚み方向の長さが本体部10の厚みよりも短く形成されている。ハンドル部31がこのように構成されていることで、ハンドル部31が嵩張らず、缶蓋切除器具100をコンパクトに形成できる。もっとも、このような構成は本発明において必須の構成ではなくハンドル部31は、本体部10の厚みと同等であってもよいし、本体部10の厚みよりも長くてもよい。
【0039】
本体部材32は、
図6に示すように、軸S1を中心として回動可能に本体部10に取り付けられている。軸S1は、本体部10の厚み方向に延在する軸である。本体部材32のうち、軸S1に近い側の位置には、刃体20が収容される刃体カバー部32a及び刃体20の保持部が形成されている。刃体カバー部32aは、
図2にも示すように、略円筒状に形成され刃体20の周りを覆っている。刃体カバー部32aが設けられていることで、ユーザの指が刃体20に触れることが防止される。
【0040】
刃体20の下面側においては、刃体カバー部32aは刃体20を覆っていない。これにより、ユーザは、刃体20を固定している固定ネジ21にアクセスできるようになっている。ユーザは、必要に応じて、固定ネジ21を外して刃体20を取り外し、刃体20の交換を行うことができる。
【0041】
本体部材32は、
図6に示すように、円弧状の長孔35を有している。長孔35は、本体部材32のうち軸S1から離れた側の端部に形成されている。長孔35は、操作部30の回動範囲を規制するための構造部であり、長孔35の内部には本体部10のボスBが通されている。操作部30は、軸S1を中心として、ボスBが長孔35の一方の端部35aに当接する向きと、ボスBが長孔35の他方の端部35bに当接する向きとの間の任意の向きとなるように回動する。
【0042】
上記のような構成により、操作部30は、本体部10に対して円形凹部11の略半径方向に移動するように設けられている。ユーザが、操作部30のハンドル部31を本体部10の側に向けて移動させることで、軸S1を中心として操作部30全体が回動し、刃体20が円形凹部11の外側に向かって内周壁11wに近づくように進出する。
【0043】
操作部30は、例えばねじりバネや板バネなどの付勢手段(不図示)によって、操作部30が本体部10から離れる向きに付勢されている。付勢手段は、軸S1の付近に設けられていてもよい。なお、本発明の一態様においては、このような付勢手段は設けられていなくてもよい。
【0044】
操作部30が付勢手段によって本体部10から離れる向きに付勢される構成の場合、操作部30が本体部10から突出することとなり、缶蓋切除器具100の収納時のサイズが大きくなってしまう。そこで、本実施形態の構成では、長孔35に突起部35tが形成されている。突起部35tは、長孔35の内周に形成されており、突起部35tが形成された箇所では長孔35の幅が部分的に狭くなっている。長孔35の幅は、具体的には、ボスBの直径と同程度がそれよりやや短く形成されている。
【0045】
操作部30が本体部10に収納された状態(
図6参照)では、付勢手段(不図示)の付勢力による、操作部30が本体部10から突出する方向の力が操作部30に加わっているが、ボスBが長孔35の突起部35tの部分を通過できず、操作部30はそれ以上開かない。ユーザが、操作部30を本体部10から引き出すことにより、ボスBが突起部35tの部分を通過し、操作部30が本体部10から突出した状態となる。このような構成により、缶蓋切除器具100を使用していないときに操作部30が本体部10から突出することが防止され、缶蓋切除器具100をコンパクトに収納することが可能となる。
【0046】
図8に示すように、操作部30は工具保持部37を有している。工具保持部37は、刃体20を操作部30に固定している固定ネジ21を外すための工具Tを保持する構造部である。工具保持部37は、操作部30の任意の位置に設けられていてもよいが、本実施形態では、操作部30の下面側に形成されている。工具保持部37は、工具Tを受け入れる溝であり、工具Tは例えば六角レンチである。固定ネジ21のネジの頭部の形状に応じて、工具保持部37は、プラスドライバ、マイナスドライバ、又は星形ドライバなどの他の種類の工具Tを保持してもよい。本実施形態の構成によれば、操作部30に工具Tが備えられているので、ユーザはこの工具Tを使用して刃体20を交換できる。
【0047】
(プルタブ保持部40について)
プルタブ保持部40は、
図9に示すように、本体部10が缶200に装着された状態で蓋202のプルタブ210を保持する部材である。プルタブ保持部40は、
図6に示すように、本体部10の円形凹部11の内部に設けられている。プルタブ保持部40は、例えば、中心線Lyを挟んで刃体20とは反対側の位置に設けられている。
【0048】
プルタブ保持部40の詳細な構成について
図11から
図14を参照して説明する。
図11は、プルタブ保持部40の斜視図及び正面図である。
図12は、プルタブ保持部40及びその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
図13は、プルタブ保持部40の動きを説明するための模式図である。
【0049】
プルタブ保持部40は、
図11に示すように、先端部41と、接続部43と、回転軸部45とを有している。プルタブ保持部40は、例えば1本の線材を屈曲させることにより形成された部材である。線材は、例えば金属製であり、円形の断面形状を有する。なお、プルタブ保持部40の変形例については後述する。
【0050】
先端部41は、プルタブ210の開口部210h(
図9参照)に挿入される保持突起部41aと、保持突起部41aの両側に形成された一対のプルタブ保持凹部41bとを含む。先端部41は、
図11(b)に示すように、中心線CLを基準として左右対称の形状に設けられている。
【0051】
保持突起部41aは、プルタブ保持凹部41bの底部から上方に向かって延在している。保持突起部41aは、缶蓋切除器具100の使用時に、プルタブ210の開口部210hに挿入されやすいように、やや傾斜して形成されている。保持突起部41aは、具体的には、その先端側が下端側よりも円形凹部11の中心点Pの側に近くなるような向きで傾斜している。保持突起部41aは、缶蓋切除器具100の厚み方向に対する傾斜角度が例えば5°以上45°以下の範囲内となるように設けられていてもよい。
【0052】
後述するように、プルタブ保持部40は缶蓋切除器具100の使用時にプルタブ210を保持してプルタブ210を固定ピン220周りに回転させる部材である。プルタブ210の回転中に、プルタブ210がプルタブ保持部40から外れにくいように、
図11(b)に示す通り、保持突起部41aの両側の側部41a’は、缶蓋切除器具100が缶200に装着された状態で蓋202の厚み方向と平行となる向き(プルタブ210の幅方向に直交する向き)に形成されている。
【0053】
プルタブ保持凹部41bは、プルタブ210を受け入れる部分である。プルタブ保持凹部41bは、プルタブ210を安定して受け入れることができるように、十分な深さに形成されている。保持突起部41aと同様、プルタブ保持凹部41bの側部41b’も、プルタブ210の回転中にプルタブ210がプルタブ保持部40から外れにくいように、缶蓋切除器具100が缶200に装着された状態で蓋202の厚み方向と平行となる向き(プルタブ210の幅方向に直交する向き)に形成されている。
【0054】
保持突起部41a及びプルタブ保持凹部41bが上記のように構成されていることにより、ユーザが缶蓋切除器具100を回転させたときに、プルタブ210がプルタブ保持部40から外れにくいという作用効果が奏される。また、本実施形態の構成では、先端部41が中心線CLを基準として円形凹部11の周方向に左右対称に形成されている。したがって、缶蓋切除器具100が缶200に対して時計回り及び反時計回りのいずれの方向に回転させられたとしても、プルタブ保持部40はプルタブ210を良好に保持できる。
【0055】
なお、本実施形態では、先端部41は一対のプルタブ保持凹部41bを有しているが、先端部41は保持突起部41aのみを有する構成であってもよい。
【0056】
接続部43は、
図6に示したように、本体部10から円形凹部11の内側に向かって延び出している。接続部43は、先端部41と本体部10とを接続する構造部である。本実施形態では、接続部43の端部に回転軸部45が形成されている。
【0057】
回転軸部45は、
図11に示すように、接続部43のうち先端部41とは反対側の端部に形成されている。回転軸部45は本体部10に回動可能に支持され、これにより、プルタブ保持部40が本体部10に対して回動できるように構成されている。
【0058】
缶蓋切除器具100の本体部10には、
図12に示すように、溝18が形成されている。溝18は、プルタブ保持部40の可動範囲を規制するための溝である。プルタブ保持部40は、具体的には、先端部41が円形凹部11の内部に位置する向きと、先端部41が円形凹部11より下方に離れる向きとに移動可能に設けられている。
【0059】
「先端部41が円形凹部11の内部に位置する向き」とは、
図12及び
図13(a)等に示すようにプルタブ保持部40が水平方向に延在する向きである。「先端部41が円形凹部11より下方に離れる向き」とは、
図13(b)に示すように、接続部43が本体部10から下方に延在するような向きである。
【0060】
図12に示すように、溝18には一対の突起18aが形成されている。突起18aは、プルタブ保持部40の回動を規制するための構造部である。突起18aが形成されている箇所では溝18の幅がプルタブ保持部40の線材の太さより狭く形成されている。このような構成により、缶蓋切除器具100は、プルタブ保持部40が水平方向に延びる向きにプルタブ保持部40を保持することができる。一方、例えば、ユーザが指でプルタブ保持部40を押し下げることにより、プルタブ保持部40を
図13(a)の向きから
図13(b)の向きへと移動させることができる。
【0061】
なお、一対の突起18aに変えて、単一の突起18aが形成されてもよい。突起18a自体の形状は何ら限定されず、突起18aは任意の形状に形成されてよい。
【0062】
(動作の説明)
上述のように構成された缶蓋切除器具100の使用方法について、以下に説明する。
図14は、缶蓋切除器具100が缶200に装着される様子を示す図である。
図15は、缶蓋切除器具100が缶200に装着された状態を示す図である。なお、以下に説明する操作の順番は本発明を何ら限定するものではなく、操作の順番は適宜変更されてよい。
【0063】
まず、ユーザは、缶蓋切除器具100と缶200とを用意し、缶蓋切除器具100の本体部10から操作部30を引き出す。
【0064】
次いで、ユーザは、
図14に示すようにプルタブ保持部40を本体部10から下方に押し下げる。これにより、プルタブ保持部40は、その先端部41が本体部10よりも下方に位置した状態となる。
【0065】
次いで、ユーザは、プルタブ保持部40の先端部41の保持突起部41aをプルタブ210の開口部210hに対して、プルタブ210の下側から挿入させる。本実施形態の構成では保持突起部41aがやや傾斜して形成されているので、ユーザは、保持突起部41aをプルタブ210の開口部210hに挿入させやすい。
【0066】
次いで、ユーザは、本体部10の円形凹部11に缶200の立ち上がり部205が挿入されるように、缶蓋切除器具100を缶200に取り付ける。ユーザが缶蓋切除器具100を缶200に取り付ける際、円形凹部11内の一対の突起部13が立ち上がり部205の巻締め部205sに弾性的に当接する。一対の突起部13は、缶蓋切除器具100が所定の位置に取り付けられると、巻締め部205sを乗り越えて、巻締め部205sの下方の缶200の外周面に弾性的に当接する。一対の突起部13は巻締め部205sを乗り越えたときにクリック感を生じさせる。
【0067】
一対の突起部13がこのように巻締め部205s部分に弾性的に当接する構成によれば、ユーザは、缶蓋切除器具100が正しい取付位置に取り付けられたことを感触で確認できる。また、突起部13の作用により缶蓋切除器具100が缶200から外れにくくなり、その結果、缶蓋切除器具100の位置が所望の取付位置に保たれる。
【0068】
缶蓋切除器具100が缶200に取り付けられた状態では、刃体20の刃先はまだ立ち上がり部205の内周に当接していない。そこで、ユーザは、操作部30を本体部10に向けて移動させる。ユーザは、例えば、缶蓋切除器具100を片手で握るようにして、操作部30を本体部10の側に向けて移動させる。これにより、操作部30全体が軸S1周りに回動し(
図6参照)、刃体20の刃先が立ち上がり部205の内周に押し付けられる。
【0069】
本実施形態の缶蓋切除器具100によれば、
図6に示したように、操作部30のハンドル部31が本体部10に沿うように比較的長く形成され、一方、刃体20は軸S1から比較的近い位置に設けられている。具体的には、軸S1の中心からハンドル部31のうち軸S1から離れた側の部位(使用時に力点の1つとなる部位)までの距離が、軸S1の中心からから刃体20の中心までの距離よりも長くなるように、操作部30が形成されている。操作部30がこのような形状に形成されていることで、てこの原理により、ユーザは、力点であるハンドル部31に加えられた力よりも大きな力で刃体20を立ち上がり部205に対して押し当てることができる。
【0070】
次いで、ユーザは、缶蓋切除器具100が缶200に装着された状態で、操作部30を本体部10に向けて押し込みながら、缶蓋切除器具100を缶200に対して回転させる。缶蓋切除器具100が缶200に対して回転させられると、刃体20の刃先が立ち上がり部205の内周に押し当てられながら転がり、これにより立ち上がり部205の内周が徐々に切除されていく。
【0071】
缶蓋切除器具100が回転している間、プルタブ保持部40によって保持されているプルタブ210は固定ピン220を中心として回転する。
【0072】
本実施形態の缶蓋切除器具100では、円形凹部11内のリブ11u’が缶200の立ち上がり部205の上端に当接した状態で缶蓋切除器具100が回転する。このような構成によれば、リブ11u’と立ち上がり部205との接触面積が小さくなり、ユーザは缶蓋切除器具100を回転させやすい。また、リブ11u’が立ち上がり部205に当接する構成の場合、製造時に部品の寸法精度を高めることや設置時の位置精度を高めることを行いやすいという利点もある。
【0073】
立ち上がり部205の内周が全周にわたって切除されるまで缶蓋切除器具100を一回転又はそれ以上回転させることにより、蓋202が缶200から切り離される。蓋202が切り離された後、ユーザは、缶蓋切除器具100を持ち上げて缶200から離す。これにより、蓋202が切除され、缶200は上部が開口した状態となる。なお、ユーザが、缶蓋切除器具100を持ち上げて缶200から離す際、プルタブ保持部40が水平方向の向きから下向きに回動するようになっていてもよいし、プルタブ保持部40が水平方向の向きを保つようになっていてもよい。
【0074】
(缶蓋切除器具100の作用効果)
以上説明したように本実施形態の構成によれば、ユーザは、缶蓋切除器具100を缶200に装着し、操作部30を本体部10に向けて押し込みながら缶蓋切除器具100を回転させるという簡単な操作で、蓋202を缶200から切除することができる。また、切り離された蓋202は、プルタブ保持部40によって保持されるので缶200の中に落下することも防止される。
【0075】
また、プルタブ保持部40が本体部10に対して回動可能に構成されているので、ユーザは、缶蓋切除器具100を缶200に装着する際に、プルタブ保持部40の保持突起部41aをプルタブ210の開口部210hに挿入させやすい。
【0076】
また、プルタブ保持部40は、保持突起部41aだけではなく、保持突起部41aの両側にプルタブ210を受け入れる一対のプルタブ保持凹部41bを有しているので、プルタブ210をより安定して保持できる。
【0077】
また、本体部10には開口部10hが形成されているので、缶蓋切除器具100の使用時に、ユーザは、開口部10hを介して蓋202の切断状況等を確認することができる。
【0078】
また、缶蓋切除器具100の装着時、円形凹部11の内側に形成された複数の突起部13が立ち上がり部205の巻締め部205sに弾性的に当接するため、ユーザは、缶蓋切除器具100が缶200に正しく装着されたかどうかを確認でき缶蓋の切除ミスの発生が低減する。
【0079】
本実施形態の缶蓋切除器具100では、缶200立ち上がり部205の内周が刃体20によって切除され205の外周は残る。したがって、ユーザが飲料を飲む際に切除された部分がユーザの口に触れることがなく安全である。
【0080】
<変形例1>
以上、本発明の一形態の缶蓋切除器具100について図面を参照しながら説明したが、本発明は上述した具体的な構造に限定されるものではない。
図16は、本発明の缶蓋切除器具の変形例を示す図である。
図16は、缶蓋切除器具の刃体20及び刃体カバー部32aを上面側から見た模式図である。
【0081】
(清掃部材)
図16の缶蓋切除器具100は、清掃部材33を有している。清掃部材33は、缶蓋切除器具100が立ち上がり部205を切断する際に、立ち上がり部205の内周の切断部の切粉を払い、清掃する部材である。清掃部材33は、立ち上がり部205に当接するブラシ状の部材であってもよいし、立ち上がり部205に当接する弾性部材であってもよい。立ち上がり部205は例えばゴム製であってもよい。
【0082】
清掃部材33は、立ち上がり部205の切断部に当接する位置であれば、缶蓋切除器具100の任意の位置に取り付けられていてもよい。
図16の例では、刃体カバー部32aに清掃部材33が取り付けられている。清掃部材33は、例えば、交換可能に設けられていてもよい。
【0083】
本発明の缶蓋切除器具は上記の他にも、例えば、本体部10は、開口部10hを有していなくてもよい。刃体20は、缶200の立ち上がり部205の外周を切断してもよい。操作部30は、長孔35内に突起部35tが形成されていなくてもよい。
【0084】
プルタブ保持部40は、本体部10に対して回動しなくてもよい。プルタブ保持部40の形状は適宜変更可能であり、例えば、単に、板材を折り曲げたような形状であってもよい。具体的には、プルタブ保持部は、円形凹部11の内側から中心に向かって延びる接続部と、その接続部の先端部に位置しプルタブ210の開口部210hに挿入される保持突起部とを有する部材であってもよい。
【0085】
プルタブ保持部40は、プルタブ210の開口部210hを保持するのではなく、他の部位を保持する構成であってもよい。例えば、開口部210hが形成されていないプルタブ210の場合には、一例として、固定ピン220付近に位置するプルタブ210の開口部にプルタブ保持部40の一部が挿入される構成としてもよい。プルタブ保持部40の材質は任意であり、金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。プルタブ保持部40は、一部が金属で形成され、他の一部が樹脂で形成されたような部材であってもよい。
【0086】
(プルタブ保持部及び円形凹部の他の構成例)
次に、
図17~
図19を参照しながら缶蓋切除器具の他の構成例について説明する。
図17は、缶蓋切除器具の他の構成例を示す斜視図である。
図18は、
図17の缶蓋切除器具100Aを下面側から見た斜視図である。
図19は、
図17の缶蓋切除器具100Aの底面図である。なお、
図19ではプルタブ保持部は図示を省略している。
【0087】
缶蓋切除器具100Aは、上述した実施形態の缶蓋切除器具100と次の点で相違している。具体的には、缶蓋切除器具100Aは、缶蓋切除器具100の本体部10及びプルタブ保持部40と異なる形状の本体部110及びプルタブ保持部140を有している。また、本体部110の内側の円形凹部11の構造に関しても、缶蓋切除器具100Aは、缶蓋切除器具100と異なる構造を有している。
【0088】
本質的な相違点ではないが、缶蓋切除器具100Aの本体部110は、上述した実施形態における本体部10よりもやや丸みを帯びた輪郭形状に形成されている(
図19参照)。
【0089】
プルタブ保持部140は、例えば樹脂製又は金属製の部材であって、
図17に示すように保持突起部141a及びプルタブ保持凹部141bを有している。プルタブ保持部140は、上述した実施形態と同様、
図17のような水平の向きと、本体部110に対して下向きとなる向き(不図示)とに回動できるように構成されている。
【0090】
図18及び
図19に示すように、本体部110の円形凹部11内には、上面11uから下向きに突出する円弧状のリブ11rが形成されている。リブ11rは、
図19に示すように、この例では、円形凹部11の内周壁11wに沿う基準円C1よりも一回り小さい基準円C2に沿って延在するように形成されている。リブ11rは、缶200(
図15)よりも小径の他の種類の缶を切断する際にガイドとなる構造部である。
【0091】
缶200の立ち上がり部205よりも小径の立ち上がり部を有する缶の蓋を、上述した実施形態の缶蓋切除器具100で切断しようとした場合、立ち上がり部が小径であることから円形凹部11の内周面で良好に立ち上がり部をガイドし難く、その結果、蓋をうまく切除できない可能性がある。そこで、
図17~
図19の構成では、円形凹部11において、リブ11rと内周壁11wとの間にリング状のガイド凹部12が形成され、このガイド凹部12でサイズの異なる缶の立ち上がり部を受け入れることができるように構成されている。
【0092】
なお、缶蓋切除器具100Aは、内周壁11wと刃体20との間に缶の立ち上がり部を挟み込んで立ち上がり部を切断するものであり、基準円C1及び基準円C2の位置は、刃体20が内周壁11wに当接する位置に基づき設定される。そのため、基準円C1及び基準円C2は同心円状ではなく、基準円C2が刃体20の側に少し偏心している。
【0093】
上記のような構成の缶蓋切除器具100Aによれば、蓋のサイズが異なる複数種類の缶について、缶蓋切除器具100Aを用いて良好に蓋を除去することができる。
【0094】
<変形例2>
本発明の缶蓋切除器具は、
図20から
図24に示すようなものであってもよい。
図20は、本発明の一形態の缶蓋切除器具300が缶200に装着された状態を示す斜視図である。
図21は、缶蓋切除器具300を上面側から見た斜視図である。
図22は、缶蓋切除器具300の平面図である。
図23は、缶蓋切除器具300を下面側から見た斜視図である。
【0095】
以下の説明では、缶蓋切除器具300の各部は300番台の符号で示される。符号の下二桁は上述した実施形態の符号に原則として対応し、重複する説明は省略する。
【0096】
この缶蓋切除器具300は、刃体320を缶200の立ち上がり部205に当接させて立ち上がり部205を切断するという原理は上述した実施形態と同様であるが、一例として、上述の実施形態と形状の異なる本体部310及び操作部330を備えている。缶蓋切除器具300の特徴の1つは、詳細は後述するが、刃体320の付近に摺動部材が配置されている点、及び、缶200の立ち上がり部205を押さえるアダプタ部材を有している点である。摺動部材及びアダプタ部材の両方が必須という訳ではなく、何れか一方のみが設けられていてもよい。
【0097】
本体部310は、
図20から
図23に示すようにやや横長の環状に形成されている。本体部310は、この例では具体的には、大きな円(不図示)の一部である円弧と小さな円(不図示)の一部である円弧とを2本の直線で互いに接続したような環状に形成されている。本体部310は、より具体的には、
図22に示すようにガイド部領域311と、延出部領域312とを含んでいる。
【0098】
ガイド部領域311は、缶200の立ち上がり部205の外周の一部に沿うような円弧状の領域である。延出部領域312は、立ち上がり部205から離れる方向に延びるように形成された領域である。延出部領域312は、ガイド部領域311に連なるようにガイド部領域311と一体的に形成されている。
【0099】
操作部330は、延出部領域312が延在する方向とほぼ同方向に延びるように配置されている。上述した実施形態と同様、操作部330は、ユーザによって、本体部310の側へと押し込まれる。操作部330は、この例では、操作部330のほぼ全体が本体部310の内部に入り込むような形状を有していてもよい。具体的には、操作部330は、収容時に、例えば、その側面330L(
図22)が本体部310の側面310L(輪郭線)とほぼ同位置となるように構成されていてもよい。このような構成によれば、缶蓋切除器具300の収容時の外形が、
図24(a)に模式的に描かれている本体部310のような形状となるため、嵩張らず、意匠性も向上する。
【0100】
なお、操作部330は、例えば、板バネやねじりバネといった部材により、本体部310から離れる方向に力が加えられていてもよい。
【0101】
本体部310には、
図23に示すように、凹部310hが形成されている。
この凹部310hには、上述した実施形態と同様、刃体320及びプルタブ保持部340が設けられている。凹部310hには、また、アダプタ部材360が設けられている。アダプタ部材360の詳細は他の図面も参照しながら後述する。
【0102】
(摺動部材)
図24は、摺動部材350について説明するための図である。
図24(a)は、本体部310、刃体320及び摺動部材350を模式的に示しており、
図24(b)は、刃体320及び摺動部材350の断面を模式的に示している。
図25は摺動部材350及びその周辺構造を示す斜視図である。
【0103】
缶蓋切除器具300は、刃体20がスムーズに立ち上がり部205を切断するために摺動部材350を有していてもよい。摺動部材350は、凹部310hに設けられている。摺動部材350は、具体的には、
図24に示すように、本体部310が缶200に装着された状態で、立ち上がり部205の外周面を押さえるような位置に設けられている。より具体的には、摺動部材350は、立ち上がり部205を間に置いて刃体320の反対側となる位置に設けられている。
【0104】
摺動部材350は、
図25に示すように、湾曲した円弧状部分を有する。摺動部材350は、刃体320が立ち上がり部205に押し付けられた際に、立ち上がり部205の外周に当接する。摺動部材350は、本体部310を構成する他の部品よりも摺動性の高い材料で形成されている。摺動部材350は、例えば、PA(ポリアミド)やPOM(ポリアセタール)などの樹脂であってもよい。摺動部材350は、
図24(b)に示すように、本体部351と、本体部351から径方向内側に向かって突出した突出部351aとを有する断面形状である。
【0105】
突出部351aは、本体部310の内周面313(
図25)よりも突出しており、立ち上がり部205の巻締め部205s(
図15)の下方に当接するようになっている。このような構成によれば、刃体320が立ち上がり部205を切断する際、突出部351aが巻締め部205sの下方に係合するので、缶蓋切除器具300の浮き上がりを防止し、切断時に刃体320を良好な位置に維持できる。また、切断時に立ち上がり部205の外周面が摺動部材350によって押さえられるので、安定的に立ち上がり部205を切断できる。
【0106】
(アダプタ部材)
本発明の一形態に係る缶蓋切除器具300は、
図26から
図28に示すようなアダプタ部材360を有していてもよい。
図26は、缶蓋切除器具300を上面側から見た図である。
図27は、缶200の立ち上がり部205を押さえるアダプタ部材360を示す斜視図である。
図28は、本体部310に設けられたアダプタ部材360を示す図である。
図28は、本体部310の一部を省略して上面側から見た状態である。
【0107】
アダプタ部材360は、缶200の立ち上がり部205の外周面を押さえる部材である。アダプタ部材360は、
図26に示すように、本体部310に設けられており、立ち上がり部205の外周面に対して進出し、また、後退するように移動可能に構成されている。
【0108】
アダプタ部材360は、
図27に示すように、本体部361と、ガイド部361aと、レバー部分363とを有している。ガイド部361aは、缶200の立ち上がり部205の外周面の形状に対応して円弧状に形成されている。ガイド部361aは、具体的には、
図26から理解されるように、ガイド部領域311によってガイドされていない立ち上がり部205の外周面を押さえる。ガイド部361aは、立ち上がり部205の巻締め部に当接してもよいが、この例では、立ち上がり部205の巻締め部の下方の領域に当接する。このような構成によれば、使用時に缶蓋切除器具300が上方に浮き上がることが防止され、立ち上がり部205を良好に切断できる。
【0109】
図28に示すように、アダプタ部材360の近傍には弾性部材367が配置されている。弾性部材367は、アダプタ部材360を缶200の立ち上がり部205の外周面側に押し付ける向きに力を付与する部材である。弾性部材367は、一例として、コイルスプリングであってもよいし、ゴム製のチューブなどであってもよい。弾性部材367は、
図28では、圧縮された状態で配置されており、これにより、弾性部材367はアダプタ部材360を凹部310hの略中心側に付勢している。
【0110】
レバー部分363は、ユーザによって操作される突起状の部分である。レバー部分363は、
図26に示すように、一例として、本体部310の延出部領域312の内側に配置されている。この例では、レバー部分363は、操作部330から離れた側(
図26の下方側)に設けられている。このような構成により、ユーザは、例えば、人差し指から小指の4本の指で操作部330を握り、親指でレバー部分363を操作することができる。
【0111】
ユーザが、アダプタ部材360が缶200から離れる向きにレバー部分363を押すことによってアダプタ部材360全体が立ち上がり部205から離れる。ユーザは、この状態で缶蓋切除器具300を缶200に取り付ける。ユーザが指をレバー部分363から離すことによって、弾性部材367によってアダプタ部材360が立ち上がり部205側に押し付けられ、ガイド部361aが立ち上がり部205を押さえる。このような構成により、缶蓋切除器具300が安定的に缶200に取り付けられる。
【0112】
図29は、缶蓋切除器具のさらなる変形例を説明するための図である。本発明の一形態の缶蓋切除器具は、
図26に例示したアダプタ部材360とは反対側(すなわち、操作部330側)にアダプタ部材380を有していてもよい。
図29の構成では、アダプタ部材360とアダプタ部材380とが図示されているが、アダプタ部材380のみが設けられていてもよい。
【0113】
アダプタ部材380は、この例では、アダプタ部材360と同様、本体部381、ガイド部381a及びレバー部分383を有している。アダプタ部材380は、本体部310に設けられてもよいし、操作部330に設けられてもよい。アダプタ部材380は、一例として、アダプタ部材360と同様、弾性部材(不図示)によって立ち上がり部205側に押し付けられるように構成されていてもよい。
【0114】
弾性部材を利用するのではなく、操作部330を閉じる動作に連動して、アダプタ部材380が立ち上がり部205に押し付けられるようにアダプタ部材380が構成されていてもよい。
【0115】
なお、操作部330と本体部310との間に板バネやコイルバネ等が設けられており、これらのバネからの力を受けて、操作部330に対して操作部330を開く向きの力が加わるようになっていてもよい。限定されるものではないが、このような構成において、操作部330を閉位置に位置決めするための手段が設けられていてもよい。
【0116】
具体的には、次のような構成であってもよい。例えば、
図28に示すように、操作部330の端部335に、本体部310のガイド溝315に沿って移動する突起(不図示)が設けられている。操作部330が閉位置まで移動する際、その突起が、ガイド溝315の部に沿って移動する。突起は、さらに、ガイド溝315の一部に形成された係合凹部315aに嵌り込むことによって、操作部330が所定の閉位置に位置決めされる。操作部330は、その突起が係合凹部315aに嵌り込むときにクリック感を生じさせるように構成されていてもよく、これにより、ユーザは、操作部330が所定の閉位置にしっかり収まったことを確認できる。
【0117】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0118】
10 本体部
10-1 上カバー
10-2 下カバー
10h 開口部
11 円形凹部
11u 上面
11u’ リブ
11w 内周壁
12 ガイド凹部
13 突起部
18 溝
18a 突起
20 刃体
21 固定ネジ
30 操作部
31 ハンドル部
32 本体部材
32a 刃体カバー部
33 清掃部材
35 長孔
35a 端部
35b 端部
35t 突起部
37 工具保持部
40 プルタブ保持部
41 先端部
41a 保持突起部
41a’ 側部
41b プルタブ保持凹部
41b’ 側部
43 接続部
45 回転軸部
100、100A 缶蓋切除器具
140 プルタブ保持部
200 缶
201 缶本体
202 蓋
205 立ち上がり部
205s 巻締め部
210 プルタブ
210h 開口部
220 固定ピン
300 缶蓋切除器具
310 本体部
310h 凹部
310L 側面
311 ガイド部領域
312 延出部領域
313 内周面
315 ガイド溝
315a 係合凹部
320 刃体
330 操作部
330L 側面
335 端部
340 プルタブ保持部
350 摺動部材
351 本体部
351a 突出部
360 アダプタ部材
361 本体部
361a ガイド部
363 レバー部分
367 弾性部材
380 アダプタ部材
381 本体部
381a ガイド部
383 レバー部分
B ボス
C1、C2 基準円
P 中心点
S1 軸
T 工具
【要約】
缶蓋切除器具100は、缶200の上端外周の円筒状の立ち上がり部205を切断することで前記缶200から蓋202を切除する缶蓋切除器具であって、前記立ち上がり部205を受け入れる円形に形成された円形凹部11を有する本体部10と、前記本体部10に設けられた、前記立ち上がり部205を切断するための刃体20と、前記本体部10が前記缶200に装着された状態において前記刃体20を前記立ち上がり部205に向けて押し付けるための操作部30と、前記円形凹部11の内部に設けられ、前記本体部10が前記缶200に装着された状態で前記蓋202のプルタブ210を保持するプルタブ保持部40とを備える。